JP4530475B2 - 変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道トンネル、道路トンネル等の既設トンネルにおいて、覆工コンクリートの崩落・剥落を未然に防止し、万一コンクリートの崩落があった場合でも、トンネル内に剥落片が落下しないように保護し、更には地山の緩みあるいは塑性圧等の外力による変状に対して補強することを目的とした変断面アーチ部材を用いたトンネル覆工の補強構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道トンネルや道路トンネル等の覆工コンクリートの剥落事故が、最近多く見られ、通過中の列車に損傷を与える危険なケースも生じている。このため、全国規模で既設トンネルの調査・診断が精力的に行われ、原因究明が行われている。
【0003】
現在のところ、覆工コンクリートの剥落原因は、トンネル建設時のコンクリート打設に伴うコールドジョイント、コンクリートの中性化、アルカリ骨材反応等が取りざたされ、さらに他の原因として、地山の緩みや塑性圧等の外力の変化も考えられているが、本当の原因は分かっていない。
【0004】
従来の、老朽化したトンネルの補修・補強対策については「変状トンネル対策マニュアル」:平成10年2月(鉄道総合技術研究所)や、「トンネル補修・補強マニュアル」:平成2年10月(鉄道総合技術研究所)がある。
【0005】
これらのマニュアルでは、トンネルの変状原因に応じて十数種の対策工法が示され、適切なものを選定するようになされている。この対策工法のうち、覆工コンクリートの剥落の対策として適用できるのものとしては、(1)「当て板工法」と、(2)「鋼板接着工法」と、(3)「セントル補強工」とがある。
【0006】
前記(1)の「当て板工法」は、剥落部の覆工内面に鋼板当て板(帯鋼、型鋼)を張り付け、ロックボルトで覆工コンクリートにアンカーした後、裏込め材を注入するもので、局所的に補修する場合に適用される。
【0007】
前記(2)の「鋼板接着工法」は、比較的新しい工法であって、覆工面に4.5mm標準厚の鋼板をエポキシ樹脂系接着剤で張付け、覆工コンクリートにアンカーボルトで固定するものである。アンカーボルトは7本/m2程度に配置する。なお、鋼板の端部は隣接鋼板と掛け渡し重ねた継手鋼板を接着材とアンカーボルトで固定する。
【0008】
前記(3) の「セントル補強工」は、トンネル覆工内面の形状と同じ形状に曲げ加工した100〜150mmサイズのH型鋼板を覆工内面に沿って適当な間隔で配置し、覆工内面に適宜間隔毎にくさびで固定されるもので、当て板、金網等と併用する場合が多い。
【0009】
また、前記「鋼板接着工法」に類似する他の従来技術として、特公平3−648200「既設トンネルの内張設置方法および内張設置装置」で開示されている(4) 「鋼板内張工法」がある。
【0010】
この工法は、既設トンネル断面に対して僅かに小さい相似形の内張り材(鋼板、強化プラスチック)を分割製作し、前記分割した内張り材をトンネル中心側に引き寄せて縮径したものを特殊な台車に搭載して既設トンネル内に搬入し、所定の位置で内張り材を拡径してトンネル内壁に近付け、設置済みの内張り材に溶接接合し、最後にグラウト材を充填するものである。この内張り工法は、補修後のトンネル内空間を殆ど狭めない特徴を有し、主とし農工水、下水トンネル等の水路トンネル補修工法として多くの実績がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が対象とする鉄道トンネル、道路トンネル等の既設トンネル覆工コンクリート剥落に対する保護工法では、トンネル内の車両通過の安全性を確保するため保護部材等の設置(保護構造の厚み)は建築限界をはみ出すことが許されない。
【0012】
例えば、鉄道トンネルの単線電化区間の場合、スプリングライン周辺は比較的建築限界余裕があるものの、天井部の建築限界は殆ど無いのが現状であり、天井部付近の補強部材の肉薄化を追求することが求められている。
【0013】
また、鉄道トンネルでは1日の作業時間が深夜の運行休止時間帯(数時間)に限られ、さらに、給電ケーブルや信号ケーブル等の障害物が多い等の制約条件がある。また、道路トンネルでは、迂回路がない場合、交通規制しながら工事する必要があり、迅速施工が重要な課題となる。さらには、2車線道路において、片側交通規制(走行禁止)のみで道路交通を確保しながらの施工が求められている。
【0014】
さらに、工事期間および対策工事の完成後において、トンネル内で通行する列車等の風圧、振動に対して、保護構造の緩み等が生じないようにしなければならない。特に、トンネル上部から保護構造の部材等落下があってはならない。したがって、このような条件下で従来技術を適用しようとすると、以下のような問題がある。
【0015】
前記従来の、(1)「当て板工法」、(2)「鋼板接着工法」は、剥落部の覆工内面に鋼製当て板(帯板、型鋼)を張付けロックボルトで覆工コンクリートにアンカーするため、覆工コンクリートにロックボルト用の孔を穿孔する作業が伴い、迅速施工できない。また、劣化した覆工コンクリートではアンカー強度が確保できないため健全なコンクリート面まではつる必要があり、さらに、作業時間が長くなってしまう。
【0016】
またこの構造では、ロックボルトを使用しているため、ボルトの切断・アンカー抜けがあるとボルトが落下してトンネル内を通過中の列車、車両に損傷を与えることも考えられる。
【0017】
従来技術の(3)「セントル補強工」は、トンネル覆工内面に大型のH型鋼セントルを配置するためトンネル内の空間を狭めてしまい、建築限界を確保できない場合は採用できない。また、片側交通規制(走行禁止)のみで道路交通を確保しながらの施工を行おうとすると、半アーチ組立状態での自立が求められるが、アーチ頂部が比較的重いこともあって、支持方法にコスト、工期がかかるという課題があった。
【0018】
(4)「鋼板内張工法」は、覆工面に沿って薄鋼板を溶接接合に依って組立て設置するため、トンネル内部への張出しが少なく建築限界をクリアーできる。また、ボルト等の部材を使用していないため、工事完成後の部材落下等の心配もない。
【0019】
しかし、(4)「鋼板内張工法」では、分割した鋼板を現地にて周方向、長手方向に溶接接合するため、溶接接合時間が長く掛かり、供用トンネルにおいて1日数時間の作業時間しか得られない工事条件下では適用が難しい。
【0020】
また、分割した鋼板は変形性能に富み、縮径、拡径が比較的自在であるが、その反面、形状を固定しにくく、接合部を合わせにくいという欠点を有している。また、鋼板背面と覆工内面との隙間にグラウト充填する際、その充填圧の作用により、薄鋼板が変形したり、座屈したりし易いので、トンネル内空側からの仮設支保工を併設しなければならず、建設費の増大および作業時間が長くかかるという課題があった。
【0021】
また、片側交通規制のみで道路交通を確保しながらの施工を行おうとすると、半アーチ組立状態での自立が求められるが、アーチ部材の曲げ剛性が小さいため頂部が大きく撓んでしまい、支持方法にコスト、工期がかかるという課題があった。
【0022】
本発明は、前記(1)〜(4)の従来技術の有する諸問題を解消し、既設トンネルの覆工内面からの内面側への張出しを少なくして、建築限界を確保した保護構造体をセグメントの接合により構成したもので、各セグメントの接合は、トンネル上方から落下するような部材を使用せず、かつ迅速施工を可能とし、さらには道路トンネルにおいて、片側交通規制のみで道路交通を確保しながらの施工を容易に行える、既設覆工内面の補強構造を提供するものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明に係る変断面アーチ部材を用いたトンネル覆工の補強構造は、次のように構成する。
【0024】
第1の発明は、既設トンネルの覆工内面に沿って鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の補強面材を設置する既設トンネル覆工内面の補強構造において、前記補強面材は、トンネル周方向およびトンネル軸方向に分割製作され、前記補強面材の背面側最外縁が覆工内面形状とほぼ相似形で、トンネル内空側が非相似形の変断面アーチを構成する複数の変断面セグメントで構成され、前記セグメントは、覆工のスプリングライン周辺がトンネルの建築限界を侵さない範囲の厚さの部材で構成され、覆工の頂部周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板のみにより構成され、覆工内面のスプリングライン周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板とトンネル軸方向に垂直な面を持ち、当該曲面鋼板のトンネル背面側あるいはトンネル内空側に垂直に固着された変断面補強鋼板により構成されており、前記セグメントは、少なくとも周方向に隣接するセグメントと周方向端部に設けたセグメント継手で接合され、覆工内面に隙間を形成して組立て設置されており、前記セグメントは固定手段で既設トンネルのコンクリートに固定され、セグメント背面と覆工内面の隙間には、部分的あるいは全面にグラウト材が充填され、各セグメントが覆工内面に密着されている、ことを特徴とする。
【0025】
