JP4553077B2 - カルボン酸無水物およびアルデヒド類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボン酸からカルボン酸無水物、またはアルデヒド類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルデヒド類は工業的に有用な化合物であるとともに、様々な有機合成の原料として重要な化合物である。例えばアルデヒド類は炭素−炭素結合生成反応を容易に起こしたり、容易に還元されアルコールに変化する。
従来、アルデヒド類の合成法としてカルボン酸およびカルボン酸誘導体を直接水素化する方法が知られている。
この中で芳香族カルボン酸を水素で直接水素化し、芳香族アルデヒドを合成する方法が企業化されている(触媒誌35,2,1993)。この場合、触媒に修飾酸化ジルコニウムを用い、常圧から3kgf/cm2 の加圧下、350〜400℃の気相反応が行われている。また芳香族アルデヒド以外に、カルボン酸およびカルボン酸エステルから脂肪族、脂環式、複素環式アルデヒドの製造にも適用可能としている。
しかしながら、反応が高温で且つ気相であるため、熱変性を起こしやすい化合物や、常圧付近で気化しにくい化合物への適用が難しい。
【0003】
カルボン酸、カルボン酸エステルまたはカルボン酸無水物の気相水素化としてはRu−Snの2元触媒による芳香族アルデヒド、脂肪族アルデヒドの製造法が提案されている(特開平7−178339号)。これは気相で240〜300℃、常圧での反応が行われており、安息香酸や無水安息香酸等の芳香族カルボン酸および芳香族カルボン酸無水物、およびセルシオ酸や酢酸等の脂肪族カルボン酸から対応するアルデヒドの合成例が実施例に挙げられている。しかし反応率および選択率は満足するものではなく、また熱変性を起こしやすい化合物への適用や、常圧付近で気化しにくい化合物への適用は難しい。
【0004】
カルボン酸無水物を穏和な条件で水素化して対応するアルデヒドとカルボン酸を得ることは公知である。
すなわち脂肪族カルボン酸無水物を水素化し、対応するアルデヒドを得る技術は、特公昭64−2091号や、Bull.Chem.Soc.Jp.44巻288頁(1971年)で既に述べられている。これらの文献では、気相、液相いずれの反応方式でも進行すること、また触媒も硫酸バリウムに担持された金属パラジウムだけでなく、コバルトカルボニル、ロジウム−ホスフィン錯体などの均一系触媒でも進行することが記載されている。
【0005】
上記文献の他、脂肪族カルボン酸無水物の中でも無水酢酸から、アセトアルデヒドと酢酸を得る方法が特開平10−120605号に開示されている。これによればPd金属触媒およびアルカリ土類金属含量を1重量%以下に抑えたPd担持触媒を用い、150℃以下の温度で反応を行うことが望ましい。この反応の特徴は、従来知られているカルボン酸やカルボン酸エステルの水素化によるアルデヒドの製造法と異なり、カルボン酸無水物と水素が、常圧付近という低圧で、しかも常温から100数十度という低温で容易に進行し、アルデヒドがほぼ定量的に得られるという点にある。
【0006】
脂肪族カルボン酸無水物だけでなく、芳香族カルボン酸無水物も容易に水素化されて対応する芳香族カルボン酸と芳香族アルデヒドが得られることが知られている。
例えば、無水フタル酸は、常温常圧においてPd/C触媒によって水素化され、2−カルボキシベンズアルデヒドを生成することが報告されている〔J.Chem.Soc.Perkin Trans.2030〜2036頁 (1977年) 、西村重夫「接触水素化反応」東京化学同人発行・ 235頁 (1987年)〕。
【0007】
また、カルボン酸無水物の水素化によるアルデヒドの生成の反応機構が、Chem.Lett. 367頁(1995年)において提案されている。これによると無水酢酸が0価パラジウムに酸化的付加し、生成したアシルパラジウム化合物と水素が反応した後に還元的脱離をして、アセトアルデヒドを生成する。
更に、このメカニズムを応用して、ピバル酸無水物を共存させることにより、カルボン酸を水素化してアルデヒドを合成する方法が報告されている(第43回有機金属討論会予稿集、B104,214頁(1998年))。ここで提唱されている反応機構は、水素化を行いたいカルボン酸を無水ピバル酸と反応させ、混合型酸無水物を発生させると同時に、同一反応器内で、この酸無水物を均一系パラジウム触媒により水素化するというものである。この反応の特徴は、原料カルボン酸を基準として高選択的かつ高収率でアルデヒドが得られる点にある。
