以下、図面に沿い、本発明の実施例を説明する。図1は本発明の一適用対象としての前進8速・後進1速の自動変速機のギヤトレインをスケルトンで示す。図に示すように、この自動変速機は、フロントエンジン・リヤドライブ用の縦置式とされ、ロックアップクラッチ付のトルクコンバータ2と遊星歯車変速装置1とで構成されている。
遊星歯車変速装置1は、ラビニヨタイプのプラネタリギヤユニットGと、プラネタリギヤユニットGに減速回転を入力する減速用プラネタリギヤG1とで構成されている。プラネタリギヤユニットGは、大径のサンギヤS2と、小径のサンギヤS3と、互いに噛合し且つ小径のサンギヤS3に噛合するショートピニオンP3と、大径のサンギヤS2に噛合するロングピニオンP2と、それら一対のピニオンを支持するキャリアC3と、ロングピニオンP2に噛合するリングギヤR3から構成されている。また、減速用プラネタリギヤG1は、サンギヤS1と、それに噛合するピニオンP1と、ピニオンP1に噛合するピニオンP1’と、両ピニオンP1,P1’を支持するキャリアC1と、ピニオンP1’に噛合するリングギヤR1の3要素かなるダブルピニオンプラネタリギヤから構成されている。
プラネタリギヤユニットGにおける、小径のサンギヤS3は、第1のクラッチC−1(以下、C1クラッチと略記する)により減速プラネタリギヤG1のリングギヤR1に連結されている。大径のサンギヤS2は、第3のクラッチC−3(以下、C3クラッチと略記する)により減速プラネタリギヤG1の同じくリングギヤR1に連結されるとともに、第4のクラッチC−4(以下、C4クラッチと略記する)により減速プラネタリギヤG1のキャリアC1に連結され、更に第1のブレーキB−1(以下、B1ブレーキと略記する)によりケース10に係止可能とされている。また、キャリアC3は、第2のクラッチC−2(以下、C2クラッチと略記する)により入力軸11に連結されるとともに、第2のブレーキB−2(以下、B2ブレーキと略記する)によりケース10に係止可能とされ、更にB2ブレーキと並列配置のワンウェイクラッチF−1によりケース10に一方向回転係止可能とされている。そして、リングギヤR3は、出力軸19に連結されている。減速プラネタリギヤG1は、そのサンギヤS1を変速機ケース10に固定され、キャリアC1を入力軸11に連結されるとともにC4クラッチを介してプラネタリギヤユニットGの大径サンギヤS2に連結され、リングギヤR1をC1クラッチを介してプラネタリギヤユニットGの小径のサンギヤS3に連結され、且つC3クラッチを介してプラネタリギヤユニットGの大径のサンギヤS2に連結されている。
このように構成された遊星歯車変速装置1の上記各クラッチ及びブレーキは、周知のように、それぞれ摩擦部材とそれらを係合・解放操作するピストン・シリンダ機構からなる油圧サーボを備えており、図示しない電子制御装置と後記する油圧制御装置とによる制御で、運転者により選択されたレンジに応じた変速段の範囲で車両負荷に基づき、変速機ケース10に付設した油圧制御装置による各油圧サーボに対する油圧の給排で摩擦部材が係合・解放されて変速が行われる。
図2は遊星歯車変速装置1の上記各クラッチ及びブレーキ並びにワンウェイクラッチの係合・解放による作動を速度線図で示す。この速度線図は、縦軸でそれらの上部に記す各変速要素を示し、縦軸間相互の幅でギヤ比を示し、縦軸方向の長さで遊星歯車変速装置1への入力回転速度を1とする速度比を示す。図に●印でその直近に記す係合要素の係合を表し、○印で遊星歯車変速装置1の出力回転速度比を表す。
このギヤトレインでは、本実施例において第1〜4速となる低速段側の変速段が第4の係合要素としてのC1クラッチの係合による小径サンギヤS3への減速回転の入力の基に、他の3つの係合要素のいずれかを選択的に同時係合させることで達成される。すなわち、第1速(1ST)は、B2ブレーキの係合に相当するワンウェイクラッチF−1の自動係合により達成される。この場合、図1を参照して、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がC1クラッチ経由で小径サンギヤS3に入力され、ワンウェイクラッチF−1の係合により係止されたキャリアC3に反力を取って、図2に示すようにリングギヤR3の最大ギヤ比の減速回転が出力軸19に出力される。
次に、第2速(2ND)は、B1ブレーキの同時係合により達成される。この場合、図1を参照して、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がC1クラッチ経由で小径サンギヤS3に入力され、B1ブレーキの係合により係止された大径サンギヤS2に反力を取って、リングギヤR3の減速回転が出力軸19に出力される。このときの減速比は、図2に示すように第1速(1ST)より小さくなる。
また、第3速(3RD)は、C3クラッチの同時係合により達成される。この場合、図1を参照して、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がC1クラッチとC3クラッチ経由で同時に大径サンギヤS2と小径サンギヤS3に入力され、プラネタリギヤユニットGが直結状態となるため、両サンギヤへの入力回転と同速のリングギヤR3の回転が、図2に示すように入力回転(速度比=1)に対しては減速された回転としてリングギヤR3から出力される。
