JP4514268B2 - 水性塗料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い硬度、優れた塗膜耐久性を示す塗膜を提供し得る水系塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機溶剤の大気中放出による環境問題から溶剤系塗料は使用範囲が限定されつつあり、その代替としての水系塗料の適応が望まれている。しかし、水系塗料は、水溶性樹脂またはエマルジョン等の水分散型樹脂を用いており、その構成上、水が媒体であることから低い蒸発性、親水性残基や乳化剤等の親水性成分の残留、分散粒子間の融着による塗膜形成から塗膜の不均一化が避けられない。その結果、溶剤系塗料に対し、乾燥性、耐水性や耐候性等の塗膜耐久性、仕上がり外観等で劣る傾向にある。
【0003】
さらに、エマルジョン型の水系塗料の場合、先述のように粒子間の融着による塗膜形成から必然的に塗工温度を、ガラス転移温度(以下Tgと表現することもある)以下とする制約が加わり、その結果、Tgを高めることによる塗膜硬度の向上が困難となる。これに対し、融着促進のために添加される一般に成膜助剤と呼ばれる高沸点溶剤の添加量を増加させることも考えられるが、有機溶剤量減の水系化の目的に反するものとなりかねない。
【0004】
ところで、水系塗料における塗膜物性の改良、高Tg化による塗膜への硬度付与を目的とした検討は、種々検討されており、従来型の非反応性エマルジョンでは構造制御として分子量制御、また、多層構造化、異種エマルジョンの組み合わせ、粒子径の選択等の粒子構造制御が行われている。例えば、以下の方法が知られている。
1.分子量制御を主とする検討としては、重量平均分子量300000以上、ゲル分率10%以下とする樹脂の分子量増と架橋の抑制による耐候性、耐クラック性改善(特開平8−176467)等が知られている。
2.粒子構造制御を主とする検討としては、高Tgエマルジョンと低Tgエマルジョンのブレンドによる耐ブロッキング性改良(EP0,466,409A1、特開平7−41683、特開平9−111154)、高Tgコアと低Tgシェルを有する多層エマルジョンによる高粘着温度化、高光沢化(特開平2−233786)等が知られている。
【0005】
上記の検討において、1.分子量制御、特にゲル分率低減は、高Tg化と成膜性または塗膜伸びの付与を両立するが、耐久性、特に樹脂Tgに近い温度域での耐温水性が低下する欠点があった。また、上記の2.粒子構造制御、Tgの異なるエマルジョンのブレンドまたは粒子の多層構造化は、高Tg化と塗膜外観、耐久性のバランスが不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑み、高Tgで高い塗膜硬度を示しながら、十分な塗膜外観と耐久性を示す、新規な構造制御による水性塗料組成物を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成からなる新規な水性塗料組成物を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
1)異なるガラス転移温度を有する2つの樹脂成分(a)、(b)を含有する水性塗料組成物であって、樹脂成分(a)のアセトン抽出によるゲル分率が20重量%以下、樹脂成分(a)のガラス転移温度Tga、樹脂成分(b)のガラス転移温度Tgbが、Tga−Tgb>20℃、樹脂成分(a)と樹脂成分(b)の重量比が固形分比で(a)/(b)=99/1〜60/40であり、塗膜形成後に少なくとも2つの相を形成しうる水性塗料組成物。
2)1)に記載の組成物に、(I)式で示される水酸基または加水分解性基を含有するシラン化合物および/または該シラン化合物の部分縮合物(A)を組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、0.05〜10重量部添加してなる水性塗料組成物。
【0008】
【化2】
(式(I)中、R1↓は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基から選ばれた1価の炭化水素基を示し、R1↓が2個以上存在する場合、それらは同一であってよく、異なっていてもよい。aは1〜3の整数を示す。Xは、水酸基および/または水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基より選ばれる加水分解性基を示し、Xが2個以上存在する場合、それらは同一であってよく、異なっていてもよい)
3)エマルジョン型の水性樹脂を用いてなる1)乃至2)の水性塗料組成物。
4)前記樹脂成分(a)と樹脂成分(b)が各々エマルジョン粒子の形態(樹脂成分(a)のエマルジョン粒子を(a−1)、樹脂成分(b)のエマルジョン粒子を(b−1)という)をなした2種類のエマルジョンの混合物である1)乃至3)記載の水性塗料組成物。
5) エマルジョン(a−1)とエマルジョン(b−1)の粒子径の比が(a−1)/(b−1)≦2/1.5である4)に記載の水性塗料組成物。
6) (a−1)の粒子径が100〜600nm、エマルジョン(b−1)の粒子径が450nm以下である4)乃至5)に記載の水性塗料組成物。