第2の発明は、既設トンネルの覆工内面に沿って鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の補強面材を設置する既設トンネル覆工内面の補強構造において、前記補強面材は、トンネル周方向およびトンネル軸方向に分割製作され、前記補強面材の背面側最外縁が覆工内面形状とほぼ相似形で、トンネル内空側が非相似形の変断面アーチを構成する複数の変断面セグメントで構成され、前記セグメントは、覆工のスプリングライン周辺がトンネルの建築限界を侵さない範囲の厚さの部材で構成され、覆工の頂部周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板のみにより構成され、覆工内面のスプリングライン周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板とトンネル軸方向に垂直な面を持ち、当該曲面鋼板のトンネル背面側あるいはトンネル内空側に垂直に固着された変断面補強鋼板に加えて、前記曲面鋼板と前記変断面補強鋼板とで囲まれる空間にコンクリートを充填して構成されており、前記セグメントは、少なくとも周方向に隣接するセグメントと周方向端部に設けたセグメント継手で接合され、覆工内面に隙間を形成して組立て設置されており、前記セグメントは固定手段で既設トンネルのコンクリートに固定され、セグメント背面と覆工内面の隙間には、部分的あるいは全面にグラウト材が充填され、各セグメントが覆工内面に密着されている、ことを特徴とする。
【0026】
第3の発明は、既設トンネルの覆工内面に沿って鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の補強面材を設置する既設トンネル覆工内面の補強構造において、前記補強面材は、トンネル周方向およびトンネル軸方向に分割製作され、前記補強面材の背面側最外縁が覆工内面形状とほぼ相似形で、トンネル内空側が非相似形の変断面アーチを構成する複数の変断面セグメントで構成され、前記セグメントは、覆工のスプリングライン周辺がトンネルの建築限界を侵さない範囲の厚さの部材で構成され、覆工の頂部周辺が前記スプリングライン周辺の厚さに対し相対的に薄い部材で構成され、当該セグメントは、覆工内面の頂部近傍に分割部の1つが位置するようにして、トンネル周方向に4分割以上偶数分割され、前記頂部周辺に位置する2つのセグメントは、曲面鋼板又は曲面鋼板と変断面補強鋼板からなる鋼構造であり、他の部位は、鉄筋コンクリート構造或いは合成構造であり、前記セグメントは、少なくとも周方向に隣接するセグメントと周方向端部に設けたセグメント継手で接合され、覆工内面に隙間を形成して組立て設置されており、前記セグメントは固定手段で既設トンネルのコンクリートに固定され、セグメント背面と覆工内面の隙間には、部分的あるいは全面にグラウト材が充填され、各セグメントが覆工内面に密着されている、ことを特徴とする。
【0027】
第4の発明は、第1、2または3の何れかの発明において、前記鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の変断面アーチを構成する変断面セグメント部材において、当該セグメントは少なくとも覆工内面の頂部近傍にセグメント継手を有し、当該セグメント継手は凹凸嵌合の略ヒンジ接合であることを特徴とする。
【0028】
第5の発明は、第1〜4の発明において、前記鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の変断面アーチを構成する変断面セグメント部材において、変断面セグメントの覆工内面の頂部近傍以外でのセグメント継手は、少なくともトンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、地山側で引張ボルトあるいは雌雄嵌合継手による引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達であることを特徴とする。
【0029】
第6の発明は、第1〜5の何れかの発明において、変断面セグメントのリング継手が曲面鋼板の長手両側辺に形成された凹凸嵌合であることを特徴とする。
【0030】
第7の発明は、第1〜6の何れかの発明において、前記変断面セグメントのうち最下部セグメントの下端部と受梁とが略剛接合、つまり、地山側で引張ボルトあるいは雌雄嵌合継手による引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達となるように支持され、前記受梁は、スプリングライン近傍に配置され、覆工コンクリートおよび地山に剛接合で固定された、上下方向に1段ないし複数段のロックボルトで固着されていることを特徴とする。
【0031】
第8の発明は、第7の発明において、前記受梁は、上段に配置のロックボルトと屈曲節点付き脚構造で覆工コンクリートおよび地山に剛接合で固着されていることを特徴とする。
【0032】
【作用】
第1発明〜第8発明の各構成要素に基づく作用の概要を説明する。
【0033】
第1、第2発明の作用として、次の(1)〜(11)の11点がある。
(1) 覆工内面の補強面材をセグメント化したことにより、当該セグメントの現場でのハンドリング、組立が容易であることから、急速施工が実現でき、前述のように片側交通規制して道路トンネルの覆工内面作業を行う場合など、時間制限下での作業に適している。
【0034】
(2) セグメントをボルトレス継手とすることで、さらに急速施工が可能になる。
(3) 少なくとも、覆工内面の天井部には、セグメント支持のためのアンカーボルトの使用を最小限に押えたので、ボルト落下の心配が少ない。
(4) セグメントのアーチ構造とグラウト充填による既設覆工への密着により、コンクリート剥落荷重、変状荷重に対する大きな耐力発現が可能となる。
【0035】
(5) 覆工内面の頂部周辺の建築限界余裕の狭さの問題に対しては、セグメントの薄肉化でクリアーできる。
(6) スプリングライン周辺の建築限界余裕が比較的大きい場合に、スプリングライン周辺の桁高を増大させ、変断面アーチとしたので、覆工頂部に作用するコンクリート剥落荷重、変状荷重等の天井部への鉛直荷重をスプリングライン周辺に導き、この部分を補強することで、結果として、セグメント天井部への鉛直荷重に対し大きな耐力発現できる。
【0036】
(7) グラウト充填圧に対し、比較的曲げモーメントの大きいアーチ端部の曲げ剛性が大きいので、補強構造体の変形が小さくなり、座屈強度も向上する。これにより、仮設支保工を不要ないし最小限にできる。
(8) 組立時セグメントを把持した際に、自重による変形が小さいので、組立が容易である。
(9) 変断面アーチを仮組した場合、覆工内面の頂部の自重が小さく、曲げモーメントの大きいアーチ端部の曲げ剛性が大きいので、概ね無支保でアーチ形状を保持できる。
【0037】
(10) セグメントを高強度を確保して薄肉化が容易である。
(11) セグメント主構造が、1枚の曲面鋼板と複数枚の変断面補強鋼板より、簡素に構成されているので、加工コストが低い。
【0038】
第3発明によると、覆工内面の頂部が薄肉軽量を追及した鋼構造セグメントで、アーチ下部が低コストで高い剛性が得られるRC(鉄筋コンクリート)構造あるいは、合成構造とし、全体構造を適材適所配置の混合構造としたので、本発明の変断面アーチの性能を最大限に発揮できる。
【0039】
第4発明によると、
(1) 覆工内面の頂部が、ヒンジとなるので、多少撓みは大きくなるが、セグメント背面へのグラウト充填により補強構造体と覆工コンクリートとは密着しているので、工学的に充分な耐荷力を確保している。
(2) セグメントは、凹凸嵌合により抜けることなく、半径方向のせん断伝達が確実で、安定してアーチ構造を維持できる。
(3) 凹凸部セグメントの軸方向挿入時のスライドガイドの役割を果たし、組立容易になる。
【0040】
第5発明によると、
(1) セグメント組立途中の構造安定が図られる。
(2) 補強構造体完成後、コンクリート剥落荷重や変状荷重等の偏圧に対し、比較的大きな曲げモーメントが作用する場合でも、セグメント接合部が強度上、剛性上の弱点とならずに、変断面アーチとしての耐力を確保できる。
(3) 低コストで、セグメント間の略剛接合が実現できる。
(4) セグメント間の接合を機械接合とすれば、より急速な組立が実現できる。
【0041】
第6発明によると、
(1) リング間の嵌合により、組立時のセグメントの安定性を確保でき、完成後の地山側からの各種荷重に対して、トンネル長手方向の一体構造により、3次元的な抵抗を発揮でき、より構造信頼性が高まる。
(2) リング間の止水性が向上する。
【0042】
第7、第8発明によると、
(1) アーチ状のセグメント下端を固定できるので、セグメント組立途中での構造安定性が得られ、また、完成後、補強構造体の受ける上部荷重を確実に支持できる。
(2) セグメント間の接合を機械接合とすれば、より急速な組立が実現できる。
【0043】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図を参照して詳細に説明する。
【0044】
図1〜図5は、実施形態1として、既設鉄道トンネルの覆工内面の保護構造の全体概要と、その部材である鋼構造タイプ第1例のセグメントを示す。図1、図2において、既設トンネル1の床版部2には枕木3を介して、鉄道レール4が設置され、その上を列車が走行する際の安全確保のため建築限界9が定められている。また、この既設トンネル1は、地山5の内面にコンクリート6を打設して覆工内面が構築されており、補強前は、コンクリート6がトンネル内に露呈している。
【0045】
