JP4389381B2 - 磁気記録媒体及び磁気記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体に係り、詳しくは磁気ディスク装置、フロッピーディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気ディスク装置、フロッピーディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要さが増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。
【0003】
磁気記録媒体の高密度化を達成するためにはノイズを低減することが必要不可欠であり、このため媒体を形成する粒子の微細化、記録層の薄膜化が進んでいるが、これら磁性粒子の体積を減少させる手段は、磁性粒子の超常磁性化を引き起こし、記録の安定性を損なうことが指摘されている。記録の安定性とは、すなわち、一度記録した情報が経時変化によりいつまで保持できるかということであり、近年の高密度化に伴い、この安定性のレベルが実用上問題となる領域まで低下しつつあることが問題化している。
【0004】
これらの課題を解決するため、反強磁性結合を用いた記録媒体や(E.N.Abbra他,2000Digests of INTERMAG,AA−06)、原理的に磁性膜厚を厚くできる垂直磁気記録媒体の研究(S.Iwasaki他,IEEE Trans. Magn.,MAG−14,849(1978))が盛んになりつつある。
【0005】
特に垂直記録媒体用に磁気記録層に関しては、高い垂直磁気異方性を実現できるCo/PtあるいはPdを、単原子から数原子層づつ交互に積層して人工的に作り上げた結晶格子構造を持つ人工格子磁性多層膜(以下、単に磁性多層膜と言う)を用いた磁気記録媒体が次世代媒体として注目されるようになっている(特許第30422878号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
Coを主成分とする合金層とPtまたはPdを主成分とする層を交互に積層した磁性多層膜においては、Coを主成分とする合金層とPtまたはPdを主成分とする層の界面で膜面に対して垂直方向に磁気異方性が誘起され、この磁性多層膜が膜面に垂直な磁気異方性を示すことが知られている(P.F.Carcia;J.Vac.Sci.Technol.A5(4),July/Aug.1987)。このため、このCoを主成分とする合金層とPtまたはPdを主成分とする層を交互に積層した磁性多層膜を磁気記録層として使用する磁気記録媒体の可能性が注目されている。
【0007】
しかしながら、この磁性多層膜を磁気記録層に用いる磁気記録媒体は高保磁力にできるため記録安定性を高くできるという利点がある反面、ノイズが大きい傾向にあり、まだ実用化に耐えうる段階ではないのが実状である。
Coを主成分とする合金層とPtあるいはPdを主成分とする層を交互に積層した磁性多層膜では、Coを主成分とする合金層とPtあるいはPdを主成分とする層の界面において、膜面に対して垂直方向に磁気異方性が誘起されている。また膜内の結晶粒子間に強い交換結合が働いている場合が多い。このような膜を磁気記録層として用いる場合、膜のある微小部分を記録のため磁化反転しようとした場合、その部分の結晶粒子の交換結合が強すぎて磁化反転する領域が予定された領域からずれる、つまり、結晶粒同士の強い交換結合により、反転する領域の外の結晶粒子の磁化が引きずられて反転したり、反転するべき領域内の結晶粒子が外の結晶粒子の交換結合力で反転できなかったりする現象が起こることがある。このような、磁気記録時における不完全な磁化反転は、記録信号のノイズという現象を引き起こし好ましくない。
【0008】
従来、結晶粒子間の交換結合を低減させるために、スパッタ成膜時のArガス圧を高くする検討が行われた例はあったが(K.Ouchi他,J.Magn.oc.Japan,21,p301(1997))、その効果は十分ではなかった。
本発明は上記の従来の問題点を解決し、低ノイズかつ高保磁力を有し、記録再生特性に優れた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような、結晶粒子間の交換結合が非常に強い磁性多層膜は、通常、膜面に対して垂直方向のM−H曲線の傾きはほとんどなく垂直となっている。本発明者は、この磁性多層膜の結晶粒子間の交換結合を、磁気記録に適するように弱め、磁性多層膜の膜面に対して垂直方向のM−H曲線を特定の範囲に傾いた特性とすることにより、該磁性多層膜の磁気記録特性が向上することを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
