JP4530568B2 - 発進用自動遠心クラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本出願発明は、車内に搭載される内燃機関のクランク軸の出力が、ウエイトに働く遠心力により、所定回転速度を境に低速では遮断状態、高速では接続状態に自動的に切換えられる発進用自動遠心クラッチに関するものである。
【0002】
【従来技術および解決しようとする課題】
従来の発進用自動遠心クラッチ(特公平2−29892号)では、内燃機関のクランク軸に一体に嵌着された椀状のクラッチハウジングは、鋼製の場合は、鋳造品であるため、量産性が低く、厚肉となり、軽合金製の場合は、ダイキャスト製であるため、金型代が高く、厚肉となり、両者に共通する点は、加工工数が多く、軽量化とコストダウンが困難なことであった。
【0003】
【課題を解決するための手段および効果】
本出願の発明は、このような難点を克服した発進用自動遠心クラッチの改良に係り、請求項1記載の発明は、内燃機関のクランク軸に連結されたクラッチハウジングと被動部材とにそれぞれ係合された複数枚のクラッチ板が交互に重ね合わされ、該クラッチハウジングに設けられたウエイトに働く遠心力の増大によって前記複数枚のクラッチ板が相互に押し付けられてクラッチ接続状態となる発進用自動遠心クラッチにおいて、前記クラッチハウジングは、板材にプレス成形を施すことにより構成され、このプレス成形の際に、前記ウエイトの取り付け用開口形成が同時に行なわれて構成され、前記ウエイトの揺動軸を支持する軸受け部は、前記クラッチハウジング本体と、該クラッチハウジングから切り起された切り起し片とでもって構成され、該切り起し片は前記クラッチハウジングプレス成形時に同時に形成されたことを特徴とするものである。
【0004】
請求項1記載の発明では、クラッチハウジングは板材にプレス成形を施すことにより構成されているため、クラッチハウジングの肉厚が著しく薄肉となって、大幅な軽量化が可能となり、しかも、鋳造やダイキャストによらないため、省エネルギーと生産性向上を図ることができる。
【0005】
また、プレス成形の際に、ウエイトの取り付け用開口が同時に行なわれるため、加工工数が節減され、大幅なコストダウンが可能となる。
【0006】
さらに、ウエイトの揺動軸を支持する軸受け部を、クラッチハウジング本体と、該クラッチハウジングから切り起された切り起し片とでもって構成され、該切り起し片は前記クラッチハウジングプレス成形時に同時に形成されたため、前記発進用自動遠心クラッチの部品点数と加工工数の削減がより一層促進され、さらなる軽量化とコストダウンが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図7に図示された本願発明の一実施形態について説明する。
【0008】
図示されない自動2輪車に搭載された単気筒OHC4ストロークサイクル内燃機関0の本体は、図1および図2に図示されるように、シリンダ孔5が略前方(図1では右方、図2では上方)水平方向に指向したシリンダブロック1と、該シリンダブロック1の前端に配置されたシリンダヘッド2と、前記シリンダブロック1の後端に配置された左右割の右方クランクケース3および左方クランクケース4とよりなり、該左右割の右方クランクケース3および左方クランクケース4は図示されないボルトにより相互に結合されるとともに、車体前方からシリンダヘッド2およびシリンダブロック1を貫通して右方クランクケース3および左方クランクケース4に螺着されるボルト6により、シリンダブロック1、シリンダヘッド2、右方クランクケース3、および左方クランクケース4は一体的に結合されるようになっている。
【0009】
また、図2に図示されるように、前記シリンダブロック1のシリンダ孔5にピストン7が摺動自在に嵌装されるとともに、右方クランクケース3および左方クランクケース4に車幅方向へ指向したクランク軸8がボールベアリング9を介して回転自在に枢支され、前記ピストン7とクランク軸8とはコネクティングロッド10によって連結されており、ピストン7の往復動に連動して、クランク軸8が図1で時計方向へ回転駆動されるようになっている。
【0010】
