JP3739522B2 - 磁石発電機の回転子 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁石発電機の回転子に関し、特に、ヨークとワンウエイクラッチのクラッチアウタとの結合構造の改良に係り、例えば、自動二輪車等のエンジンに連動される磁石発電機に利用して有効な回転子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、二輪自動車等のエンジンのうちスタータモータによって始動されるように構成されたエンジンにおいては、始動後にスタータモータをエンジンから切り離す必要があるため、エンジンのクランクシャフトとスタータモータとの間にワンウエイクラッチが介設されている。他方、二輪自動車等のエンジンのクランクシャフトには磁石発電機が直結される場合が多い。そこで、スタータモータとエンジンとの連結および解除を実行するワンウエイクラッチを磁石発電機に組み込む構造が広く採用されている。そして、エンジンのクランクシャフトに直結された磁石発電機にワンウエイクラッチを組み込む構造としては、クラッチアウタが磁石発電機の回転子のボス部材に同心円に固定され、クラッチアウタに嵌合したクラッチインナにスタータモータに連携したスプロケット軸が固定される構造がある。
【0003】
従来のこの種の磁石発電機の回転子としては、例えば、実開昭62−177929号公報に開示されているものがある。すなわち、このものにおいては、外周にフランジを有するボス部材の一部が碗形状のヨークの底壁に開設された開口に挿入されているとともに、ヨークの底壁にはクラッチインナとクラッチアウタとが内外に同心円に配設されたワンウエイクラッチのクラッチアウタが同軸に連結されている。クラッチアウタはクラッチインナを嵌合したクラッチインナ取付孔が開設された本体と、この本体におけるクラッチインナ取付孔の内周面に周方向に間隔を置かれて配され径方向外向きに楔形状に没設された複数のクラッチ室と、各クラッチ室に転動可能に収納されてクラッチインナとクラッチアウタの連結および解除を実行する複数のクラッチ部材としてのクラッチローラとを備えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記した磁石発電機の回転子においては、クラッチアウタのクラッチ室における軸方向の両端面がそれぞれ開口されているため、クラッチローラの摺動性を確保したりクラッチローラからの力を受けたりするプレートをクラッチローラとボス部材のフランジの端面との間に介設する必要があり、ワンウエイクラッチひいては磁石発電機の回転子の製造コストが増加するという問題点がある。プレートを省略してボス部材のフランジの端面によってクラッチローラを受ける場合には、ボス部材のフランジの端面を高精度に研削加工する必要があるため、磁石発電機の回転子の製造コストが増加してしまう。
【0005】
また、前記したワンウエイクラッチにおいては、クラッチインナが、その先端に対向するボス部材の端面との接触を避けるために、先端がクラッチアウタのクラッチ室の内周に位置することになって、クラッチインナの先端におけるエッジ部(面取り部)がクラッチローラの外周面に干渉するため、クラッチローラに圧痕や偏摩耗等が発生し、ワンウエイクラッチの性能が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、ワンウエイクラッチの性能を高めつつ、製造コストを低減することができる磁石発電機の回転子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁石発電機の回転子は、外周にフランジを有するボス部材の一部が碗形状のヨークの底壁に開設された開口に挿入されているとともに、前記ヨークの底壁にはクラッチインナとクラッチアウタとが内外に同心円に配設されたワンウエイクラッチの前記クラッチアウタが同軸に連結されており、前記クラッチアウタは前記クラッチインナを嵌合したクラッチインナ取付孔が開設された本体と、この本体における前記クラッチインナ取付孔の内周面に周方向に間隔を置かれて配され径方向外向きに楔形状に没設された複数のクラッチ室と、前記各クラッチ室に転動可能に収納されて前記クラッチインナと前記クラッチアウタの連結および解除を実行する複数のクラッチ部材とを備えている磁石発電機の回転子において、
前記各クラッチ室は軸方向の一方の端面が閉塞され他方の端面が開口された凹所に形成されているとともに、前記各クラッチ室は前記閉塞端面を構成する閉塞壁が前記ヨークの底壁側に配置されて一体的に没設されており、前記クラッチアウタの本体における前記ヨークの底壁側端面には雌印籠部が前記各クラッチ室の閉塞壁の一部を薄くするように没設されているとともに、この雌印籠部には前記フランジの雄印籠部が印籠結合されていることを特徴とする。
【0008】
前記クラッチインナの先端面は、前記クラッチアウタの本体における前記閉塞壁の内周のうち前記閉塞端面と前記雌印籠部の端面との間に配置されていることが望ましい。
【0009】
前記した手段によれば、クラッチアウタがクラッチ室を含めて一体成形されているため、クラッチアウタの製造コストが大幅に低減されることになる。しかも、一体に成形されたクラッチ室の閉塞壁の端面によってクラッチローラの端面が良好な摺動性をもって受けられるため、ワンウエイクラッチの性能が向上される。ここで、一体に成形するためにはクラッチ室の閉塞壁は所定値以上の厚さが必要になるが、雌印籠部はクラッチアウタの本体における閉塞壁のクラッチ室と反対側の端面に一体成形後に没設することができるため、一体成形に際しては、クラッチ室の閉塞壁は所定値以上の厚さを確保することができる。しかも、雌印籠部にボス部材のフランジにおける雄印籠部が印籠結合されるため、磁石発電機の回転子の全長が短縮されることになる。
