本発明の樹脂エマルションは、前記したように、内層、中間層および外層の少なくとも3層の樹脂層を有するエマルション粒子を含有する。エマルション粒子が内層、中間層および外層の3層を有する場合、内層と外層との間に存在する層が中間層である。また、エマルション粒子が内層と2層以上の中間層と外層とを有する場合、当該中間層を構成している複数の樹脂層のうちの1層が本発明における中間層に該当することが好ましい。したがって、本発明においては、エマルション粒子には本発明の目的が阻害されない範囲内で、内層、前記ガラス転移温度を有する中間層および外層以外の層が含まれていてもよい。
本発明の樹脂エマルションは、エマルション粒子の中間層を構成する重合体のガラス転移温度が当該中間層以外の層を構成する重合体のいずれのガラス転移温度よりも10℃以上低いことを特徴とする。本発明の樹脂エマルションは、前記構成を有するので、エマルション粒子自体の硬度を低下させることなく、当該エマルション粒子を含有する樹脂エマルションからなる塗膜の低温成膜性を向上させることができ、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する。
エマルション粒子の各層を構成する重合体のガラス転移温度は、当該重合体の原料として用いられる単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
重合体のガラス転移温度は、例えば、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、tert−ブチルメタクリレートの単独重合体では107℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、シクロヘキシルアクリレートの単独重合体では16℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、イソボルニルメタクリレートの単独重合体では180℃、ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、スチレンの単独重合体では100℃、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(TMSMA)の単独重合体では70℃、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの単独重合体では130℃である。
本明細書においては、重合体のガラス転移温度は、特に断りがない限り、前記式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%以下である場合には、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
各層を形成する重合体のガラス転移温度は、各層を構成する重合体の原料として用いられる単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
エマルション粒子の中間層を構成する重合体のガラス転移温度は、当該中間層以外の層を構成する重合体のいずれのガラス転移温度よりも10℃以上低い温度であるが、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、当該中間層以外の層を構成する重合体のいずれのガラス転移温度よりも15℃以上低い温度であることが好ましく、20℃以上低い温度であることがより好ましく、25℃以上低い温度であることがさらに好ましく、30℃以上低い温度であることがさらに一層好ましい。
内層を形成する重合体は、内層形成用単量体成分を重合させることによって得ることができる。
内層形成用単量体成分は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、脂環構造を有する単量体が含まれていることが好ましい。
脂環構造を有する単量体において、脂環構造は、好ましくは炭素数が4〜20のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数が4〜12のシクロアルキル基である。脂環構造を有する単量体としては、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、これらの単量体は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのシクロアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10のシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
脂環構造を有する単量体のなかでは、炭素数が4〜20のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。これらのシクロアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
内層形成用単量体成分における脂環構造を有する単量体の含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、その上限値は100質量%である。したがって、内層形成用単量体成分は、脂環構造を有する単量体のみで構成されていてもよい。また、内層形成用単量体成分には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、脂環構造を有する単量体と共重合可能な単量体が含有されていてもよい。
脂環構造を有する単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、芳香族系単量体、エチレン性不飽和単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、本明細書にいう芳香族系単量体およびエチレン性不飽和単量体は、いずれも、脂環構造を有しない単量体を意味する。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン系単量体、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、塗膜の耐水性を高める観点から、スチレンが好ましい。
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアラルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエチレン性不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アジリジニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアジリジニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
脂環構造を有する単量体と共重合可能な好適な単量体としては、例えば、芳香族系単量体、アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。脂環構造を有する単量体と共重合可能な単量体のなかでは、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、スチレン、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、本発明においては、エマルション粒子に紫外線安定性や紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線安定性単量体、紫外線吸収性単量体などを内層、中間層または外層に用いられる単量体成分に含有させてもよい。これらの層のなかでは、エマルション粒子に紫外線安定性や紫外線吸収性を効率よく付与する観点から、外層に用いられる単量体成分に紫外線安定性単量体、紫外線吸収性単量体などを含有させることが好ましい。
紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
内層形成用単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で内層形成用単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた内層形成用単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。媒体は、あらかじめ反応容器に仕込んでおいてもよく、あるいはプレエマルションとして使用してもよい。また、媒体は、必要により、単量体成分を乳化重合させ、樹脂エマルションを製造しているときに用いてもよい。
