JP4552392B2 - 水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装分野に用いられる包装用の積層体に関するもので、特に酸素や水蒸気等の気体から内容物の変質を特に抑えることが必要とされる包装分野に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)の透過を防止するガスバリア性を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などの影響が少ないアルミニウム等の金属からなる金属箔やそれらの金属蒸着フィルム、高分子の中では比較的に酸素ガスバリア性に優れるポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニトリル等の樹脂のフィルムまたはそれらをコーティングしたフィルム等が一般的に良く用いられてきた。
【0003】
ところが、アルミニウム等の金属からなる金属箔やそれらの金属蒸着フィルム等を用いた包装材料は、温度・湿度の影響がなく高度なガスバリア性を持つが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなど多くの欠点を有し問題があった。またガスバリア性樹脂フィルムやそれらをコーティングしたフィルム等を用いた包装材料は、温度や湿度の影響が大きく高度なガスバリア性を維持できない、さらにはポリ塩化ビニリデン等を用いているものは廃棄・焼却の際に有害ガスを発生する恐れがあり、昨今の環境意識の高まりにより使用出来にくい等の問題がある。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば特許文献1及び特許文献2等に記載されているような酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物をプラスチックフィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により蒸着膜を成膜したフィルムが上市されている。これらの蒸着フィルムは透明性及び気体、水蒸気等のガスバリア性を有していることが知られ、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性を有する包装材料として好適とされている。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第3442686号公報
【0006】
【特許文献2】
特公昭63−28017号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した包装用材料に適するこれまでのバリアフィルムは、ある程度の酸素や水蒸気等の気体を遮断することはできるものの、アルミ等の金属箔と比較するとその性能は十分でなく環境負荷の高い金属箔等を用いたバリア材を使用せざる得ない状態にあった。
【0008】
すなわち、包装材料として求められる条件としては、酸素ガス等の一般的に内容物に対して影響を与える気体や水蒸気等を遮断する金属箔並の防湿性を満足するものは見いださせられていない。
【0009】
そこで本発明においては、透明で且つ金属箔並の気体及び水分を遮断するバリア性を持つ実用性の高い包装材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためのもので、請求項1に係る発明は、プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、気体の透過を防止する蒸着薄膜層(A層)、少なくとも水溶性高分子を含むコーティング剤を塗布した後、加熱して得られた中間被膜層(B層)、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)を順次積層した積層体であって、前記アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)が、酸化カルシウムから形成されていることを特徴とする水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体である。
【0012】
請求項2の発明は、前記中間被膜層(B層)が、水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド又はその加水分解物とを含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布した後、加熱して得られた層であることを特徴とする請求項1記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体である。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項2記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体である。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体である。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記蒸着薄膜層(A層)が、無機酸化物からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体である。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素のいずれか単体または混合物であることを特徴とする請求項5記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体である。
【0017】
<作用>
本発明によれば、プラスチック基材の少なくとも片面に、酸素や水蒸気等の気体及び水分の透過を防止する層(気体/水分遮断及び水分吸収層)として、「蒸着薄膜層(A層)/中間被膜層(B層)/アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)」の三層構成で、前記アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)が、酸化カルシウムから形成されているものを用いているので、外から入る酸素と水分を遮断することができるので、これまで得ることができたかった金属箔並みの賞味期限が可能となる実用性の高い包装材料を提供することが可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明を図面を用いて更に詳細に説明する。図1は、本発明の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体の一例を示した断面図である。
【0019】
まず、図1に一例として示した本発明の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体1は、基材2がプラスチック材料からなるフィルム基材であり、その少なくとも片面に蒸着薄膜層(A層)3、中間被膜層(B層)4、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)5を順次積層してなるものである。
【0020】
本発明で用いられる基材2は、プラスチック材料であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いることができる。これらは、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば、延伸されたものでも未延伸のものでも構わない。特に耐熱性等の観点から二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムやナイロンフィルムが好ましく用いられる。またこの基材の蒸着層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。また、この薄膜との密着性を良くするために、前記基材の積層面側を前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などのいずれかの処理を施しても良い。
【0021】
