JP2008291388A - セルロースエステル系混繊糸及び製造方法及び繊維構造体 - Google Patents

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瑛久 佐藤
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Abstract

【課題】本発明の課題は、セルロースエステル由来のドライ感、清涼感、セルロース由来の吸湿・吸水性を有する独特かつソフトな風合いを有し、特に異色染めを行った時に杢調、メランジ調もしくは玉虫調の高い審美性を有することができる繊維構造物に適した混繊糸を提供することにある。
【解決手段】
セルロースエステル系繊維(A)、(B)からなる混繊糸であって、該繊維(A)および(B)の双方が、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロースエステルからなる芯部とセルロースからなる鞘部より構成されてなる芯鞘複合構造を有しており、該繊維(A)の鞘部の割合a(%)が繊維(B)の鞘部の割合b(%)より大きいことを特徴とするセルロースエステル系混繊糸及びその製造方法によって解決できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステル由来のドライ感、清涼感、セルロース由来の吸湿・吸水性を有する独特かつソフト感のある風合い及び高い審美性を有する繊維構造物に適したセルロースエステル系混繊糸に関するものである。
異なる性質を有する繊維を混繊することで、単一の繊維のみでは得られない性質を発揮させることが可能となる。ポリエステル繊維では、アルカリ染料で染色可能な変性ポリエステル繊維と分散染料で染色可能な未変性ポリエステル繊維から構成させる繊維布帛を異色染めすることで、同一のポリエステル繊維のみで構成された布帛の後染めでは得られない多様な色相の染色ポリエステル繊維布帛を得ることができることが提案されている(特許文献1参照)。
セルロースエステルなどのセルロース系材料は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス系材料として、また自然環境下にて生分解可能な材料として、昨今、大きな注目を集めつつある。このセルロースエステルの一つであるセルロース脂肪酸エステルに着目し、低環境負荷である溶融紡糸によって繊維を得る技術が提案されている(特許文献2参照)。セルロース系材料は屈折率が低いため、それを繊維にした場合には鮮明発色性に優れるという長所も併せ持っている。溶液紡糸で繊維化が行われるセルロースアセテート(炭素数3〜18のアシル基を持たない)では、金属スルホネート基含有二塩基脂肪酸エステルを含有させることで、カチオン可染セルロースアセテート繊維を得る技術が提案されている(特許文献3)が、本発明者らの知見によると溶融紡糸時の加熱で顕著な着色を引き起こすため、金属スルホネート基含有二塩基脂肪酸エステルを上述のセルロース脂肪酸エステルに適用し、カチオン可染性を発現させることができず、該セルロースエステルには分散染料による染色方法しかない。そのため、該セルロースエステル繊維を用いて、杢調、メランジ調もしくは玉虫調等に異色染めされてなる審美性の高い布帛を得ることが困難であった。
セルロースエステルを変性する方法として、セルロースエステルの鹸化によりセルロースに変換する方法が知られている。セルロースエステルである芯部とセルロースである鞘部からなる芯鞘複合構造を有するセルロースエステル系繊維が提案されている。該公報には異色染めに関する記載はないが、該公報中の芯鞘複合構造を有するセルロースエステル系繊維の単独糸を用いて異色染めを行っても、全ての糸が同一の染色性を示すため、杢調、メランジ調もしくは玉虫調を有する布帛は得られない(特許文献4参照)。また、芯鞘複合構造を有するセルロースエステル系繊維とポリエステルからなる混繊糸が提案されている。該公報中に分散染料染色1段のみで染色するとの記載があり異色染めに関する記載はない。異色染めを行ったとしても、鞘であるセルロースの厚みは分散染料の染着を阻害しない程薄いため、反応染料で染色可能なセルロース部分が分散染料で染色可能なセルロースエステル及びポリエステルに比べて圧倒的に少ないため糸条や布帛の組織の表現が制限され、汎用性に欠ける。さらには、ポリエステルの屈折率は高いため鮮明発色性を得ることが困難である(特許文献5参照)。
外側がセルローストリアセテート、中間部がセルロースからなる3層張り合わせ構造をしたセルロースエステル系繊維を乾式紡糸によって得る技術が提案されている(特許文献6参照)。該公報中には異色染めに関する記載がないが、乾式紡糸による繊維化では3層の厚みを均一に制御することが難しいため、該繊維を用いて異色染めを行ってもいらつきが生じるという問題がある。
すなわち、既存のセルロースエステル系繊維では、異色染めに適した繊維がないというのが現状である。
特開平7−54280号公報(第1頁) 特開2004−182979号公報(第1頁) 特開2000−45123号公報(第1頁) 特開2004−183108号公報(第1頁) 特開2004−197275号公報(第7頁) 特開2001−55629号公報(第4頁)
本発明の課題は、上記の従来技術の問題点を解決し、セルロースエステル由来のドライ感、清涼感、セルロース由来の吸湿・吸水性を有する独特かつソフトな風合いを有し、特に異色染めを行った時に杢調、メランジ調もしくは玉虫調の高い審美性を有することができる繊維構造物に適した混繊糸及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、次の構成を有するものである。
