JP2009084732A - 布帛染色物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、セルロースエステル系繊維と絹からなる布帛に関し、絹の強伸度低下が抑制され、かつ濃染化された布帛染色物を提供する。
【解決手段】セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と特定強度および伸度の絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含み、L値が5〜30であることを特徴とする布帛染色物。
【選択図】なし

Description

本発明は、絹由来の光沢、高発色性を保持しながら、セルロースエステル系繊維に起因する寸法安定性、プリーツ加工性を有する布帛染色物およびその製造方法に関する。
近年、衣料分野においては消費者ニーズの多様化、高級化の志向から、より良好な審美性、風合い、機能性などの特徴を有する繊維が求められている。単独の繊維のみでは、その要求を満たすことが困難になりつつあり、複数の繊維からなる複合素材への期待が高まっている。
天然繊維である絹は、光沢、色彩、ドレープ性などの審美性に加え、腰、張り、感触の良さなどの風合いに優れるほか、保温性、吸放湿性などの機能性にも優れ、高級衣料用途に用いられている。一方で、絹は100℃以下の常圧染色では良好な染色性を示すものの、100℃を超える高温染浴やアルカリ性の強い染浴を用いた場合には著しい劣化を起こすため、絹独特の風合いは損なわれ、物性低下を起こす問題がある。
絹を利用した複合素材としては、セルローストリアセテート繊維と絹からなる布帛(非特許文献1参照)やポリエステル繊維と絹との混繊品(特許文献1)がこれまでに提案されている。
セルローストリアセテート繊維と絹からなる布帛の場合、セルローストリアセテート繊維の染色適正温度である100〜120℃で染色を行うと、絹繊維が熱劣化を起こす問題、すなわち、絹独特の風合いが損なわれ、物性低下する恐れがあった。一方、絹繊維の熱劣化を抑制するために絹繊維の染色適正温度である100℃以下の温度で常圧染色すると、セルローストリアセテート繊維が十分染色されず、布帛染色物に濃淡色差が現れ、イラツキの原因となり、得られる布帛染色物の品位を著しく低下させる問題があった。
一方、ポリエステル繊維と絹との混繊品では、常圧可染タイプのポリエステル繊維を用いれば、100℃以下の常圧染色を行うことにより絹繊維の熱劣化を抑制することが可能である(特許文献1)。しかし、ポリエステルと絹の混繊布帛では、ポリエステル繊維自身の染色性、吸湿性が劣っているために、得られる織編物の染色性、吸湿性について満足できる物を得ることができないという問題があった。
再公表WO97/05308 佐野準治著「複合素材の実際知識」株式会社繊維社出版、1992年9月7日、P.83
本発明の課題は、上記の従来技術の問題点を解決し、絹由来の光沢、高発色性を損なうことなく、混繊により寸法安定性、プリーツ加工性を有する布帛染色物を提供すること、およびその布帛染色物を製造する方法を提供することにある。
本発明における上記課題は、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と下記要件(I)を満たす絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含み、L値が5〜30であることを特徴とする布帛染色物によって解決することができる。
(I)強度が1.5〜4.0cN/dtex、伸度が10〜20%
この場合、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)が繊維軸方向に連続して中空部を有する中空繊維であることは好ましく採用することができる。
また、本発明の別の課題は、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と上記要件(I)を満たす絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含む布帛を、分散染料含有水溶液を用いて、20〜100℃で染色した後、反応染料および/または酸性染料含有水溶液を用いて、20〜100℃で染色することを特徴とする布帛染色物の製造方法によって解決することができる。または、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と上記要件(I)を満たす絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含む布帛を、反応染料と酸性染料から選ばれる少なくとも一種と分散染料を含む水溶液を用いて、20〜100℃で染色することを特徴とする布帛染色物の製造方法によっても解決することができる。
本発明の布帛染色物は、絹の審美性、風合い、機能性を生かしながら、寸法安定性、プリーツ加工性が良好でかつ発色性が良好な布帛染色物を得ることができるため、衣料用途、特に高級婦人用途に好ましく用いることができる。
本発明における布帛染色物は、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と強度が1.5〜4.0cN/dtex、伸度が10〜20%である絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含むものである。
