JP4533497B2 - フォトクロミツク材料及び光記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフォトクロミック材料及びそれを用いた光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録媒体に対して情報の記録、消去を行う場合、通常、情報の書き換え可能な記録媒体が用いられる。情報の書き換え可能な記録媒体として、フォトクロミック材料の光反応、すなわちフォトクロミック反応を利用する光記録媒体が提案されている。
【0003】
フォトクロミック反応とは、Aの状態にあるフォトクロミック材料に、Aの状態が吸収を有する波長λ1の光を照射することにより、異なる波長光の吸収を有するBの状態が生成し、またBの状態にあるフォトクロミック材料に、Bの状態が吸収を有する波長λ2の光を照射することにより、元のAの状態に戻る可逆反応のことである。フォトクロミツク反応を利用する光記録媒体は、このAの状態、Bの状態のうち、どちらか一方を情報未記録状態(情報が記録されていないとする状態)、他方を情報記録状態(情報が記録されているとする状態)に対応させることにより情報の書き換え可能な光記録媒体となる。
【0004】
また、フォトクロミック反応を利用した情報の書き換え可能な光記録媒体では、記録されている情報を再生する場合には、Aの状態での物性値とBの状態での物性値との違いを検出すればよい。フォトクロミック反応前後、すなわちAの状態とBの状態とでは光の吸収スペクトルが大きく異なるので、例えば、波長λ2におけるAの状態での光の吸収強度とBの状態での光の吸収強度との違いを検出することによって情報記録状態か情報未記録状態かの読み出し、すなわち情報の再生が可能となる。
【0005】
ところで、フォトクロミック材料を光記録媒体に利用するためには、情報の記録、消去、再生にあたり良好な繰り返し耐久性、熱不可逆性が必要とされる。このような要求を満たすフォトクロミック材料としてジアリールエテン系化合物が注目されている。特にパーフルオロシクロペンテン環に二つのアリール基がつながったジアリールエテン系化合物は前記要求性能を満たしているとともに、材料合成の際の経路乃至工程が比較的簡単で合成の収率も高い。
【0006】
パーフルオロシクロペンテン環を有するジアリールエテン系化合物(以下単にジアリールエテン系化合物という。)のフォトクロミック反応では、前記のA状態、B状態はそれぞれ開環体、閉環体と呼ばれることが多い。閉環体は開環体よりも長い波長の光を吸収できる、換言すれば長波長域まで吸収帯を有する。多くのジアリールエテン系化合物では閉環体の吸収帯は可視域にあるものの開環体の吸収帯は紫外域にある。このためジアリールエテン系化合物を用いた光記録媒体を収容し該光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去のうち少なくとも一つを行う光記録装置では、開環体が吸収を有する波長λ1の光を射出する光源として紫外光を射出する半導体レーザなどの光源が必要となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現時点では紫外域において安定的に動作する半導体レーザなどの光源は見あたらない。今後そのような光源が開発されるとしても、開環体の吸収帯はなるべく可視域付近に近い方が有利である。何故なら、開環体が吸収を有する光、すなわち情報の記録、再生、消去に用いられる光の波長が短ければ短いほど、それに対応するために光記録装置における光学部品は特殊なものを用いなければならず、それだけ光記録装置が高価になるからである。従って、光記録媒体に用いるジアリールエテン系化合物としては、開環体の吸収帯がより長波長域に、より可視光域に近いものを採用することが望ましい。
【0008】
開環体の吸収帯が比較的長波長域にまであるジアリールエテン系化合物として、例えば特開平7−89954号公報が教えるように共役二重結合鎖を有するジアリールエテン系化合物があるが、この化合物は、二重結合部分でシス体とトランス体とを生じる可能性がある。開環体から閉環体へのフォトクロミック反応を生じるのはシス体のみであり、このため、シス体からトランス体に変化した場合、閉環体へ反応することができなくなる。これは再生時の感度低下(信号強度低下)を招くので、記録材料として用いる上で都合が悪い。
【0009】
また、特開平8−245579号公報が教えるように二つのアリール基がチオフェン環であり、その2位の位置でパーフルオロシクロペンテン環との結合を有するジアリールエテン系化合物も開環体の吸収帯が長波長域にまであるが、この化合物は開環体と閉環体の吸収帯がほぼ重なってしまうため、フォトクロミック反応の方向を制御することが困難になる。この場合、記録、或いは消去が不十分となり、記録材料として用いる上で都合が悪い。
【0010】
さらにChemistry Letters ;p969(1995)が教えるように二つのアリール基がチオフェン環であり、一方が2位の位置で、他方が3位の位置でパーフルオロシクロペンテン環との結合を有するジアリールエテン系化合物では開環体と閉環体の吸収帯は分離している。しかしながら、開環体の吸収帯は比較的長波長域にあるもののまだ不十分である。
【0011】
そこで本発明は、ジアリールエテン系化合物からなるフォトクロミック材料であって、記録材料として用いる上で都合がよく、開環体の吸収帯が可視域付近にまで至るフォトクロミック材料を提供することを課題とする。
【0012】
また本発明は、フォトクロミック材料を用いて光による情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも一つを行う光記録媒体であって、情報の記録、消去、再生にあたっての繰り返し耐久性、熱不可逆性に優れ、さらに媒体製造コスト及び該媒体を収容する光記録装置のコストを低く抑えることができる光記録媒体を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するため、次のフォトクロミック材料及び光記録媒体を提供する。
