JP4545063B2 - 皮膚状態改善組成物 - Google Patents
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Description
したがって、本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
(1)酵素処理或いは非酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した酵母細胞壁画分を有効成分とする皮膚状態改善用組成物。
(2)酵母エキス抽出残渣を、水洗浄処理、或いは高圧処理及び水洗浄処理を施すことにより得られる酵母細胞壁画分を有効成分とすることを特徴とする(1)に記載の組成物。
(3)酵母細胞壁画分の乾燥物中の食物繊維含量が60重量%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の組成物。
(4)皮膚状態改善用組成物が、生体に摂取されて適用されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)皮膚状態改善が保湿作用であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)皮膚状態改善が美白作用であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(7)皮膚状態改善が活性酸素消去作用であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(8)医薬品、飲食品または飼料であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
「酵母細胞壁画分」は、酵素処理或いは非酵素処理した酵母菌体から水又は極性溶剤に可溶性の菌体内成分(例えば蛋白質、アミノ酸、核酸など)を除去することにより得られる酵母細胞壁を主成分とする分画物質を意味する。さらに具体的には、酵母細胞壁画分は、従来公知の酵母エキス製造の際に排出される酵母エキス抽出残渣を水洗浄処理するか、或いは高圧処理および水洗浄処理することによって得ることができる(後述の実施例1および2参照のこと)。酵母細胞壁画分の特徴の1つとして、乾燥物中の食物繊維含量が60重量%以上、好ましくは65重量%以上、最も好ましくは80重量%以上である。
本発明に用いられる酵母細胞壁画分の原料となる酵母としては、分類学上酵母に属し、可食性の酵母であれば特に制限はなく、例えばビール醸造工程の副生成物であるビール酵母の他、ワイン酵母、パン酵母、トルラ酵母、アルコール酵母、清酒用酵母などを用いることができ、より具体的には、ビール酵母、パン酵母の属するサッカロマイセス属のサッカロマイセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)あるいはサッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、その他サッカロマイセス・ルーキシ(Saccharomyces rouxii)、サッカロマイセス・カールスバーゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、またメタノール資化性酵母であるキャンディダ属のキャンディダ・ウティリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、キャンディダ・フレーベリ(Candida flaveri)、キャンディダ・ボイジニィ(Candida boidinii)等を、さらにトルラ属のロドトルラ・ミニュータ(Rhodotrura minuta)等を挙げることができる。
本発明において有効成分として用いられる酵母細胞壁画分は、酵素処理或いは非酵素処理した酵母菌体から、例えば蛋白質、アミノ酸、核酸などの水又は極性溶剤に可溶性菌体内成分を除去したものであり、通常、酵素処理により酵母菌体を溶菌して可溶性菌体内成分を菌体外に分離・除去することにより調製することができる。かかる酵素処理方法としては、酵母菌体の酵素を使用するいわゆる自己消化法、外部からプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、グルカナーゼ、エステラーゼなどの酵素を添加する酵素添加法、それらを併用する方法などを例示することができる。かかる酵素処理酵母菌体から、可溶性菌体内成分を遠心分離などの除去処理を施すことによって酵母細胞壁画分を得ることができる。更に、好ましくは、得られた酵母細胞壁画分に高圧処理を施し、水洗浄を行うことによって、より純度の高い酵母細胞壁画分を得ることもできる。
