JP2007100260A - セルロース脂肪酸エステル組成物およびそれからなる繊維およびその製造方法 - Google Patents

セルロース脂肪酸エステル組成物およびそれからなる繊維およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、鮮明発色性を有し繊維間摩擦抵抗の低い、特にニットに代表される衣料用に適した繊維のためのセルロース脂肪酸エステル組成物、およびそれからなる繊維とその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物であり、このセルロース脂肪酸エステル組成物を溶融紡糸することにより、良好な力学特性を有する繊維を得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、優れた力学特性と鮮明発色性を有し、繊維間の摩擦抵抗が低く、特に製編に適した繊維のためのセルロース脂肪酸エステル組成物およびそれからなる繊維とその製造方法に関するものである。
セルロースエステルやセルロースエーテル等のセルロース系材料は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス系材料として、また自然環境下にて生分解可能な材料として、昨今、大きな注目を集めつつある。加えて、セルロース系材料は屈折率が低いため、それを繊維にした場合には鮮明発色性に優れるという長所も併せ持っている。
セルロース系繊維は、溶融紡糸法によって繊維化することはできないため、溶媒を使用する湿式あるいは乾式の製糸方法によって製造されているが、この溶媒には有害なものが多く環境負荷が懸念される。また、溶液紡糸では生産速度が遅く、溶媒の回収による費用増加もあるためコストが高いことも課題である。
このため環境負荷の低減および生産性向上を目的として、セルロース脂肪酸エステルを溶融紡糸して繊維を得る技術が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このようにして得られたセルロース脂肪酸エステル繊維は代表的な合成繊維であるポリエステル繊維等に比べて繊維間摩擦抵抗が高いという問題があった。
セルロース脂肪酸エステル繊維表面の摩擦抵抗を低減する方法として、すでに酸化チタン粒子を添加する技術が検討されてきた(特許文献2参照)。しかし、酸化チタン粒子に代表される一般的な粒子を添加すると、繊維が白濁するためにセルロース脂肪酸エステルの特徴である鮮明発色性が十分に発現できないという問題がある。
ニットに代表される衣料用用途においては、特にセルロース脂肪酸エステルの鮮明発色性が要求される分野であるが、繊維間の摩擦が大きいことに起因した編み地の引きつれが生じるという問題が明らかになった。これを改善するための、耐久性がよい、セルロース脂肪酸エステルの鮮明発色性を有し、繊維間摩擦抵抗の低い繊維がないというのが現状である。
特開2004−182979号公報(第1頁) 特開2004−196980号公報(第1頁)
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、鮮明発色性かつ繊維間の摩擦抵抗が低い、特にニットに代表される衣料用に適した繊維のためのセルロース脂肪酸エステル組成物、およびそれからなる繊維とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の有機化合物をセルロース脂肪酸エステルに加えることにより、セルロース脂肪酸エステルの鮮明発色性を損なわず、繊維間の摩擦抵抗を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記の構成を有するものである。
本発明の第1の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物である。
また、本発明の第2の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物からなることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維である。
また、本発明の第3の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物を溶融紡糸することを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法である。
本発明によれば、熱流動性および曳糸性に優れており、溶融紡糸による繊維化が容易であるセルロース脂肪酸エステル組成物が得られる。
また、本発明によれば、優れた発色性、耐久性を有し、繊維間の摩擦抵抗が低く、特にニット等の衣料用用途に適しているセルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維が得られる。
また、本発明によれば、セルロース脂肪酸エステル組成物からなる優れた特性を持つ繊維を、生産性が高く環境負荷が低い方法で製造することができる。
以下、本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物について詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.1〜5重量%の範囲で含有するものである。該滑剤の含有量が0.1重量%以上で、繊維としたときの繊維間の摩擦低減効果が大きく、また、その含有量が5重量%以下で、曳糸性が十分となり溶融紡糸が可能となる。セルロース脂肪酸エステル組成物における、該滑剤の組成物全体に対する含有量は、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、3重量%以下が好ましく、2重量%以下がより好ましい。
本発明で用いられる滑剤は室温(20℃)で固体であることが好ましい。室温で固体であることで、最終製品であるセルロース脂肪酸エステル繊維を使用する際に臭気の問題がなく、耐久性が向上するためである。より好ましくは滑剤が40℃で固体であることである。
本発明で用いられる滑剤は非水溶性であることが好ましい。本発明における非水溶性とは、20℃の温度の水に1重量%未満(10g/L)溶解することをいう。例えば、非水溶性の滑剤を含んでなるセルロース混合脂肪酸エステル組成物からなる繊維は、衣服等の最終製品になるまでに通過するいくつかの工程において水と接することになるが、水中で滑剤が除去されにくい。従って、非水溶性の滑剤は効率よく繊維間の摩擦係数を低減することができる。
