JP4543251B2 - 蛍光体及び光源 - Google Patents
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また、近紫外・紫外LEDとRGB他の蛍光体との組み合わせによる白色LED照明では、3色の蛍光体のうち赤色蛍光体が他の蛍光体に比べ長波長側の励起効率が悪く、発光効率が低いために、赤色蛍光体のみ混合割合を多くせざるを得ず、輝度を向上させる蛍光体が不足し高輝度の白色が得られない。更に、当該蛍光体の発光スペクトルがシャープであるため得られる光の演色性が悪いといった問題がある。
そのため最近では、長波長側に良好な励起を持ち、半値幅の広い発光ピークが得られるオキシ窒化物ガラス蛍光体(例えば、特許文献1参照)や、サイアロンを母体とする蛍光体(例えば、特許文献2、3参照)、シリコンナイトライド系などの窒素を含有した蛍光体(例えば、特許文献4、5参照)が報告されている。そして、当該窒素を含有した蛍光体は、酸化物系蛍光体などに比べ共有結合の割合が多くなるため、波長400nm以上の光においても良好な励起帯を持つといった特徴があり、白色LED用蛍光体として注目を集めている。
本発明者らは、この解明結果に基づいて広い温度範囲において発光強度変化が小さな蛍光体を開発し、試験を行った。その結果、当該発光強度変化が所定範囲内であれば、発光時間と伴に発光強度が低下したり、発光の色味が変化する現象を抑えることができることが判明した。また、使用する各蛍光体の温度上昇による発光強度の低下率が同程度であれば、発光の色味の変化がさらに低く抑えることができることも判明した。
本発明は、以上の解明結果に基づくものである。
紫外から緑色の範囲内の励起光により励起され可視光を発光する蛍光体であって、
所定の励起光を照射された前記蛍光体の25℃における発光スペクトル中の最大ピークの相対強度の値を発光強度P25とし、
前記所定の励起光を照射された前記蛍光体の200℃における前記最大ピークの相対強度の値を発光強度P200としたとき、
(P25−P200)/P25≦0.25であることを特徴とする蛍光体である。
紫外から緑色の範囲内の励起光により励起され可視光を発光する蛍光体であって、
所定の励起光を照射された前記蛍光体の25℃における発光スペクトル中の最大ピークの相対強度の値を発光強度P25とし、
前記所定の励起光を照射された前記蛍光体の100℃における前記最大ピークの相対強度の値を発光強度P100としたとき、
(P25−P100)/P25≦0.10であることを特徴とする蛍光体である。
組成式MmAaBbOoNn:Z(但し、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素であり、Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は付活剤であり、m>0、a>0、b>0、o≧0、n=2/3m+a+4/3b−2/3oである。)で表記されることを特徴とする第1または第2の構成に記載の蛍光体である。
前記M元素はMg、Ca、Sr、Ba、Znから選択される1種以上の元素であり、前記A元素はB(ホウ素)、Al、Gaから選択される1種以上の元素であり、前記B元素はSiおよび/またはGeであり、前記Z元素は希土類または遷移金属から選択される1種以上の元素であることを特徴とする第3の構成に記載の蛍光体である。
前記A元素はAlであり、B元素はSiであることを特徴とする第3または第4の構成に記載の蛍光体である。
前記M元素はCaであり、Z元素はEuであることを特徴とする第3から第5の構成のいずれかに記載の蛍光体である。
前記m、a、bの値がm=a=b=1であることを特徴とする第3から第6の構成のいずれかに記載の蛍光体である。
組成式CaAlSiN3:Euで表記されることを特徴とする第1から第7の構成のいずれかに記載の蛍光体である。
前記m、a、bの値がm=1、a=2、4.0≦b<6.0であることを特徴とする第3から第6の構成のいずれかに記載の蛍光体である。
組成式CaAl2Si4N8:Euで表記されることを特徴とする第1から第6の構成のいずれか、または第9の構成に記載の蛍光体である。
前記蛍光体は、粉末状であることを特徴とする第1から第10の構成のいずれかに記載の蛍光体である。
前記蛍光体の平均粒度が、20μm以下、1μm以上であることを特徴とする第11の構成に記載の蛍光体である。
