JP4517328B2 - エアスプリングの取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャシフレームとアクスルとの間に配置されるエアスプリングの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2000−255239号公報には、エアスプリングの下部にアクスルの側方へ張り出る取付座を形成し、スプリングシートにアクスルの側方へ張り出して取付座を受ける設置座を形成し、これら取付座と設置座とをボルト及びナットによって締結するエアスプリング取付構造が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成では、スプリングシートに対するエアスプリングの着脱には、ボルトとナットとを相対回転させるためのスパナ等の工具を要し、その作業が煩雑であった。
【0004】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであって、着脱作業を簡単に行うことができるエアスプリングの取付構造の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明に係るエアスプリング取付構造は、アクスル側の被取付部にエアスプリング支持ブラケットを載置し、エアスプリング支持ブラケットに略平面状の上面を設け、エアスプリングに略平面状の下面を設け、エアスプリング又はエアスプリング支持ブラケットの一方に下面から略垂直上方へ又は上面から略垂直下方へ延びるネジ孔を形成し、その他方に下面から略垂直下方へ又は上面から略垂直上方へ延びる1本のスタッボルトを固定し、スタッドボルト又はネジ孔の周囲の複数位置でエアスプリング支持ブラケットを被取付部を介してアクスルに締結固定し、スタッボルトをネジ孔に螺合させることによって下面と上面とが面接触した状態でエアスプリング支持ブラケットにエアスプリングを締結固定するものであり、上記複数位置は、スタッドボルト又はネジ孔を挟んで対峙する2つの位置を含む
【0006】
上記構成では、スタッドボルト又はネジ孔の周囲の複数位置でエアスプリング支持ブラケットを被取付部に締結固定した後、スタッボルトの先端をネジ孔に挿入し、エアスプリングを手で回すことにより、エアスプリング支持ブラケットにエアスプリングが締結固定される。また、係る状態から、エアスプリングを取付時と反対の方向へ手で回すことにより、エアスプリングが取り外される。
【0007】
従って、被取付部に対するエアスプリングの着脱を工具を用いることなく手作業のみによって簡単に行うことができ、エアスプリングの着脱作業性が向上する。
【0008】
また、エアスプリングに加わる荷重やモーメントは、スタッボルトとエアスプリング支持ブラケットの上面とに分散して作用する。このとき、エアスプリングの下面とエアスプリング支持ブラケットの上面とが面接触しており、エアスプリング支持ブラケットの上面は、荷重やモーメントを面で受けるため、大きな荷重やモーメントを受け持つことができ、その分スタッボルトに掛かる負担が軽減される。従って、1本のスタッボルトによっても実用上十分な取付強度が確保され得る。
【0009】
エアスプリングを、シャシフレームに対して固定される上方支持体と、下面を有する下方支持体と、上方支持体に密着状態で取り付けられる上開口と下方支持体に密着状態で取り付けられる下開口とを有する略筒状の弾性部材と、弾性部材と上方支持体と下方支持体とによって区画される空気室と、によって構成し、上開口の周縁を、空気室内の空気圧によって上方支持体に密着状態で固定するように構成することもできる。
【0010】
上記構成では、空気室内の空気を抜くことにより、上開口を上方支持体から外すことができ、反対に、上開口を上方支持体の所定位置に配置し、空気室内に空気を供給することにより、上開口の周縁を上方支持体に密着状態で固定することができる。
【0011】
従って、上方支持体に対する弾性部材の着脱をも含めたエアスプリングの着脱を工具を用いることなく手作業のみによって行うことができ、エアスプリングの着脱作業性が一段と向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係るエアスプリングが搭載された車両の前方下部構造を示す斜視図、図2はエアスプリングの側断面図、図3はエアスプリングの取付構造の分解斜視図、図4はエアスプリング支持ブラケットの平面図である。なお、以下の説明において、前後方向は車体の前後方向であり、左右方向は車体前方に向いた状態での左右方向である。