本発明で用いられる高級脂肪酸モノカルボン酸エステルはセルロース脂肪酸エステルとのなじみ易さの点から、表面に少量ずつブリードアウトするために長期にわたり顕著な摩擦低減効果を有する。高級脂肪酸モノカルボン酸エステルの炭素数は34〜65であるのが好ましい。好ましくは40〜62である。炭素数を34以上にすることで、高級脂肪酸モノカルボン酸エステルの耐熱性が向上し、組成物の色調が良好になる。65以下にすることで、セルロース脂肪酸エステルとの相溶性が向上し、ポリマー表面の摩擦低減効果が良好に発揮される。
高級脂肪酸モノカルボン酸エステルの具体例としては、モンタン酸ヘキシルエステル、モンタン酸セリル、リグノセリン酸ヘキシルエステル、リグノセリン酸メリシル、リグノセリン酸オクタコシル、リグノセリン酸セリル、セロチン酸メリシル、セロチン酸セリル等が挙げられる。
高級脂肪酸モノカルボン酸エステルの副成分は遊離脂肪酸、遊離アルコール、炭化水素のいずれが入っていても本願の目的を達成できる。
本発明では高級脂肪酸モノカルボン酸エステルを主成分とする天然のワックス類を好ましく使用できる。天然ワックスとしては羊毛ロウ、蜜ロウ、カルナウバワックス、イボタロウ等が挙げられる。耐熱性の観点から、カルナウバワックス、イボタロウがより好ましく、カルナウバワックスがさらに好ましい。
本発明で用いられる脂肪酸アミドは脂肪酸ビスアミドとしては、アルキル置換型の脂肪酸モノアミドであることが好ましい。具体的には脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いることができるが、これらの化合物は、通常の脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時において副反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いため副反応が起こりにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことからより好ましい。
本発明でいう脂肪酸ビスアミドは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
また、本発明でいうアルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含むものとする。
本発明で用いられるシリコーン共重合体は主鎖にシリコーンを含む共重合体であり、アクリロニトリル、メタクリレート、ポリオールから選ばれる少なくとも1種以上とシリコーンの共重合体であることが好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、セルロース脂肪酸エステルを70〜99.9重量%の範囲で含有するものである。セルロース脂肪酸エステルの含有量が70重量%以上であると、セルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維が持つ鮮明発色性と吸湿性等が効果的に発現され、また99.9重量%以下であると、高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種による摩擦抵抗の低減効果が顕著に発現される。
本発明で用いられるセルロース脂肪酸エステルはアシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18のセルロース脂肪酸エステルである。アシル基の少なくとも一部を炭素数3〜18とすることにより、熱流動性が向上し滑剤との分散性が良好になるのである。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルの具体例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースブチレート等を例示することができるが、なかでもセルロースにアシル基の炭素数が2であるアセチル基と炭素数が3であるプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースにアシル基の炭素数が2であるアセチル基と炭素数が4であるブチリル基が結合したセルロースアセテートブチレートは、適度な吸湿性や良好な力学特性を有するため、本発明では特に好ましく用いられる。
セルロース脂肪酸エステルとして、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを用いる場合、セルロース脂肪酸エステルの全置換度(DSace+DSacy)は下記式(I)を満たすことが好ましい。すなわち、セルロース脂肪酸エステルの全置換度(DSace+DSacy)が2.0以上2.9以下の範囲にあれば溶融成形に必要な組成物の熱流動性が良好であるため、溶融成形時の着色を防止することができ色調が良好な繊維特性を有する繊維が得られて好ましい。セルロース脂肪酸エステルの全置換度は、より好ましくは2.5以上であり、2.8以下である。
(I)2.9≧DSace+DSacy≧2.0
セルロースエステルの耐熱性の点から、アセチル基の置換度(DSace)とアシル基の置換度(DSacy)は滑剤との混練性に優れ、かつ繊維および布帛とした場合でも熱軟化温度が高く、適度な吸湿性を有するものとなるため、下記式(II)、(III)を満たすことが好ましい。
(II)1.5≦DSace≦2.5
(III)0.5≦DSacy≦1.5
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルの重量平均分子量(Mw)は5.0万〜25.0万であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が5.0万以上の場合、溶融紡糸して得られるセルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維の機械的特性(特に強度)が高くなり好ましい。また、重量平均分子量(Mw)が25.0万以下で、溶融粘度が下がり、溶融紡糸法による安定した繊維化を行なうことができるため好ましい。良好な機械的特性と安定した溶融紡糸性の観点から、重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは6.0万〜22.0万であり、更に好ましくは8.0万〜20.0万である。重量平均分子量(Mw)とは、GPC測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、その流動性を高めることを目的に可塑剤を含んでもよい。可塑剤量は、熱流動性の制御および得られる繊維がセルロース脂肪酸エステルとしての特性を維持するという観点から組成物全体に対して5.0重量%〜30重量%の範囲であることが好ましい。また、可塑剤量は10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がより好ましい。また、可塑剤量は20重量%以下が好ましい。