(1)フォトクロミック材料
ジアリールエテン系化合物からなるフォトクロミック材料であり、該ジアリールエテン系化合物が次の−般式(1)にて示される化合物であることを特徴とするフォトクロミツク材料。
【0014】
【化4】
Figure 0004533497
【0015】
(式(1)中R1は置換されていてもよいアルキル基若しくは置換されていてもよいアルコキシ基を表し、R2〜R7はそれぞれ水素原子若しくは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいアリール基を表す。ただし、置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、水酸基のいずれかである。また、Aは、次の一般式(2)
【0016】
【化5】
Figure 0004533497
【0017】
又は次の一般式(3)
【0018】
【化6】
Figure 0004533497
【0019】
で表される基を表す。式中R11、R14は置換されていてもよいアルキル基若しくは置換されていてもよいアルコキシ基を表し、R12、R13、R15〜R18はそれぞれ水素原子若しくは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいアリール基を表す。ただし、アルキル基、アルコキシ基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、水酸基のいずれかである。またアリール基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、水酸基のいずれかである。
(2)光記録媒体
フォトクロミック材料を用いて光による情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも一つを行う光記録媒体であり、前記一般式(1)で表されるフォトクロミック材料を含んでいることを特徴とする光記録媒体。
【0020】
本発明に係るフォトクロミック材料において、アルキル基は−般式Cn 2n+1−で表記される。アルキル基のnの範囲は主たるフォトクロミック反応特性には影響しないので特に限定されないが、通常1〜3の範囲が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。またアルコキシ基は−般式Cn 2n+1O−で表記される。アルコキシ基のnの範囲は主たるフォトクロミック反応特性には影響しないので特に限定されないが、通常は1〜3の範囲が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。
【0021】
アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基等を上げることができる。
【0023】
本発明に係るフォトクロミック材料は、前記一般式にて示されるジアリールエテン系化合物からなり、該ジアリールエテン系化合物によるフォトクロミック反応を生じる。
【0024】
すなわち、開環体の状態にある前記ジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長λ1の光を照射することにより、異なる波長光の吸収を有する閉環体が生成し、また閉環体の状態にある前記ジアリールエテン系化合物に、閉環体が吸収を有する波長λ2の光を照射することにより、元の開環体の状態に戻る可逆反応を生じる。
【0025】
本発明のフォトクロミック材料によると、ジアリールエテン系化合物が前記一般式に示すように共役二重結合鎖を有さない化合物であるので、特開平7−89954号公報、特開平8−245579号公報、Chemistry Letters ;p969(1995)が教えるジアリールエテン系化合物のような不都合を生じることがなく、記録材料として用いる上で都合がよい。また、このジアリールエテン系化合物の開環体の吸収帯は従来のものより長波長域にまで、すなわち可視域付近にまで至る。
【0026】
本発明に係る光記録媒体は、本発明に係るフォトクロミック材料を含んでおり、該フォトクロミツク材料のジアリールエテン系化合物の開環体又は閉環体の状態のうち、どちらか一方を情報未記録状態、他方を情報記録状態に対応させることにより情報の書き換え可能な光記録媒体となる。
【0027】
本発明の光記録媒体によると、フォトクロミック材料としてジアリールエテン系化合物を採用しているので、情報の記録、消去、再生にあたっての繰り返し耐久性、熱不可逆性に優れる。また、このジアリールエテン系化合物は前記一般式にて示されるジアリールエテン系化合物であり、既述のとおり開環体の吸収帯が可視域付近にまで至るので、開環体が吸収を有する光、すなわち情報の記録、再生、消去に用いられる光として可視域付近の光を採用できる。従って、該媒体を収容する光記録装置において特殊な光学部品を用いなくてもよく、それだけ該光記録装置のコストを低く抑えることができる。
【0028】
なお、前記「情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも一つを行う光記録媒体」には、情報の記録、再生及び消去のいずれも行える光記録媒体、既に情報が記録されており、その情報の再生を行える光記録媒体等がいずれも含まれる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
本発明に係るフォトクロミック材料はジアリールエテン系化合物からなるものであり、そのジアリールエテン系化合物は次の一般式(1)にて示される化合物である。
【0031】
【化7】
Figure 0004533497
【0032】
(式(1)中R1は置換されていてもよいアルキル基若しくは置換されていてもよいアルコキシ基を表し、R2〜R7はそれぞれ水素原子若しくは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいアリール基を表す。また、Aは、次の一般式(2)
【0033】
【化8】
Figure 0004533497
【0034】
又は次の一般式(3)
