JPH08115516A - 磁気記録媒体及び磁気記録装置 - Google Patents

磁気記録媒体及び磁気記録装置

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JPH08115516A
JPH08115516A JP25065794A JP25065794A JPH08115516A JP H08115516 A JPH08115516 A JP H08115516A JP 25065794 A JP25065794 A JP 25065794A JP 25065794 A JP25065794 A JP 25065794A JP H08115516 A JPH08115516 A JP H08115516A
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recording
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JP25065794A
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English (en)
Inventor
Yoshifumi Matsuda
好文 松田
Yuzuru Hosoe
譲 細江
Shinan Yaku
四男 屋久
Yuzuru Inagaki
譲 稲垣
Shioji Fujita
塩地 藤田
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 1平方インチ当たり1ギガビット以上の高密
度な情報の記録再生が可能で信頼性の高い磁気記録媒体
及び磁気記録装置を提供する。 【構成】 磁気記録媒体を非磁性基板上に少なくとも1
層の非磁性下地膜を介して形成された少なくとも1層の
磁性膜からなる情報記録層で構成し、この情報記録層の
膜厚残留磁束密度積Br×tを10〜120ガウス・ミ
クロンとし、磁性膜をCo、CrおよびTaを主成分と
して含む合金とし、磁性膜中のTa/Co原子濃度比を
0.069〜0.12とする。この磁気記録媒体と組み
合わせる磁気ヘッドの再生部をシールド間隔が0.35
ミクロン以下の磁気抵抗効果型磁気ヘッドで構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンピュータの補助記
録装置等の磁気記録装置およびこれに用いる磁気記録媒
体に係り、特に、1平方インチ当たり1ギガビット以上
の高い記録密度を有する磁気記録装置及びこの高い記録
密度を実現するのに好適な薄膜磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年情報化社会の進行により、日常的に
扱う情報量は増加の一途を辿っている。これに伴って、
磁気記録装置に対する高記録密度・大記憶容量化の要求
が強くなっている。磁気ディスク装置を高記録密度化し
ていった場合、記録ビットの当たりの媒体面積が小さく
なるため、再生出力が低下し、再生が困難になる。この
ような問題を解決するため、従来は1つの電磁誘導型磁
気ヘッドで記録と再生を行なっていたのに対し、記録と
再生を別の磁気ヘッドで行ない、再生用の磁気ヘッドと
して特開昭51-44917号公報(文献1)に記載さ
れているような磁気抵抗効果を利用した磁気ヘッドを用
いることが検討されている。この磁気抵抗効果型再生ヘ
ッドは高い感度を持つため、高記録密度化に適してい
る。磁気抵抗効果型ヘッドでは、媒体からの漏洩磁界に
より、磁気抵抗層の磁化の方向が電流方向に対して相対
的に変化することによって生じる抵抗変化を利用して出
力を得る。米国特許第3864751号明細書(文献
2)に記載されているように、磁界に対する応答の直線
性を改善する目的で、上記磁気抵抗層の上に非磁性のス
ペーサ層を介して軟磁性膜バイアス層が形成されること
があるが、磁気抵抗変化を誘起するのは、基本的には、
単層の軟磁性層(磁気抵抗層)であり、抵抗変化率の大
きさは、通常、数%程度である。これに対して、近年、
フィジカル レビュー レターズ、第61巻(1988
年)の第2472頁から第2475頁(Phys.Re
v.Lett.,vol.61,pp.2472−24
75 (1988))(文献3)に記載されているよう
に、複数の磁性層を非磁性層を介して積層したタイプの
磁性膜で、最大数十%にも達する非常に大きな磁気抵抗
変化が報告されている。このタイプの磁性薄膜では、積
層された各磁性層の磁化の方向が必ずしも一致しておら
ず、その相対的な方向が外部磁界により変化することに
よって、大きな抵抗変化が生じる。このようなタイプの
多層磁性薄膜に生じる大きな磁気抵抗効果は、巨大磁気
抵抗効果あるいはスピン・バルブ効果と呼ばれており、
現在これを利用して、さらに高い感度を持つ磁気抵抗効
果型再生ヘッドの開発が進められている。
【0003】磁気ディスク装置に用いられる記録媒体と
しては、当初、酸化物磁性体の粉末を基板上に塗布した
塗布型媒体が用いられていたが、近年、金属磁性体の薄
膜を基板上にスパッタ蒸着した薄膜媒体が開発されてい
る。この薄膜媒体は、例えば特開昭58−7806号公
報(文献4)に示されているように、塗布型の媒体に比
べて磁気記録層に含まれる磁性体の密度が高いため、高
密度の記録再生に適している。一般に、薄膜媒体では、
Coを主成分としたCo基合金系磁性薄膜を記録層とし
ている。より高密度な面内磁気記録を実現するために
は、ビット境界の磁荷からの反磁界に打ち勝って磁化を
記録方向に保持しておくために、保磁力を高くすると同
時に、膜厚残留磁束密度積(膜厚×残留磁束密度)を小
さくして反磁界を小さくする必要がある。膜圧残留磁束
密度積に関しては、例えば、アイ・イー・イー・イー
トランザクション オン マグネティックス,29巻
(1993年)の第314頁(IEEE Trans.
on Magn.,Vol,29(1993)p.31
4)(文献5)や、アイ・イー・イー・イー トランザ
クション オン マグネティックス,28巻(1992
年)の第3078頁から3083頁(IEEE Tra
ns.on Magn.,Vol.28,PP3078
−3083)(文献6)に示されているように、1平方
インチ当たり10ギガビットの面記録密度を実現するた
めに磁気記録媒体として必要とされる特性について机上
検討している。ここでは、膜厚残留磁束密度積を44ガ
ウス・ミクロン以上125ガウス・ミクロンの範囲で保
磁力2500エルステッド以上の磁気記録媒体が実現で
きた場合を仮定して議論している。しかし、ここではそ
の磁気記録媒体を実現するには今後の革新的な改良が必
要であるとされ、実際の媒体の実現手段については述べ
られていない。
【0004】従来、Co−Cr−Ta系磁性膜よりもC
o−Cr−Pt系あるいはCo−Ni−Pt系等のPt
を含んだCo基合金磁性膜を用いた磁気媒体の方がより
高い保磁力が得られることが知られている。例えば、ア
イ・イー・イー・イー トランザクション オン マグ
ネティックス,26巻(1990年)の第2271頁
(IEEE Trans.on Magn.,Vol.
