JP2007039647A - セルロース脂肪酸エステル組成物およびそれからなる繊維およびその製造方法 - Google Patents

セルロース脂肪酸エステル組成物およびそれからなる繊維およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高温染色を行った後も、優れた力学特性と発色性を維持することができ、特にポリエステル繊維との混繊、交編および交織に適したセルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜95重量%と多価アルコール系可塑剤5〜25重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物であり、このセルロース脂肪酸エステル組成物を溶融紡糸することによって、単繊維繊度が0.1〜20dtexの範囲である繊維を得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高温染色を行った後も、優れた力学特性と発色性を維持することができ、特にポリエステル繊維との混繊、交編および交織に適した繊維のためのセルロース脂肪酸エステル組成物、およびそれからなる繊維とその製造方法に関するものである。
セルロースエステルやセルロースエーテルなどのセルロース系材料は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス系材料として、また自然環境下にて生分解可能な材料として、昨今、大きな注目を集めつつある。加えて、セルロース系材料は屈折率が低いため、それを繊維にした場合には、鮮明発色性に優れるという長所も併せ持っている。
セルロース系繊維は、溶融紡糸法によって繊維化することはできないため、溶媒を使用する湿式あるいは乾式の製糸方法によって製造されているが、この溶媒には有害なものが多く環境負荷が懸念される。また、溶液紡糸では生産速度が遅く、溶媒の回収による費用増加もあるためコストが高いことも課題である。
このため環境負荷の低減および生産性向上を目的として、セルロース脂肪酸エステルを溶融紡糸して繊維を得て、分散染料で染色することにより、発色性に優れた繊維を得る技術が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、セルロース脂肪酸エステルからなる繊維は、それを温で染色すると、繊維として使用できないほど強度および伸度が大幅に低下するため、ポリエステル繊維などとの同浴染色はできないという課題があった。ちなみに、特許文献1の実施例において、セルロース脂肪酸エステル繊維の染色温度は90℃であり、ポリエチレンテレフタレートの染色温度(比較例)は130℃である。
また別に、可塑化されたセルロース誘導体が連続相であり、熱可塑性樹脂が分散相であるセルロース系樹脂組成物が開示されており、その中で分散相となる熱可塑性樹脂としてポリスチレンの共重合体も例示されている(特許文献2参照)。しかしながら、この技術では、本発明のように、ある特定の可塑剤とエポキシ基を含有するポリマーの添加により、溶融紡糸に好適であるセルロース脂肪酸エステル組成物が得られ、さらに得られる繊維は高温染色後の力学特性が改善される点については、何ら示唆されていない。
特開2004−169242号公報(第5〜8頁) 特開2003−306577号公報(第4頁)
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、高温染色を行った後も、セルロースエステル繊維の持つ風合いを損ねることなく優れた力学特性と発色性を維持することができ、特にポリエステル繊維との混繊、交編および交織に適した繊維のためのセルロース脂肪酸エステル組成物、およびそれからなる繊維とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の可塑剤とエポキシ基を含有するポリマーをセルロース脂肪酸エステルに加えることにより、高温染色後の強度と伸度の大幅な低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
本発明の第1の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜95重量%と多価アルコール系可塑剤5〜25重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物である。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物の好ましい態様によれば、セルロース脂肪酸エステル組成物の溶融粘度は10〜500Pa・sである。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物の好ましい態様によれば、前記のエポキシ基を含有するポリマーは、ポリスチレン・部分エポキシ化ポリブタジエンブロック共重合体であるである。
また、本発明の第2の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維であって、その単繊維繊度が0.1〜20dtexの範囲であることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維である。
また、本発明の第3の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜95重量%と多価アルコール系可塑剤5〜25重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物を、溶融紡糸することを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法である。