しかしながら、この反応では反応溶液中にピバル酸無水物を原料のカルボン酸と等量以上共存させなければならず、反応器の空間効率が落ちるだけでなく、反応後に系中でピバル酸が生成するため精製操作が煩雑になるという欠点がある。
またピバル酸無水物は無水酢酸に比べて高価であるので経済的に有利な方法とはいえない。
【0008】
酸無水物の合成法として、カルボン酸と無水酢酸を反応させれば、カルボン酸無水物を容易に得ることができることが知られている(特開昭62−181231号、特開昭62−234086号)。
【0009】
この方法では、カルボン酸が脱水してカルボン酸無水物を生成する代わりに、次式により無水酢酸が水和されて酢酸に変化するのが特徴である。
2RCOOH + (CH3 CO)2 O → (RCO)2 O +2CH3 COOH (1)
ここでRCOOHは脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸を示す。特に脂肪族カルボン酸として、プロピオン酸、コハク酸、イタコン酸、モノクロロ酢酸、芳香族カルボン酸としてピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸が実施例で用いられている。すなわち当該技術は、脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸に広く使用できる一般的技術である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、カルボン酸の無水物を水素化して対応するアルデヒド類を得る反応は公知であるが、工業的に安価に収率良くアルデヒド類を選るには満足行く方法が確立しているとは言えない。
酸無水物の合成法としてはカルボン酸の脱水反応があるが、カルボン酸の分子内脱水はともかく、分子間の脱水は、カルボン酸とアルコールのエステル化とは異なり、極めて難しい。
上記のようにカルボン酸と無水酢酸を反応させれば、カルボン酸無水物を容易に得ることができることが知られているが、この反応では、原料のカルボン酸に対して無水酢酸を大過剰に加えなければ反応が十分に進行しない。
本発明の目的は、以上ような欠点を克服し、カルボン酸からカルボン酸無水物およびアルデヒド類を工業的に有利に製造する方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記の如き課題を有するカルボン酸からカルボン酸無水物およびアルデヒドを有利に製造する方法について鋭意検討した結果、(a) 反応器上部に蒸留塔を連結した反応装置を用い、この反応器にカルボン酸と無水酢酸を仕込み、反応器を加熱し、発生した酢酸を蒸留塔の上部より抜き出すことにより、反応器内の酢酸の量を低く保つことができ、大過剰の無水酢酸を用いなくても、反応器内のカルボン酸をすべてカルボン酸無水物に変換することができること、および (b)カルボン酸と無水酢酸からカルボン酸無水物を製造するプロセスとカルボン酸無水物をVIII族金属触媒により水素化を行うプロセスを組み合わせること、或いは (c)該反応器にカルボン酸と無水酢酸およびVIII族金属触媒を仕込み反応させることにより、カルボン酸からアルデヒド類が有利に得られることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、(a) 反応器上部に蒸留塔を連結した反応装置を用い、該反応器にカルボン酸と無水酢酸を仕込み、反応により発生した酢酸を蒸留塔の上部より抜き出すことを特徴とするカルボン酸無水物の製造方法、(b) カルボン酸と無水酢酸を反応させ、得られたカルボン酸無水物をVIII族金属触媒により水素化を行うことを特徴とするアルデヒド類の製造方法、および (c)無水酢酸とVIII族金属触媒の存在下、カルボン酸を水素化することを特徴とするアルデヒド類の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以上の如く本発明は、特殊な反応装置を用いてカルボン酸からカルボン酸無水物を製造する方法と、カルボン酸からアルデヒド類を製造するための2つの方法がある。このアルデヒド類の製造法の一つは、カルボン酸からカルボン酸無水物を製造する工程と、発生したカルボン酸無水物をVIII族金属触媒の存在下に水素化してアルデヒドを生成させる2工程からなる製造方法。もう一つの方法は、一つの反応器にカルボン酸と無水酢酸、触媒を入れ、一つの工程でカルボン酸無水物の発生と水素化を行う方法である。