26,p.2271(1990))(文献7)に示され
ているように、Co−Cr−Pt磁性膜を用いたること
により、2kOe以上の保磁力が得られている。一方、
従来のCo−Cr−Ta系磁性膜は、Ptを含んだCo
基合金磁性膜に比べて、保磁力は低いが媒体に起因する
ノイズ(媒体ノイズ)が低いという特徴を持っている。
第16回日本応用磁気学会学術講演概要集(1992
年)の第383頁(文献8)、あるいはアイ・イー・イ
ー・イー トランザクション オン マグネティック
ス、29巻(1993年)の第3733頁(IEEE
Trans.on Magn.,Vol.29(199
3)p.3733)(文献9)等に記載されているよう
に、Ta濃度は2at%〜4at%程度が最適とされて
いる。
【0005】一方、特開昭63−146219号公報
(文献10)では、薄膜媒体の磁気記録層を複数の磁性
層で構成し、各磁性層と磁性層の間に非磁性中間層を挿
入することにより、各磁性層間の磁気的結合を低減して
媒体に起因するノイズを低減した多層磁性層磁気記録媒
体が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、文献1
〜3等により磁気記録の高記録密度化に適した高感度な
磁気抵抗効果型の再生ヘッドが開発されている。この磁
気抵抗効果型の磁気ヘッドは再生感度が高く、かつ、ヘ
ッドの抵抗が低いため発生する熱雑音が小さい。このた
め、従来、電磁誘導型磁気ヘッドから発生する大きなノ
イズに隠れていた媒体ノイズが、装置全体のノイズに対
して大きな割合を占めるようになる。従って、磁気抵抗
効果型の磁気ヘッドを用いて高記録密度化を実現するた
めには、媒体ノイズを低減する必要がある。媒体ノイズ
を低減する方法としては、上記文献10等に記載されて
いるように非磁性中間層を層間に挿入した複数の磁性層
から成る多層磁性層磁気記録媒体が提案されている。従
って、磁気抵抗効果型再生ヘッドと多層磁性層磁気記録
媒体を組み合わせることにより磁気ディスク装置の高密
度化が期待できる。
【0007】しかし、実際に、このような組み合わせの
磁気ディスク装置を試作してみると、磁性層数が1層の
従来の磁気記録媒体(単層磁性層磁気記録媒体)を用い
た場合に比べて、高記録密度での再生出力がディスク面
内で不均一で、出力の低下が大きく、十分な信号ノイズ
比(S/N)が得られなかった。このように、感度の高
い再生ヘッドとノイズの低い磁気記録媒体が、個別に
は、開発されているが、これらをどのように組み合わせ
ることにより高い記録密度を持つ磁気ディスク装置を実
現できるかについては、十分に検討されていなかった。
【0008】さらに、上記文献5及び文献6に記載され
ているように、記録密度を高めるためには磁気記録媒体
の保磁力を大きくすると同時に、膜圧残留磁束密度積を
小さくして反磁界を小さくすることが必要であるが、こ
れらの文献5,6では、Hcが2400エルステッド以
上で膜厚残留磁束密度積が120ガウス・ミクロン以下
のものとしてSmCo系の磁性材料を示唆しているだけ
であって、その他具体的にどのような原子比の合金磁性
膜を有する磁気記録媒体により、そのような高い保磁力
と小さな膜厚残留磁束密度積とを得ることができるかに
ついては何も示されていない。なお、上記文献7では、
Co−Cr系磁気記録媒体において磁性膜中にPtを加
えることにより保磁力を高めることができることが示さ
れているが、膜厚残留磁束密度積の値については何も示
されておらず、またPtは希少で高価であるという問題
がある。
【0009】一方、上記文献8及び文献9では、Co−
Cr−Ta系合金磁性膜が、2at%〜4at%のよう
な比較的低いTa濃度において、Ptを含んだCo基合
金磁性膜よりも保磁力は低いが媒体ノイズが低い特徴を
もっていることが示されているが、Ta濃度をもつと高
めることやそのようにしたときの保磁力等の特性につい
ては何も考察されていない。発明者等は、色々と研究し
た結果、Co−Cr−Ta系合金磁性膜は、比較的高い
Ta濃度において高い保磁力を有すると同時に、小さい
膜厚残留磁束密度積を有することを見出したものであ
る。
【0010】従って、本発明の第1の目的は、上記の従
来技術の問題点を解決し、高い保磁力及び小さい膜厚残
留磁束密度積を有することにより、1平方インチ当たり
1ギガビット以上の高密度な情報の記録再生が可能で信
頼性の高いCo−Cr−Ta系合金磁性膜を有する磁気
記録媒体を提供することにある。本発明の第2の目的
は、上記のような特性を有するCo−Cr−Ta系合金
磁気記録媒体と特別の再生ヘッドと組み合わせることに
より、高感度で高S/N再生特性を持ちかつ高記録密度
の記録再生特性の得られる磁気記録装置を提供すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1) 上記第1の目的を達成するため、本発明は、非
磁性基板上に少なくとも1層の非磁性下地膜を介して形
成された情報記録層を有し、前記情報記録層が少なくと
も1層の磁性膜から構成される磁気記録媒体において、
前記磁気記録媒体の磁性膜の厚さの合計tと、記録時に
おける前記磁気記録媒体に対する磁気ヘッドの相対的な
走行方向に磁界を印加して測定した前記磁気記録媒体の
残留磁束密度Brとの積(膜厚残留磁束密度積)Br×
tを10ガウス・ミクロン以上、120ガウス・ミクロ
ン以下とし、かつ、前記磁性膜を実質的にCo、Crお
よびTaからなる3元合金とし、前記磁性膜中のCoの
原子濃度に対するTaの原子濃度の比を0.069以