本発明における繊維(A)は、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とするものである。セルロースアセテートプロピオネートは、セルロースのグルコース単位に3つ存在する水酸基の少なくとも一部が、アセチル基およびプロピオニル基によって置換されたものである。同様にセルロースアセテートブチレートとは、セルロースのグルコース単位に3つ存在する水酸基の少なくとも一部がアセチル基およびブチリル基によって置換されたものである。これらのセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維は、セルロースアセテートとは異なり良好な熱可塑性を有するため、これらの繊維を布帛とした際には布帛の熱セットが可能となる。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートのアセチル基やアシル基の平均置換度は、下記式(II)を満たすことが好ましい。アセチル基の平均置換度+アシル基の平均置換度(すなわち全置換度)が2.5〜3.0の場合、これらの繊維を用いた布帛とすることによって適度な吸湿性、良好な寸法安定性を付与することができる。高い熱軟化温度、適度な親水性、および吸放湿性を考えると、全置換度は2.6〜2.9がより好ましい。なお、ここでアシル基とは、アセチル基以外のエステル側鎖すなわちプロピオニル基もしくはブチリル基を意味している。
(II)2.5≦(アセチル基の平均置換度+アシル基の平均置換度)≦3.0
また、本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートは、下記式(III)および(IV)を満たすことが好ましい。
(III)1.5≦(アセチル基の平均置換度)≦2.5
(IV)0.5≦(アシル基の平均置換度)≦1.5
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートの重量平均分子量(Mw)は、5.0万〜25.0万が好ましい。Mwが5.0万以上の場合には、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレート繊維の機械的特性が良好であるため好ましい。Mwが25.0万以下の場合、分子量が高すぎることによる染色性不良の問題が無いため好ましい。良好な機械的特性、安定した紡糸性の観点から、Mwは6.0万〜22.0万がより好ましく、8.0万〜20.0万が最も好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)とは、GPC測定により算出した値のことである。
本発明における繊維(A)は、その物性を損なわない範囲で、各種の添加剤、例えば、可塑剤、艶消剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤、糸摩擦低減剤、着色防止剤、着色顔料、染料、制電剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤など、または蛍光増白剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有してもよい。
本発明における繊維(A)は、湿式紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸、溶融紡糸などの紡糸法を用いて得ることができる。紡糸法は、特に限定されるものではないが、高品質の長繊維を良好に生産できること、また、繊維断面の制御により異型断面糸および中空繊維を生産できることから、溶融紡糸が好ましい。
本発明の布帛染色物を構成する繊維(A)の繊維物性は、特に限定されるものではないが、強度は0.8〜2.0cN/dtex、伸度は8〜30%が好ましい。強度特性の観点から、強度が高いほど実用範囲は広がり、各種用途に展開できるため好ましいが、現状では2.0cN/dtex程度が上限である。強度は0.9cN/dtex以上がより好ましく、1.0cN/dtex以上がさらに好ましい。
また、伸度が8%以上であれば、布帛の磨耗堅牢度の低下がなく品位が良好となるため好ましい。一方、伸度が30%以下の場合、布帛の寸法安定性が良好であるため好ましい。布帛染色物の耐久性および寸法安定性の観点から、繊維(A)の伸度は10%〜20%であることがより好ましい。
本発明における繊維(A)の単糸繊度は、0.5〜20dtexが好ましい。単糸繊度が0.5dtex以上であれば、布帛品位の低下がなく耐久性が高いため好ましい。単糸繊度は、1dtex以上がより好ましく、1.3dtex以上がさらに好ましい。一方、単糸繊度が20dtex以下であれば、繊維構造物は適度な曲げ剛性とソフト性を得ることができる。単糸繊度は、15dtex以下がより好ましく、10dtex以下がさらに好ましく、5dtex以下が最も好ましい。
本発明における繊維(A)の繊度変動値(U%)は、3.0%以下が好ましい。繊度変動値(U%)とは、繊維長手方向における太さ斑の指標であり、ツェルベガーウースター社製ウースターテスターにより求めることができる。繊度変動値(U%)が3.0%以下の場合、繊維長手方向の均一性が優れ、部分的に強い染め斑、染め筋などの欠点が発生せず、高品位な織編物となる。繊維の均一性の観点から繊度変動値(U%)は小さいほど良いが、現状の下限は0.2%である。繊度変動値は、0.2〜2.5%がより好ましく、0.2〜2.0%がさらに好ましく、0.2〜1.5%が最も好ましい。
本発明における繊維(A)の溶融成形のために可塑剤を含有させた組成物を用いて溶融紡糸を行った場合には、温水、熱水、および有機溶剤等を用いた薬液処理で繊維に含有されている可塑剤を溶出させることができる。最終製品におけるセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートの繊維に含まれる可塑剤含有量は0〜25重量%が好ましい。この範囲にある場合、最終製品の強伸度の低下が少なく、また、熱軟化温度も高くできるため、好ましい。
本発明における繊維(A)の断面形状は、特に制限がなく、真円状の円形であっても良いし、また、三角形、四角形などの多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形などの異型断面や、さらに、中空断面の外側と内側で形状が同異の中空繊維や、中空部が複数個存在する中空繊維なども好ましく用いることができる。この中でも断面形状は、軽量性、保温性の観点から、中空繊維がより好ましい。本発明における中空繊維は、繊維軸方向に連続して中空部を有していることが好ましい。