本発明では、前記コンクリート6の内面に補強面材として、略半円状の変断面アーチ部材7aを設置することで、当該コンクリート6の崩落を防止するものであり、必要に応じて、地山の緩みや塑性圧等の外力に対し、当該コンクリート6を補強するものである。この変断面アーチ部材7aは、トンネル軸に垂直な面とトンネル軸に概ね平行な面で切断したトンネル周方向および、軸方向に分割製作された覆工内面形状とほぼ相似の半アーチ状セグメント7で構成される。
【0046】
図1では、2つの半アーチ状セグメント7が覆工頂部でセグメント継手10を介して接合されることで、床版部2を除き、天井部と両側を含み、トンネル内面の上半部に渡って略半円弧状(アーチ状)に設置されていて、半アーチ状セグメント7の両下端部は、スプリングライン14の近傍に位置している。
【0047】
この半アーチ状セグメント7は、図3に矢印で示すように、トンネル内で、未組立側から既組立側へ向けて、トンネル軸方向に移動させることで、覆工頂部でセグメント継手10を介して接合させながら、左右整列配置にセグメント間およびリング間が組み立てられ、かつ覆工内面に隙間を形成して組立て設置される(この隙間には後述のグラウト材を充填する)。
【0048】
図1において、トンネル周方向に対をなして配置される左右の半アーチ状セグメント7の接合面は、覆工頂部に位置し、かつこの接合面はトンネル軸方向に平行ではなく、図示のようにトンネル軸方向に対し所定の角度傾斜している(つまり、セグメント接合傾斜端縁13である)。これにより前述のように、後続の半アーチ状セグメント7をトンネル軸方向に移動して、先行のセグメンに接合するに際し、当該半アーチ状セグメント7を所定の押圧力でもって、未組立側から既組立側にトンネル軸方向に押圧することで、前記傾斜した接合面に自動的に押圧力が作用し、左右の半アーチ状セグメント7のトンネル軸方向の正確な位置決めが自動的になされ、それにより、セグメント間の整列配置による接合を容易かつ確実に行うことができる。
【0049】
図1において、左右の半アーチ状セグメント7によって、覆工内面にアーチ状(円弧状)に組立てられたセグメント(変断面アーチ部材7a)の両下端部(トンネル周方向の両端部)は、スプリングライン14近傍に配置され、所定の固定手段で既設トンネルの覆工コンクリート5に固定されたH形鋼、ボックス形鋼、溝形鋼などからなる梁材8で支持されている。
【0050】
梁材8は、図ではボックス形鋼で構成され、トンネル軸方向に伸長して設置されていて、トンネル軸方向に渡り、アーチ状(円弧状)に組立てられたセグメントの分布荷重を支えている。この梁材8は、覆工コンクリート6を貫通して、さらに地山5に深く(約3m前後)打設され、かつトンネル軸方向に所定間隔で配置される複数本のロックボルト12によってトンネル内壁に固着されている。
【0051】
図4(A)、(B)、図5(A)(B)には、半アーチ状セグメント7の詳細構造を示している。
【0052】
各図において、半アーチ状セグメント7は、防食処理された炭素鋼、ステンレス鋼あるいはアルミニュウム等の金属からなる覆工内面形状とほぼ相似形で、かつ半アーチ状に湾曲した曲面鋼板15と、この曲面鋼板15の背面側(地山側)に固着される後述の変断面補強鋼板17を主要素とする。
【0053】
曲面鋼板15は、所定板厚の鋼板を切断して構成されるもので、フラットに展開した状態において、長方形の一方の短辺を斜めに切断した形状であり、この辺が、トンネル周方向に隣接する半アーチ状セグメント7を接合するセグメント接合傾斜端縁13となる。この曲面鋼板15のセグメント接合傾斜端縁13に沿ってセグメント継手10が固着され、このセグメント継手10には、対向するセグメント間で互いに噛合う凹部10aと凸部10bが設けられている。
【0054】
前記のほか、曲面鋼板15の長手両側辺の端面で、トンネル軸方向に相対する面には互いに噛み合うことで、半アーチ状セグメント7のトンネル半径方向のズレを防いでリング間を連結するための凸状継手あるいは凹状継手が設けられることがあるが、これについては図示省略する。
【0055】
また、曲面鋼板15の背面側の長手両側辺には、変断面補強鋼板17が固着されている。この変断面補強鋼板17は、曲面鋼板15とトンネル軸方向に対して垂直な面を持ち、かつ、湾曲した曲面鋼板15の覆工の頂部周辺が比較的肉薄の部材で構成され、覆工のスプリングライン周辺がトンネルの建築限界を侵さない範囲で半径方向に比較的厚い部材で構成される。
【0056】
つまり、半アーチ状セグメント7にかかる覆工の頂部周辺の荷重が、セグメントの下端部に伝わり、この下端部、つまりスプリングライン周辺で前記荷重を受ける際、変断面補強鋼板17が、スプリングライン周辺でセグメント主構造部材として十分機能するよう、半径方向(トンネル地山側)に比較的高く突出した部材(拡幅寸法L)として設けられている。
【0057】
さらに詳しく説明すると、半アーチ状セグメント7でトンネル覆工内面を補強するに際し、当該セグメント7は、トンネルの建築限界を侵さないという条件が付けられているので、曲面鋼板15の板厚にも自ずから制約があり、それ故に、板厚が一定の制約のもと、例えば、板厚6〜30mm程度に構成された曲面鋼板15に対し、コンクリート剥落荷重、変状荷重等の天井部への鉛直荷重を受け、比較的大きな曲げモーメントが作用するので、この曲面鋼板15には、主桁部材による補強が必要になる。
【0058】
本発明者は、前記曲面鋼板15を主桁部材で補強する場合において、次の問題点があり、かつこれを所定の手段で解決すべきであるとの知見を得た。
【0059】
(1)曲面鋼板15を従来のセグメントと同じ主桁部材で補強する場合、覆工内面の頂部周辺は、列車の屋根にパンタグラフがある等のため余裕空間が殆どなく、また、スプリングライン周辺には、覆工のトンネルの建築限界を侵さない範囲で若干の余裕空間がある場合がある。
【0060】
(2)前述のようなトンネル内の条件下では、従来のセグメントと同様に、全長にわたり同じ高さの主桁部材を構成すると、次の問題が生じる。すなわち、桁高を覆工のスプリングライン周辺を基準として設計した場合、スプリングライン周辺では適応できても覆工の頂部周辺では、余裕空間が殆どないので、主桁部材を設けることができない。反対に、桁高を覆工の頂部周辺を基準として設計した場合、この部分には殆ど余裕空間がないので、曲面鋼板15に主桁部材を設けることが不可能である。
【0061】
(3)他方、本発明者のさらなる研究により、覆工内面に配置される曲面鋼板15のみで構成される一様なアーチ部材が、コンクリート剥落荷重、変状荷重等の天井部への鉛直荷重を受けたとき、周方向軸圧縮力はどの位置でも概ね同じであるが、周方向曲げモーメントは覆工のスプリングライン周辺が低く、覆工の頂部周辺に近づくにつれて大きくなることを確認した。
【0062】
(4)これに関し、さらに次のことを確認した。すなわち、天井部周辺の補強構造の曲げ剛性を小さくし、スプリングライン周辺の補強構造の曲げ剛性を大きくすることにより、覆工の頂部周辺で受ける大きな鉛直荷重をアーチ構造としてのみならず、スプリングライン周辺を固定端とする曲がり梁構造として、セグメント上部から下部に向けて伝達でき、それにより天井部周辺の曲げモーメントが低減し、スプリングライン周辺の天井部周辺の曲げモーメントが増大する。したがって、セグメント構造を工夫することにより、前記(2)の問題をクリアーする手段があり得ること。
【0063】
(5)そこで、さらに検討した結果、前述のスプリングライン周辺の若干の余裕空間を利用して、ここに建築限界を侵さない範囲で補強部材としての主桁部材を設けることが可能であり、このスプリングライン近辺を補強すれば、余裕空間が殆どない覆工の頂部周辺における曲面鋼板15の曲げ補強を省略しても、覆工の頂部周辺で受ける大きな鉛直荷重をセグメント上部からスプリングライン近辺の下部に向けて伝達できるので、実際上不具合は生じないとの知見を得た。さらには、必要に応じて天井部近傍のセグメントを必要最小限のロックボルトで地山に固定すれば、天井部周辺のセグメントの周方向曲げモーメントをさらに低減でき、大きな荷重にも抵抗できるとの知見を得た。
【0064】
本発明の半アーチ状セグメント7の曲面鋼板15の変断面補強鋼板17は、前記(1)〜(5)の検討結果に基づいてなされたものである。
【0065】
すなわち、本実施形態では、変断面補強鋼板17は曲面鋼板15の背面側(地山側)に設けられ、かつ、図示のように、スプリングライン14の周辺の始端(桁高最高部)18からセグメント継手10と接触する終端(桁高最低部)19にかけて概ね放物曲線を描いて徐々に半径方向に薄く(低く)設けられていて、側面が上向きに先細り形状で、あたかも湾曲した「角」のように設けられている。この場合、変断面補強鋼板17の最高部18およびセグメント継手10の高さは、鉄道トンネルの建築限界を侵さない範囲でトンネル地山側へ突出させて設ける。
【0066】
半アーチ状セグメント7を組立てるには、トンネル軸方向にスライドして差し込み嵌合することにより、トンネル周方向とトンネル軸方向に隣接するセグメントが接合される。その連結手段としては、セグメント間は、当該セグメント継手10の対向する相手側の凹部10aと凸部10bが互いに噛合うことによる、雌雄嵌合の接合で行われる。また、リング間は、セグメントのトンネル軸方向端縁の突合せ接合で行われる。
【0067】
また、セグメント継手10の接合面は、トンネル軸方向に平行ではなく、図示のようにトンネル軸方向に対し所定の角度傾斜している(セグメント接合傾斜端縁13で示す)が、これにより前述のように、半アーチ状セグメント7をトンネル軸方向に移動して、当該半アーチ状セグメント7を所定の押圧力でもって、未組立側から既組立側にトンネル軸方向に押圧することで、前記傾斜した接合面に自動的に押圧力が作用し、左右の半アーチ状セグメント7のトンネル軸方向の正確な位置決めが自動的になされる。そして、セグメント間とリング間の接合を同時に容易かつ、確実に行うことができる。