上、0.12以下としたものである。
【0012】(2) 前記磁気記録媒体の磁性膜中のC
oの原子濃度に対するCrの原子濃度の比を0.17以
上、0.33以下とすることにより、高記録密度での出
力を高くできる。
【0013】(3) 前記第1の目的は、磁気記録媒体
と、これを記録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生
部から成る磁気ヘッドと、上記磁気ヘッドを上記磁気記
録媒体に対して相対運動させる手段と、上記磁気ヘッド
への信号入力と該磁気ヘッドからの出力信号再生を行う
ための記録再生信号処理手段を有する磁気記録装置にお
いて、前記磁気ヘッドの再生部を磁気抵抗効果型磁気ヘ
ッドで構成し、かつ、前記磁気記録媒体を非磁性基板上
に少なくとも1層の非磁性下地膜を介して形成された少
なくとも1層の磁性膜からなる情報記録層で構成し、さ
らに、上記磁性膜の厚さの合計tと、記録時における該
磁気記録媒体に対する上記磁気ヘッドの相対的な走行方
向に磁界を印加して測定した残留磁束密度Brの積(膜
厚残留磁束密度積)Br×tを10ガウス・ミクロン以
上、120ガウス・ミクロン以下とし、該磁性膜を実質
的にCo、CrおよびTaからなる3元合金とし、Co
の原子濃度に対するTaの原子濃度の比を0.069以
上、0.12以下とすることによって達成される。
【0014】
【作用】上記構成に基づく作用を説明するる本発明者等
は、高記録密度化に適した再生部に磁気抵抗センサを用
いた磁気ヘッド(磁気抵抗効果型ヘッド)と低ノイズ化
に適した多層磁性層磁気記録媒体を組み合わせて、磁気
ディスク装置を試作し、1平方インチ当たり1ギガビッ
トの記録密度を実現しようとしたが、十分な性能を得る
ことができなかった。そこで、その原因を詳細に解析し
た結果、多層磁性層磁気記録媒体では、従来の単層磁性
層磁気記録媒体に比べて、膜厚残留密度積の減少に伴う
保磁力の低下が急激であり、1平方インチ当たり1ギガ
ビットの記録密度で必要な120ガウス・ミクロン以下
の膜厚残留密度積の領域では、十分な保磁力が得られて
いなかった。このため、高線記録密度領域で出力が低下
し、十分な性能が得られないことが明かとなった。
【0015】そこで、磁気ヘッドの構造、磁気記録媒体
の層構成、磁性膜と下地膜の組成と膜厚、各層の成膜条
件等を変えて1平方インチ当たり1ギガビットの記録密
度が実現できる条件を検討した。その結果、シールド間
隔を0.35ミクロン以下とした磁気抵抗効果型ヘッド
を用い、磁気記録媒体の磁性膜をCo−Cr−Ta系合
金とし、Coに対するTaの組成比を一定の範囲に設定
することにより、上記の記録密度が実現できることが明
かとなった。
【0016】前述のように、磁性膜をCo−Cr−Ta
系合金で構成した磁気記録媒体は従来から知られている
が、Ta濃度が2at%〜4at%程度と低く、媒体ノ
イズ特性は良くても、保磁力が低く高記録密度を実現す
ることはできなかった。本発明者によれば、Ta/Co
原子濃度比を高いTa濃度の0.069以上0.12以
下とすることにより、120ガウス・ミクロン以下のよ
うな低い膜厚残留磁束密度積でも2000エルステッド
以上好適には2400エルステッド以上のような極めて
高い保磁力が得られ、高記録密度に適するCo−Cr−
Ta系磁気記録媒体が得られることが見出されたもので
ある。
【0017】図1に、単層のCo−Cr−Ta系合金磁
性膜において、記録時における該磁気記録媒体に対する
磁気ヘッドの相対的な走行方向(すなわち、ディスク円
周方向)に磁界を印加して測定した(以下、特に断りの
ないかぎり媒体の磁気特性はこの方向に磁界を印加して
測定したものとする)該磁気記録媒体の残留磁束密度B
rと磁性膜の厚さのtの積(膜厚残留磁束密度積)Br
×tを180,120,60,10ガウス・ミクロンと
した場合の、Coの原子濃度に対するTaの原子濃度の
比(以下、Ta/Co原子濃度比と略す)に対する保磁
力の変化を示す。ここで、Coの原子濃度に対するCr
の原子濃度の比(以下、Cr/Co原子濃度比と略す)
は約0.22で一定とし、Crを下地膜として用いた。
成膜装置としては、基板を一定時間間隔で一枚ずつ順次
送りながら、媒体の各膜をそれぞれ別々の成膜室で形成
する枚葉式スパッタ装置を用い、dcマグネトロンスパ
ッタ法により各膜を形成した。基板としては表面にディ
スク円周方向の微細な溝(テクスチャ)を設けたNi−
PメッキAl合金の3.5インチ磁気ディスク用基板を
用いた。その上に、下地膜、磁性膜、C保護膜を順次形
成した、下地膜の厚さは50nm、C保護膜の厚さは1
0nmとし、磁性膜の厚さを10〜60nmの範囲で調
整して、Br×tが上記の値になるようにした。
【0018】この図に見られるように、各Br×tの値
について、保磁力はTa/Co原子濃度比に対して極大
を持つ。Br×tの値が小さくなるほど、保磁力が極大
となるTa/Co原子濃度比は大きくなっている。ま
た、得られる保磁力の値は、Ta/Co原子濃度比を大
きくすることにより、従来、Ta/Co原子濃度比が小
さな領域で得られていた値よりも大きくなる。従って、
Br×tの値を小さくしなければならない高密度記録領
域では、Ta/Co原子濃度比を大きな磁性膜組成を採
用することによって、良好な記録再生特性が得られるも
のと期待される。従来、Co−Cr−Ta系合金磁性膜
において、最適とされているTa濃度が2at%〜4a
t%程度の組成では、Ta/Co原子濃度比は0.02
〜0.05の範囲にあり、上記のように、Ta/Co原
