JP3394108B2 - 磁気記憶装置及び多層磁性層磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記憶装置及び多層磁性層磁気記録媒体

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JP3394108B2 JP01701295A JP1701295A JP3394108B2 JP 3394108 B2 JP3394108 B2 JP 3394108B2 JP 01701295 A JP01701295 A JP 01701295A JP 1701295 A JP1701295 A JP 1701295A JP 3394108 B2 JP3394108 B2 JP 3394108B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンピュータの補助記
憶装置等として利用される磁気記憶装置及びそれに用い
られる磁気記録媒体に係わり、さらに詳しくは、1平方
インチ当たり2ギガビット以上の高い記録密度を有する
磁気記憶装置と、この高い記録密度を実現するのに好適
な薄膜磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】情報化社会の進展により、日常的に扱う
情報量は増加の一途を辿っている。これに伴って、磁気
記憶装置に対する高記録密度・大記憶容量化の要求が強
くなっている。磁気ディスク装置を高記録密度化してい
った場合、記録ビット当たりの記録媒体面積が小さくな
るため、再生出力が低下し、再生が困難になる。このよ
うな問題を解決するため、従来は1つの電磁誘導型磁気
ヘッドで記録と再生を行なっていたのに対し、記録と再
生を別々の磁気ヘッドで行ない、再生用の磁気ヘッドと
して磁気抵抗効果を利用した磁気ヘッドを用いることが
検討されている。
【0003】この磁気抵抗効果型再生ヘッドは高い感度
を持つため、高記録密度化に適している。磁気抵抗効果
型ヘッドでは、磁気記録媒体からの漏洩磁界により、磁
気抵抗層の磁化の方向が電流方向に対して相対的に変化
することによって生じる抵抗変化を利用して出力を得
る。磁界に対する応答の直線性を改善する目的で、上記
磁気抵抗層の上に非磁性のスペーサ層を介して軟磁性膜
バイアス層が形成されることがあるが、磁気抵抗変化を
誘起するのは、基本的には単層の軟磁性層(磁気抵抗
層)であり、抵抗変化率の大きさは、通常、数%程度で
ある。
【0004】これに対して、近年、フィジカル・レビュ
ー・レターズ、第61巻(1988年)の2472〜2
475頁〔Phys. Rev. Lett., vol.61, pp.2472-2475,
(1988)〕、あるいはフィジカル・レビュー・B、第43
巻(1991年)の1297〜1300頁〔Phys. Re
v., B, vol.43, pp.1297-1300, (1991) 〕等に、複数の
磁性層を非磁性層を介して積層したタイプの磁性膜で、
最大数十%にも達する非常に大きな磁気抵抗変化が報告
されている。このタイプの磁性薄膜では、積層された各
磁性層の磁化の方向が必ずしも一致しておらず、その相
対的な方向が外部磁界により変化することによって大き
な抵抗変化が生じる。このようなタイプの多層磁性薄膜
に生じる大きな磁気抵抗効果は、巨大磁気抵抗効果ある
いはスピン・バルブ効果と呼ばれており、現在これを利
用してさらに高い感度を持つ磁気抵抗効果型再生ヘッド
の開発が進められている。
【0005】磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒
体としては、当初、酸化物磁性体の粉末を基板上に塗布
した塗布型媒体が用いられていたが、近年、金属磁性体
の薄膜を基板上にスパッタ蒸着した薄膜媒体が開発され
ている。薄膜媒体は、塗布型の媒体に比べて磁気記録層
に含まれる磁性体の密度が高いため、高密度の記録再生
に適している。また、特開昭63−146219号公報
には、薄膜媒体の磁気記録層を複数の磁性層で構成し、
各磁性層と磁性層の間に非磁性中間層を挿入することに
より、各磁性層間の磁気的結合を低減して記録媒体に起
因するノイズを低減した多層磁性層磁気記録媒体が提案
されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、磁気記
録の高記録密度化に適した高感度な磁気抵抗効果型の再
生ヘッドが開発されている。この磁気抵抗効果型の磁気
ヘッドは再生感度が高く、かつ、ヘッドの抵抗が低いた
め発生する熱雑音が小さい。このため、従来、電磁誘導
型磁気ヘッドから発生する大きなノイズに隠れていた磁
気記録媒体に起因するノイズ(媒体ノイズ)が、装置全
体のノイズの中で大きな割合を占めるようになる。従っ
て、磁気抵抗効果型の磁気ヘッドを用いて高記録密度化
を実現するためには、媒体ノイズを低減する必要があ
る。媒体ノイズを低減する方法としては、非磁性中間層
を層間に挿入した複数の磁性層から成る多層磁性層磁気
記録媒体が提案されている。従って、磁気抵抗効果型再
生ヘッドと多層磁性層磁気記録媒体を組み合わせること
により磁気ディスク装置の高密度化が期待できる。
【0007】しかし、実際に、このような組み合わせの
磁気ディスク装置を試作してみると、磁性層数が1層の
従来の磁気記録媒体(単層磁性層磁気記録媒体)を用い
た場合に比べて、高記録密度での再生出力が低く、装置
として十分低いエラーレートが得られなかった。このよ
うに、個別には感度の高い再生ヘッドとノイズの低い磁
気記録媒体が開発されているが、これらをどのように組
み合わせると高い記録密度を持つ磁気ディスク装置を実
現できるかについては、十分に考慮されていなかった。
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、高密度な情報
の記録再生が可能で信頼性の高い磁気記憶装置を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明では、複数の磁性