7) エマルジョン(a−1)のガラス転移温度が25℃以上、エマルジョン(b−1)のガラス転移温度が5℃以下である4)乃至6)に記載の水性塗料組成物。
8) エマルジョン(a−1)のガラス転移温度が25℃以上、エマルジョン(b−1)のガラス転移温度が0℃以下である4)乃至7)に記載の水性塗料組成物。
9) エマルジョン(a−1)が、その重合時に連鎖移動剤を用いて製造されたアクリル系樹脂エマルジョンである4)乃至8)に記載の水性塗料組成物。
10) エマルジョン(a−1)が、全単量体中に不飽和カルボン酸を0〜0.5重量%、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体を1〜10重量%含有する単量体を共重合させて製造されたアクリル系樹脂エマルジョンである4)乃至9)に記載の水性塗料組成物。
11)エマルジョン(a−1)、エマルジョン(b−1)の一方または両方が反応性乳化剤を用いて乳化重合されたアクリル系樹脂エマルジョンである4)乃至10)記載の水性塗料組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の水性塗料組成物は、異なるガラス転移温度を有する2つの樹脂成分(a)、(b)を含有する水性塗料組成物であって、塗膜形成後に少なくとも2つの相を形成しうる水性塗料組成物であれば、その樹脂成分は特に限定されないが、(a)成分、(b)成分を各々エマルジョン粒子の形態なす2種類のエマルジョンの混合物を用いるか、或いは(a)成分、(b)成分の各成分を単一粒子中に内包し多層エマルジョンとしたものを用いることが挙げられる。
【0010】
本発明においてガラス転移温度とは、下記のFoxの式により算出したもののことをいう。
【0011】
ガラス転移温度(Tg)
【0012】
【数1】
(式中、Wi↓:各共重合成分の重量分率、Tgi↓ :各共重合成分のホモポリマーのTg[K]を表わす)
ただし、上記Foxの式が適用できない場合には、含有される各成分を単独で用いて形成させた塗膜の、示差走査熱量測定(DSC)による実測値を用いる。
【0013】
本発明では、各成分のTgの差、つまり高いTgを有する成分と、低いTgを有する成分の2成分を含有することが必須であり、高いTgを有する樹脂成分(a)のTga、低い樹脂成分(b)のTgbが、Tga−Tgb>20℃であることが必須である。各成分のTgの差が20℃未満の場合では、(b)による成膜性改善効果が不足し、塗膜外観、耐久性のバランス確保が不十分となる。
【0014】
さらに、高いTgを有する成分(a)のアセトン抽出によるゲル分率を20重量%以下とすることも必須である。(a)成分のアセトン抽出によるゲル分率とは、(a)成分単独で用いて形成した塗膜のアセトン抽出によるゲル分率のことであり、以下の方法により求めた値のことをいう。
【0015】
単独での乾燥塗膜のアセトン抽出によるゲル分率
エマルジョンに成膜助剤である2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを室温で成膜可能となる量まで加え、室温で1日以上放置した組成物をテフロンフィルム上に膜厚200〜250μmで塗装する。これを23℃、50〜55RH%にて14日以上乾燥させ、単独での乾燥塗膜を得る。この塗膜をテフロンフィルムより剥離し、初期重量を測定後、23℃にて大過剰のアセトン中に24hr浸漬する。浸漬した塗膜を200meshのステンレス金網でろ別し、80℃オーブン中で3hr乾燥して抽出残分の重量を測定する。ゲル分率は、下記の計算式により算出する。
【0016】
【数2】
高Tgを有する成分(a)成分のアセトン抽出によるゲル分率が20重量%を上回る場合では塗膜外観、耐久性のバランス確保が不十分となる。
【0017】
本発明においてはまた、樹脂成分(a)と樹脂成分(b)成分の重量比が(a)/(b)=99/1〜60/40であることも必須である。(a)と(b)の重量比が、(a)/(b)<60/40の場合では高Tgによる塗膜の高硬度化が不十分となる。
【0018】
本発明の塗料組成物には、このような各成分のTgの差、分離状態、さらには樹脂成分(a)のアセトン抽出によるゲル分率を20重量%以下とするための樹脂の重合度(分子量)の制御が重要となるが、エマルジョン混合物を用いる方法は、これらを容易に制御できることから好ましい。
【0019】
本発明の水性塗料用組成物に用いることのできるエマルジョン混合物としては、例えば、Tgの差が20℃以上である2種類の樹脂エマルジョン、高いTgを有するエマルジョン(a−1)、低いTgを有するエマルジョン(b−1)を、固形分重量比にて(a−1)/(b−1)=99/1〜60/40で混合してなるエマルジョン混合物であって、エマルジョン(a−1)のアセトン抽出によるゲル分率が20重量%以下であるものが挙げられる。このようなエマルジョン混合物とすれば、容易に本発明の目的とする、異なる相を形成しうる水性塗料組成物を得ることが可能であり、以下、エマルジョン混合物について説明する。
【0020】