内層形成用単量体成分を乳化重合させる際には、内層形成用単量体成分、乳化剤および媒体を混合した後に乳化重合を行なってもよく、内層形成用単量体成分、乳化剤および媒体を攪拌することによって乳化させ、プレエマルションを調製した後に乳化重合を行なってもよく、あるいは内層形成用単量体成分、乳化剤および媒体のうちの少なくとも1種類とその残部のプレエマルションとを混合して乳化重合を行なってもよい。内層形成用単量体成分、乳化剤および媒体は、それぞれ一括添加してもよく、分割添加してもよく、あるいは連続滴下してもよい。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子上に中間層および外層を形成させる際に、前記樹脂エマルション中で前記と同様にして単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上に中間層および外層を形成させることができる。また、前記中間層および外層が形成されたエマルション粒子上にさらに必要により外層を形成させる場合には、前記と同様にして樹脂エマルション中で単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上にさらに外層を形成させることができる。このように多段乳化重合法により、多層構造を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションを調製することができる。
なお、多層構造を有するエマルション粒子を調製する際には、前記内層を形成する乳化重合を行なう前に1段または複数段の乳化重合を行なってもよく、前記内層を形成する乳化重合と前記中間層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。また、前記中間層を形成する乳化重合と前記外層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。さらに、前記外層を形成する乳化重合の後に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの単量体のうちの1種類以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
乳化剤の量は、内層形成用単量体成分100質量部あたり、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、さらに一層好ましくは3質量部以上であり、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、さらに一層好ましくは4質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
内層形成用単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の内層形成用単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、内層形成用単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、エマルション粒子を構成する樹脂の重量平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。内層形成用単量体成分100質量部あたりの連鎖移動剤の量は、エマルション粒子の重量平均分子量を適切に調整する観点から、0.01〜10質量部であることが好ましい。
また、反応系内には、必要により、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、内層形成用単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜3質量部程度である。
内層形成用単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
内層形成用単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
内層形成用単量体成分を乳化重合させるのに要する重合時間は、重合温度などによって異なるので一概には決定することができないが、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1〜4時間程度である。
なお、内層形成用単量体成分を乳化重合させるとき、得られる重合体が有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段で単量体成分を添加した後に使用してもよく、例えば、1段目の重合反応と2段目の重合反応との間に使用してもよく、初期の乳化重合反応の終了時に使用してもよく、エマルション粒子の外層を形成させた後に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミンなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、耐候性および耐温水白化性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましい。
また、単量体成分を乳化重合させるとき、耐水性、耐透水性伸張性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上のようにして内層形成用単量体成分を乳化重合させることにより、内層を形成する重合体がエマルション粒子の形態で得られる。
内層を形成する重合体は、架橋構造を有していてもよい。内層を形成する重合体の重量平均分子量は、内層を形成する重合体が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、さらに一層好ましくは60万以上である。内層を形成する重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、低温成膜性および伸張性に優れた塗膜を形成する観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
内層を形成する重合体のガラス転移温度は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、より一層好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、より一層好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
次に、内層を構成する重合体からなるエマルション粒子を形成させた後、当該エマルション粒子の表面に中間層を形成させる。中間層は、前記エマルション粒子の存在下で中間層形成用単量体成分を乳化重合させることにより、内層を構成する重合体からなるエマルション粒子の表面に形成させることができる。
中間層形成用単量体成分を乳化重合させる際には、内層を形成する重合体の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後に中間層形成用単量体成分を乳化重合させることが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
なお、内層を形成させた後、中間層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層が形成されていてもよい。したがって、本発明の樹脂エマルションにおいては、内層を形成させた後、中間層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層を形成させる操作が含まれていてもよい。
中間層形成用単量体成分としては、内層形成用単量体成分で例示したものを用いることができる。中間層形成用単量体成分としては、例えば、芳香族系単量体、脂環構造を有する単量体、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
中間層形成用単量体成分には、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、脂環構造を有する単量体が含まれていることが好ましい。脂環構造を有する単量体としては、内層形成用単量体成分に用いられる脂環構造を有する単量体と同様のものを例示することができる。
脂環構造を有する単量体のなかでは、炭素数が4〜20のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
中間層形成用単量体成分における脂環構造を有する単量体の含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