層及び隣接する磁性層の間に配置された中間層を有する
磁気記録媒体と、磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆
動部と、記録部と再生部を備える磁気ヘッドと、磁気ヘ
ッドを磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、磁
気ヘッドへの信号入力と前記磁気ヘッドからの出力信号
再生を行うための記録再生信号処理手段とを有する磁気
記憶装置において、磁気ヘッドの再生部を磁気抵抗効果
型磁気ヘッドで構成し、磁気記録媒体を複数の磁性層が
媒体表面に垂直な方向に重なった位置に存在する結晶方
位の異なった結晶粒を含むものとすることにより、媒体
ノイズを十分低減して、上記の目的を達成する。
【0009】また、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの磁気抵
抗センサ部を挟む2枚のシールド層の間隔を0.35μ
m以下とし、磁気記録媒体の複数の磁性層の厚さの合計
tと、記録時における磁気記録媒体に対する磁気ヘッド
の相対的な走行方向(以下、この方向を記録方向とい
う)に磁界を印加して測定した残留磁束密度Brの積B
r×tを10G・μm(ガウス・ミクロン)以上、10
0G・μm以下とし、さらに、記録方向に磁界を印加し
て測定した磁気記録媒体の保磁力を2.4kOe(キロ
エールステッド)以上とすることにより、高記録密度に
おける十分な信号強度を得ることができ、1平方インチ
当たり2ギガビット以上の記録密度を持った信頼性の高
い磁気記憶装置を実現することができる。
【0010】さらに、磁気抵抗効果型磁気ヘッドを、互
いの磁化方向が外部磁界によって相対的に変化すること
によって大きな抵抗変化を生じる複数の導電性磁性層と
その導電性磁性層の間に配置された導電性非磁性層を含
む磁気抵抗センサによって構成し、巨大磁気抵抗効果あ
るいはスピン・バルブ効果を利用したものとすることに
より、信号強度をさらに高めることができ、1平方イン
チ当たり3ギガビット以上の記録密度を持った信頼性の
高い磁気記憶装置を実現することができる。
【0011】磁気記録媒体の複数の磁性層は、最密六方
格子構造のc軸方位が媒体表面に略平行なCo合金結晶
粒を含み、かつ、媒体表面に垂直な方向に重なった位置
に存在するとともにc軸方位が互いに略直交するCo合
金結晶粒を含むものとすることができる。ここで、Co
合金結晶粒のc軸方位が互いに略直交するとは、2つの
Co合金結晶粒のc軸方位が直交方向から±10°の範
囲、好ましくは±5°の範囲にあることをいう。
【0012】磁気記録媒体の複数の磁性層が基板表面に
近い第1の磁性層とその上に中間層を介して形成された
第2の磁性層からなる場合には、第2の磁性層を構成す
る結晶粒のうち、そのc軸方位が、媒体表面に垂直な方
向に重なった位置に存在する第1の磁性層の結晶粒のc
軸方位と略直交する結晶粒の数をNc、略平行な結晶粒
の数をNaとするとき、NcとNaの比Nc/Naが
0.2以上であるのがよく、より好ましくは0.4以上
であるのがよい。ここで、Co合金結晶粒のc軸方位が
略平行であるとは、2つのCo合金結晶粒のc軸方位が
平行方向から±10°の範囲、好ましくは±5°の範囲
にあることをいう。
【0013】磁気記録媒体は、その複数の磁性層のうち
少なくとも一層の磁性層を構成する磁性結晶粒の媒体表
面に垂直な方向の平均的な結晶方位が、他の磁性層を構
成する磁性結晶粒の媒体表面に垂直な方向の平均的な結
晶方位と異なるものであってもよい。複数の磁性層は下
地層の上に形成することができ、中間層の組成と下地層
の組成を異ならせることができる。また、中間層は組成
の異なる複数の層で構成することもできる。
【0014】さらに、磁性層の保護層としてカーボンを
厚さ10nm〜30nm形成し、さらに吸着性のパーフ
ルオロアルキルポリエーテル等の潤滑層を厚さ2nm〜
20nm設けることにより信頼性が高く、高密度記録が
可能な磁気記録媒体が得られる。また、保護層としてタ
ングステン・カーバイト、(W−Mo)−C等の炭化
物、(Zr−Nb)−N、窒化シリコン等の窒化物、二
酸化シリコン、ジルコニア等の酸化物、あるいはボロ
ン、ボロン・カーバイト、二硫化モリブデン、Rh等を
用いると耐摺動性、耐食性を向上できるので好ましい。
また、これらの保護層を形成した後、微細マスク等を用
いてプラズマエッチングすることで表面に微細な凹凸を
形成したり、化合物、混合物のターゲットを用いて保護
層表面に異相突起を生じせしめたり、あるいは熱処理に
よって表面に凹凸を形成すると、ヘッドと記録媒体との
接触面積を低減でき、CSS動作時にヘッドが記録媒体
表面に粘着する問題が回避されるので好ましい。
【0015】
【作用】多層磁性層磁気記録媒体を用いた場合に高記録
密度領域での出力が低下するのは、単層の磁性層からな
る磁気記録媒体に比べて、多層磁性層磁気記録媒体のヒ
ステリシスループの角型比(以下、単に角型比という)
が小さいためである。一般に、磁気記録媒体に用いる磁
性膜では、膜厚を小さくしていくと角型比が小さくな
る。多層磁性層磁気記録媒体では、単層磁性層磁気記録
媒体に比べて磁性層一層当たりの膜厚を小さくする必要
があるため、角型比が小さくなる。多層磁性層磁気記録
媒体を用いて、高記録密度で信頼性の高い磁気記録装置
を実現するためには、多層磁性層磁気記録媒体の角型比
を向上するか、又はノイズをさらに低減する必要があ
る。
【0016】本発明者らは、磁性層と中間層の組成、膜
厚、成膜条件等を変えた多層磁性層磁気記録媒体を作製
し、記録部に電磁誘導型ヘッドを用い再生部に磁気抵抗
効果型ヘッドを用いた複合型磁気ヘッドとの組み合わせ
により記録再生特性を評価した。その結果、多層磁性層
磁気記録媒体の複数の磁性層において媒体表面に垂直な
方向(膜厚方向)に重なった位置に存在する磁性結晶粒
間の結晶方位関係と記録再生特性との間に強い相関があ
ることを見い出した。以下に検討結果を詳細に説明す