つまり本発明の要旨は、非磁性基板上に、磁気記録層として、Coを主成分とする合金層と、PtあるいはPdを主成分とする層を、交互に積層した磁性多層膜を有する磁気記録媒体であって、該磁性多層膜の膜面に垂直方向の磁気特性を表すM−H曲線のM=0の点での傾きAが、下記の式を満足することを特徴とする磁気記録媒体および、該磁気記録媒体を用いた磁気記録装置に存する。
【0011】
1/4π(emu/cc/Oe)≦A<2×1/4π(emu/cc/Oe)本発明の磁気記録媒体では、上記の特性とすることによって、低ノイズかつ高保磁力を有する磁気記録媒体を実現することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上に、磁気記録層として、Coを主成分とする合金層と、PtあるいはPdを主成分とする層を、交互に積層した磁性多層膜を有する磁気記録媒体であって、該磁性多層膜の膜面に垂直方向の磁気特性を表すM−H曲線のM=0の点での傾きAが、下記の式を満足することを特徴とする。
【0013】
1/4π(emu/cc/Oe)≦A<2×1/4π(emu/cc/Oe)ここで、M−H曲線の測定には通常VSM(振動試料型磁力計)などが使用される。M−H曲線とは、媒体に磁界H(Oe)を印加した際に発生する磁化M(emu/cc)をそれぞれX、Y軸にとり、プロットしたグラフである(図1)。このグラフ上で、M=0即ちX軸との交点において接線を描き、その接線の傾きをA(emu/cc/Oe)と定義する。ここではM−H曲線には反磁界補正を施さないものとする。
【0014】
M−Hループの傾きが、2×1/4π(emu/cc/Oe)より大きい場合は、該磁性多層膜に磁気記録する際に記録磁化転移の乱れが大きくなり、転移性ノイズの大きな媒体となってしまう。M−Hループの傾きが1/4πより小さい場合は、粒子間の交換結合が小さいことに加えて保磁力の分散が大きい媒体であることを示しており、記録磁化の転移領域の拡大が起こり記録再生特性が劣化する。このM−H曲線の傾きAは、より好ましくは、1.5×1/4π(emu/cc/Oe)以下である。
【0015】
本発明において、このM−Hループを所定量傾け磁気記録に適したものとすることは、上記Coを主成分とする合金層に、Ta、Nb、W、Ge、C、Cr、B等の添加元素を含有させることによって達成できる。これは、Coを主成分とする合金層中のCo磁性結晶粒子の粒界に、これらの添加元素を偏析させ、Co磁性結晶粒子間の交換結合が所定の強さに制御されるためである。ここで、Coを主成分とする合金層中のCo含有量は50原子%以上であることが好ましく、より好ましくは、60原子%以上である。また、Coを主成分とする合金層中には、上記Ta、Nb、W、Ge、C、Cr、B等の添加元素以外の微量元素を数原子%程度含有していても良い。
【0016】
特にCr及びBの両方を同時に含有させる場合にその効果が大きい。含有させるCr及びBの量は、Cr10原子%以上、B1原子%以上が好ましく、より好ましくはCr15原子%以上、B5原子%以上である。CrおよびBの含有量が少なすぎる場合は、結晶粒界へのCr、Bの偏析量が少なく、結晶粒子間の交換結合を十分に低減できない場合がある。またCr、Bの含有量は、Cr25原子%以下、B10原子%以下とするのが好ましい。Cr、Bの含有量が多すぎる場合は、磁性多層膜膜中のCoを主成分とする合金層と、PtあるいはPdを主成分とする合金層間の界面に誘起される垂直磁気異方性が劣化する場合がある。
【0017】
PtまたはPdを主成分とする層には、Ta、Nb、W、Ge、C、Cr、B等の元素を数原子%程度の微量含有していても良い。PtまたはPdを主成分とする合金層には、PtあるいはPdを50原子%以上含有していることが好ましく、よりこのましは、90原子%以上である。
