JP4515690B2 - 垂直多層磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は垂直多層磁気記録媒体に関するものであり、特に、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記録装置に用いる裏打層を備えた垂直磁化方式の磁気記録媒体の多層磁性層の構成に特徴のある垂直多層磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、情報記録装置である磁気記録装置(所謂ハードディスクドライブ)はコンピュータや各種携帯情報端末、例えば、モバイルパソコン、携帯電話、ゲーム機、デジタルカメラ、車載ナビゲーション等の外部記憶装置として一般に広く使用されている。
【0003】
近年、この様なハードディスク装置用の記録媒体として、従来の長手記録媒体と比べても倍以上の高保磁力化が可能な垂直記録媒体が精力的に研究されており、特に、Co/Pd多層膜或いはCo/Pt多層膜を垂直磁化膜に用いる方法が研究されつつある。
【0004】
これらの多層膜は0.05nm〜2nmの極薄磁性膜と0.1nm〜5nmの極薄非磁性膜を交互積層したものであり、従来のCo−Cr系合金を用いた媒体に比べ非常に強い垂直磁気異方性を示し、有力な垂直磁性膜候補となっている。
【0005】
この様な垂直磁気記録においては、単磁極ヘッド構造の記録ヘッドから発生する記録磁界により記録が行われるため、強いヘッド磁界で記録するために、単磁極ヘッドからの磁束の受け口として作用する裏打層を設けており、記録ヘッドから発生した記録磁界は、この裏打層に還流し磁束の閉磁路を形成される。
そのため、裏打層の磁気特性には、より高い飽和磁束密度と膜厚が要求されることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、裏打層を設けることによって、裏打層の磁化の不均一性が媒体ノイズの発生源となるという問題があるとともに、磁気特性として要求される大きな飽和磁化は、再生信号出力に裏打層の漏洩磁界の影響を重畳してしまうという問題がある。
【0007】
この様な裏打層の漏洩磁界の影響を抑制するために、ガラス基板と裏打層との間に反強磁性膜を介在させることが提案されているが、IrMn等の反強磁性体を製膜する場合には、基板加熱が必要になるとともに異なったチャンバーが必要になるという問題があり、また、反強磁性体自体が酸化しやすいという問題もある。
【0008】
また、面記録密度、即ち、線記録密度(FCI:Flux Change per Inch)×トラック記録密度(TPI:Track per Inch)の増加に伴い、記録磁区が縮小し、それによって、再生ヘッドに検出される磁束密度の低下とともに媒体遷移ノイズの増加によるS/Nの劣化が問題となる。
【0009】
したがって、本発明は、S/Nを増大させるとともに、オーバーライト(O/W)特性を向上することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
図1は本発明の原理的構成図であり、この図1を参照して本発明における課題を解決するための手段を説明するが、図において、符号1及び3は、それぞれ、ガラス基板等の非磁性基板、及び、Pd等の非磁性の中間層である。
図1参照
上記目的を達成するため、本発明は、基板側から順に面内軟磁性膜である裏打層2、前記裏打層2と磁気情報を記録する配向性を有する磁気記録層4とを磁気的に分離するとともに前記磁気記録層4の配向性を向上する中間層3、前記磁気記録層4、及び、記録磁界補助及び再生信号出力増加のために用いられる配向性を有する補助記録層5とを有する多層構成からなる垂直多層磁気記録媒体において、室温における裏打層2の飽和磁化Ms3、磁気記録層4の飽和磁化Ms2及び補助記録層5の飽和磁化Ms1の関係を、
Ms2<Ms1<Ms3
とし、垂直磁気異方性を正としたときに、室温における裏打層2の磁気異方性Ku3、磁気記録層4の磁気異方性Ku2及び補助記録層5の磁気異方性Ku1の関係を、