【0014】
図1に示すように、大型自動車の車体前方下部には、車幅方向左右両側で車体前後方向に沿って延びるシャシフレームとしての一対のサイドメンバ1,2と、サイドメンバ1,2の下方で車幅方向に沿って延びるフロントアクスル3とが設けられている。各サイドメンバ1,2は、車幅方向内側へ開口するように配置された横向きの略U状断面を有し、側壁4とその上下端から延びる上壁5及び下壁6とを備える。フロントアクスル3は、略I状断面を有する。サイドメンバ1,2よりも車幅方向外側へ張り出たフロントアクスル3の両端部7には、それぞれナックル(図示外)を介して前輪(図示外)が連結されている。
【0015】
左側のサイドメンバ1の鉛直下方のフロントアクスル3の上壁8上には、サイドメンバ1と略平行に配置されフロントアクスル3から車体前後方向へ延びるスプリングシート9が取り付けられている。スプリングシート9は、フロントアクスル3と重なり合うオーバーラップ部11でボルト12及びナット13によってフロントアクスル3に締結固定されている。スプリングシート9の前端上部にはトルクロッド14の後端が、前端下部にはスタビライザー15のアーム64の後端がそれぞれ連結されている。また、スプリングシート9の後端にはラテラルロッド16の一端(左端)が連結されている。
【0016】
右側のサイドメンバ2の鉛直下方のフロントアクスル3の上壁8上にも、左側と同様にスプリングシート10が取り付けられている。右側のスプリングシート10は、ラテラルロッド16に連結される後端を有さないことを除いて、左側のスプリングシート9と概ね同様に構成されている。
【0017】
左右両側において、スプリングシート9,10のオーバーラップ部11とサイドメンバ1,2との間には、それぞれエアスプリング17,18が設けられている。
【0018】
左右のエアスプリング17,18は、それぞれ、上方支持体としてのトッププレート19と、下方支持体としてのピストン20と、弾性部材としてのエアベローズ21と、を備えている。
【0019】
図3に示すように、ピストン20は、エアスプリング支持ブラケット23を介して、フロントアクスル3側の被取付部としてのスプリングシート9のオーバーラップ部11に固定されている。エアスプリング支持ブラケット23は、スプリングシート9をフロントアクスル3に固定するためのボルト12及びナット13によって、スプリングシート9に締結固定されている。なお、右側のエアスプリング18も左側と概略同様の構成を有するため、その説明を省略する。
【0020】
図2及び図4に示すように、エアスプリング支持ブラケット23は、平面状の上面24aを有する中央部24と、中央部24の周縁から一体的に突出しスプリングシート9(図1に示す)に締結固定されるフランジ部25と、中央部24の下面中央から延びる円筒部53と、を備えている。円筒部53及び中央部24には、円筒部53の内周面から中央部24の上面24aへ連続して貫通するネジ孔27が形成されている。フランジ部25には、ボルト12(図3に示す)が挿通されるボルト挿通孔52が形成されている。エアスプリング支持ブラケット23の上面24aを含む中央部24の上部51は、後述するピストン20の取付面39との擦れ合いに耐えうる必要があるため、例えば鉄のように所定の強度を有する材料で形成されることが好ましい。また、エアスプリング支持ブラケット23のうち上部51を除く他の部分を例えばアルミニウムのような軽金属によって形成することにより、エアスプリング支持ブラケット23の全体の軽量化を図ることができる。
【0021】
ピストン20は、ピストン本体28と底板29とから構成されている。ピストン本体28は、円板状の上壁部30と、上壁部30の周縁から下方へ突出する筒状の周壁部31と、上壁部30の下面の中央から下方へ延びる略円柱状の軸部32と、上壁部30の上面の周縁よりも僅かに内側から上方へ突出する円環壁部33と、を有している。底板29は、中央部34が下方へ僅かに突出した略円板形状を有する。底板29の中央部34には貫通孔35が形成されている。底板29の外周縁はピストン本体28の周壁部31の下端内面に嵌合し、ピストン本体28の軸部32の下端は底板29の貫通孔35に嵌合し、これらの嵌合部分が密封状態で溶着されている。これにより、ピストン本体28と底板29との間に補助空気室36が区画形成される。ピストン本体28の上壁部30には、補助空気室36と後述する空気室37とを連通させる通気孔38が形成されている。