【0035】
【化9】
Figure 0004533497
【0036】
で表される基を表す。式中R11、R14は置換されていてもよいアルキル基若しくは置換されていてもよいアルコキシ基を表し、R12、R13、R15〜R18はそれぞれ水素原子若しくは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいアリール基を表す。)本発明の実施例として、次の四つのジアリールエテン系化合物の合成方法について説明する。
実施例1:1−(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)−2−(3−メチル−5−フェニルチオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテン
実施例2:1−(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)−2−(3−メチル−5−ビフェニルチオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテン
実施例3:1−(2,4−ジメチル−5−フエニルチオフェン−3−イル)−2−(3−メチル−5−フェニルチオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテン
実施例4:1−(2,4−ジメチル−5−フェニルチオフェン−3−イル)−2−3−メチル−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテン
(実施例1の材料の合成方法)
1a)4−メチル−2−チオフェンボロン酸の合成
3−メチルチオフェン50g(0.51mol)をアルゴン雰囲気下、無水ジエチルエーテル500mlに溶解させ、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン86ml(0.56mol)を加えて氷浴にて0℃に冷却後、1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液350ml(0.56mol)を滴下し1時間攪拌した後、常温に戻しながら12時間攪拌した。再び0℃に冷却した後、ほう酸トリーn一ブチル150ml(0.56mol)を滴下し1時間攪拌した後、室温で2時間攪拌した。この溶液を1M希塩酸により反応を停止させてから、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とした後、水層を抽出した。水層を氷浴で冷却しながらpH=1となるまで塩酸を加え、析出した沈殿を吸引ろ過にて回収した。さらに析出物を希塩酸で洗浄した後減圧乾燥することにより、下記構造式(4)の化合物60.7g(0.43mol)を得た。収率は84%であった。
【0037】
【化10】
Figure 0004533497
【0038】
1b)3−メチル−5−フェニルチオフエンの合成
4−メチル−2−チオフェンボロン酸10.0g(0.070mol)、ヨードベンゼン14.4g(0.070mol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.11g(0.0036mol)をテトラヒドロフラン500mlに溶解させた。これに20%炭酸ナトリウム水溶液250mlを加えて窒素雰囲気下で70℃で5時間加熱還流した。室温に戻した後、テトラヒドロフランを留去してからジエチルエ−テルで抽出し、これを飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、ジエチルエーテルを留去した。これをシリカゲルカラムを用いてヘキサンで展開分離し、下記構造式(5)の化合物9.2g(0.053mol)を得た。収率は75%であった。
【0039】
【化11】
Figure 0004533497
【0040】
1c)2−メチルベンゾチオフェンの合成
ベンゾチオフェン25g(0.19mol)をアルゴン雰囲気下、無水ジエチルエーテル100mlに溶解させ、氷浴にて0℃に冷却した。これに1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液125ml(0.20mol)を滴下し室温に戻して12時間攪拌した。再び0℃に冷却後、ヨウ化メチル23.2ml(0.37mol)を滴下し、氷浴上で室温に戻しながら終夜攪拌した。この溶液を1M希塩酸により反応を停止させ、エーテル抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを留去した後、残った固形分をヘキサンで再結晶により精製し、下記構造式(6)の化合物を18.8g(0.13mol)得た。収率は68%であった。
【0041】
【化12】
Figure 0004533497
【0042】
1d)3−ヨード−2−メチルベンゾチオフェンの合成
2−メチルベンゾチオフェン10.8g(0.073mol)、酢酸80ml、水31ml、濃硫酸13mlに、ヨウ素9.0g(0.036mol)、過よう素酸2.2g(0.0097mol)を加えて、70℃で5時間加熱した。室温に戻して氷水を加えてからクロロホルムで抽出し、有機層を水で洗い炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、クロロホルムを留去した。残った固形分をヘキサンで再結晶により精製し、下記構造式(7)の化合物を15.6g(0.057mol)得た。収率は78%であった。
【0043】
【化13】
Figure 0004533497
【0044】
1e)1−(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)パーフルオロシクロペンテンの合成