Ku2,Ku1>0,Ku3<0
とし、裏打層2の膜厚t3、磁気記録層4の膜厚t2及び補助記録層5の膜厚t1の関係を、
t3>t2≧t1
とし、室温における磁気記録層4の保磁力H c2 、補助記録層4の保磁力H c1 、及び、
裏打層2の保磁力H c3 との間の関係を、
H c3 <H c1 <H c2
としたことを特徴とする。
【0011】
再生ヘッドで検出する再生信号出力は記録層からの漏洩磁界 (再生磁束) の大きさに比例するが、本発明においては、磁気記録層4より飽和磁化Ms の大きな補助記録層5を設けているので再生信号出力を増加させることができる。
【0012】
また、各磁性層の磁気異方性K u を垂直磁気異方性を正としたときに、室温における磁気記録層4の磁気異方性K u2 、補助記録層5の磁気異方性K u1 、及び、裏打層2の磁気異方性K u3 との間の関係を、
K u2 ,K u1 >0,K u3 <0
としているので、即ち、磁気記録層4及び補助記録層5を垂直磁化膜とし、裏打層2を面内磁化膜とすることによって、記録ヘッドから磁界を印加した場合に閉磁路を安定して形成することができ、O/W特性を向上することができる。
【0013】
また、磁気記録層4の膜厚t 2 、補助記録層5の膜厚t 1 、及び、裏打層2の膜厚t 3 との関係を、
t 3 >t 2 ≧t 1
としているので、補助記録層5の膜厚の増大に伴うS/Nの低下を抑制することができる。
【0015】
また、磁気記録層4より保磁力Hc の小さな補助記録層5を設けているので、閉磁路形成時において磁気記録層4よりも保磁力Hc の小さな補助記録層5の磁化が磁気記録層4よりも先に磁化反転し、そのアシストにより磁気記録層4が磁化反転するので、O/W特性を向上することができる。
したがって、裏打層2の磁化の不均一による影響を低減するために、裏打層2の層厚を薄くして面内磁気異方性を増加させても、O/W特性の劣化を相殺することができる。
【0016】
また、磁気記録層4及び補助記録層5が、Coを含む多層膜、或いは、Coにメタロイド元素(半金属元素)を1種類以上添加したCo合金層を含む多層膜またはCo酸化物層を含む多層膜のいずれかから構成されていることが望ましい。
この様な多層膜、特に、人工格子膜を用いることによって、磁気特性を任意に制御することができる。
【0017】
また、磁気記録層4及び上記補助記録層5はCoまたはFeの遷移金属の少なくとも一方を含む多層膜からなる人工格子で構成しても良く、その場合には上記の保磁力及び飽和磁化の関係を満たすために、磁気記録層4を構成する多層膜の磁性を含む層厚或いは遷移金属の含有量の少なくとも一方を、補助記録層5を構成する多層膜の磁性を含む層厚或いは遷移金属の含有量の少なくとも一方より小とすれば良い。
【0019】
また、磁気記録層4及び補助記録層5の磁気異方性Ku2,Ku1は、製膜工程における製膜ガス圧により制御することができる。
また、上述の垂直多層磁気記録媒体を用いた記録・再生する際には、記録過程においては、補助記録層5の磁気情報が、磁気交換結合により磁気記録層4に転写され、再生過程においては、磁気記録層4の磁気情報が磁気交換結合により補助記録層5に転写されることになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
ここで、図2及び図8を参照して、本発明の第1の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体を説明する。
図2(a)参照
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体の概略的断面図であり、実際にはガラス基板に対して対称的に磁性層が設けられるが、ここでは、一方の面側の製膜構造を示す。
図に示すように、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、ガラス基板11上に裏打層12、中間層13、磁気記録層14、補助記録層15、及び、保護膜16を順次製膜する。