エマルジョン混合物をなす、エマルジョン(a−1)、エマルジョン(b−1)は、エマルジョン型の水性樹脂であれば特に限定はないが、例えば、アクリル系樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂およびポリオレフィン樹脂等が挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも1種または2種以上の組み合わせを用いることもできる。これらの中では、形成される塗膜の耐候性および耐薬品性、また(a−1)でのゲル分率の制御等の樹脂設計の幅が広くとれることから、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好ましく、より好ましくはアクリル系樹脂である。
【0021】
エマルジョン混合物をなす、(a−1)、(b−1)の製造方法としては、乳化重合等のエマルジョン重合方法、重合体の水分散法が挙げられる。
【0022】
各エマルジョン(a−1)、(b−1)からのエマルジョン混合物の調製は、製造温度以下の通常の温度範囲、通常の攪拌装置での混合で可能である。例えば、一方のエマルジョンの乳化重合を完了後、その反応器に別に重合した他方のエマルジョンを添加し、反応器中で混合することでエマルジョン混合物を調製することも可能である。また、各種添加剤を配合して塗料化する際にエマルジョンを混合することも可能である。
【0023】
エマルジョン混合物、及び、これををなす(a−1)、(b−1)の固形分濃度は、20〜70重量%までの範囲が好ましい。固形分濃度が70重量%を越えると、系の粘度が著しく上昇するため、乳化重合法の場合では反応に伴う発熱を除去することが困難になったり、各成分の混合、重合機からの取り出し等に不都合を生じる。また、固形分濃度が20重量%以下の場合、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂の量が少なく、経済面から考えた場合、著しく不利となり、また塗料としての用途上の要求からも20重量%以下の濃度では、得られる塗膜の膜厚が薄くなってしまい、性能劣化を起こしたり、塗装作業性の点で不利となる。
【0024】
エマルジョン混合物をなす、(a−1)、(b−1)は、その粒子径に限定はないが、特に粒子径の比が(a−1)/(b−1)≧2/1.5である場合には、塗膜となった場合に、(a−1)が高Tg成分による連続相、(b−1)が低Tg成分による非連続相を形成することから、硬度、塗膜外観(平滑性)および塗膜耐久性のバランスにより適した融着形態となり好ましい。本発明でいう粒子径は、動的光散乱法により測定される平均粒子径のことをいう。
【0025】
より具体的には、(a−1)の粒子径が100〜600nmであって、(b−1)の粒子径が450nm以下であるものが製造が容易であり、塗膜外観の点でも好ましい。(a−1)の粒子径が600nmを上回る場合では組成物の安定性が低下する傾向にあり、沈降分離等の生じる可能性がある。また、(a−1)の粒子径が100nm未満となる場合では粘度が著しく上昇するため、エマルジョンの固形分量を高かめることが困難となる傾向にある。上記粒子径において、(a−1)の粒子径が100〜360nmであって、(b−1)の粒子径が5〜270nmである場合、塗料の粘度調整、塗膜外観の点でより好ましい。
【0026】
エマルジョン混合物をなす、(a−1)、(b−1)のTgは、両者の差が20℃以上であれば限定はないが、(a−1)のTgが25℃以上であって、(b−1)のTgが5℃以下の場合、被塗物が室温近傍で使用される一般的な塗料として塗膜物性のバランスが良好となり好ましい。
【0027】
また、硬度の向上、特に常温乾燥用の配合における室温乾燥(養生)直後の初期表面硬度の向上が可能であることから、(a−1)のTgが0℃以下であることがより好ましく、特には−5℃以下の場合が好ましい。(b−1)による粘着性の発生、樹脂系の平均Tgの低下から表面硬度低下が予測されるにも関わらず、逆に硬度が向上するこの現象は、詳細は不明であるが、(a−1)がより効果的に融着していることが推定される。
【0028】
(a−1)は、アセトン抽出によるゲル分率を20重量%以下とすることが重要であるが、アクリル系樹脂であって、連鎖移動剤をその重合時に用いて製造されたものであることが、重合安定性、乳化重合での粒子径の制御等に影響を及ぼすことなく製造可能であることから好ましい。この様な連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等メルカプタン類;クロロホルム等有機ハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0029】
一方、(b−1)は、ゲル分率は特に限定されないが、これが低い場合では耐水性に悪影響の及ぶことも考えられ、その重合時には連鎖移動剤を用いないものが好ましい。
【0030】