更に、第4速(4TH)は、C4クラッチの同時係合により達成される。この場合、図1を参照して、一方で入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がC1クラッチ経由で小径サンギヤS3に入力され、他方で入力軸11からC4クラッチ経由で入力された非減速回転が大径サンギヤS2に入力され、2つの入力回転の中間速度の回転が、図2に示すように減速用プラネタリギヤの減速回転に対しては僅かに増速されたリングギヤR3の回転として出力される。
次に、本実施例において第5〜8速となる高速段側の変速段は、第5の係合要素としてのC2クラッチの係合によるキャリアC3への非減速回転の入力の基に、他の3つの係合要素のいずれかを選択的に同時係合させることで達成される。すなわち、第5速(5TH)は、C1クラッチの同時係合により達成される。この場合、図1を参照して、一方で入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がC1クラッチ経由で小径サンギヤS3に入力され、他方で入力軸11からC2クラッチ経由で入力された非減速回転がキャリアC3に入力され、2つの入力回転の中間速度の回転が、図2に示すように非減速の入力回転に対しては僅かに減速されたリングギヤR3の回転として出力される。
次に、第6速(6TH)は、C4クラッチの同時係合により達成される。この場合、図1を参照して、一方で入力軸11からC4クラッチ経由で入力された非減速回転が大径サンギヤS2に入力され、他方で入力軸11からC2クラッチ経由で入力された非減速回転がキャリアC3に入力され、プラネタリギヤユニットGが直結状態となるため、サンギヤS2及びキャリアC3への入力回転と同速のリングギヤR3の回転が、図2に示すように入力回転(速度比=1)と同速の回転として、リングギヤR3に出力される。
更に、第7速(7TH)は、C3クラッチの同時係合により達成される。この場合、図1を参照して、一方で入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がC3クラッチ経由で大径サンギヤS2に入力され、他方で入力軸11からC2クラッチ経由で入力された非減速回転がキャリアC3に入力され、図2に示すようにリングギヤR3の回転が入力回転より僅かに増速された回転として出力される。
そして、第8速(8TH)は、B1ブレーキの同時係合により達成される。この場合、図1を参照して、入力軸11からC2クラッチ経由で非減速回転がキャリアC3にのみ入力され、B1ブレーキの係合により係止された大径サンギヤS2に反力を取る図2に示すようなリングギヤR3の更に増速された回転が出力される。
なお、後進(R)は、B2ブレーキの係合を基本として達成される。この場合、同時係合させる他の係合要素としては、C3クラッチとC4クラッチのいずれかをリバースギヤ比の設定に応じて選択することができる。C3クラッチを同時係合要素とした場合、図1を参照して、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がC3クラッチ経由で大径サンギヤS2に入力され、B2ブレーキの係合により係止されたキャリアC3に反力を取るリングギヤR3のギヤ比の大きな逆回転が出力軸に出力される。また、C4クラッチを同時係合要素とした場合、図2を参照して分かるように、大径サンギヤS2に入力される回転が非減速回転となる分だけリバース速度比は逆回転方向に大きくなるが、入出力要素の関係は同様である。
次に示す図3は、遊星歯車変速装置1中の各クラッチ及びブレーキの作動とそれにより達成される変速段との前記した関係をまとめて図表化して示す。図において○印は係合、×印は解放を表す。なお、この図表では、後進(R)時の同時係合要素としてC3クラッチが用いられている。
次に、図1に示すギヤトレインにおいて,図3の作動図表に示す各変速段を達成するための油圧制御装置の構成について説明する。図4は油圧制御装置の回路構成を示す。この油圧回路における油圧源側の回路は、油圧源としてのオイルポンプ20により吸い上げられ、ライン圧油路に吐出される油圧をレギュレータバルブ21により調圧して、車両の走行負荷に応じた係合要素の係合維持に必要なライン圧PLを作りだし、該ライン圧を制御の基圧として直接又はマニュアルバルブ25を介してその“D”レンジポートから出力されるドライブレンジ圧(以下Dレンジ圧という)(D)あるいは“R”ポートから出力されるリバース圧(R)として各係合要素の油圧サーボ51〜56に給排する回路を構成している。前記レギュレータバルブ21は、自身が調圧するライン圧と車両走行負荷を反映させる信号圧(スロットル圧)により調圧作動すべく、これら両圧をそのスプールの両端に印加される構成とされている。スロットル圧を出力するスロットルリニアソレノイド弁23は、ライン圧をストレーナを経て供給されるモジュレータ弁22により減圧された油圧(モジュレータ圧)Pmを基圧としてスロットル圧をレギュレータバルブ21に印加するものとされている。モジュレータ圧Pmはロックアップリニアソレノイド弁24にも供給され、これを基圧としてロックアップリニアソレノイド弁24は、図示しないロックアップ回路に油圧を供給するほか、変速側の回路へも信号圧(ロックアップ圧)を供給するものとされている。