【0021】
この第1の実施の形態においては、裏打層12としては、厚さが、例えば、100nmのFeC膜/厚さが、例えば、3nmのC膜/厚さが、例えば、100nmのFeC膜からなり、ここでは、各FeC膜におけるFe:Cの組成比(原子数比)をFe:C=80:20とする。
【0022】
また、中間層13としては、磁気記録層14と裏打層12とを磁気的に分離するために、厚さが、例えば、5nmのPd層を用いる。
このPd層を用いることによって、磁気記録層14の配向性を向上することができる。
【0023】
また、磁気記録層14としては、製膜Arガス圧を、例えば、3Paとした圧力下で、厚さが、例えば、0.3nmのCoB膜と厚さが、例えば、1.0nmのPd膜とを交互に12層づつ製膜させた多層膜からなる人工格子膜とする。
なお、CoBの原子数比はCo:B=90:10とる。
【0024】
また、補助記録層15としては、製膜Arガス圧を、例えば、0.5Paと磁気記録層14の製膜ガス圧より低い圧力下で、厚さが、例えば、0.3nmのCoB膜と厚さが、例えば、1.0nmのPd膜とを交互に4層づつ製膜させた多層膜からなる人工格子膜とする。
なお、この場合も、CoBの原子数比はCo:B=90:10とする。
【0025】
また、保護膜16としては、厚さが、例えば、5nmのDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)膜とする。
したがって、全体構造としては、
DLC(5nm)/〔CoB(0.3nm)/Pd(1.0nm)〕多層膜(5.2nm/0.5Pa)/〔CoB(0.3nm)/Pd(1.0nm)〕多層膜(15.7nm/3Pa)/Pd(5nm)/〔FeC/C/FeC〕多層膜(200nm)/ガラス基板
となる。
【0026】
なお、磁気ヘッドによる記録・再生特性評価のため、保護膜16の上にパーフルオロカーボン系の潤滑剤を塗布して潤滑剤層17を形成する。
また、多層膜の全体の膜厚は、多層膜を形成した後の膜厚を意味し、多層膜を構成する各層の膜厚は製膜時の製膜目標膜厚を意味する。
【0027】
図2(b)参照
図2(b)は、補助記録層を設ける効果を確認するために作製した第1の比較媒体の概略的断面図であり、この第1の比較媒体は、補助記録層を設けずに、補助記録層の層厚分を磁気記録層と同じ製膜条件で製膜して磁気記録層の層厚を厚くしたものに相当し、全体構造としては、
DLC(5nm)/〔CoB(0.3nm)/Pd(1.0nm)〕多層膜(20.9nm/3Pa)/Pd(5nm)/〔FeC/C/FeC〕多層膜(200nm)/ガラス基板
となる。
【0028】
図2(c)参照
図2(c)は、第2の比較媒体の概略的断面図であり、この第2の比較媒体は、第1の比較媒体における裏打層の層厚を約2倍にしたものに実質的に相当し、全体構造としては、
DLC(5nm)/〔CoB(0.3nm)/Pd(1.0nm)〕多層膜(20nm/3Pa)/Pd(5nm)/〔FeC/C/FeC〕多層膜(400nm)/ガラス基板
となる。
【0029】
図3参照
図3は、多層膜からなる磁性層(磁気記録層14)の保磁力Hc の製膜Arガス圧依存性の説明図であり、製膜Arガス圧の増加に伴って保磁力Hc が増加することが理解され、磁気記録層14の保磁力をHc2、補助記録層15の保磁力をHc1とした場合、
Hc1<Hc2
となる。
なお、Coより保磁力の小さなFeを主構成要素とする裏打層12の保磁力Hc3は当然小さいので、垂直多層磁気記録媒体全体としては、
Hc3<Hc1<Hc2
となる。
【0030】
図4参照
図4は、多層膜からなる磁性層のKerr回転角θk の製膜Arガス圧依存性の説明図であり、製膜Arガス圧の増加に伴ってKerr回転角θk が減少することが理解される。
【0031】
この場合、磁性層の飽和磁化Ms はKerr回転角θk の大きさに比例するので、磁気記録層14の飽和磁化をMs2、補助記録層15の飽和磁化をMs1とした場合、
Ms2<Ms1
となる。