本発明によれば、熱流動性および製糸性に優れており、溶融紡糸による繊維化が容易であるセルロース脂肪酸エステル組成物が得られる。
また、本発明によれば、高温染色を行った後も、優れた力学特性と発色性を維持でき、特にポリエステル繊維との混繊、交編および交織に適しているセルロース脂肪酸エステル繊維が得られる。
また、本発明によれば、セルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維を、優れた特性を持つ繊維を生産性が高く、環境負荷が低い方法で製造することができる。
本発明の第1の発明であるセルロース脂肪酸エステル組成物について詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、エポキシ基を含有するポリマーを1〜10重量%の範囲で含有するものである。エポキシ基を含有するポリマーの含有量が上記の範囲未満では、繊維としたときの高温染色時の強度および伸度低下の改善効果が小さく、また、その含有量が上記の範囲を超えると、製糸性が不十分となり溶融紡糸が困難となる。セルロース脂肪酸エステル組成物における、エポキシ基を含有するポリマーの組成物全体に対する好ましい含有量は、2〜7重量%である。
本発明で用いられるエポキシ基を含有するポリマーとは、エポキシ基を含有し、十分な分子量を有するものであり、本発明では、その分子量の指標となる260℃、120s−1での溶融粘度が1Pa・s以上のものを指す。溶融粘度が1Pa・s以上のものを用いることで、繊維としたときの高温染色時の強度と伸度低下の改善効果が十分に発現できる。溶融粘度としては50〜500Pa・sであることが混練性を高める点からは好ましい。なおエポキシ基を含有するポリマーの分子量は、1000以上であることが好ましい。
本発明で用いられるエポキシ基を含有するポリマーとしては、例えば、ポリスチレン・部分エポキシ化ポリブタジエンブロック共重合体(以下、PSGPB共重合体と略記する。)や、末端エポキシ化ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエポキシ化物などがあり、中でもPSGPB共重合体を好適に用いることができる。PSGPB共重合体は、ハードセグメントであるポリスチレンユニットと、ソフトセグメントであるジエン成分の不飽和2重結合の一部をエポキシ化したポリブタジエンユニットとのブロック共重合体を含むものである。
PSGPB共重合体を用いる場合、セルロース脂肪酸エステルとの混練性の観点から、ポリスチレンユニット(PS)の共重合重量比率は、20〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜70重量%である。また、PSGPB共重合体中のエポキシ基の含有量は臭化水素により滴定したオキシラン酸素濃度によって表され、繊維としたときの高温染色時の強度および伸度低下の改善効果の観点から、0.5〜4.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.7〜3.0重量%である。ここでいうオキシラン酸素濃度とは、PSGPB共重合体が含有するエポキシ基の酸素濃度であり、その数値が大きいほどエポキシ基の含有量が多いことを示し、PSGPB共重合体に対する重量%で表したものである。
本発明の効果は、PSGPB共重合体の添加によって顕著に発現する。その理由は定かではないが、PSGPB共重合体はポリスチレンを含有しているため適度な溶融粘度を有し、セルロース脂肪酸エステル中に適度に分散し、かつエポキシ化されているためにセルロース脂肪酸エステルと適度に反応するためと推測される。エポキシ化されていないポリスチレン・ブタジエンブロック共重合体や低分子量のエポキシ化合物では、このような効果は発現しない。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、またセルロース脂肪酸エステルを70〜95重量%の範囲で含有するものである。セルロース脂肪酸エステルの含有量が上記の範囲未満では、セルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維が持つ鮮明発色性と吸湿性などが損なわれ、また上記の範囲を超えると、流動性が不十分となり溶融紡糸が困難となる。
本発明で用いられるセルロース脂肪酸エステルは、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18のセルロース脂肪酸エステルである。アシル基の少なくとも一部を炭素数3〜18とすることにより、熱流動性が向上しエポキシ基を含有するポリマーとの混練が可能となるのである。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルの具体例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースブチレートなどを例示することができるが、なかでもセルロースにアシル基の炭素数が2であるアセチル基と炭素数が3であるプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネート、およびセルロースにアシル基の炭素数が2であるアセチル基と炭素数が4であるブチリル基が結合したセルロースアセテートブチレートは、適度な吸湿性や良好な力学特性を有するため、本発明では特に好ましく用いられる。
セルロース脂肪酸エステルとして、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを用いる場合、アセチル基およびアシル基(プロピオニル基またはブチリル基)の平均置換度は、下記の3つの式を満たすことが好ましい。ここで平均置換度とは、セルロースのグルコース単位あたりに存在する3つの水酸基のうちアシル基が化学的に結合した数を指す。
2.0≦(アセチル基の平均置換度+アシル基の平均置換度)≦3.0
