JP4545989B2 - 感光性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、プリント配線板の材料として使用される感光性樹脂組成物に関する。
より詳細には、本発明は、可撓性、伸びに優れ、且つ耐熱性、電気特性に優れたプリント配線板の材料となる感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型高密度化の要望に対し、プリント配線基板もより小型高精細化、軽量薄型化への対応が重要となっている。これまで、基板上に塗布されるソルダーレジスト材料には紫外線硬化し希アルカリ現像が可能で耐メッキ性、耐溶剤性の優れたものが一般に使用されてきたが、最近、細かい配線を内部に含有するビルトアップ基板などでは熱膨張率の違いからソルダーレジスト/封止樹脂界面等でマイクロクラックが発生することから、感光性樹脂硬化物の耐クラック性に問題が出てきた。さらに細密な配線間部分でもソルダーレジストの絶縁信頼性の向上が要求されている。
【0003】
電気絶縁性と耐熱性の向上のためにBT樹脂などのシアン酸エステル化合物とエポキシアクリレートを予め反応させることによって作成した樹脂で、電気特性と現像性が同時に向上することがわかっている。
【0004】
しかし、これらの樹脂は電気絶縁性、耐熱性は優れているものの、硬いシアン酸エステル骨格により高弾性率となり可撓性、伸びが劣ることがわかった。
【0005】
従来、可撓性、伸びを改善するための手法として、低弾性率の樹脂を配合し全体の弾性率を下げる方法、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂の分子内に低弾性率を有する樹脂を反応で取り込み、低弾性率としたものが殆どであった。これらを用いて得られたレジストは、可撓性には優れるが、耐熱性が低く、電気絶縁性が劣る等の問題があり、可撓性、伸びが優れ、且つ耐熱性、電気絶縁性に優れたレジスト組成物は見られなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題を解決した、可撓性、伸びが優れ、且つ高耐熱性と良好な電気絶縁性を有する感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【問題を解決するための手段】
本発明者等は、前記目標を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、シアン酸エステル化合物および多塩基酸無水物で変性したエポキシアクリレートをレジストの主樹脂として用い、一般式
【化2】
Figure 0004545989
(n、mは1以上の整数)で表される構造を有する化合物(d)とコアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(e)を感光性樹脂組成物に必須成分として配合することにより、他の特性を損ねずに可撓性、伸びを付与することが可能で、耐クラック性に優れ、さらに耐熱性、電気絶縁性にも優れたものが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、シアン酸エステル化合物および多塩基酸無水物で変性したエポキシアクリレートと、一般式
【化3】
Figure 0004545989
(n、mは1以上の整数)で表される構造を有する化合物(d)とコアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(e)を含む感光性樹脂組成物である。
【0009】
本発明に使用するエポキシアクリレート(a)としては、エポキシ樹脂とアクリル酸との反応物で、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールZ型エポキシアクリレート、ビスフェノールF型エポキシアクリレート、ビフェノール・エポキシアクリレート、テトラメチルビフェノール・エポキシアクリレート、ヘキサメチルビフェノール・エポキシアクリレート、キシレンノボラック・エポキシアクリレート、ジシクロペンタジエンノボラック・エポキシアクリレート、フェノールノボラック・エポキシアクリレート、クレゾールノボラック・エポキシアクリレートであり、これらを単独または適宜2種類以上配合してなる組成物、または反応物などが挙げられる。中でも入手容易なビスフェノールA型エポキシアクリレートが適している。
【0010】
本発明で使用されるシアン酸エステル化合物(b)は下記一般式で示される。
一般式 : R−(O−CN)m
(式中のmは2以上、通常5以下の整数であり、Rは芳香族性の有機基であって、上記のシアネート基は該有機基Rの芳香環に直接結合しているもの)
【0011】
具体的に例示すると、1,3-または1,4-ジシアネートベンゼン、1,3,5-トリシアネートベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-または2,7-ジシアネートナフタレン、1,3、6-トリシアネートナフタレン、4,4'-ジシアネートビフェニル、ビス(4-シアネートフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアネートフェニル)プロパン、ビス(4-シアネートフェニル)エーテル、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)スルホン、トリス(4-シアネートフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアネートフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類である。