本発明における繊維(A)が中空繊維の場合、その中空率は、10〜50%が好ましい。中空率が10%以上の場合、良好な軽量性および保温性を付与できるため、好ましい。中空率が50%以下の場合、繊維特性が保持されるとともに、繊維の潰れが発生しにくいため、好ましい。中空率は10〜45%がより好ましく、10〜40%が最も好ましい。なお、本発明でいう中空率とは、中空繊維の繊維軸に対して垂直方向の断面(横断面)を撮影し、中空部も含む断面の全面積(Sa)と中空部の面積(Sb)を測定し、下記式(V)を用いて算出した値をいう。ただし、複数の中空部を有する場合には、Sbはそれぞれの中空部の面積の総和を意味する。
(V)中空率(%)=(Sb/Sa)×100
本発明における繊維(B)の主成分である絹の種類については特に限定は無いが、一般に家蚕糸を用いることが布帛品位の面で好ましい。家蚕糸の形態としては、生糸、玉糸、紬糸、絹紡糸、および絹紡紬糸などであることができる。野蚕糸としては天蚕、杵蚕、ムガサン、およびエリサンなどが産生する蚕糸を用いることができる。
本発明の布帛染色物を構成する繊維(B)の繊維物性は、強度が1.5〜4.0cN/dtex、伸度が10〜20%である。布帛構造中における絹の強度および伸度は、染色温度を100℃以下とすることにより、物性低下をある程度抑制でき、強度を1.5cN/dtex以上かつ伸度を10%以上とすることができる。強度特性の観点から、強度が高いほど実用範囲は広がり、各種用途に展開できるために好ましく、強度が1.5cN/dtex以上であれば、衣料用途に用いた時に実用に耐えうるものとなる。繊維(B)の強度は2.0〜4.0cN/dtexがより好ましく、3.0〜4.0cN/dtexがさらに好ましい。一方、伸度が10%以上であれば、毛羽の発生が少なく品位が良好となるため好ましい。また、伸度は15〜20%がより好ましい。
本発明における繊維(B)の主成分である絹の単糸繊度は、1.8〜30dtexが好ましい。極細糸または太糸のいずれであってもよいが、一般に普及し汎用に用いることができる2.0〜5.0dtexがより好ましい。
本発明における布帛染色物は、前述した繊維(A)と繊維(B)を少なくとも含んでなるものである。本発明における繊維(A)および繊維(B)の混合方法については、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、混繊糸としてから布帛にしてもよいし、交織や交編による方法などを組み合わせてもよい。混繊糸を製造する方法としては、公知の後混繊方式が挙げられ、例えば、撚糸工程で両方の繊維を供給して混繊する方法、エアー交絡によって混繊する方法、タスラン加工によって混繊する方法、合糸、引き揃えによって混繊する方法などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明における布帛染色物の布帛形態については、特に制限はなく、公知の形態を用いることができ、織物としては一重組織で代表的な三原組織である平織、斜文織、朱子織であっても、蜂巣組織などの特別組織や、三原組織と変化組織を混合させた混合組織であってもよい。また、一重組織ではなく、二重組織や絡み組織、またパイル組織等であってもよい。具体的な織物の種類としては、羽二重、縮緬、タフタ、サテン、シャンタンなどがあげられるが、特に限定されない。編物としてはヨコ編、タテ編、マル編のいずれであってもよく、例えば、ヨコ編の基礎組織としては平編、ゴム編、パール編、変化組織としてはタック編、浮き編、片畦、両面編、レース編などでもよく、タテ編の基礎組織としては一重編、変化組織としては二重タテ編などでもよい。
本発明における布帛染色物中における繊維(A)と繊維(B)の比率は、任意に決定することができる。例えば、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)の繊度DAと絹を主成分とする繊維(B)の繊度DBの比率DA:DBが、2:98〜20:80であれば、絹の特徴がより強くなり、寸法安定性、プリーツ加工性にやや劣るものの光沢感に優れた布帛が得られる。逆に80:20〜98:2であれば、絹の特徴が弱くなり、光沢感はやや劣るものの寸法安定性、プリーツ加工性に優れた布帛が得られる。20:80〜80:20の比率の場合、寸法安定性、プリーツ加工性と光沢感のバランスの取れた布帛となるため、好ましい。
本発明における布帛染色物は、繊維(A)の主成分であるセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートと繊維(B)の主成分である絹以外に他の繊維が、本発明の趣旨を損なわない範囲内で混用されてなるものであってもよい。他の繊維としては毛、綿などの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどの半合成繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維などの合成繊維などを例示することができるが、これらに限定されない。染色時のセルロースエステル繊維および絹の常圧可染性を活かす観点から、混用する繊維としては、毛、綿、レーヨン、キュプラ、ポリアミド系繊維、およびアクリル系繊維等を用いることが好ましい。
本発明における布帛染色物のL値は、5〜30である。濃色の布帛を得る観点からは、本発明における布帛染色物のL値は、5〜10であることがより好ましい。
次に、本発明のセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と絹を主成分とする繊維(B)からなる布帛染色物の製造方法について詳細に説明する。
本発明における布帛染色物の製造方法は、繊維(A)と繊維(B)を少なくとも含む布帛を、分散染料を用いて染色した後、反応染料および/または酸性染料を用いて染色する2段2浴法とすることができる。あるいは、本発明における布帛染色物の製造方法は、繊維(A)と繊維(B)を少なくとも含む布帛を分散染料と、反応染料と酸性染料から選ばれる少なくとも一つとを用いて染色する1段1浴法とすることができる。