る。
【0017】図1に、検討に用いた代表的な多層磁性層
磁気記録媒体の微細構造の断面模式図を示す。この記録
媒体は基板1の上にスパッタ法によって、下地層2、第
1の磁性層3、中間層4、第2の磁性層5、及び保護層
6が形成されている。基板として表面にNi−Pをメッ
キしたAl−Mg合金を用い、下地層及び中間層として
Cr−Ti合金を用い、磁性層としてCo−Cr−Pt
合金を用いた。また、保護層としてはカーボンを用い、
その上に潤滑層を形成した(図1では潤滑層は省略して
ある)。断面構造及び平面構造を透過電子顕微鏡で詳細
に観察したところ、図1に略示したように、下地層は柱
状の微結晶で構成され、その上に第1の磁性層を構成す
る柱状結晶が成長していた。1個の下地層結晶の上に
は、1〜3個の第1の磁性層を構成する柱状結晶が成長
していた。中間層及び第2の磁性層を構成する結晶粒
は、第1の磁性層を構成する柱状結晶の上に各1個づつ
成長していた。
【0018】下地層2、第1及び第2の磁性層3,5の
組成と膜厚を一定として、中間層4の組成、層厚及び成
膜条件を変化させた多層磁性層磁気記録媒体の記録再生
特性を評価した結果、Cr−Ti合金中間層4中のTi
濃度と層厚を適当な範囲に設定することによってノイズ
が低減できることが分かった。このようにして得られた
ノイズの低い媒体と比較的ノイズの高い媒体の微細結晶
構造の違いを詳細に検討した。その結果、媒体表面に垂
直な方向(膜厚方向)に重なった位置に存在する磁性結
晶粒(例えば、図1に示した第1の磁性層の結晶粒7と
第2の磁性層の結晶粒8)の結晶方位の関係と媒体ノイ
ズとの間に強い相関があることを見い出した。
【0019】膜厚方向(図1の上下方向に)に重なった
位置に存在する磁性結晶粒の結晶方位の関係を調べるた
め、機械的研磨とイオンシニングにより基板1及び下地
層2を除去した試料に、媒体表面に垂直な方向から電子
線を照射して電子線回折パターンを観察した。電子線
は、磁性層の結晶粒径以下に絞り込んだ。ノイズの大き
な媒体では、ほとんどの結晶粒で、図2(a)に示す様
な回折パターンが観察された。中間層の厚さは、磁性層
の厚さの1/10程度であり、この回折パターンは殆ど
磁性層による回折である。この回折パターンから、磁性
層の結晶粒は最密六方格子(hcp)構造を持ち、最密
六方格子の{110}面(以下、hcp−{110}と
略記)が膜面に平行になっていることが分かり、各スポ
ットの回折指数は図中に示したように決定できる。この
回折パターンから、膜厚方向に重なった位置に存在する
最密六方格子構造を持つ磁性結晶粒のc軸は、ともに図
中の矢印21の方向を向いていると考えられる。
【0020】これに対して、ノイズの小さな媒体では、
図2(b)に示す様な回折パターンを示す結晶粒が観察
された。この回折パターンは図2(a)の回折パターン
と、これを(000)回折スポットの回りに90度回転
した回折パターンを重ね合わせた回折パターンになって
いる。従って、膜厚方向に重なった位置に存在する磁性
結晶粒のc軸は、矢印22と矢印23で示すように、互
いに直交する方向を向いていると考えられる。
【0021】ノイズの大きさの異なる記録媒体につい
て、各50個程度の結晶粒の電子線回折パターンを調
べ、図2(a)のような回折パターンが得られる結晶粒
の数Naと図2(b)のような回折パターンが得られる
結晶粒の数Ncを調べた。NcとNaの比Nc/Naと
ノイズの大きさの関係を調べたところ、図3に示すよう
に、Nc/Naの増大に伴ってノイズが低下していた。
Nc/Naを0.2以上にすると、Nc/Naがゼロの
場合に比較してノイズを1dB以上低減できるので好ま
しい。また、Nc/Naを0.4以上にすると、Nc/
Naがゼロの場合に比較してノイズを1.3dB以上低
減できるのでさらに好ましい。
【0022】Nc/Naの値は、Cr−Ti合金中間層
のTi濃度と中間層の層厚に強く依存する。Cr−Ti
合金中間層のTi濃度については、Ti濃度がある範囲
にあるときにNc/Naが極大となる傾向を示した。こ
のNc/Naが極大となるTi濃度範囲はCo−Cr−
Pt合金中のPt濃度に依存し、Pt濃度が増大するほ
ど高いTi濃度範囲でNc/Naが極大となった。例え
ば、10at%のPt濃度に対しては、図4に示すよう
に、15〜25at%のTi濃度が最適であった。中間
層厚が0.5nm以下の領域ではNc/Naはほとんど
0であり、0.2以上のNc/Naを得るには、図5に
示すように、中間層厚を1.5nm以上とする必要があ
った。また、0.4以上のNc/Naを得るには、中間
層厚を2nm以上とする必要があった。このようにして
得られた低ノイズ媒体と磁気抵抗効果型ヘッドを組み合
わせて磁気ディスク装置を試作したところ、ビットエラ
ーレートの低い高信頼磁気ディスク装置が得られた。
【0023】以上から、媒体表面に垂直な方向(膜厚方
向)に重なった位置に存在する磁性結晶粒の結晶方位が
異なっていた方が媒体ノイズを低減できることが明かと
なった。上記の例では、磁性結晶粒のhcp−{11
0}面が膜面に平行な場合について説明したが、hcp
−{100}面、hcp−{011}面が膜面に平行な
場合にも、膜厚方向に重なった位置に存在する磁性結晶
粒間でc軸の方位が異なっていた方がノイズが低減でき
る。
【0024】さらに、中間層を下地層の組成とは異なる
Mo,W,V,Ta,Nb,Zr,Ti,B,Si,
C,Ni−P、あるいはこれ等の酸化物で構成すると、
第2の磁性層の平均的な結晶方位は第1の磁性層とは異
なってくる。これにより、結果として、膜厚方向に重な
った位置に存在する磁性結晶粒の結晶方位が異なる確率
が高くなり、媒体ノイズを低減できる。さらに、下地層
と中間層の組成を変えるかわりに中間層を2層構造と
し、図1の第1の磁性層と中間層の間にMo,W,V,
Ta,Nb,Zr,Ti,B,Si,C,Ni−P、あ
るいはこれ等の酸化物を主たる成分とする下部中間層挿
入することによっても同様の効果が得られる。
【0025】図6に、図1の中間層4を厚さ2nmのカ