子濃度比を大きくすることによって、Br×tの値が1
20ガウス・ミクロン以下の小さな領域における保磁力
が、従来のBr×tが大きな領域で得られていた値より
も大きくなることは、これまでに報告されておらず、今
回の本発明者等の検討で初めて明かになったものであ
る。
【0019】図2に、Ta/Co原子濃度比を約0.0
8で一定とした場合の、Cr/Co原子濃度比に対する
保磁力の変化を示す。ここで、Br×tが80ガウス・
ミクロンとなるように磁性膜厚を調整した。この図に見
るように、Cr/Co原子濃度比を0.15から倍の
0.30まで変化させても、保磁力はほとんど変化しな
い。
【0020】図3に、Br×tの値が120ガウス・ミ
クロン以下の領域で得られる最大保磁力のTa/Co原
子濃度比依存性を示す。ここで、Cr/Co原子濃度比
は約0.22で一定とした。図に見るように、Ta/C
o原子濃度比の大きな領域で高い保磁力が得られてい
る。1平方インチ当たり1ギガビット以上の記録密度を
実現するためには、約2.4キロエルステッド以上の保
磁力が必要と考えられ、Ta/Co原子濃度比を0.0
69以上とすることにより、この要求を実現できる。
【0021】図4に、図3に示す最大保磁力が得られた
磁気記録媒体の媒体S/NとTa/Co原子濃度比の関
係を示す。この媒体S/Nの評価では、記録用の電磁誘
導型薄膜ヘッドと再生用の磁気抵抗効果型ヘッド(シー
ルド間隔0.35ミクロン)を複合した磁気ヘッドを用
い、ヘッド浮上量40nm、線記録密度170kFCI(Flux
Changas/Inch)、トラック密度6.7kTPI(Tracks/In
ch)の条件で評価した。この図に見るように、Ta/C
o原子濃度比の増大と共に媒体S/Nが増大し、Ta/
Co原子濃度比が0.069以上で大きな媒体S/Nが
得られている。Ta/Co原子濃度比が0.12よりも
大きくなると、逆に媒体S/Nが低下する。これは、媒
体の保磁力角型比が小さくなり、高記録密度領域での出
力が低下するためである。図4及び図3の結果から、T
a/Co原子濃度比は0.069〜0.12の範囲にあ
ることが望ましい。Ta/Co原子濃度比が0.069
よりも小さいと、保磁力が2.4キロエルステッド以下
になってしまい、1平方インチ当たり1ギガビット以上
の記録再生が困難である。Ta/Co原子濃度比が0.
12よりも大きいと、保磁力角型比が小さくなり、高記
録密度領域での出力が低下する。図2に見られるよう
に、保磁力はCr/Co原子濃度比が0.15〜0.3
5の範囲でほぼ一定である。記録再生特性の観点から
は、Cr/Co原子濃度比が0.17〜0.33の範囲
にあることが望ましい。Cr/Co原子濃度比が0.1
7よりも小さくなると、媒体ノイズが大きくなる。ま
た、Cr/Co原子濃度比が0.33よりも大きくなる
と、角型比が低下し、高記録密度領域での出力が低下す
る。
【0022】図5に、図3のプロットにおいて保磁力が
最大となる膜厚残留磁束密度積のTa/Co原子濃度比
依存性を示す。保磁力が最大となる膜厚残留磁束密度積
は、Ta/Co原子濃度比の増大に伴って減少してい
る。従来の、磁気抵抗が層実質的に単層である磁気抵抗
効果型ヘッドを用いた場合、膜厚残留磁束密度積Br×
tが60ガウス・ミクロン以下の領域では、出力が小さ
くなるため、ヘッド・アンプ系のノイズに制限されて十
分な装置S/Nを確保することができない。このように
Br×tの小さな媒体に対しては、再生磁気ヘッドとし
て、互いの磁化方向が外部磁界によって相対的に変化す
ることによって大きな抵抗変化を生じる複数の導電性磁
性層と該導電性磁性層の間に配置された導電性非磁性層
を含む所謂スピンバルブ効果あるいは巨大磁気抵抗効果
を利用した磁気ヘッドを用いることによって高い装置S
/Nを確保することが可能である。一般に、感度の高い
ヘッド程、小さな磁界で出力が飽和する傾向がある。従
って、上記のBr×tが小さな媒体は、スピンバルブ効
果あるいは巨大磁気抵抗効果を利用した磁気ヘッドと組
み合わせるのに適しており、1平方インチ当たり2ギガ
ビット以上の記録再生が可能となる。このときのTa/
Co原子濃度比の好適な範囲は0.08〜0.12であ
る。Ta/Co原子濃度比が0.08よりも小さいと、
1平方インチ当たり2ギガビット以上の記録再生に必要
な2.4キロエルステッド以上の保磁力が得られるBr
×tが60ガウス・ミクロンよりも大きくなってしま
い、スピンバルブ効果あるいは巨大磁気抵抗効果を利用
した磁気ヘッドによる再生に適さない。Ta/Co原子
濃度比が0.12よりも大きいと、保磁力角型比が小さ
くなり、高記録密度領域での出力が低下する。また、B
r×tが10ガウス・ミクロンよりも小さくなると、出
力が低下するので好ましくない。
【0023】上記の検討では、磁気記録媒体の磁性膜と
して、実質的にCo,CrおよびTaからなる3元合金
を用いた。磁性膜の不純物を分析した結果、Ar、酸素
が微量検出されたが、これらのスパッタ成膜中に不可避
的に取り込まれる不純物元素は、上記の特性に大きな影
響を与えていないと考えられる。また、磁気ディスク用
磁気記録媒体に一般的に用いられている、Ni,Zr,
Pt等の元素を添加した場合にも、添加元素の原子濃度
の和がCo原子濃度の4%程度以下であれば上記のTa
/Co原子濃度比に対する特性変化は、本質的には変わ
らない。また、上記の検討では、下地膜にCrを用いた
が、Crの変わりに、Ti,V,Mo,W等とCrの合
金を用いても良い。