上記の食物繊維含量は、以下に示す酵素−重量法により測定して得られた値である。
即ち、500ml容トールビーカー2個に採取量の差が20mg以内であるように試料を1gずつ分取し(S)、0.08mol/Lリン酸緩衝液(pH8.0)を50mlずつ、及びターマミル(NOVO NORDISK, 120L)を0.1mlずつ添加し、沸騰水中で約5分間隔で振とうしながら30分間加熱する。放冷後、0.275mol/L水酸化ナトリウム溶液10mlでpH7.5±0.1に調整し、リン酸緩衝液に50mg/mlの濃度で溶解させたプロテアーゼ溶液(SIGMA「P−5380」)を0.1mlずつ添加した後、60℃、30分間振とうする。放冷後、0.325mol/L塩酸溶液10mlでpH4.3±0.3に調整し、アミログルコシダーゼ溶液(SIGMA「A−9913」)を0.1mlずつ添加した後、60℃、30分間振とうする。その後、60℃に加温した95%エタノールを4倍容ずつ加え、室温で1時間放置後、あらかじめ約1.1gのセライトでろ過層を形成させてある2G2のガラスフィルターを用い、吸引ろ過する。残留物を78%エタノール20mlで3回、次いで95%エタノール10mlで2回以上、最後にアセトン10mlで2回以上洗浄し、105℃で一晩乾燥させる。恒量測定(R1、R2)後、一つは525℃で5時間灰化させ、灰分含有率(A)を算出する。もう一つはケルダール法(係数6.25)により蛋白質含有率(p)を算出する。試料を添加せず同様の方法により処理した各値をブランク値とする。それぞれの値をもとに以下の計算式によって食物繊維含量を算出する。
R:残留物の重量(平均値、(R1+R2)/2、mg)
P:残留物中の蛋白含有率(%)
A:残留物中の灰分含有率(%)
S:試料採取量(平均値、mg)
B:ブランク(mg)
B(mg)=r×(1−(p+a)/100)
r:ブランク残留物の重量(平均値、mg)
p:ブランク残留物中の蛋白含有率(%)
a:ブランク残留物中の灰分含有率(%)
本発明の組成物は、皮膚(または、肌)表面の水分蒸散量を抑制する効果を有しているため、肌の保湿作用を有しており、また、水分を保持する効果を有している。従って、該組成物を摂取することにより、肌の乾燥状態を改善(ドライスキンの改善)したり、肌の乾燥を予防(ドライスキンの予防)したり、肌の角層バリア機能を向上・改善したりすることができる。このような優れた作用のために、肌に張りやツヤを付与し、シワやタルミの改善や、乾燥による肌荒れの防止や改善も期待できる。また、本発明の組成物は、保湿効果を有しているため、肌に潤いを与える、肌をしっとりさせる、肌を柔らかくさせる、肌をすべすべさせる、肌をつやつやさせるなどの効果を発揮することが期待される。
これらは、上記組成物の例と同様に、飼料やペットフードに用いられている形態であればいずれの形態であってもよく、通常飼料やペットフードに含有される添加剤や食品素材と組み合わせて、常法に従って種々の形態に調製することができる。もちろん、本発明の組成物をそのまま用いて飼料又はペットフードとしてもよい。また、本発明組成物の含有量、飼料やペットフードの摂取量等については、本発明の効果を発揮できるようなものであれば特に限定はされず、その形態、家畜やペットの種類等により適宜選択されるものであり、例えば、上記食品の場合と同様とすることができる。さらに、家畜の飼料やペットフードとして利用する場合にも、皮膚(肌)の水分蒸散量を抑制する効果や、それに伴う、肌の乾燥状態改善など、上記したような肌の状態の改善を期待して摂取させることができる。
滑沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウムなどである。
崩壊剤の例は、繊維素グリコール酸カルシウムなどである。
懸濁剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのようなグリコール類、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商標)などである。
保存剤の例は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ソルビン酸ナトリウムなどである。
風味剤の例は、ペパーミントなどである。
甘味剤の例は、蔗糖、人工甘味料、例えばアスパルテーム(商標)などである。
錠剤や丸剤は、必要によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの糖衣や、胃溶性又は腸溶性物質のフィルムで被覆してもよいし、2つ以上の層で被覆してもよい。