ーボンからなる下部中間層と厚さ2nmのCr−Ti合
金からなる上部中間層の2層構造とした磁気記録媒体の
X線回折スペクトル41と、この構成の記録媒体の表面
側から保護層と第2の磁性層をプラズマエッチングによ
り除去した試料のX線回折スペクトル42を示す。第1
及び第2の磁性層がともに存在する場合のX線回折スペ
クトル41には、hcp−{110}面が膜面に平行で
あることを示すピーク43とhcp−{100}面が膜
面に平行であることを示すピーク44が観察される。こ
れに対して、第2の磁性層を除去したX線回折スペクト
ル42では、hcp−{110}面が膜面に平行である
ことを示すピーク43は観察されるが、hcp−{10
0}面が膜面に平行であることを示すピークはほとんど
観察されない。このことから、第1の磁性層と第2の磁
性層で平均的な結晶方位が異なっていると考えられる。
このような構造とすることによっても、ノイズが1〜2
dB程度低下する。
【0026】磁性層の磁気的な特性としては、記録再生
時のヘッド走行方向に磁界を印加して測定した保磁力を
2.4kOe以上とし、残留磁束密度Brと総磁性層厚
tの積Br×tを10〜100G・μmの範囲にする
と、1平方インチ当たり2ギガビット以上の高記録密度
領域において、良好な記録再生特性が得られるので好ま
しい。
【0027】図7に、保磁力と装置S/Nの関係を示
す。この図では、各保磁力に対して、Br×tの異なる
媒体を用いて装置S/Nを調べ、得られた最大の装置S
/Nの値をプロットした。測定条件は、後述の実施例1
と同じ条件にした。保磁力が2.4kOeよりも小さく
なると、装置S/Nは1以下になり、信号よりもノイズ
の方が大きくなってしまう。
【0028】図8に、一定周波数の高密度な信号を記録
再生した場合の出力信号の位相ジッタとBr×tの関係
を示す。この測定では、図9に示すように、ローパスフ
ィルタ31、微分回路32及びパルス化回路33によっ
て磁気ヘッドからの再生出力をパルス化し、ジッタメー
タ34によりパルス間隔δの変動を解析した。図8で
は、δの平均値に対するδの標準偏差σの割合をジッタ
として示した。Br×tが10〜100G・μmの範囲
外になると、ジッタが15%以上となり、ビットの弁別
が困難になる。また、図10に示すように、磁気抵抗セ
ンサを挟んで形成されている2枚のシールド層間の距離
(シールド間隔)が0.35μmよりも大きくなった場
合にも、ジッタが15%以上となるため、シールド間隔
は0.35μm以下であることが好ましい。
【0029】中間層の厚さとしては、先に述べたよう
に、1.5nm以上とするのが好ましいが、あまり厚い
と磁気ヘッドと最下層の磁性層との間隔が大きくなるた
め、重ね書き特性が劣化するので好ましくない。特に、
中間層を2層構造とした場合には、中間層が厚くなるた
め重ね書き特性が劣化する。この問題を解決するために
は、記録ヘッドの磁極としてFe−Co−Ni系合金、
Fe−Si系合金等、従来のNi−Fe合金よりも大き
な飽和磁束密度を持つ軟磁性薄膜を用いることが有効で
ある。特に、飽和磁束密度が15000ガウス以上の軟
磁性薄膜を用いたときに良好な結果が得られた。
【0030】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。 〔実施例1〕図14に略示する断面構造を有する多層磁
気記録媒体を作製し、それを磁気記憶装置に組み込ん
だ。磁気記憶装置は、平面模式図を図11(a)に示
し、断面模式図を図11(b)に示すように、磁気記録
媒体51と、これを回転駆動する駆動部52と、磁気ヘ
ッド53及びその駆動手段54と、磁気ヘッドの記録再
生信号処理手段55を有して成る周知の構成のものであ
る。
【0031】磁気ヘッド53の構造を、図12に模式的
に示す。この磁気ヘッドは、基体68の上に形成された
記録用の電磁誘導型磁気ヘッドと再生用の磁気抵抗効果
型ヘッドを組み合わせた記録再生分離型ヘッドである。
磁気抵抗センサ61を下部シールド層62と上部シール
ド層63で挟んだ部分が再生ヘッドとして働き、コイル
64を挟む下部記録磁極65と上部記録磁極66が記録
ヘッドとして働く。磁気抵抗センサ61からの出力信号
は電極パターン67を介して外部に取り出される。
【0032】磁気抵抗センサの断面構造を図13に示
す。この磁気抵抗センサは、シールド層と磁気抵抗セン
サの間のギャップ層71の上に形成された強磁性材料の
薄膜磁気抵抗性導電層73と、この薄膜磁気抵抗性導電
層を単一磁区とするための反強磁性磁区制御層72と、
薄膜磁気抵抗性導電層の感磁部74における薄膜磁気抵
抗性導電層と反強磁性磁区制御層の間の交換相互作用を
絶ち切るための非磁性層75と、感磁部74に対するバ
イアス磁界を発生できる手段として軟磁性層もしくは永
久磁石膜バイアス層77と、軟磁性層もしくは永久磁石
膜バイアス層77と薄膜磁気抵抗性導電層73の間の電
流分流比を調節するための高抵抗層76を含む。
【0033】以下に、図12に示した磁気ヘッドの作製
方法を示す。酸化Al・炭化Tiを主成分とする燒結体
をスライダ用の基体68とした。シールド層62,63
と記録磁極65,66にはスパッタ法で形成したNi−
Fe合金膜を用いた。上下シールド層62,63の厚さ
は1μm、上下シールド層間の距離は0.27μm、記
録磁極65,66の厚さは3μmとした。シールド層と
磁気抵抗センサ61及び記録磁極65,66の間には、
スパッタ法で酸化Alのギャップ層を形成した。シール
ド層と磁気抵抗センサの間のギャップ層厚さは125n
m、記録磁極間のギャップ層厚は300nm、シールド
層と記録磁極の間のギャップ層厚(再生ヘッドと記録ヘ
ッドの間隔)は約3μmとした。コイル64には厚さ3
μmのCuを用いた。また、磁気抵抗センサの薄膜磁気
抵抗性導電層73(図13)として厚さ20nmのNi
−Fe合金層、反強磁性磁区制御層72として厚さ30
nmのNiO層、薄膜磁気抵抗性導電層と反強磁性磁区
制御層の間の交換相互作用を絶ち切るための非磁性層7