【0012】
これらのほかに特公昭41−1928、同43−18468、同44−4791、同45−11712、同46−1112、同47−26853、および特開昭51−63149などに記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いられうる。これらは、単独あるいは2種類以上組み合わせて使用される。これら成分中には加水分解性Cl、Naなどの不純物が極めて少なく、本発明の1成分として配合することによって全体の不純物量が少なくなり、半導体周辺材料としては最適である。
【0013】
また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアネート基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量200〜6000のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステル化合物モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸;ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基;炭酸ナトリウムなどの塩類などを触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部モノマーが含まれており、モノマーとポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。
【0014】
本発明に使用する多塩基酸無水物(c)としては、1分子中に2つ以上のカルボン酸を有するもので、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメテート)、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメテート、マレイン化メチルシクロヘキセン四塩基酸無水物、他無水酸を分子内に有しているもの、これらを単独または2種類以上配合してなる組成物が挙げられる。
【0015】
本発明の必須成分である化合物(d)は下記の一般式
【化4】
Figure 0004545989
(n、mは1以上の整数)で示される構造を有するもので、一般に公知のものが使用できる。例えば、市販のものでは、Actilane120TP25、Actilane167、Actilane170、Actilane180GP20、Actilane180HD20、Actilane180TP20(日本シーベルヘグナー製)が挙げられる。分子量は500〜10000のものが好ましい。使用量は感光性樹脂(B)100重量部に対して1〜50重量部であるが使用量が増えると現像性の低下が見られるため、好ましくは5〜20重量部である。
【0016】
本発明の多重構造を有するコアシェルポリマー粉体(e)とは、一般に公知のものが使用可能であるが、弾性率を下げ、伸びを大きくするためには、コア層に弾性率を有するゴム状のポリマーを有し、外側をガラス状のポリマーあるいは無機物質で被覆した2重以上の構造となったものが使用される。もちろん、中心部がガラス状ポリマー、その外側がゴム状ポリマー、最外層がガラス状ポリマーという構造のものも使用できる。ゴム状のポリマーは、特に限定しないが、好適にはアクリルゴム、その共重合ポリマーが使用される。またシェル部はガラス状ポリマーでは特に限定はなく、アクリロニトリルースチレンポリマー、エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ポリマー、水酸基含有ポリマー等、無機物質では、シリカ、アルミナ等で被覆された粉体が使用される。例えば、市販のものでは、スタフィロイドAC3355、スタフィロイドAC3816、スタフィロイドAC3832、スタフィロイドAC4030、スタフィロイドAC3364、スタフィロイドIM101、スタフィロイドIM203、スタフィロイドIM301、スタフィロイドIM401、スタフィロイドIM601、ガンツパールGBM55、ガンツパールGM1005H(ガンツ化成製)等が使用できる。
【0017】
特にUV選択熱硬化型レジストには、カルボキシル基含有ポリマー被覆粉体が好ましく、現像性に優れたものが得られる。シェル層が耐薬品性に優れているため配合時にブロッキングがしにくく、均一なものが得られる。粒子径は、特に限定はないが、均一分散、現像性等の点から、粒子径が0.06〜20μmのものが好ましい。使用量は感光性樹脂(B)100重量部に対して、1〜50重量部であるが、使用量が増えると現像性の低下、分散性の低下による機械特性の低下が起こるため、好ましくは5〜30重量部である。
【0018】