基材の厚さはとくに制限を受けるものではなく、また、材料としての適性を考慮して単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用できる。尚、上記三層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
【0022】
また、量産性を考慮すれば、連続的に前記各層を形成できるように長尺の連続フィルムとすることが望ましい。
【0023】
本発明における気体/水分遮断及び水分吸収層は、金属箔並の性能を発揮させるために、鋭意検討の結果、後述する3層から構成される必要がある。本発明における気体/水分遮断及び水分吸収層を構成する各層について更に詳細に説明する。
【0024】
まず、気体/水分遮断及び水分吸収層を形成する第1の層である蒸着薄膜層(A層)3を説明する。蒸着薄膜層3は、酸素、水蒸気等の気体の透過を防止する性質を有する層であれば特に限定しないが、例えばアルミニウム、銅、銀などの金属、またはイットリウムタンタルオキサイド、酸化アルミニウム、酸化珪素などの無機酸化物或るいはそれらの混合物等の膜から構成することが可能性である。これらの中では、本発明に係る積層体を使用して包装材料を製造した場合、この包装材料を透視して内容物を確認できること、使用後の廃棄が用意であること、検査の際金属探知器が使用できること等の理由から無機酸化物を適用することが望ましい。中でも、酸化アルミニウム、酸化珪素のいずれか単体または混合物の蒸着薄膜が、蒸着薄膜単体での酸素や水蒸気等の気体の遮断性に特に優れるので特に好ましい。
【0025】
蒸着薄膜層(A層)の厚さは、用いられる材料の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、5〜100nmの範囲内である。
【0026】
蒸着薄膜層(A層)3を基材2上に形成する方法としては種々あり、通常の真空蒸着法により形成することができるが、真空環境下で薄膜の材料を基材2に付着させる真空成膜法であれば、その他の方法を利用することもできる。例えば、スパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などの真空成膜法である。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が好ましく、薄膜と基材の密着成及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0027】
次いで、気体/水分遮断及び水分吸収層を形成する第2の層である中間被膜層(B層)4を説明する。中間被膜層(B層)は蒸着薄膜層(A層)上に塗工することにより高度なガス遮断性能を持たせるために設けられる層で、少なくとも水溶性高分子成分を含む必要がある。用いることのできる水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等水溶性であれば特に限定することはない。その中では特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が優れるのでより好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとして、例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等を含み、特に限定されない。これを溶液にして蒸着薄膜層(A層)上に塗布後、加熱乾燥し形成される。
【0028】
更に好ましくは、中間被膜層(B層)が、水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド又は加水分解物とを含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成されたものである。例えば、水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、或いはこれに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を調整し溶液とする。ここで持ちられる水溶性高分子は上述したものと同様なものが使用可能である。
【0029】
更に金属アルコキシドとは、一般式、M(OR)n (M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3 ,C2 H5 等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC2 H5 )4 〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C3 H7 )3 〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0030】
コーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることができる。
【0031】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の手段を用いることができる。
【0032】
中間被膜層(B層)の厚さは、均一な塗膜が得られれば特に限定しないが、一般的には100〜5000nmの範囲であることが好ましい。100nm以下の場合は塗膜が前面に均一にならない恐れあり十分なガス遮断性が得られない、また5000nmを越える場合は塗膜にフレキシビティを付与できなくなりクラック等が発生する恐れがあるため問題がある。より好ましくは、乾燥後の厚さが、200〜1000nmの範囲にあることである。
【0033】
最後に、気体/水分遮断及び水分吸収層を形成する第3の層であるアルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)5について説明する。気体/水分遮断及び水分吸収層は、中間被膜層(B層)に設けられ、中間被膜層(B層)を蒸着薄膜層(A層)と挟み込むことにより金属箔並の気体/水分遮断性を付与させると同時に水分吸収機能をもつアルカリ土類金属を配置することにより内容物からの水分を吸収し内容物の変質を抑えることを目的に設けられる層である。本発明者らは鋭意検討の結果、アルカリ土類金属酸化物層を積層することで上記目的を達成できること見出した。
【0034】
アルカリ土類金属酸化物は、その構造的な特徴から一般の雰囲気中で水や二酸化炭素を吸収し水酸化物へ変化する性能がある。この性能を利用することにより、本発明の積層体に水分吸収機能を付与することができる。アルカリ土類金属からなる酸化物であれば吸収性能の差があれこの機能を付与することができるが、成膜加工性や吸収性能の良さ等を考慮すると酸化カルシウムであることがより好ましい。水分吸収性能は、要求する品質により設計することが可能で、例えばそれに適した材料(格子欠陥の数等にて制御する等)の選定や該蒸着薄膜層(C層)5の膜厚等により性能をコントロールする。但し膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、水分吸収機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が500nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、8〜100nmの範囲にあることである。
【0035】
蒸着薄膜層(C層)5を形成する方法としては種々あり、通常の真空蒸着法により形成することができるが、真空環境下で薄膜の材料を基材2に付着させる真空成膜法であれば、その他の方法を利用することもできる。例えば、スパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などの真空成膜法である。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が好ましく、薄膜と基材の密着成及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0036】
更にアルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)5上に他の層を積層することも可能である。例えば印刷層、介在フィルム、ヒートシール層等である。
【0037】