5として厚さ2nmのNb層、軟磁性バイアス層77と
して厚さ30nmのNi−Fe−Nb合金軟磁性層、さ
らに、電極パターン67として厚さ100nmのCu薄
膜をスパッタ法により形成した。
【0034】図14に断面構造を模式的に示す多層磁性
層磁気記録媒体は、Al−Mg合金、化学強化ガラス、
Ti,Si,Si−C,カーボン、結晶化ガラスあるい
はセラミクス等からなる基板81、Al−Mg合金を基
板として用いた場合に、その両面に形成されたNi−
P,Ni−W−P等からなる非磁性メッキ層82、C
r,Mo,W又はこれらのいずれかを主な成分とする合
金からなる下地層83、Co−Ni−Zr,Co−Cr
−Al,Co−Cr−Ta,Co−Cr−Pt,Co−
Ni−Cr,Co−Cr−Nb,Co−Ni−Cr−P
t,Co−Cr−Pt−B,Co−Cr−Pt−Ta,
Co−Cr−Pt−Si等からなる第1の磁性層84及
び第2の磁性層86、第1の磁性層と第2の磁性層の間
に形成されたCr,Mo,W,V,Ta,Nb,Zr,
Ti,B,Si,C,Ni−P又はこれらのいずれかを
主な成分とする合金からなる非磁性中間層85、カーボ
ン、ボロン、炭化シリコン、窒化シリコン、二酸化シリ
コン、タングステン・カーバイト、(W−Mo)−C、
(W−Zr)−C等からなる保護層87、及びパーフロ
ルオロアルキルポリエーテル等の潤滑層88を含む。
【0035】以下に、この多層磁性層磁気記録媒体の作
製方法を示す。外径95mm、内径25mm、厚さ0.
4mmのAl−4wt%Mg(原子記号の前に付した数
字は当該素材の含有量を示す)からなるディスク基板8
1の両面にNi−12wt%Pからなるメッキ層82を
厚さが13μmとなるよう形成した。この非磁性基板の
表面を、ラッピングマシンを用いて表面中心線平均粗さ
Raが2nmとなるまで平滑に研磨し、洗浄、さらに乾
燥した。その後、テープポリッシングマシン(例えば、
特開昭62−262227号公報参照)を用い、砥粒の
存在下で研磨テープをコンタクトロールを通して、ディ
スク基板を回転させながらディスク面の両側に押しつけ
ることにより、ディスク基板表面に略円周方向のテクス
チャを形成した。さらに、基板に付着した研磨剤等の汚
れを洗浄・除去して乾燥した。
【0036】このように形成されたディスク基板をマグ
ネトロンスパッタリング装置内で270℃まで真空中で
昇温し、2mTorrのアルゴン圧の条件のもとで厚さ
30nmのCr−18at%Tiからなる下地層83を
形成した。この下地層の上にCo−20at%Cr−1
0at%Ptからなる厚さ12nmの第1の磁性層8
4、厚さ2.5nmのCr−18at%Tiからなる中
間層85、及び厚さ12nmの第2の磁性層86を順次
積層した。第2の磁性層の組成は第1の磁性層と同じで
ある。その後、第2の磁性層上に厚さ25nmのカーボ
ン保護層87を形成した。その表面にポリスチレン粒子
を静電塗布し、これをマスクとしてプラズマエッチング
することで表面に微細な凹凸を形成した。最後に当該保
護層上に吸着性のパーフルオロアルキルポリエーテルの
潤滑層88を形成した。
【0037】こうして形成された磁気記録媒体をX線回
折により分析した結果、Cr−Ti下地層は体心立方格
子(bcc)構造の{100}面が基板と略並行となる
ように結晶が配向成長し、磁性層は最密六方格子(hc
p)構造の{110}面が基板と略並行となるよう配向
成長していた。機械的研磨とイオンシニングにより基板
及び下地層を除去した試料に、記録媒体表面に垂直な方
向から電子線を照射して電子線回折パターンを観察し
た。約50個の結晶粒に電子線を絞り込んで回折パター
ンを調べ、図2(a)のような回折パターンが得られる
結晶粒の数Naと図2(b)のような回折パターンが得
られる結晶粒の数Ncを調べた結果、NcとNaの比N
c/Naは0.45であった。また、ディスク円周方向
に磁界を印加して測定した保磁力は2.96kOe、残
留磁束密度・総磁性層厚積Br×tは85G・μmであ
った。
【0038】本実施例の磁気記憶装置を用い、ヘッド浮
上量30nm、線記録密度210kBPI、トラック密
度9.6kTPIの条件で記録再生特性を評価したとこ
ろ、1.6の装置S/Nが得られた。また、磁気ヘッド
への入力信号を8−9符号変調処理して出力信号に最尤
複号信号処理を施すことにより、1平方インチ当たり2
ギガビットの情報を記録再生することができた。しか
も、内周から外周までのヘッドシーク試験5万回後のビ
ットエラー数は10ビット/面以下であり、MTBFで
15万時間が達成できた。
【0039】〔実施例2〕ガラス基板上に実施例1と同
様にして、ただし非磁性メッキ層は形成せずに、多層磁
性層磁気記録媒体を作製し、それを図11に示す磁気記
憶装置に組み込んだ。磁気記憶装置の磁気ヘッドには、
実施例1と同じ記録再生分離型ヘッドを使用した。
【0040】記録媒体の基板としては、直径2.5イン
チ、厚さ0.4mmのガラス基板を用い、その表面に2
mTorrのアルゴン圧の条件のもとでスパッタ法によ
り厚さ15nmのCr層を形成した。さらに、その上
に、実施例1と同様の下地層、第1の磁性層、中間層、
第2の磁性層、カーボン保護層、及び潤滑層を順次形成
した。
【0041】こうして形成された磁気記録媒体をX線回
折により分析した結果、Cr−Ti下地層は体心立方格
子(bcc)構造の{100}面あるいは{110}面
が基板と略並行となるように結晶が配向成長し、磁性層
は最密六方格子(hcp)構造の{110}面あるいは
{011}面が基板と略並行となるよう配向成長してい
た。機械的研磨とイオンシニングにより基板及び下地層
を除去した試料に、記録媒体表面に垂直な方向から電子
線を照射して電子線回折パターンを観察した。hcp−
{110}面が基板と略並行となっている磁性結晶粒約
30個に電子線を絞り込んで回折パターンを調べ、図2
(a)のような回折パターンが得られる結晶粒の数Na
と図2(b)のような回折パターンが得られる結晶粒の
数Ncを調べた結果、NcとNaの比Nc/Naは0.