可塑剤としては、セルロース脂肪酸エステルとの相溶性が良い多価アルコール系可塑剤が好ましく、グリセリン骨格を有したエステル化合物やポリアルキレングリコール、カプロラクトン系化合物等が特に好ましく用いられる。
具体的なグリセリン骨格を有したエステル化合物としては、グリセリンアセテートステアレート、グリセリンアセテートパルミテート、グリセリンアセテートラウレート、グリセリンアセテートカプレート、グリセリンアセテートオレート、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレートおよびジグリセリンテトララウレート等が挙げられるが、これらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が好ましくは200〜4000であるポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。ポリアルキレングリコールの平均分子量は400〜1000がより好ましい。
また、本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、安定した溶融紡糸を可能とするため、適度な流動性を有している必要があり、260℃、120s−1での溶融粘度が好ましくは5〜500Pa・sの範囲であり、より好ましくは10〜300Pa・sの範囲であり、さらに好ましくは50〜250Pa・sの範囲である。260℃、120s−1での溶融粘度は、毛管形レオメーターで求める値であり、実施例で詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、ホスファイト系着色防止剤を含有していることが好ましい。ホスファイト系着色防止剤を含有している場合、紡糸温度が高い範囲においても着色防止効果が非常に顕著であり、得られる繊維の色調が良好になる。
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、セルロース脂肪酸エステル組成物に対して0.005重量%〜0.5重量%の範囲であることが好ましい。配合量を0.005重量%以上とすることで加熱時のセルロース脂肪酸エステル組成物の着色を抑制することができる。
具体的なホスファイト系着色防止剤の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル−4−メチル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−t―ブチル−4−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−t−ブチル−2−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.01重量%以上であり、さらに好ましくは0.05重量%以上である。一方、ホスファイト系着色防止剤の配合量の配合量を0.5重量%以下とすることにより、セルロースエステルの分子鎖を切断し重合度を低下することによる劣化を抑制することができ、得られる繊維の機械的特性が良好となる。ホスファイト系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.3重量%以下であり、さらに好ましくは0.2重量%以下である。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は、上述した成分以外にも、アシル基が異なる脂肪酸エステルを含む他の樹脂や、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、酸化防止剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤等酸化防止剤、および難燃剤の添加剤を含んでいても構わない。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物は繊維、フィルム、樹脂用途等の表面の摩擦係数が低いセルロース脂肪酸エステル組成物を求められる用途にいずれも好適に用いることができる。特に繊維用途ではセルロース脂肪酸エステル組成物の鮮明発色性が要求されるため、適している。
次に、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維について説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種の滑剤0.1〜5重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物からなるものである。本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、このようなセルロース脂肪酸エステル組成物を用いることで、優れた力学特性と発色性を維持しながら繊維間の摩擦抵抗の低い繊維を得ることができる。セルロース脂肪酸エステルおよび高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体の詳細は前述した組成物と同じである。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、可塑剤を5.0重量%〜25.0重量%含んでいても構わない。可塑剤としては、前述した多価アルコール系可塑剤が好ましい。また、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、前述したホスファイト系着色防止剤を含んでいても構わず、発明の主旨を損ねない範囲でその他の樹脂や添加剤を含んでいても構わない。
セルロース脂肪酸エステル繊維の単繊維繊度は、0.1〜20dtexであり、単繊維繊度がこの範囲であれば、染色により鮮明で深みのある発色性が得られ、かつ繊維としてのソフト感にも優れている。本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、この単繊維繊度であれば、モノフィラメントでもマルチフィラメントでも良く、また、長繊維以外に短繊維(ステープル)でも構わない。