また、中間層形成用単量体成分には、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が4〜12であるアルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのオキソ基含有単量体などが含まれていることが好ましく、アルキル基の炭素数が4〜12であるアルキル(メタ)アクリレートが含まれていることがより好ましい。
アルキル基の炭素数が4〜12であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
中間層形成用単量体成分におけるアルキル基の炭素数が4〜12であるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
中間層形成用単量体成分を乳化重合させる方法および重合条件は、前記内層形成用単量体を乳化重合させる方法および重合条件と同様であればよい。
以上のようにして中間層形成用単量体成分を乳化重合させることにより、中間層を形成する重合体が前記内層の表面に形成されたエマルション粒子を得ることができる。なお、中間層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層が形成されていてもよい。
中間層を形成する重合体は、架橋構造を有していてもよい。中間層を形成する重合体の重量平均分子量は、中間層を形成する重合体が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、さらに一層好ましくは60万以上である。中間層を形成する重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、低温成膜性および伸張性に優れた塗膜を形成する観点から、500万以下であることが好ましい。
中間層を形成する重合体のガラス転移温度は、塗膜の低温成膜性および伸張性を向上させる観点から、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、より一層好ましくは5℃以下、さらに好ましくは0℃以下、さらに一層好ましくは−5℃以下である。なお、中間層を形成する重合体のガラス転移温度は、塗膜の耐水性、耐透水性および耐熱変形性を向上させる観点から、好ましくは−80℃以上、より好ましくは−70℃以上、さらに好ましくは−60℃以上である。
中間層を形成する重合体のガラス転移温度は、中間層形成用単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
次に、中間層を有するエマルション粒子を形成させた後、当該エマルション粒子の表面に外層を形成させる。外層は、中間層を有するエマルション粒子の存在下で外層形成用単量体成分を乳化重合させることにより、エマルション粒子の表面に形成させることができる。
外層形成用単量体成分を乳化重合させる際には、中間層を形成する重合体の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後に外層形成用単量体成分を乳化重合させることが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
なお、中間層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層が形成されていてもよい。したがって、本発明の樹脂エマルションにおいては、中間層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層を形成させる操作が含まれていてもよい。
外層形成用単量体成分としては、内層形成用単量体成分で例示したものを用いることができる。外層形成用単量体成分としては、より具体的には、例えば、芳香族系単量体、脂環構造を有する単量体、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
外層形成用単量体成分には、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、脂環構造を有する単量体が含まれていることが好ましい。脂環構造を有する単量体としては、内層形成用単量体成分に用いられる脂環構造を有する単量体と同様のものを例示することができる。
脂環構造を有する単量体のなかでは、炭素数が4〜20のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
外層形成用単量体成分における脂環構造を有する単量体の含有率は、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、その上限値は100質量%以下、好ましくは97質量%以下である。
外層形成用単量体成分を乳化重合させる方法および重合条件は、前記内層形成用単量体を乳化重合させる方法および重合条件と同様であればよい。
以上のようにして外層形成用単量体成分を乳化重合させることにより、外層を形成する重合体が前記中間層の表面に形成されたエマルション粒子を得ることができる。なお、外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層が形成されていてもよい。
外層を形成する重合体は、架橋構造を有していてもよい。外層を形成する重合体の重量平均分子量は、外層を形成する重合体が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、さらに一層好ましくは60万以上である。外層を形成する重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、低温成膜性および伸張性に優れた塗膜を形成する観点から、500万以下であることが好ましい。
外層を形成する重合体のガラス転移温度は、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点、好ましくは−15℃以上、より好ましくは−5℃以上、さらに好ましくは0℃以上、さらに一層好ましくは5℃以上であり、塗膜の低温成膜性および伸張性を向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに一層好ましくは90℃以下である。
外層を形成する重合体のガラス転移温度は、外層形成用単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
また、エマルション粒子全体のガラス転移温度は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
エマルション粒子における外層の含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
また、エマルション粒子における内層の含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。エマルション粒子における中間層の含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
エマルション粒子における内層と中間層と外層との合計含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、当該含有率が多いほど好ましく、その上限値は100質量%である。
本発明においては、エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分における脂環構造を有する単量体の含有率は、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分における脂環構造を有する単量体以外の単量体の含有率は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
本発明の樹脂エマルションは、前記のようにして調製されたエマルション粒子を含有する。
本発明の樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
なお、本明細書において、樹脂エマルションにおける不揮発分量は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上であり、耐水性、耐透水性および耐熱変形性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。前記方法に基づいて調製されたエマルション粒子は、通常、当該平均粒子径を有する。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
以上のようにして本発明の樹脂エマルションが得られる。本発明の樹脂エマルションは、例えば、水性塗料などに好適に使用することができる。
