JP4544963B2 - 電動車両用駆動装置及びこれを具えた電動車椅子 - Google Patents

電動車両用駆動装置及びこれを具えた電動車椅子 Download PDF

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本発明は、電動車椅子等の電動車両に用いられる駆動装置に関するものであり、より具体的には、外周に駆動輪を具え、車両に対して片持ち支持される電動車両用駆動装置に関するものである。
電動車椅子等の電動車両には、左右の駆動輪をモータによって個別に駆動する駆動装置を具えたものがある。例えば、特許文献1に記載された駆動装置は、駆動輪の中央に、車軸に回転可能に取り付けられた中空のハブケースの開口部を金属製の蓋体で覆い、蓋体のハブケースとは反対側の面に車軸に対してオフセットされた位置に駆動輪用のモータと電磁ブレーキを収納したケースを固定し、ハブケースの中に減速ギアと電力制御部を収容している。
蓋体は熱伝導性の高い金属で構成され、モータと電力制御部の放熱効果を高めている。また、電力制御部の取付位置を車軸に対してモータから離れた位置に設けることで、電力制御部の過熱を抑制する構成となっている。
特許第3432977号公報
上記駆動装置では、モータ及び電磁ブレーキは、冷却用の蓋体を挟んでハブケースとは反対側に設けられており、また、車軸に対してオフセットされた位置にあるため、駆動装置の径が大きくならざるを得ず(約30〜40cm)、また、駆動装置の外周に配備された車輪径も大きくなってしまう。
車輪径が大きくなると、車椅子からベッド等へ移動する動作が困難となることがあり、また、車輪径が大きくなると、車椅子自体も大型化、重量化してしまうから、屋内での移動や小回り等に不便があった。
本発明の目的は、小型化及び放熱特性の向上を図り、駆動輪の小径化を達成できる電動車両用駆動装置及び該駆動装置を具えた電動車椅子を提供することである。
上記課題を解決するため日本発明の電動車両用駆動装置は、
電動車両の左右の駆動輪(80)(80)の内周に設けられた駆動装置において、
車軸(22)によって電動車両に片持ち支持されるケーシング(30)と、
該ケーシング(30)の内部に収容され、車軸(22)と同軸の回転軸(43)を有するモータ(40)と、
ケーシング(30)の外周に回転自在に嵌まり、モータ(40)の回転を受けて回転するハウジング(50)と、を具え、
ハウジング(50)の外周に駆動輪(80)を一体回転可能に配置し、
ケーシング(30)は、車軸(22)側に放熱フィン(34)(34)を有しており、ハウジング(50)又は駆動輪(80)には、放熱フィン(34)(34)と対向する位置に、放熱フィン(34)(34)を冷却する羽根(52)(52)が設けた。
本発明の駆動装置は、駆動装置を支持する車軸とモータの回転軸を同軸に設けているから、駆動装置自体の小型化を達成でき、駆動装置の外周に取り付けられる駆動輪の小径化を図ることができる。また、回転軸及び駆動輪の回転中心が同じであるから、反力の偏りを防止でき、反力を同軸の車軸によって偏りなく受けることができる。
以下の説明では、電動車両として、高齢者や足等の不自由な人が使用する電動車椅子(10)を例に挙げて説明するが、本発明は、ゴルフ用のカート等や小形の車両等の電動車両にも適用できる。
図1は、本発明の駆動装置(20)を左右の駆動輪(80)(80)に夫々配置した電動車椅子(10)の斜視図である。電動車椅子(10)は、使用者の腰掛ける座部(11)と背凭れ(12)を具え、座部(11)から下向きに延びるフレーム(13)には、左右一対の駆動装置(20)(20)と駆動輪(80)(80)が取り付けられている。また、駆動輪(80)(80)の前方には、駆動輪(80)(80)よりも小径の補助輪(14)(14)が支持されている。
座部(11)の下部には、バッテリーや電力制御部、その他制御手段等の制御ボックス(15)が配備されており、座部(11)の前方下部には足置きペダル(16)(16)、座部(11)の左右には肘置き(17)(17)が形成されている。さらに、使用者が操作する操作器(18)は、一方の肘置き(17)の側部に設けられており、背凭れ(12)の上部後方には介助者用のハンドル(19)(19)が延びている。
操作器(18)として、ジョイスティック式のものを例示することができ、車速の変更や旋回の操作を行なうことができる。ジョイスティックを前傾又は後傾させることにより電動車椅子(10)を前進、後退させることができる。また、ジョイスティックを左右に傾動することにより、左右の駆動輪(80)(80)の回転速度を変えて、電動車椅子(10)を左右に旋回させることができる。
図2は、本発明の駆動装置(20)及び駆動装置(20)に取り付けられた左側駆動輪(80)の断面図である。また、図3は駆動装置(20)を図2の矢印A方向から見た側面図、図4は逆方向から見た側面図である。