【0024】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面により説明す
る。
【0025】《実施例1》まず、本発明の一実施例(実
施例1)を図6,図7,図8および図9により説明す
る。本実施例の例えば磁気ディスク装置のような磁気記
録装置の平面模式図および断面模式図を図6(a)およ
び図6(b)に示す。この装置は、磁気記録媒体(磁気
ディスク)61と、これを回転駆動する駆動部62と、
磁気ヘッド63およびその駆動手段64と、上記磁気ヘ
ッドの記録再生信号処理手段65を有して成る周知の構
成を持ち磁気ヘッドを高精度に位置決めする機能を有す
る磁気記録装置である。
【0026】この磁気記録装置に用いた磁気ヘッドの構
造を図7に模式的に示す。この磁気ヘッドは基体78の
上に形成された記録用の電磁誘導型磁気ヘッドと再生用
の磁気抵抗効果型ヘッドを組み合わせた録再分離型ヘッ
ドである。磁気抵抗センサ71を下部シールド層72と
上部シールド層73で挟んだ部分が再生ヘッドとして働
き、コイル74を挟む下部記録磁極75と上部記録磁極
76が記録ヘッドとして働く。磁気抵抗センサ71から
の出力信号は電極パタン77を介して外部に取り出す。
【0027】磁気抵抗センサ71の断面構造を図8に示
す。この磁気抵抗センサは、シールド層と磁気抵抗セン
サの間のギャップ層81の上に形成された強磁性材料の
薄膜磁気抵抗性導電層83と、この薄膜磁気抵抗性導電
層を単一磁区とするための反強磁性磁区制御層82と、
上記薄膜磁気抵抗性導電層の感磁部84における薄膜磁
気抵抗性導電層と反強磁性磁区制御層の間の交換相互作
用を絶ち切るための非磁性層85と、感磁部に対するバ
イアス磁界を発生できる手段として軟磁性層もしくは永
久磁石膜バイアス層87と、軟磁性層もしくは永久磁石
膜バイアス層と薄膜磁気抵抗性導電層の間の電流分流比
を調節するための高抵抗層86を含む。以下に、このヘ
ッドの作製方法を示す。
【0028】酸化Al・炭化Tiを主成分とする焼結体
をスライダ用の基体とした。上下シールド層と記録磁極
にはスパッタ法で形成したNi−Fe合金膜を用いた。
上下シールド層の厚さは1μm、記録磁極の厚さは3μ
mとした。シールド層と磁気抵抗センサおよび記録磁極
の間には、スパッタ法で酸化Alのギャップ層を形成し
た。上下の各シールド層と磁気抵抗センサの間のギャッ
プ層厚さは略150nm、シールド層と記録磁極の間の
ギャップ層厚(再生ヘッドと記録ヘッドの間隔)は約3
μmとした。コイルには厚さ3μmのCuを用いた。ま
た、磁気抵抗センサの薄膜磁気抵抗性導電層として厚さ
30nmのNi−Fe合金層、反強磁性磁区制御層とし
て厚さ35nmのNiO層、薄膜磁気抵抗性導電層と反
強磁性磁区制御層の間の交換相互作用を絶ち切るための
非磁性層として厚さ2nmのNb層、軟磁性バイアス層
として厚さ40nmのNi−Fe−Nb合金軟磁性層、
さらに、電極パタンとして厚さ100nmのCu薄膜を
スパッタ法により形成した。
【0029】また、前記磁気記録媒体としては、図9に
模式的に示すような断面構造を持つ単層磁性層磁気記録
媒体を用いた。この磁気記録媒体はAl−Mg合金、化
学強化ガラス、Ti、Si、Si−C、カーボン、結晶
化ガラスあるいはセラミクス等からなる基板91、Al
−Mg合金を基板として用いた場合に、その両面に形成
されたNi−P、Ni−W−P等からなる非磁性メッキ
層92、Cr、Mo、W、またはこれらのいずれかを主
な成分とする合金からなる下地層93、Co−Cr−T
a合金からなる磁性層94、カーボン、ボロン、炭化シ
リコン、窒化シリコン、二酸化シリコン、タングステン
・カーバイト、(W−Mo)−C、(W−Zr)−C等
からなる保護層95、および、パーフロルオロアルキル
ポリエーテル等の潤滑層96を含む。以下に、本実施例
の磁気記録媒体の作製方法を示す。
【0030】外径95mm、内径25mm、厚さ0.8
mmのAl−4wt%Mg(原子記号の前に付した数字
は当該素材の含有量を示す)からなるディスク基板の両
面にNi−12wt%Pからなるメッキ層を厚さが13
μmとなるよう形成した。この非磁性基板の表面を、ラ
ッピングマシンを用いて表面中心線平均粗さRaが2n
mとなるまで平滑に研磨し、洗浄、さらに乾燥した。そ
の後、テープポリッシングマシン(例えば、特開昭62
−262227号公報(文献11)に記載)を用い、砥
粒の存在下で研磨テープをコンタクトロールを通して、
ディスク基板51を回転させながらディスク面の両側に
押しつけることにより、ディスク基板表面に略円周方向
のテクスチャを形成した。さらに、基板に付着した研磨
剤等の汚れを洗浄・除去して乾燥した。このように形成
されたディスク基板を枚葉式dcマグネトロンスパッタ
装置の基板仕込み室に装填して真空に引いた後、当該基
板を加熱室、非磁性下地膜形成室、磁性膜形成室、非磁
性保護膜形成室および取り出し室の順に主排気槽を介し
ながら搬送し、それぞれの室でそれぞれの膜を形成し
た。先ず、当該加熱室では270℃に加熱し、5mTo
rrのアルゴン圧のもとでCrターゲットに4kWの電
力を加えて、30nmのCr下地膜を形成した。この下
地膜の上に、5mTorrのアルゴン圧のもとでターゲ
ットに3kWの電力を加えてCo−16at%Cr−6
at%Ta(Ta/Co原子濃度比=0.077、Cr
/Co原子濃度比=0.205)から成る膜厚25nm
の金属磁性膜を積層した。さらに、この磁性膜の上にア
ルゴン圧6mTorrのもとでターゲットに2kWの電
力を加えて膜厚10nmのカーボン保護膜を形成した。
