JP4515676B2 - 透明導電積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体に関し、さらに詳しくは、高分子基板の上に非晶領域を持つ透明導電膜を有する透明導電積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子や有機EL素子といった各種表示素子或いは薄膜太陽電池の電極部には、透明導電膜が用いられている。また、一般にそのような透明導電膜を有した基板にはガラスが用いられている。一方、近年の携帯移動端末の急激な小型化・軽量化に伴って、透明電極基板にも、さらなる軽量な部材が要求されている。そのため、基板材料としては、ガラスに比べてより軽量な透明高分子基板材料が用いられつつある。例えば、携帯電話や情報携帯端末には、液晶表示素子としてフィルム液晶が用いられている。また、有機EL素子にもフィルム基板を用いより軽量で薄いディスプレイを形成しようとされている。
【0003】
このような、高分子基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体は、かかるフィルム液晶素子や有機EL素子への高次加工に際し様々な熱履歴を通じた熱処理を受けている。特に、フィルム液晶素子にについては、液晶セル加工工程において、150℃程度の熱が透明導電膜にかかることがある。このような状況において、エッチング等の透明導電膜の加工性を保つためには、透明導電膜が素子加工工程において受ける熱履歴を通じた熱処理に対して、結晶化を起こさないことが必要になってくる。これは、結晶化した透明導電膜のエッチング速度が、非晶質或いは非晶質と結晶質が混在した透明導電膜のエッチング速度に比較して約1/10の速さになってしまうことに起因している。
【0004】
高分子基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体では、高分子基板の実用温度が高々200℃に満たないため、基板温度を通常ガラス上の透明導電膜形成に用いられている200〜300℃といった温度にできず、室温程度から100℃程度の低温にせざるを得ないという制約を背負いながらなされている。しかし、非晶質或いは非晶質と結晶質が混在した透明導電膜は、例えばエッチングといった加工性に富むため、その必要性は非常に高い。よって、高温をかけられないという基板温度に関する制約は、非晶質或いは非晶質と結晶質が混在した状態の透明導電膜を形成する上では、むしろ歓迎すべき制約であり、非晶質或いは非晶質と結晶質が混在したような透明導電膜が形成されるという高分子基板において特有の透明導電積層体を供給するのに適したプロセスと考えることができる。
【0005】
高分子基板を用いた透明導電積層体に形成されてなる透明導電膜の望ましい状態は、その用途に強く依存する。そのため、必ずしも結晶質な透明導電膜が望ましいというわけではなく、非晶質が望まれることもある。しかし、非晶質或いは非晶質と結晶質が混在した透明導電膜は、僅かな熱刺激に応答し結晶化を起こすものもある。即ち、非晶質という範疇にある透明導電膜は、全く同じではなく、熱刺激に対する応答性を異にしていることがわかってきた。しかし、このような非晶質の差異を決定付ける要因が何であるかは、係る現在においても不明である。
【0006】
例えば、基板温度が室温程度の低温で形成されたIn−Sn−O系透明導電膜の結晶化温度は、電気抵抗の不可逆な変化が起こる温度をもって、結晶化温度と呼んでいるようである。しかし、この方法は、抵抗値の観測により求められているにすぎず、本質的な膜の熱挙動を解析したものとは言い難い。そして、そのために、透明導電膜の使用形態が限定されていることも事実であり、予期せぬ工程不良を発生させる原因となっていると考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように高分子基板上に透明導電膜を形成する際の基板の温度は、ガラス基板上に透明導電膜を通常200〜300℃で形成するときとは大きく異なり、熱的に制約されるため通常、室温以下程度から、高分子基板の軟化点温度程度の範囲が用いられている。そのような低温基板上に形成された透明導電膜は非晶質膜或いは非晶質と結晶質が混在した膜となっている。特に、非晶質な透明導電膜は、X線回折のような巨視的構造に関する検討を行っても、所謂ハローと呼ばれる線幅の広い回折線を与えるのみであり、種々のプロセスパラメーターを変化させ、例えば抵抗値に代表される電気的特性が大きく異なる膜を作製したとしても、同様なハローを与えるに過ぎず、構造的には全く等価な状態になっていると評価されてしまう。そのため、各種素子の製造工程での透明導電膜の状態の見極めが困難であった。
【0008】