なお、裏打層12は、強いヘッド磁界で記録するために、高い飽和磁化を要求されるので、裏打層12の飽和磁化Ms3としては、ここでは、
Ms2<Ms1,Ms3、特に、
Ms2<Ms1<Ms3
とする。
【0032】
また、各磁性層における磁気異方性は、垂直磁気異方性を正とし、磁気記録層14の磁気異方性をKu2、補助記録層15の磁気異方性をKu1、裏打層12の磁気異方性をKu3とした場合、
Ku1,Ku2>0,Ku3<0となる。
即ち、磁気記録層14及び補助記録層15は垂直磁化膜であり、裏打層12は面内磁化膜である。
【0033】
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態の記録原理を説明する。
図5は、本発明の第1の実施の形態の記録原理の説明図であり、単磁極ヘッドからなる記録ヘッド21下向きの矢印で示す記録磁界が印加されると、記録磁界(磁束)は補助記録層15及び磁気記録層14を介して記録ヘッド21と面内軟磁性膜である裏打層12との間で閉磁路を形成する。
このとき、磁気記録層14の保磁力Hc2よりも大きな外部記録磁界を印加することで記録がなされる。
【0034】
この本発明の第1の実施の形態においては、上述の保磁力の関係を有する補助記録層15を設けているので、閉磁路形成時において磁気記録層14よりも保磁力の小さな補助記録層15の磁化が磁気記録層14よりも先に磁化反転し、次いで、磁気記録層14が磁化反転することになる。
即ち、補助記録層15と磁気記録層14は交換結合により磁気的に結合しているので、磁気記録層14に対してソフトな磁気特性を有する補助記録層15の磁界応答が磁気記録層14の磁界応答よりも容易に磁化反転する。
【0035】
図6参照
図6は、第1の実施の形態、第1の比較媒体、及び、第2の比較媒体のオーバライト(O/W)特性〔dB〕の説明図であり、補助記録層15を設けていない第1の比較媒体と比較して6dB程度の良好になっていることが理解される。
なお、この場合の記録ヘッド21としては、トラック幅を2μm、ギャップ長を0.3μmとし、記録線速度は13m/sとし、50kFCIの上に200kFCIを記録して、記録電流依存性を調べた。
【0036】
また、裏打層12の層厚を厚くした第2の比較媒体とほぼ同様のO/W特性が得られているので、裏打層12の膜厚を薄くすることで形状磁気異方性などによる面内磁気異方性Ku3を増加させても、記録磁界を補助する記録補助層15が記録アシストするので、O/W特性の劣化を防ぐことができることが理解される。
【0037】
次に、図7を参照して本発明の第1の実施の形態の再生原理を説明する。
図7参照
図7は、本発明の第1の実施の形態の再生原理の説明図であり、再生ヘッド22で検出する再生信号出力は記録層からの漏洩磁界 (再生磁束) の大きさに比例するため、磁気記録層14より飽和磁化の大きな補助記録層15を設けているので再生信号出力を増加させることができる。
【0038】
図8参照
図8は、第1の実施の形態及び第1の比較媒体の再生信号出力の記録周波数依存性の説明図であり、線記録密度に対応する各記録周波数における再生信号出力が向上していることが理解される。
なお、この場合の再生ヘッド22としては、トラック幅を1μm、ギャップ長を0.2μmとし、再生線速度は13m/sとした。
【0039】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態においては、相対的に保磁力が小さく且つ飽和磁化の大きな補助記録層を設けているので、裏打層を設けたことによるO/W特性の劣化を抑制することができるとともに、S/Nを向上することができる。
【0040】
また、補助記録層の製膜工程において製膜Arガス圧を変えるだけで、実質的には磁気記録層と同様の材料で構成しているので、複数チャンバーを用いることなく、同一チャンバ内で磁気特性を制御できることを示し、生産工程の短縮化、簡易化に非常に有意義である。
【0041】
次に、図9及び図10を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明する。