なお、本発明の樹脂エマルションには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記樹脂エマルション以外の他の樹脂エマルションが含まれていてもよい。
本発明の樹脂エマルションは、そのままの状態で水性塗料として用いることができるが、必要により、他の成分と混合することにより、水性塗料として用いることができる。
本発明の樹脂エマルションを水性塗料に用いる場合には、架橋剤を含有させることにより、架橋性を付与することができる。架橋剤としては、常温で架橋反応を開始するものであってもよく、熱により架橋反応を開始するものであってもよい。本発明の樹脂エマルションに架橋剤を含有させることにより、耐水性および耐透水性を向上させることができる。
好適な架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基含有化合物、ヒドラジン化合物、イソシアネート基含有化合物、アミノプラスト重合体などが挙げられる。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの架橋剤のなかでは、耐水性および耐透水性に優れた塗膜を形成する観点から、オキサゾリン基含有化合物が好ましい。
オキサゾリン基含有化合物は、単量体成分として用いられるカルボキシル基含有単量体が官能基として有するカルボキシル基と反応し得るオキサゾリン基を分子中に2個以上有する化合物である。
オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド、オキサゾリン環含有重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。オキサゾリン基含有化合物のなかでは、反応性を向上させる観点から、水溶性のオキサゾリン基含有化合物が好ましく、水溶性のオキサゾリン環含有重合体がより好ましい。
オキサゾリン環含有重合体は、付加重合性オキサゾリンを必須成分として含み、必要に応じて付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体を含む単量体成分を重合させることにより、容易に調製することができる。
付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの付加重合性オキサゾリンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの付加重合性オキサゾリンのなかでは、入手が容易であることから、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、2−アミノエチル(メタ)アクリレートおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムなどの(メタ)アクリル酸塩;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン含有α,β−不飽和脂肪族炭化水素化合物;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどのα,β−不飽和芳香族炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキサゾリン基含有化合物は、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK−2010、エポクロスK−2020、エポクロスK−2030などとして商業的に容易に入手することができる。これらのなかでは、反応性を向上させる観点から、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−500、エポクロスWS−700などの水溶性を有するオキサゾリン基含有化合物が好ましい。
ヒドラジン化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸のジヒドラジドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものでナトリウムはない。これらのなかでは、アジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
イソシアネート基含有化合物は、単量体成分として用いられる水酸基含有単量体が官能基として有する水酸基と反応し得るイソシアネート基を含有する化合物である。
イソシアネート基含有化合物としては、例えば、水分散型(ブロック)ポリイソシアネートなどが挙げられる。なお、(ブロック)ポリイソシアネートとは、ポリイソシアネートおよび/またはブロックポリイソシアネートを意味する。
水分散型ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性が付与されたポリイソシアネートをアニオン性分散剤またはノニオン性分散剤で水に分散させたものなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート;これらのジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリイソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水分散型ポリイソシアネートは、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210など;住化バイエルウレタン(株)製、商品名:バイヒジュールTPLS−2032、SUB−イソシアネートL801など;三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−220など;大日精化工業(株)製、商品名:レザミンD−56などとして商業的に容易に入手することができる。
水分散型ブロックポリイソシアネートは、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのブロック化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのブロック化剤なかでは、160℃以下の温度、好ましくは150℃以下の温度で開裂するものが望ましい。好適なブロック化剤としては、例えば、ブタノンオキシム、シクロへキサノンオキシム、3,5−ジメチルピラゾールなどが挙げられる。これらのなかでは、ブタノンオキシムがより好ましい。
水分散型ブロックポリイソシアネートは、例えば、三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートWB−720、タケネートWB−730、タケネートWB−920など;住化バイエルウレタン(株)製、商品名:バイヒジュールBL116、バイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235、バイヒジュールTPLS2186、デスモジュールVPLS2310などとして商業的に容易に入手することができる。
アミノプラスト重合体は、メラミン、グアナミンなどのアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの付加縮合物であり、アミノ重合体とも呼ばれている。
アミノプラスト重合体としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エーテル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミンなどのメラミン重合体;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリルなどのグアナミン重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアミノプラスト重合体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アミノプラスト重合体は、例えば、三井サイテック(株)製、商品名:マイコート506、マイコート1128、サイメル232、サイメル235、サイメル254、サイメル303、サイメル325、サイメル370、サイメル771、サイメル1170などとして商業的に容易に入手することができる。
アミノプラスト重合体の量は、通常、エマルション粒子に含まれている重合体の固形分とアミノプラスト重合体の固形分との重量比〔重合体の固形分/アミノプラスト重合体の固形分〕が60/40〜99/1となるように調整することが好ましい。
なお、本発明においては、前記した架橋剤以外にも、例えば、カルボジイミド化合物;ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物などに代表される多価金属化合物などの架橋剤を本発明の目的が阻害されない範囲内で用いることができる。