1.5≦(アセチル基の平均置換度)≦2.5
0.5≦(アシル基の平均置換度)≦1.5
上記の式を満たすセルロース脂肪酸エステルは、エポキシ基を含有するポリマーおよび多価アルコール系可塑剤との混練性に優れ、かつ繊維および布帛とした場合でも熱軟化温度が高く、適度な吸湿性を有するものとなる。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルの重量平均分子量(Mw)は、5.0万〜25.0万であることが好ましい。Mwが5.0万未満の場合、溶融紡糸して得られるセルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維の機械的特性(特に強度)が、実用レベルに到達しないことがある。また、Mwが25.0万より大きくなると、溶融粘度が非常に高くなるため、溶融紡糸法による安定した繊維化が行えなくなってしまうことがある。良好な機械的特性と安定した溶融紡糸性を得る観点から、Mwは、より好ましくは6.0万〜22.0万であり、更に好ましくは8.0万〜20.0万である。ここで、重量平均分子量(Mw)とは、GPC測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、流動性を高めることを目的に可塑剤を含む。可塑剤量は、熱流動性の制御および得られる繊維がセルロース脂肪酸エステルとしての特性を維持するという観点から、組成物全体に対して5.0重量%〜25.0重量%の範囲である。
可塑剤としては多価アルコール系可塑剤を用いる。多価アルコール系可塑剤を用いることにより、セルロース脂肪酸エステルとの相溶性が良いため製糸性を阻害せず、溶融紡糸の際に発煙などを起こすことがなく、さらに高次加工工程で水などを用いて可塑剤を抽出することができるなど溶融紡糸による繊維化に特に優れた特性を組成物に与えることができる。
多価アルコール系可塑剤としては、グリセリン骨格を有したエステル化合物やポリアルキレングリコール、カプロラクトン系化合物などが好ましく用いられる。
具体的なグリセリン骨格を有したエステル化合物としては、グリセリンアセテートステアレート、グリセリンアセテートパルミテート、グリセリンアセテートラウレート、グリセリンアセテートカプレート、グリセリンアセテートオレート、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレートおよびジグリセリンテトララウレートなどが挙げられるが、これらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が好ましくは200〜4000であるポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
また、本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、安定した溶融紡糸を可能とするため、適度な流動性を有している必要があり、260℃、120s−1での溶融粘度が好ましくは10〜500Pa・sであり、より好ましくは50〜300Pa・sである。260℃、120s−1での溶融粘度は、毛管形レオメーターで求める値であり、実施例で詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、ホスファイト系着色防止剤を含有していることが好ましい。ホスファイト系着色防止剤を含有している場合、紡糸温度が高い範囲においても着色防止効果が非常に顕著であり、得られる繊維の色調が良好になる。
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、セルロース脂肪酸エステル組成物に対して0.005重量%〜0.5重量%であることが好ましい。配合量を0.005重量%以上とすることで加熱時のセルロース脂肪酸エステル組成物の着色を抑制することができる。ホスファイト系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.01重量%以上であり、さらに好ましくは0.05重量%以上である。一方、ホスファイト系着色防止剤の配合量を0.5重量%以下とすることにより、セルロースエステルの分子鎖を切断し重合度を低下することによる劣化を抑制することができ、得られる繊維の機械的特性が良好となる。ホスファイト系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.3重量%以下であり、さらに好ましくは0.2重量%以下である。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、上述した成分以外にも、アシル基が異なる脂肪酸エステルを含む他の樹脂や、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、酸化防止剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤等酸化防止剤、難燃剤および滑剤等の添加剤を含んでも構わない。
次に、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維について説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物からなるものである。本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、このようなセルロース脂肪酸エステル組成物を用いることで、セルロースエステル繊維の持つ風合いを損ねることなく、さらに高温染色を行った後も、優れた力学特性と発色性を維持することができる。セルロース脂肪酸エステルおよびエポキシ基を含有するポリマーの詳細は、前述した組成物と同じである。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維には、可塑剤を含んでも構わない。可塑剤としては、前述した多価アルコール系可塑剤が好ましい。また、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、前述したホスファイト系着色防止剤を含んでいても構わず、発明の主旨を損ねない範囲でその他の樹脂や添加剤を含んでいても構わない。