この本発明の第2の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体は、上記の第1の実施の形態と全く同様の製造工程・製造条件で作製するものであり、上記の第1の実施の形態における補助記録層の膜厚を変化させたものであるので、垂直多層磁気記録媒体の断面構造の図示は省略する。
【0042】
図9参照
図9は、400kFCIにおける媒体ノイズNm 及び平均再生出力TAAの補助記録層膜厚依存性の説明図であり、媒体ノイズNm は5nm程度の膜厚において極小値を有し、補助記録層の膜厚の増加に伴って増加することが理解される。
一方、平均再生出力TAAは、補助記録層の膜厚の増加に伴って増加し、飽和する傾向が見られる。
【0043】
図10参照
図10は、S/Nの補助記録層の膜厚依存性の説明図であり、図9に示したように、平均再生出力TAAは、補助記録層の膜厚の増加に伴って増加するものの、媒体ノイズNm も補助記録層の膜厚の増加に伴って増加するため、S/Nは補助記録層の膜厚の増加に伴って低下する傾向となる。
したがって、補助記録層の膜厚t1 の最適値としては、磁気記録層の膜厚をt2 とした場合、
t2 ≧t1
の関係があると判断され、裏打層を含めた全体の関係としては、裏打層の膜厚をt3 とした場合、
t3 >t2 ≧t1
とすれば良い。
【0044】
次に、図11を参照して、本発明の第3の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体を説明する。
図11参照
図11は、本発明の第3の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体の概略的断面図であり、実際にはガラス基板に対して対称的に磁性層が設けられるが、ここでは、一方の面側の製膜構造を示す。
上記の第1の実施の形態と同様に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、ガラス基板31上に裏打層32、中間層33、磁気記録層34、補助記録層35、及び、保護膜36を順次製膜したのち、潤滑剤層37を形成する。
この第3の実施の形態においては、裏打層32、中間層33、及び、保護膜36の構成・製造条件は上記の第1の実施の形態と全く同様である。
【0045】
しかし、磁気記録層34としては、製膜Arガス圧を、例えば、2.4Paとした圧力下で、厚さが、例えば、0.3nmのCoB膜と厚さが、例えば、1.0nmのPd膜とを交互に12層づつ製膜させた多層膜からなる人工格子膜とする。
なお、CoBの原子数比はCo:B=90:10とする。
【0046】
また、補助記録層35としては、製膜Arガス圧を、磁気記録層34と同じに2.4Paとし、厚さが、例えば、0.8nmのCoB膜と厚さが、例えば、0.8nmのPd膜とを交互に3層づつ製膜させた多層膜からなる人工格子膜とする。
なお、この場合、CoBの原子数比はCo:B=90:10とする。
【0047】
この本発明の第3の実施の形態においては、製膜Arガス圧を変えることなく、人工格子膜を構成するCoB膜とPd膜の層厚比を変化させることによって、補助記録層35の磁気特性を変化させたものである。
即ち、人工格子膜におけるCoB膜の膜厚、したがって、Co組成比を大きくすることによって、保持力Hc1を低下させるとともに、飽和磁化Ms1を増加させたものである。
【0048】
この本発明の第3の実施の形態における垂直多層磁気記録媒体は、O/Wの飽和特性に関しては、第1の比較媒体と比べて、立ち上がり書込電流Iw が0.2mA低くなり記録感度が向上し、また、O/W特性自体も6dB程度良好になっていることが確認された。
【0049】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明は各実施の形態に記載した構成及び条件に限られるものではなく、各種の変更が可能である。