また、本発明では、(a−1)が不飽和カルボン酸を実質的に含有せず、ノニオン性の親水性単量体であるポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体を含有するアクリル系樹脂である場合、塗膜の硬度、耐久性が一段と向上することから好ましい。具体的には、単量体の総量中に不飽和カルボン酸を0〜0.5重量%、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体を1〜10重量%を含有するものが好ましい。ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体は、重合性の点で片末端(メタ)アクリロキシポリオキシアルキレンが好ましく、例えば、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ(以上日本油脂(株)製)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)等が挙げられる。
【0031】
エマルジョン混合物をなす、(a−1)、(b−1)がアクリル系樹脂である場合、これを形成するアクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2―エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート;n−ブチルアクリレート、2―エチルヘキシルアクリレート等の炭素数1〜20のアルキルアクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数4〜20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;炭素数4〜20のシクロアルキルアクリレート;アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の炭素数3〜20のアラルキル(メタ)アクリレート;炭素数3〜20のアラルキルアクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシスチレン、アロニクス5700(東亜合成化学(株)製)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン付加物であるPlaccelFA−1、PlaccelFA−4、PlaccelFM−1、PlaccelFM−4(以上ダイセル化学(株)製)、先述の(メタ)アクリロキシポリオキシアルキレン等の水酸基含有アクリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロキシエチルスルホン酸等の酸性基含有アクリレート;あるいは、不飽和カルボン酸、酸性基含有アクリレートの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;イソシアネート基含有化合物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応物等であるウレタン結合を含むウレタンアクリレート化合物;(メタ)アクリレート基含有オルガノポリシロキサン等の(メタ)アクリル基含有シリコーンマクロマー等の1種または2種以上が挙げられる。
【0032】
その他共重合可能なビニル単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル重合体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル化合物、ジアリルフタレート等のアリル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0033】
また、(b−2)では、上記に加えて、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレートなどの重合性の不飽和結合を2つ以上持った単量体も使用し、生成するエマルジョンが架橋構造を持つものとすることも可能である。
【0034】
エマルジョン混合物をなす、(a−1)、(b−1)をアクリル系樹脂として得る場合、乳化重合法が製造容易であり、好ましい。乳化重合法は、バッチ重合、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合等の通常の乳化重合の手段を適宜選択することができる。特にモノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合は、製造時の安定性を確保する上で適している。
【0035】
乳化重合に使用する乳化剤としては、通常使用される物であれば特に限定はなく、イオン性あるいは非イオン性の界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ニューコール−560SF、ニューコール−707SF(以上、日本乳化剤(株)製)等の(ポリ)オキシエチレン鎖および硫酸エステル塩等のアニオン性基を有する乳化剤;イミダリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイドなどのアンモニウム塩;非イオン性界面活性剤としては、ニューコール−504、ニューコール−512(以上、日本乳化剤(株)製)等のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレン類;L−77、L−720、L−5410、L−7602、L−7607(以上ユニオンカーバイド社製)などのシリコーンを含むノニオン性乳化剤などが代表的なものである。また、乳化剤に替えて、不飽和カルボン酸含有アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等の水溶性樹脂を用いる、いわゆるソープフリー重合も適応可能である。