セルロース脂肪酸エステル繊維の単繊維繊度は、0.1〜20dtexであり、単繊維繊度がこの範囲であれば、染色により鮮明で深みのある発色性が得られ、かつ繊維としてのソフト感にも優れている。本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、この単繊維繊度であれば、モノフィラメントでもマルチフィラメントでも良く、また、長繊維以外に短繊維(ステープル)や不織布でも構わない。
また、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形および中空などの異形断面糸でも良い。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の物性は、高次加工での工程通過性などの観点から、初期弾性率が10〜50cN/dtexであり、強度が0.5〜2.0cN/dtexであり、伸度が5〜50%であることが好ましい。さらに沸騰水収縮率が3〜10であることが好ましい。このような収縮特性を持つことにより高次加工で優れた風合いを発現させることができる。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、一般の繊維と同様に、延伸や仮撚などの加工が可能である。また、製織や製編についても、一般の繊維と同等に扱うことができる。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、高温染色が可能であるため、特にポリエステル繊維との混用が可能である点、大きな特徴である。他種繊維の混用の形態としては、混繊、混紡、交織および交編などの手法が採用される。従来のセルロース繊維は、熱軟化性に乏しく、加熱加工に適さなかったが、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、混繊仮撚加工などが可能であるという利点を有している。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維について、染色方法は特に制限されず、チーズ染色、液流染色およびドラム染色などの手法を採用することができる。染料は、アセテート用およびポリエステル用分散染料を好適に用いることができる。染色温度も特に規定されないが、80〜140℃の温度であれば、発色性と力学特性に優れた繊維または布帛を得ることができる。
次に、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法について説明する。
ポリマーとしては、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜95重量%と多価アルコール系可塑剤5〜25重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物が用いられる。これらの成分は、例えば、2軸混練機などを用いて、溶融紡糸を行う前に混練しても構わないし、溶融紡糸を行う際にスタティックミキサーなどを用いて混合しても構わない。セルロース脂肪酸エステルおよび多価アルコール系可塑剤およびエポキシ基を含有するポリマーの詳細は、前述した本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物と同じである。
また、このセルロース脂肪酸エステル組成物は、前述したホスファイト系着色防止剤を含んでいても構わず、発明の主旨を損ねない範囲でその他の樹脂や添加剤を含んでいても構わない。
本発明では、溶融紡糸を行う前に、このセルロース脂肪酸エステル組成物を乾燥させ、組成物の含水分率を0.3%以下としておこくことが好ましい。含水分率が0.3%以下である場合、溶融紡糸時、水分により発泡することもなく、安定して紡糸を行うことができ、得られるマルチフィラメント等の繊維の機械的特性も良好となる。含水分率は、より好ましくは0.2%以下であり、更に好ましくは0.1%以下であり、最も好ましくは0.08%以下である。
本発明では、このセルロース脂肪酸エステル組成物を、溶融紡糸して繊維を得ることができる。溶融紡糸を行うことにより、セルロース脂肪酸エステル組成物の溶融状態から冷却固化に至るまでに十分に発達した繊維構造を形成させることが可能となり、加えて環境負荷が小さく、生産性にも優れる。溶融紡糸の方法としては、例えば、エクストルーダーを用いた押出などが好適な手段として採用することができる。
溶融紡糸における紡糸温度は、220℃〜280℃の範囲であることが好ましい。紡糸温度を220℃以上とすることにより、紡糸口金から吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため、メルトフラクチャー(紡糸口金孔通過時においてポリマーの剪断応力が高いと流線乱れが発生し、紡糸口金より吐出された糸条の形状が不規則になる現象)起因の短ピッチの周期斑が現れず、均一な繊維を得ることができる。更には、紡糸口金から吐出された繊維糸条の細化過程がスムーズになるため、繊維特性が良好となり、また紡糸張力が過度に高くならないため糸切れが多発せず、製糸性が安定する。また、紡糸温度を280℃以下とすることにより、セルロース脂肪酸エステル組成物の熱分解を抑制することができるため、得られる繊維の分子量低下による機械的特性不良や着色による品位悪化が発生しない。紡糸温度は、より好ましくは230℃〜270℃であり、更に好ましくは240℃〜260℃である。