駆動装置(20)は、電動車椅子(10)のフレーム(13)に取り付けられる車軸(22)がフレーム(13)側に向けて突設されたケーシング(30)と、該ケーシング(30)に配備されたモータ(40)、モータ(40)の回転軸(43)と減速ギア(48)を介して連繋され、ケーシング(30)に対して回転自由なハウジング(50)、及び、ケーシング(30)とモータ(40)の回転軸(43)とを制動可能に連繋する電磁ブレーキ(60)とを具える。駆動装置(20)の外周には、駆動輪(80)が嵌まっている。
ケーシング(30)及びハウジング(50)は放熱特性を高めるために、熱伝導性の高い金属材料、例えば、アルミニウム合金により形成することが望ましい。
車軸(22)を介してフレーム(13)に片持ち支持されるケーシング(30)は、軸方向に3つに分割した構造とすることができる。フレーム(13)側に位置する内ケーシング(31)は、車軸(22)の先端が固定された端板(32)で閉じられており、他端は開口している。車軸(22)は、内ケーシング(31)に圧入することによって取り付けることができる。
中ケーシング(35)は、一端が内ケーシング(31)に固定されている。内周面はモータ(40)の回転軸(43)に向けて延びた環状板(36)を具え、環状板(36)の内周縁には回転軸(43)を回転自由に支持するベアリング(36a)を具える。環状板(36)には、内ケーシング(31)側に電磁ブレーキ(60)が取り付けられており、裏面には、モータ(40)のステータ(46)が固定されている。
外ケーシング(37)は、一端が中ケーシング(35)に固定され、前記ステータ(46)の外周を包囲している。外ケーシング(37)の他端は環状の端板(38)が設けられており、端板(38)の内周縁にはモータ(40)の回転軸(43)を回転自由に支持するベアリング(38a)が配置されている。端板(38)の外面には、減速ギア(48)が装着されている。
ステータ(46)及び電磁ブレーキ(60)への通電を行なう配線(24)は、内ケーシング(31)の端板(32)を貫通(32a)して、座部(11)下面の制御ボックス(15)へ延びている。
内ケーシング(31)の端板(32)には、配線(24)を通す貫通孔(32a)以外に、図2に示すように、複数の放熱フィン(34)が形成されている。放熱フィン(34)は、後述するハウジング(50)に設けられた羽根(52)の回転により空冷される。
モータ(40)のロータ(42)は、車軸(22)と同軸となるように前記ベアリング(36a)(38a)に支持された回転軸(43)と、ステータ(46)と対向するように回転軸(43)に嵌められた積層金属板(44)から構成される。
回転軸(43)のフレーム側は、電磁ブレーキ(60)の内部を貫通しており、電磁ブレーキ(60)のインナドライバ(62)と係合するキー溝(43a)が切られている。インナドライバ(62)は、ブレーキディスク(61)と係合している。
回転軸(43)の他端は減速ギア(48)と噛合している。
電磁ブレーキ(60)は、公知の無励磁作動ブレーキを用いることができる。電磁ブレーキ(60)は、通電時にはコイル(63)に通電が行なわれてブレーキが解除され、非通電時にはバネ力によってブレーキディスク(61)を圧着して、回転軸(43)に直接ブレーキをかけることができる。これにより、制動性能を向上させることができる。
電磁ブレーキ(60)は、モータ(40)よりも車軸(22)側に設けることが望ましい。電磁ブレーキ(60)を車軸(22)側に設けたことにより、電磁ブレーキ(60)の配線(24)を短くすることができ、内部構造の簡略化を図り、メンテナンス性の向上を達成できる。
一方、電磁ブレーキ(60)を、減速ギア(48)よりも外側に配置すると、電磁ブレーキ(60)の配線(24)は、減速ギア(48)やモータ(40)の外側に通さざるを得ず、内部構造が複雑化し、装置の大型化やメンテナンス性の低下に繋がる。
減速ギア(48)は、遊星歯車機構を例示できる。減速ギア(48)は、外ケーシング(37)の端板(38)と端板(38)に対向して固定された抑え板(39)との間に支持されている。減速ギア(48)は、ハウジング(50)の先端を閉じる蓋体(54)の内側に切られたインターナルギア(55)と噛合している。
ステータ(46)への通電により、ロータ(42)が回転すると、減速ギア(48)及びインターナルギア(55)を介して、蓋体(54)に駆動力が伝達され、ハウジング(50)が回転する。
ハウジング(50)は、フレーム側が、内ケーシング(31)にベアリング(30a)を介して支持されており、他端の開口は、蓋体(54)によって閉じられている。
蓋体(54)は、上記のように、インターナルギア(55)が切られており、抑え板(39)の中央から突設された軸(39b)にベアリング(39a)を介して回転自由に支持されている。
ハウジング(50)のフレーム側には、車軸(22)に向けて複数の羽根(52)(52)が突設されている。羽根(52)(52)は、内ケーシング(31)の放熱フィン(34)(34)と対向しており、ハウジング(50)の回転により、羽根(52)(52)が放熱フィン(34)(34)に空気を送り、冷却ファンとして作用する。これにより、モータ(40)や電磁ブレーキ(60)等から発生する熱が内部に留まることなく効率よく放散される。