本発明の第1の発明は、セルロースエステル系繊維(A)、(B)からなる混繊糸であって、該繊維(A)および(B)の双方が、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロースエステルからなる芯部とセルロースからなる鞘部より構成されてなる芯鞘複合構造を有しており、該繊維(A)の鞘部の割合a(%)が繊維(B)の鞘部の割合b(%)より大きいことを特徴とするセルロースエステル系混繊糸である。
本発明の第2の発明は、該混繊糸からなる繊維構造体である。
本発明の第3の発明は特定の置換度を有することでアルカリ処理した際の鹸化のされやすさの異なるセルロースエステル(A’)、(B’)をそれぞれ主成分とする繊維からなる混繊糸をアルカリで処理することにより鹸化することを特徴とするセルロースエステル系混繊糸の製造方法である。
本発明によれば、従来のセルロースエステル系繊維よりも、セルロースエステル及びセルロース部分からなる芯鞘比率を高度に制御した混繊糸を得ることができる。セルロースエステル及びセルロース部分を異なる色相の染料で染色することで、該混繊糸で構成される繊維構造物は、単独のセルロースエステル系繊維のみからなる繊維構造物を染色したのでは得られない多様な色相を有し、杢調、メランジ調もしくは玉虫調などの優れた審美性を持つ繊維構造物を得ることができる。また、セルロースエステル及びセルロース由来の優れた風合いを有し、特に衣料用途に好適に用いることができる。
以下、本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)からなる混繊糸について詳細に説明する。
本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)はいずれもアシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロースエステル(A’)、(B’)からなる芯部とセルロースからなる鞘部より構成されてなる芯鞘複合構造を有している。芯部がセルロースエステルであることで、ドライ感、高発色性が発現し、鞘部がセルロースであることで吸湿、吸水性が向上し、ソフトな風合いが生じる。また、芯は分散染料、鞘は反応染料と異なる種類の染料を用いて染色することが可能なため、芯または鞘のみを選択的に染色が可能であること、芯と鞘に異なる色相の染料を導入することができる。異色染めを行った時には、繊維に発現する色相は異なる染料が導入された芯と鞘の比率によって、制御することが可能となる。なお、芯と鞘のそれぞれに異なる色相の染料を導入した異色染めは、芯あるいは鞘に複数の染料を導入した染色と異なり鮮明性を向上させることができる。
セルロースエステル系繊維(A)の鞘部の割合a(%)はセルロースエステル系繊維(B)の鞘部の割合b(%)より大きい。鞘部の割合とは、本発明の芯鞘複合構造を有するセルロースエステル系繊維の鞘成分を構成するセルロースの繊維断面積における面積割合(%)を示す。鞘部の割合は、芯鞘複合構造を有する本発明のセルロース系繊維を分散染料あるいは反応染料を用いて、セルロースエステルからなる芯部あるいはセルロースからなる鞘部のいずれかを染色した後、繊維断面を光学顕微鏡等で拡大することで容易に確認することができる。マルチフィラメントの場合には、それを構成している全ての単糸がa、b(%)を満たしていることが好ましい。セルロースエステル系繊維(A)の鞘部の割合a(%)は50%以上100%未満であることが好ましい。a(%)が50%以上であることで、セルロースエステル系繊維(A)はセルロースエステル系繊維(B)と異なる発色性を示すことが可能となり、セルロースエステル系混繊糸からなる繊維構造物の審美性が向上すると同時にソフトな風合いを発現する。a(%)が100%未満であることで、セルロースエステル系繊維(A)の中に反応染料及び分散染料の双方を導入することができるため特異な発色性を得ることができる。a(%)が65%以上90%未満であることがより好ましい。また、セルロースエステル系繊維(B)の鞘部の割合b(%)は1%以上50%未満であることが好ましい。b(%)が1%以上であることで、セルロースエステル系繊維(B)の中に反応染料及び分散染料の双方を導入することができるため発色性が向上すると共に、セルロースエステル系繊維(B)の繊維表面がセルロースであるため耐熱性が向上するからである。b(%)が50%未満であることで、セルロースエステル系繊維(B)はセルロースエステル系繊維(A)と異なる発色性を示すことが可能となり好ましい。より好ましくはb(%)が5%以上40%未満であり、さらに好ましくは10%以上30%未満である。
本発明におけるアシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロースエステルとは、セルロースの水酸基の一部、または全てがエステル結合で封鎖されているものが挙げられ、特に封鎖しているアシル基の少なくとも一部が、炭素数3〜18のアシル基(炭素数にはカルボニル炭素も含む)であるものをいう。したがって、一部に炭素数2のアセチル基であっても、その他に炭素数3以上のアシル基に置換されている部分があれば、これに含まれる。セルロースエステル系繊維(A)、(B)の芯部を構成するセルロースエステル(A’)、(B’)の置換度、セルロースエステルの種類は任意に選択できる。セルロースエステル(A’)、(B’)で異なる置換度またはセルロースエステルの種類をとることによって、セルロースエステル(A’)、(B’)を主成分とする繊維からなる混繊糸あるいは繊維構造物をアルカリ処理した時に容易に異なる芯鞘比率を有するセルロースエステル系繊維(A)(B)を得ることができるため、異色染めをした際に杢調、メランジ調、玉虫調を効果的に発現できるため好ましい。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロースエステルの具体例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースブチレートなどを例示することができるが、なかでもセルロースにアシル基炭素数が2であるアセチル基とアシル基炭素数が3であるプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネート、およびセルロースにアシル基炭素数が2であるアセチル基とアシル基炭素数が4であるブチリル基が結合したセルロースアセテートブチレートを用いた場合には、繊維が適度な吸湿性や良好な力学特性を有するため、本発明では好ましく用いられる。