【0010】
また、クラッチインナの先端面をクラッチアウタの本体における閉塞壁の内周のうち閉塞端面と雌印籠部の端面との間に配置することにより、クラッチインナの先端面のエッジ部がクラッチ部材の外周に干渉するのを回避することができるため、クラッチ部材における圧痕や偏摩耗の発生を防止することができる。ワンウエイクラッチの性能を高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態である磁石発電機の回転子を示しており、(a)は一部切断側面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。図2は磁石発電機のスタータモータとの組立状態を示す正面断面図である。図3以降はその作用を説明するための説明図である。
【0012】
本実施形態において、本発明に係る磁石発電機の回転子は、スタータモータ付きの二輪自動車におけるエンジンに直結される磁石発電機の回転子として構成されており、磁石発電機をスタータモータに連携させるワンウエイクラッチが一体的に組み込まれている。すなわち、ワンウエイクラッチ30は内外に同心円に配設されたクラッチインナ31とクラッチアウタ33とを備えており、クラッチインナ31がスタータモータ側に連動され、クラッチアウタ33側が磁石発電機側に直結されている。
【0013】
図2に示されているように、エンジン10の側壁11から外部に突出されたクランクシャフト12の突出端部には磁石発電機20の回転子21が直結されているとともに、クランクシャフト12の中間部にはワンウエイクラッチ30のクラッチインナ31が転がり軸受32を介して回転自在に支承されている。エンジン10の側壁11にはエンジンカバー13が固定されており、エンジンカバー13の内側には密閉室14が形成されている。スタータモータ15の出力軸16は密閉室14に挿入されており、出力軸16には駆動側スプロケット17が固定されている。駆動側スプロケット17はクラッチインナ31に固定された被動側スプロケット18にチェーン19によって連動されている。
【0014】
磁石発電機20の回転子21は底壁を有する短尺円筒形状に形成されたヨーク22を備えており、ヨーク22の内周面には界磁極を形成するマグネット23が複数個、周方向に間隔を置かれて固定されている。ヨーク22の底壁にはボス部材24が同心円に配されて固定されており、ボス部材24がエンジン10のクランクシャフト12にテーパ結合およびキー結合された上でナットによって締結されている。ヨーク22の内側には発電子25が配置されており、発電子25はエンジン10の側壁11に固定されたエンジンカバー13に支持されている。
【0015】
ワンウエイクラッチ30のクラッチアウタ33は短尺円筒形状(略ドーナツ形状)の本体34を備えており、クラッチアウタ33の本体34は後記するクラッチ室等を含めて一体成形法のうちの塑性加工の一例である冷間鍛造によって後述するように一体に成形された構造物である。本体34の円筒中空部によってクラッチインナ取付孔35が構成されており、クラッチインナ取付孔35にはクランクシャフト12に回転自在に支承されたクラッチインナ31が回転自在に嵌入されている。
【0016】
本体34のクラッチインナ取付孔35のヨーク側端部には、同心円に配されて一定深さの円形穴形状に形成された雌印籠部36Aが一体的に没設されている。雌印籠部36Aはクラッチアウタ33の本体34がクラッチ室を含めて冷間鍛造された後に切削加工によって後述するように穿設される。雌印籠部36Aはボス部材24におけるヨーク底壁外側端部の外周に形成された雄印籠部36Bに印籠結合されている。この印籠結合によって、クラッチアウタ33と回転子21との芯合わせが確保されている。本体34の周方向における任意の位置には位置決めピン37が軸方向に圧入されており、位置決めピン37がヨーク22の底壁に開設された位置決め孔38に嵌入されることにより、回転子21とクラッチアウタ33との周方向の位置決めが確保されている。本体34は磁石発電機20の回転子21のボス部材24に印籠結合された上で、ヨーク22の底壁に複数本のボルト39によって締結されている。
【0017】
クラッチインナ取付孔35の内周面における雌印籠部36Aと反対側の端部には、軸方向においてヨーク底壁側の端面が閉塞され反対側の端面が開口された凹所形状であって周方向において楔形状のクラッチ室40が3個、周方向に等間隔に配されて径方向外向きに没設されており、各クラッチ室40にはクラッチ部材としてのクラッチローラ43が周方向に転動可能にそれぞれ収納されている。クラッチ室40の周方向における楔形状はクラッチインナ取付孔35の中心からの距離が相異なる小径部41と大径部42とが一体となって形成されており、クラッチローラ43が小径部41に位置する状態においてクラッチインナ31との間で楔効果を発揮するようになっている。クラッチ室40は閉塞端面を構成する閉塞壁40aを含めて塑性加工の一例である冷間鍛造によって後述するように一体に没設された凹所である。
【0018】
本体34におけるクラッチ室40の小径部41に隣接した部位には貫通孔44が、本体34の外周面からクラッチ室40にクラッチインナ取付孔35の接線方向に貫通するように開設されている。本体34におけるクラッチ室40の大径部42に隣接した部位にはスプリング受け穴45が、貫通孔44の軸心の延長線上に形成されている。スプリング受け穴45は貫通孔44の延長線上に貫通孔44を貫通して穿設された盲穴によって構成されており、その穴底によってスプリング47の反力を受ける受け部46が構成されている。スプリング受け穴45にはスプリング47がクラッチ室40から挿入されており、スプリング47の反力端になる挿入端はスプリング受け穴45の穴底によって構成された受け部46によって受けられた状態になっている。スプリング47の付勢側端部には有底円筒形状に形成されたスプリングキャップ48が被せられており、スプリング47はスプリングキャップ48の閉塞端面壁を介してクラッチローラ43に常時押接した状態になっている。すなわち、スプリング47はスプリング受け穴45の穴底である受け部46、つまり、本体34に直接的に反力を取って、弾発力をクラッチローラ43に対してクラッチ室40の大径部42側から小径部41側に向けて常時付勢するようになっている。