また、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形および中空等の異形断面糸でも良い。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の物性は、特に限定されるものではないが、高次加工での工程通過性等の観点から、強度が0.5〜2.0cN/dtexであり、伸度が10〜60%であることが好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、一般の繊維と同様に延伸や仮撚等の加工が可能である。また、製織や製編についても、一般の繊維と同等に扱うことができる。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維について、染色方法は特に制限されず、チーズ染色、液流染色およびドラム染色等の手法を採用することができる。染料はアセテート用およびポリエステル用分散染料を好適に用いることができる。染色温度も特に限定されないが80〜140℃の温度であれば、発色性と力学特性に優れた繊維または布帛を得ることができる。
次に、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法について説明する。
ポリマーとしてはアシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種の滑剤0.1〜5重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物が用いられる。これらの成分は、例えば、2軸混練機等を用いて、溶融紡糸を行う前に混練しても構わないし、溶融紡糸を行う際にスタティックミキサー等を用いて混合しても構わない。セルロース脂肪酸エステルおよび高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体の詳細は、前述した本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物と同じである。
また、このセルロース脂肪酸エステル組成物は、流動性を高める観点から可塑剤を組成物全体に対して5.0重量%〜25.0重量%含むことが好ましい。可塑剤としては、前述した多価アルコール系可塑剤が好ましい。また、このセルロース脂肪酸エステル組成物は、前述したホスファイト系着色防止剤を含んでいても構わず、発明の主旨を損ねない範囲でその他の樹脂や添加剤を含んでいても構わない。
本発明では、溶融紡糸を行う前に、このセルロース脂肪酸エステル組成物を乾燥させ、組成物の含水分率を0.3%以下としておこくことが好ましい。含水分率が0.3%以下である場合、溶融紡糸時、水分により発泡することもなく、安定して紡糸を行うことができ、得られるマルチフィラメント等の繊維の機械的特性も良好となる。含水分率は、より好ましくは0.2%以下であり、更に好ましくは0.1%以下であり、最も好ましくは0.08%以下である。
本発明では、このセルロース脂肪酸エステル組成物を、溶融紡糸して繊維を得ることができる。溶融紡糸を行うことにより、セルロース脂肪酸エステル組成物の溶融状態から冷却固化に至るまでに十分に発達した繊維構造を形成させることが可能となり、加えて環境負荷が小さく、生産性にも優れる。溶融紡糸の方法としては、例えば、エクストルーダーを用いた押出等を好適な手段として採用することができる。
溶融紡糸における紡糸温度は220℃〜280℃の範囲であることが好ましい。紡糸温度を220℃以上とすることにより、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため、メルトフラクチャー(紡糸口金孔通過時においてポリマーの剪断応力が高いと流線乱れが発生し、紡糸口金より吐出された糸条の形状が不規則になる現象)起因の短ピッチの周期斑が現れず、均一な繊維を得ることができる。更には紡糸口金より吐出された繊維糸条の細化過程がスムーズになるため、繊維特性が良好となり、また紡糸張力が過度に高くならないため糸切れが多発せず、製糸性が安定する。また、紡糸温度を280℃以下とすることにより、セルロース脂肪酸エステル組成物の熱分解を抑制することができるため、得られる繊維の分子量低下による機械的特性不良や着色による品位悪化が発生しない。紡糸温度は、より好ましくは230℃〜270℃であり、更により好ましくは240℃〜260℃である。
紡糸された繊維の引取方法は、特に制限されるものではなく、回転するローラーを用いて引き取っても良いし、ネット等で捕集しても構わない。ローラーを用いて引き取る場合の紡糸速度は500m/min〜3000m/minであることが好ましい。紡糸速度を500m/min〜3000m/minとすることにより、発達した繊維構造を形成することが可能となり、繊維特性に優れた繊維を得ることができる。紡糸速度は、より好ましくは1000m/min〜2500m/minである。また、繊維を引き取った後に連続して延伸を施し、巻き取っても構わない。
本発明によって得られるセルロース脂肪酸エステル繊維の物性は、特に限定されるものではないが、高次加工での工程通過性等の観点から、強度が0.5〜2.0cN/dtexであり、伸度が10〜60%であることが好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法に関して最も好適な例は、アセチル基の平均置換度が1.8〜2.4であり、プロピオニル基の平均置換度が0.5〜0.8であり、重量平均分子量が8万〜20万のセルロースアセテートプロピオネート70〜85重量%、平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール10〜25重量%、高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種の滑剤0.1〜5重量%およびホスファイト系着色防止剤0.05〜0.2重量%を2軸エクストルーダーにより200〜240℃の温度で溶融混練し、ペレット化した後、乾燥し、エクストルーダータイプの紡糸機によって、紡糸温度240〜260℃、引取速度1000〜2500m/minで溶融紡糸を行い、油剤を付着させた後巻き取ってパッケージとなし繊維とすることである。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は衣料用繊維、産業用繊維および不織布等として用いることができ、特に、鮮明発色性かつ繊維間の摩擦抵抗が低い繊維を必要とする衣料用用途に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。実施例中の各特性値は、次の方法で求めたものである。