アルゴン置換した三つ口フラスコに、3−ヨード−2−メチルベンゾチオフェン5.0g(0.018mol)と100mlのテトラヒドロフランを加えた。これを攪拌しながら−70℃まで冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液10ml(0.016mol)を滴下して30分攪拌し、さらにパーフルオロシクロペンテン1.5ml(0.023mol)を一気に加えた。その後2時間攪拌してから、メタノール、希塩酸、水を加えて反応を停止させた。そしてジエチルエーテルで有機層を抽出した後、この有機層を洗浄、乾燥し、その後溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記構造式(8)の化合物2.1g((0.0062mol)を得た。収率は34%であった。
【0045】
【化14】
Figure 0004533497
【0046】
1f)1−(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)−2−(3−メチル−5−フェニルチオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテンの合成
アルゴン置換した三つ口フラスコに、3−メチル−5−フエニルチオフェン0.87g(0.0050mol)と60mlのテトラヒドロフランを加えた。これを攪拌しながら0℃まで冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液3.5ml(0.0056mol)を滴下して30分攪拌した。次に−70℃まで冷却した後、別途調整し−70℃に冷却しておいた1−(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)パーフルオロシクロペンテン1.7g(0.0050mol)/テトラヒドロフラン20ml溶液を滴下し2時間攪拌したのち、常温に戻しながら終夜攪拌した。メタノール、希塩酸、水を加えて反応を停止させた。
【0047】
そしてジエチルエーテルで有機層を抽出した後、この有機層を洗浄、乾燥したのち、溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記構造式(9)の化合物1.1g(0.0022mol)を得た。収率は44%であった。
【0048】
【化15】
Figure 0004533497
【0049】
(実施例2の材料の合成方法)
前記工程1b)においてヨードベンゼンのかわりに4−ブロモビフェニルを用いた以外は実施例1の材料の合成手順と同様にして下記横造式(10)の化合物を得た。
【0050】
【化16】
Figure 0004533497
【0051】
(実施例3の材料の合成方法)
3a)2,4−ジメチルチオフェンの合成
3−メチルチオフェン75g(0.76mol)をアルゴン雰囲気下、無水ジエチルエーテル500mlに溶解させ、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン129ml(0.84mol)を加えて氷浴にて0℃に冷却した。これに1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液525ml(0.84mol)を滴下し室温に戻して12時間攪拌した。再び0℃に冷却後、ヨウ化メチル52.5ml(0.84mol)を滴下し、氷浴上で室温に戻しながら終夜攪拌した。この溶液を1M希塩酸により反応を停止させ、エーテル抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを留去した後、常圧蒸留(沸点〜132℃)により精製し、下記構造式(11)の化合物を58.0g(0.52mol)得た。収率は68%であった。
【0052】
【化17】
Figure 0004533497
【0053】
3b)2,4−ジブロモ−3,5−ジメチルチオフェンの合成
2,4−ジメチルチオフェン32g(0.29mol)を酢酸600mlに溶解させ水浴にて10℃に冷却後、臭素100g(0.63mol)を滴下し、室温に戻しながら終夜攪拌した。この溶液をクロロホルムで抽出し、有機層を水洗いし、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄してから硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、エーテルを留去した。これをシリカゲルカラムを用いてヘキサンで展開分離し、下記構造式(12)の化合物を49.4g(0.18mol)得た。収率は64%であった。
【0054】
【化18】
Figure 0004533497
【0055】
3c)4−ブロモ−3,5−ジメチル−2−チオフェンボロン酸の合成
2,4−ジブロモ−3,5−ジメチルチオフェン30g(0.11mol)をアルゴン雰囲気下、無水ジエチルエーテル500mlに溶解させドライアイス−メタノール浴にて−70℃に冷却後、1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液78ml(0.13mol)を滴下し、1時間攪拌した。これにほう酸トリ−n−ブチル45ml(0.17mol)を滴下し1時間攪拌した後、室温で2時間攪拌した。この溶液を1M希塩酸により反応を停止させてから、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とした後、水層を抽出した。水層を氷浴で冷却しながらpH=1となるまで塩酸を加え、析出した沈殿を吸引ろ過にて回収した。さらに析出物を希塩酸で洗浄した後減圧乾燥することにより、下記構造式(13)の化合物20.9g(0.089mol)を得た。収率は80%であった。
【0056】
【化19】
Figure 0004533497
【0057】
3d)3−ブロモ−2,4−ジメチル−5−フェニルチオフェンの合成
4−ブロモ−3,5−ジメチル−2−チオフェンボロン酸10.4g(0.044mol)、ヨードベンゼン11.2g(0.055mol)、テトラキストリフエニルホスフィンパラジウム2.6g(0.020mol)をテトラヒドロフラン(THF)270mlに溶解させた。これに20%炭酸ナトリウム水溶液120mlを加えて、窒素雰囲気下で70℃で5時間加熱還流した。室温に戻した後、THFを留去してからジエチルエーテルで抽出し、これを飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、ジエチルエーテルを留去した。これをシリカゲルカラムを用いてヘキサンで展開分離し、下記構造式(14)の化合物9.35g(0.035mol)を得た。