さらに、右方クランクケース3および左方クランクケース4には、クランク軸8と平行に主軸11および出力軸12が回転自在に枢支され(図1)、クランク軸8の右端には、図3に示される発進用自動遠心クラッチ13が配設されるとともに、主軸11の右端には、同図に示される切り換えクラッチ36が配置され、主軸11と出力軸12とには図示されない歯車が設けられ、左方クランクケース4から左方へ突出した出力軸12の左端に図示されないドライブスプロケットが一体に取り付けられ、図示されない後車輪と一体の後車軸にドリブンスプロケット(図示されず)が一体に取り付けられ、前記ドライブスプロケットとドリブンスプロケットに無端チエン(図示されず)が架渡されており、発進用自動遠心クラッチ13および切り換えクラッチ36が接続された状態において、主軸11と出力軸12の歯車の選択的噛み合いにより、所定の変速比でもって図示されない後車輪が回転駆動されるようになっている。
【0011】
前記発進用自動遠心クラッチ13では、図3および図4に図示されるように、クランク軸8の右側部に遠心クラッチインナー14が回転自在に嵌装され、該遠心クラッチインナー14の外端寄りに位置してクランク軸8の右端にクラッチセンター15がスプライン嵌合され、クランク軸8の右端に螺着されたナット16によりクラッチセンター15がクランク軸8に一体に結合されている。遠心クラッチインナー14の外側ディスク部14aの円形凹部内周面14bと、クラッチセンター15の外周面15aとの間には、図3および図6に示されるように、ワンウエイクラッチ17のリテーナ18が介装され、該リテーナ18には、図6に示されるように、周方向に亘り一定間隔毎にローラ保持孔18aが形成され、該ローラ保持孔18aにローラ19が遊嵌され、図6および図7に図示されるように、前記クラッチセンター15の外周面15aには、クラッチカム凹面15bが形成されている。
【0012】
このクラッチカム凹面15bは、図7に詳細に図示されるように、その底部から時計回り方向に向っては緩やかに半径方向へ傾斜し、その底部から反時計回り方向に向っては急に半径方向へ傾斜しており、クラッチセンター15すなわちクランク軸8が図6において時計方向へ回転(単気筒OHC4ストロークサイクル内燃機関0が正転)する場合には、クラッチセンター15の回転トルクが遠心クラッチインナー14に伝達されず、クラッチセンター15が図6において反時計方向へ回転(単気筒OHC4ストロークサイクル内燃機関0が逆転)する場合には、クラッチセンター15の回転トルクが遠心クラッチインナー14に伝達され、あるいは遠心クラッチインナー14が図6において時計方向へ回転する場合には、遠心クラッチインナー14の回転トルクがクラッチセンター15に伝達されるようになっている。
【0013】
また、前記クラッチセンター15とリテーナ18とに位置決め用のリング状スプリング20が介装されており、このスプリング20のバネ力によりリテーナ18のローラ保持孔18aがクラッチセンター15のクラッチカム凹面15bの底部に相対した位置に復歸できるようになっている。
【0014】
さらに、クラッチセンター15の右側部外周面に鋼板製の椀状のクラッチハウジング21が溶接でもって一体に接合され、該クラッチハウジング21はプレス成形品である。
【0015】
このプレス成形で成形されたクラッチハウジング21の円板状部21aの外周部21bは該円板状部21aに対して断面で略直角に左方へ折曲されるとともに、図5に図示されるように、周方向に亘って等間隔毎に張り出し部21cが形成され、該張り出し部21cの内、1つ置きの張り出し部21cの中心寄り位置に開口21dが形成されるとともに、隣接する開口21dの中間に支持リング25を保持するための係止爪21eが切り起され、これらクラッチハウジング21の円板状部21a、外周部21b、張り出し部21c、開口21d、係止爪21eは、クラッチハウジング21のプレス成形の際に、同時に形成されている。
【0016】
また、クラッチハウジング21の円板状部21aの中心に位置したクラッチセンター15およびナット16を覆うカバー22がボルト23でもってクラッチハウジング21の円板状部21aに一体に装着され、前記クラッチハウジング21の開口21dにはウエイトカム24が遊嵌され、前記クラッチハウジング21の円板状部21aと係止爪21eとに挟持された支持リング25に前記ウエイトカム24が揺動可能に枢支されている。