例えば、上記の各実施の形態においては、記録層と裏打層の磁気的な分離を行う中間層として非磁性材料で且つその上に堆積させる記録層の配向性が良好なPdを用いているが、Pdに限られるものではなく、C,Siなどのメタロイド(半金属)を単体で、或いは、メタロイド元素を1種類含むPdBのような合金膜で用いても良い。
【0050】
また、上記の各実施の形態においては、裏打層をFeC/C/FeCの多層構造で構成しているが、Fe/C/Feで構成しても良く、或いは、FeC単層で構成しても良いものであり、さらには、FeTaC,CoZrTa,CoZr等を用いても良い。
【0051】
また、上記の各実施の形態においては、磁気記録層及び補助記録層に結晶粒径を小さくするためにBを添加しているが、Bの添加は必ずしも必要がないものである。
【0052】
また、上記の各実施の形態においては、磁気記録層及び補助記録層に用いる遷移金属元素としてCoのみを用いているが、Coに限られるものではなく、Feを用いても良いし、CoとFeとを混合して用いても良いものである。
【0053】
また、上記の第3の実施の形態においては、補助記録層のCoB層の膜厚を厚くすることで、磁気記録層に対して飽和磁化Ms の増加、保磁力Hc の低下を行ったが、添加するBを添加量を制御しても良いし、さらには、O(酸素)を添加して、即ち、酸化膜として各磁性層の磁気特性を変えても良いものである。
【0054】
ここで、再び、図1を参照して、改めて本発明の詳細な特徴を説明する。
再び、図1参照
(付記1) 基板側から順に面内軟磁性膜である裏打層2、前記裏打層2と磁気情報を記録する配向性を有する磁気記録層4とを磁気的に分離するとともに前記磁気記録層4の配向性を向上する中間層3、前記磁気記録層4、及び、記録磁界補助及び再生信号出力増加のために用いられる配向性を有する補助記録層5とを有する多層構成からなる垂直多層磁気記録媒体において、室温における裏打層2の飽和磁化Ms3、磁気記録層4の飽和磁化Ms2及び補助記録層5の飽和磁化Ms1の関係を、
Ms2<Ms1<Ms3
とし、垂直磁気異方性を正としたときに、室温における裏打層2の磁気異方性Ku3、磁気記録層4の磁気異方性Ku2及び補助記録層5の磁気異方性Ku1の関係を、
Ku2,Ku1>0,Ku3<0
とし、裏打層2の膜厚t3、磁気記録層4の膜厚t2及び補助記録層5の膜厚t1の関係を、
t3>t2≧t1
とし、室温における磁気記録層4の保磁力H c2 、補助記録層4の保磁力H c1 、及び、
裏打層2の保磁力H c3 との間の関係を、
H c3 <H c1 <H c2
としたことを特徴とする垂直多層磁気記録媒体。
(付記2) 上記磁気記録層4及び補助記録層5が、Coを含む多層膜、或いは、Coにメタロイド元素を1種類以上添加したCo合金層を含む多層膜またはCo酸化物層を含む多層膜のいずれかから構成されていることを特徴とする付記1に記載の垂直多層磁気記録媒体。
(付記3) 上記磁気記録層4及び上記補助記録層5をCoまたはFeの遷移金属の少なくとも一方を含む多層膜からなる人工格子で構成するとともに、前記磁気記録層4を構成する多層膜の磁性を含む層厚或いは遷移金属の含有量の少なくとも一方を、前記補助記録層5を構成する多層膜の磁性を含む層厚或いは遷移金属の含有量の少なくとも一方より小としたことを特徴とする付記1に記載の垂直多層磁気記録媒体。
(付記4) 付記1乃至3のいずれか1に記載の垂直多層磁気記録媒体を製造する製造方法において、上記磁気記録層4及び補助記録層5の磁気異方性Ku2,Ku1を、製膜工程における製膜ガス圧により制御することを特徴とする垂直多層磁気記録媒体の製造方法。 (付記5) 付記1乃至3のいずれか1に記載の垂直多層磁気記録媒体を用いた記録・再生方法において、記録過程においては、上記補助記録層5の磁気情報が、磁気交換結合により上記磁気記録層4に転写され、再生過程においては、前記磁気記録層4の磁気情報が磁気交換結合により前記補助記録層5に転写されることを特徴とする垂直多層磁気記録媒体を用いた記録・再生方法。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、裏打層の影響を相殺するために、磁気記録層より高飽和磁化且つ低保磁力の補助記録層を設けているので、優れたオーバーライト特性と高いS/Nを有する垂直磁気記録媒体を実現することができ、特に、製膜ガス圧を制御するだけで磁気特性を変化することができるので、製造工程を簡素化することができ、それによって、高密度垂直磁気記録媒体を用いた高密度磁気記録装置の実用化及び低コスト化に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体の構成説明図である。
