JP4740029B2 - 床版または覆工板の製造方法 - Google Patents
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Description
プレストレストコンクリート床版では、鉄筋コンクリート床版の場合と同様、桁の上に型枠を組み、鉄筋を組み立ててからコンクリートを打設し、コンクリートが硬化した後にさらにセンターホールジャッキなどの軸力導入器具を用いてPC鋼材を緊張して床版にプレストレスを導入する工程が加わるため、工期が長くなるとともに作業が煩雑になる問題があった。
合成床版は、鋼殻の製作過程で溶接が必要となるため、加工コスト、疲労強度の面で問題があった。さらに、現場での工期を短縮するため、コンクリートを工場にてあらかじめ打設するプレキャスト床版も開発されているが、床版橋の場合と同様、1ブロックあたりの重量が大きいために輸送できるプレキャスト床版ブロックの大きさが限られ、輸送効率が悪いという問題がある。
特開2004−285823に開示の角形鋼管を用いた床版、または床版ユニットは、破壊の主要な原因となる溶接や孔あけ、添接板などの加工が必要となるボルト継手を一切使用しない(つまり、溶接レス・ボルトレス)で複数の角形鋼管を接合して床版を構成でき、加工の省力化が可能となる利点があるが、本出願人のさらなる研究によりさらに改良した方が好ましい点があることが見出された。
すなわち、床版、または覆工板に用いる角形鋼管の製造法には、一般に、(1)冷間ロール成形による方法、(2)プレス成形による方法、(3)熱間圧延による方法の3つがあり、本発明の適用対象である角形鋼管1は、角形の形状をしていればよいので、前記何れの方法によって製造されたものでもよいが、図2に示すように、この角形鋼管1は製造能力の関係から、図2(a)(b)(c)(d)のような初期変形が不可避的に発生する問題があり、これを前提に高性能の角形鋼管1を用いた床版、または覆工板を構築するには更なる改良が必要であることが分った。図2(a)では、角形鋼管1の4辺が外側に膨らんでおり、図2(b)では角形鋼管1の4辺が内側に凹んでいる。また、図2(c)(d)では、上下左右の位置関係が異なるが、何れも角形鋼管1の4辺のうち対向2辺が外側に膨らみ、他の対向2辺が凹んでいる。
本発明は、複数本敷き並べた角形鋼管1相互にプレストレスを導入して結合することにより角形鋼管1の変形を矯正するもので、これにより角形鋼管1相互は面接触で摩擦接合できて荷重を水平方向に分散できると共に、強度を一層向上し、耐腐食性にも優れた角形鋼管1を用いた床版、床版ユニット、または覆工板の製造方法を提供するものである。
また従来、床版、または覆工板においてプレストレスを導入する場合、一般的に用いられるPC床版橋では、工場製作のPC桁を敷き並べて幅方向にPC鋼線、PC鋼棒などのPC鋼材を挿通してセンターホールジャッキで緊張し、クサビなどを用いてPC鋼材を本体に定着し張力を導入する方法がある。しかし、PC橋ではPC鋼材に許容応力度いっぱいまでプレストレスが導入されるため、PC鋼材、ジャッキ、定着具などは大掛かりなものが必要になり、また、応力度が比較的高いために鋼線の破断などの可能性があり作業安全上問題があった。
本発明では、強度を向上し、耐腐食性にも優れた床版または覆工板を製造することを狙い、ジャッキを用いないか、または、能力の小さい汎用的な小型ジャッキを用いて簡単かつ安全にプレストレスを導入することができ、施工の省力化、コスト削減を図ることのできる床版または覆工板の製造方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、角形鋼管1をその長手方向と直交する方向に複数本敷き並べ、角形鋼管1の側面5に開口部6を設け、該開口部から鉄筋、棒鋼などの1本又は複数本の棒状部材を挿通し、角形鋼管内部にコンクリートなどの経時硬化性材料を充填することで一体化する床版または覆工板の製造方法であって、