本発明を実施するにあたり実施方法を説明する。第一にエポキシアクリレート(a)をシアン酸エステル化合物(b)で変性する場合、限定はされないが一般的に、(a)100部に対して(b)5〜40部を変性させることができる。しかし、(b)の量が少ない場合、耐熱性、吸湿性およびプレッシャークッカー後の電気絶縁性が不十分であり、反対に量が多い場合は樹脂合成時のゲル化など、製造時に問題が生じる。従って好ましくは10〜30部である。反応温度は50〜100℃、反応時間は5〜100時間である。反応時の粘度調整などのために溶剤を用いることも可能で、特に制限はないが、感光性樹脂組成物塗膜の乾燥時にほとんどが蒸発できるような範囲の沸点を持つものが好ましい。たとえば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルエーテルモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、ソルベントナフサ、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類などが単独または2種類以上混合して用いられる。
【0019】
次に樹脂をアルカリ現像型にするためにカルボン酸変性を行う。変性量はエポキシアクリレート(a)100部に対し10〜90部で、得られるのは樹脂酸価が40〜400mgKOH/gのものだが、現像性の面から酸価50〜100程度が好ましいので酸価をその範囲にするような割合で多塩基酸無水物を投入する必要がある。この場合にも粘度調整などの目的で溶剤を使用することが可能であり、上述の溶剤種を使用することができる。
【0020】
感光性樹脂(B)および化合物(d)およびコアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(e)感光性樹脂組成物(C)として使用する場合について説明する。レジストインクとして使用する場合には、樹脂(B)、化合物(d)のほかにエポキシ樹脂、光重合開始剤、化合物(d)以外のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が併用される。
【0021】
本発明で使用されるエポキシ樹脂としては一般に公知のものが使用できる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。これらのエポキシ樹脂は1種あるいは2種以上混合して用いられる。
【0022】
本発明に使用される光重合開始剤は、公知のもので、たとえばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類、ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、アセトフェノン、2,2'-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、β-メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1,4-ナフトキノンなどのキノン類、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の過酸化物などが1種類あるいは2種類以上組み合わせて使用される。使用量は、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%である。
【0023】
本発明で使用される化合物(d)以外のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、一般に公知のものが使用される。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の一価または多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールF型エポキシアクリレート等のエポキシのアクリレート類が挙げられる。これらの化合物は1種類あるいは2種類以上組み合わせて使用される。使用量は、樹脂中1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。
【0024】
樹脂の混合は、三本ロールミル、ホモジナイザーなどの一般に公知の均一分散を行える方法で混練する。また、使途により感光性樹脂組成物(C)中に充填剤、硬化促進剤、消泡剤、表面処理剤、難燃剤、顔料、染料等の公知の添加剤を添加することが出来る。充填剤としては、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ等のシリカ類、ホワイトカーボン、チタンホワイト、アエロジル、アルミナ、タルク、天然マイカ、合成マイカ、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、E−ガラス、A−ガラス、C−ガラス、L−ガラス、D−ガラス、S−ガラス、M−ガラスG20−ガラス等を、硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン等の第三アミン類、ホスフィン系やホスホニウム系のリン化合物等を挙げることが出来る。
【0025】