そして、当該保護膜上に吸着性のパーフルオロアルキル
ポリエーテルの潤滑層を形成した。こうして形成された
磁気記録媒体をX線回折により分析した結果、Cr下地
層では(100)あるいは(110)結晶面が基板と略
並行となるように結晶が配向成長し、磁性層は(11
0)面が基板と略並行となるよう配向成長していた。こ
の磁気記録媒体のディスク円周方向に磁界を印加して測
定した保磁力Hcは2510エルステッド、膜厚残留磁
束密度積Br×tは82ガウス・ミクロンであった。
【0031】本実施例の磁気記録装置の磁気ヘッドとし
て、記録ギャップ長0.4μm、トラック幅3.0μ
m、巻線数30ターンの薄膜型ヘッドと、シールド間隔
0.3μm、トラック幅2.6μmの磁気抵抗効果型ヘ
ッドを組み合わせたヘッドを用い、ヘッド浮上量40n
m、線記録密度151kBPI、トラック密度6.7k
TPIの条件で記録再生特性を評価したところ、1.6
の媒体S/Nが得られた。また、磁気ヘッドの出力信号
に最尤復号による信号処理を施すことにより、1平方イ
ンチ当たり1ギガビットの情報を10のマイナス8乗の
ビットエラーレートで記録再生することができた。
【0032】《実施例2》実施例1において、磁性膜作
製時に予め基板にマイナス200Vの負のバイアス電圧
を印加した以外は、実施例1と同様の作製方法で磁気デ
ィスクを形成した。この磁気記録媒体のディスク円周方
向に磁界を印加して測定した保磁力Hcは2720エル
ステッド、膜厚残留磁束密度積Br×tは83ガウス・
ミクロンであった。
【0033】実施例1と同様にして記録再生特性を評価
したところ、1.7の媒体S/Nが得られた。また、磁
気ヘッドの出力信号に最尤復号による信号処理を施すこ
とにより、1平方インチ当たり1平方インチ当たり1ギ
ガビットの情報を10のマイナス8乗のビットエラーレ
ートで記録再生することができた。
【0034】《実施例3》実施例1と同様な構成の磁気
記録媒体において、金属磁性膜として表1に示すような
組成の磁性合金膜を用いて実施例1と同様な方法で試料
番号1〜9、比較例1、比較例2、および比較例3の磁
気ディスクを形成した。これらの磁気ディスクの磁気特
性と実施例1と同様にして評価した記録再生特性を表1
に示す。Ta/Co原子濃度比が0.069〜0.12
の範囲にある試料番号1〜9の保磁力は比較例に比べ保
磁力が700エルステッド程度以上大きく、良好な記録
再生特性が得られている。なお、表1中「D50」は出
力半減記録密度を表す。
【0035】
【表1】
【0036】表1の試料番号1〜9の磁気ディスクを用
いて、実施例1と同様の磁気記録装置を構成することに
よって、1平方インチ当たり1ギガビットの情報を10
のマイナス8乗のビットエラーレートで記録再生するこ
とができた。
【0037】《実施例4》実施例1と同様の構成を持つ
磁気記録装置において、磁気ヘッドを図10に示すよう
な構造を持つ録再分離型磁気ヘッドで構成した。この磁
気ヘッドは基本的には図7に示した実施例1の録再分離
型磁気ヘッドと同じ構造を持つが、図7における上部シ
ールド層73と下部記録磁極75が1つのシールド記録
磁極兼用層101で置き換えられている点が異なってい
る。このシールド記録磁極兼用層は、その名が示すとお
り、上部シールド層と下部記録磁極の役割を1つの軟磁
性層で行なわせるものであり、本実施例では、スパッタ
法で形成したNi−Fe合金膜を用いた。このような構
造のヘッドを用いることにより、特に、トラック密度が
7kTPI以上にしたときのビットエラーレート増大が
小さく抑えられた。これは、記録ヘッドと再生ヘッドの
距離が小さくなり、ロータリー・アクチュエータを用い
た場合のヨー角の影響による記録ヘッドと再生ヘッドの
位置決め誤差が小さくなったためと考えられる。また、
上部磁極として飽和磁束密度が16000ガウスと大き
なメッキ法により形成したFe−Co−Ni合金膜を用
いることにより、重ね書き特性を実施例1の場合に比べ
て約6dB改良することができた。
【0038】《実施例5》本実施例では、実施例1と同
様の構成を持つ磁気記録装置において、磁気ヘッドを実
施例4と同じ構造を持つ録再分離型磁気ヘッドとし、再
生磁気ヘッドを図11に示した断面構造を持つスピン・
バルブ型の磁気抵抗センサを用いて構成した。この磁気
抵抗センサは、非磁性層により隔てられた2つの磁性層
間の相対的な磁化方向の変化により生じる抵抗変化(ス
ピン・バルブ効果による磁気抵抗変化)を利用したタイ
プの磁気抵抗センサである。シールド層と磁気抵抗セン
サの間の酸化Alのギャップ層81の上に、バッファ層
111として厚さ2nmのTi層、第1の磁気抵抗層1
12として厚さ3nmのNi−20at%Fe合金層、
非磁性層113として厚さ1.5nmのCu層、第2の
磁気抵抗層114として厚さ3nmのNi−20at%
Fe合金層、および、反強磁性層115として厚さ5n
mのFe−50at%Mn合金層をスパッタリング法に
より順次形成した。この磁気抵抗センサでは、反強磁性
層115からの交換バイアス磁界によって第2の磁気抵
抗層の磁化が一方向に固定され、媒体からの漏洩磁界に
よって第1の磁気抵抗層の磁化方向が変化して抵抗変化
が生じる。バッファ層111としてTiを用いることに
より、第1および第2の磁気抵抗層112及び114の
(111)結晶格子面が膜面に平行となるように配向
し、これにより磁気抵抗層間の交換相互作用が弱められ
て、実施例1の磁気抵抗センサに比べて約3倍の高い感
度が得られた。また、本実施例では、記録用磁極材料と