このような現状を鑑み、本発明の目的は、高分子基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体において、結晶化が容易には起こらない透明導電積層体を提供することにある。即ち、ある温度での熱量の供給に対する挙動が明確な透明導電膜を有する透明導電積層体を提供することにある。そして、これは、非晶質という構造が不確定で非晶質という以外に分類のできなかった透明導電膜の状態を熱力学的な手法により明確に分類しようとするものである。より具体的には、高分子基板の軟化点温度以下の熱処理により、非晶から結晶への構造転移を起こし難い透明導電膜を形成してなる透明導電積層体を供給することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、基板温度が室温程度で形成された非晶質或いは非晶質と結晶質が混在するような透明導電膜を有する透明導電積層体について、その熱力学的な特性について示差走査型熱量計を用いて鋭意検討した結果、透明導電膜の熱力学的な特性が透明導電膜の製造条件によって変化することにより、特に熱処理に伴う構造相転移の転移温度特性に対して大きな違いを生じていることを見出した。これは以下のようなメカニズムに基づくものである。
【0010】
透明導電膜を高分子基板上に形成する際には、高分子基板が充分な耐熱性を有さないために、ガラス上に結晶性の良好な透明導電膜を形成するために必要な200℃以上の温度に加熱することは通常困難である。透明導電膜を高分子基板の軟化点温度以下で形成した場合、その構造は殆どが非晶質である。あるいは、非晶質と結晶質が混在した状態である。非晶質透明導電膜の構造特性は、代表的な構造解析手法であるX線回折によれば、ハローと呼ばれるブロードな回折線を与えるのみである。よって製造条件を変調した際の非晶質の状態が同じなのか、異なっているのかはこの手法ではわからない。
【0011】
高分子基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体は、各種素子に加工される際に、高分子基板の軟化点温度を超えない程度の様々な熱履歴を受けることがわかっている。このとき、透明導電膜は受ける熱履歴を通じた熱処理によって、結晶化を起こすことがある。即ち、非晶から結晶への構造相転移が起こってしまうのである。しかし、電極加工工程では、このような構造相転移がエッチング残渣として、工程トラブルの原因になりやすい。そして、このような状態の変化は、工程を想定した一定温度での熱処理による透明導電膜の抵抗値の変化や、さらには高分子基板の反り量の変化によって、間接的に評価されているのが現状である。これは、非晶質という状態が、まったく同じ状態であるということではなく、異なった状態になっているということを示している。本発明者らは、製造条件の違いに起因する非晶質或いは非晶質と結晶質が混在した透明導電膜間の違いを解明することこそが、素子加工に際し繰り返し再現性を与える高分子基板上に透明導電膜を有する透明導電積層体を供給する方法であると考えた。
【0012】
ところが、このような現実があるにも関らず、非晶質透明導電膜の差異について具体的に解析した例は見当たらず、特に透明導電膜の熱力学的な特性の直接的な観測を示差走査型熱量計で実施したという報告は無い。
【0013】
本発明者らは、X線回折法にて求めた巨視的構造が非晶質或いは非晶質と結晶質が混在した状態である透明導電膜において、外部からの熱刺激に対してその応答の程度を定量的に解析した。そして透明導電膜の熱的な特性を詳細に検討することにより、高分子基板からなる透明導電積層体を用いた各種素子形成過程に使用される温度領域において、透明導電膜がどのような状態にあるかを判断するのに有効な知見を得た。さらに、示差走査型熱量計において特定の条件で測定したときの発熱量及び最大発熱温度を示す透明導電膜が、外部からの熱刺激に対して反応し難い即ち、結晶化を起こし難いものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち本発明は、高分子基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体において、該透明導電膜は示差走査型熱量計により毎分20℃の昇温速度で30℃から550℃まで走査したときに最大発熱温度が150〜300℃の範囲にあることを特徴とし、該透明導電膜は示差走査型熱量計により毎分20℃の昇温速度で30℃から550℃まで走査したときに発熱量が10〜140J/gの範囲であることを特徴とする透明導電積層体である。また、該透明導電膜が酸化インジウムを主とし、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化チタン及び酸化ゲルマニウムからなる群より選ばれる1種以上の酸化物を含むことを特徴とし、該透明導電膜の厚さが10〜350nmであることを特徴とする透明導電積層体である。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について順次説明していく。