セルロースエステルとして、炭素数2のアセチル基と炭素数が3〜18であるアシル基で置換されたセルロースエステルを用いた場合、セルロースエステルの全置換度(DSace(アセチル基の置換度)+DSacy(炭素数が3〜18であるアシル基の置換度))は2.5以上3.0以下であることが好ましい。全置換度が2.5以上3.0以下の場合には熱流動性が良好であるため良好な力学特性を有する繊維が得られるため好ましい。セルロースエステルの全置換度は、適度な吸湿性、繊維物性の点からより好ましくは2.6以上2.9以下である。
アルカリ処理した時のセルロースエステルとセルロースからなる芯鞘比率を高度に制御するため、セルロースエステル系繊維(A)のセルロースエステル(A’)はアセチル基の置換度(DSace)がアシル基の置換度(DSacy)より大きい方が好ましく、下記式(I)、(II)を満たすことがより好ましい。
(I)1.5<アセチル基の置換度(DSace)<2.5
(II)0.5<アシル基の置換度(DSacy)<1.0
また、セルロースエステル系繊維(B)のセルロースエステル(B’)はアセチル基の置換度(DSace)がアシル基の置換度(DSary)より小さい方が好ましく、下記式(III)、(IV)を満たすことがより好ましい。
(III)0<アセチル基の置換度(DSace)<1.0
(IV)2.0<アシル基の置換度(DSacy)<3.0
本発明におけるセルロースエステル(A’)、(B’)の重量平均分子量(Mw)はそれぞれが5万〜25万であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が5万以上の場合、セルロースエステル繊維の強度が高くなるため好ましい。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは6万以上であり、更に好ましくは8万以上である。重量平均分子量(Mw)が25万以下の場合、柔軟な繊維が得られるため好ましい。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは22万以下であり、更に好ましくは20万以下である。
本発明においてセルロースエステル系繊維(A)、(B)には可塑剤を含むことができる。セルロースエステル系繊維の繊維化の方法としては特に限定されるものではないが、現行のセルロースアセテートで採用されている乾式紡糸法やレーヨンなどの湿式紡糸法に比べ、本発明で対象となるセルロースエステルはその熱流動性を利用して溶融紡糸法によって製造されることが、製糸効率及び製造時に有害な薬剤を使用しなくて良いという製糸環境の面からも望ましい要件である。溶融紡糸法を適用するにあたっては、セルロースエステル系繊維(A)、(B)の中に可塑剤を含有することで流動性が良好になり力学特性の優れた繊維を得ることができるため好ましい。可塑剤とはセルロースエステルに分子レベルで相溶するものをいう。可塑剤については、公知の可塑剤を適宜用いることができるが、セルロースエステルとの相溶性が良い多価アルコール系可塑剤が好ましく、グリセリン骨格を有したエステル化合物やポリアルキレングリコール、カプロラクトン系化合物などが特に好ましく用いられるが特に限定はされない。
具体的なグリセリン骨格を有したエステル化合物としては、グリセリンアセテートステアレート、グリセリンアセテートパルミテート、グリセリンアセテートラウレート、グリセリンアセテートカプレート、グリセリンアセテートオレート、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレートおよびジグリセリンテトララウレートなどが挙げられる。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
これらの可塑剤を単独もしくは併用して使用することができる。また、セルロースエステル系繊維(A)、(B)では異なる可塑剤を選択することができる。
これらの可塑剤は、溶融紡糸にあたって揮発しにくいことが重要であり、分子量が200以上であることが好ましい。しかし、分子量が高すぎる場合には可塑化効率が低下し、またセルロースエステルとの相溶性が不良となる場合があるので4000未満であることが好ましい。可塑剤の分子量は、より好ましくは300〜2000であり、最も好ましくは400〜1000である。
可塑剤量は、得られるセルロースエステル系繊維(A)、(B)がセルロースエステルとしての特性を維持するという観点から、セルロースエステルと可塑剤からなる組成物全体に対して5〜25重量%の範囲であることが好ましい。可塑剤量は10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上が更に好ましい。また、可塑剤量は20重量%以下であることが好ましい。