収率は79%であった。
【0058】
【化20】
Figure 0004533497
【0059】
3e)1−(2,4−ジメチル−5−フエニルチオフェン−3−イル)パーフルオロシクロペンテンの合成
アルゴン置換した三つ口フラスコに、3−ブロモ−2,4−ジメチル−5−フェニルチオフェン5.0g(0.019mol)と100mlのテトラヒドロフランを加えた。これを攪拌しながら−70℃まで冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液14ml(0.022mol)を滴下して30分攪拌し、さらにパーフルオロシクロペンテン1.5ml(0.023mol)を一気に加えた。その後2時間攪拌してから、メタノール、希塩酸、水を加えて反応を停止させた。そしてジエチルエーテルで有機層を抽出した後、この有機層を洗浄、乾燥したのち、溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記構造式(15)の化合物3.08g(0.0081mol)を得た。収率は43%であった。
【0060】
【化21】
Figure 0004533497
【0061】
3f)1−(2,4−ジメチル−5−フェニルチオフェン−3−イル)−2−(3−メチル−5−フエニルチオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテンの合成
アルゴン置換した三つ口フラスコに、3−メチル−5−フエニルチオフェン1.13g(0.0065mol)と80mlのテトラヒドロフランを加えた。これを攪拌しながら0℃まで冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液4.7ml(0.0075mol)を滴下して30分攪拌した。、次に−70℃まで冷却した後別途調整し−70℃に冷却しておいた1−(2,4−ジメチル−5−フエニルチオフェン−3−イル)パーフルオロシクロペンテン2.60g(0.0068mol)/テトラヒドロフラン30ml溶液を滴下し、2時間攪拌したのち、常温に戻しながら終夜攪拌した。メタノール、希塩酸、水を加えて反応を停止させた。そしてジエチルエーテルで有機層を抽出した後、この有機層を洗浄、乾燥したのち、溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記構造式(16)の化合物2.05g(0.0038mol)を得た。収率は59%であった。
【0062】
【化22】
Figure 0004533497
【0063】
(実施例4の材料の合成方法)
前記工程3f)において、3−メチル−5−フエニルチオフェンの代わりに3−メチル−5−(4−メトキシフエニル)チオフェンを用いた以外は、実施例3の材料の合成手順と同様にして下記構造式(17)の化合物を得た。
【0064】
【化23】
Figure 0004533497
【0065】
このように製造されたフォトクロミック材料は、前記構造式(9)、(10)、(16)、(17)にて示されるジアリールエテン系化合物からなり、該ジアリールエテン系化合物によるフォトクロミツク反応を生じる。すなわち、開環体の状態にある前記ジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長λ1の光を照射することにより、異なる波長光の吸収を有する閉環体が生成し、また閉環体の状態にある前記ジアリールエテン系化合物に、閉環体が吸収を有する波長λ2の光を照射することにより、元の開環体の状態に戻る可逆反応を生じる。
【0066】
このフォトクロミック材料によると、ジアリールエテン系化合物が前記構造式(9)、(10)、(16)、(17)に示すように共役二重結合鎖を有さない化合物であるので、特開平7−89954号公報が教えるジアリールエテン系化合物のような不都合を生じることがなく、記録材料として用いる上で都合がよい。また、前記構造式(9)、(10)、(16)、(17)に示すジアリールエテン系化合物は、開環体の吸収帯は従来のものより長波長域にまで、すなわち可視域付近にまで至り、また開環体と閉環体の吸収帯は重なりが少なく、特開平8−245579号公報が教えるジアリールエテン系化合物のような不都合を生じることがなく、記録材料として用いる上で都合がよい。
図1に前記実施例1〜4のジアリールエテン系化合物からなるフォトクロミック材料を用いて作製した光記録媒体の一例の一部の概略構成の断面図を示し、図2に図1に示す光記録媒体を収容し該媒体に対し情報の記録、消去、再生を行う光記録装置の一例の概略構成の側面図を示す。
【0067】
図1に示すように、光記録媒体94はガラス基板941上に、実施例1〜4のジアリールエテン系化合物とポリスチレン樹脂をスピンコート法により塗布して情報を記録するための記録層942を作製したもの、さらに言うとジアリールエテン系化合物2.5重量部、ポリステレン樹脂2.5重量部、トルエン95重量部を塗液として、3000rpmで回転する基板941にスピンコート法により記録層942を成膜したものである。なお、本例では、記録層942の層厚は、約150nmである。
【0068】
この光記録媒体94は、そのジアリールエテン系化合物の開環体又は閉環体の状態のうち、どちらか一方を情報未記録状態、他方を情報記録状態に対応させることにより(ここでは開環体の状態を情報未記録状態、閉環体の状態を情報記録状態に対応させることにより)情報の書き換え可能な光記録媒体となる。
【0069】
図2に示す光記録装置は、情報消去兼再生用光源91、情報記録用光源97、波長選択ミラー92、集光レンズ93、95、フォトダイオード96及び光記録媒体の収容部100などを含んでおり、光記録媒体94に対して情報の記録、消去、再生のいずれも行うことができる。
【0070】