【0022】
ピストン本体28の軸部32の下端が底板29の貫通孔35と嵌合し溶着された状態で、軸部32の下面と底板29の中央部34の下面とは、エアスプリング17の下面として略平面状の取付面39を構成する。ピストン本体28の軸部32には、取付面39から上方へ延びるネジ孔40が形成されている。ネジ孔40にはエアスプリング支持ブラケット23のネジ孔27と螺合自在なスタッボルト26が螺合され、ネジ孔40とスタッボルト26とは接着剤の注入や溶着等により固定されている。スタッボルト26の下端をエアスプリング支持ブラケット23のネジ孔27に挿入し、ピストン20を手で回すことにより、スタッボルト26がネジ孔27に螺合し、上面24aと取付面39とが面接触した状態でピストン20がエアスプリング支持ブラケット23に締結固定される。なお、エアスプリング17のネジ孔40にスタッボルト26を固定せず、エアスプリング支持ブラケット23のネジ孔27にスタッボルト26を固定しても良い。
【0023】
トッププレート19は、略円板状のプレート本体41と、プレート本体41の下面から下方へ突出する円環壁部42と、プレート本体41の上面から上方へ延びてサイドメンバ1の側壁4(図1に示す)に締結固定されるブラケット部43と、を備えている。
【0024】
エアベローズ21は、略円形状の上開口45及び下開口46を有する略筒状の可撓性膜によって形成されている。上開口45及び下開口46の周縁部47,48は、それぞれ肉厚の円環リブ形状を有している。エアベローズ21の上開口45及び下開口46は、トッププレート19及びピストン20の円環壁部42,33に外側からそれぞれ密着状態で嵌合されている。係る状態で、トッププレート19の円環壁部42よりも内側の部分とピストン20の円環壁部33よりも内側の部分とエアベローズ21の内面とが空気室37を区画する。このエアベローズ21は、上開口45及び下開口46の周縁部47,48が空気室37内の空気圧のみによってトッププレート19及びピストン20の円環壁部42,33にそれぞれ密着状態で固定されるいわゆるセルフシールタイプであり、空気室37内の空気を抜くことにより、エアベローズ21がトッププレート19及びピストン20に対して手作業によって着脱可能となる。
【0025】
なお、ピストン20又はトッププレート19の少なくとも一方には、空気室37に対する空気の供給及び排出を行うための給排気口(図示外)が設けられている。
【0026】
本実施形態によれば、スタッボルト26の下端をネジ孔27に挿入し、ピストン20を手で回すことにより、エアスプリング支持ブラケット23にエアスプリング17が締結固定される。また、係る状態から、ピストン20を取付時と反対の方向へ手で回すことにより、エアスプリング支持ブラケット23からエアスプリング17が取り外される。
【0027】
また、エアベローズ21は、上開口45及び下開口46の周縁部47,48が空気室37内の空気圧のみによってトッププレート19及びピストン20の円環壁部42,33にそれぞれ密着状態で固定されるいわゆるセルフシールタイプであるので、空気室37内の空気を抜くことにより、上開口45をトッププレート19の円環壁部42から外すことが可能となる。すなわち、トッププレート19をサイドメンバ1に固定したまま、特に工具を要することなく、空気室37内の空気を抜くだけで、手作業によってエアベローズ21をトッププレート19から離脱させることができる。
【0028】
このように、エアスプリング支持ブラケット23に対するエアスプリング17の着脱、及びトッププレート19に対するエアベローズ21の着脱を、工具を用いることなく手作業のみによって簡単に行うことができ、エアスプリング17の着脱作業性が向上する。
【0029】
また、エアスプリング17に加わる荷重やモーメントは、スタッボルト26とエアスプリング支持ブラケット23の上面24aとに分散して作用する。このとき、ピストン20の取付面39とエアスプリング支持ブラケット23の上面24aとが面接触しており、エアスプリング支持ブラケット23の上面24aは、荷重やモーメントを面で受けるため、大きな荷重やモーメントを受け持つことができ、その分スタッボルト26に掛かる負担が軽減される。従って、1本のスタッボルト26によっても実用上十分な取付強度が確保される。