【0036】
乳化剤として、いわゆる反応性乳化剤として重合反応性を有するアクアロンHS05、HS10、HS20、BC05、BC10、RN10、RN20、RN30、RN40、RN50(以上第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10N(以上旭電化工業(株)製)、Antox−MS−60、Antox−MS−2N、RMA−653(以上日本乳化剤(株)製)、ラテムルS−180(花王(株)製)等を用いると塗料配合時の攪拌やローラー塗装における泡の抑制、得られる塗膜の耐水性の向上を図ることができ、好ましい。
【0037】
重合開始剤としては、通常使用するものを用いればよいが、重合の安定性などの点から、レドックス系触媒を用いるのが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムと酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットの組合せ、過酸化水素とアスコルビン酸の組合せ、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物と酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどとの組合せなどが用いられる。特に有機過酸化物と還元剤の組合せが好ましい。また、触媒活性を安定的に得るために硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン4酢酸2ナトリウムの様なキレート剤を併用してもよい。
【0038】
本発明においては、(I)式で示されるシラン化合物および/または該シラン化合物の部分縮合物(A)を添加することにより、耐久性が更に改善される。
【0039】
【化3】
(式(I)中、R1↓は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基から選ばれた1価の炭化水素基を示し、R1↓が2個以上存在する場合、それらは同一であってよく、異なっていてもよい。aは1〜3の整数を示す。Xは、水酸基および/または水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基より選ばれる加水分解性基を示し、Xが2個以上存在する場合、それらは同一であってよく、異なっていてもよい)
シラン化合物および/または該シラン化合物の部分縮合物(A)は、水酸基または加水分解性基としてアルコキシ基を有するものが化合物自体の安定性、樹脂への添加時の安定性の点で好ましい。この様な化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、2―エチルヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシランフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(アミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、AFP−1(信越化学工業(株)製)、QP8−5314(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)等のアルコキシシラン;ジフェニルシランジオール、SH−6018(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)等のシラノール化合物;上記アルコキシシラン、シラノール化合物の混合物;上記アルコキシシラン、シラノール化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物が挙げられる。
【0040】
(A)成分は、本発明の水性塗料組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、0.05〜10重量部添加することが好ましい。10重量部より多い場合では未反応の(A)により可塑化され、塗膜の硬度が大きく低下する場合があり、好ましくない。
【0041】
(A)の組成物への添加は、通常の温度範囲(0〜100℃)、通常の攪拌装置で可能であり、組成物に直接、或いは組成物が複数の樹脂成分よりなる場合では各樹脂成分に添加後、組成物とすることもできる。この時に組成物、或いは各樹脂成分は、pH3〜12に調整するのが好ましく、さらには、塩基性化合物でpHを7以上に調整するのが好ましい。この際に使用する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、トリプロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、ジエタノールアミン、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物は、異なるガラス転移温度を有する2つの樹脂成分(a)、(b)を含有することを必須とするが、発明の効果を損なわない程度であれば、他の樹脂成分を併用することもできる。他の樹脂成分は、添加形態、組成に特に限定はないが、エマルジョンの混合を用いる場合ではエマルジョン(a−1)、エマルジョン(b−1)内の一部、または他のエマルジョンとして添加することが挙げられる。