図4に示すように、変速側の回路は、C1〜C4クラッチ及びB1、B2ブレーキの油圧サーボ51〜56と、B2ブレーキの油圧サーボ56を除くそれぞれの油圧サーボへの供給油圧をソレノイド信号の印加により制御するリニアソレノイドSLC1〜SLC4,SLB1作動の制御弁31〜35をそれぞれの供給路の主要な構成要素として備えている。なお、B2ブレーキについては、油圧のみで作動する制御弁40が設けられている。これらの制御弁のうちC1、C2クラッチとC4クラッチ用の制御弁31,32,34は、ソレノイド信号無印加時に最大出力となる常開形の弁とされ、C3クラッチ及びB1ブレーキ用の制御弁33,35は、ソレノイド信号無印加時には閉鎖状態となる常閉形の弁とされている。また、この回路におけるB2ブレーキの油圧サーボ56の供給路には、回路圧により供給油圧を制御するB2コントロール弁40が介挿されている。更に、各クラッチ及びブレーキの油圧サーボへの供給路には、フェールセーフ弁として、それぞれ専用のカットオフ弁41〜46が介挿されている。これら各カットオフ弁のうち、C3、B1、B2カットオフ弁43,45,46は、ソレノイド信号により制御すべく、モジュレータ圧を基圧としてソレノイド信号印加時に各カットオフ弁に切換信号圧を出力する常閉形のオンオフソレノイド弁36〜38が付随させて設けられている。更に他のフェールセーフ弁として、フェールセーフ弁間をつなぐ油路に介挿して、C4チェック弁47が配置されている。なお、3つのフェールセーフ弁45,44,42間をつなぐ信号圧油路には油圧スイッチ48も設けられている。
前記回路構成を更に具体的に説明すると、C1クラッチの油圧サーボ51への供給油路は、Dレンジ圧の供給油路に接続され、C1クラッチ制御弁31の上流側にC1カットオフ弁41が配置されている。この油路中のC1カットオフ弁41は、C3,C4クラッチ油圧サーボ53,54,またはB1ブレーキ油圧サーボ55のいずれかの油圧供給状態であって、かつ、C2クラッチ油圧サーボ52への油圧供給時に、C1クラッチ制御弁31への基圧(Dレンジ圧)の供給を遮断すべく設けられており、3ポート形のスプール切換弁で構成され、連通時にはDレンジ圧のインポートをC1クラッチ制御弁31へのアウトポートに接続し、遮断時にはインポートを閉じてアウトポートをドレーン接続するものとされている。C1カットオフ弁41のスプールには、その一端(図において上端)に常時ライン圧が印加され、リターンスプリングの負荷を受ける他端(図において下端)には、C2クラッチ油圧サーボ52への油圧供給時にC3、B1、C4の各カットオフ弁43,45,44を経由して供給されるライン圧が、更にC2カットオフ弁42を経由して印加されるものとされている。したがって、C1クラッチ制御弁31への基圧の供給は、C3,C4クラッチ油圧サーボ53,54,またはB1ブレーキ油圧サーボ55のいずれかの油圧供給状態であって、かつ、C2クラッチ油圧サーボ52への油圧供給時には遮断され、これによりC1クラッチ制御弁フェール(開放状態でのスティック又はソレノイド信号オフフェール)時のC2クラッチ、及びC3,C4クラッチ、B1ブレーキのいずれかとのタイアップが防止される。
C3クラッチの油圧サーボ53への供給油路は、Dレンジ圧の供給油路に接続され、C3クラッチ制御弁33の上流側にC3カットオフ弁43が配置されている。この油路中のC3カットオフ弁43は、常閉形のオンオフソレノイド弁36によるソレノイド圧の印加で制御され、ソレノイド信号のオンにより切換作動してC3クラッチ制御弁33への基圧を供給し、信号のオフにより供給を遮断すべく設けられている。このC3カットオフ弁43は、3つの3ポート切換弁をドレーンポートを共用化して組合わせた8ポートのスプール形切換弁で構成され、第1〜第3ポート(各弁のポート番号は、説明の便宜上信号圧が印加される受圧ポートを除く図面の上側からの順序に従うものとする。)がそれぞれDレンジ圧のインポート、アウトポート及びドレーンポートとされ、第4及び第5ポートが同じくDレンジ圧のアウトポート及びインポート、第6〜第8ポートがそれぞれライン圧のドレーンポート、アウトポート及びインポートとされている。そして、第1及び第5ポートはDレンジ圧の供給油路、第2及び第7ポートはB1カットオフ弁45の異なるインポート、第4ポートはC3クラッチ制御弁33のインポート、第8ポートはライン圧の供給油路に接続されている。C3カットオフ弁43のスプールには、その一端(図において上端)にソレノイド弁36が出力するソレノイド圧が印加され、他端(図において下端)側にはリターンスプリングの荷重が負荷されている。