印刷層は包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものである。例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層である。この印刷により、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を用いることができる。印刷層の乾燥膜厚(固形分)は0.1〜2.0μmで良い。
【0038】
また介在フィルムは、本発明の積層体のガスバリア層とヒートシール層の間に設けることで、本発明の積層体を化工して袋状包装材料とした時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。積層方法としては、2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等の公知の方法により積層できる。
【0039】
更にヒートシール層は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるが、それ以外の公知の方法により積層することも可能である。
【0040】
【実施例】
本発明の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体を具体的な実施例を挙げて更に説明する。
【0041】
〈参考例1〉
基材2として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、厚さ15nmの酸化アルミニウムを蒸着して蒸着薄膜層(A層)3を形成した。次いで下記組成からなるコーティング剤をグラビアコート法により塗布し、その後100℃ 30秒間加熱乾燥させ厚さ450nmの中間被膜層(B層)4を形成した。更に中間被膜層上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化マグネシウムを厚さ30nmの蒸着してアルカリ土類金属からなる蒸着薄膜層(C層)5を形成し、水分吸収性能を持つ蒸着フィルム積層体1を得た。
【0042】
中間被膜層(B層)を形成するコーティング剤の組成は、▲1▼液と▲2▼液を配合比(wt%)で60/40に混合したもの。
▲1▼液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2 換算)の加 水分解溶液
▲2▼液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)
【0043】
〈実施例1〉
参考例1において、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)5が、電子線加熱方式による真空蒸着方式により厚さ約35nmの酸化カルシウムからなるものである以外は参考例1と同様の本発明の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体を得た。
【0044】
〈実施例2〉
実施例1において、蒸着薄膜層(A層)3が、抵抗加熱方式による真空蒸着方式により厚さ約40nmの酸化カルシウムからなるものである以外は実施例1と同様の本発明の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体を得た。
【0045】
〈実施例3〉
実施例1において、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)5の厚さ約60nmの酸化カルシウムからなるものである以外は実施例1と同様の本発明の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体を得た。
【0046】
〈比較例1〉
参考例1において、中間被膜層(B層)4を設けなかった以外は参考例1と同様に蒸着フィルム積層体を得た。
【0047】
〈比較例2〉
参考例1において、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)5の代わりに電子線加熱方式により酸化スズを厚さ40nm設けた以外は参考例1と同様に蒸着フィルム積層体を得た。
【0048】
〈比較例3〉
参考例1において、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)5を設けなかった以外は参考例1と同様に蒸着フィルム積層体を得た。
【0049】
〈ドライラミネート〉
参考例、実施例及び比較例の蒸着薄膜層側に、ヒートシール層として厚さ30μmのポリプロピレンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層し包装材料を作製した。
【0050】
〈気体/水分遮断性評価〉
参考例、実施例及び比較例の積層体について、ガス遮断性の指標として酸素透過率(cm3/m2 ・day )及び水蒸気透過率(gr/m2 ・day )の測定を実施した。測定はモコン法を用いて測定し、その時の測定条件は酸素:30℃−70%RH、水蒸気:40℃−90%RHであった。その結果を表1に示す。
【0051】
〈水分吸収性評価〉
参考例、実施例及び比較性の積層体を、高温多湿の状態に有る一定期間保存した。その後熱分析(DTA)において保存前後の積層体の重量を測定し、水分吸収見られたものを○、水分吸収見られなったものを×した。その結果を併せて表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1〜3については、包装材料として用いられる条件とした内容物に対して影響を与える気体などを気体/水分遮断性及び水分吸収性を満たすものであったが、それに対して、比較例1〜3についてはそれを満たしているといえるものではなかった。
【0054】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、金属箔並の高度な気体/水分遮断性と水分吸収性を有しているの実用性の高い包装材料を提供することが可能なので、長期保存が必要な包装分野において巾広く使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体の部分断面図である。
【符号の説明】
1… 水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体
2… プラスチック基材
3… 蒸着薄膜層(A層)
4… 中間被膜層(B層)
5… アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)
Claims (4)
- プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、酸化珪素から成り、気体の透過を防止する蒸着薄膜層(A層)、少なくとも水溶性高分子を含むコーティング剤を塗布した後、加熱して得られた中間被膜層(B層)、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)を順次積層した積層体であって、前記アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着薄膜層(C層)が、酸化カルシウムから形成されていることを特徴とする水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体。
- 前記中間被膜層(B層)が、水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド又はその加水分解物とを含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布した後、加熱して得られた層であることを特徴とする請求項1記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体。
- 前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項2記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体。
- 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水分吸収機能を持つ蒸着フィルム積層体。
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