まず、2工程からなる製造法にも用いられるカルボン酸無水物を製造する方法について説明する。
【0014】
本発明に使用される原料のカルボン酸は特に制限がなく、例えば、炭素数20以下の脂肪族カルボン酸、炭素数20以下の芳香族カルボン酸が用いられる。すなわち、酢酸、プロピオン酸、イソノナン酸、イソ酪酸、ピバル酸、オクチル酸、ジフェニル酢酸、ナフトエ酸、フェニル酢酸などが挙げられる。
また原料のカルボン酸は、グリオキシル酸、グルコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、酒石酸、セバシン酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、乳酸、ピルビン酸、イタコン酸、メトキシ酢酸、イミノジ酢酸、p−アミノ安息香酸、サリチル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、p―ヒドロキシフェニル酢酸、p―ヒドロキシフェニルプロピオン酸、プロトカテキュ酸、ベンジル酸、o−ベンゾイル安息香酸、マンデル酸のように分子内に、アルデヒド、2重結合やヒドロキシル基、アミノ基等、カルボン酸基以外の官能基を有していても構わない。
さらに原料のカルボン酸は、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、マロン酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸など、分子内に複数のカルボン酸基を有していても構わない。これらのカルボン酸は単独で用いても、また2種以上のカルボン酸混合物を用いても良い。
【0015】
本発明においてカルボン酸からカルボン酸無水物を製造するために次のような反応装置が用いる。
すなわち、反応器上部に蒸留塔を連結した反応装置を用い、この反応器にカルボン酸と無水酢酸を仕込み、反応器を加熱し、発生した酢酸を蒸留塔の上部より抜き出すことにより、反応器内の酢酸の量を低く保つ。これにより、大過剰の無水酢酸を用いなくても、反応器内のカルボン酸をすべてカルボン酸無水物に変換することができる。
これはカルボン酸と無水酢酸の反応において、カルボン酸、カルボン酸無水物、酢酸、無水酢酸の間に平衡関係が存在するが、発生した酢酸を蒸留塔の上部より抜き出すことにより、この平衡関係カルボン酸無水物が生成し易くなることに基づくものと見られる。
この際、トルエン、ジオキサン等、酢酸と同程度または酢酸より沸点の高い溶媒を反応器に加えておき、反応器から酢酸と一緒に留出させ、蒸留塔で酢酸と分離すれば、酢酸の留去は容易になる。
【0016】
カルボン酸からカルボン酸無水物を製造するための反応温度は室温以上であれば構わないが、常圧で酢酸を容易に留去させるため、100℃以上が望ましい。
溶媒を加えた場合は、溶媒を沸騰状態に保つのが望ましい。反応圧力は常圧でも加圧でも構わない。加圧を行い、溶媒や酢酸の沸点を上昇させ、反応温度を高くすることにより、反応速度を上げることもできる。
【0017】
次に、得られたカルボン酸無水物を水素化してアルデヒド類を製造する方法について述べる。
アルデヒド類を製造するために使用できるカルボン酸無水物は特に制限されない。カルボン酸無水物生成方法で例示したカルボン酸の無水物はすべて使用できる。これらのカルボン酸基は一部またはすべてアルデヒドに変換可能である。但し、イソ酪酸など2級カルボン酸無水物の反応は遅く、ピバル酸のような3級カルボン酸無水物の反応はさらに遅くなる。
【0018】