本発明の特性を持つ磁性多層膜を達成するためには、該磁性多層膜膜をスパッタ成膜するときの基板温度を200℃以上とすることが好ましい。基板温度のより好ましい温度は250℃である。基板温度を所定温度に加熱することにより、磁性多層膜中でのCr、Bの偏析が促進され、発明の効果がより高くなることがある。基板温度は500℃以下が好ましい。基板温度が高すぎる場合、Coを主成分とする合金層と、PtあるいはPdを主成分とする層が、互いに拡散しあって、一部一体化し、はっきりした多層膜構造とならないことがある。また、膜中の結晶粒子が大きくなり、磁気特性が悪くなることもある。磁性多層膜の成膜時のスパッタガスには、通常Arが使用されるが、KrやXe等の希ガスまたはこれらの混合物を用いてもよく、分圧として数%程度の不純物ガスを添加しても構わない。
【0018】
Coを主成分とする合金層の一層あたりの膜厚は0.8nm以上、1.5nm以下であることが好ましい。膜厚が0.8nm未満の場合は、磁性多層膜の磁気特性、特に保磁力が悪くなることがある。また、膜厚が1.5nmより厚い場合、磁性多層膜の垂直方向の磁気異方性が悪くなることがある。
PtあるいはPdを主成分とする層の膜厚は0.1nm以上、2.0nm以下が好ましく、より好ましくは0.2nm以上、0.8nm以下である。膜厚が薄すぎる場合は、はっきりした多層膜構造とならない場合があり、厚すぎる場合は磁性多層膜の保磁力が低くなることがある。
【0019】
本発明の磁性多層膜は、膜面に垂直方向に磁気異方性を持つ場合が多いため、垂直磁気記録方式で記録再生される垂直磁気記録媒体として使用した場合、特に優れた効果を発揮する。
磁性多層膜の積層回数に特に制限はないが、10〜20回程度が好ましい。積層回数が10回未満の場合、磁性多層膜の磁化が十分でないことあり、記録再生時の信号出力が小さくなることがある。また、積層回数が20回を超える場合、磁性多層膜全体の膜厚が厚くなりすぎ、かえって記録再生特性が悪くなることがある。
【0020】
本発明において、非磁性基板としては、通常、無電解めっき法により形成したNi−P層を設けたアルミニウム合金板またはガラス基板が用いられるが、その他、セラミック基板、炭素基板、Si基板、更には各種樹脂基板等、任意の非磁性基板を用いることができる。また、基板にはテキスチャを施してあっても良いが、特に今後多くの媒体において採用されると考えられるRaが1nm以下のガラス基板に適用するのが好ましい。
【0021】
非磁性基板と上記磁性多層膜の間に、必要に応じて、結晶配向等の制御のための下地層や、垂直磁気記録において磁気ヘッドの一部として動作する軟磁性層を設けても構わない。
下地層としては通常Ti、Ta等が好適に用いられるが、この他にRu、Ge等の金属あるいはこれらの合金、またはITO(インジウム・錫酸化物)やSiO2等の酸化物を用いても良い。下地層の膜厚は10nm以下が好ましい。
【0022】
また、この下地層の上に、更にPtあるいはPdを主成分とする層を数nm〜数10nm程度の膜厚に第2の下地層として形成することもできる。この第2の下地層としてのPtあるいはPdを主成分とする層は、磁性多層膜中のPtあるいはPdを主成分とする層に比較して、膜厚を厚く形成し、この上に形成される磁性多層膜の結晶配向を向上する役割を持つ。
【0023】
軟磁性層としてはNiFe、FeSiAl、FeSi、FeTa、CoZrNb等の飽和磁束密度(Bs)が10kGauss以上を有する材料が好ましい。軟磁性層の膜厚は50nm以上、300nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以上、200nm以下である。
磁気記録層として、2種類以上の磁性多層膜を組み合わせたり、磁性多層膜に他の通常の単層の磁性膜を組み合わせることもできる。
【0024】
磁気記録層の上に、保護膜、更にその上に潤滑層を設けてもよい。保護膜としては、蒸着、スパッタ、プラズマCVD、イオンプレーティング、湿式法などの方法により、炭素膜、水素化カーボン膜、窒素化カーボン膜、TiC、SiC等の炭化物膜、SiN、TiN等の窒化膜、SiO2、Al23、ZrO2等の酸化物膜等が挙げられる。保護膜の膜厚は5nm以上、30nm以下が好ましい。潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤およびこれらの混合物を用いることができる。好ましい膜厚は、通常1〜4nmである。
【0025】