【0068】
リング間の連結手段としては、曲面鋼板15をトンネル軸方向にスライドすることによる、セグメント端面の単なる突合せ接合でもよいし、曲面鋼板15の長手両側辺の端面に凸状継手あるいは凹状継手を設けて、両者が嵌合し噛合うことにより、トンネル半径方向のズレを防いでトンネル周方向に隣接するセグメントが接合されるようにしてもよい(図示省略)。なお、構造上は、リング間の接合を省略してもよいが、リング間の接合をした方が、止水性、内面平滑性、構造信頼性に優れる。
【0069】
前述のようにして、変断面アーチ部材7aが組まれた後に、その背面側と既設トンネルのコンクリート6の覆工内面との隙間が形成され、各半アーチ状セグメント7の背面と既設の覆工コンクリート6との隙間には、部分的或いは全面に周方向に渡ってグラウト材20(図1に示す)が充填され、前記変断面アーチ部材7aが覆工内面に密着される。
【0070】
実施形態1に係る変断面アーチ部材7aによると、トンネル覆工内面の補強のために許容される許容空隙が、建築限界の外側の幅狭空間(最も厳しい箇所で30mm〜50mm)に限定されており、しかも、許容空隙の寸法が場所によって異なる状況において、曲面鋼板15の補強必要部位(つまり、セグメントが覆工頂部内面で受ける荷重が下方に伝達されて、最終的に受止めるスプリングライン14の周辺)のみを、その必要度に比例して補強でき、トンネル覆工内面の補強を円滑に行うことができる。
【0071】
また、実施形態1によると、変断面アーチ部材7aの荷重は、当該変断面アーチ部材7aの両下端が、トンネル1の地山5に深く貫入される長尺のロックボルト12でトンネル覆工内面のスプリングライン14の周辺に固定された梁材8で支持されていて、補強面材のトンネル軸方向の分布荷重を梁材8で受けてトンネル側に伝達できる。つまり、半アーチ状セグメント7の下端の背面側には、ベースプレート16が固着されていて、このベースプレート16がボックス形鋼の梁材8の上面に載置され、ベースプレート16のボルト孔16aと梁材8の上面を挿通する固定ボルト11にナットを締結することで、半アーチ状セグメント7の下端が梁材8に固着されている。
【0072】
したがって、従来のように、補強面材を覆工内面に固着するために、覆工頂部やその周辺のトンネル天井部では、補強面材を貫いて覆工コンクリート6にアンカーボルトを打設しないので、このアンカーボルトがトンネル天井部の覆工コンクリート6から脱落して、落下するような不具合がない。また、鉄道トンネルの場合、スプリングライン14より下の覆工コンクリート内面には、通信ケーブル等の様々な設備が配置されており、これらの設備を移設することなく、補強構造を構築できる。
【0073】
前記変断面アーチ7aの両下端部の支持手段として、トンネル1の地山5に深く貫入される前記長尺のロックボルト12による支持構造に代えて、または、ロックボルト12と併用して、図6に示すような支持脚による支持構造とすることができる。
【0074】
図6は、実施形態1の変形例として、この支持脚による変断面アーチ7aの支持構造を示す。同図の変断面アーチ部材7aでは、スプリングラインの近傍に位置して、両半アーチ状セグメント7の下端部を支え、トンネル軸方向に延び、ボックス形鋼からなる梁材8は、実施形態1の長尺のロックボルトの代わりに、主支持脚部材として、トンネル床版2から立上がる厚鋼板製の支持脚22の上端で支持されている。
【0075】
支持脚22は、多角形または円形など任意断面で、任意太さの鋼材で構成される。また、この支持脚22は、外側(覆工内面側)に屈曲することで上部からの荷重を覆工コンクリート6の内壁面に伝達する屈曲節点22aを一点又は複数点(図では、1点)有し、この屈曲節点22aは、覆工コンクリート内面に直接または、図示の中間支持部材28を介して接している。
【0076】
支持脚22の下端には、グラウト材29aを介して取付けプレート29が固着されていて、この取付けプレート29のボルト孔にトンネル床版2にインサートで固着した固定ボルト30を挿通し、固定ボルト30にナット部材にねじ込むことで、支持脚22の下端がトンネル床版2に固着されている。
【0077】
ボックス形鋼の梁材8を横に貫いて、アンカーボルト31が設けられ、このアンカーボルト31が、覆工コンクリート6を挿通し、地山5に貫入されている。このアンカーボルト31は、主として梁材8が、その配置位置で動かないように軽く固定する機能を有していればよく、変断面アーチ部材7aからの荷重を梁材8を介して受けるのは、専ら支持脚22である。したがって、アンカーボルト31には大きな強度が要求されず、短尺であって構わず、また、ボルトには覆工コンクリート6から剥落させるような、大きな剥離力が作用することがない。但し、覆工コンクリート6がかなり劣化している場合には、アンカーボルトに代わってロックボルトにより地山5にしっかり固定する必要がある。
【0078】
また、変断面アーチ部材7aの荷重を梁材8を介して支持する支持脚22は、荷重の一部を覆工コンクリート6の内壁面に直接または中間支持28を介して接する屈曲節点22aにより、当該覆工コンクリート6の内壁面に流すので、上部から大荷重がかかっても支持脚22は座屈することがない。
【0079】
図6、図7は実施形態1の変形例として、半アーチ状セグメント7と梁材8を結合する手段を示す。図6、7(A)、(B)では、セグメント下端に固着されたベースプレート16がボックス形鋼の梁材8の上面に載置されていて、両部材の板部を貫通して連結ボルト21が設けられ、ナットを締結することで、ベースプレート16が梁材8に固着されている。
【0080】
図7(C)、(D)と(E)、(F)は、半アーチ状セグメント7を梁材8に結合する手段の他の2例を示している。図7(C)、(D)の例では、セグメント下端に固着されたベースプレート16の板厚と、ボックス形鋼の梁材8の上面板に固着の支持板23の板厚を利用し、両板に断面略T字形の溝を穿ち、両溝のくびれ開口部を突き合せることで、断面略H型の係合溝21を形成し、この係合溝21にトンネル内空側から断面略H形の挿入金物24を挿入することでベースプレート16を梁材8に固着する例が示されている。
【0081】
図7(E)、(F)の例では、半アーチ状セグメント7を、トンネル軸方向少し移動することでセグメントを梁材8に固定できる。つまり、この例では梁材8の上面に、係合孔30を有する係合板33が一体に立上げて設けられている。一方、変断面補強鋼板17の下端部の側面に係合突起40が設けられている。
【0082】
したがって、半アーチ状セグメント7を梁材8に固着するに際し、係合突起40と係合孔30の中心を合わせ、両者が嵌合する方向に、セグメントをトンネル軸方向に移動させる。それにより係合突起40と係合孔30が嵌り合って、半アーチ状セグメント7を梁材8に容易、確実に固着できる。
【0083】
図1および、図6、図7に示す半アーチ状セグメント7と梁材8のいずれの固着手段にあっても、少なくとも、トンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、地山側で引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達であるので、半アーチ状セグメント7と梁材8は一体化されて、地山側からの応圧荷重に対し耐荷力を有し、梁材8による半アーチ状セグメント7下端部の支持は確実である。
【0084】
また、前記において、支持脚22と覆工コンクリート6の内面壁との間には、隙間をあけることが可能なので、スプリングライン14より下方の覆工コンクリート6の内面壁に沿う通信ケーブル等の鉄道設備を交わして、この支持脚22を構築できる。なお、支持脚22の材料として、鋼材に代えて、コンクリート支持脚とすることもできる(但し、図示省略)。
【0085】
次に、図8〜図33に順に示す実施形態2〜5は、いずれも道路トンネルの覆工内面の補強例を示す。以下順に説明する。
【0086】
まず、図8〜図13は、実施形態2として、鋼構造タイプの変断面アーチ部材7aの第2例を示し、実施形態1と共通要素には共通符号を付して重複説明を省略し、相違する点について説明する。
【0087】
実施形態2が実施形態1と相違する点は、
(1)実施形態2の変断面アーチ部材7aは、実施形態1のようにトンネル内面の上半分だけでなく、トンネル内面の全周に渡って設けられていること、したがって、変断面アーチ部材7a下端の床スラブ46への支持構造が実施形態1と異なること。
【0088】
(2)変断面補強鋼板17を具備する左右の半アーチ状セグメント7は、さらに2分割されて、側板7cと天板7dとから構成されていること。
【0089】
(3)半アーチ状セグメント7の覆工頂部のセグメント継手および、後に施工する片側の半アーチ状セグメント7における、側板7cと天板7dの傾斜接合端縁部でのセグメント継手構造が異なること、である。
【0090】
前記(1)〜(3)をまとめて説明する。まず、図8〜図13に示すように、半アーチ状セグメント7は、略中間部で2分割されて、その下半部となる側板7cと、上半部となる天板7dを連結して構成されている。この実施形態2の場合、変断面補強鋼板17は、側板7cの側に設けられていて、天板7dの側には設けられていない。また、側板7cと天板7dを連結する手段として、変断面補強鋼板17の上端部は、側板7cの上端縁から突出しており、この突出した変断面補強鋼板17の先端部の側面に係合突起41が設けてある。これに対応して、天板7dの背面側の下端部には、前記係合突起41が嵌合する係合孔42が開設された係合板42aが設けられている。