5であった。また、ディスク円周方向に磁界を印加して
測定した保磁力は2.5kOe、残留磁束密度・総磁性
層厚積Br×tは80G・μmであった。
【0042】本実施例の磁気記憶装置を用い、ヘッド浮
上量26nm、線記録密度210kBPI、トラック密
度9.6kTPIの条件で記録再生特性を評価したとこ
ろ、1.6の装置S/Nが得られた。また、磁気ヘッド
への入力信号を8−9符号変調処理して出力信号に最尤
複号処理を施すことにより、1平方インチ当たり2ギガ
ビットの情報を記録再生することができた。しかも、内
周から外周までのヘッドシーク試験5万回後のビットエ
ラー数は10ビット/面以下であり、MTBFで15万
時間が達成できた。
【0043】〔実施例3〕実施例1の磁気記録媒体と同
様の積層構造で非磁性中間層が2層構造を有する多層磁
性層磁気記録媒体を作製し、実施例1と同様の構成を持
つ磁気記憶装置に組み込んだ。磁気記録媒体の作製に当
たっては、実施例1と同様にして準備したディスク基板
の上に、2mTorrのアルゴン圧の条件のもとで、厚
さ40nmのCr−18at%Tiからなる下地層とC
o−21at%Cr−12at%Ptからなる厚さ13
nmの第1の磁性層をスパッタ法によって形成した、そ
の上に厚さ2.5nmのカーボン層と厚さ2nmのCr
−23at%Ti層の2層からなる中間層を形成し、さ
らにその上に厚さ13nmのCo−21at%Cr−1
2at%Ptからなる第2の磁性層を順次積層した。そ
の後、第2の磁性層上に、実施例1と同様のカーボン保
護層と潤滑層を順次形成した。
【0044】こうして形成された磁気記録媒体をX線回
折により分析した結果、Cr−Ti下地層は体心立方格
子(bcc)構造の{100}面が基板と略並行となる
ように結晶が配向成長し、磁性層は最密六方格子(hc
p)構造の{110}面あるいは{011}面が基板と
略並行となるよう配向成長していた。第2の磁性層をイ
オンミリングにより除去した後に、X線回折により結晶
配向を分析した結果、最密六方格子(hcp)構造の
{011}面が基板と略並行となっていることを示す回
折ピークは消失しており、第1の磁性層と第2の磁性層
で平均的な結晶方位が異なっていた。また、ディスク円
周方向に磁界を印加して測定した保磁力は2.82kO
e、残留磁束密度・総磁性層厚積Br×tは90G・μ
mであった。
【0045】本実施例の磁気記憶装置を用い、ヘッド浮
上量30nm、線記録密度210kBPI、トラック密
度9.6kTPIの条件で記録再生特性を評価したとこ
ろ、1.6の装置S/Nが得られた。また、磁気ヘッド
への入力信号を8−9符号変調処理して出力信号に最尤
複号処理を施すことにより、1平方インチ当たり2ギガ
ビットの情報を記録再生することができた。しかも、内
周から外周までのヘッドシーク試験5万回後のビットエ
ラー数は10ビット/面以下であり、MTBFで15万
時間が達成できた。
【0046】〔実施例4〕実施例3の磁気記憶装置にお
いて、磁気ヘッドを図15に示すような構造の記録再生
分離型磁気ヘッドとした。この磁気ヘッドは基本的には
図12に示した実施例1の記録再生分離型磁気ヘッドと
同じ構造を持つが、図12における上部シールド層63
と下部記録磁極65が1つのシールド記録磁極兼用層9
1で置き換えられている点が異なっている。このシール
ド記録磁極兼用層91は、その名が示すとおり上部シー
ルド層と下部記録磁極の役割を1つの軟磁性層で行なわ
せるものであり、本実施例ではスパッタ法で形成したN
i−Fe合金膜を用いた。
【0047】このような構造の磁気ヘッドを用いること
により、特に、トラック密度を8kTPI以上にしたと
きのビットエラーレート増大が小さく抑えられた。これ
は、記録ヘッドと再生ヘッドの距離が小さくなり、ロー
タリー・アクチュエータを用いた場合のヨー角の影響に
よる記録ヘッドと再生ヘッドの位置決め誤差が小さくな
ったためと考えられる。また、上部磁極として飽和磁束
密度が16000ガウスと大きなメッキ法により形成し
たFe−Co−Ni合金膜を用いることにより、重ね書
き特性を実施例3の場合に比べて約6dB改良すること
ができた。
【0048】〔実施例5〕実施例1と同様の構成を持つ
磁気記憶装置において、磁気ヘッドを実施例4と同じ構
造を持つ記録再生分離型磁気ヘッドとし、その再生磁気
ヘッドを図16に示す断面構造を持つ磁気抵抗センサを
用いて構成した。この磁気抵抗センサは、非磁性層によ
り隔てられた2つの磁性層間の相対的な磁化方向の変化
により生じる抵抗変化(スピン・バルブ効果による磁気
抵抗変化)を利用するタイプの磁気抵抗センサである。
シールド層と磁気抵抗センサの間の酸化Alのギャップ
層71の上に、バッファ層101として厚さ2nmのT
i層、第1の磁気抵抗層102として厚さ3nmのNi
−20at%Fe合金層、非磁性層103として厚さ
1.5nmのCu層、第2の磁気抵抗層104として厚
さ3nmのNi−20at%Fe合金層、及び反強磁性
層105として厚さ5nmのFe−50at%Mn合金
層をスパッタリング法により順次形成した。
【0049】この磁気抵抗センサでは、反強磁性層から
の交換バイアス磁界によって第2の磁気抵抗層の磁化が
一方向に固定され、磁気記録媒体からの漏洩磁界によっ
て第1の磁気抵抗層の磁化方向が変化して抵抗変化が生
じる。バッファ層としてTiを用いることにより、第1
及び第2の磁気抵抗層の{111}結晶格子面が膜面に
平行となるように配向し、これにより磁気抵抗層間の交
換相互作用が弱められて、実施例1の磁気抵抗センサに
比べて約2倍の高い感度が得られた。
【0050】また、本実施例の多層磁性層磁気記録媒体
は、基板として直径1.3インチ、厚さ0.4mm、表