本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)は、ホスファイト系着色防止剤を含有することができる。ホスファイト系着色防止剤を含有している場合、着色防止効果が非常に顕著であり、得られる繊維の色調が良好になるためである。ホスファイト系着色防止剤の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル−4−メチル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−t―ブチル−4−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−t−ブチル−2−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、セルロースエステル系繊維に対して0.005〜0.5重量%の範囲であることが好ましい。配合量を0.005重量%以上とすることでセルロースエステル繊維の着色を抑制することができる。ホスファイト系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.01重量%以上であり、更に好ましくは0.05重量%以上である。一方、ホスファイト系着色防止剤の配合量を0.5重量%以下とすることでセルロースエステル繊維の劣化を抑制することができ、繊維特性が良好となる。ホスファイト系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.3重量%以下であり、更に好ましくは0.2重量%以下である。
本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)は、上述した成分以外にも、アシル基が異なる脂肪酸エステルを含む他の樹脂や、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、酸化防止剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤等酸化防止剤、難燃剤および滑剤等の添加剤を含んでいても構わない。
本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)のセルロースからなる鞘部及びセルロースエステルからなる芯部はいずれかが染色されている片染め、異なる色相を有する反応染料あるいは分散染料により染色されている異色染めがされていることが好ましい。特に、異なる色相の反応染料と分散染料を用いることで、繊維の内層と外層、セルロースエステル系繊維(A)、(B)の間で異なる発色性を出すことができるため好ましく、セルロースエステル系混繊糸を用いた繊維構造物は優れた審美性を有することが可能となる。
本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)の単繊維繊度は、それぞれが0.5〜20dtexであることが好ましい。単繊維繊度が0.5dtex以上であれば、染色により鮮明で深みのある発色性を得ることができる。単繊維繊度は1dtex以上であることがより好ましく、1.3dtex以上であることが更に好ましい。一方、単繊維繊度が20dtex以下であれば、柔軟性を得ることができる。単繊維繊度は15dtex以下であることが好ましく、10dtex以下であることがより好ましく、5dtex以下であることがさらに好ましい。セルロースエステル繊維は、上記の単繊維繊度であれば、モノフィラメントでもマルチフィラメントでも良く、また、長繊維以外に短繊維(ステープル)でも構わない。
本発明における芯鞘型複合構造の芯部および鞘部の形状は、鞘部が繊維表面を完全に覆っており、芯部が繊維表面に露出していないことが好ましい。セルロースエステル系繊維(A)、(B)の断面形状はそれぞれが丸断面、多角断面、多葉断面、その他公知の断面形状のいずれでもよい。また、通常のフラットヤーン以外に仮撚加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸、混繊糸等のフィラメントヤーンであっても良く、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であっても良い。
本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)の繊維物性は、特に限定されるものではないが、高次加工での工程通過性などの観点から、それぞれが強度0.5〜2.0cN/dtex、伸度8〜50%であることが好ましい。伸度が8%以上であれば、製織や製編時など高次加工工程において毛羽や糸切れの発生が少なくなる。伸度は10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。一方、伸度が50%以下であれば、繊維構造物に用いた場合の大きさの変化が小さくなる。伸度は40%以下であることがより好ましく、35%以下であることが更に好ましい。
本発明におけるセルロースエステル系混繊糸中におけるセルロースエステル系繊維(A)とセルロースエステル系繊維(B)の比率は、任意に決定することができる。例えば、セルロースエステル系繊維(A)とセルロースエステル系繊維(B)の比率が、10:90〜30:70であれば、疎水性が高くドライな風合いの繊維が得られる。逆に70:30〜90:10であれば、吸湿性の高い繊維が得られる。30:70〜70:30の領域では色調のバランスが高い。
本発明のセルロースエステル系混繊糸の物性は、特に限定されるものではないが、高次加工での工程通過性などの観点から、強度が0.5〜2.0cN/dtex、伸度が8〜50%であることが好ましい。セルロースエステル系混繊糸の伸度が8%以上であれば、製織や製編時など高次加工工程において毛羽や糸切れの発生が少なくなる。セルロースエステル系混繊糸の伸度は9%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。一方、伸度が40%以下であれば、布帛の大きさの変化が小さくなる。セルロースエステル系混繊糸の伸度は35%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。