このC3カットオフ弁43は、ソレノイド弁36がオンのとき、第8ポートを第7ポートに連通してライン圧をB1カットオフ弁45に供給し、第5ポートを第4ポートに連通してDレンジ圧をC3クラッチ制御弁33に基圧として供給し、更に第1ポートを遮断してB1カットオフ弁45へのドライブレンジ圧の供給を絶つ作動を行う。また、ソレノイド弁36がオフのとき、第8ポートを遮断してB1カットオフ弁45へのライン圧の供給を絶ち、第5ポートを遮断してC3クラッチ制御弁33への基圧供給を絶ち、更に第1ポートを第2ポートに連通してB1カットオフ弁へのDレンジ圧の供給を行う。
B1ブレーキの油圧サーボ55への供給油路は、Dレンジ圧の供給油路に接続され、B1ブレーキ制御弁35の上流側にB1カットオフ弁45が配置されている。この油路中のB1カットオフ弁45は、常閉形のオンオフソレノイド弁37によるソレノイド圧の印加で制御され、ソレノイド信号のオンにより切換作動してB1ブレーキ制御弁35への基圧を供給し、信号のオフにより供給を遮断すべく設けられている。このB1カットオフ弁45は、3つの3ポート切換弁をドレーンポートを共用化して組合わせた9ポートのスプール形切換弁で構成され、第3ポートがC3カットオフ弁43経由のライン圧のインポート、第5ポートが同じくC3カットオフ弁43経由のDレンジ圧のインポート、第9ポートが基圧用のDレンジ圧のインポートとされ、第2ポートが第3ポートに対するアウトポート、第4ポートが第3又は第5ポートに対するアウトポート、第8ポートが基圧用のDレンジ圧のアウトポート、その余のポートがドレーンポートとされている。そして、インポート側は、第3、第5及び第8ポートがそれぞれC3カットオフ弁43のライン圧アウトポート、Dレンジ圧アウトポート及びDレンジ圧油路に接続され、アウトポート側は、第2ポートがC4カットオフ弁44とC2カットオフ弁42のプランジャ受圧部に接続され、第4ポートがC4カットオフ弁44のインポートに接続され、第6ポートがC4チェック弁47に接続され、第8ポートがB1クラッチ制御弁のインポートに接続されている。B1カットオフ弁45のスプールには、その一端(図において上端)にソレノイド弁37が出力するソレノイド圧が印加され、他端(図において下端)側にはリターンスプリングの荷重が負荷されている。
このB1カットオフ弁45は、ソレノイド弁37がオンのとき、第9ポートを第8ポートに連通してDレンジ圧をB1ブレーキ制御弁35に基圧として供給し、第5ポートを第6ポートに連通してC3カットオフ弁43を経由して供給されるDレンジ圧をC4カットオフ弁44のインポートに供給し、更に第3ポートを第2ポートに連通してC3カットオフ弁43を経由して供給されるライン圧をC4カットオフ弁44のプランジャ・スプール間受圧部とC2カットオフ弁42のプランジャ端受圧部に印加する作動を行う。また、ソレノイド弁37がオフのとき、第9ポートを遮断してB1ブレーキ制御弁35への基圧供給を絶ち、第5ポートを第6ポートに連通してC3カットオフ弁43経由のDレンジ圧をC4カットオフ弁44のプランジャ端受圧部に印加するとともにC4チェック弁47のインポートへの供給を行い、第3ポートを第4ポートへの連通に切換えてC4カットオフ弁44のインポートへのDレンジ圧供給をライン圧供給に切換えるとともにC4カットオフ弁44とC2カットオフ弁42への信号圧の印加をドレーンする作動を行う。
C4クラッチの油圧サーボ54への供給油路は、直接ライン圧の供給油路に接続されており、この供給油路では、C4クラッチ制御弁34の下流にC4カットオフ弁44を介挿した接続とされている。この油路中のC4カットオフ弁44は、B1カットオフ弁45からDレンジ圧又はライン圧の印加で制御され、それによりC4クラッチ制御弁34により調圧後の油圧のC4クラッチ油圧サーボへの供給を可能とすべく設けられている。このC4カットオフ弁44は、9ポートのスプール形切換弁で構成され、スプールの一端に受圧プランジャを備える構成とされている。この弁の第1ポートはDレンジ圧又はライン圧のインポート、第2ポートはそのアウトポート、第3ポートはDレンジ圧のインポート、第4及び第7ポートはリバース圧のインポート、第5ポートはサーボ圧のアウトポート、第6ポートはサーボ圧のインポート、第8ポートはリバース圧のアウトポート、第9ポートはドレーンポートとされている。そして、各ポートは、第1ポートがB1カットオフ弁45の第4ポート、第2ポートがB2カットオフ弁46受圧部、第3ポートがC4チェック弁のアウトポート、第4及び第7ポートがリバース圧の供給油路、第5ポートがC4クラッチ油圧サーボ、第6ポートがC4クラッチ制御弁34のアウトポート、第8ポートがB2カットオフ弁のスプリング負荷側スプール端受圧部にそれぞれ接続されている。