第1から第12の構成のいずれかに記載の蛍光体と、所定波長の光を発する発光部とを有し、前記所定波長の光の一部を励起源とし、前記蛍光体を前記所定波長と異なる波長で発光させることを特徴とする光源である。
前記所定波長とは、250nm〜550nmのいずれかの波長であることを特徴とする第13の構成に記載の光源である。
前記発光部がLEDであることを特徴とする第13または第14の構成に記載の光源である。
上述した、(P25−P200)/P25≦0.25、(P25−P100)/P25≦0.10の特性を満たす第1例の蛍光体として、組成式MmAaBbOoNn:Zで表記される蛍光体について説明する。
組成式MmAaBbOoNn:Zと表記される蛍光体において、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素である。Oは酸素であり、Nは窒素である。Z元素は、付活剤として作用する元素であって、希土類元素または遷移金属元素から選択される少なくとも1種以上の元素である。そして、当該組成を有している本発明に係る蛍光体は、広い温度範囲において高い発光強度を安定して得ることができる。
次に、(P25−P200)/P25≦0.25、(P25−P100)/P25≦0.10の特性を満たす第2例の蛍光体として、第1例と同様に、組成式MmAaBbOoNn:Zで表記される蛍光体について説明する。
第2例の蛍光体においても、第1例と同様に、M元素はII価の価数をとる1種以上の元素であり、A元素はIII価の価数をとる1種以上の元素であり、B元素はIV価の価数をとる1種以上の元素である。Oは酸素であり、Nは窒素であり、Z元素は希土類元素または遷移金属元素から選択される少なくとも1種以上の元素である。また、第1例と同様に、m>0、a>0、b>0、o≧0、n=2/3m+a+4/3b−2/3oで表される構造であることが好ましいが、第1例と異なり、m=1、a=2、4.0≦b<6.0であることが好ましい。
上述した、組成式MmAaBbOoNn:Zにおいて酸素を含まない場合(即ちo=0)の製造方法の例として、組成式MmAaBbOoNn:ZにおけるM元素がCa、A元素がAl、B元素がSiであり、m=a=b=1、o=0で示される前記第1例の蛍光体であるCaAlSiN3:Eu(但し、Eu/(Ca+Eu)モル比=0.015の場合)を例として説明する。
尚、Eu2O3からの酸素により、生成物の組成中に微量の酸素が存在することが考えられるが、通常の場合であれば無視することができる。
次に、組成式CaAl2Si4N8:Eu(但し、Eu/(Ca+Eu)モル比=0.03の場合)にて示される蛍光体で酸素を含まないもの(o=0)を例として、前記第2例の蛍光体の製造方法を説明する。
これらの原料を、各元素のモル比が、m:a:b=1:2:4となるように秤量し混合する。Caサイトの一部をEuで置換するため、実際には(Ca+Eu):Al:Si=1:2:4となるように秤量し混合する。この後の工程は、上述した第1例の蛍光体(酸素を含まないもの)の製造方法と同様に行えばよいが、焼成温度は1800℃が好ましい。
上述した、第1例および第2例の蛍光体とも、塗布または充填の容易さを考慮して粉状体とされるが、当該蛍光体の粉体の平均粒径が20μm以下であることが好ましい。これは、蛍光体の粉体において発光は主に粒子表面で起こると考えられるため、平均粒径が20μm以下であれば、粉体単位重量あたりの表面積を確保でき、輝度の低下を回避できるからである。また、平均粒径が20μm以下であれば、当該蛍光体の粉体をペ−スト状とし、発光体素子等に塗布した場合にも当該蛍光体の粉体の塗布密度を高めることができ、この観点からも輝度の低下を回避することができる。一方、本発明者らの検討によると、詳細な理由は不明であるが、蛍光体粉末の発光効率の観点から、当該蛍光体の粉体の平均粒径が1μmより大きいことが好ましいことも判明した。以上のことより、本発明に係る蛍光体の粉体の平均粒径は、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
本発明に係る蛍光体の温度T℃におけるの発光強度PTおよび当該発光強度の変化の測定について説明する。