本発明のセルロースエステル系混繊糸の全繊度は、60〜400dtexであることが好ましい。全繊度が、60dtex以上であれば、強力が向上し加工がしやすくなる。全繊度は、好ましくは70dtex以上であり、更に好ましくは100dtex以上である。一方、全繊度が400dtex以下であれば、柔軟性を損なうことがないため好ましい。全繊度は、好ましくは350dtex以下であり、更に好ましくは300dtex以下である。
本発明のセルロースエステル系混繊糸は、一般の繊維と同様に延伸や仮撚などの加工が可能である。また、製織や製編についても、一般の繊維と同等に扱うことができる。
また、セルロースエステル系混繊糸はセルロースエステル系繊維(A)、(B)の他に、用途に応じて、一部、ナイロンやポリエステル、綿、アクリルなどの素材を任意に複合しても良い。
また、本発明のセルロースエステル系混繊糸は織編物や不織布などの繊維構造物にすることが好ましい。繊維構造物は織編機、織編組織、不織布形態などについては特に制約することはなく、公知の形態にすることができる。繊維構造物の表面にセルロースエステル系繊維(A)、(B)が共に現れてなることが好ましい。
次に、本発明のセルロースエステル系繊維(A)、(B)からなるセルロースエステル系混繊糸の製造方法について記載する。
本発明のセルロースエステル系混繊糸は置換度がDSace>DSacyを満たすセルロースエステル(A’)を主成分とする繊維と置換度がDSace<DSacyを満たすセルロースエステル(B’)を主成分とする繊維からなる混繊糸をアルカリで処理することにより鹸化することにより製造される。
得られるセルロースエステル系繊維(A)、(B)からなるセルロースエステル系混繊糸は前述したとおりであることが好ましい。
セルロースエステル(A’)とセルロースエステル(B’)を主成分とする繊維はそれぞれセルロースエステル(A’)とセルロースエステル(B’)を主成分とする組成物を溶融紡糸することにより得ることができる。
セルロースエステル(A’)、(B’)は前述したとおりである。また、セルロースエステル(A’)、(B’)を主成分とする組成物は前述した可塑剤、ホスファイト系着色防止剤、各種添加剤を任意に添加することができる。
本発明の混繊糸を製造する方法としては、従来より知られている後混繊方式および紡糸混繊方式のいずれもが適用できる。後混繊方式としては、撚糸工程で公知の方法で製造されたセルロースエステル(A’)、(B’)をそれぞれ主成分とした繊維を供給して混繊する方法、延伸工程において該繊維を供給して混繊する方法、仮撚加工工程で該繊維を供給して混繊する方法、エアー交絡によって混繊する方法、タスラン加工によって混繊する方法、合撚や合糸、引き揃えによって混繊する方法、紡績工程において2種類のステープルを供給して紡績する混紡によって混繊する方法、交織によって混繊する方法、交編によって混繊する方法などが挙げられるがこれらに限定されない。また、紡糸混繊方式としては、複合紡糸が挙げられる。複合紡糸は複数の吐出孔を穿孔した同一の口金から複数の糸条を同時に吐出して巻き取る方法などが挙げられるが、公知の方法を採ることができる。紡糸混繊方法によって混繊する場合には、セルロースエステル(A’)を主成分とする組成物の240℃、1000sec−1における溶融粘度は90〜150Pa・sであることが好ましく、セルロースエステル(B’)を主成分とする組成物の240℃、1000sec−1における溶融粘度は90〜150Pa・sであることが得られる混繊糸の力学特性の点からも好ましい。
本発明の、セルロースエステルである芯部とセルロースからなる鞘部を有する芯鞘複合構造のセルロースエステル系繊維(A)、(B)を得るために、繊維化工程から最終製品にいたるまでのいずれかの工程においてアルカリ処理をする。アルカリ処理はセルロースエステル(A’)を主成分とする繊維及びセルロースエステル(B’)を主成分とする繊維それぞれの単独糸、あるいは該繊維の混繊糸、あるいは混繊糸からなる繊維構造物のいずれの形体に対して行ってもよい。
そのアルカリ処理方法は、特に限定されないが、アルカリ化合物を含有する水溶液を用いるものである。アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどアルカリ金属の弱酸塩等が挙げられ、単独、もしくは混合して用いても良い。水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物が望ましい。
アルカリ処理に用いる水溶液中のアルカリ化合物の濃度は、アルカリ化合物の強さ、処理温度に応じて任意に決めることができる。強アルカリのアルカリ金属水酸化物を用いた場合には、0.5重量%以上10重量%以下の濃度で用いることが好ましい。0.5重量%以上であることでアルカリ処理時間を効率良く行うことができるため生産性が向上し、10重量%以下にすることでアルカリ処理による繊維の脆化を抑制することができる。より好ましくは、1重量%以上5重量%以下である。
また、本発明のアルカリ処理においては必要に応じて、4級アンモニウム塩などの公知のアルカリ減量促進剤を併用することができる。
本発明におけるアルカリ処理は、アルカリ処理対象物の形体に応じて、通常染色加工に用いられているチーズ染色機、液流式染色機、ウインス、ジッカー、ビーム染色機の他、処理液をパッド付与した後に常圧スチーム、加圧スチーム、乾熱処理などを適宜用いることができるがこれに限定されない。
本発明では、セルロースエステル(A’)(B’)を主成分とする繊維の表面がアルカリ処理によりセルロースになり、内部がアルカリ処理でも鹸化されずセルロースエステルである芯鞘構造をとることが重要である。これによって、本発明のセルロースエステル系混繊糸あるいは該混繊糸からなる繊維構造物を分散染料及び反応染料を含有する水溶液で染色した際に鮮明な色調を発することができる。