このC4カットオフ弁44は、B1カットオフ弁45経由のDレンジ圧又はライン圧がプランジャ端又はスプール端に印加されることによってC4クラッチ油圧サーボ54への油圧供給状態(図示右側のリターンスプリング荷重に抗する押下げ状態)となる。したがって、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37が共にオン又はオフとなっているときだけ押し下げられ、これらソレノイド弁のいずれか一方がオフのときは、C4クラッチ制御弁34からの油圧を遮断する状態(図示左側の押上げられた状態)となる。そして、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37が共にオン又はオフのときは、C4クラッチ制御弁34から油圧を供給状態とし、B1カットオフ弁45及びC4チェック弁47を経由して供給されるDレンジ圧を供給状態とし、Dレンジ圧をB2カットオフ弁46のスプリング荷重負荷側スプール端受圧部に供給して、Dレンジ圧のB2ブレーキ油圧サーボへの連通を遮断し、またC2カットオフ弁42の下から2番目のポートに供給する。一方、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37のいずれか一方がオフの押上げられた状態では、C3カットオフ弁43、B1カットオフ弁45を経由して供給されるライン圧又はDレンジ圧をC2カットオフ弁42の第7ポートに供給すると共にB2カットオフ弁46のスプリング負荷側スプール端受圧部に印加し、Dレンジ圧のB2ブレーキ油圧サーボ46への連通を遮断し、C4クラッチ制御弁34からの油圧を遮断する。
C2クラッチの油圧サーボ52への供給油路は、Dレンジ圧の供給油路に接続され、C2クラッチ制御弁32の上流側にC2カットオフ弁42が配置されている。この油路中のC2カットオフ弁42は、C3カットオフ弁43とB1カットオフ弁45を経由して印加されるライン圧がプランジャ端受圧部に印加される、またはC2クラッチサーボ圧がC2カットオフ弁42のスプール端側受圧部に印加されることにより切換作動して、基圧としてのDレンジ圧のC2クラッチ制御弁32への供給を可能とすべく設けられている。このC2カットオフ弁42は、7ポートのスプリング復帰式のスプール形切換弁で構成され、スプールの一端に受圧プランジャを備える構成とされている。C2カットオフ弁42は、第2ポートが基圧のアウトポート、第3ポートが基圧のインポート、第4ポートがDレンジ圧のアウトポート、第6ポートがDレンジ圧のアウトポート、第7ポートはDレンジ圧のインポート、その余のポートがドレーンポートとされている。そして、第2ポートがC2クラッチ制御弁32のインポート、第3ポートがDレンジ圧の供給油路、第4ポートがB2カットオフ弁の第3ポート、第6ポートがC1カットオフ弁41のスプリング負荷側スプール端受圧部、第7ポートがC4カットオフ弁44の第2ポートとB2カットオフ弁46のスプリング負荷側スプール端受圧部にそれぞれ接続されている。C2カットオフ弁42のプランジャ端側受圧部は、B1カットオフ弁45の第2ポートとC4カットオフ弁44のスプール端側受圧部に接続され、スプール端側受圧部は、C2クラッチ油圧サーボの供給油路に接続されている。
このC2カットオフ弁42は、変速過渡時にソレノイド弁36及びソレノイド弁37を共にオンとすることによって、C3カットオフ弁43及びB1カットオフ弁45を経由して供給されるライン圧によって、連通状態に押し下げられ、C2クラッチ制御弁32の基圧を供給状態とする。この状態で、C2クラッチ油圧サーボ52に油圧を供給すると、C2クラッチサーボ圧がC2カットオフ弁42のスプール端側受圧部に供給されることによって、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37のいずれかがオフされ、プランジャ端受圧部へのライン圧の印加が遮断されたとしても、スプールが押下げられた油圧供給状態を維持する。
B2コントロール弁40は、B2ブレーキ油圧サーボ56をリバース圧の供給油路に接続する供給路中に介挿されている。このB2コントロール弁40は、受圧プランジャにリターンスプリングを介して当接する調圧スプールを有する3ポート形のスプール弁で構成され、第1ポートがB2カットオフ弁46の第2ポートに接続されたB2コントロール圧のインポート、第3ポートがC4カットオフ弁44の第8ポートに接続されたリバース圧のインポート、第2ポートがB2ブレーキ油圧サーボ56に接続されたアウトポートとされている。この弁のスプール端側受圧部はアウトポートにオリフィスを介して接続され、スプリングを介するプランジャへの当接側受圧部はリバース圧の供給油路に接続され、プランジャ端受圧部はオリフィスを介してロックアップリニアソレノイド弁24のアウトポートに接続されている。
このB2コントロール弁40は、第1速(1st)エンジンブレーキ時に、ロックアップ圧によって油圧を調圧する。また、リバース(R)時は、リバース圧がスプリングを介するプランジャへの当接側受圧部に供給されることで、スプールが第1ポートと第2ポート連通する方向に押し上げられ(図示左側)、B2カットオフ弁46を経由して供給されるリバース圧をB2ブレーキ油圧サーボ56へ供給する。