ここで、レジストインクは樹脂の含有量が全体量の30〜90重量%になるように調製するのが好ましい。樹脂量が30重量%未満では樹脂の均一膜厚を確保することが難しく、品質が不安定になってプリント配線板の用途としての使用に耐えない。樹脂量が90%を超えると、塗布したプリント配線板上で剥離の原因になったり、電気特性にばらつきが生じる恐れがある。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物(C)は、エッチングレジスト、及びソルダーレジスト、ビルトアップ配線板用絶縁レジストのような永久レジストのレジストインクに有用であるほか、塗料、コーティング剤、接着剤等として使用できる。本発明の感光性樹脂組成物は、例えば次のようにして硬化し、硬化物を得る。すなわち、プリント配線板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法などの方法により10〜160μmの膜厚で本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を60〜110℃で乾燥させた後、ネガフィルムを介して紫外線を照射し、未露光部分を希アルカリ水溶液で現像した後、さらに物性向上のために紫外線の照射、または加熱によって十分硬化させ、硬化被膜を得る。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物(C)を硬化させるための活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプあるいはメタルハイドライドランプなどがある。露光量は100〜2000mJ/cm2、好ましくは、250〜1000mJ/cm2である。露光量が少ないと照射した部分が硬化せず、現像時に溶解する。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物(C)光照射後の現像は、スプレーで噴霧するスプレー現像法、現像液にプリント配線板を浸漬し、振動させるディップ現像法など、公知の方法が使用できる。現像液の温度は5〜50℃、好ましくは25℃〜40℃である。温度が低いと現像時間がかかる、現像性が悪いなどの問題を生じる。
温度が高いと光照射した硬化部分が溶解してしまう。現像液としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムあるいはアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液など公知の希アルカリ水溶液が使用できる。水溶液中のアルカリ剤の量は、0.1〜5.0重量%が好適である。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物(C)は現像後に加熱硬化を行う。硬化温度は100〜250℃、好ましくは120℃〜200℃である。温度が低いと硬化に時間がかかり、温度が高いと変色、一部膨れ等の問題が生じる。本発明の感光性樹脂組成物(C)は加熱硬化後、ニッケルメッキ、金メッキ等のメッキ処理を行うことが出来る。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
合成例 1
ビスフェノールA型エポキシアクリレート(昭和高分子製 SP1509)100重量部とビスフェノールA型シアン酸エステル化合物(BT2070)5重量部、溶剤としてカルビトールアセテート/ナフサ(50/50)を105重量部加え固形分含量50%になるようにした。70℃加熱下で機械攪拌を行い、赤外線吸収スペクトルによりシアネートピーク(2300cm−1付近)を追跡した。5.5時間後にシアネートピークが消滅したので反応の終点とした。この反応液に無水ピロメリット酸を22.5部(エポキシアクリレートのモル数の50%に相当)および上記溶剤22.5部を加え、反応温度70℃で機械攪拌を行い、赤外線吸収スペクトルにより無水カルボン酸のピーク(1850cm−1)を追跡し、6時間後に消滅したので反応の終点とした。この樹脂(イ)のカルボン酸価は90.2mgKOH/gであった。
【0031】
合成例 2
フェノールノボラック型エポキシエポキシ(日本化薬社製EPPN201L、エポキシ当量193)386重量部とアクリル酸144重量部を、カルビトールアセテート中で還流させながら反応させた。次いで、反応生成物にヘキサヒドロフタル酸無水物180重量部を加え、80℃で5時間反応させた。この樹脂(ロ)のカルボン酸価は92.3mgKOH/gであった。
【0032】
実施例1〜2、比較例1〜4
合成した主樹脂(イ)、主樹脂(ロ)、および化合物(d)(Actilane170:日本シーベルヘグナー製)、コアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(e)(スタフィロイドAC3832:ガンツ化成製)を用いて表1のような組成で混ぜ、三本ロールミル(アイメックス社製)により混練して感光性樹脂組成物の溶液を調整した。
これらの塗料を、銅回路表面をメックCZ処理(メック(株))で処理したプリント配線板の上に塗布し、80℃で20分乾燥して溶剤を飛ばし、その上にフィルムを配置して、紫外線を500mJ/cm2照射した後、1wt%の炭酸ナトリウム水溶液で現像した。その後、150℃で1時間熱硬化した。特性評価結果を表2に示した。
【0033】
塗膜とした樹脂組成物の特性を以下の方法により評価した。
・密着性:JIS K 5400 に準じて、試験片に1mmの碁盤目を100個作成し、セロファンテープにて引き剥がし試験を行い、碁盤目の剥離状態を見た。表中の分母は試験碁盤目数、分子は残存数である。
・可撓性:0.3mm厚の銅版上に厚さ40μmの塗膜を作成し、エリクセン試験(JIS K 5400)を行った。