【0016】
本発明に使用される透明導電積層体は、高分子基板の少なくとも一方の面上に透明導電膜が形成されてなるものである。係る透明導電膜は、酸化インジウムを主とし、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化チタン及び酸化ゲルマニウムからなる群より選ばれてなる1種以上の酸化物を含むことを特徴としている。より具体的には、酸化インジウムの80〜98重量%に対して、2〜20重量%の酸化錫、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化チタン及び酸化ゲルマニウムからなる群より選ばれてなる1種以上の酸化物を含むものである。
【0017】
本発明に使用される高分子基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレートといったポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子や、ポリカーボネイト、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート等の単一成分の高分子、あるいは光学的機能または熱力学的機能を付与するために、これらの高分子に第二、第三成分を共重合した、共重合高分子を用いることができる。
【0018】
特に、光学用途にはビスフェノール成分を有する透明性が良好なポリカーボネイトが望ましい。
【0019】
かかるビスフェノール成分としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを挙げることができる。
【0020】
これらは2種類以上組み合わせてもよい。即ちかかるポリカーボネイトは共重合ポリカーボネイトでもブレンド体でもよい。
【0021】
さらに、新規機能を発現させるために複数の高分子体をブレンドした高分子を用いることもできる。さらには、多層の共押出し高分子フィルムを用いることもできる。
【0022】
また、高分子基板の厚みは、0.01〜0.4mmのものを使用することができるが、0.1〜0.2mm程度が液晶等の光学用途としては視認性の観点より望ましい。また、0.01mm程度の高分子基板に形成した後、厚い高分子フィルムに貼り合わせても構わない。
【0023】
さらに高分子基板は光学等方性が優れるものが好ましく、リターデーデョンが30nm以下、好ましくは15nm以下のものが好適である。
【0024】
本発明の透明導電積層体は高分子基板とその少なくとも一方の面に形成される透明導電膜との密着性の向上、高分子基板の耐久性の向上或いは、高分子基板のガスバリア能を向上させるために、高分子基板と透明導電膜との間、及び/または高分子基板の電極として用いられる透明導電膜が形成された面とは反対の面に、少なくとも一層以上からなるコーティング層を有していても構わない。このコーティング層は、無機物または有機物またはそれらの複合材料からなり、その膜厚は好ましくは0.01〜20μmである。より望ましくは、10μm程度に抑制されることが望ましい。コーティング層の形成にはコーターを用いた塗布法や、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法等が用いられることが多いが、この限りではない。また、スパッタ法、蒸着法といった、PhysicalVapor Deposition(以下PVD)、Chemical Vapor Deposition(以下CVD)の手法が用いられても構わない。コーティング層としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、UV硬化系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂成分やこれらとアルミナ、シリカ、マイカ等の無機粒子の混合物が使われても良い。或いは、高分子基板を二層以上の共押し出しによりコーティング層の機能を持たせても構わない。PVD、CVDの手法では、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物や、窒化珪素、窒化チタン、窒化タンタル等の窒化物、酸化窒化珪素のような酸窒化物、あるいは、弗化マグネシウム、弗化カルシウム等の弗化物を単体あるいは混合したものを形成して用いることができる。このようなコーティング層を有する透明導電積層体は、光学特性としてレターデーションが低く、尚且つ透過率が高いことが望ましい。無論、PVD、CVDの手法で形成されるコーティング層の下地には、密着性の向上や透過率の調整、各種耐久性の向上のために、各種有機材料・無機材料、それらの混合体が用いられても良い。