本発明における布帛染色物を製造する際の染料は、特に限定されるものではなく、公知の染料を用いてもよいが、本発明における繊維(A)の主成分であるセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートは、分散染料で染色することが好ましい。繊維(B)の主成分である絹は、反応染料および/または酸性染料で染色することが好ましい。染料は単独でまたは2種以上混合して用いることができるが、混合して用いる場合には染料による相互汚染を避けることが好ましい。例えば、合化繊用分散染料による絹への染着(汚染)は、色相をくすませるだけでなく光沢を失わせ、布帛の堅牢度を低下させる。従って、繊維(A)を染色する染料としては、繊維(A)の染料吸尽率、染色性、染色堅牢度が良好であり、絹には汚染が少ない染料を選択することが好ましい。
本発明における布帛染色物の製造方法として、淡色に染める場合は、分散染料、反応染料および/または酸性染料を同時に使用して染色する1段1浴法を用いることができる。中色〜濃色に染める場合または堅牢度の良好な染色を行う場合は、まず堅牢度の高い繊維(A)を染色した後、繊維(B)に汚染した染料をソーピングして除去してから、第2浴で繊維(B)を染色する2段2浴法が好ましく用いられる。
本発明における布帛染色物を製造する際の染料濃度は、布帛重量に対して0.01〜30%owfが好ましい。この範囲では淡染から濃染の幅広い染色が達成できる。染色濃度を高くしても、濃染化の効果はある一定のところで飽和するので、経済的な観点から0.01〜20%owfがより好ましく、0.01〜15%owfが最も好ましい。
本発明における染色に用いる染色溶液のpHは、4.5〜7.5に調整することが好ましい。分散染料はアルカリによって分解しやすく、また、繊維(A)の主成分であるセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートがアルカリによって損傷を受けることから、染色溶液のpHはこの範囲であることが好ましい。染色溶液のpHは、4.5〜6.5がより好ましく、4.5〜5.5が最も好ましい。
本発明における布帛染色物を製造する際の染色温度は、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)および絹を主成分とする繊維(B)の耐熱性を考慮すると、20〜100℃が好ましい。染料の繊維中への拡散性、染着性の観点から、染色温度は80〜100℃がより好ましく、この範囲では布帛の光沢を失う恐れや糸物性の低下を招く恐れもない。さらに、染色温度は90〜100℃が最も好ましい。
本発明において、布帛染色物を製造する際に染色した後、布帛染色物を常法により水洗した後、還元洗浄を行うことが好ましい。還元洗浄溶液のpHは10.0〜12.0に調整することが好ましく、この範囲では繊維に未染着の染料を分解し、かつ繊維の光沢を失う恐れのあるセルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートの加水分解も起こらない。
アルカリ溶液を調整する際の薬剤としては、アルカリ金属水酸化物および/または弱酸・強塩基からなる塩を用いることが好ましい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が例示され、単独、もしくは混合して用いてもよい。炭酸ナトリウムがより好ましい。また、還元剤としては亜―2―チオン酸ナトリウム、二酸化チオ尿素、二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム等が例示され、単独、もしくは混合して用いてもよい。汎用性の観点から、亜―2―チオン酸ナトリウムがより好ましい。還元剤の濃度は採用した染料濃度に応じて適宜変えればよいが、1〜3g/Lが還元剤の効率の観点から好ましい。界面活性剤は公知の薬剤を特に制限なく用いてもよい。
本発明で採用される還元洗浄温度は、70℃以下が好ましい。還元剤が活性化され、かつセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)の内部に染着した染料の分解を防ぐためには、50〜65℃がより好ましく、55〜65℃が最も好ましい。また、還元洗浄後は常法により染色物を水洗、乾燥してもよい。
また、本発明における染色および還元洗浄工程でセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)の光沢を保持するためには、染色前のセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートの重量平均分子量M1と、洗浄後のセルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートの重量平均分子量M2は、下記式(VI)の関係にあることが好ましく、さらに下記式(VII)の関係にあることがより好ましい。
(VI)M2/M1≧0.90
(VII)M2/M1≧0.95
本発明における染色加工に用いる装置は、繊維の状態で染色するチーズ染色機、布帛の状態で染色する液流式染色機、ウインス、ジッカー、ビーム染色機、ガーメント染色を行うドラム染色機などの公知の染色機を特に制限なく用いてもよい。
さらに染色加工前に例えば50〜100℃の弱アルカリ条件下などの常法に応じた精練を実施しても、また、染色加工後に発色性向上やその他の機能付与のために、難燃剤、抗菌・防臭剤、撥水・防汚剤などを添加した仕上げ加工剤や公知の樹脂をコーティングしてもよい。
本発明の布帛染色物の水系洗濯の寸法変化率は、±3%以下が好ましい。水系洗濯は、パークレン系または石油系有機溶剤によるドライクリーニングと異なり、常温水または温水に洗剤を溶解し手洗いや洗濯機で洗濯を実施し、その洗濯方法および条件は、JIS L0217「繊維製品の取り扱いに関する表示記号および表示方法」において提示されているものを使用するものである。寸法変化率が2%以下であれば、従来の一般衣料に比較して着用時に快適で、また洗濯頻度の高い日常衣の場合はドライクリーニング限定ではなく家庭で水洗濯できるなど取り扱い性に優れるため、好ましい。寸法変化率は、使用する原糸は織編組織、糸の配列等の組合せにおいても決定することができる。