また、紡糸口金より吐出された繊維糸条は口金から一定距離の間、加熱装置を用いて加熱するかあるいは積極的な冷却を行わず保温することが好ましい。この理由は定かではないがセルロース脂肪酸エステルと環状オレフィンという溶融粘度および冷却固化温度が異なる2種類の樹脂を混合して紡糸を行うため、吐出直後の高温の糸条をゆっくり冷却することで細化をスムーズに行わせることにより、製糸性が良好となりかつ得られる繊維の強伸度も向上すると考えられる。加熱または保温する距離は、保温する場合には10〜200mmが好ましく、10〜120mmがより好ましい。加熱する場合には10〜120mmが好ましい。保温する方法は断熱効果の高い筒状の紡糸筒など公知の手法が採用できる。また加熱する方法も前記した紡糸筒にヒーターを組み込んだものなど公知の手法が採用できる。加熱する際の温度は紡糸温度以上が好ましく、ヒーター温度を紡糸温度よりも10〜100℃程度高くすることがより好ましい。
紡糸された繊維の引取方法は特に制限されるものではなく、回転するローラーを用いて引き取っても良いし、ネットなどで捕集しても構わない。ローラーを用いて引き取る場合の紡糸速度は、500m/min〜3000m/minであることが好ましい。紡糸速度を500m/min〜3000m/minとすることにより、発達した繊維構造を形成することが可能となり、繊維特性に優れた繊維を得ることができる。紡糸速度は、より好ましくは750m/min〜2500m/minであり、更に好ましくは1000m/min〜2000m/minである。また、繊維を引き取った後に、連続して繊維に延伸を施し、巻き取っても構わない。
本発明によって得られるセルロース脂肪酸エステル繊維の物性は、特に規定されるものではないが、高次加工での工程通過性などの観点から、初期弾性率が10〜50cN/dtexであり、強度が0.5〜2.0cN/dtexであり、伸度が5〜50%であることが好ましい。
得られた繊維からは、セルロースエステル繊維としての特徴をさらに高めるために多価アルコール系可塑剤を抽出することが好ましい。可塑剤はその全てを抽出しても良いが、一部でも抽出すればセルロースエステル繊維の特徴を高めることができる。抽出は製糸工程と連続して行っても良く、また一旦巻き取った後、パッケージの形態で抽出しても良く、さらに布帛や不織布とした状態で抽出しても良い。抽出方法としては多価アルコール系可塑剤の溶剤を繊維に接触させることが工業的な簡便性の点から好ましい。溶剤は水を主成分とすることが環境負荷を低減させる観点から好ましい。抽出する温度および時間は可塑剤の種類や添加量によって変化するが処理費用を抑える点から処理温度は20〜90℃、処理時間は1sec〜120min程度が好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法に関して最も好適な例は、アセチル基の平均置換度が1.8〜2.4であり、プロピオニル基の平均置換度が0.5〜0.8であり、重量平均分子量が8万〜20万のセルロースアセテートプロピオネート70〜85重量%、平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール10〜25重量%、ポリスチレン・部分エポキシ化ブタジエン共重合体2〜7重量%およびホスファイト系着色防止剤0.05〜0.2重量%を、2軸エクストルーダーにより200〜240℃の温度で溶融混練し、ペレット化した後、乾燥し、エクストルーダータイプの紡糸機によって、紡糸温度240〜260℃で口金より繊維糸条を吐出させ、口金より10〜200mmの間を保温し、引取速度1000〜2000m/minで溶融紡糸を行い、油剤を付着させた後巻き取ってパッケージとなし繊維とすることである。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は衣料用繊維、産業用繊維および不織布などとして用いることができ、特にポリエステルとの混繊、交編および交織により婦人・紳士衣料やスポーツシャツなどの用途に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。実施例中の各特性値は、次の方法で求めたものである。
(A)GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロース脂肪酸エステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。このGPC測定用試料を用い、下記の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。なお測定回数は3回であり、その平均値をMwとした。
・カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
・検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
・移動層溶媒:テトラヒドロフラン
・流速 :1.0mL/分
・注入量 :200μL。
(B)260℃、120s−1での溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、L=40mm、D=1mmのダイにて、温度260℃、120s−1(ヘッドスピード10mm/min)で測定した値(Pa・s)をそのまま用いた。なお、樹脂は測定前に80℃の温度にて8hrの減圧乾燥を行い、測定時には熱劣化の影響を避けるため、樹脂の充填開始後10min以内に測定を行った。
(C)単繊維繊度