【0025】
本発明における、透明導電膜の形成手法は、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、パルスレーザーデポジション法、これらを複合した形成法等を用いることができるが、大面積に対して均一な膜厚の透明導電膜を形成するという工業生産性に着目すると、DCマグネトロンスパッタリング法が望ましい。
【0026】
スパッタリングに用いるターゲットは酸化インジウムを主成分とする焼結ターゲットを用いることが望ましいが、金属Inを主成分とする合金ターゲットを用いて、反応性スパッタ等の手法を用いても構わない。
【0027】
本発明では、酸化物焼結ターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタリング法により上記透明導電膜を製膜する場合は、該透明導電膜を製膜する真空槽中の圧力を一旦1.3×10-4Pa以下とし、次いで不活性ガス及び酸素を導入する製造方法にて形成することができる。透明導電膜を製膜する真空槽中の圧力は一旦1.3×10-4Pa以下にすることが、真空槽中に残留し、且つ透明導電膜の特性に影響を与えることが懸念される分子種の影響を低減できるので望ましい。より望ましくは、5×10-5Pa以下、さらに望ましくは2×10-5Pa以下である。
【0028】
次いで導入される不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xeを用いることができ、原子量の大きな不活性ガスほど形成される膜へのダメージが少なく表面平坦性が向上すると言われている。しかし、コスト面から考えてArが望ましい。この不活性ガスには膜中に取り込まれる酸素濃度を調整するために、分圧に換算して1.3×10-4〜7×10-2Pa台の酸素を添加しても構わない。さらに、酸素の他にO3、N2、N2O、H2O、NH3等を目的に応じて用いることができる。
【0029】
また、本発明では、透明導電膜を製膜する真空槽中の水の分圧を1.3×10-4Pa以下とし、次いで不活性ガス及び酸素を導入する製造方法にて形成することができる。水の分圧は、より望ましくは、4×10-5Pa以下、さらに望ましくは2×10-5Pa以下に制御できる。しかし、非晶質の状態を変化させるために、水を意図的に1.3×10-4〜3×10-2Paの範囲で導入しても構わない。この調整は、一旦真空を形成した後に、バリアブルリークバルブやマスフローコントローラーを用いて水を導入することで行っても良い。また、真空槽の背圧を制御することによっても実施することができる。
【0030】
本発明における水分圧を決定するときには、差動排気型のインプロセスモニターを用いても良い。またはダイナミックレンジが広く、0.1Pa台の圧力下においても計測が可能な四重極質量分析計を用いても良い。また、一般的に、1.3×10-5Pa程度の真空度においては、その圧力を形成しているのは水である。よって、真空計によって計測された値をそのまま水分圧と考えても構わない。
【0031】
本発明においては、高分子基板を用いるため、基板温度を当該高分子基板の軟化点温度より上昇させることはできない。よって、透明導電膜を形成するためには、高分子基板の温度は室温以下程度から軟化点温度以下とする必要がある。代表的な高分子基板であるポリエチレンテレフタレートの場合、特別な処理を行わないときは基板温度を80℃以下の温度に保ったまま導電膜を形成することが望ましい。より望ましくは50℃以下の基板温度にて、さらに望ましくは20℃以下である。
【0032】
透明導電膜の膜厚は、用途によって決定される。しかし、可撓性が悪化するため、350nm以上の透明導電膜を有することは望ましくない。また、10nm以下の膜厚では、不連続な膜となってしまうことが懸念され、透明導電膜としての機能が著しく悪化する。よって、本発明の透明導電膜の膜厚は用途に応じて10〜350nmとすることが望ましい。例えば、液晶表示素子用の場合は30〜330nm程度が望ましい。
【0033】
本発明における、透明導電膜の熱特性は、TA instruments社製DSC2920Modulated DSCを用いて解析した。熱特性の計測は30〜550℃の範囲を毎分20℃の昇温速度で測定した。また、試料はアルミニウムのパンに入れて測定した。この際、試料の重量は2〜20mgとし、マイクロ天秤にて1μgのオーダーまで計測した。また、測定時のリファレンスには空のアルミニウムパンを用いた。DSC2920Modulated DSCは熱流速型の測定装置であるため、窒素ガスを50cc毎分セル内に流した。
【0034】