【0019】
本体34の外側にはクラッチカバー49が外周からヨーク22と反対側の端面にかけてを全体的に被覆するように被せ付けられており、クラッチカバー49のヨーク22側の端部は本体34のヨーク22側の外周縁部に巻きかしめ加工されている。各クラッチ室40および各貫通孔44の本体34の外周面における開口はクラッチカバー49によっていずれも閉塞された状態になっている。したがって、各クラッチ室40に周方向に転動可能に収納されたクラッチローラ43の開口側端面は、クラッチカバー49の内側端面によって摺動自在に受けられた状態になっている。クラッチローラ43のクラッチカバー49と反対側の端面はクラッチ室40の閉塞壁40aにおける内側端面によって摺動自在に受けられた状態になっている。
【0020】
以上の構成に係る磁石発電機の回転子において、クラッチアウタ33における本体34、クラッチインナ取付孔35、各クラッチ室40およびクラッチ室40の閉塞壁40aは、冷間鍛造によって図3(a)に示されているように一体に成形される。すなわち、本体34の厚さや外径、クラッチインナ取付孔35の内径および各クラッチ室40の容積に見合う諸寸法および全体の体積を予め設定された短尺円筒体が、主に厚さ方向(軸方向)に段階的に冷間鍛造されて行くことより、クラッチ室40における小径部41および大径部42による楔形状と閉塞壁40aとが、本体34やクラッチインナ取付孔35と共に一体に成形される。
【0021】
クラッチ室40を含めてクラッチアウタ33の本体34を冷間鍛造によって一体成形することにより、クラッチアウタ33の製造コストを大幅に低減することができる。すなわち、クラッチ室40の楔形状を構成する小径部41および大径部42の側壁面は複雑な曲面(所謂カムプロフィール)に形成する必要がある。このため、従来からクラッチ室40はブローチ盤によるブローチ削り(broaching)によって形成されている。ブローチ削りは作業性が低い切削加工であるばかりでなく、ブローチ盤は大型大重量になるため、クラッチアウタの製造コストはきわめて大きくなる。これに対して、クラッチアウタ33の本体34をクラッチ室40を含めて冷間鍛造によって一体成形する場合には、金型を一度起こせばプレス装置によって高い精度で量産することができるため、クラッチアウタ33の製造コストは低く抑制することができる。
【0022】
また、クラッチ室40の冷間鍛造に際して、クラッチ室40の軸方向の一方の端面を閉塞する閉塞壁40aを同時に冷間鍛造によって形成することにより、クラッチ室40に収容されたクラッチローラ43の一端面を閉塞壁40aによって受けさせることができるため、クラッチローラ43の一端面を受ける専用のプレートを省略することができ、その分、クラッチアウタ33の製造コストをより一層抑制することができる。しかも、冷間鍛造によって鍛えられた閉塞壁40aの表面は硬質かつ滑らかになるため、閉塞壁40aによってクラッチローラ43を摺動性よく受けることができ、その結果、ワンウエイクラッチ30の性能を高めることができるという効果も得られる。
【0023】
ところで、クラッチ室40の閉塞壁40aを冷間鍛造によって形成する場合には、冷間鍛造に際して、閉塞壁40aに所定値以上の厚さを設定する必要があることが究明された。そこで、本実施形態においては、図3(a)に示されているように、冷間鍛造後のクラッチ室40の閉塞壁40aの厚さtは、冷間鍛造に必要な所定値(例えば、6.2mm以上)に設定されている。
【0024】
ところが、クラッチ室40の閉塞壁40aを冷間鍛造によって形成する場合、例えば、図3(c)に比較例として示されているように、クラッチ室40の反ヨーク側に閉塞壁40aを設けることが考えられるが、クラッチ室40の閉塞壁40aが厚いままの状態で、クラッチアウタ33が磁石発電機の回転子に組み込まれると、クラッチインナ31に固定された被動側スプロケット18にクラッチアウタ33が干渉してしまう。つまり、クラッチアウタ33の閉塞壁40aの外面と被動側スプロケット18との距離Lがきわめて狭小になるか「零」になってしまう。そこで、クラッチアウタ33の閉塞壁40aの外面を切削することにより、クラッチアウタ33の閉塞壁40aと被動側スプロケット18とが大きい距離Mをもって対向するように構成すると、閉塞壁40aの外面は大きな切削代Sをもって切削することが必要になる。したがって、クラッチアウタ33ひいては磁石発電機の回転子の製造コストが増加してしまう。しかも、クラッチローラ43のヨーク22側の端面を良好な摺動特性をもって受けるためのプレート51が必要になるため、より一層製造コストが増加してしまう。
【0025】