【0043】
本発明の組成物は、必要に応じて顔料(例えば、二酸化チタン、炭酸カルシルム、炭酸バリウム、カオリン等の白色顔料、カーボンブラック、ベンガラ、シアニンブルー等の有色系顔料)、凍結防止剤(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等)、可塑剤、溶剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の通常のコーティング材組成物に使用される添加剤を混合して使用することも差し支えない。
【0044】
本発明の組成物は、浸漬、刷毛、ローラー、スプレー、フローコーター、ロールコーター等の常法により各種被塗物(物体)に塗装でき、5℃以上での養生、または60〜200℃での焼き付けより、その表面に塗膜を形成することができる。
【0045】
本発明は、非反応性エマルジョンにおいて高Tgによる高硬度を示しながら十分な塗膜外観と耐久性を示し、金属、セラミック、ガラス、セメント、窯業系成形物、プラスチック、木材、紙、繊維などからなる建築物、橋梁物、家電用品、産業機器などの下塗り、中塗り、または上塗り塗装に好適に使用しうる。
【0046】
【実施例】
以下に、本発明の水性組成物の調製方法と製造方法を実施例に基づき説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0047】
(製造例1〜8) アクリル系樹脂エマルジョン(a−1)の製造
還流冷却器、窒素ガス導入管、定量ポンプからの導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水40部(重量部、以下同様)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルフェート アンモニウム塩1.2〜1.5部、酢酸アンモニウム0.5部、ロンガリット0.3部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。表1に示す連鎖移動剤にn−ドデシルメルカプタンを含む組成のモノマー乳化物158部中の15部を滴下ロートを用いて30分かけて滴下して初期重合を行った。1時間攪拌後、これに、モノマー乳化物158部中の143部を定量ポンプより、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部を滴下ロートにより3時間かけて等速滴下した。この後、1時間後攪拌を行い、後重合を行った。室温まで冷却後、28wt%アンモニア水でpHを7.5乃至9とし、粒子径200〜300nm、樹脂固形分量約50wt%のアクリル系樹脂エマルジョンを得た。
【0048】
(製造例9〜14) アクリル系樹脂エマルジョン(b−1)の製造
還流冷却器、窒素ガス導入管、定量ポンプからの導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水50部(重量部、以下同様)、ドデシルスルフェート ナトリウム塩7.5部、ロンガリット0.3部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。表2に示す組成のモノマー乳化物160部を定量ポンプより、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部を滴下ロートにより3時間かけて等速滴下した。この後、1時間後攪拌を行い、後重合を行った。室温まで冷却後、28wt%アンモニア水でpHを7.5乃至9とし、粒子径50〜120nm、樹脂固形分量約45wt%のアクリル系エマルジョンを得た。
【0049】
製造例11は、製造例1〜8と同様の方法で表2に示す連鎖移動剤を含まないモノマー乳化物を用いて計算Tg=4.2℃、粒子径260nm、樹脂固形分量約50wt%のアクリル系エマルジョンを得た。
【0050】
(製造例15)アクリル系樹脂エマルジョンの製造
製造例1〜8と同様の方法で表3に示す連鎖移動剤を含まないモノマー乳化物を用いて計算Tg=31℃、粒子径290nm、樹脂固形分量約50wt%のアクリル系エマルジョンを得た。
【0051】
得られたアクリル系エマルジョンの評価は以下によった。結果を表1〜3に示す。
【0052】
計算Tg
先述、Foxの式より算出。尚、ポリオキシエチレンモノメタクリレート MA100はホモポリマーTg値不明のため、計算より除外した。
【0053】
MFT
MFT(最低造膜温度)を塗布厚み200μm、ヨシミツ精機(株)製 MFT1により測定。
【0054】
粒子径
Pacific Scientific社製NICONP Model 370により測定。
【0055】
ゲル分率