この測定では透明導電膜は、高分子基板から分離し採取する。その方法としては、鋭利な刃物で、注意深く削り落とす方法や、化学的な処理をする方法が挙げられる。化学的な処理方法としては、クロロホルム、メチレンクロライド、オルソクロロフェノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、トリフルオロ酢酸等の溶媒に高分子基板を溶解させ、次いでガラスフィルターで不溶物として残る透明導電膜を濾過し試料として用いることができる。試料の採取に当たっては、溶媒に不溶の成分を目の粗いフィルターで濾過し、透明導電膜のみを別のガラスフィルターで濾過するといった手法が適切である。
【0035】
このように採取した透明導電膜からは例えば図1に示すような示差走査型熱量計のプロファイルが計測される。TA instruments社製DSC2920Modulated DSCにおいては、試料から発熱が起こる場合に、熱量が図1における縦軸Heat Flowの増大として観測されるようになっている。
【0036】
本発明で、最大発熱温度と呼んでいる温度は、図1に矢印で示したような、発熱量が極大を迎え、その後発熱量が減少する、所謂ピーク形状において最も発熱量が最も大きい温度として定義している。
【0037】
本発明の透明導電膜は、最大発熱温度を150〜300℃の範囲に有する。より好ましくは、170〜250℃の範囲に有する。また、発熱の開始は、100℃以上が好ましいものの、必ずしもこの限りではない。このような膜は、130℃程度の熱処理では、結晶化を起こさせるために、1時間以上の長い時間が必要であることがわかった。
【0038】
また、本願発明とは、直接的な関係を持たないものの、300〜400℃の範囲に発熱の極大を有するDSCチャートが得られている。これは、150〜300℃に現れるピークとは物理的意味が異なり、透明導電膜の結晶化のみならず酸化されることに由来するピークである。300〜400℃という温度は、一般にガラス基板上に形成されてなる透明導電膜を熱処理するときに用いられている温度である。ガラス基板上に形成されてなる透明導電膜を完全に結晶へ相転移させるためには、300〜400℃の温度が必要であることを示唆していると考えられる。
【0039】
本発明の透明導電膜は、毎分20度の昇温速度で、示差走査型熱量計で30℃から550℃の範囲を走査したときに、図1に図示したようなベースライン11によって囲まれた発熱が開始する温度から450℃程度の温度範囲におけるピーク状のプロファイルの面積として定義される。そして、発熱量が10〜140J/gの範囲であること、より好ましくは、30〜140J/gであることが好ましい。10J/gより小さい発熱量では、結晶化が130℃程度の温度で容易に起こってしまう可能性がある。また、140J/gより大きい発熱量では、結晶化は起こり難いものの、抵抗値の制御がやや困難になる傾向にある。
【0040】
本発明による、透明導電積層体は、素子形成工程における熱履歴によって、容易には結晶化しないのみならず、非晶質透明導電膜に特有の表面平坦性が確保されている。したがって、液晶表示素子を鑑みた場合、並びに有機EL素子を鑑みた場合、特に優れた加工性能を発揮できる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0042】
[実施例1]
真空槽の背圧を1.3×10-5Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は4.6×10-3Paであった。
【0043】
酸化錫を5重量%含む、In−Sn−Oからなる焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度5℃、0.1mm厚みのポリカーボネイト基板上へ、330nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
【0044】
次いで、該透明導電積層体の一部をメチレンクロライドに浸積しポリカーボネイト基板を溶解させ、残った透明導電膜をガラスフィルターにて濾過し採取した。
【0045】
この透明導電膜の熱特性を示差走査型熱量計で30〜550℃の範囲を毎分20℃の昇温速度で測定したところ、図1に示すように発熱は80℃から始まった。また、最大発熱温度は260℃であった。また、発熱量は22J/gであった。
【0046】
上記透明導電積層体を130℃の熱処理したところ、透明導電体は4時間後にも、ほとんど結晶化を起こしていなかった。
【0047】
[実施例2]
真空槽の背圧を1.3×10-5Paとし、反応ガスとして酸素を導入せず、不活性ガスとしてArを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。
【0048】
酸化錫を5重量%含む、In−Sn−Oからなる焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度5℃、0.1mm厚みのポリカーボネイト基板上へ、330nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