そこで、本実施形態においては、クラッチ室40のヨーク側に閉塞壁40aを配設し、クラッチ室40およびその閉塞壁40aを含めてクラッチアウタ33の本体34を冷間鍛造した後に、図3(b)に示されているように、クラッチアウタ33の本体34における閉塞壁40a側の端面壁に雌印籠部36Aをクラッチインナ取付孔35と同心円に切削加工によって没設することにより、クラッチアウタ33の被動側スプロケット18への干渉が回避されている。すなわち、磁石発電機20の回転子21において、クラッチアウタ33の雌印籠部36Aにボス部材24の雄印籠部36Bが印籠結合されることより、クラッチアウタ33はヨーク22側に寄るため、クラッチアウタ33の被動側スプロケット18への干渉を回避することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態においては干渉を回避するための逃げ部が雌印籠部36Aとして構成されるため、干渉を回避する逃げ部を形成するために、工程が増加することはない。したがって、クラッチアウタ33の製造コストの増加は回避することができる。ちなみに、冷間鍛造後のクラッチアウタ33の本体34には位置決めピン37のための取付穴、ボルト39のための締結孔、貫通孔44およびスプリング受け穴45が切削加工によって開設される。
【0027】
ところで、従来のものや図3(c)に示されている比較例のように、クラッチインナ31のクラッチ室40のヨーク22側がボス部材の端面またはそれを覆うプレート51で閉じられているものにおいては、エッジ部(面取り部)がクラッチローラ43の外周面に干渉する状態になるため、クラッチローラ43に圧痕や偏摩耗等が発生し、ワンウエイクラッチ30の性能が低下する可能性がある。
【0028】
しかし、本実施形態においては、ボス部材24の端面とクラッチ室40との間に閉塞壁40aがあるので、図4(a)に詳しく示されているように、クラッチインナ31の先端面はクラッチアウタ33の本体34における閉塞壁40aの内周のうち閉塞壁40aの内側端面と雌印籠部36Aの底面との間に位置するように、磁石発電機20の回転子21とクラッチインナ31との関係を設定することができる。この構成により、クラッチインナ31の先端面のエッジ部がクラッチローラ43の外周に干渉するのを回避することができるため、クラッチローラ43おける圧痕や偏摩耗の発生を防止することができ、ワンウエイクラッチ30の性能が低下するのを防止することができる。
【0029】
なお、クラッチインナ31の先端面のエッジ部がクラッチローラ43の外周に干渉するのを回避するために、クラッチインナ31を閉塞壁40aの内周に配置することは図4(a)と同様だが、図4(b)に示されているように、ボス部材24の雄印籠部36Bの内側に逃げ穴50を没設して逃げ穴50の内部にクラッチインナ31の先端を配置する構成が考えられる。ただし、この構成によれば、ボス部材24に逃げ穴50を没設する必要があるため、ボス部材24ひいては磁石発電機の回転子の製造コストが図4(a)の場合に比べて増加する。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0031】
例えば、クラッチアウタは冷間鍛造によって一体成形するに限らず、熱間鍛造や鋳造、さらには、樹脂成形等によって一体に成形してもよい。
【0032】
クラッチ部材はクラッチローラに限らず、クラッチボール等であってもよいし、クラッチスプリングの取付構造等も前記実施形態に限られない。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ワンウエイクラッチの性能を高めつつ、磁石発電機の回転子の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である磁石発電機の回転子を示しており、(a)は一部切断側面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図2】磁石発電機のスタータモータとの組立状態を示す正面断面図である。
【図3】その作用を説明するための説明図であり、(a)は冷間鍛造後のクラッチアウタを示す断面図、(b)は切削加工後のクラッチアウタを示す断面図、(c)は主要部の取付関係を示す一部切断正面図である。
【図4】同じく作用を説明するための説明図であり、(a)はクラッチインナ先端が閉塞壁内側端面と雌印籠部底面との間に位置する場合の断面図、(b)は雄印籠部に逃げ穴を没設した場合を示す断面図である。
【符号の説明】
10…エンジン、11…側壁、12…クランクシャフト、13…エンジンカバー、14…密閉室、15…スタータモータ、16…出力軸、17…駆動側スプロケット、18…被動側スプロケット、19…チェーン、20…磁石発電機、21…回転子、22…ヨーク、23…マグネット、24…ボス部材、25…発電子、30…ワンウエイクラッチ、31…クラッチインナ、32…転がり軸受、33…クラッチアウタ、34…本体、35…クラッチインナ取付孔、36A…雌印籠部、36B…雄印籠部、37…位置決めピン、38…位置決め孔、39…ボルト、40…クラッチ室、40a…閉塞壁、41…小径部、42…大径部、43…クラッチローラ、44…貫通孔、45…スプリング受け穴、46…受け部、47…スプリング、48…スプリングキャップ、49…クラッチカバー、50…逃げ穴、51…プレート。
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁石発電機の回転子に関し、特に、ヨークとワンウエイクラッチのクラッチアウタとの結合構造の改良に係り、例えば、自動二輪車等のエンジンに連動される磁石発電機に利用して有効な回転子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、二輪自動車等のエンジンのうちスタータモータによって始動されるように構成されたエンジンにおいては、始動後にスタータモータをエンジンから切り離す必要があるため、エンジンのクランクシャフトとスタータモータとの間にワンウエイクラッチが介設されている。他方、二輪自動車等のエンジンのクランクシャフトには磁石発電機が直結される場合が多い。そこで、スタータモータとエンジンとの連結および解除を実行するワンウエイクラッチを磁石発電機に組み込む構造が広く採用されている。そして、エンジンのクランクシャフトに直結された磁石発電機にワンウエイクラッチを組み込む構造としては、クラッチアウタが磁石発電機の回転子のボス部材に同心円に固定され、クラッチアウタに嵌合したクラッチインナにスタータモータに連携したスプロケット軸が固定される構造がある。