本発明で製造されたセルロースエステル系繊維(A)の鞘部の割合a(%)はセルロースエステル系繊維(B)の鞘部の割合b(%)より大きいことが好ましい。鞘部の割合とは、本発明の芯鞘複合構造を有するセルロースエステル系繊維の鞘成分を構成するセルロースの繊維断面積における面積割合(%)を示す。鞘部の割合は、芯鞘複合構造を有する本発明のセルロース系繊維を分散染料あるいは反応染料を用いて、セルロースエステルからなる芯部あるいはセルロースからなる鞘部のいずれかを染色した後、繊維断面を光学顕微鏡等で拡大することで容易に確認することができる。マルチフィラメントの場合には、それを構成している全ての単糸がa、b(%)を満たしていることが好ましい。セルロースエステル系繊維(A)の鞘部の割合a(%)は50%以上100%未満であることが好ましい。a(%)が50%以上であることで、セルロースエステル系繊維(A)はセルロースエステル系繊維(B)と異なる発色性を示すことが可能となり、セルロースエステル系混繊糸からなる繊維構造物の審美性が向上すると同時にソフトな風合いを発現する。a(%)が100%未満であることで、セルロースエステル系繊維(A)の中に反応染料及び分散染料の双方を導入することができるため特異な発色性を得ることができる。a(%)が65%以上90%未満であることがより好ましい。また、セルロースエステル系繊維(B)の鞘部の割合b(%)は1%以上50%未満であることが好ましい。b(%)が1%以上であることで、セルロースエステル系繊維(B)の中に反応染料及び分散染料の双方を導入することができるため発色性が向上すると共に、セルロースエステル系繊維(B)の繊維表面がセルロースであるため耐熱性が向上するからである。b(%)が50%未満であることで、セルロースエステル系繊維(B)はセルロースエステル系繊維(A)と異なる発色性を示すことが可能となり好ましい。より好ましくはb(%)が5%以上40%未満であり、さらに好ましくは10%以上30%未満である。
本発明のアルカリ処理によりセルロースエステルからなる芯部とセルロースからなる鞘部で構成された芯鞘複合構造を有するセルロースエステル繊維(A)、(B)、セルロースエステル系混繊糸、該混繊糸からなる繊維構造物は、任意の形体において鹸化後に分散染料及び反応染料の両方を少なくとも含有した水溶液を用いて染色することが可能である。染色方法は特に制限されず、チーズ染色、液流染色およびドラム染色などの手法を任意に採用することができる。
染料は分散染料含有水溶液、反応染料含有水溶液で2段階に分けて染色を行うことができるし、分散染料及び反応染料の両方を含む水溶液を用いて1段階で染色することもできる。1段階での染色は工程数が少なく生産性が良好であるため好ましい。
分散染料はアセテート用およびポリエステル用分散染料を好適に用いることができる。染色温度は、80〜100℃であることが好ましい。反応染料はセルロース用反応染料を好適に用いることができる。染色温度は、80〜100℃であることが好ましい。染色温度は80℃以上にすることで、繊維に染料を効率良く吸尽させることが可能であり、100℃以下にすることでセルロースエステル系繊維の脆化を抑制することが可能となる。
本発明の染色に用いる水溶液には上述した分散染料・反応染料以外にも鮮明な発色性を得るために、公知のpH調整剤、pHスライド剤、硫酸ナトリウム、各種助剤を添加することができる。
染色後の工程において、公知の方法で過剰の染料を洗浄することができる。ハイドロサルファイト等の還元剤を用いて還元洗浄することもできるし、界面活性剤等で洗浄してもよい。
本発明のセルロースエステル系混繊糸は、織物、編物および不織布などの繊維構造物の構成成分になることができる。繊維構造物を形成する際には本発明のセルロースエステル系混繊糸を主要な構成成分として形成する必要がある。すなわちセルロースエステル系混繊糸のみを用いて繊維構造物とするか、あるいは繊維構造物が複数種の繊維より構成される場合は、繊維構造物を構成する複数の繊維の中でも該混繊糸の混率を1番目もしくは2番目に高くすることが好ましい。
複数種の繊維よりなる布帛の例として、ストレッチ性を持たせるためにポリウレタン等の弾性繊維と混合した編物や、芯鞘型複合繊維を経糸または緯糸のみに用いた織物、さらには綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨンやセルロースアセテート等の再生繊維・化学繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタン等の合成繊維と合撚、複合加工する方法などが挙げられる。
編物としては、天竺、スムース、トリコット等が挙げられ、丸編み、トリコット等の場合には、製編、熱セットを施した後に、芯成分の溶出処理を行い、必要に応じて染色、仕上げセットを行う。また織物としてはタフタ、デシン、ジョーゼット、ツイル等の織物が挙げられ、織物の場合には整経、糊付け、製織を行った後に芯成分の溶出処理を行い、必要に応じて染色、仕上げセットを行う。また、これらの前工程として仮撚や流体噴射加工などを行い、繊維に嵩高性を持たせることも可能である。
本発明のセルロースエステル系混繊糸からなる繊維構造物は、風合いに優れ、特に異色染めの際に多様な色相を持つことができるため、スポーツニット、婦人・紳士衣料用途に適し、衣料全般に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。実施例中の各特性値は、次の方法で求めたものである。
A.GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロース脂肪酸エステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。なお測定回数は3回であり、その平均値をMwとした。
カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/分
注入量 :200μl
B.セルロースエステルの置換度
乾燥したセルロースエステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/