情報消去兼再生用光源91は、光の強度を調節できるNDフィルタ91’を含んでおり、波長514nmの光91aを射出できる。これにより光源91は、情報消去時には情報消去用光として波長514nm、記録媒体上における照射光パワー約1mWの光91aを射出できる。なお、この情報消去用光は媒体94におけるジアリールエテン系化合物の閉環体が吸収を有する波長の光である。また、情報再生時には情報再生用光として波長514nm、記録媒体上における照射光パワー約10μWの光91aを射出できる。なお、この情報再生用光は照射光パワーが約10μWと小さいので媒体94の情報が消去されることはほとんどなく、実用上無視できる。
【0071】
情報記録用光源97は、光の強度を調節できるNDフィルタ97’を含んでおり、波長365nmの光97aを射出できる。これにより光源97は、情報記録時には情報記録用光として波長365nm、記録媒体上における照射光パワー約200μWの光97a を射出できる。なお、この情報記録用光は媒体94におけるジアリールエテン系化合物の開環体が吸収を有する波長の光である。
【0072】
波長選択ミラー92は、光源91からの光91aの一部を透過し、光源97からの光97aを反射して、それらの光を集光レンズ93に入射できる。
【0073】
集光レンズ93は、波長選択ミラー92からの光を光記録媒体94に照射できる。
【0074】
集光レンズ95は、光記録媒体94からの透過光91bをフォトダイオード96の受光部に入射できる。
【0075】
フォトダイオード96は、図示を省略した光量検出回路を含んでいる。また、フォトダイオード96は、集光レンズ95からの光を電気信号に光電変換でき、光の強度に応じた信号を図示を省略した光量検出回路によって光量として検出できる。
【0076】
収容部100は、図示を省略した回転駆動装置を備えており、ディスク状の光記録媒体94を収納できる。媒体94は該回転駆動装置にて媒体表面が移動される。
【0077】
この光記録装置によると、情報の記録にあたり、光源97から情報記録用光として光97aが射出される。光源97からの光97aは波長選択ミラー92にて反射され、集光レンズ93を介して光記録媒体94上に照射される。媒体94の記録層942では、開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、情報記録用光として開環体が吸収を有する波長の光、本例では、波長365nmの光が照射されると、異なる波長光の吸収を有する閉環体が生成する。かくして媒体94に情報が記録される。
【0078】
情報の消去にあたり、光源91から情報消去用光として光91aが射出される。光源91からの光91aは波長選択ミラー92を通過し、集光レンズ93を介して光記録媒体94上に照射される。媒体94の記録層942では、閉環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、情報消去用光として閉環体が吸収を有する波長の光、本例では、波長514nmの光が照射されると、元の開環体に戻る。かくして媒体94の情報が消去される。
【0079】
また、情報の再生にあたり、光源91から情報再生用光として光91aが射出される。光源91からの光91aは波長選択ミラー92を通過し、集光レンズ93を介して光記録媒体94上に照射される。
【0080】
光記録媒体94からの透過光91bは、集光レンズ95を介してフォトダイオード96に入射される。媒体94の記録層942では、情報未記録状態、すなわちジアリールエテン系化合物の開環体の状態と、情報記録状態、すなわちジアリールエテン系化合物の閉環体の状態とでは光の吸収スペクトルが大きく異なるので、このフォトダイオード96にて情報再生用光の波長(ここでは波長514nm)における開環体の状態での光の吸収強度と閉環体の状態での光の吸収強度との違いを検出することによって情報記録状態か情報未記録状態かの読み出し、すなわち情報の再生が可能となる。
【0081】
光記録媒体94によると、フォトクロミック材料としてジアリールエテン系化合物を採用しているので、情報の記録、消去、再生にあたっての繰り返し耐久性、熱不可逆性に優れる。また、このジアリールエテン系化合物は前記構造式(9)、(10)、(16)、(17)にて示されるジアリールエテン系化合物であり、既に説明したように開環体の吸収帯が可視域付近にまで至るので、開環体が吸収を有する光、すなわち本例では情報の記録に用いられる光として可視域付近の光(本例では、波長365nmの光)を採用できる。従って、媒体94を収容する図2に示す光記録装置において特殊な光学部品を用いなくてもよく、それだけ該光記録装置のコストを低く抑えることができる。
【0082】
次に本発明のフォトクロミック材料及び光記録媒体について性能評価実験を行ったので、それぞれ比較実験とともに以下に説明する。なおフォトクロミック材料については光吸収スペクトルの測定実験を行い、光記録媒体については光記録実験を行った。
<光吸収スペクトルの測定実験>
実験には、評価実験用フォトクロミック材料1〜4として実施例1〜4の材料をそれぞれ用い、比較実験用フォトクロミック材料1、2として下記構造式(18)に示す1,2−ビス−(2−メチルベンゾチオフェン−3−イル)パーフルオロシクロペンテン、下記構造式(19)に示す1,2−ビス−(2,4−ジメチル−5−フエニルチオフェン−3−イル)パーフルオロシクロペンテンからなる材料を用いた。
【0083】
【化24】
Figure 0004533497
【0084】
【化25】
Figure 0004533497
【0085】
評価実験用材料1〜4及び比較実験用材料1、2について、それぞれヘキサンに溶かした溶液を作製した。実験はこれらの溶液の光吸収スペクトルを測定した。それぞれの溶液のモル濃度はほぼ等しくなるように調整した。測定は、溶液中のジアリールエテン系化合物がほとんどすべて開環体とみなすことができる状態で行なった。
【0086】