面粗さ1nmのカーボン基板を用いた。その両面に、実
施例1と同様のスパッタリング装置、及び条件により、
厚さ1μmのCr下地層を形成した。さらに真空チャン
バ内でCr下地層表面を砥粒平均径1μm以下の研磨剤
を含む研磨テープにより研磨し、略円周方向のテクスチ
ャを形成した。この上に厚さ50nmのCr−20at
%Ti下地層を形成し、さらに、第1の磁性層として厚
さ11nmのCo−21at%Cr−15at%Pt
層、厚さ2.5nmのCr−25at%Ti中間膜、さ
らに第2の磁性層として厚さ11nmのCo−21at
%Cr−15at%Pt層を形成した。その後、厚さ2
5nmのカーボン保護層を形成した。さらに、カーボン
保護層表面に、開口部の平均距離が50μm以上、10
0μm以下のエッチングマスクを設け、マスクに覆われ
ない領域のカーボン保護層を酸素プラズマエッチングに
より深さ15nmエッチングした。その結果、カーボン
保護層表面に平均径50μm以上、100μm以下、高
さ15nmの島状の凸部が形成された。最後に当該保護
層上に吸着性のパーフルオロアルキルポリエーテルの潤
滑層を形成した。
【0051】こうして形成された磁気記録媒体をX線回
折により分析した結果、Cr−Ti下地層は体心立方格
子(bcc)構造の{100}面あるいは{110}面
が基板と略並行となるように結晶が配向成長し、磁性層
は最密六方格子(hcp)構造の{110}面あるいは
{011}面が基板と略並行となるよう配向成長してい
た。機械的研磨とイオンシニングにより基板及び下地層
を除去した試料に、記録媒体表面に垂直な方向から電子
線を照射して電子線回折パターンを観察した。hcp−
{110}面が基板と略並行となっている磁性結晶粒約
30個に電子線を絞り込んで回折パターンを調べ、図2
(a)のような回折パターンが得られる結晶粒の数Na
と図2(b)のような回折パターンが得られる結晶粒の
数Ncを調べた結果、NcとNaの比Nc/Naは0.
67であった。また、ディスク円周方向に磁界を印加し
て測定した保磁力は2.62kOe、残留磁束密度・総
磁性層厚積Br×tは66G・μmであった。
【0052】本実施例の磁気記憶装置を用い、ヘッド浮
上量23nm、線記録密度260kBPI、トラック密
度11.6kTPIの条件で記録再生特性を評価したと
ころ、1.2の装置S/Nが得られた。また、磁気ヘッ
ドへの入力信号を8−9符号変調処理し、出力信号に最
尤復号処理を施すことにより、1平方インチ当たり3ギ
ガビットの情報を記録再生することができた。しかも、
内周から外周までのヘッドシーク試験5万回後のビット
エラー数は10ビット/面以下であり、MTBFで15
万時間が達成できた。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、高いS/Nと低いビッ
トエラーレートが得られるので、1平方インチ当たり2
ギガビットの高い記録密度で、15万時間以上の平均故
障間隔を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層磁性層磁気記録媒体の微細構造を示す断面
模式図。
【図2】膜厚方向に重なった位置に存在する2個の磁性
結晶粒からの電子線回折パターンの図。
【図3】膜厚方向に重なった位置に存在する2個の磁性
結晶粒のc軸方位が略直交する結晶粒ペアの数Ncと略
平行な結晶粒ペアの数Naの比Nc/Naとノイズの関
係を示す図。
【図4】CrTi中間層のTi濃度とNc/Naの関係
を示す図。
【図5】CrTi中間層の厚さとNc/Naの関係を示
す図。
【図6】本発明による多層磁性層磁気記録媒体の一実施
例のX線回折スペクトルを示す図。
【図7】保磁力と装置S/Nの関係を示す図。
【図8】位相ジッタとBr×tの関係を示す図。
【図9】位相ジッタの測定装置の概略図。
【図10】位相ジッタとシールド間隔の関係を示す図。
【図11】磁気記憶装置の平面模式図及びそのA−A’
断面模式図。
【図12】磁気ヘッド一例を示す断面説明図。
【図13】磁気ヘッドの磁気抵抗センサ部の断面構造の
一例を示す模式図。
【図14】多層磁性層磁気記録媒体の構造の一例を示す
断面模式図。
【図15】磁気ヘッドの他の例を示す断面説明図。
【図16】磁気ヘッドの磁気抵抗センサ部の断面構造の
他の例を示す模式図。
【符号の説明】
1…基板、2…下地層、3…第1の磁性層、4…中間
層、5…第2の磁性層、6…保護層、7…第1の磁性層
の結晶粒、8…第2の磁性層の結晶粒、21,22,2
3…磁性結晶粒のc軸方向を示す矢印、31…ローパス
フィルタ、32…微分回路、33…パルス化回路、34
…ジッタメータ、41,42…X線回折スペクトル、4
3,44…X線回折ピーク、51…磁気記録媒体、52
…磁気記録媒体駆動部、53…磁気ヘッド、54…磁気
ヘッド駆動部、55…記録再生信号処理系、61…磁気
抵抗センサ、62…下部シールド層、63…上部シール
ド層、64…コイル、65…下部記録磁極、66…上部
記録磁極、67…導体層、68…基体、71…シールド
層と磁気抵抗センサの間のギャップ層、72…反強磁性
磁区制御層、73…薄膜磁気抵抗性導電層、74…薄膜
磁気抵抗性導電層の感磁部、75…非磁性層、76…高
抵抗層、77…軟磁性層もしくは永久磁石膜バイアス
層、81…基板、82…非磁性メッキ層、83…下地
層、84…第1の磁性層、85…中間層、86…第2の
磁性層、87…保護層、88…潤滑層、91…シールド
記録磁極兼用層、101…バッファ層、102…第1の
磁気抵抗層、103…非磁性層、104…第2の磁気抵
抗層、105…反強磁性層