先述の方法に従い、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名CS12 チッソ(株)製)を樹脂固形分に対し、10〜20部加え、室温で1日以上放置した組成物をテフロンフィルム上に膜厚200〜250μmで塗装し、これを23℃、50〜55RH%にて14日乾燥させ、この塗膜のアセトン抽出ゲル分率を測定。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
(実施例1〜18、比較例1〜6)
製造例1〜8のアクリル系樹脂エマルジョン(a−1)および製造例15のアクリル系樹脂エマルジョン、製造例9〜14のアクリル系樹脂エマルジョン(b−1)とシラン化合物(A)を表5〜7に示す比率で混合し、水性組成物を得た。混合は、以下の方法によった。室温にてアクリル系樹脂エマルジョン(a−1)をビーカーに取り、ディスパー攪拌下にてアクリル系樹脂エマルジョン(b−1)を規定量添加し、エマルジョン混合物とした。28wt%アンモニア水でpHを7.5〜9に調整後、シラン化合物(A)をディスパー攪拌下にて滴下し、さらに30min以上攪拌し、水性組成物とした。
【0059】
塗膜物性
得られた水性組成物を表4に示す配合で白色エナメル配合物とし、塗膜物性を測定した。測定結果を表6〜8に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
(1)硬度
白色エナメル配合物を6milアプリケーターを用いてガラス板上に塗布し、23℃、50〜60%RHで14日乾燥して得た塗板(養生直後)、及び、屋外での曝露環境を想定し、23℃にて脱イオン水に7日浸漬後、23℃、50〜60%RHで8hr乾燥したもの(水浸漬7日)について23℃、50〜60%RHの雰囲気下で下記の方法で硬度を測定した。
【0062】
Knoop硬度: 微小硬度計 松岡精機(株)製MTX70型を用い、荷重5g/印加時間18secにて測定。数値が大きいほど硬度が高いことを示す。
Persoz硬度: 振子式硬度計 エリクセン(株)製PERSOZ硬度計を用いて測定。数値が大きいほど硬度が高いことを示す。
【0063】
(2)光沢
白色エナメル配合物を6milアプリケーターを用いてガラス板上に塗布し、23℃、50〜60%RHで14日乾燥して得た塗板について表面60°光沢を光沢計(ミノルタ(株)製GM−268)を用いて測定した。数値が大きいほど外観に優れることを示す。
【0064】
(3)耐水性、耐薬品性
水性アクリルシリコンディスパージョン系プライマーを5mm厚のスレート板上にローラー塗装し、室温で1日乾燥した後、白色エナメル配合物をエアースプレーで塗装し、23℃、50〜60%RHで14日間養生した。この塗装板を下記の条件で浸漬し、水道水で洗浄後、室温で8hr乾燥した。試験前後での塗装板の表面60°光沢を光沢計(ミノルタ(株)製GM−268)にて測定し、試験前に対する光沢保持率を算出した。数値の大きいほど各耐久性が高いことを示す。
【0065】
耐温水性: 40℃にて脱イオン水に28日浸漬。
【0066】
耐酸性: 23℃にて0.1規定硫酸水溶液に28日浸漬。
【0067】
耐アルカリ性: 23℃にて飽和水酸化カルシウム水溶液に28日浸漬。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
表6〜8より、本発明の水性組成物を用いた実施例1〜18は、白色エナメル配合物から得られる塗膜の硬度が水浸漬7日でKnoop硬度3以上、Persoz硬度100以上でありながら、60°光沢が75以上、耐温水性、耐酸性および耐アルカリ性が28日の長期浸漬においても60°光沢保持率75%以上を示した。
【0071】
エマルジョン混合物が同一であって、シラン化合物(A)の添加量及び種類の異なる実施例11乃至14より、シラン化合物(A)を含有する実施例12乃至14は、これを含有しない実施例11に比較して耐温水性、耐酸性が優位であった。
【0072】
同様のシラン化合物(A)を添加し、エマルジョン混合物をなす、(a−1)、(b−1)のTgが同一であって、その粒子径の比が異なる実施例3及び8より、粒子径の比が(a−1)/(b−1)=2/0.55である実施例3は、この比が2/1.8である実施例8に比較して初期硬度、耐温水性が優位であった。
【0073】
同様のシラン化合物(A)を添加し、同様の計算Tg、重量比、粒子径比となるエマルジョン混合物であって、(a−1)に不飽和カルボン酸を含有せず、ノニオン性の親水性単量体であるポリオキシアルキレンモノメタクリレートMA−100を含有する製造例3のアクリル系樹脂エマルジョンを用いた実施例3及び4は、(a−1)にアクリル酸を含有する製造例7及び8を用いた実施例6及び7に比較して、硬度が養生直後、水浸漬7日ともに高く、耐温水性、耐酸性および耐アルカリ性が60°光沢保持率で概ね90%以上と優位にあった。
【0074】
(b−1)に計算Tgが−5℃以下である製造例12〜14のアクリル系樹脂エマルジョンを用いた実施例9〜18は、養生直後の硬度がKnoop硬度で2以上、Persoz硬度で80以上を示した。同様のシラン化合物(A)を添加し、エマルジョン混合物の(a−1)の種類、(b−1)の製造処方、混合比が同一であって、(b−1)に計算Tgが−5℃以下の製造例12及び13を用いた実施例9及び12は、(b−1)に計算Tgが5℃の製造例9を用いた実施例3に比較して養生直後の硬度で優位にあった。