【0049】
次いで、該透明導電積層体の一部をメチレンクロライドに浸積しポリカーボネイト基板を溶解させ、残った透明導電膜をガラスフィルターにて濾過し採取した。
【0050】
この透明導電膜の熱特性を示差走査型熱量計で30〜550℃の範囲を毎分20℃の昇温速度で測定したところ、発熱が80℃から始まった。最大発熱温度は240℃となっていた。また、発熱量は36J/gであった。この積層体は、実施例1と同様の熱処理において透明導電体は4時間後にも、ほとんど結晶化を起こしていなかった。
【0051】
[実施例3]
真空槽の背圧を1.3×10-3Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は2.7×10-3Paであった。
【0052】
酸化錫を5重量%含む、In−Sn−Oからなる焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度5℃、0.1mm厚みのポリカーボネイト基板上へ、330nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
【0053】
次いで、該透明導電積層体の一部をメチレンクロライドに浸積しポリカーボネイト基板を溶解させ、残った透明導電膜をガラスフィルターにて濾過し採取した。
【0054】
この透明導電膜の熱特性を示差走査型熱量計で30〜550℃の範囲を毎分20℃の昇温速度で測定したところ、発熱が110℃から始まった。最大発熱温度は200℃であった。また、発熱量は130J/gであった。この積層体は、実施例1と同様の熱処理において透明導電体は4時間後にも、ほとんど結晶化を起こしていなかった。
【0055】
[比較例1]
真空槽の背圧を1.3×10-5Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は2.7×10-3Paであった。
【0056】
酸化錫を5重量%含む、In−Sn−Oからなる焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度5℃、0.1mm厚みのポリカーボネイト基板上へ、330nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
【0057】
次いで、該透明導電積層体の一部をメチレンクロライドに浸積しポリカーボネイト基板を溶解させ、残った透明導電膜をガラスフィルターにて濾過し採取した。
【0058】
この透明導電膜の熱特性を示差走査型熱量計で30〜550℃の範囲を毎分20℃の昇温速度で計測したところ、発熱が80℃から始まった。また、最大発熱温度は130℃であった。発熱量は18J/gであった。なお、この積層体は、実施例1と同様の熱処理において1時間以内に結晶化した。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高分子基板上に低温プロセスにて形成した非晶質、或いは、非晶質と結晶質が混在した透明導電膜を有する透明導電積層体において、熱処理に対し、例えば100〜150℃程度の温度による熱処理により容易に結晶化を起こし難い透明導電膜を有する透明導電積層体を供給することができる。そして、本発明による透明導電積層体は、エッチング工程を含む液晶表示素子形成や有機EL素子形成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1にて観測されたDSC曲線の測定図である。
Claims (4)
- 高分子基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体において、該透明導電膜は示差走査型熱量計により毎分20℃の昇温速度で30℃から550℃まで走査したときに最大発熱温度が150〜300℃の範囲にあることを特徴とする透明導電積層体。
- 透明導電膜は示差走査型熱量計により毎分20℃の昇温速度で30℃から550℃まで走査したときに発熱量が10〜140J/gの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の透明導電積層体。
- 透明導電膜が、酸化インジウムの80〜98重量%に対して、2〜20重量%の酸化錫、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化チタン及び酸化ゲルマニウムからなる群より選ばれてなる1種以上の酸化物を含む請求項1又は2記載の透明導電積層体。
- 透明導電膜の厚さが10〜350nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電積層体。
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