駆動輪(80)は、駆動装置(20)のハウジング(50)の外周に嵌まって一体回転する筒状のハブケース(82)と、ハブケース(82)の外周に複数突設されたスポーク(83)と、スポーク(83)の先端間を連繋する環状のリム(84)と、リム(84)に嵌められたゴム製のタイヤ(85)から構成することができる。
駆動輪(80)は、タイヤ(85)から駆動装置(20)が突出しない位置に形成することが望ましい。本実施例の場合、スポーク(83)をハブケース(82)の先端側、即ち、車軸(22)とは逆側の位置に設けることにより、タイヤ(85)からの駆動装置(20)の突出量を小さくしている。
上記構成の駆動装置(20)は、車軸(22)をフレーム(13)に片持ち支持の状態で電動車椅子(10)に固定される。駆動装置(20)が電動車椅子(10)から着脱することなく使用される場合には、駆動装置(20)をフレーム(13)にボルト締め等により固定すればよいが、電動車椅子(10)を車に積んで運ぶ等の理由により、駆動装置(20)ごと駆動輪(80)を取り外す必要がある場合には、駆動装置(20)を容易に取り外せるように、軸方向の抜止めを目的とした構造としてもよい。必要に応じて、モータ(40)のトルク反力を受ける部材を配備してもよい。
使用者が操作器(18)を介して、電動車椅子(10)の前進、後退又は旋回を指示すると、電磁ブレーキ(60)へ通電を行ない、ブレーキが解除されると共に、ステータ(46)に通電が行なわれて、ロータ(42)が回転する。ロータ(42)が回転すると、回転軸(43)から減速ギア(48)及びインターナルギア(55)を介してハウジング(50)に駆動力が伝達され、ハウジング(50)が回転する。これにより、ハウジング(50)に固定された駆動輪(80)(80)が回転して、電動車椅子(10)が前進、後退する。また、旋回は、左右の駆動装置(20)の回転速度を変えて行なわれる。
本発明の駆動装置(20)は、駆動装置(20)を支持する車軸(22)とモータ(40)の回転軸(43)を同軸に設けているから、駆動装置(20)自体の小型化(直径約15cm以下)を達成でき、駆動装置(20)の外周に取り付けられた駆動輪(80)の小径化を図ることができる。また、回転軸(43)及び駆動輪(80)の回転中心が同じであるから、反力の偏りを防止でき、反力を同軸の車軸(22)によって偏りなく受けることができる。
また、本発明の駆動装置(20)によれば、ケーシング(30)に放熱フィン(34)を設け、放熱フィン(34)を冷却する羽根(52)(52)をハウジング(50)に設けており、また、ケーシング(30)やハウジング(50)を熱伝導率の高い材料から構成しているから、モータ(40)等の駆動による熱が駆動装置(20)の内部に溜まらず、効率よく放熱できる。
なお、上記実施例では、放熱フィン(34)は、ハウジング(50)と一体に形成しているが、別部材により形成してもよく、また、駆動輪(80)のハブケース(82)に設けてもよい。
本発明は、装置の小型化を達成でき、駆動輪の小径化を図ることのできる電動車両用の駆動装置として有用である。
電動車椅子の斜視図である。 本発明の駆動装置及び駆動輪の断面図である。 図2を矢印A方向から見た側面図である。 図2を矢印Aとは逆方向から見た側面図である。
符号の説明
(10) 電動車椅子
(20) 駆動装置
(22) 車軸
(30) ケーシング
(34) 放熱フィン
(40) モータ
(43) 回転軸
(50) ハウジング
(60) 電磁ブレーキ
(80) 駆動輪

Claims (3)

  1. 電動車両の左右の駆動輪(80)(80)の内周に設けられた駆動装置において、
    車軸(22)によって電動車両に片持ち支持されるケーシング(30)と、
    該ケーシング(30)の内部に収容され、車軸(22)と同軸の回転軸(43)を有するモータ(40)と、
    ケーシング(30)の外周に回転自在に嵌まり、モータ(40)の回転を受けて回転するハウジング(50)と、を具え、
    ハウジング(50)の外周に駆動輪(80)を一体回転可能に配置し、
    ケーシング(30)は、車軸(22)側に放熱フィン(34)(34)を有しており、ハウジング(50)又は駆動輪(80)には、放熱フィン(34)(34)と対向する位置に、放熱フィン(34)(34)を冷却する羽根(52)(52)が設けられていることを特徴とする電動車両用駆動装置。
  2. 駆動輪(80)は、車軸(22)とは逆側の端部近傍に配置される請求項1に記載の電動車両用駆動装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電動車両用駆動装置(20)を左右に具える電動車椅子。
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