本発明の磁気記録媒体の各層を形成する成膜方法は任意であるが、例えば直流(マグネトロン)スパッタリング法、高周波(マグネトロン)スパッタリング法、ECRスパッタリング法、真空蒸着法などの物理蒸着法が挙げられる。また、成膜時の条件としても特に制限はなく、到達真空度、基板加熱の方式と基板温度、スパッタリングガス圧、バイアス電圧等は、成膜装置により適宜決定すればよい。例えば、スパッタリング成膜では、通常の場合、到達真空度は5×10-4Pa以下、基板温度は室温〜400℃、スパッタガスはAr、Kr、Xe等を用いることができ、スパッタリングガス圧は1×10-1〜2.5Pa、バイアス電圧は一般的には0〜−500Vである。また、スパッタ雰囲気中にO2、N2を微量含有していても良い。
【0026】
本発明の磁気記録装置は、少なくともこのような本発明の磁気記録媒体と、これを記録方向に駆動する駆動部と、記録部及び再生部を備える磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、磁気ヘッドへの信号入力と磁気ヘッドから出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段をとを有する磁気記録装置である。
【0027】
ここで、磁気ヘッドの再生部をMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、高記録密度を持った磁気記録装置を実現することができる。
最尤復号法による信号処理回路を組み合わせるとさらに記録密度を向上でき、例えば、トラック密度10kTPI以上、線記録密度200kFCI以上、1平方インチ当たり2Gビット以上の記録密度で記録・再生する場合にも十分なS/Nが得られる。
【0028】
さらに磁気ヘッドの再生部を、互いの磁化方向が外部磁界によって相対的に変化することによって大きな抵抗変化を生じる複数の導電性磁性層と、その導電性磁性層の間に配置されて導電性非磁性層からなるGMRヘッド、或いはスピン・バルブ効果を利用したGMRヘッドとすることにより、信号強度をより一層高めることができ、1平方インチ当たり3ギガビット以上、240kFCI以上の線記録密度を持った信頼性の高い磁気記録装置の実現が可能となる。
【0029】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨の範囲を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
内径25mm、外径95mmのガラスディスクの基板表面を研磨してRa(中心線平均粗さ)約1nmに仕上げた。この非磁性基板を枚葉式直流マグネトロンスパッタリング装置に装着し、1×10-5Paまで真空排気した後成膜を行った。基板加熱、各層の成膜はそれぞれ専用チャンバーに基板を導入した後に行った。ただし、Coを主成分とする合金層と、PtあるいはPdを主成分とする層は、同一のチャンバー内で交互に成膜した。
【0030】
(実施例1)
ヒーターチャンバーに基板を導入し、基板を350℃に加熱し、Arガス圧0.5Paで、Ni45原子%Fe55原子%の組成のターゲットを用いて軟磁性層を200nm成膜した。続いて、基板温度310℃、Arガス圧Paで、Taターゲットを用いて、第一の下地層としてTa層を5nm成膜した。更に、基板温度280℃、Arガス圧1.5Paで、Ptターゲットを用いて、第2の下地層としてPt層を5nm成膜した。この上に、Co76原子%Cr15原子%B9原子%の組成のターゲットとPtターゲットを用いて、基板温度270℃、Arガス圧1.5Paで、CoCrB合金層とPt層を交互に積層し、磁性多層膜を形成した。CoCrB合金層の膜厚は1.2nm、Pt層の膜厚は0.4nmとした。積層回数は20回(CoCrB合金層、Pt層がそれぞれ20層ずつ)とした。更に、基板温度200℃、Arガス圧0.7Paで、グラファイトカーボンターゲットを用いてカーボン保護膜を5nm成膜した。その上にフッ素系液体潤滑剤(Fonblin Z−Dol 2000:アウジモント社製)を1nmを塗布し、磁気記録媒体を作製した。
【0031】
磁気記録媒体の磁気特性は、Kerr効果を利用したMHループトレーサーを用いて最大磁化20kOeを印加して測定した。記録再生特性の評価は、Guzik社製の測定器Guzik1601を用いてGMRヘッドにより行った。S/N比については、429kFCIの信号を信号を書き込んだ際のノイズ成分を積分し、80.4kFCIの信号を記録した際の再生出力から下記の式を用いて算出した。
S/N=20log(出力/ノイズ)