【図3】多層膜からなる磁性層の保磁力Hc の製膜Arガス圧依存性の説明図である。
【図4】多層膜からなる磁性層のKerr回転角θk の製膜Arガス圧依存性の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の記録原理の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体のO/W特性の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の再生原理の説明図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体の再生信号出力の記録周波数依存性の説明図である。
【図9】媒体ノイズNm 及び平均再生出力TAAの補助記録層膜厚依存性の説明図である。
【図10】S/Nの補助記録層膜厚依存性の説明図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の垂直多層磁気記録媒体の概略的断面図である。
【符号の説明】
1 非磁性基板
2 裏打層
3 中間層
4 磁気記録層
5 補助記録層
11 ガラス基板
12 裏打層
13 中間層
14 磁気記録層
15 補助記録層
16 保護膜
17 潤滑剤層
21 記録ヘッド
22 再生ヘッド
31 ガラス基板
32 裏打層
33 中間層
34 磁気記録層
35 補助記録層
36 保護膜
37 潤滑剤層
Claims (3)
- 基板側から順に面内軟磁性膜である裏打層、前記裏打層と磁気情報を記録する配向性を有する磁気記録層とを磁気的に分離するとともに前記磁気記録層の配向性を向上する中間層、前記磁気記録層、及び、記録磁界補助及び再生信号出力増加のために用いられる配向性を有する補助記録層とを有する多層構成からなる垂直多層磁気記録媒体において、室温における前記裏打層の飽和磁化Ms3、前記磁気記録層の飽和磁化Ms2及び前記補助記録層の飽和磁化Ms1の関係を、
Ms2<Ms1<Ms3
とし、垂直磁気異方性を正としたときに、室温における前記裏打層の磁気異方性Ku3、前記磁気記録層の磁気異方性Ku2及び前記補助記録層の磁気異方性Ku1の関係を、
Ku2,Ku1>0,Ku3<0
とし、前記裏打層の膜厚t3、前記磁気記録層の膜厚t2及び前記補助記録層の膜厚t1の関係を、
t3>t2≧t1
とし、室温における前記磁気記録層の保磁力H c2 、前記補助記録層の保磁力H c1 、及び、
前記裏打層の保磁力H c3 との間の関係を、
H c3 <H c1 <H c2
としたことを特徴とする垂直多層磁気記録媒体。 - 上記磁気記録層及び補助記録層が、Coを含む多層膜、或いは、Coにメタロイド元素を1種類以上添加したCo合金層を含む多層膜またはCo酸化物層を含む多層膜のいずれかから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の垂直多層磁気記録媒体。
- 上記磁気記録層及び上記補助記録層をCoまたはFeの遷移金属の少なくとも一方を含む多層膜からなる人工格子で構成するとともに、前記磁気記録層を構成する多層膜の磁性を含む層厚或いは遷移金属の含有量の少なくとも一方を、前記補助記録層を構成する多層膜の磁性を含む層厚或いは遷移金属の含有量の少なくとも一方より小としたことを特徴とする請求項1に記載の垂直多層磁気記録媒体。
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