【0030】
なお、上記実施形態ではエアスプリング17の取付面39とエアスプリング支持ブラケット23の上面24aとを直接面接触させたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、取付面39と上面24aとの間にシート状部材や板状部材を介在させても良い。この場合、シート状部材や板状部材をエアスプリングの一部とみなせば、これら部材の下面がエアスプリングの下面として機能する。反対に、シート状部材や板状部材をエアスプリング支持ブラケットの一部とみなせば、これら部材の上面がエアスプリング支持ブラケットの上面として機能する。
【0032】
また、上記実施形態ではセルフシールタイプのエアスプリング17について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、エアベローズの上下両端部をトッププレート及びピストンに締結固定する構造であっても、ピストンとエアスプリング支持ブラケットとを面接触させると共に1本のスタッボルトで締結固定することにより、実用上十分な取付強度を確保しつつ、エアスプリングの着脱作業性を向上させることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、実用上十分な取付強度を確保しつつ、被取付部に対するエアスプリングの着脱を工具を用いることなく手作業のみによって簡単に行うことができ、エアスプリングの着脱作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアスプリングが搭載された車両の前方下部構造を示す斜視図である。
【図2】エアスプリングの側断面図である。
【図3】エアスプリングの取付構造の分解斜視図である。
【図4】エアスプリング支持ブラケットの平面図である。
【符号の説明】
1 サイドメンバ(シャシフレーム)
2 サイドメンバ(シャシフレーム)
3 フロントアクスル(アクスル)
9 スプリングシート
11 オーバーラップ部(被取付部)
18 エアスプリング
19 トッププレート(上方支持体)
20 ピストン(下方支持体)
21 エアベローズ(弾性部材)
23 エアスプリング支持ブラケット
24a 上面
26 スタッボルト
27 ネジ孔
37 空気室
39 取付面(下面)
45 上開口
46 下開口

Claims (2)

  1. 車幅方向両側で車体前後方向に沿って配置されたシャシフレームと、該シャシフレームの下方で車幅方向に沿って配置されたアクスルと、の間に配置されるエアスプリングの取付構造であって、
    前記アクスル側の被取付部に載置されるエアスプリング支持ブラケットと、
    前記エアスプリング支持ブラケットに設けられた略平面状の上面と、
    前記エアスプリングに設けられた略平面状の下面と、
    前記エアスプリング又は前記エアスプリング支持ブラケットの一方に形成され、前記下面から略垂直上方へ又は前記上面から略垂直下方へ延びるネジ孔と、
    前記エアスプリング又は前記エアスプリング支持ブラケットの他方に固定され、前記下面から略垂直下方へ又は前記上面から略垂直上方へ延び、前記ネジ孔と螺合することによって前記下面と前記上面とが面接触した状態で前記エアスプリング支持ブラケットに前記エアスプリングを締結固定する1本のスタッボルトと、
    前記スタッドボルト又は前記ネジ孔の周囲の複数位置で前記エアスプリング支持ブラケットを前記被取付部を介して前記アクスルに締結固定する複数の締結部材と、を備え
    前記複数位置は、前記スタッドボルト又は前記ネジ孔を挟んで対峙する2つの位置を含む
    ことを特徴とするエアスプリングの取付構造。
  2. 請求項1に記載のエアスプリングの取付構造であって、
    前記エアスプリングは、前記シャシフレームに対して固定される上方支持体と、前記下面を有する下方支持体と、前記上方支持体に密着状態で取り付けられる上開口と前記下方支持体に密着状態で取り付けられる下開口とを有する略筒状の弾性部材と、前記弾性部材と前記上方支持体と前記下方支持体とによって区画される空気室と、を備え、
    前記上開口の周縁は、前記空気室内の空気圧によって前記上方支持体に密着状態で固定されることを特徴とするエアスプリングの取付構造。
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