光吸収スペクトルの測定結果を図3、図4に示す。図3において、実線、破線及び鎖線はそれぞれヘキサン溶液中における評価実験用材料1、2、比較実験用材料2のジアリールエテン系化合物の開環体の状態での光吸収スペクトルを示している。また図4において、実線、破線及び鎖線はそれぞれヘキサン溶液中における評価実験用材料3、4、比較実験用材料2のジアリールエテン系化合物の開環体の状態での光吸収スペクトルを示している。図3、図4に示すように、評価実験用材料1〜4の溶液は比較実験用材料1、2の溶液より、開環体の吸収帯がより長波長域まであることがわかる。
次に、これらの溶液に水銀ランプにより308nmの紫外光を照射してから、再び光吸収スペクトルを測定した。この紫外光は評価実験用材料1〜4、及び比較実験用材料1、2のジアリールエテン系化合物の開環体がいずれも吸収を有する波長の光である。
【0087】
評価実験用材料1〜4の溶液、比較実験用材料1、2の溶液の紫外光照射前と紫外光照射後の光吸収スペクトルの変化の様子をそれぞれ図5〜図8、図9、図10に示す。なお図5〜図10中の実線、破線はそれぞれ紫外光照射前での光吸収スペクトル、紫外光照射後での光吸収スペクトルを示している。また、評価実験用材料1〜4、比較実験用材料1、2において開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長の光を照射することにより、閉環体の状態が生成するフォトクロミック反応による構造式の変化の状態をそれぞれ図11〜図14、図15、図16に示す。
【0088】
図5〜図10に示すように、紫外光照射により可視域に新たな吸収帯が生じていることがわかる。このことから、評価実験用材料1〜4の溶液及び比較実験用材料1、2の溶液において紫外光照射によりそれぞれ図11〜図14、図15、図16に示すフォトクロミック反応が進行し、それぞれ図11〜図14、図15、図16中右側に示す閉環体を生じていることがわかる。
<光記録実験>
実施例1〜4のジアリールエテン系化合物を用いて、それぞれ光記録媒体を作製し、以下に説明する光記録実験を行なった。
【0089】
実験に用いた光記録媒体は既述の図1に示す光記録媒体94の作製方法と同様の方法で作製した。
【0090】
すなわち、実験に用いた光記録媒体として、図1に示すように、ガラス基板941上に、ジアリールエテン系化合物とポリスチレン樹脂をスピンコート法により塗布して情報を記録するための記録層942を作製したもの、さらに言うとジアリールエテン系化合物2.5重量部、ポリスチレン樹脂2.5重量部、トルエン95重量部を塗液として3000rpmで回転する基板941 にスピンコート法により記録層942を成膜したものを使用した。実施例1〜4のジアリールエテン系化合物を用いて作製した光記録媒体をそれぞれ評価実験用光記録媒体1〜4とした。記録層942の層厚は、いずれも約150nmであった。また、作製後の光記録媒体における記録層942はいずれも無色であり、記録層942中のジアリールエテン系化合物はほとんどすべて開環体とみなすことができる。
この光記録実験は、評価実験用光記録媒体1〜4をそれぞれ図2に示す光記録装置に収容して、以下の操作手順で行った。
1)初期状態、すなわち無色の記録層942を有する光記録媒体94に対して、光源91より波長514nmの光91aを照射し、フォトダイオード96によって光記録媒体を透過した光91bの強度T1を測定した。このときの光源91からの光91aの照射光パワーは光記録媒体上において約10μWとした。
2)光記録媒体94に対して、光源97より波長365nmの光97aを照射した。この過程を記録過程とする。このときの光源97からの光97aの照射光パワーは光記録媒体上において約200μWとし、その照射時間を1msecとした。
3)前記1)と同様の方法で記録時の透過光強度T2を測定した。
4)光記録媒体94に対して、光源91より波長514nmの光91aを照射した。この過程を消去過程とする。このときの光源91からの光91aの照射光パワーは光記録媒体上において約1mWとし、その照射時間を1msecとした。
5)前記1)と同様の方法で消去時の透過光強度T3を測定した。
6)以後、前記1)から5)までの操作を繰り返して透過光強度T4からT10までを測定した。すなわち、記録時の透過光強度T4、T6、T8、T10、消去時の透過光強度T5、T7、T9を測定した。
なお光強度の調整はNDフィルター91’、97’を用いて行った。
【0091】
光記録実験の結果を図17に示す。
【0092】
図17は評価実験用光記録媒体1〜4による光記録実験の結果を示すグラフであり、透過光強度T1からT10のそれぞれについて、透過光強度T1(媒体初期状態での透過光強度)との比をプロットし、各プロットを線で結んだグラフである。なお、図中の実線、破線及び鎖線、一点鎖線はそれぞれ評価実験用光記録媒体1〜4による実験結果を示している。
【0093】
この実験により、評価実験用光記録媒体1〜4については、いずれの媒体も情報の記録、消去を繰り返し行えることがわかる。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によると、ジアリールエテン系化合物からなるフォトクロミツク材料であって、記録材料として用いる上で都合がよく、開環体の吸収帯が可視域付近にまで至るフォトクロミック材料を提供することができる。
【0095】
また本発明によると、フォトクロミック材料を用いて光による情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも一つを行う光記録媒体であって、情報の記録、消去、再生にあたっての繰り返し耐久性、熱不可逆性に優れ、さらに媒体製造コスト及び該媒体を収容する光記録装置のコストを低く抑えることができる光記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜4のジアリールエテン系化合物からなるフォトクロミック材料を用いて作製した光記録媒体の一例の一部の概略構成の断面図である。
【図2】図1に示す光記録媒体を収容し該媒体に対し情報の記録、消去、再生を行う光記録装置の一例の概略構成の側面図である。