[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の置換度
DSacy:炭素数3〜18のアシル基の置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:炭素数3〜18のカルボン酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と炭素数3〜18のカルボン酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量。
C.強伸度、
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除した値を繊維の強度(cN/dtex)とし、破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊維の強度、伸度とした。
D.染色特性
得られた混繊糸を用いた繊維構造物(丸編み)を作成し、70℃×20分の温水精練を行った後、乾熱160℃×2分のセットをおこなった。アルカリ処理を行った後、分散染料であるKayalon Polyester Yellow Brown 2RL-Sを3%owf、反応染料であるKayacelon React RED CN-3Bを3%owf、助剤として硫酸ナトリウム70g/L、pH調整剤(buffer7)1g/Lを用い、浴比40、染色温度100℃、染色時間60分の条件で染色加工を行った。
得られた丸編地の鮮明性、審美性について、10人の被験者により目視による官能試験を総合して染色特性を評価した。鮮明性とは、染料により鮮やかで深みのある発色が得られた状態とした。官能試験により、「極めて優れている」を◎、「普通」を○、「劣っている」を×とし、「普通」以上を合格とした。審美性とは、本発明の目的とする異色染めにより生じた柄模様の美しさに関するものである。官能試験により、「優れている」を◎、「普通」を○、「劣っている」を×とし、「普通」以上を合格とした。
E.風合い
染色後の丸編地のソフト感、吸湿性について、10人の被験者により触手による官能試験を総合して風合い特性を評価した。ソフト感および吸湿性について評価し、「優れている」を◎、「普通」を○、「劣っている」を×とし、「普通」の○以上を合格とした。
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基の置換度(DSace)は2.0、プロピオニル基の置換度(DSacy)は0.7(セルロースエステル全置換度2.7)であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
実施例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート(DSace=2.0、DSacy=0.7)82重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%、およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル(A’)を主成分とする組成物ペレット(セルロースエステルのMW16.6万)を得た。
市販のセルロースアセテートプロピオネート(DSace=0.2、DSacy=2.5)93重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)7重量%、を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル(B’)を主成分とする組成物ペレット(セルロースエステルのMW14.6万)を得た。
上述のペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、それぞれ紡糸温度260℃、240にて吐出量10g/min、8.8g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取り、セルロースエステル(A’)(B’)を主成分とする繊維を得た。
セルロースエステル(A’)(B’)を主成分とする繊維をエアー交絡によって混繊し、均一な混繊糸とした後に丸編み機を用いて編み地にした。この編み地を前述の方法で精練を行った。セルロースエステル(A’)(B’)を主成分とする繊維の混繊比率はA:B=50:50である。
浴比が30以上になるように水酸化ナトリウムの1.5%水溶液を作成し、60℃に加熱攪拌することでアルカリ処理を行った。精練後の布帛を、加熱したアルカリ水溶液中に投入し、攪拌しながら90分処理を行った。水溶液中から取り出した布帛は流水で十分洗浄を行った。
セルロースエステル系繊維(A)は鞘部の割合が70%であり、セルロースエステル系繊維(B)は鞘部の割合が30%のセルロースエステル系混繊糸からなる編み地を得ることができた。
アルカリ処理した編み地を風乾後、前述の方法で染色を行った。得られた編み地の染色特性、風合い特性は、表1の通りであり、極めて優れた染色特性、風合いを有していた。
実施例2
セルロースエステル(A’)(B’)を主成分とする繊維の繊度、混繊比率を変えた以外は、実施例1と同様にセルロースエステル系混繊糸からなる編み地を作成した。実施例1と同様に精練を行ったのち、95℃の5%炭酸ナトリウム水溶液で120分処理を行った。
染色後の布帛は実施例1と同様に鮮明性、審美性が良好であり、良好なソフト感を有するものであった。鞘部の割合が少ないセルロースエステル系繊維(B)の割合が多いため、若干吸水性は劣るものの問題のないレベルであった。
実施例3
アルカリ処理条件を90℃の1.5%水酸化ナトリウム水溶液で20分処理するのに変更した以外は実施例1と同様に検討を行った。該アルカリ処理条件で得られたセルロースエステル系繊維(A)、(B)の鞘部の割合a(%)、b(%)は95%、12%であった。