【0017】
さらに、前記遠心クラッチインナー14の外周部14aには、図6に図示されるように、周方向に亘って等間隔に係合凹部14cが多数形成され、該遠心クラッチインナー14の係合凹部14cにクラッチプレート26の内周突部26aが嵌装されている。該クラッチプレート26の両側面には摩擦板27が一体に貼付されている。
【0018】
さらにまた、図3に図示されるように、クラッチハウジング21の張り出し部21cに2枚のプレッシャプレート28の外周突部28aがクラッチプレート26を挟むように嵌装され、該2枚のプレッシャプレート28の内、右方のプレッシャプレート28には左方に向ってガイドピン29が周方向に亘って数個所で一体にカシメ付けされ、該ガイドピン29の先端は、左側のプレッシャプレート28に遊嵌され、該ガイドピン29にコイルスプリング30が嵌装され、また、右方のプレッシャプレート28の左側面に、スペーサ31が周方向に亘って数個所で一体にカシメ付けされている。クラッチハウジング21の張り出し部21cの内面はストッパーの働きをし、プレッシャープレート28がクラッチハウジング21と一体になって回るようになっている。
【0019】
また、クランク軸8およびクラッチセンター15が、停止または所定回転速度以下で回転している場合には、ウエイトカム24には大きな遠心力が働かず、クラッチプレート26とプレッシャプレート28とは、図3に示すように、相互に離れてクラッチ断の状態となっている。
【0020】
さらに、クランク軸8およびクラッチセンター15が図5および図6にて時計方向へ所定回転速度以上回転した場合には、ウエイトカム24に働く遠心力により、図3に示されたウエイトカム24が、時計回り方向へ揺動して、図4に図示されるように傾き、このウエイトカム24の傾きにより右側のプレッシャプレート28が左方へ押されて、クラッチプレート26とプレッシャプレート28とは摩擦板27を介して相互に圧接され、その圧接による摩擦力でもってクランク軸8すなわちクラッチセンター15の回転トルクが遠心クラッチインナー14に伝達されるようになっている。
【0021】
さらにまた、遠心クラッチインナー14の左端には、出力歯車33が一体に形成されるとともに、該出力歯車33に隣接してセラシ歯車34が配設され、切り換えクラッチ36のクラッチアウター37に形成された歯車38は出力歯車33およびセラシ歯車34に噛合わされており、スプリング35のバネ力によりセラシ歯車34が切り換えクラッチ36の歯車38の動力非伝達側歯車に常時圧接されて、バックラッシュが除去されるようになっている。
【0022】
しかも、遠心クラッチインナー14と一体の出力歯車33には、図示されないキックスタータ歯車または、スタータモータの出力歯車が噛合わされており、図示されないキックペダルを踏むか、またはスタータモータを始動させると、出力歯車33には図5において時計方向のトルクが加えられ、ワンウエイクラッチ17が接続状態となって、クランク軸8が時計方向へ回転駆動され、単気筒OHC4ストロークサイクル内燃機関0が始動するようになっている。
【0023】
図1ないし図7に図示の実施形態は前述したように構成されているので、クランク軸8が停止または、所定回転速度以下で回転している場合では、ウエイトカム24には大きな遠心力が働かず、発進用自動遠心クラッチ13は遮断状態となっている。
【0024】
そして、クランク軸8の回転速度が所定回転速度を越えると、ウエイトカム24に働く遠心力により、プレッシャプレート28がクラッチプレート26に押し付けられて、発進用自動遠心クラッチ13が接続状態となり、クランク軸8のトルクが切り換えクラッチ36のクラッチアウター37に伝達される。
【0025】
また、発進用自動遠心クラッチ13のクラッチハウジング21は、鋼板に、打抜きプレス成形を施し、クラッチハウジング21の円板状部21a、外周部21b、張り出し部21c、開口21dおよび係止爪21eを同時に、一体的に形成してなるため、多数の複雑な金型を必要とせず、部品点数と加工工数を削減でき、薄い銅版でクラッチハウジング21を構成できる生産性を高めることができる結果、軽量化と大幅なコストダウンを遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る発進用自動遠心クラッチを備えた単気筒OHC4ストロークサイクル内燃機関の外観図である。