本発明の布帛染色物は、30℃×90%RH(相対湿度90%)における吸湿率と20℃×65%RH(相対湿度65%)における吸湿率の差で表される吸湿率差(△MR)が1〜10%であることが好ましい。吸湿率差(△MR)が1%以上であることによって、夏期の高湿時に蒸れ感が発生することがなく、また冬季の低湿時における静電気の発生も抑制される。逆に10%以下であることによって、布帛の吸湿による重量増加などのトラブルを防ぐことができる。吸湿率差(△MR)については、快適性の観点からは、2%以上であることがより好ましい。重量増加を抑制する観点からは6%以下であることが好ましい。吸湿による形態変化を避ける必要がある場合に、吸湿率差(△MR)を1〜3%、あるいは1〜2%などと設計することについても、適宜行うことができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。実施例中の各特性値は、次の方法で求めたものである。
A.セルロースエステルの置換度
乾燥したセルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレート0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間鹸化させた。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5Nの硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B―A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[1―(Mwace―(16.00+1.01)×TA+[1―(Mwacy―(16.00+1.01)×TA]×Acy/Ace]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の置換度
DSacy:アシル基の置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
B.GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値をMwとした。
カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/min
注入量 :200μl
C.強度および伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊維の強度(cN/dtex)とした。また破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
D.単糸繊度
マルチフィラメントのトータル繊度を、マルチフィラメントを構成する単糸数で除した値を単糸繊度(dtex)とした。
E.中空率
中空繊維の繊維軸に対して垂直方向の断面(横断面)を撮影し、中空部も含む断面の全面積(Sa)と中空部の面積(Sb)を測定し、下記式を用いて算出した値を中空率とした。ただし、複数の中空部を有する場合には、Sbはそれぞれの中空部の面積の総和とする。
中空率(%)=(Sb/Sa)×100
F.(洗濯)寸法変化率
JIS L1909により測定した。
G.風合い
得られた布帛染色物の風合いを官能調査によって評価した。ソフトな風合いを有している高品質のものを○、ややヌメリ感がある、またはやや染色ムラなどが見られる中位の品質のものを△、ヌメリ感がある、または染色ムラなどが見られる低品質のものを×とした。
H.吸湿性
布帛染色物を約1g用意し、その絶乾時の重量(W)を測定した。この布帛染色物を20℃、65%RHの状態に調湿された恒温恒湿器(ナガノ科学機会製LH−20−11M)中に24時間放置し、平衡状態となった布帛染色物の重量(W20)を測定し、その後30℃、90%RHでの状態に変更して24時間放置し、平衡状態となった試料の重量(W30)を測定した。吸湿性を判断する上で、吸湿率差(△MR)を下記式により求めた。
△MR(%)={(W30−W20)/W}×100
I.L
洗浄前後の布帛をそれぞれ試料とし、ミノルタ社製分光測色計CM−3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件SCEでL、a、bを測定した。
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)の合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したCAPを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたCAPのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0、0.7(CAP全置換度2.7)であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
ペレット製造例1
合成例1で合成したCAP80重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)19.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、二軸エクストルーダーを用いて240℃で混練し、5mm程度にカッティングしてCAP組成物ペレット(Mw16.0万)を得た。溶融紡糸を行うにあたり、該ペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行った。
ペレット製造例2
イーストマンケミカル社製CAP(CAP482−20、アセチル基置換度0.6、プロピオニル基置換度2.0)90重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)10重量%を、二軸エクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてCAP組成物のペレット(Mw18.3万)を得た。溶融紡糸を行うにあたり、該ペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行った。