・半田耐熱性:260℃の半田槽に30秒間浸漬後、レジストの異常の有無を目視観察した。 ○:塗膜に異常なし。 ×:塗膜に膨れ、剥離有り。
・ガラス転移温度:厚さ40μmの塗膜を作成し、TMA法(JIS C6481)にて測定した。
・現像性:現像後、150℃で1時間熱硬化してから、現像面を目視で観察するとともに、無電解ニッケルメッキ(PH 4.5、浸漬 90℃・20分)を施し、ニッケルメッキの付着状態を観察して現像性を判定した。
・耐酸性:10重量%塩酸に30分間浸漬したのち、塗膜の常態を目視により観察した。 ○:塗膜に異常なし。 ×:塗膜に膨れ、剥離あり。
・耐マイグレーション性: 得られた塗料を、櫛形パターンを50個形成した(使用銅張積層板商品名:CCC-HL830、三菱ガス化学<株>製、ライン/スペース=60/60μm)基板上にスクリーン印刷法にて乾燥後の厚みが30〜40μmとなるように塗布し、80℃の熱風乾燥機で乾燥した。その後、ネガフィルムを密着させ、500mJ/cm2の紫外線を照射してから1wt%炭酸ナトリウム水溶液で現像し、更に150℃にて1時間熱硬化させた。これを用いて85℃,85%RH,50VDC条件下で絶縁抵抗を測定しマイグレーションを測定した。
・伸び、弾性率、最大応力: 銅箔上に塗料を塗り、80℃・20分乾燥、UV照射500mJ/cm2を重ね塗りして繰り返し、厚さ約100μmの塗膜とした後、銅箔をエッチング除去したサンプル片に対して、引張り試験(JIS K 7127)を行い、伸び、弾性率、最大応力を測定した。
・耐クラック試験: 銅張積層板(商品名:CCL-HL830HS 0.1mm 18μm 両面銅箔、三菱ガス化学<株>製 )に回路を形成し、その上に塗膜厚が40μmとなるように全面に塗布し、80℃・25分乾燥して、UV照射を500mJ/cm2行い、更に裏面にも同様に塗布、乾燥、UV照射を行ってから、中央の回路の上に400μmの半導体チップを、ダイヤタッチ(商品名:BT-S657D、三菱ガス化学<株>製)で貼り付け、110℃・2時間+160℃・2時間硬化させて、その上にポッティング樹脂(商品名:BT-S657、三菱ガス化学<株>製)で被覆し、110℃・2時間+160℃・3時間硬化させて試験片を作成した。これを-55℃と+150℃の二つの液槽に交互に5分間ずつ浸漬する冷熱衝撃試験を500サイクル実施後、レジストのクラック及びプリント配線板の回路切断について100枚試験を行った。表2には分母に試験数、分子にクラック又は回路切断数を記した。
【0034】
【表1】
Figure 0004545989
【0035】
エピコート828(ビスフェノールAエポキシ、油化シェル製)、EHPE3150(脂環式エポキシ:エポキシ当量180:ダイセル化学)、BYK354、BYK057(消泡剤、表面平滑剤:ビッグケミー製)、フタロシアニングリーン(山陽色素製)、イルガキュア907(光重合開始剤、チバガイギー製)、TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート、日本化薬製)。
【0036】
【表2】
Figure 0004545989
【0037】
【発明の効果】
上記のように本発明は、シアン酸エステル化合物変性で、なお且つ酸無水物による変性エポキシアクリレートと、特定の構造を有する化合物を必須成分として含む感光性樹脂組成物であり、良好な可撓性と伸びを有し、さらに高耐熱性で、電気絶縁性に優れているものである。

Claims (8)

  1. エポキシアクリレート(a)をシアン酸エステル化合物(b)で変性したもの(A)と多塩基酸無水物(c)との反応物である感光性樹脂(B)及び一般式
    Figure 0004545989
    (n、mは1以上の整数)で示される化合物(d)及びコアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(コア/シェル型粉体)(e)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物(C)。
  2. 請求項1記載の化合物(d)の分子量が3000〜7000である感光性樹脂組成物(C)。
  3. 請求項1記載の感光性樹脂(B)100重量部に対して請求項1または2に記載の化合物(d)が5〜30重量部である感光性樹脂組成物(C)。
  4. 請求項1記載のコアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(e)が、球状のアクリルゴムの表面に他樹脂等を被覆して得られる粉体である感光性樹脂組成物(C)。
  5. 請求項1または4に記載のコアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(e)の平均粒径が0.06〜20μmである感光性樹脂組成物(C)。
  6. 請求項1、4または5に記載の粉体(e)の表層に被覆する樹脂等が、少なくとも分子内にカルボキシル基を有する樹脂である感光性樹脂組成物(C)。
  7. 請求項1記載の感光性樹脂(B)100重量部に対して請求項1、4、5または6に記載のコアにゴム弾性を有する多重構造の粉体(e)が5〜30重量部である感光性樹脂組成物(C)。
  8. 請求項1、2、3、4、5または6に記載の感光性樹脂組成物の硬化物(D)。
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