【0003】
従来のこの種の磁石発電機の回転子としては、例えば、実開昭62−177929号公報に開示されているものがある。すなわち、このものにおいては、外周にフランジを有するボス部材の一部が碗形状のヨークの底壁に開設された開口に挿入されているとともに、ヨークの底壁にはクラッチインナとクラッチアウタとが内外に同心円に配設されたワンウエイクラッチのクラッチアウタが同軸に連結されている。クラッチアウタはクラッチインナを嵌合したクラッチインナ取付孔が開設された本体と、この本体におけるクラッチインナ取付孔の内周面に周方向に間隔を置かれて配され径方向外向きに楔形状に没設された複数のクラッチ室と、各クラッチ室に転動可能に収納されてクラッチインナとクラッチアウタの連結および解除を実行する複数のクラッチ部材としてのクラッチローラとを備えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記した磁石発電機の回転子においては、クラッチアウタのクラッチ室における軸方向の両端面がそれぞれ開口されているため、クラッチローラの摺動性を確保したりクラッチローラからの力を受けたりするプレートをクラッチローラとボス部材のフランジの端面との間に介設する必要があり、ワンウエイクラッチひいては磁石発電機の回転子の製造コストが増加するという問題点がある。プレートを省略してボス部材のフランジの端面によってクラッチローラを受ける場合には、ボス部材のフランジの端面を高精度に研削加工する必要があるため、磁石発電機の回転子の製造コストが増加してしまう。
【0005】
また、前記したワンウエイクラッチにおいては、クラッチインナが、その先端に対向するボス部材の端面との接触を避けるために、先端がクラッチアウタのクラッチ室の内周に位置することになって、クラッチインナの先端におけるエッジ部(面取り部)がクラッチローラの外周面に干渉するため、クラッチローラに圧痕や偏摩耗等が発生し、ワンウエイクラッチの性能が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、ワンウエイクラッチの性能を高めつつ、製造コストを低減することができる磁石発電機の回転子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁石発電機の回転子は、外周にフランジを有するボス部材の一部が碗形状のヨークの底壁に開設された開口に挿入されているとともに、前記ヨークの底壁にはクラッチインナとクラッチアウタとが内外に同心円に配設されたワンウエイクラッチの前記クラッチアウタが同軸に連結されており、前記クラッチアウタは前記クラッチインナを嵌合したクラッチインナ取付孔が開設された本体と、この本体における前記クラッチインナ取付孔の内周面に周方向に間隔を置かれて配され径方向外向きに楔形状に没設された複数のクラッチ室と、前記各クラッチ室に転動可能に収納されて前記クラッチインナと前記クラッチアウタの連結および解除を実行する複数のクラッチ部材とを備えている磁石発電機の回転子において、
前記各クラッチ室は軸方向の一方の端面が閉塞され他方の端面が開口された凹所に形成されているとともに、前記各クラッチ室は前記閉塞端面を構成する閉塞壁が前記ヨークの底壁側に配置されて一体的に没設されており、前記クラッチアウタの本体における前記ヨークの底壁側端面には雌印籠部が前記各クラッチ室の閉塞壁の一部を薄くするように没設されているとともに、この雌印籠部には前記フランジの雄印籠部が印籠結合されていることを特徴とする。
【0008】
前記クラッチインナの先端面は、前記クラッチアウタの本体における前記閉塞壁の内周のうち前記閉塞端面と前記雌印籠部の端面との間に配置されていることが望ましい。
【0009】
前記した手段によれば、クラッチアウタがクラッチ室を含めて一体成形されているため、クラッチアウタの製造コストが大幅に低減されることになる。しかも、一体に成形されたクラッチ室の閉塞壁の端面によってクラッチローラの端面が良好な摺動性をもって受けられるため、ワンウエイクラッチの性能が向上される。ここで、一体に成形するためにはクラッチ室の閉塞壁は所定値以上の厚さが必要になるが、雌印籠部はクラッチアウタの本体における閉塞壁のクラッチ室と反対側の端面に一体成形後に没設することができるため、一体成形に際しては、クラッチ室の閉塞壁は所定値以上の厚さを確保することができる。しかも、雌印籠部にボス部材のフランジにおける雄印籠部が印籠結合されるため、磁石発電機の回転子の全長が短縮されることになる。
【0010】
また、クラッチインナの先端面をクラッチアウタの本体における閉塞壁の内周のうち閉塞端面と雌印籠部の端面との間に配置することにより、クラッチインナの先端面のエッジ部がクラッチ部材の外周に干渉するのを回避することができるため、クラッチ部材における圧痕や偏摩耗の発生を防止することができる。ワンウエイクラッチの性能を高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態である磁石発電機の回転子を示しており、(a)は一部切断側面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。図2は磁石発電機のスタータモータとの組立状態を示す正面断面図である。図3以降はその作用を説明するための説明図である。
【0012】