【図3】ヘキサン溶液中における評価実験用材料1、2及び比較実験用材料1のジアリールエテン系化合物の開環体の状態での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図4】ヘキサン溶液中における評価実験用材料3、4及び比較実験用材料2のジアリールエテン系化合物の開環体の状態での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図5】ヘキサン溶液中における評価実験用材料1のジアリールエテン系化合物の紫外光照射前後での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図6】ヘキサン溶液中における評価実験用材料2のジアリールエテン系化合物の紫外光照射前後での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図7】ヘキサン溶液中における評価実験用材料3のジアリールエテン系化合物の紫外光照射前後での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである.
【図8】ヘキサン溶液中における評価実験用材料4のジアリールエテン系化合物の紫外光照射前後での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図9】ヘキサン溶液中における比較実験用材料1のジアリールエテン系化合物の紫外光照射前後での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図10】ヘキサン溶液中における比較実験用材料2のジアリールエテン系化合物の紫外光照射前後での光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである.
【図11】評価実験用材料1において開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長の光を照射することにより、閉環体の状態が生成するフォトクロミック反応による構造式の変化の状態を示す図である。
【図12】評価実験用材料2において開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長の光を照射することにより、閉環体の状態が生成するフォトクロミック反応による構造式の変化の状態を示す図である。
【図13】評価実験用材料3において開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長の光を照射することにより、閉環体の状態が生成するフォトクロミック反応による構造式の変化の状態を示す図である。
【図14】評価実験用材料4において開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長の光を照射することにより、閉環体の状態が生成するフォトクロミック反応による構造式の変化の状態を示す図である。
【図15】比較実験用材料1において開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長の光を照射することにより、閉環体の状態が生成するフォトクロミック反応による構造式の変化の状態を示す図である。
【図16】比較実験用材料2において開環体の状態にあるジアリールエテン系化合物に、開環体が吸収を有する波長の光を照射することにより、閉環体の状態が生成するフォトクロミック反応による構造式の変化の状態を示す図である。
【図17】評価実験用光記録媒体1〜4による光記録実験の結果を示すグラフであり、透過光強度T1からT10のそれぞれについて、透過光強度T1(媒体初期状態での透過光強度)との比をプロットし、各プロットを線で結んだグラフである。
【符号の説明】
91 情報消去兼再生用光源
91’ NDフィルタ
91a 情報消去用光又は情報再生用光
91b 光記録媒体94からの透過光
92 波長選択ミラー
93、95 集光レンズ
94 光記録媒体
941 ガラス基板
942 記録層
96 フォトダイオード
97 情報記録用光源
97’ NDフィルタ
97a 情報記録用光
100 光記録媒体の収容部

Claims (2)

  1. ジアリールエテン系化合物からなるフォトクロミック材料であり、該ジアリールエテン系化合物が次の一般式(1)にて示される化合物であることを特徴とするフォトクロミック材料。
    Figure 0004533497
    (式(1)中R1は置換されていてもよいアルキル基若しくは置換されていてもよいアルコキシ基を表し、R2〜R7はそれぞれ水素原子若しくは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいアリール基を表す。ただし、置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、水酸基のいずれかである。また、Aは、次の一般式(2)
    Figure 0004533497
    又は次の一般式(3)
    Figure 0004533497
    で表される基を表す。式中R11、R14は置換されていてもよいアルキル基若しくは置換されていてもよいアルコキシ基を表し、R12、R13、R15〜R18はそれぞれ水素原子若しくは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいアリール基を表す。ただし、アルキル基、アルコキシ基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、水酸基のいずれかである。またアリール基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、水酸基のいずれかである。
  2. フォトクロミック材料を用いて光による情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも一つを行う光記録媒体であり、請求項1記載のフォトクロミック材料を含んでいることを特徴とする光記録媒体。
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