してCoTaZr合金を用いた。
【0039】実施例1と同様な構成の磁気記録媒体にお
いて、金属磁性膜として表2に示すような組成の磁性合
金膜を用いて実施例1と同様な方法で試料番号11〜1
8の磁気ディスクを形成した。
【0040】
【表2】
【0041】これらの磁気ディスクを記録ギャップ長
0.3μm、トラック幅2.4μm、巻線数30ターン
の薄膜型ヘッドと、シールド間隔0.27μm、トラッ
ク幅1.9μmとした上記スピン・バルブ効果を利用し
た再生ヘッドを組み合わせたヘッドを用い、ヘッド浮上
量35nm、線記録密度200kBPI、トラック密度
10kTPIの条件で記録再生特性を評価した。結果を
表2に示す。
【0042】いずれも、1平方インチ当たり2ギガビッ
トという高い記録密度において、1.3以上の媒体S/
Nが得られた。また、磁気ヘッドの出力信号に最尤復号
による信号処理を施すことにより、1平方インチ当たり
2ギガビットの情報を10のマイナス8乗のビットエラ
ーレートで記録再生することができた。
【0043】《実施例6》本実施例では、実施例5と同
様の構成を持つ磁気記録装置において、磁気記録媒体と
して図12に示すような構造の2層磁性層磁気記録媒体
を用いた。この媒体は図9の単層磁性層磁気記録媒体の
磁性層94と保護層95の間に非磁性中間層121と第
2の磁性層122を挿入した構造を持つ。外径65m
m、内径20mm、厚さ0.635mmの、Al−7w
t%Mgから成るディスク基板の両面にNi−13wt
%Pから成る膜厚10μmのメッキ層92を形成した。
以下実施例1と同様に基板を形成し、上記の枚葉式dc
マグネトロンスパッタ装置の基板仕込み室に装填して真
空に引いた後、当該基板を加熱室、非磁性下地膜形成
室、第1磁性膜形成室、非磁性中間膜形成室、第2磁性
膜形成室、非磁性保護膜形成室および取り出し室の順に
主排気槽を介しながら搬送し、それぞれの室でそれぞれ
の膜を形成した。先ず、当該加熱室では280℃に加熱
し、5mTorrのアルゴン圧のもとでCrターゲット
に4kWの電力を加えて、30nmのCr下地膜93を
形成した。この下地膜の上に、5mTorrのアルゴン
圧のもとでターゲットに2kWの電力を加えてCo−1
8at%Cr−7at%Ta(Ta/Co原子濃度比=
0.093、Cr/Co原子濃度比=0.24)から成
る膜厚20nmの第1金属磁性膜94を積層した。この
磁性膜の上に、5mTorrのアルゴン圧のもとでター
ゲットに1kWの電力を加えてCrから成る膜厚2nm
の非磁性中間層121を積層し、さらにこの中間層の上
にターゲットに2kWの電力を加えてCo−18at%
Cr−7at%Taから成る膜厚20nmの第2金属磁
性膜122を形成した。さらに、この磁性膜の上にアル
ゴン圧6mTorrのもとでターゲットに2kWの電力
を加えて膜厚10nmのカーボン保護膜95を形成し
た。そして、当該保護膜上に吸着性のパーフルオロアル
キルポリエーテル等の潤滑層96を形成し2.5インチ
磁気ディスクとした。上記スパッタ装置の主真空層の真
空度は3×10のマイナス8乗Torr以下にした。
【0044】実施例5と同様の方法で、記録再生特性を
評価したところ、媒体S/Nが2.0と実施例5と比較
してさらに高いS/Nが得られた。また、磁気ヘッドの
出力信号に最尤復号による信号処理を施すことにより、
1平方インチ当たり2.4ギガビットの情報を10のマ
イナス8乗のビットエラーレートで記録再生することが
できた。
【0045】なお、上記実施例1〜6の磁気ディスクに
用いた非磁性基板91は、Si単結晶基板、ガラス基
板、カーボン基板等を用いてもよく、この場合は非磁性
メッキ層を形成しなくてもよい。また、実施例6では、
第1磁性膜と第2磁性膜とは同ーの組成としたが、必ず
しも同じ組成である必要はない。
【0046】なお、本発明は、以下の態様で実施するこ
とができる。
【0047】(1) 請求項1または2において、Co
の原子濃度に対するTaの原子濃度の比を0.08以
上、0.12以下とする。
【0048】(2) 請求項1,2または上記実施態様
(1)において、上記磁気記録媒体の情報記録層を非磁
性中間層で隔てられた少なくとも2層以上の磁性層で構
成することにより、S/Nが向上し、ビットエラーレー
トを低くできる。
【0049】(3) 請求項1,2,上記実施態様
(1)または(2)において、上記磁気記録媒体の上記
非磁性下地膜をCrあるいはCrを主成分とする合金と
し、該非磁性下地膜の厚さを2nm以上、60nm以下
とすることにより、一層の低ノイズ化を図ることができ
る。
【0050】(4) 請求項1,2,上記実施態様
(1),(2)または(3)において、記録時における
磁気記録媒体に対する磁気ヘッドの相対的な走行方向に
磁界を印加して測定した磁気記録媒体の保磁力Hcが
2.4キロエルステッド以上とされる。これにより1平
方インチ当たりギガビット以上の高記録密度を実現す
る。
【0051】(5) 請求項3において、上記磁気ヘッ
ドの再生部を、互いの磁化方向が外部磁界によって相対
的に変化することによって大きな抵抗変化を生じる複数
の導電性磁性層と該導電性磁性層の間に配置された導電
性非磁性層を含む巨大磁気抵抗効果型の磁気抵抗センサ
によって構成し2.4キロエルステッド以上とすること
により、1平方インチ当たり2ギガビット以上の高密度
な情報の記録再生が可能となる。
【0052】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、本発明によ
れば、Co−Cr−Ta系磁性膜を有する磁気記録媒体