カルボン酸無水物の水素化には通常は水素が用いられるが、ギ酸を用いることもできる。水素圧は常圧でも構わないが、加圧して反応速度と空間効率を高くすることもできる。ただし、生成するアルデヒド類が水素によってさらに還元されてアルコールに変化してしまうことがあるので、これを防ぐために最適な圧力、温度を設定するのがよい。圧力を高くするためには、反応器の肉厚が必要になり、反応器の制作費が高くなるので、おおむね5MPa以下が望ましい。水素は高純度である必要はなく、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等を含んでいても構わない。
水素発生器を用いるのが不経済なほど少量の生産には、水素ガスの代わりにギ酸を用いることができる。ギ酸は触媒上で容易に分解し、水素と二酸化炭素を発生させるからである。ギ酸は、還元するカルボン酸基と等量あれば良く、過剰には必要としない。
【0019】
カルボン酸無水物を水素化ための触媒には、VIII族金属を用いる。具体的にはパラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルトが挙げられる。これらの金属の中では、パラジウム、ルテニウムが反応速度、選択性が高く望ましい。均一系触媒だけでなく、固体金属触媒でも構わない。担持触媒には、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、ケイソウ土等を用いることができる。均一系触媒は、触媒1モルあたりの活性が高いのが特長であり、固体金属触媒は反応後の触媒の分離、回収が容易であることが特長である。
溶媒は用いても用いなくても構わないが、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。先に示した酸無水物の発生工程で用いた溶媒と同じものを使えば操作は容易である。
【0020】
水素化反応は気相、液相いずれでも可能である。気相で反応を実施する場合、カルボン酸無水物を気化させて、水素と共に固体金属触媒を詰めた反応装置に流して反応を行うことができる。この場合、生成物と触媒の分離が容易であるが、原料、生成物が気化可能な化合物に限られる。沸点が高く、気化が難しい化合物は、液相中で反応を行う。液相反応では、原料である酸無水物、副生するカルボン酸はいずれも生成物であるアルデヒド類と反応したり、水素化が進みすぎてアルコールを副生したりするので、反応温度を高くしすぎたり、反応時間をあまりにも長くすることは好ましくない。
水素化反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式、いずれでも構わない。
【0021】
以上、カルボン酸からの酸無水物の発生、発生したカルボン酸無水物の水素化という2工程からなるアルデヒド類の製造方法について述べてきたが、カルボン酸、無水酢酸、触媒を同時に一つの反応器に入れ、水素またはギ酸で水素化を行うこともできる。これは、一つの反応器内で2つの反応を同時に進行させることが可能なためである。使用できるカルボン酸、溶媒、触媒、水素、ギ酸は2工程で反応を行った場合と同様である。
【0022】
なお、一つの反応器内で2つの反応を同時に進行させる場合には、反応液中の無水酢酸の一部が水素化されてアセトアルデヒドと酢酸が生成する。このため反応器内には予め多めの無水酢酸を仕込んでおく必要がある。この無水酢酸の水素化を抑制するために、はじめに反応器に水素化すべきカルボン酸をカルボン酸無水物と、溶媒、触媒を入れ、水素を導入してから、最後に無水酢酸を少しづつ加える方法を用いることができる。このセミバッチ法では、無水酢酸は反応器に導入されると、反応器内のカルボン酸と反応し、カルボン酸無水物の生成のために消費されるので、アセトアルデヒドに水素化される量が少なくなる。
このように一つの反応器でカルボン酸からアルデヒド類を直接製造すれば、装置が簡略化され、アルデヒド類を工業的に有利に製造することができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、実施例により本発明が限定されるものではない。
【0024】
実施例1
安息香酸4.8g、無水酢酸4.2g、トルエン18.4gを、なすフラスコに入れた。留出ガスの凝縮器、および受器をなすフラスコ上部に連結した。なすフラスコを加熱し、留分18.9gを抜き出した。
なすフラスコに残った液をガスクロマトグラフィで分析したところ、安息香酸無水物が収率92mol%であった。
【0025】
実施例2