側面が外側に膨らんで変形した前記角形鋼管1の側面5から荷重をかけ、隣接する角形鋼管の前記変形を矯正すると共に隣接する角形鋼管の接触面にプレストレスを導入し、前記角形鋼管1内に挿通された前記棒状部材7の両端部を角形鋼管1の側面5に定着した後、荷重を開放することにより前記棒状部材7に引張力を導入することを特徴とする。
また、構造上必要な部材を利用して角形鋼管同士の接触面にプレストレスが導入できるので、従来のPC鋼材、緊張器具、定着具を用いるプレストレス導入方法に比べて施工の省力化、コスト削減が可能であり、かつ安全にプレストレスを導入することができる。また、床版または覆工板を容易に製造することができると共に、隣接する角形鋼管の接触面にプレストレスを導入することができる。
また、本願のように、棒状部材の定着部付近に雄ねじ軸部を設け、ナットを装着して締め込むようにすると、容易に棒状部材に引張力を導入することができる。
また、第1発明のように、角形鋼管の側面から押圧するように荷重を付与し、棒状鋼材の両端部を定着した後に前記荷重を開放するようにすると、簡単に棒状鋼材に引張力を導入することができると共に、隣接する角形鋼管の接触面にプレストレスを導入することができる。
また、第2発明のように、前記の複数本敷き並べた角形鋼管の側部をワイヤ牽引装置などの締め付け器具を用いて中央部に向けて引き寄せて締め付け、前記棒状部材の両端部を角形鋼管の側面に定着した後に、締め付け力を開放するようにしても、容易に棒状部材に引張力を導入することができると共に、隣接する角形鋼管の接触面にプレストレスを導入することができる。
また、本願発明のように、棒状部材の端部に棒状部材接続具を備えているユニット化された床版ユニットAと、棒状部材の端部に棒状部材接続具を備えていないユニット化された床版ユニットBとを製造して、床版ユニットAに隣接して床版ユニットAまたは床版ユニットBを配置して、床版ユニットA又はBの棒状部材同士を棒状部材接続具を用いて連結して、棒状部材連結具を備える側の角形鋼管内に経時硬化性充填材を充填することにより、床版ユニット相互を容易に一体化することができる。
本願発明によると、複数本式並べられた角形鋼管の外側に端部が突出するように棒状部材を挿通して、棒状部材に引張力を与えながら、棒状部材の両端部を角形鋼管の最外側面に定着することにより、隣接する角形鋼管の接触部にプレストレスを容易に導入することができ、また角形鋼管の内部に経時硬化性材料を充填・硬化することにより全体が一体化された床版ユニットを容易に製造することができる。また、このような床版ユニットとこれに隣接する接合用角形鋼管および接合用角形鋼管内に配置されて棒状部材相互を接続する棒状部材接続具ならびに接合用角形鋼管内に充填される経時硬化性材料により、接合用角形鋼管を介して床版ユニット相互を容易に一体化することができる。
本願発明によると、床版ユニット同士の連結の際、前記棒状部材接続具を定着する角形鋼管、又は前記接合用角形鋼管にプレストレスを導入した後、前記棒状部材接続具を定着する角形鋼管、又は、前記接合用角形鋼管に経時硬化性材料を充填して連結するので、床版ユニット相互間に位置される接合用角形鋼管の側面にも、簡単にプレストレスを導入することができる。
本願発明によると、ワイヤ牽引装置などの締め付け器具を用いて、複数の角形鋼管を引き寄せるようにして締め付けて、角形鋼管相互の側面の接触面にプレストレスを導入することができ、また、角形鋼管の外側から容易に引き寄せるようにして、プレストレスを導入することができる。また、角形鋼管を特殊な構造にすることなく、容易に安価に角形鋼管相互を引き寄せることができる。
第3発明によると、棒状部材を挟む両側の仕切り板の内側に経時硬化性材料を充填するようになるので、経時硬化性材料を介して角形鋼管と棒状部材が一体化され、角形鋼管に作用するせん断力に対するキー機能を向上させることができ、また、経時硬化性材料は仕切り板を介して角形鋼管内の必要箇所のみに部分的に充填されるから、角形鋼管の全長に渡って充填する場合に比べ、角形鋼管の重量をできるだけ軽くすることができると共に、経時硬化性材料の使用量を低減できる。さらに、軽量であるために工場にて角形鋼管を結合して床版ユニットを製作したうえ現場に搬送する上で好都合である。