染色後の布帛は実施例1と同様に、極めて優れた染色特性、風合いを有していた。
実施例4
セルロースエステル(A‘)として市販のセルロースアセテートブチレートを用い、表1の条件で検討を行った。該アルカリ処理条件で得られたセルロースエステル系繊維(A)、(B)の鞘部の割合a(%)、b(%)は60%、30%であった。
染色後の布帛は実施例1と同様に鮮明性、審美性が良好であり、良好なソフト感を有するものであった。また、若干吸水性は劣るものの問題のないレベルであった。
実施例5
アルカリ処理条件を95℃の5%炭酸ナトリウム水溶液で30分処理するのに変更した以外は実施例1と同様に検討を行った。該アルカリ処理条件で得られたセルロースエステル系繊維(A)、(B)の鞘部の割合a(%)、b(%)は20%、5%であった。
染色後の布帛は実施例1と同様に、極めて優れた鮮明性、吸湿性を有していた。また、鞘部の割合が小さいためソフト感が若干低いものの、問題のないレベルであった。セルロース系繊維(A)、(B)の鞘部の割合が小さいため、両者の色相差が実施例1に比べて小さく、審美性が若干低いものの問題のないレベルであった。
比較例1
セルロースエステル系繊維(B)は用いずに、セルロースエステル系繊維(A)単独で実施例1と同様の評価を行った。鮮明性、ソフト感、吸湿性は極めて優れているものの、繊維間の色相差がないため模様が見られず審美性に乏しいものとなった。
比較例2
実施例1と同様に混繊、編み地、精練まで行ったのち、アルカリ処理を行わずに染色性の評価を行った。セルロースエステル系繊維(A)、(B)の鞘部の割合a(%)、b(%)はいずれも0%である。
鮮明性は良好であるが、審美性・ソフト感・吸湿性に劣るものとなった。
比較例3
セルロースエステル系繊維(B)の代わりにPPTを用いた以外は実施例1と同様に検討を行った。染色温度はセルロースエステル繊維の脆化を抑制するため実施例1と同様に100℃で行った。該染色温度はPPTが吸尽する温度より低いため、染色後の布帛は鮮明性に劣るものであった。また、ソフト感が得られなかった。
Figure 2008291388
Figure 2008291388
本発明によれば、従来のセルロースエステル系繊維よりも、セルロースエステル及びセルロース部分からなる芯鞘比率を高度に制御した混繊糸を得ることができる。セルロースエステル及びセルロース部分を異なる色相の染料で染色することで、該混繊糸で構成される繊維構造物は、単独のセルロースエステル系繊維のみからなる繊維構造物を染色したのでは得られない多様な色相を有する繊維構造物を得ることができる。また、セルロースエステル及びセルロース由来の優れた風合いを有するため、特に衣料用途に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. セルロースエステル系繊維(A)、(B)からなる混繊糸であって、該繊維(A)および(B)の双方が、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロースエステルからなる芯部とセルロースからなる鞘部より構成されてなる芯鞘複合構造を有しており、該繊維(A)の鞘の割合a(%)が繊維(B)の鞘部の割合b(%)より大きいことを特徴とするセルロースエステル系混繊糸。
  2. セルロースエステル系繊維(A)の鞘部の割合a(%)が50%以上100%未満、セルロースエステル系繊維(B)の鞘部の割合b(%)が1%以上50%未満であることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系混繊糸。
  3. 芯部が分散染料、鞘部が反応染料により着色されていることを特徴とする請求項1または2記載のセルロースエステル系混繊糸。
  4. 請求項1から3のいずれか一項記載のセルロースエステル系混繊糸からなる繊維構造物。
  5. 置換度がDSace>DSacyを満たすセルロースエステル(A’)を主成分とする繊維と置換度がDSace<DSacyを満たすセルロースエステル(B’)を主成分とする繊維からなる混繊糸をアルカリで処理することにより鹸化することを特徴とするセルロースエステル系混繊糸の製造方法。
    DSace:アセチル基の置換度、DSacy:炭素数3〜18であるアシル基の置換度
  6. 置換度がDSace>DSacyを満たすセルロースエステル(A’)を主成分とする組成物と置換度がDSace<DSacyを満たすセルロースエステル(B’)を主成分とする組成物を同一口金から溶融複合紡糸することで得られる混繊糸をアルカリ処理に用いることを特徴とする請求項5記載のセルロースエステル系混繊糸の製造方法。
  7. 鹸化後の混繊糸を構成するセルロースエステル系繊維(A)および(B)の双方が、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロースエステルからなる芯部とセルロースからなる鞘部より構成されてなる芯鞘複合構造を有しており、該繊維(A)の鞘の割合a(%)が繊維(B)の鞘部の割合b(%)より大きいことを特徴とする請求項5または6記載のセルロースエステル系混繊糸の製造方法。
  8. 鹸化後の混繊糸を構成するセルロースエステル系繊維(A)の鞘部の割合a(%)が50%以上100%未満、セルロースエステル系繊維(B)の鞘部の割合b(%)が1%以上50%未満であることを特徴とする請求項7記載のセルロースエステル系混繊糸の製造方法。
  9. 鹸化後に分散染料及び反応染料の両方を少なくとも含有した水溶液を用いて染色を行うことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項記載のセルロースエステル系混繊糸の製造方法。
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