(A)GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロース脂肪酸エステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。このGPC測定用試料を用い、下記の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。なお測定回数は3回であり、その平均値をMwとした
・カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
・検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
・移動層溶媒:テトラヒドロフラン
・流速 :1.0mL/分
・注入量 :200μL。
(B)260℃、120s−1での溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、L=40mm、D=1mmのダイにて、温度260℃、120s−1(ヘッドスピード10mm/min)で測定した値(Pa・s)をそのまま用いた。なお、樹脂は測定前に80℃の温度にて8hrの減圧乾燥を行い、測定時には熱劣化の影響を避けるため樹脂の充填開始後10min以内に測定を行った。
(C)メルトフローレート
ASTM D1238に基づき、260℃、荷重2.16kgの条件で算出した。
(D)単繊維繊度
長さ100mのかせを作り、重量を測定し100倍することでマルチフィラメントのトータル繊度を測定し、これを単繊維数で除して単繊維繊度を求めた。
(E)強伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除した値を強度(cN/dtex)とした。またそのときの伸度を伸度(%)とした。なお測定回数は5回であり、その平均値を強度と伸度とした。
(F)筒編み作成
評価すべきフィラメントを27ゲージの靴下編機[小池機械製作所(株)製]により筒編地を編成した。
(G)精練方法
評価すべき筒編地を攪拌しながら70℃湯浴中で20分間煮沸し、続いて水洗、乾燥を行った。
(H)静摩擦係数
精練した筒編地を解除した糸を用いて、油剤を除去した状態の糸の摩擦係数を測定した。糸を歪計1に通し、ローラ3に通した後撚りを2回かけ歪計2に送り糸速0.025m/minの速度で走行させた。このとき、入張力(T1)、引取側張力(T2)の最大点を10点取り、次式によって摩擦係数を測定した。この10点の平均値を静摩擦係数とした。
μ=log(T2/T1)×0.47133
静摩擦係数が0.11未満を◎、0.11〜0.15を○、0.15〜0.16を△、0.16より大きい時には×とした。◎、○は摩擦低減効果が顕著であり、△は問題のないレベルである。
(I)染色性評価
精練した筒編地を用いて染色は下記の条件で行い、染色後、60℃×20minの還元洗浄を行い、水洗・乾燥した。
・染料 Kayalon Polyester Blue EBL−E
・染料濃度 1.0%owf 、 浴比 1:30
・染色温度 80℃ 、 染色時間 60min
染色性の判断はブランク(比較例1)と鮮明性が同等以上であるものを○、鮮明性が劣るものを問題があるとして×とした。
[合成例1]
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ、相対粘度13.8)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃の温度で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、温度が40℃を超えるときは、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃の温度で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃の温度で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0と0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
[合成例2]
セルロースとして相対粘度7.5のものを用い、最終の加熱攪拌を1.5時間行うこと以外は合成例1と同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は8.2万であった。
実施例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート81.2重量%とセラリカ野田製「“精製カルナウバワックスNo.1”(酸価2.9)」1.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.7重量%さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーにて230℃の温度で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は255Pa・sであった。
このペレットを80℃の温度で8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率は600ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。
得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。この繊維を用いて幅約10cmの筒編みを作製し、精練を行った。続いて、油剤を除去した繊維の静摩擦係数の測定を行ったところ、摩擦係数が十分低いことがわかった。これらの工程中に糸のほつれや穴あきは認められず、工程通過性は良好であった。染色を行い、得られた布帛は深い青色を呈していた。また、力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
実施例2、3、4、5
滑剤として、エチレンビスステアリン酸アミド2.0wt%を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法でセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は255Pa・sであった(実施例2)。
滑剤として、日本油脂社製「“モディパー”(登録商標)FS700」(メタクリル酸共重合シリコーン)を5.0wt%用いたこと以外は、実施例1と同様の手法でセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は260Pa・sであった(実施例3)。