長さ100mの枷を作り、重量を測定し100倍することでマルチフィラメントのトータル繊度を測定し、これを単繊維数で除して単糸繊度を求めた。また染色後の単繊維繊度については、染色した布帛から繊維を抜き取り、これに0.06cN/dtexの荷重をかけた状態で1m切り取って重量を測定し、これを10000倍することでトータル繊度を求め、さらにマルチフィラメントの単糸の本数を測定し、トータル繊度を単糸数で除して単繊維繊度を求めた。
(D)強伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除した値を強度(cN/dtex)とした。またそのときの伸度を伸度(%)とした。なお、測定回数は5回であり、その平均値を強度と伸度とした。
(E)初期引張抵抗度
初期引張抵抗度は、JIS L 1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.10に基づいて算出した。
(F)沸騰水収縮率
試料をかせ取りし、0.09cN/dtexの荷重下で試料長L0を測定した後、無荷重の状態で15分間、沸騰水中で処理を行う。処理後、風乾し0.09cN/dtexの荷重下で試料長L1を測定し、下式を用いて算出した。なお測定回数は5回であり、その平均値を沸騰水収縮率とした。
沸騰水収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
(G)染色後繊維の重量減少率
紡糸繊維の筒編み試料を標準状態で24時間調湿した後重量W0を測定し、実施例記載の条件で染色工程(精練、染色、洗浄、乾燥全ての工程)を行った後標準状態で24時間調湿した後重量W1を測定し、下式を用いて算出した。
重量減少率Rw(%)={(W0−W1)/W0}×100
(H)染色後のセルロース脂肪酸エステルの重量分率(Rc)およびPSGPB共重合体の重量分率(Rp)
紡糸繊維に含まれる化合物全てに対し、単体および混合物を用いて染色工程での重量減少率を測定する。本実施例および比較例に用いた繊維については多価アルコール系可塑剤であるポリエチレングリコールのみが染色工程において重量減少したことから、(H)で求めた重量減少率Rwを用いて下式で計算した。
Rc(重量%)={紡糸繊維に含まれるセルロース脂肪酸エステルの重量分率/(100−Rw)}×100
Rp(重量%)={紡糸繊維に含まれるPSGPB共重合体の重量分率/(100−Rw)}×100
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ、相対粘度13.8)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃の温度で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、温度が40℃を超えるときは、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃の温度で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃の温度で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は、各々2.0と0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
合成例2
セルロースとして相対粘度7.5のものを用い、最終の加熱攪拌を1.5時間行うこと以外は、合成例1と同様の手法で、セルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は、各々1.9と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は8.2万であった。
実施例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%とポリスチレン・部分エポキシ化ブタジエン(PSGPB)共重合体(ダイセル化学工業株式会社製「エポフレンド(登録商標)AT504」、スチレン含量70重量%、オキシラン酸素濃度1.0重量%、260℃、120s−1での溶融粘度430Pa・s)5.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%、さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、二軸エクストルーダーにて230℃の温度で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は、250Pa・sであった。
このペレットを80℃の温度で8時間真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率は600ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金から紡出した。吐出後の繊維糸条は口金から10mmの間、口金よりやや大きい開口径を有する断熱効果を持つ筒状の紡糸筒(以下、保温筒と記載する)を用いて保温した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後、ワインダーで巻き取った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。
得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。この繊維を用いて幅約10cmの筒編みを作製し、70℃×20minの精練の後、130℃×2minの中間セットを行った。これらの工程中に、糸のほつれや穴あきは認められず、工程通過性は良好であった。
染色は下記の条件で行い、染色後、60℃×20minの還元洗浄を行い、水洗・乾燥した。
・染料 Kayalon Polyester Blue EBL−E
・染料濃度 1.0%owf 、 浴比 1:30
・染色温度 120℃ 、 染色時間 60min