本実施形態において、本発明に係る磁石発電機の回転子は、スタータモータ付きの二輪自動車におけるエンジンに直結される磁石発電機の回転子として構成されており、磁石発電機をスタータモータに連携させるワンウエイクラッチが一体的に組み込まれている。すなわち、ワンウエイクラッチ30は内外に同心円に配設されたクラッチインナ31とクラッチアウタ33とを備えており、クラッチインナ31がスタータモータ側に連動され、クラッチアウタ33側が磁石発電機側に直結されている。
【0013】
図2に示されているように、エンジン10の側壁11から外部に突出されたクランクシャフト12の突出端部には磁石発電機20の回転子21が直結されているとともに、クランクシャフト12の中間部にはワンウエイクラッチ30のクラッチインナ31が転がり軸受32を介して回転自在に支承されている。エンジン10の側壁11にはエンジンカバー13が固定されており、エンジンカバー13の内側には密閉室14が形成されている。スタータモータ15の出力軸16は密閉室14に挿入されており、出力軸16には駆動側スプロケット17が固定されている。駆動側スプロケット17はクラッチインナ31に固定された被動側スプロケット18にチェーン19によって連動されている。
【0014】
磁石発電機20の回転子21は底壁を有する短尺円筒形状に形成されたヨーク22を備えており、ヨーク22の内周面には界磁極を形成するマグネット23が複数個、周方向に間隔を置かれて固定されている。ヨーク22の底壁にはボス部材24が同心円に配されて固定されており、ボス部材24がエンジン10のクランクシャフト12にテーパ結合およびキー結合された上でナットによって締結されている。ヨーク22の内側には発電子25が配置されており、発電子25はエンジン10の側壁11に固定されたエンジンカバー13に支持されている。
【0015】
ワンウエイクラッチ30のクラッチアウタ33は短尺円筒形状(略ドーナツ形状)の本体34を備えており、クラッチアウタ33の本体34は後記するクラッチ室等を含めて一体成形法のうちの塑性加工の一例である冷間鍛造によって後述するように一体に成形された構造物である。本体34の円筒中空部によってクラッチインナ取付孔35が構成されており、クラッチインナ取付孔35にはクランクシャフト12に回転自在に支承されたクラッチインナ31が回転自在に嵌入されている。
【0016】
本体34のクラッチインナ取付孔35のヨーク側端部には、同心円に配されて一定深さの円形穴形状に形成された雌印籠部36Aが一体的に没設されている。雌印籠部36Aはクラッチアウタ33の本体34がクラッチ室を含めて冷間鍛造された後に切削加工によって後述するように穿設される。雌印籠部36Aはボス部材24におけるヨーク底壁外側端部の外周に形成された雄印籠部36Bに印籠結合されている。この印籠結合によって、クラッチアウタ33と回転子21との芯合わせが確保されている。本体34の周方向における任意の位置には位置決めピン37が軸方向に圧入されており、位置決めピン37がヨーク22の底壁に開設された位置決め孔38に嵌入されることにより、回転子21とクラッチアウタ33との周方向の位置決めが確保されている。本体34は磁石発電機20の回転子21のボス部材24に印籠結合された上で、ヨーク22の底壁に複数本のボルト39によって締結されている。
【0017】
クラッチインナ取付孔35の内周面における雌印籠部36Aと反対側の端部には、軸方向においてヨーク底壁側の端面が閉塞され反対側の端面が開口された凹所形状であって周方向において楔形状のクラッチ室40が3個、周方向に等間隔に配されて径方向外向きに没設されており、各クラッチ室40にはクラッチ部材としてのクラッチローラ43が周方向に転動可能にそれぞれ収納されている。クラッチ室40の周方向における楔形状はクラッチインナ取付孔35の中心からの距離が相異なる小径部41と大径部42とが一体となって形成されており、クラッチローラ43が小径部41に位置する状態においてクラッチインナ31との間で楔効果を発揮するようになっている。クラッチ室40は閉塞端面を構成する閉塞壁40aを含めて塑性加工の一例である冷間鍛造によって後述するように一体に没設された凹所である。
【0018】
本体34におけるクラッチ室40の小径部41に隣接した部位には貫通孔44が、本体34の外周面からクラッチ室40にクラッチインナ取付孔35の接線方向に貫通するように開設されている。本体34におけるクラッチ室40の大径部42に隣接した部位にはスプリング受け穴45が、貫通孔44の軸心の延長線上に形成されている。スプリング受け穴45は貫通孔44の延長線上に貫通孔44を貫通して穿設された盲穴によって構成されており、その穴底によってスプリング47の反力を受ける受け部46が構成されている。スプリング受け穴45にはスプリング47がクラッチ室40から挿入されており、スプリング47の反力端になる挿入端はスプリング受け穴45の穴底によって構成された受け部46によって受けられた状態になっている。スプリング47の付勢側端部には有底円筒形状に形成されたスプリングキャップ48が被せられており、スプリング47はスプリングキャップ48の閉塞端面壁を介してクラッチローラ43に常時押接した状態になっている。すなわち、スプリング47はスプリング受け穴45の穴底である受け部46、つまり、本体34に直接的に反力を取って、弾発力をクラッチローラ43に対してクラッチ室40の大径部42側から小径部41側に向けて常時付勢するようになっている。
【0019】