当該発光強度PTとは、当該蛍光体を25℃の環境に置き、後述する所定波長の励起光を照射した際に、当該蛍光体が発する光のスペクトルを測定する。当該測定スペクトル中で最大の強度を有するピークを最大ピークと定め、そのピークの相対強度の値をP25とする。次に、当該蛍光体をT℃の環境に置き、25℃測定の時に照射したものと同様の励起光を照射し、当該蛍光体が発する光のスペクトルを測定する。当該測定スペクトル中において、25℃測定の時に最大ピークと定めたピークに相当するピークの相対強度を求め、その値をPTとする。このようにして求められたP25と、PTとから(P25−PT)/P25を算出する。
当該波長範囲の励起光における測定波長の点数は、2点以上であることが好ましい。
上述の製造方法により製造した本発明に係る蛍光体を、公知の方法により発光部と組み合わせて光源を作製した。発光部としては近紫外・紫外LEDおよび紫外放電灯を用いた。当該発光波長域は、光源として用いられる蛍光体の励起光として適しているからである。
当該光源の作製後、点灯試験を行って当該光源の発光強度の低下や発光の色味の変化が確認できるか否かを観察した。
その結果、発光部として紫外放電灯を用いた光源の場合、発光時間と伴に発光強度が低下する現象は観察されなかった。また、発光部として近紫外・紫外LEDを用いた光源の場合、発光時間と伴に発光の色味の変化する現象はほとんど観察されなかった。特に、上述の第1例および第2例の蛍光体を併せて使用した場合は、発光の色味の変化がさらに低く抑えられることも判明した。勿論、第1例および/または第2例の蛍光体と混合して用いられる他色の蛍光体においても、(P25−P200)/P25、や(P25−P100)/P25の値が、第1例、第2例の蛍光体のそれと近いものを用いることが好ましい。
(実施例1)
市販のCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、各元素のモル比がCa:Al:Si:Eu=0.985:1:1:0.015となるように各原料を秤量し、窒素雰囲気下のグロ−ブボックス中において乳鉢を用いて混合した。混合した原料を窒化ホウ素製のるつぼに充填し、窒素雰囲気中で1500℃まで15℃/min.の昇温速度で昇温し、1500℃で3時間保持し焼成した後、1500℃から200℃まで1時間で冷却し、さらに室温まで冷却して組成式Ca0.985SiAlN3:Eu0.015の蛍光体を得た。得られた蛍光体を、乳鉢を用いて粉砕して作製した粉体の平均粒径は4.65μmであった。
また、25℃における発光強度P25からT℃における発光強度PTへの変化の割合(100×(P25−PT)/P25)についても表1および表2に示した。
さらに、当該発光スペクトルの内、25、100、200℃における測定結果であって励起光を波長380nmとしたときの発光スペクトルを図3に、同様に励起光を波長460nmとしたときの発光スペクトルを図4に示す。図3、4はいずれも横軸に光の波長(nm)をとり、縦軸に相対発光強度をとったグラフである。尚、図3に係るグラフの縦軸の相対発光強度は、P25を1.00として規格化したものである。同様に、図4に係るグラフの縦軸の相対発光強度も、P25を1.00として規格化したものである。尚、図3、4において25℃の発光スペクトルを実線で、100℃の発光スペクトルを1点鎖線で、200℃の発光スペクトルを破線で示す。
市販のCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、各元素のモル比がCa:Al:Si:Eu=0.97:2:4:0.03となるように各原料を秤量し、窒素雰囲気下のグロ−ブボックス中において乳鉢を用いて混合した。混合した原料を窒化ホウ素製のるつぼに充填し、窒素雰囲気中で1800℃まで15℃/min.の昇温速度で昇温し、1800℃で3時間保持し焼成した後、1800℃から200℃まで1時間で冷却し、さらに室温まで冷却して組成式CaSi2Al4N8:Eu0.03の蛍光体を得た。得られた蛍光体を、乳鉢を用いて粉砕して作製した粉体の平均粒径は5.23μmであった。
比較例1においては、特許文献4、5に記載されているCa2Si5N8:Eu蛍光体
を比較例に係る試料として製造した。
市販のCa3N2(2N)、AlN(3N)、Si3N4(3N)、Eu2O3(3N)を準備し、それぞれ、Ca3N2、Si3N4、Eu2O3の配合比が、Ca:Si:Eu=1.97:5:0.03のモル比となるように秤量した。秤量後の原料を窒素雰囲気下のグローブボックス中において乳鉢混合したが、この際、原料が余分な酸化を受けないよう十分注意した。混合した原料を窒化ホウ素製るつぼに充填し、原料が酸化を受けないよう、且つ、原料中の酸素が完全に除去されるよう注意しながら、窒素中において1500℃で3時間焼成を行い実施例1と同様に冷却し、組成式Ca1.97Si5N8:Eu0.03の蛍光体を得た。得られた蛍光体を、乳鉢を用いて粉砕して作製した粉体の平均粒径は4.77μmであった。