フロントページの続き (72)発明者 山本 朋生 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (72)発明者 石川 晃 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (72)発明者 二本 正昭 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (56)参考文献 特開 平6−349047(JP,A) 特開 平6−187637(JP,A) 特開 平6−176341(JP,A) 特開 平7−134820(JP,A) 特開 平7−176027(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/62 - 5/858

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板表面に近い第1の磁性層とその上に
    中間層を介して形成された第2の磁性層を有する磁気記
    録媒体と、前記磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動
    部と、記録部と再生部を備える磁気ヘッドと、前記磁気
    ヘッドを前記磁気記録媒体に対して相対運動させる手段
    と、前記磁気ヘッドへの信号入力と前記磁気ヘッドから
    の出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段とを
    有する磁気記憶装置において、 前記磁気ヘッドの再生部は磁気抵抗効果型磁気ヘッドで
    構成され、前記磁気記録媒体の前記第1及び第2の磁性
    層は最密六方格子構造のc軸方位が媒体表面に略平行な
    Co合金結晶粒からなり、更に、前記第2の磁性層を構
    成する結晶粒のうち、そのc軸方位が、媒体表面に垂直
    な方向に重なった位置に存在する前記第1の磁性層の結
    晶粒のc軸方位と略直交する結晶粒の数をNc、略平行
    な結晶粒の数をNaとするとき、NcとNaの比Nc/
    Naが0.2以上であることを特徴とする磁気記憶装
    置。
  2. 【請求項2】 前記磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、互い
    に0.35μm以下の距離だけ隔てられた軟磁性体から
    なる2枚のシールド層と、前記2枚のシールド層の間に
    形成された磁気抵抗センサ部を備え、前記磁気記録媒体
    は、前記第1及び第2の磁性層の厚さの合計tと記録方
    向の残留磁束密度Brの積Br×tが10G・μm以
    上、100G・μm以下であり、記録方向の保磁力が
    2.4kOe以上であることを特徴とする請求項1記載
    の磁気記憶装置。
  3. 【請求項3】 前記磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、互い
    の磁化方向が外部磁界によって相対的に変化することに
    よって大きな抵抗変化を生じる複数の導電性磁性層と、
    前記導電性磁性層の間に配置された導電性非磁性層を含
    むことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気記憶装
    置。
  4. 【請求項4】 前記第1の磁性層を構成する磁性結晶粒
    の媒体表面に垂直な方向の平均的な結晶方位が、前記第
    の磁性層を構成する磁性結晶粒の媒体表面に垂直な方
    向の平均的な結晶方位と異なることを特徴とする請求項
    1、2又は3記載の磁気記憶装置。
  5. 【請求項5】 前記第1の磁性層は下地層の上に形成さ
    れ、前記中間層の組成が前記下地層の組成とは異なるこ
    とを特徴とする請求項1、2又は3記載の磁気記憶装
    置。
  6. 【請求項6】 前記中間層は組成の異なる複数の層で構
    成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載
    の磁気記憶装置。
  7. 【請求項7】 基板表面に近い第1の磁性層とその上に
    中間層を介して形成された第2の磁性層を有する多層磁
    気記録媒体において、前記第1及び第2の磁性層は最密六方格子構造のc軸方
    位が媒体表面に略平行なCo合金結晶粒からなり、更
    に、前記第2の磁性層を構成する結晶粒のうち、そのc
    軸方位が、媒体表面に垂直な方向に重なった位置に存在
    する前記第1の磁性層の結晶粒のc軸方位と略直交する
    結晶粒の数をNc、略平行な結晶粒の数をNaとすると
    き、NcとNaの比Nc/Naが0.2以上である こと
    を特徴とする多層磁性層磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 前記第1の磁性層を構成する磁性結晶粒
    の媒体表面に垂直な方向の平均的な結晶方位が、前記第
    の磁性層を構成する磁性結晶粒の媒体表面に垂直な方
    向の平均的な結晶方位と異なることを特徴とする請求項
    記載の多層磁性層磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 前記第1の磁性層は下地層の上に形成さ
    れ、前記中間層の組成が前記下地層の組成とは異なるこ
    とを特徴とする請求項記載の磁気記憶装置。
  10. 【請求項10】 前記中間層は組成の異なる複数の層で
    構成されていることを特徴とする請求項記載の多層磁
    性層磁気記録媒体。
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