得られた布帛は、美しい青色を呈していた。また、力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。なお、紡糸後の単繊維繊度と染色後の単繊維繊度が異なっているが、これは精練、染色中に可塑剤が溶出したことによる繊度減少と繊維の収縮による繊度増加の両者の寄与によって繊度が変化するためである。
染色後繊維の重量減少率Rw、染色後のセルロース脂肪酸エステルの分率Rc、染色後のPSGPB共重合体分率Rpも表1に併せて示す。Rc、Rpがこの分率であることで染色後でも高い力学特性とセルロースの優れた風合いを発現できる。
実施例2
合成例2で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%とポリスチレン・部分エポキシ化ブタジエン(PSGPB)共重合体(ダイセル化学工業株式会社製「エポフレンド(登録商標)AT501」スチレン含量40重量%、オキシラン酸素濃度1.5重量%、260℃、120s−1での溶融粘度230Pa・s)5.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、実施例1と同様の手法で混練し、セルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は210Pa・sであった。
このペレットを、紡糸温度250℃、引取速度1500m/minとすること以外は、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
この繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、染色を行った。工程途中でのほつれ、穴あきは発生せず、得られた布帛は美しい青色を呈していた。また力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
染色後繊維の重量減少率Rw、染色後のセルロース脂肪酸エステルの分率Rc、染色後のPSGPB共重合体分率Rpも表1に併せて示す。Rc、Rpがこの分率であることで染色後でも高い力学特性とセルロースの優れた風合いを発現できる。
比較例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート82.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%、さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、実施例1と同様の方法で混練し、セルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は190Pa・sであった。
このペレットを、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。この繊維を用いて、実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、染色を行った。しかしながら、染色後の布帛には穴が空いており、得られた布帛はやや白っぽい青色であった。また、この布帛の力学特性を表1に示すが、強伸度は大きく低下しており、布帛を手で引っ張ると、すぐに裂けてしまう状態であった。なお、紡糸後の単繊維繊度と染色後の単繊維繊度が異なっているが、比較例1については精練、染色中での可塑剤の溶出に対応する繊度減少のみが見られている。
比較例2
合成例2で製造したセルロースアセテートプロピオネート81.2重量%とアルキルグリシジルエーテル(AGE:ナガセ化成社製「デナコール(登録商標)EX−192」、分子量256、260℃、120s−1での溶融粘度測定不能)1.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.7重量%さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、実施例1と同様の手法で混練し、セルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は130Pa・sであった。
このペレットを紡糸温度250℃とすること以外は、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表1に示すが、比較的良好な強伸度を有していた。
この繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、染色を行った。しかしながら、染色後の布帛には穴が空いており、得られた布帛はやや白っぽい青色であった。また、この布帛の力学特性を表1に示すが、強伸度は大きく低下しており布帛を手で引っ張るとすぐに裂けてしまう状態であった。このようにエポキシ基を含有する添加剤を用いても添加剤が低分子では高温染色後の強伸度改善効果は見られなかった。
比較例3
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%とポリスチレン・ブタジエン(PSB)共重合体(JSR株式会社製TR2000)5.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、実施例1と同様の手法で混練し、セルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は210Pa・sであった。
このペレットを、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行ったが、製糸性にやや難があり、糸切れ(単糸切れ)が発生した。得られた繊維の物性を表1に示すが、強伸度がやや低かった。
この繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、染色を行った。しかしながら、筒編みの際にも糸が数度切れ、さらに染色後の布帛には穴が空いており、得られた布帛はやや白っぽい青色であった。また、この布帛の力学特性を表1に示すが、強伸度は大きく低下しており布帛を手で引っ張るとすぐに裂けてしまう状態であった。このようにポリスチレン・ブタジエン共重合ポリマーを用いてもエポキシ基を含有しなければ高温染色後の強伸度改善効果は見られなかった。
Figure 2007039647
実施例3
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート80.4重量%と実施例1で使用したポリスチレン・部分エポキシ化ブタジエン(PSGPB)共重合体2.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.5重量%さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、実施例1と同様の手法で混練し、セルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は220Pa・sであった。
このペレットを、80℃の温度で8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率は600ppm)、2軸エクストルーダーで溶融させ紡糸温度260℃にて、吐出量30.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有した口金から紡出した。吐出後の繊維糸条は口金から110mmの間、保温筒を用いて保温した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後、ワインダーにて巻き取った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表2に示すが、良好な強伸度を有していた。
この繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、染色を行った。工程途中でのほつれ、穴あきは発生せず、得られた布帛は美しい青色を呈していた。また、力学特性を表2に示すが、良好な強伸度を有していた。
染色後繊維の重量減少率Rw、染色後のセルロース脂肪酸エステルの分率Rc、染色後のPSGPB共重合体分率Rpも表2に併せて示す。Rpがこの分率であっても染色後の高い力学特性が得られる。
実施例4
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート79.5重量%と実施例1で使用したポリスチレン・部分エポキシ化ブタジエン(PSGPB)共重合体3.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.4重量%さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、実施例1と同様の手法で混練し、セルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は230Pa・sであった。
このペレットを紡糸速度を1500m/minとすること以外は実施例3と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表2に示すが、良好な強伸度を有していた。
この繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、染色を行った。工程途中でのほつれ、穴あきは発生せず、得られた布帛は美しい青色を呈していた。また力学特性を表2に示すが、良好な強伸度を有していた。
染色後繊維の重量減少率Rw、染色後のセルロース脂肪酸エステルの分率Rc、染色後のPSGPB共重合体分率Rpも表2に併せて示す。Rpがこの分率であっても染色後の高い力学特性が得られる。
Figure 2007039647
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、衣料用繊維、産業用繊維および不織布などとして用いることができ、高温染色が可能であることから、特に衣料用繊維として、ポリエステルなどとの混繊、交織および交編に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜95重量%と多価アルコール系可塑剤5〜25重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物。
  2. 溶融粘度が10〜500Pa・sであることを特徴とする請求項1記載のセルロース脂肪酸エステル組成物。
  3. エポキシ基を含有するポリマーが、ポリスチレン・部分エポキシ化ポリブタジエンブロック共重合体であるであることを特徴とする請求項1または2記載のセルロース脂肪酸エステル組成物。
  4. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維であって、その単繊維繊度が0.1〜20dtexの範囲であることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維。
  5. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜95重量%と多価アルコール系可塑剤5〜25重量%とエポキシ基を含有するポリマー1〜10重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物を、溶融紡糸することを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法。
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