本体34の外側にはクラッチカバー49が外周からヨーク22と反対側の端面にかけてを全体的に被覆するように被せ付けられており、クラッチカバー49のヨーク22側の端部は本体34のヨーク22側の外周縁部に巻きかしめ加工されている。各クラッチ室40および各貫通孔44の本体34の外周面における開口はクラッチカバー49によっていずれも閉塞された状態になっている。したがって、各クラッチ室40に周方向に転動可能に収納されたクラッチローラ43の開口側端面は、クラッチカバー49の内側端面によって摺動自在に受けられた状態になっている。クラッチローラ43のクラッチカバー49と反対側の端面はクラッチ室40の閉塞壁40aにおける内側端面によって摺動自在に受けられた状態になっている。
【0020】
以上の構成に係る磁石発電機の回転子において、クラッチアウタ33における本体34、クラッチインナ取付孔35、各クラッチ室40およびクラッチ室40の閉塞壁40aは、冷間鍛造によって図3(a)に示されているように一体に成形される。すなわち、本体34の厚さや外径、クラッチインナ取付孔35の内径および各クラッチ室40の容積に見合う諸寸法および全体の体積を予め設定された短尺円筒体が、主に厚さ方向(軸方向)に段階的に冷間鍛造されて行くことより、クラッチ室40における小径部41および大径部42による楔形状と閉塞壁40aとが、本体34やクラッチインナ取付孔35と共に一体に成形される。
【0021】
クラッチ室40を含めてクラッチアウタ33の本体34を冷間鍛造によって一体成形することにより、クラッチアウタ33の製造コストを大幅に低減することができる。すなわち、クラッチ室40の楔形状を構成する小径部41および大径部42の側壁面は複雑な曲面(所謂カムプロフィール)に形成する必要がある。このため、従来からクラッチ室40はブローチ盤によるブローチ削り(broaching)によって形成されている。ブローチ削りは作業性が低い切削加工であるばかりでなく、ブローチ盤は大型大重量になるため、クラッチアウタの製造コストはきわめて大きくなる。これに対して、クラッチアウタ33の本体34をクラッチ室40を含めて冷間鍛造によって一体成形する場合には、金型を一度起こせばプレス装置によって高い精度で量産することができるため、クラッチアウタ33の製造コストは低く抑制することができる。
【0022】
また、クラッチ室40の冷間鍛造に際して、クラッチ室40の軸方向の一方の端面を閉塞する閉塞壁40aを同時に冷間鍛造によって形成することにより、クラッチ室40に収容されたクラッチローラ43の一端面を閉塞壁40aによって受けさせることができるため、クラッチローラ43の一端面を受ける専用のプレートを省略することができ、その分、クラッチアウタ33の製造コストをより一層抑制することができる。しかも、冷間鍛造によって鍛えられた閉塞壁40aの表面は硬質かつ滑らかになるため、閉塞壁40aによってクラッチローラ43を摺動性よく受けることができ、その結果、ワンウエイクラッチ30の性能を高めることができるという効果も得られる。
【0023】
ところで、クラッチ室40の閉塞壁40aを冷間鍛造によって形成する場合には、冷間鍛造に際して、閉塞壁40aに所定値以上の厚さを設定する必要があることが究明された。そこで、本実施形態においては、図3(a)に示されているように、冷間鍛造後のクラッチ室40の閉塞壁40aの厚さtは、冷間鍛造に必要な所定値(例えば、6.2mm以上)に設定されている。
【0024】
ところが、クラッチ室40の閉塞壁40aを冷間鍛造によって形成する場合、例えば、図3(c)に比較例として示されているように、クラッチ室40の反ヨーク側に閉塞壁40aを設けることが考えられるが、クラッチ室40の閉塞壁40aが厚いままの状態で、クラッチアウタ33が磁石発電機の回転子に組み込まれると、クラッチインナ31に固定された被動側スプロケット18にクラッチアウタ33が干渉してしまう。つまり、クラッチアウタ33の閉塞壁40aの外面と被動側スプロケット18との距離Lがきわめて狭小になるか「零」になってしまう。そこで、クラッチアウタ33の閉塞壁40aの外面を切削することにより、クラッチアウタ33の閉塞壁40aと被動側スプロケット18とが大きい距離Mをもって対向するように構成すると、閉塞壁40aの外面は大きな切削代Sをもって切削することが必要になる。したがって、クラッチアウタ33ひいては磁石発電機の回転子の製造コストが増加してしまう。しかも、クラッチローラ43のヨーク22側の端面を良好な摺動特性をもって受けるためのプレート51が必要になるため、より一層製造コストが増加してしまう。
【0025】
そこで、本実施形態においては、クラッチ室40のヨーク側に閉塞壁40aを配設し、クラッチ室40およびその閉塞壁40aを含めてクラッチアウタ33の本体34を冷間鍛造した後に、図3(b)に示されているように、クラッチアウタ33の本体34における閉塞壁40a側の端面壁に雌印籠部36Aをクラッチインナ取付孔35と同心円に切削加工によって没設することにより、クラッチアウタ33の被動側スプロケット18への干渉が回避されている。すなわち、磁石発電機20の回転子21において、クラッチアウタ33の雌印籠部36Aにボス部材24の雄印籠部36Bが印籠結合されることより、クラッチアウタ33はヨーク22側に寄るため、クラッチアウタ33の被動側スプロケット18への干渉を回避することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態においては干渉を回避するための逃げ部が雌印籠部36Aとして構成されるため、干渉を回避する逃げ部を形成するために、工程が増加することはない。したがって、クラッチアウタ33の製造コストの増加は回避することができる。ちなみに、冷間鍛造後のクラッチアウタ33の本体34には位置決めピン37のための取付穴、ボルト39のための締結孔、貫通孔44およびスプリング受け穴45が切削加工によって開設される。
【0027】