水性塗料には、必要により、顔料を含有させることができる。顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエローなどのアゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛などをはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウムなどの扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの体質顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
樹脂エマルションの不揮発分100質量部あたりの顔料の量は、耐水性および耐透水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、低温成膜性および伸張性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは190質量部以下である。
また、水性塗料には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
前記水性塗料は、本発明の樹脂エマルションを含有するので、例えば、窯業系建材などに好適に使用することができる。窯業系建材としては、例えば、瓦、外壁材などが挙げられる。窯業系建材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。建築物の外装を構成する無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
水性塗料は、それ単独で1層で塗工してもよく、2層以上に重ね塗りすることによって塗工してもよい。2層以上に重ね塗りすることによって塗工する場合、その一部の層のみが本発明の水性塗料で形成されてもよく、全部の層が本発明の水性塗料で形成されてもよい。重ね塗りは、例えば、プライマー処理やシーラー処理などを施した被塗物に、第1層(例えば、下塗り層)用塗料を塗布して乾燥させた後、第2層(例えば、上塗り層)用塗料を上塗りし、乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。塗料を塗布する際には、例えば、スプレー、ローラー、ハケ、コテなどを用いることができる。
以上説明したように、本発明の樹脂エマルションは、内層、中間層および外層の少なくとも3層の樹脂層を有し、中間層を構成する重合体のガラス転移温度が当該中間層以外の層を構成する重合体のいずれのガラス転移温度よりも10℃以上低いことから、エマルション粒子自体の硬度を低下させることなく、当該エマルション粒子を含有する樹脂エマルションからなる塗膜の低温における伸び性(低温成膜性)を向上させることができるので、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成することができる。したがって、本発明の樹脂エマルションは、例えば、建築物の外装や窯業系建材などに塗装される水性塗料に好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。なお、以下の実施例において、実施例1、4および5は、いずれも参考例として取り扱われるものである。
実施例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート65部、シクロヘキシルメタクリレート100部、メチルメタクリレート80部およびメタクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間をかけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、ブチルアクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート150部、シクロヘキシルメタクリレート190部、tert−ブチルメタクリレート50部、エチレングリコールジメタクリレート5部およびアクリル酸5部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部とを180分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート5部、シクロヘキシルメタクリレート200部、メチルメタクリレート40部およびアクリル酸5部からなる3段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は30℃であり、中間層の重合体のガラス転移温度は−10℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は80℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は19℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は25%であり、中間層の含有率は50%であり、外層の含有率は25%であった。なお、エマルション粒子における内層、中間層および外層の各層の含有率は、各層を構成するモノマー成分の仕込み比率に基づいて求められた値である(以下の実施例および比較例において同じ)。
実施例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水150部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、シクロヘキシルメタクリレート240部、メチルメタクリレート75部およびメタクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液29部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部とを120分間をかけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水150部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート155部、シクロヘキシルメタクリレート170部およびアクリル酸5部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液29部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部とを120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水150部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート80部、シクロヘキシルメタクリレート195部、メチルメタクリレート50部およびアクリル酸5部からなる3段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液29部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部とを120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は80℃であり、中間層の重合体のガラス転移温度は−10℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は30℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は28℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は34%であり、中間層の含有率は33%であり、外層の含有率は33%であった。
実施例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート5部、シクロヘキシルメタクリレート200部およびスチレン45部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間をかけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、ブチルアクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート150部、シクロヘキシルメタクリレート190部、tert−ブチルメタクリレート50部、ヒドロキシエチルメタクリレート5部およびエチレングリコールジメタクリレート5部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部とを180分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート5部、シクロヘキシルメタクリレート200部、メチルメタクリレート35部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン10部からなる3段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は80℃であり、中間層の重合体のガラス転移温度は−10℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は80℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は30℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は25%であり、中間層の含有率は50%であり、外層の含有率は25%であった。