B2カットオフ弁46は、C2カットオフ弁42とB2コントロール弁40の間に介挿されており、常閉形のオンオフソレノイド弁38によるソレノイド圧の印加で制御され、ソレノイド信号のオンにより切換作動してB2コントロール弁40への基圧供給を可能とすべく設けられている。このB2カットオフ弁46は、スプリング復帰式の3ポート形スプール弁で構成され、第1ポートがリバース圧の供給油路に逆流絞り弁を介して接続され、第2ポートがアウトポートとしてB2コントロール弁40の第1ポートに接続され、第3ポートがB2コントロール圧のインポートとしてC2カットオフ弁42の第4ポートに接続されている。このB2カットオフ弁46のスプール端側受圧部はオンオフソレノイド弁38のアウトポートに接続され、スプリング負荷側受圧部は、C4カットオフ弁44の第2ポートとC2カットオフ弁42の第7ポートに接続されている。
このB2カットオフ弁46は、第1速(1st)エンジンブレーキ時に、オンオフソレノイド弁38をオンすることによって、押下げられ(図示左側の状態)、B2コントロール弁40に基圧を供給可能とする。そして、第1速(1st)エンジンブレーキから他の前進段に変速すると、オンオフソレノイド弁38がオフとされ、スプールが押上げられることによって、B2ブレーキサーボ圧は、リバース圧の供給される油路(前進段ではドレーンされている)を経由してドレーンされる。また、リバース(R)時は、リターンスプリング力によって押し上げられ(図示右側)、リバース圧を供給可能状態とする。
C4チェック弁47は、スプリング復帰式の3ポート形スプール弁で構成され、第1ポートがドレーンポート、第2ポートがアウトポートとしてC4カットオフ弁44の第3ポートに接続され、第3ポートがインポートとしてB1カットオフ弁45の第6ポートに接続されている。このC4チェック弁47は、C4クラッチ油圧サーボへの供給時に切換えられて、Dレンジ圧をC4カットオフ弁44経由でB2カットオフ弁45のスプリング負荷側受圧部に供給して、B2コントロール弁40の基圧を遮断する。また、同じDレンジ圧をC2カットオフ弁42の第7ポートに供給し、C3,C4クラッチ,またはB1ブレーキのいずれかの係合状態であって、かつ、C2クラッチ係合時にはC1クラッチ油圧サーボの基圧を遮断する。
油圧スイッチ48は、B1カットオフ弁45の第2ポートとC2カットオフ弁42のプランジャ端側受圧部とをつなぐ油路に接続されている。この油圧スイッチ48は、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37(又はそれぞれのフェールセーフ弁)の両方が油圧供給状態でフェールしてしまうと、常時C3クラッチ、B1ブレーキ、C4クラッチ、C2クラッチが全て油圧供給の可能な状態となってしまうことから、この状態でC3クラッチ制御弁33、B1ブレーキ制御弁35、C4クラッチ制御弁34、C2クラッチ制御弁32がフェールするとタイアップする虞があるのに対して、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37の両方がオンのときに供給される油路(C4カットオフ弁及びC2カットオフ弁の切換え用のライン圧)の油圧を検出するすべく設けられている。したがって、この油圧スイッチ48は、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37への指令と、油圧スイッチ48の状態とを比較することによって、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37のフェールを検出し、タイアップを防止するためのものである。
図4は各変速段を達成するために信号制御される各ソレノイド弁の作動を図表化して示す。この図表における横欄の記号は各ソレノイド弁のソレノイドを表し、各変速段における○印は信号オン、×印は信号オフ、△印は信号レベルのコントロールを表す。
前記ソレノイド作動に基づく油圧供給を各変速段ごとに見ると、第1速(1st)時は、常開形のC1クラッチ制御弁31をソレノイドSLC1信号オフによる出力状態、常開形のC2クラッチ制御弁32をソレノイドSLC2信号オンの閉鎖状態、常開形のC3クラッチ制御弁33のソレノイドSLC3を信号オフの閉鎖状態、常閉形のC4クラッチ制御弁34をソレノイドSLC4信号オンの閉鎖状態、3つのオンオフソレノイド弁36〜38のソレノイドSL1〜SL3を全てオフの閉鎖状態とすることで、Dレンジ圧がライン圧の印加で押下げ状態にあるC1カットオフ弁41経由でC1クラッチ制御弁31に基圧として供給され、同弁31を経てC1クラッチ油圧サーボ51に供給される。これにより、C1クラッチとワンウェイクラッチF−1(図1参照)の自動係合で第1速が達成される。このとき、Dレンジ圧はC3カットオフ弁43、B1カットオフ弁45経由でC4チェック弁47に達するがそこで遮断される。またDレンジ圧はC2カットオフ弁42経由でB2カットオフ弁46にも供給されるが、これもそこで遮断される。次の第1速エンジンブレーキ(1stE/G)時は、オンオフソレノイド弁38のソレノイドSL3がオンとされることで、オンオフソレノイド弁38のソレノイド圧出力の印加を受けてB2カットオフ弁46が押下げ状態に切換わるため、第1速時は遮断されていたDレンジ圧がB2カットオフ弁46経由でB2コントロール弁40に供給され、同弁40経由でB2ブレーキ油圧サーボ56にも供給される。そしてこれによるB2ブレーキ係合でエンジンブレーキ作動状態となる。