【0091】
したがって、側板7cと天板7dを連結するには、図9(A)に示すように、係合突起41と係合孔42の中心を合わせ、両者が嵌合する方向に、側板7cと天板7dをトンネル軸方向に移動させることにより、係合突起41と係合孔42が嵌り合って、当該側板7cと天板7dを連結して半アーチ状セグメント7が構成される。
【0092】
前記側板7cと天板7dの接合部分での係合突起41と係合孔42によるセグメント継手は、少なくともトンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、地山側で係合による周方向引張力伝達、内空側で面接触による周方向支圧力伝達であることに加え、側板7cの変断面補強鋼板17の上端部の突出部と、天板7dの曲面鋼板15の下端部との半径方向支圧伝達および係合による半径方向伝達力があるので、側板7cと天板7dは一体化されて、地山側からの応圧荷重に対し耐荷力を有し、半アーチ状セグメント7を2分割したことによる不具合が解消できている。
【0093】
このように、半アーチ状セグメント7を2分割したのは、前述のとおり、実施形態1と異なって、トンネル内面全周を補強するため、左右の各半アーチ状セグメント7の全長も、おのずから長寸となり、重量も重くなって、一体構造では工場から現場までの運搬、施工組立に困難を伴うためであり、セグメントを2分割することで、この問題を解決している。側板7cに固着の変断面補強鋼板17の下端部側面に係合突起40が設けられているが、これは半アーチ状セグメント7を基礎に固定するためである(詳細は後述する)。
【0094】
また、この実施形態2では、セグメント間および、リング間の連結手段として、曲面鋼板15の短辺両側および長手辺両側の端面に凸状継手26あるいは凹状継手27を設けてある。したがって、曲面鋼板15をトンネル周方向または、トンネル軸方向にスライドすることで、凸状継手26あるいは凹状継手27が嵌合し噛合うことにより、トンネル半径方向のズレを防いでトンネル周方向に隣接するセグメントが突合せ接合される。
【0095】
さらに、リング間の前記凸状継手26あるいは凹状継手27の連結手段に加えて、左右のセグメント間の離脱を阻止する係合連結手段として、図12、図13に示すように、相対する一方の天板7dの上端縁(トンネル周方向端縁)に鉤状の係合継手44が設けてあり、一方の天板7dの上端縁に、係合継手44の係合する係合突部45が設けられている。
【0096】
したがって、相対する半アーチ状セグメント7をトンネル軸方向に相対的にスライドすることで、係合継手44と係合突部45が係合し、セグメント7の周方向の離間が阻止される。実施形態2では、天板7dの上端縁は、トンネル軸方向に平行に形成されているので、半アーチ状セグメント7をトンネル軸方向に相対的に移動させるうえで不具合はない。
【0097】
また、図8(A)、図9(A)に示すように、実施形態2においては、後に施工する片側の半アーチ状セグメント7における側板7cと天板7dの接合部は、トンネル軸方向に対し所定の角度傾斜したセグメント接合傾斜端縁10aを介して接合されている。
【0098】
したがって、実施形態2では、後に施工する半アーチ状セグメントをトンネル軸方向に挿入し位置決めしてアーチ閉合するとき、未組立側から既組立側にトンネル軸方向に押圧することで、前記傾斜した接合面に自動的に押圧力が作用し、左右の半アーチ状セグメント7のトンネル軸方向の正確な位置決めが自動的になされ、それにより、セグメント間の整列配置による接合を容易かつ確実に行うことができる。その後、半アーチ状セグメントの背面側をグラウト充填で覆工コンクリートに密着させる。
【0099】
また、図8(B)、図10(C)、(D)に示すように、トンネル内全周を補強する半アーチ状セグメント7の下端は、コンクリートの床スラブ46にグラウト層47を介して載置され、ロックボルト48によってその床スラブ46および地山5に固着される。さらに具体的には、床スラブ46に植設したロックボルト48を、グラウト層47の上面に載置する定着板25のボルト孔から突出させ、ロックボルト48にナット70を締結することで、当該定着板25が床スラブ46に固着される。定着板25には、係合孔30を有する係合板33が地山寄りに一体に立上げて設けられている。なお、コンクリート床スラブ46の強度が充分にある場合には、ロックボルト48に代わって、アンカーボルトにより、定着板25と床スラブ46を固着させればよい。
【0100】
一方、変断面補強鋼板17の下端部の側面に係合突起40が設けられている。したがって、側板7c(つまり、半アーチ状セグメント7)を床スラブ46に固着するには、係合突起40と係合孔30の中心を合わせ、両者が嵌合する方向に、側板7cをトンネル軸方向に移動させる。それにより係合突起40と係合孔30が嵌り合って、地山側で係合による周方向引張力伝達および内空側で面接触による周方向支圧力伝達により、半アーチ状セグメント7を床スラブ46に容易、確実に固着できる。
【0101】
この実施形態2以下は、道路トンネルの覆工内面の補強を行うものであるから、迅速施工が要求されることは勿論であるが、これに加え、片側交通規制のみで道路交通を確保しながら施工するという要求があり、各実施形態はこの要求に応え得るように構成されている。
【0102】
つまり、実施形態2の半アーチ状セグメント7を、片側交通規制のみで道路交通を確保しながら、トンネル内に組立てる施工手順は、図14、図15に示されている。図14(A)は2車線道路の左側を通行止めし、この左道路側の覆工内面の下半部を半アーチ状セグメント7の側板7cで補強した第1組立工程を示す。図14(B)は側板7cに天板7dを連結して、半アーチ状セグメント7を組立てた第2組立工程を示す。第2組立工程の後、次に反対側(図で右側)の半アーチ状セグメント7を施工する第3、第4組立工程までの間に、通常、数日乃至数ヶ月の時間があり、それまでは、左側の既組立の半アーチ状セグメント7は片持ち状態となる。
【0103】
このため、前に施工した天板7dには、ボルト挿通孔50が開設されていて(図14、図15)、この天板7dをトンネル内面に施工したとき、図14(B)に示すように、そのボルト挿通孔50にアンカーボルト51を覆工コンクリート6に打設する(51aは覆工コンクリート6に開設の打設孔である)ことにより半アーチ状セグメント7は、トンネル内面の半周を補強した状態で、反対側(図で右側)の半アーチ状セグメント7を施工するまでの間安定に保持される。このアンカーボルト51は埋殺しとする。なお、覆工コンクリート6の劣化が著しいか、あるいは、さらに大きな荷重を支持しなければならない場合には、アンカーボルト51に代わって、ロックボルトを用い、覆工コンクリート6を貫通して、地山5に深く打設する必要がある。
【0104】
左側道路の補強が終わった後、この左側道路を通行可とし、次に、図15(A)に示すように右側道路を通行止めし、図14(A)、(B)の第1、第2組立工程と同じ、第3、第4組立工程を経て、図15(B)に示すようにトンネル内全周の補強が完成する。このとき、覆工内面の頂部においては、左右のセグメントは凸状継手26と凹状継手27がしっかりと噛合っていることで覆工内面に固着でき、とくにセグメント固定用のアンカーボルトは必要としない。
【0105】
図16〜図22は、実施形態3として、鋼構造タイプの変断面アーチ部材7aの第3例を示し、実施形態2と共通要素には共通符号を付して重複説明を省略し、相違する点について説明する。
【0106】
実施形態3が実施形態2と相違する点は、
(1)変断面補強鋼板17は、曲面鋼板15のトンネル内空側に設けられていること。
(2)変断面アーチ部材7aの下端部の床スラブ46への支持構造が実施形態2と異なること。
(3)2分割された半アーチ状セグメント7の側板7cと天板7dとの連結構造がボルトによる引張接合であること。
(4)リング継手(トンネル軸方向のセグメント間)の構造が、実施形態2と異なり非離脱形の継手構造であること、の4点である。
【0107】
前記(1)〜(4)をまとめて説明する。まず、図19、図20に示すように、略中間部で2分割された半アーチ状セグメント7の側板7cと天板7dのそれぞれの曲面鋼板15の内空側には連結時に、突出端縁の高さが連続して変化するように変断面補強鋼板17が固着されている。また、側板7cと天板7dの接合側の端縁には、内空側に突出してボルト挿通孔52を有する接合プレート55、55が固着されていて、施工時、図18(A)に示すように両接合プレート55、55を当接し、ボルト挿通孔52に固定ボルト59を挿入した上、ナットを締結することで、側板7cと天板7dが強固に引張結合されて半アーチ状セグメント7が組立てられる。
【0108】
実施形態3においても、側板7cと天板7dの接合部分での固定ボルト59によるセグメント継手は、少なくともトンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、地山側で固定ボルト59による引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達であるので、側板7cと天板7dは一体化されて、地山側からの応圧荷重に対し耐荷力を有し、半アーチ状セグメント7を2分割したことによる不具合が解消できている。
【0109】
トンネル軸方向の半アーチ状セグメント7の間の結合は、側板7cと天板7dのそれぞれの曲面鋼板15の背面側で、かつ、トンネル軸方向の端縁部に設けられた雄側突起78と雌側係合部60が係合することで、非離間的にリング間がワンッタッチ結合できるよう構成されている。