滑剤として、日本ユニコーン社製「F2−241−01」(エポキシ化シリコーン)を1.0wt%用いたこと以外は、実施例1と同様の手法でセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は250Pa・sであった(実施例4)。
滑剤として、セラリカ野田製「“精製カルナウバワックスNo.1”(酸価2.9)」を2.0wt%用いたこと以外は、実施例1と同様の手法でセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は250Pa・sであった(実施例5)。
これらの各ペレットを用いて、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
これらの繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、精練、静摩擦係数測定、染色を行った。工程途中でのほつれ、穴あきは発生せず、得られた布帛は深い青色を呈していた。また、力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
実施例6
合成例2で製造したセルロースアセテートプロピオネートを用いたこと以外は、実施例1と同様の組成および手法でセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は40Pa・sであった。
これらの各ペレットを用い、紡糸温度を250℃としたこと以外は、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
これらの繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、精練、静摩擦係数測定、染色を行った。工程途中でのほつれ、穴あきは発生せず、得られた布帛は深い青色を呈していた。また、力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
比較例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート82.0重量%および平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%さらにホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を実施例1と同様の方法で混練し、セルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は260Pa・sであった。
このペレットを用いて、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
これらの繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、精練、静摩擦係数測定、染色を行った。静摩擦係数が高いことがわかった。工程途中でのほつれ、穴あきは発生せず、得られた布帛は深い青色を呈していた。また、力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
比較例2
滑剤としてタルクを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法でセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。このペレットの260℃、120s−1での溶融粘度は265Pa・sであった。
このペレットを用いて、実施例1と同様の手法で溶融紡糸を行った。製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。得られた繊維の物性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
この繊維を用いて実施例1と同様の手法で筒編みを作製し、精練、静摩擦係数測定、染色を行った。静摩擦係数は十分に低いが、得られた布帛はやや白っぽい青色であった。また、力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
Figure 2007100260
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、衣料用繊維、産業用繊維および不織布等として用いることができ、セルロース脂肪酸エステル繊維の特徴である鮮明性を失わずに繊維間摩擦係数を低減した繊維を提供可能であることから特にニットに代表される衣料用繊維として好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種の滑剤0.1〜5重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物。
  2. 滑剤が室温で固体であることを特徴とする請求項1記載のセルロース脂肪酸エステル組成物。
  3. 可塑剤を2〜30重量%を少なくとも含んでなることを特徴とする請求項1または2記載のセルロース脂肪酸エステル組成物。
  4. 260℃、120s−1での溶融粘度が5〜500Pa・sの範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のセルロース脂肪酸エステル組成物。
  5. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種の滑剤0.1〜5重量%とを少なくとも含むことを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物からなるセルロース脂肪酸エステル繊維。
  6. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル70〜99.9重量%と高級脂肪酸モノカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン共重合体から選ばれる少なくとも1種の滑剤0.1〜5重量%とを少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物を溶融紡糸することを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法。
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