(比較例1)
1)基板加熱を行わずにすべての膜を成膜したこと、2)Fe63.8原子%Si16.5原子% Al19.7原子% の組成のターゲットを用いて、軟磁性層を200nm形成したこと、3)CoターゲットとPtターゲットを用いて、Co層とPt層をこの順に交互に、各Co層の膜厚を0.4nm、各Pt層の膜厚を1.2nmとして、積層回数20回(Co層、Pt層がそれぞれ20層ずつ)、Arガス圧を6Paとして磁性多層膜を作製したこと、以外は、実施例1と同じ条件で磁気記録媒体を作製し、評価した。
(比較例2)
1)Fe63.8原子% Si16.5原子% Al19.7原子% の組成のターゲットを用いて、軟磁性層を200nm形成したこと、2)基板温度を160℃に加熱して、Co85原子%Cr15原子%の組成のターゲットとPdターゲットを用いて、CoCr合金層とPd層をこの順に交互に積層して、各CoCr合金層の膜厚を0.2nm、各Pd層の膜厚を1.2nmとして、積層回数20回(CoCr合金層、Pd層がそれぞれ20層ずつ)、Arガス圧を1.5Paとして磁性多層膜を作製したこと以外は、実施例1と同じ条件で磁気記録媒体を作製し、評価した。
【0032】
表1に上記実施例、比較例の磁気記録媒体の作製条件をまとめて示した。これらの磁気記録媒体の膜面に対する垂直方向の保磁力、垂直方向のM−Hループの傾き、およびS/N比の値を表2に示した。比較例1、2は垂直方向のM−Hループの傾きAが大きく、S/N比が悪くなっている。これらに比較して、実施例1は垂直方向のM−Hループの傾きAが1.4×1/4πと、比較例に比較して小さく、S/N比も良好な値を示している。
【0033】
【表1】
Figure 0004389381
【0034】
【表2】
Figure 0004389381
【0035】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、従来の構成の磁気記録媒体に比べて高い保磁力とS/N比に優れた磁気記録媒体と、この磁気記録媒体を用いた高密度で低ノイズの磁気記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は磁性多層膜の膜面に垂直方向のM−H曲線の一例を示す図である。

Claims (8)

  1. 非磁性基板上に、磁気記録層として、Coを主成分とする合金層と、PtあるいはPdを主成分とする層を、交互に積層した磁性多層膜を有する磁気記録媒体であって、該磁性多層膜の膜面に垂直方向の磁気特性を示すM−H曲線のM=0の点での傾きAが、下記の式を満足することを特徴とする磁気記録媒体。
    1/4π(emu/cc/Oe)≦A<2×1/4π(emu/cc/Oe)
  2. Coを主成分とする合金層がCr及びBを含有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. Coを主成分とする合金層のCr含有量が10原子%以上、B含有量が1原子%以上である請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
  4. Coを主成分とする合金層のCr含有量が15原子%以上、B含有量が5原子%以上である請求項1乃至3に記載の磁気記録媒体。
  5. 磁性多層膜の成膜時の基板温度が200℃以上で成膜された請求項1乃至4に記載の磁気記録媒体。
  6. Coを主成分とする合金層の各層の膜厚が0.8nm以上である請求項1乃至5に記載の磁気記録媒体。
  7. 磁気記録媒体が垂直磁気記録媒体である請求項1乃至6に記載の磁気記録媒体。
  8. 磁気記録媒体と、該磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動部と、記録部及び再生部を備える磁気ヘッドと、該磁気ヘッドを前記磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、該磁気ヘッドの記録信号入力と磁気ヘッドからの再生信号出力を行うための記録再生信号処理手段とを有する磁気記録装置において、該磁気記録媒体が請求項1乃至7のいずれかに記載の磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録装置。
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