ペレット製造例3
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートブチレート(CAB381−20、アセチル基置換度1.0、ブチリル基置換度1.7)85重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)14.9重量%、およびビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を、二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてCAB組成物のペレット(Mw18.1万)を得た。溶融紡糸を行うにあたり、該ペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行った。
実施例1
ペレット製造例1で製造したCAP組成物のペレットを、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度270℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量15.0g/分の条件で、口金孔(吐出孔半径が0.25mm、吐出孔深度0.625mm、ホール数36)の口金より紡出した。この紡出糸条を紡糸口金面より下方150mmの距離(冷却開始点)から風温25℃、風速0.3m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.09cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100dtex−36f)は、強度が1.36cN/dtex、伸度が24.0%であり、緯糸として用いる繊維(A)とした。
絹繊維(未精練、26中)を経糸(B)とし、緯糸は上述の繊維(A)を用い、経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmのタフタを製織した。得られた織物を、日華化学(株)製界面活性剤サンモールBK−80を1g/L、炭酸ナトリウム1g/Lを含む精練溶液で60℃×20分間精練を行った。繊維(A)はポリエチレングリコールが溶出したことにより80dtex−36fとなった。得られた織物を用いて、以下の分散染色を行った。
染料:Miketon Fast Black Z(三井BASF染料株式会社製)
染料濃度:8%owf
浴比:1:100
染液pH:5.0
染色時間:60分
染色温度:100℃
分散染色後の布帛は十分水洗した後、乾燥させた。その後、サンモールBK−80を0.2g/L、炭酸ナトリウム1g/L、亜−二−チオン酸ナトリウム2g/Lを含んだ洗浄液(pH10.5、CAPに対する浴比1:100)で、80℃20分還元洗浄を行い、水洗、乾燥を行った。還元洗浄した布帛染色物に対して、さらに以下の反応染色を行った。
染料:Remazol Black DEN Hi−Gr
染料濃度:10%owf
炭酸ナトリウム:30g/L
浴比:1:100
染液pH:5.0
染色時間:30分
染色温度:60℃
反応染色後の布帛は十分水洗した後、乾燥させた。その後、サンモールBK−80を2g/Lを含んだ洗浄液(pH7、絹に対する浴比1:100)で、70℃20分還元洗浄を行い、水洗、乾燥させた。
得られた布帛染色物の評価結果は表1に記載した通りである。経糸として用いた繊維(B)は、染色温度が100℃を超えることがなかったため、強度が2.8cN/dtex、伸度が18%と良好な機械的特性を保持しており、織物品位、風合いともに良好であった。繊維(A)が経糸として存在しているため、織物の寸法変化率は経・緯それぞれ−1.8%、1.0%と非常に良好であった。吸湿率差は絹を含有していることから5.2%と良好な値であった。染色性については、繊維(A)、繊維(B)ともに十分に濃染化されていたためL値は9.4と十分に低い値であり、また染めムラは認められなかった。
実施例2、3
実施例2ではペレット製造例2で製造したCAP組成物のペレットを用いて、実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた繊維(100dtex−36f)は、強度が1.30cN/dtex、伸度が26.0%であった。実施例3ではペレット製造例3で製造したCAB組成物のペレットを用いて、実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた繊維(100dtex−36f)は、強度が1.02cN/dtex、伸度が24.7%であった。実施例2、3ともに、得られた繊維を緯糸として用いる繊維(A)とし、他は実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表1に記載した通りである。繊維(B)は染色温度が100℃を超えることがなかったため、実施例2では2.7cN/dtex、伸度が15%、実施例3では強度が2.8cN/dtex、伸度が20%と良好な機械的特性を保持しており、織物品位、風合いともに良好であった。また、寸法変化率、吸湿率差は、実施例2、3ともに良好な値であった。染色性についても、繊維(A)、繊維(B)ともに十分に濃染化されていたためL値は十分に低い値であり、染めムラは認められなかった。
実施例4