実施例1で得られた安息香酸無水物4.0gと、ジオキサン5.0g、1%Pd−C触媒2.0gをオートクレーブに入れ、水素を1MPaで加えた。反応温度50℃、反応時間4時間で反応させた後、反応溶液をガスクロマトグラフィで分析した。ベンズアルデヒドおよび安息香酸がそれぞれ収率99mol%、99mol%で得られた。ベンジルアルコールは観測されなかった。
【0026】
実施例3
テレフタル酸6.5g、トルエン15.0g、無水酢酸16.8g、1%Pd−Si触媒2.2gをオートクレーブに入れ、水素を圧力1MPaで加えた。反応温度80℃、反応時間1時間で反応させた後、反応溶液をガスクロマトグラフィで分析した。テレフタルアルデヒド、4―カルボキシベンズアルデヒドが原料のテレフタル酸に対して各々68mol%、21mol%で得られた。この際、アセトアルデヒドが原料の無水酢酸に対して63%生成すると共に、該無水酢酸と等量の酢酸が生成していた。
【0027】
実施例4
シュウ酸3.5g、トルエン15.0g、無水酢酸13.0g、1%Pd−C触媒2.2gをオートクレーブに入れ、水素を圧力1MPaで加えた。反応温度50℃、反応時間1時間で反応させた後、反応溶液をガスクロマトグラフィで分析した。グリオキサル酸、グリオキサールが、原料のシュウ酸に対して各々21mol%、70mol%生成していた。この際、アセトアルデヒドが原料の無水酢酸に対して65%生成すると共に、該無水酢酸と等量の酢酸が生成していた。
【0028】
実施例5
オレイン酸2.8g、ジオキサン15.0g、無水酢酸1.8g、1%Pd−C触媒0.5gをオートクレーブに入れ、水素を圧力1MPaで加えた。反応温度80℃、反応時間1時間で反応させた後、反応溶液をガスクロマトグラフィで分析した。対応するアルデヒドである9−オクタデセナールが収率64mol%で得られた。この際、アセトアルデヒドが原料の無水酢酸に対して65%生成すると共に、該無水酢酸と等量の酢酸が生成していた。
【0029】
実施例6
無水酢酸10.2g、プロピオン酸3.7g、ジオキサン15.0g、ギ酸5.0g、1%Pd−C触媒1.0gをなすフラスコに入れ、反応温度80℃、反応時間1時間で反応させた後、反応溶液をガスクロマトグラフィで分析した。プロピオンアルデヒドが収率67mol%で得られた。この際、アセトアルデヒドが原料の無水酢酸に対して67mol%生成すると共に、該無水酢酸と等量の酢酸が生成していた。
【0030】
実施例7
無水酢酸10.2g、プロピオン酸3.7g、ジオキサン15.0g、1%Ru−C触媒1.0gをオートクレーブに入れ、反応温度100℃、反応時間1時間で反応させた後、反応溶液をガスクロマトグラフィで分析した。プロピオンアルデヒド、nプロピルアルコールがそれぞれプロピオン酸に対して、42mol%、25mol%生成していた。また、アセトアルデヒド、エタノールが無水酢酸に対して、各々44mol%、23mol%生成すると共に、原料の無水酢酸と等量の酢酸が生成していた。
【0031】
【発明の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本発明の方法によって、反応器上部に蒸留塔を連結した反応装置を用い、発生した酢酸を蒸留塔の上部より抜き出すことにより、大過剰の無水酢酸を用いなくてもカルボン酸無水物が高収率で得られ、これと水素化を組み合わせることにより、アルデヒド類を効率良く製造することができる。
また一つの反応器でカルボン酸からアルデヒド類を直接製造することもでき、これにより装置が簡略化されるので、アルデヒド類を工業的に極めて有利に製造することができる。
Claims (3)
- カルボン酸と無水酢酸を反応させ、得られたカルボン酸無水物をVIII族金属触媒の存在下で、ギ酸を用いて水素化を行うことを特徴とするアルデヒド類の製造方法。
- 無水酢酸とVIII族金属触媒の存在下、カルボン酸を、ギ酸を用いて水素化することを特徴とするアルデヒド類の製造方法。
- VIII族金属がパラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルトより選ばれた少なくとも1種類の金属である請求項1または請求項2に記載のアルデヒド類の製造方法。
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