実施例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、2−エチルヘキシルアクリレート90部、シクロヘキシルメタクリレート150部、メチルメタクリレート100部、tert−ブチルメタクリレート100部、スチレン50部およびメタクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部とを180分間をかけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート135部、n−ブチルメタクリレート65部およびシクロヘキシルメタクリレート50部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート90部、シクロヘキシルメタクリレート500部、n−ブチルメタクリレート90部およびヒドロキシエチルメタクリレート20部からなる3段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は50℃であり、中間層の重合体のガラス転移温度は−30℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は−10℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は10℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は50%であり、中間層の含有率は25%であり、外層の含有率は25%であった。
実施例5
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート5部、シクロヘキシルメタクリレート200部、メチルメタクリレート20部、スチレン20部およびメタクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間をかけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、2−エチルヘキシルアクリレート100部、n−ブチルメタクリレート245部、シクロヘキシルメタクリレート150部およびアクリル酸5部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部とを180分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水113部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液45部、2−エチルヘキシルアクリレート65部、シクロヘキシルメタクリレート100部、メチルメタクリレート80部およびアクリル酸5部からなる3段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液21.5部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液15部とを90分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は80℃であり、中間層の重合体のガラス転移温度は10℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は30℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は30℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は25%であり、中間層の含有率は50%であり、外層の含有率は25%であった。
実施例6
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水150部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液60部、シクロヘキシルメタクリレート260部、イソボルニルメタクリレート70部およびメタクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液29部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部とを120分間をかけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水150部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート260部、シクロヘキシルメタクリレート50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部およびアクリル酸10部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液29部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部とを120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水150部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液60部、シクロヘキシルメタクリレート160部、シクロヘキシルアクリレート160部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン10部からなる3段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液29部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部とを120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は100℃であり、中間層の重合体のガラス転移温度は−50℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は50℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は21℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は34%であり、中間層の含有率は33%であり、外層の含有率は33%であった。
比較例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、2−エチルヘキシルアクリレート140部、シクロヘキシルメタクリレート50部、メチルメタクリレート250部、スチレン50部およびメタクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部とを180分間をかけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、シクロヘキシルメタクリレート50部、メチルメタクリレート400部およびアクリル酸10部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部とを180分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は30℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は80℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は52℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は50%であり、外層の含有率は50%であった。