【0075】
同様のシラン化合物(A)を添加し、エマルジョン混合物(B)が同様の計算Tg、混合比であって、重合に使用する乳化剤に反応性乳化剤のアクアロンHS10、RN20を(a−1)に、アクアロンHS05を(b−1)に用いた実施例6は、重合に使用する乳化剤に非反応性の乳化剤を用いた実施例7に比較して、耐温水性、耐酸性および耐アルカリ性が優位にあった。
【0076】
比較例1は、(a−1)に重合時に連鎖移動剤を用いず、(a)を形成する(a−1)のゲル分率が本発明の範囲をはずれた35重量%である製造例15のアクリル系樹脂エマルジョンを用いたものであり、60°光沢が62と低かった。
【0077】
比較例2は、(a)/(b)の重量比に対応するエマルジョン混合物の(a−1)と(b−1)の固形分比が本発明の範囲をはずれた50/50となったものであり、硬度が低く、水浸漬7日でもKnoop硬度2以下、Persoz硬度100以下であった。
【0078】
比較例3〜6は、(b)を形成する(b−1)を含有していないものであり、養生直後の硬度が低く、耐温水性が光沢保持率が75%以下であった。また、耐アルカリ性も比較例5を除き、光沢保持率が75%以下であった。
【0079】
以上より、本発明の水性組成物は、高Tgによる塗膜の高硬度化と塗膜外観、耐久性として耐温水性、耐酸性および耐アルカリ性の全てをバランスが良く満たし、目的の効果を発現していることが明らかである。
【0080】
【発明の効果】
本発明による、異なるガラス転移温度を有する2つの樹脂成分(a)、(b)を含有する水性塗料組成物であって、樹脂成分(a)のアセトン抽出によるゲル分率が20重量%以下、樹脂成分(a)のガラス転移温度Tga、樹脂成分(b)のガラス転移温度Tgbが、Tga−Tgb>20℃、樹脂成分(a)と樹脂成分(b)の重量比が固形分比で(a)/(b)=99/1〜60/40であり、塗膜形成後に少なくとも2つの相を形成しうる水性塗料組成物は、高Tgによる塗膜の高硬度化と塗膜外観、耐久性として耐水性、耐薬品性のバランスを良好に満たすものである。本発明は、金属、セラミック、ガラス、セメント、窯業系成形物、プラスチック、木材、紙、繊維などからなる建築物、橋梁物、家電用品、産業機器などの下塗り、中塗り、または上塗り塗装に好適に使用可能である。
Claims (8)
- 異なるガラス転移温度を有する2つの樹脂成分(a)、(b)を含有する水性塗料組成物であって、
前記樹脂成分(a)と樹脂成分(b)が各々エマルジョン粒子の形態(樹脂成分(a)を構成するエマルジョン粒子を(a−1)、樹脂成分(b)を構成するエマルジョン粒子を(b−1)という)をなした2種類のエマルジョンの混合物であり、
エマルジョン(a−1)が、その重合時に連鎖移動剤を用いて製造されたアクリル系樹脂エマルジョンであり、
エマルジョン(b−1)が、アクリル系樹脂エマルジョンであり、
エマルジョン(a−1)とエマルジョン(b−1)の粒子径の比が(a−1)/(b−1)≧2/1.5であり、
樹脂成分(a)のアセトン抽出によるゲル分率が20重量%以下、樹脂成分(a)のガラス転移温度Tga、樹脂成分(b)のガラス転移温度Tgbが、Tga−Tgb>20℃、樹脂成分(a)と樹脂成分(b)の重量比が固形分比で(a)/(b)=99/1〜60/40であり、塗膜形成後に少なくとも2つの相を形成しうる水性塗料組成物。 - 請求項1に記載の組成物に、(I)式で示される水酸基または加水分解性基を含有するシラン化合物および/または該シラン化合物の部分縮合物(A)を組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、0.05〜10重量部添加してなる水性塗料組成物。
- エマルジョン型の水性樹脂を用いてなる請求項1又は2記載の水性塗料組成物。
- (a−1)の粒子径が100〜600nm、エマルジョン(b−1)の粒子径が450nm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
- エマルジョン(a−1)のガラス転移温度が25℃以上、エマルジョン(b−1)のガラス転移温度が5℃以下である請求項1乃至4いずれか1項に記載の水性塗料組成物。
- エマルジョン(a−1)のガラス転移温度が25℃以上、エマルジョン(b−1)のガラス転移温度が0℃以下である請求項1乃至5いずれか1項に記載の水性塗料組成物。
- エマルジョン(a−1)が、全単量体中に不飽和カルボン酸を0〜0.5重量%、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体を1〜10重量%含有する単量体を共重合させて製造されたアクリル系樹脂エマルジョンである請求項1乃至6いずれか1項に記載の水性塗料組成物。
- エマルジョン(a−1)、エマルジョン(b−1)の一方または両方が反応性乳化剤を用いて乳化重合されたアクリル系樹脂エマルジョンである請求項1乃至7いずれか1項に記載の水性塗料組成物。
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