第2速(2nd)時は、第1速状態に対してB1ブレーキ制御弁35のソレノイドSLB1をオンに換えると共にオンオフソレノイド弁37のソレノイドSL2をオンとすることで、B1カットオフ弁45が押下げ状態に切換わり、同弁45への供給状態で遮断されていたDレンジ圧が同弁45経由でB1ブレーキ制御弁35に基圧として供給される。この油圧は開放状態とされたB1ブレーキ制御弁35を経てB1ブレーキ油圧サーボ55に供給される。これによりC1クラッチとB1ブレーキの同時係合による第2速が達成される。
第3速(3rd)時は、第2速状態に対してB1ブレーキ制御弁35とC3クラッチ制御弁33のソレノイドSLB1とSLC3のオンオフを入れ替えるとと共に、オンオフソレノイド弁37とオンオフソレノイド弁36のソレノイドSL2とSL1のオンオフを入れ替えることで、C3カットオフ弁43が押下げ状態に切換わり、それにより遮断されていたDレンジ圧がC3カットオフ弁43経由でC3クラッチ制御弁33に供給される。この油圧は開放状態とされたC3クラッチ制御弁33を経てC3クラッチ油圧サーボ53に供給される。これによりC1クラッチとC3クラッチの同時係合による第3速が達成される。
また、第4速(4th)時は、C2クラッチ制御弁32のソレノイドSLC2のみがオンとされ、C1クラッチ制御弁31とC4クラッチ制御弁34が開放状態となる。このとき、常時ライン圧の供給を受けるC4クラッチ制御弁34が開放されることで、その出力油圧がC4カットオフ弁44に達する。一方、C4カットオフ弁44は、C3カットオフ弁43とB1カットオフ弁45が共にスプリング力復帰の押上げ状態にあることで、これら両弁43,44経由のDレンジ圧をプランジャ受圧部に印加されて押下げ状態にあるため、C4カットオフ弁44に達した油圧が同弁44を経てC4クラッチ油圧サーボ54に供給される。これによりC1クラッチとC4クラッチの同時係合による第4速が達成される。
次の第5速(5th)時は、C4クラッチ制御弁34のソレノイドSLC4のみがオンとされ、C1クラッチ制御弁31とC2クラッチ制御弁32が開放状態とされる。このとき、変速過渡時のみの制御でソレノイド弁36とソレノイド弁37のソレノイドSL1,SL2を同時にオンとし、C3カットオフ弁43とB1カットオフ弁45を押下げ状態とすることで、ライン圧がそれら両弁43,45経由でC2カットオフ弁42のプランジャ端受圧部に印加され、それによりC2カットオフ弁42が押下げ状態に切換わる。これによりC2カットオフ弁42に供給されているDレンジ圧が、同弁42を経てC2クラッチ制御弁32に供給され、開放状態の同弁32を経てC2クラッチ油圧サーボ52に供給される。これにより、C1クラッチとC2クラッチの同時係合により第5速が達成される。そして、C2クラッチ油圧サーボ52への油圧供給が確立されると、この油圧はC2カットオフ弁42のスプール端受圧部に印加されるようになるので、同弁42は自己圧でホールドされる。したがって、変速終了後はソレノイド弁36とソレノイド弁37のソレノイドSL1,SL2の信号はオフとされる。
次の第6速(6th)時は、C1クラッチ制御弁のソレノイドSLC1のみがオンとされ、C2クラッチ制御弁32とC4クラッチ制御弁34が開放状態とされる。このとき、C1クラッチ制御弁31へのDレンジ圧の供給は、C3カットオフ弁43、B1カットオフ弁45、C4チェック弁47、C4カットオフ弁44、及びC2カットオフ弁42経由によるC1カットオフ弁41のスプリング負荷側受圧部へのDレンジ圧の印加で、同弁41の受圧バランスにより同弁41が押上げ遮断されることで絶たれ、且つC1クラッチ制御弁31自身の閉鎖によりC1クラッチ油圧サーボ51はC1クラッチ制御弁31によりドレーンされる。これに代わって常時ライン圧の供給を受けるC4クラッチ制御弁34の開放によりC4カットオフ弁44経由のC4クラッチ油圧サーボ54への油圧供給が行われる。この場合、C4カットオフ弁44には、C3カットオフ弁43及びB1カットオフ弁45経由のDレンジ圧がプランジャ端受圧部に印加されてC4カットオフ弁44は押下げ状態となるため、同弁44を経てC4クラッチ油圧サーボ54への油圧供給が行われる。こうしてC2クラッチとC4クラッチの同時係合により第6速が達成される。
第7速(7th)時は、C1クラッチ制御弁31、C3クラッチ制御弁33、C4クラッチ制御弁34及びオンオフソレノイド弁36の各ソレノイドSLC1,SLC3,SLC4,SL1がオンとされ、C2クラッチ制御弁32とC3クラッチ制御弁33が開放状態とされる。この状態では、オンオフソレノイド弁36のソレノイド圧出力によりC3カットオフ弁43が押下げ状態となり、Dレンジ圧が同弁43経由でC3クラッチ制御弁33に供給され、開放状態の同弁33を経てC3クラッチ油圧サーボ53への油圧供給が行われる。この場合のC2クラッチ油圧サーボ52への油圧供給は第5速及び第6速時と同様である。かくして、C2クラッチとC3クラッチの同時係合により第7速が達成される。