実施例1、2および比較例1の対比を行うために、表1のデータより横軸に蛍光体の温度、縦軸に蛍光体の相対発光強度をとったグラフを作成し、実施例1のデータを実線で、実施例2のデータを1点鎖線で、比較例1のデータを2点鎖線で示し図1とした。同様に、表2のデータより横軸に蛍光体の温度、縦軸に蛍光体の相対発光強度をとったグラフを作成し、実施例1のデータを実線で、実施例2のデータを1点鎖線で、比較例1のデータを2点鎖線で示し図2とした。
一方、実施例2に係る蛍光体のときは、25℃から100℃に温度を上昇させた場合の発光強度の低下率は9.9%、25℃から200℃に温度を上昇させた場合の発光強度の低下率は24.3%であった。
これに対し、比較例1に係る蛍光体のときは、25℃から100℃に温度を上昇させた場合の発光強度の低下率は23.7%、25℃から200℃に温度を上昇させた場合の発光強度の低下率は70.9%と発光強度が著しく低下する結果となった。
一方、実施例2に係る蛍光体のときは、25℃から100℃に温度を上昇させた場合の発光強度の低下率は9.8%、25℃から200℃に温度を上昇させた場合の発光強度の低下率は23.6%であった。
これに対し、比較例1に係る蛍光体を25℃から100℃に温度を上昇させたときの発光強度の低下率は23.8%、25℃から200℃に温度を上昇させた場合の発光強度の低下率は71.0%と発光強度が著しく低下する結果となった。
以上のことより、実施例1および2に係る蛍光体は、発光部の発熱などにより蛍光体の温度が上昇した場合においても蛍光体の輝度の低下が少ないため、当該蛍光体を使用して作製した白色LEDにおいて大電流を注入しても高輝度で色調の変化の少ない発光を得ることができることから、白色LEDをはじめとする照明装置に適していると考えられる。また、実施例1および2に係る蛍光体は、それぞれの蛍光体の温度上昇による発光強度の低下率が同程度であるため併せて使用し、第1例および第2例の蛍光体と混合して用いられる他色の蛍光体においても、(P25−P200)/P25、や(P25−P100)/P25の値が、第1例、第2例の蛍光体のそれと近いものを用いることで温度上昇による発光の色味の変化をさらに低く抑えることができる。
Claims (7)
- 組成式CaAl 2 Si 4 N 8 :Euで表記され、紫外から緑色の範囲内の励起光により励起され可視光を発光する蛍光体であって、
所定の励起光を照射された前記蛍光体の25℃における発光スペクトル中の最大ピークの相対強度の値を発光強度P25とし、
前記所定の励起光を照射された前記蛍光体の200℃における前記最大ピークの相対強度の値を発光強度P200としたとき、
(P25−P200)/P25≦0.25であることを特徴とする蛍光体。 - 組成式CaAl 2 Si 4 N 8 :Euで表記され、紫外から緑色の範囲内の励起光により励起され可視光を発光する蛍光体であって、
所定の励起光を照射された前記蛍光体の25℃における発光スペクトル中の最大ピークの相対強度の値を発光強度P25とし、
前記所定の励起光を照射された前記蛍光体の100℃における前記最大ピークの相対強度の値を発光強度P100としたとき、
(P25−P100)/P25≦0.10であることを特徴とする蛍光体。 - 前記蛍光体は、粉末状であることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体。
- 前記蛍光体の平均粒度が、20μm以下、1μm以上であることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
- 請求項1から4のいずれかに記載の蛍光体と、所定波長の光を発する発光部とを有し、前記所定波長の光の一部を励起源とし、前記蛍光体を前記所定波長と異なる波長で発光させることを特徴とする光源。
- 前記所定波長とは、250nm〜550nmのいずれかの波長であることを特徴とする請求項5に記載の光源。
- 前記発光部がLEDであることを特徴とする請求項5または6に記載の光源。
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