ところで、従来のものや図3(c)に示されている比較例のように、クラッチインナ31のクラッチ室40のヨーク22側がボス部材の端面またはそれを覆うプレート51で閉じられているものにおいては、エッジ部(面取り部)がクラッチローラ43の外周面に干渉する状態になるため、クラッチローラ43に圧痕や偏摩耗等が発生し、ワンウエイクラッチ30の性能が低下する可能性がある。
【0028】
しかし、本実施形態においては、ボス部材24の端面とクラッチ室40との間に閉塞壁40aがあるので、図4(a)に詳しく示されているように、クラッチインナ31の先端面はクラッチアウタ33の本体34における閉塞壁40aの内周のうち閉塞壁40aの内側端面と雌印籠部36Aの底面との間に位置するように、磁石発電機20の回転子21とクラッチインナ31との関係を設定することができる。この構成により、クラッチインナ31の先端面のエッジ部がクラッチローラ43の外周に干渉するのを回避することができるため、クラッチローラ43おける圧痕や偏摩耗の発生を防止することができ、ワンウエイクラッチ30の性能が低下するのを防止することができる。
【0029】
なお、クラッチインナ31の先端面のエッジ部がクラッチローラ43の外周に干渉するのを回避するために、クラッチインナ31を閉塞壁40aの内周に配置することは図4(a)と同様だが、図4(b)に示されているように、ボス部材24の雄印籠部36Bの内側に逃げ穴50を没設して逃げ穴50の内部にクラッチインナ31の先端を配置する構成が考えられる。ただし、この構成によれば、ボス部材24に逃げ穴50を没設する必要があるため、ボス部材24ひいては磁石発電機の回転子の製造コストが図4(a)の場合に比べて増加する。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0031】
例えば、クラッチアウタは冷間鍛造によって一体成形するに限らず、熱間鍛造や鋳造、さらには、樹脂成形等によって一体に成形してもよい。
【0032】
クラッチ部材はクラッチローラに限らず、クラッチボール等であってもよいし、クラッチスプリングの取付構造等も前記実施形態に限られない。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ワンウエイクラッチの性能を高めつつ、磁石発電機の回転子の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である磁石発電機の回転子を示しており、(a)は一部切断側面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図2】磁石発電機のスタータモータとの組立状態を示す正面断面図である。
【図3】その作用を説明するための説明図であり、(a)は冷間鍛造後のクラッチアウタを示す断面図、(b)は切削加工後のクラッチアウタを示す断面図、(c)は主要部の取付関係を示す一部切断正面図である。
【図4】同じく作用を説明するための説明図であり、(a)はクラッチインナ先端が閉塞壁内側端面と雌印籠部底面との間に位置する場合の断面図、(b)は雄印籠部に逃げ穴を没設した場合を示す断面図である。
【符号の説明】
10…エンジン、11…側壁、12…クランクシャフト、13…エンジンカバー、14…密閉室、15…スタータモータ、16…出力軸、17…駆動側スプロケット、18…被動側スプロケット、19…チェーン、20…磁石発電機、21…回転子、22…ヨーク、23…マグネット、24…ボス部材、25…発電子、30…ワンウエイクラッチ、31…クラッチインナ、32…転がり軸受、33…クラッチアウタ、34…本体、35…クラッチインナ取付孔、36A…雌印籠部、36B…雄印籠部、37…位置決めピン、38…位置決め孔、39…ボルト、40…クラッチ室、40a…閉塞壁、41…小径部、42…大径部、43…クラッチローラ、44…貫通孔、45…スプリング受け穴、46…受け部、47…スプリング、48…スプリングキャップ、49…クラッチカバー、50…逃げ穴、51…プレート。
Claims (3)
- 外周にフランジを有するボス部材の一部が碗形状のヨークの底壁に開設された開口に挿入されているとともに、前記ヨークの底壁にはクラッチインナとクラッチアウタとが内外に同心円に配設されたワンウエイクラッチの前記クラッチアウタが同軸に連結されており、前記クラッチアウタは前記クラッチインナを嵌合したクラッチインナ取付孔が開設された本体と、この本体における前記クラッチインナ取付孔の内周面に周方向に間隔を置かれて配され径方向外向きに楔形状に没設された複数のクラッチ室と、前記各クラッチ室に転動可能に収納されて前記クラッチインナと前記クラッチアウタの連結および解除を実行する複数のクラッチ部材とを備えている磁石発電機の回転子において、
前記各クラッチ室は軸方向の一方の端面が閉塞され他方の端面が開口された凹所に形成されているとともに、前記各クラッチ室は前記閉塞端面を構成する閉塞壁が前記ヨークの底壁側に配置されて一体的に没設されており、前記クラッチアウタの本体における前記ヨークの底壁側端面には雌印籠部が前記各クラッチ室の閉塞壁の一部を薄くするように没設されているとともに、この雌印籠部には前記フランジの雄印籠部が印籠結合されていることを特徴とする磁石発電機の回転子。 - 前記クラッチインナが、前記クラッチアウタの本体における前記閉塞壁の内周に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁石発電機の回転子。
- 前記クラッチインナの先端面が、前記クラッチアウタの本体における前記閉塞壁の内周のうち前記閉塞端面と前記雌印籠部の端面との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の磁石発電機の回転子。
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