第4発明によると、冷間ロール成形、プレス成形、熱間圧延の現存する製造方法によって製造された角形鋼管を利用して、容易に床版または覆工板を容易に製造することができる。
図1は、第一の実施形態である角形鋼管1を用いた床版橋4の斜視図、図2(a)(b)(c)(d)は、床版、または覆工板を構成する角形鋼管1の成形時の変形形態の正面図、図3(a)(b)は、図2(a)の角形鋼管1を複数本平行に敷き並べて変形を矯正する形態を示す正面図である。
また、図示は省略するが、道路橋において桁の上に設置され、路面を構成する床版においても上記の床版橋4と同様の形態、性能が求められる。
このため本発明は、溶接、ボルト接合、補強板取付け作業などが不要な構成としている。すなわち、角形鋼管1の側面5には、所定の間隔をあけて複数の開口部6が開設されており、橋軸方向に伸長する複数の角形鋼管1を橋軸直角方向に平行に並べたとき、前記開口部6が橋軸直角方向の直線上に揃い、この各開口部6に棒状部材7を挿通して橋軸直角方向にせん断キーを構成しており、それにより角形鋼管1の相互がずれないように強固に締結して床版橋4を構成している。棒状部材7は、鋼管、棒鋼、鉄筋などの何れの材料でもよい。
図5(a)(1)では、ナット22を一端側に装着した棒状鋼材7を、並列して設置された角形鋼管1の開口部6から挿入して、前記ナット22を開口部6周囲の角形鋼管1の外面に装着した状態で、図5(a)(2)では、棒状鋼材7の他端側にナット22を装着した状態で、図5(a)(3)では、一方または両方のナット22を締め込み締め付けることにより、棒状部材へ引張力を導入すると共に、角形鋼管1へプレストレスを導入している状態を示す。
図5(b)では、予め並列配置された角形鋼管1の横方向からジャッキ等により押圧する形態で、複数個の角形鋼管1は、両側部に荷重が掛けられている複数本の角形鋼管1の幅方向に、ナット22を一端側に装着した棒状部材7が挿通してあり、棒状部材7の両端をナット22、またはクサビ24などの定着具部を用いて定着し、荷重を開放して角形鋼管1相互にプレストレスを導入する手順を示したものである。前記のいずれの方法の場合も、開口部6より棒状部材7の外径は小さく、ナット22の外径よりも開口部7の内径が小さく設定されている。
棒状部材7の直上部付近において角形鋼管1の上面には、経時硬化性材料充填孔11が形成されていて、この経時硬化性材料充填孔11からコンクリートなどの経時硬化性材料8を角形鋼管1内に充填する。経時硬化性材料8は角形鋼管1内において棒状部材7と一体化していれば、角形鋼管1内の全長を埋め尽くさなくてもよく、棒状部材7の周囲の一部領域のみであって構わない。また、横つなぎ部材となる棒状部材7は、長手方向全長にわたって設ける必要はなく、一群の棒状部材7の中心間の間隔が3m以下となるように配置すればよい。各位置での配置本数、段数は、横つなぎ位置に作用するせん断力、ならびに曲げモーメントに対して、棒状部材7のみでせん断力に抵抗できる断面を確保し、なおかつ曲げモーメントに対しては角形鋼管内部に充填された経時硬化性材料8と棒状部材7で、圧縮力は経時硬化性材料8で、引張力は棒状部材7で分担し、それぞれが十分な強度を確保できるように数量、配置を決定すればよい。
前記の棒状部材接続具15は、例えば長ナットあるいはカプラーにより構成され、一方の端部の角形鋼管1の内側で定着用のナット22の外側に配置される。前記の定着用のナット22および棒状部材接続具15の装着にあたっては、棒状部材接続具を有する側の開口部6あるいは経時硬化性材料充填孔11を利用して作業員により棒状部材7の端部に装着される。なお、前記の棒状部材接続具を有する側の開口部6は、ナット等を入れることが可能な大きさとされている。
なお、長ナットあるいはカプラーなどにより構成される棒状部材接続具は、内径側に棒状部材の端部に設けられる雄ネジ、あるいは雄のネジ節に螺合する雌ネジ、あるいは雌のネジ節が設けられており、これを2本の棒状部材端部の雄ネジ、あるいは雄のネジ節に螺合させて、棒状部材相互を強固に結合する役目を有するものである。