比較例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、シクロヘキシルメタクリレート50部、メチルメタクリレート400部およびメタクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全重合性単量体成分の総量の5%にあたる80部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液14部を添加し、重合を開始した。次に、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を180分間かけて均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水225部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液90部、2−エチルヘキシルアクリレート140部、シクロヘキシルメタクリレート50部、メチルメタクリレート300部およびアクリル酸10部からなる2段目のプレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液43部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部とを180分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子の内層の重合体のガラス転移温度は80℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は30℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は53℃であった。また、エマルション粒子における内層の含有率は50%であり、外層の含有率は50%であった。
実験例
各実施例または各比較例で得られた樹脂エマルションをホモディスパーで回転速度1500min-1にて分散させながら、成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕とブチルセロソルブとを等重量で混合することによって得られた混合溶液を添加し、樹脂エマルションの最低造膜温度が5℃となるように調整した後、希釈水および抑泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕を添加することによって不揮発成分の含有率が30%となるように調整した。
得られた混合物100部あたり8.8部の割合で、当該混合物に艶消し剤〔(株)日本触媒製、商品名:エポスターMA1010〕を添加し、さらにクレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が65±1KUとなるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕を前記混合物に添加した後、この混合物をホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間分散させることにより、クリヤー塗料を得た。得られたクリヤー塗料を室温中で1日間静置した後、以下の物性を調べた。その結果を表1に示す。なお、物性において「×」の評価が1つでもあるものは、不合格であると判定される。
(1)耐水性
JIS K6717(2006年)に準じ、メチルメタクリレートを押出成形によって成形することによって得られた黒色アクリル板〔日本テストパネル(株)製、縦:75mm、横:150mm、厚さ:3mm〕に、前記で得られたクリヤー塗料を5milアプリケーターで塗布し、100℃の熱風乾燥機にて10分間乾燥させることによって試験板を作製した。
得られた試験板を23℃にて24時間養生した後、その試験板のL値(L0)を色差計〔日本電色工業(株)製、商品名:分光式色差計SE−2000〕で測定し、さらにこの試験板を60℃に温調された温水中に240時間浸漬させた後、温水から引き上げ、キムタオル〔日本製紙クレシア(株)製〕で水分を拭き取り、1分間以内に前記色差計でL値(L1)を測定した。
次に、L値の変化値を式:
ΔL=(L1)−(L0)
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
〔評価基準〕
◎:ΔLが2.0未満
○:ΔLが2.0以上4.0未満
△:ΔLが4.0以上6.0未満
×:ΔLが6.0以上
(2)耐透水性
前記「耐水性」に記載の方法と同様の方法で試験板を作製した。当該試験板の裏面および側面をバスボンド〔コニシ(株)製、商品名:バスボンドQ〕を用いてシールし、常温(約:25℃)の水中に試験板を水没させて24時間浸漬した後、水中から取り出し、水分を十分に拭き取り、試験板の水没前後の質量差を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:試験片の水没前後の質量差が2g未満
△:試験片の水没前後の質量差が2g以上5g未満
×:試験片の水没前後の質量差が5g以上
(3)低温成膜性
フロートガラス板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:2mm〕にクリヤー塗料を20milアプリケーターで塗布した後、当該フロートガラス板を5℃に温度調節した恒温ボックス内で24時間乾燥させることにより、乾燥後の厚さが約150μmの塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の状態を30倍のルーペを用いて観察し、以下の評価基準に基づいて低温成膜性を評価した。
(評価基準)
○:クラックなし
△:塗膜に小さいクラック(長さが5mm未満のクラック)が見受けられる。
×:塗膜に大きいクラック(長さが5mm以上のクラック)が見受けられる。
(4)伸張性
ポリプロピレン板(縦:70mm、横:150mm、厚さ:2mm)にクリヤー塗料を20milアプリケーターで塗布し、室温で24時間乾燥させた後、形成された塗膜(縦:1cm程度、横:7cm程度、厚さ:150μm)をポリプロピレン板から剥離させた。
次に、剥離させた塗膜を0℃に温度調節した恒温ボックス内で3時間温度調節した後、当該塗膜の短辺を引っ張り試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAGS−100D〕のチャックに掴持し、初期標線間距離50mm、引っ張り速度200mm/minの条件で引っ張り、式:
〔伸張率(%)〕=〔(破断時の伸び−50mm)÷(50mm)〕×100
に基づいて塗膜の伸張率を調べ、以下の評価基準に基づいて伸張性を評価した。
(評価基準)
○:伸長率が30%以上
△:伸長率が20%以上30%未満
×:伸長率が20%未満
(5)耐熱変形性
JIS R3202(1996年)に準じ、フロートガラス板〔日本テストパネル(株)製、縦70mm、横150mm、厚さ2mm〕に、前記で得られたクリヤー塗料を5milアプリケーターで塗布し、100℃の熱風乾燥機で10分間乾燥させることにより、試験板を作製した。
得られた試験板をただちに60℃の熱風乾燥機内に移動させ、1分間調温した後に、その試験板上にガーゼ〔萬星衛生材料(株)製、日本薬局方ガーゼタイプ1〕、フロートガラス板〔日本テストパネル(株)製、縦70mm、横150mm、厚さ2mm〕およびおもりの順で積載し、60℃の温度で2時間放置した。このとき、荷重は280g/cm2となるように調整した。
次に、試験板を室温まで冷却し後、その試験板上のガーゼをゆっくりと剥がして塗膜の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて耐熱変形性を評価した。
〔評価基準〕
◎:異常なし(ガーゼ痕なし)
○:わずかにガーゼ痕あり
△:浅いガーゼ痕あり
×:深いガーゼ痕あり
次に、前記物性の評価において、◎を20点、○を15点、△を10点、×を0点として各物性の得点を合計することにより、総合評価した。なお、総合評価の最高得点は100であり、最低得点は0点である。その結果を表1に併記する。
表1に示された結果から、各実施例で得られた樹脂エマルションは、いずれも、耐水性、耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に総合的に優れた塗膜を形成するものであることがわかる。また、実施例1と比較例1との対比結果から、実施例1では、内層および外層よりもガラス転移温度が低い中間層が内層と外層との間に形成されているので、比較例1と対比して耐水性、耐透水性、低温成膜性および伸張性に優れていることがわかる。さらに、実施例2と比較例2との対比結果から、実施例2では、内層および外層よりもガラス転移温度が低い中間層が内層と外層との間に形成されているので、比較例2と対比して耐透水性、低温成膜性、伸張性および耐熱変形性に優れていることがわかる。