【0110】
雌側係合部60は、図22に示すように保持ケース61内に収められていて、ばね62で先端が互いに近づく方向に付勢された一対の係合爪82からなり、この係合爪82は、図示のように雄側突起78の挿入側に「八」字状の挿入ガイド用テーパー部を有している。
【0111】
したがって、セグメントの組立施工時、未組立の側板7cおよび天板7dを既組立の側板7cおよび天板7dに向けて、トンネル軸方向に移動させるだけで、雄側突起78が雌側係合部60の一対の係合爪82を押し開きながら進入し、非離脱的に係合する。それにより、既組立と未組立の各側板7cおよび天板7d、つまり、リング間をトンネル軸方向に非離間的に強固に組立てることができる。
【0112】
実施形態3でも半アーチ状セグメント7は、トンネル内全周を補強し、両下端がコンクリートの床スラブ46にグラウト層47を介して載置され、スラブアンカー48によってその床スラブ46に固着されるが、その固着手段が、実施形態2と若干相異している。すなわち、実施形態3では、セグメントの側板7cの下端の内空側にボルト孔64を有するベースプレート16が固着されていて、ベースプレート16を定着板25に載置し、それぞれのボルト孔から床スラブ46および地山5に植設したロックボルト48を突出させ、ロックボルト48にナット70を締結することで、当該ベースプレート16と定着板25がグラウト層47を介して床スラブ46に固着され、半アーチ状セグメント7を床スラブ46に容易、確実に固着できる。
【0113】
図23〜図27は、実施形態4として、合成構造(鋼と鉄筋コンクリート)タイプの変断面アーチ部材7aを示し、実施形態2、3と共通の要素には共通符号を付して重複説明を省略し、相違する点について説明する。
【0114】
実施形態4が実施形態2、3と相違する点は、
(1)略中間部で2分割された半アーチ状セグメント7が合成構造であり、側板7cと天板7dのそれぞれの曲面鋼板15の背面側(地山側)に平行に設けられた変断面補強鋼板17で挟まれる空間を埋めるように、当該変断面補強鋼板17と同じ高さに鉄筋35入りのコンクリート36が充填されていること。
(2)2分割された半アーチ状セグメント7の側板7cと天板7dとの連結構造が略「H」形状の継手部挿入金物37による嵌合継手構造であること(図25に示す)、
の点である。
(3)変断面アーチ部材7aの下端部の床スラブ46への支持構造が実施形態2と若干異なること。
【0115】
前記(1)〜(3)をまとめて説明する。まず、実施形態4では、(鋼とコンクリートの)合成構造タイプの半アーチ状セグメント7であるので、簡潔な構造で強度が向上する。
【0116】
さらに、実施形態4では、半アーチ状セグメント7の側板7cと天板7dの連結手段として継手部挿入金物37が用いられている。すなわち、相対する側板7cと天板7dの接合部の端縁には、覆工コンクリート6寄りに蟻溝状の係合溝34を有する厚板セグメント継手33が設けられており、側板7cと天板7dの接合部を突き合わせるとき、蟻溝状の係合溝34が、その幅狭開口部で接続することで、中間がくびれた略「H」形状の係合孔が形成される。この係合孔に、長尺の中間がくびれた略「H」形状の継手部挿入金物37を嵌合することにより、側板7cと天板7dが強固に結合されて、半アーチ状セグメント7が組み立てられる。
【0117】
実施形態4においても、略「H」形状の係合孔と、これに挿入する略「H」形状の継手部挿入金物37によるセグメント継手は、少なくともトンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、地山側で係合金物による引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達であるので、側板7cと天板7dは一体化されて、地山側からの応圧荷重に対し耐荷力を有し、半アーチ状セグメント7を2分割したことによる不具合が解消されている。
【0118】
また、対向する半アーチ状セグメント7の上端の間は、円弧凸状継手26aと円弧凹状継手27aとの嵌り合いにより、この嵌り合い部を中心に左右の半アーチ状セグメント7が若干の範囲回動できる。したがって、この円弧凹凸状の継手26a、27aの係合部をトンネル軸方向にスライドさせて、セグメントをトンネル軸方向に移動して組立できると共に、円弧凹凸状の係合部を中心として、左右の半アーチ状セグメント7を回動させ、覆工内面に対応して配置角度を調整できる(図24A、Bに示す)。
【0119】
変断面アーチ部材7aの下端部の床スラブ46への支持構造は、実施形態1と略同様であり、定着板25に覆工コンクリート6寄りに設けた係合板33の係合孔30に、側板7cの変断面補強鋼板17に突設した係合突起40を係合して行うが、実施形態4では、係合板33がロックボルト12を介して強固に地山5に固定されている。つまり、図24Cに示すように、係合板33と直角で定着板25と一体に固定板65が設けられていて、この固定板65のボルト孔に挿通したロックボルト12は、覆工コンクリート6層を貫通し、さらに地山5に深く進入することによって定着板25の固定が確実となり、この定着板25に固定される変断面アーチ7aの固定強度も向上する。図24(C)、(D)において、係合突起40が係合する係合板33の周辺には、コンクリート36が充填されない空間部66が形成されている。
【0120】
図29〜図33は、実施形態5として、RC(鉄筋コンクリート)構造タイプの変断面アーチ部材7aを示し、実施形態1〜4と共通する点があるので、共通の要素には共通符号を付して重複説明を省略し、相違する点について説明する。
【0121】
実施形態5が実施形態2〜4と相違するのは次の点である。
(1)実施形態5の変断面アーチ部材7aでは、鉄筋入りコンクリート38をスプリングライン14近傍では厚肉とすることで、主桁部材を構成し、覆工頂部に行くにつれて徐々に薄肉としている。
(2)より具体的には、略中間部で2分割された半アーチ状セグメント7の下半部を構成する側板7cは、内空側にエキスパンドメタル43が埋設された鉄筋コンクリート38で構成され、下部から上部に行くにしたがって湾曲し、かつ徐々に薄肉に構成されており、下端にはボルト挿通孔64を有するベースプレート16が固着されており、上端には、係合孔68を有する上部端板67が固着されている。
(3)半アーチ状セグメント7の上半部を構成する天板7dは、曲面鋼板15に、その背面側(地山側)の下端から中間部よりやや下の位置まで、高さが徐々に低くなって延びている変断面補強鋼板15を固着して構成されている。変断面補強鋼板15の下端は曲面鋼板15の下端縁から突出していて、この突出部の側面に側板7cと天板7dを連結する手段として、前記係合孔68に係合する係合突起41が設けられている。
(4)側板7cの床スラブ46および、覆工コンクリート6および地山5への支持構造が実施形態2〜4と若干異なること。
【0122】
したがって、実施形態5において、側板7cと天板7dを連結するには、係合突起41と係合孔42の中心を合わせ、両者が嵌合する方向に、側板7cと天板7dをトンネル軸方向に移動させることにより、係合突起41と係合孔68が嵌り合って、当該側板7cと天板7dを連結してRCタイプおよび、鋼構造タイプの混合構造の半アーチ状セグメント7が構成される。
【0123】
実施形態5においても、係合突起40と係合孔68が嵌り合うことによるセグメント継手は、少なくともトンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、地山側で係合による引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達であるので、側板7cと天板7dは一体化されて、地山側からの応圧荷重に対し耐荷力を有し、半アーチ状セグメント7を2分割したことによる不具合が解消されている。
【0124】
また、セグメント下端においては、ベースプレート16が定着板25に載置され、両板を挿通し床スラブ46に貫入されたアンカーボルト48aにナットを締結することで、半アーチ状セグメント7が床スラブ46に設置される。さらに、側板7cの周方向中間部に、概ね半径方向に伸びて、側板7cおよび覆工コンクリート6を貫通し、地山5に深く定着したロックボルトが打設され、側板7cとナット締結される。この固定構造にあっても、トンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、側板7cの側面でロックボルトによる半径方向引張力伝達、ベースプレート16の内空側で面接触による周方向支圧力伝達であるので、半アーチ状セグメント7の下部は床スラブ46および覆工コンクリート6および地山5に強固に固定されて、地山側からの押圧荷重に対し耐荷力を有した構造にできる。
【0125】
図34(A)〜(L)は、半アーチ状セグメント7の断面形状の変形例を12例示す図である。各例に付き、共通点毎に分けて説明する。(A)〜(H)は、鋼構造セグメント、(I)〜(K)は、合成構造セグメント、(L)はRCセグメント構造の各例を示す。(A)〜(D)では、曲面鋼板15にトンネル内空側に向けて変断面補強鋼板17が設けられているのに対し、(E)〜(H)では、曲面鋼板15にトンネル地山側に向けて変断面補強鋼板17が設けられている。
【0126】
図34(B)、(F)には、曲面鋼板15の両側縁にトンネル内空側とトンネル地山側に向けて設けられた変断面補強鋼板17の中間に、これと同方向に向けて中間部変断面補強鋼板17aが設けられている。
【0127】