カプセル剤は、軟質または硬質ゼラチンを被覆剤として使用しうる。
投与方法は、経口投与が好ましい。
ビール醸造工程より副生成物として得られる、発酵後ビール酵母スラリーの重量を正確に量った後、固形分が10重量%になるように加水した。水酸化ナトリウムをpH9となるまで添加し、遠心分離を行い、沈殿画分に加水して洗浄後、再度遠心分離を行った。固形分が10重量%になるように加水した懸濁物を冷却しながら高圧ホモジナイザー処理を行った後、50℃、3時間以上の反応条件で自己消化させ、さらにプロテアーゼを添加し50℃で一晩酵素反応を行った後、遠心分離を行い可溶性菌体成分を除去した。得られた酵母エキス抽出残渣の固形分が10重量%になるように加水して洗浄後に遠心分離を行う操作を2度繰り返し、ここで得られる沈殿画分を凍結乾燥したものを「酵母細胞壁画分1:YCW凍結乾燥物」とし、その成分分析を行った。水分は試料を常圧下105℃で5時間加熱する常圧加熱乾燥法(「食品分析法、日本食品工業学会食品分析法編集委員会編、p4」参照)により、タンパク質は前述のケルダール法により、灰分は前述の直接灰化法により、食物繊維は前述の酵素−重量法によりそれぞれ測定した。測定は3回行い、その平均値を重量%で示した。成分分析値を表1に示す。
ビール醸造工程より副生成物として得られる、発酵後ビール酵母スラリーの重量を正確に量った後、固形分が10重量%になるように加水した。水酸化ナトリウムをpH9となるまで添加し、遠心分離を行い、沈殿画分に加水して洗浄後、再度遠心分離を行った。固形分が10重量%になるように加水した懸濁物を冷却しながら高圧ホモジナイザー処理を行った後、50℃、3時間以上の反応条件で自己消化させ、さらにプロテアーゼを添加し50℃で一晩酵素反応を行い、その後、遠心分離を行うことで可溶性菌体成分を除去した。得られた酵母エキス抽出残渣を、高圧ホモジナイザー(APV社製「Blue−top 40.80H」)を用いて60℃下900barで高圧処理を行った。高圧処理は4回行い、それぞれの該高圧処理液状物を水で4倍に希釈・攪拌後、遠心分離機(アルファラバル社製「FEUX512型」)を用いて固液分離を行い、エキス分の洗浄・除去を行った。この洗浄・除去操作をさらに3回繰り返し、酵母細胞壁画分スラリー(以下「BYCスラリー」と略す)を製造した。高圧処理を4回施したBYCスラリーを凍結乾燥したものを「酵母細胞壁画分:BYC1」、またBYCスラリーを噴霧乾燥したものを「酵母細胞壁画分:BYC2」とし、実施例1にならい成分分析を行った。値を上記表1に示した。
25〜35歳までの健常人女性6名を被験者とし、実施例2で得られたBYC2を1日6g摂取させた。摂取期間は3週間連日とし、摂取前後における肌の状態変化(角層水分量、バリア機能、メラニン値)について皮膚測定機を用いた評価を実施した。被検者は、測定部位の洗浄後30分間椅子に座って安静待機し、測定は室温20〜23度、湿度40〜50%に調整した環境試験室内で実施した。
角層の水分測定は、Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製「Corneometer CM825」を用い、低周波キャパシタンス法にて測定した。測定部位は、前腕、頬、乾燥の目立つ口角付近の3箇所とした。測定の結果を表2に示す。BYC摂取前から十分な水分量を示した頬では、BYC摂取による効果は確認できなかったものの、前腕ならびに口角付近ではBYC摂取後に明らかな水分量の増加が認められた。特に乾燥していた口角付近では、BYC摂取前と比較し水分量の有意な増加が認められた(p<0.05)。
Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製「Tewameter TM300」を用いて上腕の経表皮水分蒸散量を測定し、バリア機能を評価した。経表皮水分蒸散量は、皮膚から蒸散する水分量を測定することから、値が低いほどバリア機能が高いといえる。結果を図1に示す。BYC摂取により、被験者ほぼ全員で経表皮水分蒸散量の低下が認められた。BYC前の経表皮水分蒸散量平均値が14.4g/m2/hrだったのに対し、BYC摂取後では12.1g/m2/hrと有意に低下しており(p<0.001)顕著なバリア機能の向上が認められた。また、今回計測した経表皮水分蒸散量は、体内からいかに水分が外に透過しやすいかを示すだけでなく、外界から皮膚内部へ物質がいかに透過しやすいかを示していると考えられており、このことから、BYCを摂取することにより、外界からの刺激の侵入をも抑制できる可能性が示唆される。
Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製「Maxameter MX18」を用いて、メラニン値を測定した。測定部位は、顎下(紫外線の影響を受けにくい部位)と頬(紫外線の影響を受けやすい部位)の2箇所とした。結果をそれぞれ図2、図3に示す。BYCの摂取により、顎下・頬ともに有意なメラニン値の低下が認められた。(p<0.05)
肌の乾燥に悩む28〜40歳までの男女9名(男性4名、女性5名)を被験者とし、実施例2で得られたBYC2を1日2g摂取させた。摂取期間は3週間連日とし、肌の水分保持機能(角層水分量、バリア機能)の経時変化について皮膚測定機を用いた評価を実施した。また被験者のうち、顔面に濃いシミのある男性1名について、BYC摂取によるシミへの効果をメラニン値測定により評価した。測定条件、測定方法は実施例3に倣った。
本発明の実施例1で作製したYCWならびに実施例2で作製したBYC2について、それぞれ10名(20代〜50代の男女)の被験者に対し、2ヶ月間1日2g摂取させ、投与前後における肌の状態変化について調査した。調査項目は、肌の潤い、肌のはり(弾力性)、小じわの3項目とし、評価方法はアンケートにて「改善」、「やや改善」、「変化なし」、「悪化」の4段階で評価してもらった。結果は、各段階の被験者数で表3に示した。YCW摂取群、BYC摂取群ともに、各パラメーターの改善傾向が認められ、BYC摂取群でより顕著な効果が認められた。特に肌の潤いについては、BYC摂取群でほとんどの被験者で改善傾向が認められた。また、YCW摂取群、BYC摂取群ともに副作用は一例もなく、皮膚状態の悪化も認められなかった。
HYW/Slc系雄ラット(5週齢)を標準粉末食(CE-2、日本クレア)の自由摂食下で1週間予備飼育し実験環境への馴化を行った後、体重を指標に1群10匹で2群に群分けした。標準粉末食を投与したものを対照とし、供試飼料(被検サンプル)としては、実施例2によりそれぞれ調整されたBYC1を5%の割合で標準粉末食と混合したものを用いた。これらの試験飼料を3週間自由摂食させ、試験飼料投与前、投与10日目、投与22日目の皮膚の状態(角層水分量、バリア機能、メラニン値)について皮膚測定機を用いた評価を実施した。測定部位は背部とし、測定機は実施例3で用いたものを使用した。結果は、試験飼料投与前の値「100」としたときの変化率で示した(図7〜9)。
HYW/Slc系雄ラット(5週齢)を標準粉末食(CE-2、日本クレア)の自由摂食下で1週間予備飼育し実験環境への馴化を行った後、体重を指標に1群5匹で3群に群分けした。標準粉末食を投与したものを対照とし、供試飼料(被検サンプル)としては、実施例1と2によりそれぞれ調整されたYCW及びBYC1をそれぞれ5%ずつの割合で標準粉末食と混合したものを用いた。これらの供試飼料を2週間自由摂食させた後、腹部大動脈より全採血を行い、エチレンジアミン四酢酸二カリウム二水和物により抗凝固処理を施した血液ならびに遠心分離により血清を取得し分析に供した。血清のSOD様活性は、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)還元法を原理とするSODテストワコー(和光純薬)を用いて96ウエルマイクロプレートで測定した。
A:コントロールの吸光度
B:試料添加のときの吸光度
その結果、対照と比較し、YCWならびにBYCを混餌投与した群ではスーパーオキサイド消去率が顕著に上昇しており、とりわけBYC混餌投与群で強いSOD様活性が認められた(p<0.05)。
(1)実施例2で調製した「BYC1」を用いて、表4記載の通り酵母細胞壁配合ヨーグルトゼリーを製造した。
Claims (3)
- 酵素処理或いは非酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した水不溶性の酵母細胞壁画分であって乾燥物中の食物繊維含量が60重量%以上である該酵母細胞壁画分を有効成分として含む、保湿、美白、及び活性酸素原因の皮膚状態(但し、アトピー性皮膚炎を除く)の改善からなる群から選択される皮膚状態改善のための経口医薬組成物。
- 酵母エキス抽出残渣を、水洗浄処理、或いは高圧処理及び水洗浄処理を施すことにより得られる水不溶性の酵母細胞壁画分を有効成分とすることを特徴とする請求項1に記載の経口医薬組成物。
- 水不溶性の酵母細胞壁画分の乾燥物中の食物繊維含量が80重量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の経口医薬組成物。
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