【図2】同内燃機関の要部縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る発進用自動遠心クラッチの縦断面図である。
【図4】同発進用自動遠心クラッチの作用説明図である。
【図5】同発進用自動遠心クラッチのハウジングの正面図である。
【図6】同発進用自動遠心クラッチのハウジングの横断面図である。
【図7】同発進用自動遠心クラッチのワンウエイクラッチの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
0…単気筒OHC4ストロークサイクル内燃機関、1…シリンダブロック、2…シリンダヘッド、3…右方クランクケース、4…左方クランクケース、5…シリンダ孔、6…ボルト、7…ピストン、8…クランク軸、9…ボールベアリング、10…コネクティングロッド、11…主軸、12…出力軸、13…発進用自動遠心クラッチ、14…遠心クラッチインナー、14a…外側ディスク部、14b…円形凹部の内周面、14c…係合凹部、15…クラッチセンター、15a…外周面、15b…クラッチカム凹面、16…ナット、17…ワンウエイクラッチ、18…リテーナ、18a…ローラ保持孔、19…ローラ、20…スプリング、21…クラッチハウジング、21a…円板状部、21b…外周部、21c…張り出し部、21d…開口、21e…係止爪、22…カバー、23…ボルト、24…ウエイトカム、25…支持リング、26…クラッチプレート、26a…円周突部、27…摩擦板、28…プレッシャプレート、28a…外周突部、29…ガイドピン、30…コイルスプリング、31…スペーサ、33…出力歯車、34…セラシ歯車、35…スプリング、36…切り換えクラッチ、37…クラッチアウター、38…歯車。
Claims (1)
- 内燃機関のクランク軸に連結されたクラッチハウジングと被動部材とにそれぞれ係合された複数枚のクラッチ板が交互に重ね合わされ、該クラッチハウジングに設けられたウエイトに働く遠心力の増大によって前記複数枚のクラッチ板が相互に押し付けられてクラッチ接続状態となる発進用自動遠心クラッチにおいて、
前記クラッチハウジングは、板材にプレス成形を施すことにより構成され、このプレス成形の際に、前記ウエイトの取り付け用開口形成が同時に行なわれて構成され、
前記ウエイトの揺動軸を支持する軸受け部は、前記クラッチハウジング本体と、該クラッチハウジングから切り起された切り起し片とでもって構成され、該切り起し片は前記クラッチハウジングプレス成形時に同時に形成されたことを特徴とする発進用自動遠心クラッチ。
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JP2001101766A JP4530568B2 (ja) | 2001-03-30 | 2001-03-30 | 発進用自動遠心クラッチ |
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---|---|---|---|---|
JPS5852341U (ja) * | 1981-10-05 | 1983-04-09 | 則直 充 | 自動車等のクラツチ |
JPH0972352A (ja) * | 1995-09-01 | 1997-03-18 | Honda Motor Co Ltd | 遠心クラッチのクラッチドラム |
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2001
- 2001-03-30 JP JP2001101766A patent/JP4530568B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPS5852341U (ja) * | 1981-10-05 | 1983-04-09 | 則直 充 | 自動車等のクラツチ |
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