ペレット製造例1で製造したCAP組成物のペレットを、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度270℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量15.0g/分の条件で、口金孔(吐出孔半径が0.50mm、スリット巾0.10mmであるC型スリット)を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を紡糸口金面より下方150mmの距離(冷却開始点)から、25℃、風速0.3m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.09cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100dtex−36f)は、中空率が27%、強度が1.28cN/dtex、伸度が22.9%であり、緯糸として用いる繊維(A)とした。繊維(A)を用いる他は実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表1に記載した通りである。繊維(B)は、染色温度が100℃を超えることがなかったため、強度が1.6cN/dtex、伸度が10%と良好な機械的特性を保持しており、織物品位、風合いともに良好であった。また、寸法変化率、吸湿率差は、良好な値を示し、加えて、中空繊維を用いたことにより、布帛は明確に軽量感が感じられるものであった。染色性についても、繊維(A)、繊維(B)ともに十分に濃染化されていたためL値は十分に低い値であり、染めムラは認められなかった。
実施例5
ペレット製造例1で製造したCAP組成物のペレットをメルター温度250℃にて溶融させ、紡糸温度250℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量33.0g/分の条件で、口金孔(吐出孔半径が0.60mm、スリット間ピッチ0.10mm、スリット巾0.07mmのスリットからなる3分割スリット)を48ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を紡糸口金面より下方100mmの距離(冷却開始点)から、25℃、風速0.40m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、2000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.09cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(167dtex−48f)は、中空率が33%、強度が1.09cN/dtex、伸度が23.8%であり、緯糸として用いる繊維(A)とした。繊維(A)を用いる他は実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表1に記載した通りである。繊維(B)は、染色温度が100℃を超えることがなかったため、強度が1.6cN/dtex、伸度が10%と良好な機械的特性を保持しており、織物品位、風合いともに良好であった。また、寸法変化、吸湿率差は、良好な値であり、加えて、中空繊維を用いたことにより、布帛は明確に軽量感が感じられるものであった。染色性についても、繊維(A)、繊維(B)ともに十分に濃染化されていたためL値は十分に低い値であり、染めムラは認められなかった。
実施例6、7
実施例6ではペレット製造例2で製造したCAP組成物のペレットを用いて、実施例4と同様に溶融紡糸を行った。得られた繊維(100dtex−36f)は、中空率が23%、強度が0.84cN/dtex、伸度が24.2%であった。実施例7ではペレット製造例3で製造したCAB組成物のペレットを用いて、実施例4と同様に溶融紡糸を行った。得られた繊維(100dtex−36f)は、中空率が20%、強度が1.13cN/dtex、伸度が25.1%であった。実施例6、7ともにそれぞれ得られた繊維を緯糸として用いる繊維(A)とし、他は実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表1および2に記載した通りである。繊維(B)は染色温度が100℃を超えることがなかったため、実施例6では1.5cN/dtex、伸度が10%、実施例7では強度が1.6cN/dtex、伸度が10%と良好な機械的特性を保持しており、織物品位、風合いともに良好であった。また、寸法変化率、吸湿率差は、実施例6、7ともに良好な値であり、加えて、中空繊維を用いたことにより、布帛は明確に軽量感が感じられるものであった。染色性についても、繊維(A)、繊維(B)ともに十分に濃染化されていたためL値は十分に低い値であり、染めムラは認められなかった。
Figure 2009084732
実施例8
実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた繊維を緯糸として用いる繊維(A)とし、絹繊維(未精練、26中)を経糸(B)とし、レピア織機を用いて経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmの羽二重を製織した。得られた織物を用いる他は実施例1と同様に精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表1に記載した通りである。繊維(B)は、染色温度が100℃を超えることがなかったため、強度が3.2cN/dtex、伸度が18%と良好な機械的特性を保持しており、織物品位、風合いともに良好であった。また、寸法変化率、吸湿率差は、良好な値であった。染色性についても、繊維(A)、繊維(B)ともに十分に濃染化されていたためL値は十分に低い値であり、染めムラは認められなかった。
実施例9―11、比較例1
実施例1と同様に溶融紡糸、タフタ製織、精練を順に行った。得られた織物を用いて、次に記す各条件を用いる他は実施例1と同様に分散染色を行った。用いた条件は、染料:Cibacet Black EL−FGL(チバスペシヤルテイケミカルズ社製)(実施例9)、染料濃度:2%owf(実施例10)、染色温度:80℃(実施例11)、染色温度:120℃(比較例1)とした。分散染色後の布帛は実施例1と同様に還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表2および3に記載した通りである。実施例9ではいずれの各特性も十分良好であり、染料が異なることによる大きな差異は見られなかった。実施例10ではいずれの各特性も十分良好であったが、染色性について、染めムラは認められなかったが、L値が16.0とわずかに乏しいものであった。実施例11では強度が3.0cN/dtex、伸度が20%と良好な機械的特性を保持しており、その他の各物性も良好であったが、染色性について、染めムラは認められなかったが、L値が28.0とやや乏しいものであった。比較例1では染色温度が120℃であったため、強度が0.7cN/dtex、伸度が6%と織物品位、風合いも乏しく、寸法変化率も乏しいものであった。吸湿率差は良好な値であり、染色性についてもL値は十分に低い値であり、染めムラは認められなかった。