図34(C)には、曲面鋼板15の両側縁に設けられる変断面補強鋼板17が、トンネル内空側に向けて、より多く突出し、トンネル地山側に向けて、より少なく突出して設けられた例が示されている。
【0128】
図34(G)には、曲面鋼板15の両側縁から少しく中間寄りの位置で、かつ、トンネル地山側に向けて、変断面補強鋼板17が設けられた例が示されている。
【0129】
図34(D)、(H)には、それぞれ曲面鋼板15の両側縁にトンネル内空側とトンネル地山側に向けて設けられた変断面補強鋼板17の先端に、対向してリブ53が設けられた例が示されている。
【0130】
図34(I)には、同図(E)に示す鋼製の半アーチ状セグメント7の内部空間にコンクリート35を充填した、合成構造の半アーチ状セグメント7の例を示す。
【0131】
図34(J)には、同図(I)に示す合成構造の半アーチ状セグメント7の半アーチ状セグメント7の内部空間に充填したコンクリート36をたて筋、とよこ筋の鉄筋35で補強した合成構造の半アーチ状セグメント7の例を示す。
【0132】
図34(K)には、同図(G)に示す鋼製の半アーチ状セグメント7の内部空間にコンクリート35を充填した、合成構造の半アーチ状セグメント7の例を示す。
【0133】
図34(L)には、たて筋と、よこ筋の鉄筋35で補強したコンクリート36からなるRC構造の半アーチ状セグメント7であって、内空側の面にエキスパンドメタル43を装着して更に補強された半アーチ状セグメント7の例が示されている。
【0134】
次に、図35(A)〜(C)は、左右の半アーチ状セグメント7のセグメント間又は、リング間における継手部の止水構造を示す。既述の要素と同一要素には、同一符号を付して説明する。
【0135】
図35(A)では、左右の半アーチ状セグメント7のセグメント間突合せ端面(セグメント接合端縁)に、トンネル内空側に突出してセグメント継手10が溶接され、このセグメント継手10にボルト孔71が開設され、このボルト孔71に、連結ボルト72を挿入し、ナットで締結した引張り結合の例を示す。また、この例において、セグメント継手10のセグメント間突合せ面に形成した凹部73に水膨潤ゴム等の止水材54が充填されていて、地山側からの湧水がトンネル内空側に漏出しない構成とされている。
【0136】
図35(B)では、左右の半アーチ状セグメント7のセグメント間突合せ端面のトンネル内空側または地山側(図では、地山側として説明する)に、先細り状の係合突部74aを有する雄側セグメント継手74と、前記係合突部74aが係合する凹溝75aを有し、溝底に止水材54が充填された雌側セグメント継手75が溶接されている。したがって、この例では、左右の半アーチ状セグメント7突合せ端面を付き合わせることで、雄側セグメント継手74と雌側セグメント継手75が嵌り合い、トンネル周方向に隣合う両セグメントのトンネル内外方向の位置決めが確実になされ、かつ、容易、確実、かつ強固に結合される。さらに、係合突部74aの先端が止水材54と圧接することにより、地山側からの湧水がトンネル内空側に漏出しない構成とされている。
【0137】
図35(C)は、半アーチ状セグメント7のリング間(つまり、トンネル軸方向間)の接合手段として、曲面鋼板15の突合せ面に、互いに嵌り合う凹状部76と突起77が設けられていると共に、前記凹状部76に止水材54が充填されていて、地山側からの湧水がトンネル内空側に漏出しない構成の例が示されている。
【0138】
以上、各実施形態について説明したが、本発明はこれ以外にも、図示例の構成を適宜、設計変更して実施することは可能である。
【0139】
【発明の効果】
本発明によると、次の効果がある。
(1) アーチ構造とグラウト充填による既設覆工への密着により、コンクリート剥落荷重、変状荷重に対する大きな耐力発現できる。
(2) 覆工内面の頂部周辺の建築限界余裕の狭さに対して薄肉化でクリアーする。
(3) スプリングライン周辺の建築限界余裕が比較的大きい箇所の桁高を増大させ、変断面アーチとしたので、覆工内面の頂部周辺のコンクリート剥落荷重、変状荷重をスプリングライン周辺の増大した桁高部分で受けることで、大きな耐力発現できる。
(4) グラウト充填圧に対し、補強構造体の変形が小さくなり、屈曲強度も向上するので、仮設支保工を不要か、最小限にできる。
(5) さらに、変断面形状のセグメントにより、当該セグメント組立時の変形が小さく、組立てが容易である。
【0140】
また、本発明によると、変断面アーチ部材を用いることで、トンネル覆工内面の補強のために許容される許容空隙が、建築限界の外側の幅狭空間(最も厳しい箇所で30〜50mm)に限定されており、しかも、許容空隙の寸法が場所によって異なる現状において、曲面鋼板の補強必要部位(覆工頂部)を転移させ、スプリングライン周辺を、その必要度に比例して補強することで、トンネル覆工内面の補強を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1〜図5は、実施形態1を示し、図1(A)、(B)は、本発明で補強した既設トンネル覆工内面の全体の平面図と概要横断面図である。
【図2】 (A)は、図1(B)の変断面アーチ部材の側断面図、(B)、(C)は、図1(B)の(イ)部と(ロ)部の詳細図である。
【図3】 (A)、(B)は、図1の半アーチ状セグメントを組立てている途中の既設トンネル覆工内面の全体の平面図と概要横断面図である。
【図4】 (A)は、図1の半アーチ状セグメントの横断面図、(B)は、同図(A)のセグメントの側面図である。
【図5】 (A)は、図3(A)の半アーチ状セグメントの平面図、(B)は、同図(A)のセグメント断面図である。
【図6】 実施形態1の変形例を示し、(A)は、変断面アーチセグメントの荷重を梁材を介して支持する支持脚の縦断面図、(B)は、同(A)の左側面図である。
【図7】 図6に対応して図示し、(A)、(C)、(E)は、変断面アーチセグメントの荷重を梁材を介して支持する支持構造の3例を示す断面図、(B)、(D)、(F)は、それぞれ、(A)、(C)(E)の左側面図である。
【図8】 図8〜図13は実施形態2として、鋼構造タイプで側板と天板からなる第2例の変断面アーチ状セグメントを示し、図8(A)、(B)は、変断面アーチ部材の組立時の平面図と既設トンネル覆工内面の全体の概要横断面図である。
【図9】 (A)は後半に組立てる片側の変断面アーチ部材の組立途中の平面図、(B)は、図8(B)の変断面アーチ部材の組立時の側断面図である。
【図10】 (A)、(C)、(E)は、図8(B)の(ハ)、(ニ)、(ホ)部の詳細図、(B)、(D)、(F)は、それぞれ(A)、(C)、(E)の底面図、縦断面図、右側面図である。
【図11】 (A)、(B)は、図10に示す変断面アーチ状セグメントの側板の平面図と横断面図同じく、(C)、(D)は、断面図と側面図である
【図12】 (A)、(B)は、前記鋼構造タイプの変断面アーチ状セグメントの天板の横断面図と側面図である。
【図13】 (A)、(B)は、同じく鋼構造タイプの変断面アーチ状セグメントの天板の平面図と断面図である。
【図14】 (A)、(B)は、2車線の道路トンネルを鋼構造タイプの変断面アーチ部材で補強する場合の、第1組立工程と第2組立工程時を示す、既設トンネル覆工内面の全体の概要横断面図である。
【図15】 (A)、(B)は、同じく、鋼構造タイプの変断面アーチ部材の第3組立工程と第4組立工程時における、既設トンネル覆工内面の全体の概要横断面図である。
【図16】 図16〜図22は実施形態3として、鋼構造タイプで側板と天板からなる第3例の変断面アーチ状セグメントを示し、図16(A)、(B)は、変断面アーチ部材の組立時の平面図と既設トンネル覆工内面の全体の概要横断面図である。
【図17】 (A)、(C)は、図16(B)の(ヘ)部と(ト)部の詳細図、(B)は(A)の底面図、(D)、(E)は、(C)の底面図と縦断面図である。
【図18】 (A)、(C)は、図16(B)の(チ)部と(リ)部の詳細図、(B)は(A)の底面図、(D)は(C)の側面図である。
【図19】 (A)、(B)は、図16に示す変断面アーチ状セグメントの側板の平面図と横断面図同じく、(C)、(D)は、断面図と側面図である
【図20】 (A)、(B)は、図16に示す鋼構造タイプの変断面アーチ状セグメントの天板の横断面図と側面図である。
【図21】 (A)、(B)は、同じく図16に示す鋼構造タイプの変断面アーチ状セグメントの天板の平面図と断面図である。
【図22】 (A)、(B)と(C)、(D)は、図19〜図21に示す鋼構造タイプの変断面アーチ状セグメントのセグメント継手構造の係合前と係合後のそれぞれの平面図と側面図である。
【図23】 図23〜図28は実施形態4として、合成構造タイプで側板と天板からなる変断面アーチ状セグメントを示し、図23(A)、(B)は、変断面アーチ部材の組立時の平面図と既設トンネル覆工内面の全体の概要横断面図である。
【図24】 (A)、(C)は、図23(B)の(ヌ)部と(ル)部の詳細図、(B)は(A)の底面図、(D)は(C)の側面図である。
【図25】 (A)、(C)は、図23(B)の(オ)部と(ワ)部の詳細図、(B)は(A)の底面図、(D)は(C)の側面図である。
【図26】 (A)、(B)は、図23に示す変断面アーチ状セグメントの側板の平面図と横断面図同じく、(C)、(D)は、断面図と側面図である
【図27】 (A)、(B)は、図23に示す変断面アーチ状セグメントの天板の横断面図と側面図である。
【図28】 (A)、(B)は、図23に示す変断面アーチ状セグメントの天板の平面図と断面図である。