において、膜厚残束密度積Br・tを100ガウス・ミ
クロン以上120ガウス・ミクロン以下とし、磁性膜中
のCo原子濃度に対するTa原子濃度の比を0.069
以上0.12以下としたことによって、低いBr・tで
も高い保磁力Hcが得られるので、1平方インチ当たり
1ギガビット以上と極めて高い面記録密度が記録可能な
面内磁気記録媒体が得られる効果がある。さらにこの磁
気記録媒体とシールド間隔が0.35ミクロン以下のご
く狹い間隔を有するMRヘッドや高精度に磁気ヘッドを
位置決めする技術等を組み合わせることにより、1平方
インチ当たり1ギガビット以上と極めて高い面記録密度
を有する磁気記録装置を構成することができる効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】異なるBr×t値を持つ磁気記録媒体における
保磁力とTa/Co原子濃度比の関係を示す図である。
【図2】磁気記録媒体における保磁力とCr/Co原子
濃度比の関係を示す図である。
【図3】磁気記録媒体におけるTa/Co原子濃度比と
Br×t値が120ガウス・ミクロン以下の領域で得ら
れる最大保磁力値の関係を示す図である。
【図4】図3にプロットした磁気記録媒体におけるTa
/Co原子濃度比と媒体S/Nの関係を示す図である。
【図5】磁気記録媒体におけるTa/Co原子濃度比と
保磁力が最大となる膜厚残留磁束密度積の関係を示す図
である。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の一
実施例の磁気記録装置の平面模式図およびそのA−A’
断面図である。
【図7】本発明の実施例の磁気記録装置における、磁気
ヘッドの断面構造の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例の磁気記録装置における、磁気
ヘッドの磁気抵抗センサ部の断面構造の一例を示す模式
図である。
【図9】本発明の実施例の磁気記録装置における、単層
磁性層磁気記録媒体の断面構造の一例を示す斜視図であ
る。
【図10】本発明の実施例の磁気記録装置における、磁
気ヘッドの断面構造の一例を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例の磁気記録装置における、磁
気ヘッドの磁気抵抗センサ部の断面構造の一例を示す模
式図である。
【図12】本発明の実施例の磁気記録装置における、多
層磁性層磁気記録媒体の断面構造の一例を示す斜視図で
ある。
【符号の説明】
61 磁気記録媒体 62 磁気記録媒体駆動部 63 磁気ヘッド 64 磁気ヘッド駆動部 65 記録再生信号処理系 71 磁気抵抗センサ 72 下部シールド層 73 上部シールド層 74 コイル 75 下部記録磁極 76 上部記録磁極 77 導体層 78 基体 81 シールド層と磁気抵抗センサの間のギャップ層 82 反強磁性磁区制御層 83 薄膜磁気抵抗性導電層 84 薄膜磁気抵抗性導電層の感磁部 85 非磁性層 86 高抵抗層 87 軟磁性層もしくは永久磁石膜バイアス層 91 基板 92 非磁性メッキ層 93 下地層 94 磁性層 95 保護層 96 潤滑層 101 シールド記録磁極兼用層 111 バッファ層 112 第1の磁気抵抗層 113 非磁性層 114 第2の磁気抵抗層 115 反強磁性層 121 非磁性中間層 122 第2の磁性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲垣 譲 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所ストレージシステム事業部内 (72)発明者 藤田 塩地 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所ストレージシステム事業部内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板上に少なくとも1層の非磁
    性下地膜を介して形成された情報記録層を有し、前記情
    報記録層が少なくとも1層の磁性膜から構成される磁気
    記録媒体において、前記磁気記録媒体の磁性膜の厚さの
    合計tと、記録時における前記磁気記録媒体に対する磁
    気ヘッドの相対的な走行方向に磁界を印加して測定した
    前記磁気記録媒体の残留磁束密度Brとの積Br×tが
    10ガウス・ミクロン以上、120ガウス・ミクロン以
    下であり、かつ、前記磁性膜がCo、CrおよびTaを
    主成分として含んでおり、前記磁性膜中のCoの原子濃
    度に対するTaの原子濃度の比が0.069以上、0.
    12以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記磁性膜中のCoの原子濃度に対する
    Crの原子濃度の比が0.17以上、0.33以下であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記請求項1または2記載の磁気記録媒
    体と組み合わせて用いられ、記録部及び再生部から成る
    磁気ヘッドを有する磁気記録装置において、前記磁気ヘ
    ッドの再生部はシールド間隔が0.35ミクロン以下の
    磁気抵抗効果型磁気ヘッドで構成されたことを特徴とす
    る磁気記録装置。
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