実施例12
実施例1と同様に溶融紡糸、タフタ製織、精練を順に行った。得られた織物を用いて、以下の染色を行った。
染料:Miketon Fast Black Z(三井BASF染料株式会社製)
Remazol Black DEN Hi−Gr
染料濃度:各8%owf
炭酸ナトリウム:30g/L
浴比:1:100
染液pH:5.0
染色時間:60分
染色温度:100℃
染色後の布帛は十分水洗した後、乾燥させた。その後、サンモールBK−80を2g/Lを含んだ洗浄液(pH7、絹に対する浴比1:100)で、70℃20分還元洗浄を行い、水洗、乾燥を行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表2に記載した通りである。繊維(B)は、染色温度が100℃を超えることがなかったため、強度が2.8cN/dtex、伸度が18%と良好な機械的特性を保持しており、織物品位、風合いともに良好であった。また、寸法変化率、吸湿率差は、良好な値であった。染色性についても、繊維(A)、繊維(B)ともに十分に濃染化されていたためL値は10.2と十分に低い値であり、染めムラは認められなかった。
Figure 2009084732
比較例2
実施例1と同様に溶融紡糸を行い、得られた繊維のみをそれぞれ経糸、緯糸に用い、実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表3に記載した通りである。繊維(A)のみを用いているため、実施例1と比較して、織物品位、風合いが乏しいものであった。
比較例3
絹繊維(未精練、26中)のみをそれぞれ経糸、緯糸に用い、実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表3に記載した通りである。絹繊維のみを用いているため、織物の寸法変化率は経・緯それぞれ−3.6%、−4.0%と乏しいものであった。
比較例4
セルロースジアセテート(CDA、アセチル基置換度2.5)をアセトンに溶解させ、乾式紡糸を行った。得られた繊維(167dtex−48f、重量平均分子量M1は15.7万)を緯糸、絹繊維(未精練、26中)を経糸(B)とし、実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表3に記載した通りである。強伸度の機械的特性、寸法変化率、吸湿差率は良好であったが、実施例1と比較して織物品位、風合いが乏しく、また、L値が乏しいものであった。
比較例5
セルローストリアセテート(CTA、アセチル基置換度2.9)をメチレンクロライドおよびメタノールの混合溶媒に溶解させ、乾式紡糸を行った。得られた繊維(167dtex−48f、重量平均分子量M1は20.0万)を緯糸、絹繊維(未精練、26中)を経糸(B)とし、実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表3に記載した通りである。強伸度の機械的特性、寸法変化率、および吸湿差率は良好であったが、実施例1と比較してL値が乏しいものであった。
比較例6
常圧可染タイプのポリエステル繊維(PET、東レ株式会社ポリロフト33dtex−12f)を緯糸、絹繊維(未精練、26中)を経糸(B)とし、実施例1と同様にタフタ製織、精練、分散染色、還元洗浄、反応染色、還元洗浄を順に行った。
得られた布帛染色物の評価結果は表3に記載した通りである。強伸度の機械的特性および寸法変化率は良好であったが、実施例1と比較してL値がわずかに劣っており、吸湿率差が乏しいものであった。
Figure 2009084732
本発明の布帛染色物は、絹の良好な審美性、風合い、機能性を生かしながら、セルロース系繊維としての良好な審美性、風合い、吸放湿性、生分解性などの機能性を加え、さらに溶融紡糸により付与される寸法安定性、プリーツ加工性、軽量性、ソフト性、保温性、機械的特性を有し、絹の強伸度低下なく濃染可能なため、衣料用途、特に婦人高級衣料用途に好ましく用いることができる。

Claims (4)

  1. セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と下記要件(I)を満たす絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含み、L値が5〜30であることを特徴とする布帛染色物。
    (I)強度が1.5〜4.0cN/dtex、伸度が10〜20%
  2. セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)が繊維軸方向に連続して中空部を有する中空繊維であって、該中空繊維の中空率が10〜50%であることを特徴とする請求項1記載の布帛染色物。
  3. セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含む布帛を、分散染料含有水溶液を用いて、20〜100℃で染色した後、反応染料および/または酸性染料含有水溶液を用いて、20〜100℃で染色することを特徴とする請求項1または2に記載の布帛染色物の製造方法。
  4. セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維(A)と絹を主成分とする繊維(B)を少なくとも含む布帛を、反応染料と酸性染料から選ばれる少なくとも一種と分散染料を含む水溶液を用いて、20〜100℃で染色することを特徴とする請求項1または2に記載の布帛染色物の製造方法。
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