【図29】 図29〜図32は実施形態5として、RC(鉄筋コンクリート)構造タイプで側板と天板からなる変断面アーチ状セグメントを示し、図29(A)、(B)は、変断面アーチ部材の組立時の平面図と既設トンネル覆工内面の全体の概要横断面図である。
【図30】 (A)、(C)、(E)は、図29(B)の(カ)部と(ヨ)部と(タ)部の詳細図、(B)は(A)の底面図、(D)は(C)の側面図、(F)は(E)の側面図である。
【図31】 側板とベースプレートからなるRC(鉄筋コンクリート)構造タイプの変断面アーチ状セグメントを示し、(A)、(B)は、側板の平面図と横断面図同じく、(C)、(D)は、断面図と側面図である
【図32】 (A)、(B)は、図29に示す変断面アーチ状セグメントの天板の横断面図と側面図である。
【図33】 (A)、(B)は、同じく図29に示す変断面アーチ状セグメントの天板の平面図と断面図である。
【図34】 図(A)〜(L)は、本発明に係るセグメント主断面構造の12の変形例を示す断面説明図である。
【図35】 (A)は、セグメント間またはリング間の凹凸嵌合構造および止水構造の3例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 既設のトンネル
2 床版
3 枕木
4 鉄道レール
5 地山
6 コンクリート
7 半アーチ状セグメント
7a 変断面アーチ
7c 側板
7d 天板
8 梁材
9 建築限界
10 セグメント継手
11 固定ボルト
12 ロックボルト
10 セグメント継手
13 セグメント接合傾斜端縁
14 スプリングライン
15 曲面鋼板
16 ベースプレート
17 変断面補強鋼板
18 始端(最高部)
19 終端(最低部)
20 グラウト材
21 係合溝
22 支持脚
22a 屈曲節点
23 支持板
24 挿入金物
25 定着板
26 凸状継手
26a 円弧凸状継手
27 凹状継手
27a 円弧凹状継手
28 中間支持部材
29 取付けプレート
30 ナット
31 アンカーボルト
32 ナット部材
33 係合板
34 係合溝
35 鉄筋
36 コンクリート
37 継手部挿入金物
38 鉄筋入りコンクリート
40 係合突起
42 係合孔
42a 屈曲節点
43 エキスパンドメタル
44 係合継手
45 係合突部
46 床スラブ
47 グラウト層
48 ロックボルト
49 ナット
50 ボルト挿通孔
51 アンカーボルト
52 ボルト挿通孔
53 リブ
54 止水材
55 接合プレート
56 凹状部
57 突起
58 雄側突起
59 ボルト
60 雌側嵌合部
61 保持ケース
62 ばね
63 係合爪
64 ボルト挿通孔
65 固定板
66 空間部
67 上部端版
68 係合孔
69 係合突部
70 連結ボルト
71 ボルト孔
72 連結ボルト
73 凹部
74 雄側セグメント継手
74a 係合突部
75 雄側セグメント継手
75a 凹溝
76 凹状部
77 突起
Claims (8)
- 既設トンネルの覆工内面に沿って鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の補強面材を設置する既設トンネル覆工内面の補強構造において、前記補強面材は、トンネル周方向およびトンネル軸方向に分割製作され、前記補強面材の背面側最外縁が覆工内面形状とほぼ相似形で、トンネル内空側が非相似形の変断面アーチを構成する複数の変断面セグメントで構成され、前記セグメントは、覆工のスプリングライン周辺がトンネルの建築限界を侵さない範囲の厚さの部材で構成され、覆工の頂部周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板のみにより構成され、覆工内面のスプリングライン周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板とトンネル軸方向に垂直な面を持ち、当該曲面鋼板のトンネル背面側あるいはトンネル内空側に垂直に固着された変断面補強鋼板により構成されており、前記セグメントは、少なくとも周方向に隣接するセグメントと周方向端部に設けたセグメント継手で接合され、覆工内面に隙間を形成して組立て設置されており、前記セグメントは固定手段で既設トンネルのコンクリートに固定され、セグメント背面と覆工内面の隙間には、部分的あるいは全面にグラウト材が充填され、各セグメントが覆工内面に密着されている、ことを特徴とする変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造。
- 既設トンネルの覆工内面に沿って鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の補強面材を設置する既設トンネル覆工内面の補強構造において、前記補強面材は、トンネル周方向およびトンネル軸方向に分割製作され、前記補強面材の背面側最外縁が覆工内面形状とほぼ相似形で、トンネル内空側が非相似形の変断面アーチを構成する複数の変断面セグメントで構成され、前記セグメントは、覆工のスプリングライン周辺がトンネルの建築限界を侵さない範囲の厚さの部材で構成され、覆工の頂部周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板のみにより構成され、覆工内面のスプリングライン周辺の主構造材は覆工内面に沿った面に概ね平行に湾曲した曲面鋼板とトンネル軸方向に垂直な面を持ち、当該曲面鋼板のトンネル背面側あるいはトンネル内空側に垂直に固着された変断面補強鋼板に加えて、前記曲面鋼板と前記変断面補強鋼板とで囲まれる空間にコンクリートを充填して構成されており、前記セグメントは、少なくとも周方向に隣接するセグメントと周方向端部に設けたセグメント継手で接合され、覆工内面に隙間を形成して組立て設置されており、前記セグメントは固定手段で既設トンネルのコンクリートに固定され、セグメント背面と覆工内面の隙間には、部分的あるいは全面にグラウト材が充填され、各セグメントが覆工内面に密着されている、ことを特徴とする変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造。
- 既設トンネルの覆工内面に沿って鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の補強面材を設置する既設トンネル覆工内面の補強構造において、前記補強面材は、トンネル周方向およびトンネル軸方向に分割製作され、前記補強面材の背面側最外縁が覆工内面形状とほぼ相似形で、トンネル内空側が非相似形の変断面アーチを構成する複数の変断面セグメントで構成され、前記セグメントは、覆工のスプリングライン周辺がトンネルの建築限界を侵さない範囲の厚さの部材で構成され、覆工の頂部周辺が前記スプリングライン周辺の厚さに対し相対的に薄い部材で構成され、当該セグメントは、覆工内面の頂部近傍に分割部の1つが位置するようにして、トンネル周方向に4分割以上偶数分割され、前記頂部周辺に位置する2つのセグメントは、曲面鋼板又は曲面鋼板と変断面補強鋼板からなる鋼構造であり、他の部位は、鉄筋コンクリート構造或いは合成構造であり、前記セグメントは、少なくとも周方向に隣接するセグメントと周方向端部に設けたセグメント継手で接合され、覆工内面に隙間を形成して組立て設置されており、前記セグメントは固定手段で既設トンネルのコンクリートに固定され、セグメント背面と覆工内面の隙間には、部分的あるいは全面にグラウト材が充填され、各セグメントが覆工内面に密着されている、ことを特徴とする変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造。
- 前記鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の変断面アーチを構成する変断面セグメント部材において、当該セグメントは少なくとも覆工内面の頂部近傍にセグメント継手を有し、当該セグメント継手は凹凸嵌合の略ヒンジ接合であることを特徴とする請求項1、2または3記載の変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造。
- 前記鋼構造あるいは鉄筋コンクリート構造あるいは合成構造の変断面アーチを構成する変断面セグメント部材において、変断面セグメントの覆工内面の頂部近傍以外でのセグメント継手は、少なくともトンネル内空側が圧縮となる曲げに対して略剛接合、つまり、地山側で引張ボルトあるいは雌雄嵌合継手による引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造。
- 変断面セグメントのリング継手が曲面鋼板の長手両側辺に形成された凹凸嵌合であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の変断面アーチ部材を用いたトンネル覆工の補強構造。
- 前記変断面セグメントのうち最下部セグメントの下端部と受梁とが略剛接合、つまり、地山側で引張ボルトあるいは雌雄嵌合継手による引張力伝達、内空側で面接触による支圧力伝達となるように支持され、前記受梁は、スプリングライン近傍に配置され、覆工コンクリートおよび地山に剛接合で固定された、上下方向に1段ないし複数段のロックボルトで固着されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造。
- 請求項7のトンネル覆工の補強構造において、前記受梁は、上段に配置のロックボルトと屈曲節点付き脚構造で覆工コンクリートおよび地山に剛接合で固着されていることを特徴とする変断面セグメントを用いたトンネル覆工の補強構造。
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