前記を工程順に説明すると、(1)先行する床版ユニットA28または床版ユニットB29を架設する(図10(a))。(2)次の床版ユニットA28または床版ユニットB29を架設する(図10(b))。床版ユニットA28または床版ユニットB29から突出する棒状部材7の端部を開口部6を通して先行架設された床版ユニットA28または床版ユニットB29内に挿通する(図11(c))。(3)先行床版ユニットと後行床版ユニットの棒状部材7相互を、棒状部材接続具15を用いて接続する(図11(c))。(4)角形鋼管1内部に経時硬化性材料8を充填する、の順となる。
なお、前記の棒状部材接続具15による接続作業は、経時硬化性材料充填孔11を利用して接続すればよい。
なお、図7の場合も、複数本の角形鋼管1を現場で結合した後、所定長の複数本の棒状部材7を用いて多数の角形鋼管1を幅方向に結合することができる。図11(d)は架設後の接続部の断面を示した斜視図である。
図14および図15は、第八の実施形態に対応する手順を示したものである。図14(a)は、(1)角形鋼管1を複数本順に敷き並べていく工程を示す。図14(b)は、(2)棒状部材7を角形鋼管1の側面5に設けた開口部6へ挿通する工程を示す。図15(c)は、(3)棒状部材7の両端にナット22を取り付ける工程を示す。図15(d)は、(4)棒状部材7の両端に取り付けたナット22を回転させて締め込んで棒状部材7に引張力を導入し、その反力により隣接する角形鋼管1の接触面にプレストレスを導入する工程を示す。図15(e)は、角形鋼管1の上面の材料充填孔11から経時硬化性材料(コンクリート)8を打設する工程を示す。これにより角形鋼管1の内部において経時硬化性材料8と棒状部材7が一体化され、全体が一体化される。
2.床版
3.舗装
4.床版橋
5.角形鋼管の側面
6.開口部
7.棒状部材
8.経時硬化性材料
9.凹部
10.仕切板
11.経時硬化性材料充填孔
12.凸部
13.防食材料
14.床版ユニット
15.棒状部材接続具
16.接合用角形鋼管
17.弾性材料
18.側溝
19.地覆
20.高欄
21.ネジ節
22.ナット
23.ワイヤ牽引装置
24.クサビ
25.隙間部
26.ネジ
27.帯状連結条体
28.床版ユニットA
29.床版ユニットB
30.吊金具
31.コーナー角部
32. H形鋼
33. フランジ
34. 覆工板
34a. 覆工板
Claims (4)
- 角形鋼管をその長手方向と直交する方向に複数本敷き並べ、角形鋼管の側面に開口部を設け、該開口部から鉄筋、棒鋼などの1本又は複数本の棒状部材を挿通し、角形鋼管内部にコンクリートなどの経時硬化性材料を充填することで一体化する床版または覆工板の製造方法であって、
側面が外側に膨らんで変形した前記角形鋼管の側面から荷重をかけ、隣接する角形鋼管の前記変形を矯正すると共に隣接する角形鋼管の接触面にプレストレスを導入し、前記角形鋼管内に挿通された前記棒状部材の両端部を角形鋼管の側面に定着した後、荷重を開放することにより前記棒状部材に引張力を導入することを特徴とする角形鋼管を用いた床版または覆工板の製造方法。 - 前記の複数本敷き並べた角形鋼管の側部をワイヤ牽引装置などの締め付け器具を用いて中央部に向けて引き寄せて締め付け、前記棒状部材の両端部を角形鋼管の側面に定着した後に前記締め付けによる締め付け力を開放して棒状部材に引張力を導入し、棒状部材の定着部に作用する反力によって、隣接する角形鋼管の接触面にプレストレスを導入することを特徴とする請求項1に記載の角形鋼管を用いた床版または覆工板の製造方法。
- 前記角形鋼管内で、前記棒状部材を挟んでその両側に仕切り板を設け、この仕切り板で区画される内側に前記コンクリートなどの経時硬化性材料を充填したことを特徴とする請求項1又は2に記載の角形鋼管を用いた床版または覆工板の製造方法。
- 前記角形鋼管が冷間ロール成形、プレス成形、熱間圧延の何れかの方法により製造されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の角形鋼管を用いた床版または覆工板の製造方法。
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