また、第8速(8th)時は、C1クラッチ制御弁31、C4クラッチ制御弁34、B1ブレーキ制御弁35、オンオフソレノイド弁37の各ソレノイドSLC1,SLC2,SLB1,SL2がオンとされ、C2クラッチ制御弁32とB1ブレーキ制御弁34が開放状態とされる。この状態では、Dレンジ圧がソレノイド弁37による押下げ状態のB1カットオフ弁45経由でB1ブレーキ制御弁35に供給され、開放状態の同弁35を経てB1ブレーキ油圧サーボ55に供給される。この場合のC2クラッチ油圧サーボ52への油圧供給は第5、6及び7速時と同様である。かくしてC2クラッチとB1ブレーキの同時係合により第8速が達成される。
また、変速過渡時は、全ての制御弁のソレノイドSLC1〜SLC4及びSLB1を信号レベル調整下のコントロール状態とされ、更にオンオフソレノイド弁のソレノイドS1,S2の信号がオンとされ、それにより全ての制御弁がコントロール下の開放状態、ソレノイド弁36及びソレノイド弁37がソレノイド圧出力状態とされる。この状態ではC1カットオフ弁41がライン圧の印加による押下げ状態、C3カットオフ弁36及びB1カットオフ弁45がソレノイド圧印加による押下げ状態、C4カットオフ弁44及びC2カットオフ弁42がC3カットオフ弁36及びB1カットオフ弁45経由のライン圧の印加による押下げ状態となり、C1クラッチ制御弁31へはC1カットオフ弁41経由のDレンジ圧、C3クラッチ制御弁33へはC3カットオフ弁43経由のDレンジ圧、C4クラッチ制御弁34へは直接のライン圧、B1ブレーキ制御弁35へはB1カットオフ弁45経由のDレンジ圧、C2クラッチ制御弁32へはC2カットオフ弁42経由のDレンジ圧がそれぞれ供給され、各制御弁のコントロール下の油圧がC4クラッチ油圧サーボ54についてはC4カットオフ弁44経由で、他の油圧サーボについては直接供給される。
また、リバース(Rev)時は、常時供給のライン圧がC4クラッチ制御弁34の開放でC4カットオフ弁44に達し、他方で同じく常時供給のライン圧がソレノイド弁34により押下げ状態のC3カットオフ弁43及びソレノイド弁37により押下げ状態のB1カットオフ弁45経由でC4カットオフ弁44のスプール端受圧部に印加され押下げ状態に切換わる同弁44を経てC4クラッチ油圧サーボ54に供給される。また、マニュアルバルブ25の切換で出力されるリバース圧は、逆流絞り弁を経てB2カットオフ弁経由でB2コントロール弁40に供給され、B2ブレーキ油圧サーボ56に供給される。こうしてC4クラッチとB2ブレーキの同時係合によるリバースが達成される。
こうした各ソレノイド弁作動信号正常時の油圧回路作動に対して、ソレノイド信号のオールオフフェールが生じた場合、C3クラッチ制御弁33とB1ブレーキ制御弁35が常閉形の弁として設定されているため、これらの弁からの油圧供給を受けるC3クラッチ油圧サーボ53とB1ブレーキ油圧サーボ55がドレーンされ、更にオンオフソレノイド弁38も常閉形であるため、B2カットオフ弁46のDレンジ圧が遮断され、B2ブレーキ油圧サーボ56をドレーンする作動が生じる。そして、そのフェールがC2クラッチ係合の高速段側で生じたときは、C1クラッチ制御弁31が遮断状態となる(C1カットオフ弁41の作動参照)ため、C2クラッチとC4クラッチの油圧サーボ52,54が供給状態となり、第6速が達成されることになる。また、フェールがC2クラッチ非係合の低速段側で生じたときは、C2カットオフ弁42によってC2クラッチ制御弁32の基圧が遮断されているため、C1クラッチとC4クラッチの油圧サーボ51,54が供給状態となり、第4速が達成されることになる。このように高速段側での車両走行時も、また低速段側での車両走行時も極端な跳び変速が生じないことで、安定して車両走行を維持することができる。
また、前記のオールオフによって第6速が達成されている状態で、一旦車両を停止させて再発進する際に、マニュアルバルブのD−N−D切換を行なうと、C2クラッチ油圧サーボの供給圧が一旦ドレーンされることによって、自己圧保持のC2カットオフ弁42がC2クラッチ制御弁32の基圧を遮断し、これによりライン圧で連通状態を保持されるC1カットオフ弁41を介するDレンジ圧の供給を受ける常開形のC1クラッチ制御弁31及び常時ライン圧の供給を受ける常開形のC4クラッチ制御弁34が供給状態となり、C1クラッチ及びC4クラッチの同時係合による第4速を達成することができる。また、前記のようにC4クラッチ油圧サーボ54への供給状態は、オールオフ時にも確保され、B2ブレーキ油圧サーボへの供給はソレノイド信号によらずになされるため、オールオフ時のリバースも当然に達成される。
かくしてこの実施例によれば、従来のようにフェールセーフ弁を同時係合するとタイアップする係合要素への供給油圧を信号圧として切換えるのではなく、切換用のオンオフソレノイド弁によって切換えるようにしたので、例えば、極低油温時の油圧の応用性の悪い状態でのフェールセーフ弁の誤作動を防止できる。また、単純に各フェールセーフ弁にそれぞれ対応するソレノイド弁を設けることなく、オンオフソレノイド弁の動作の組合せによってオンオフソレノイド弁を持たないフェールセーフ弁(本例においてC4カットオフ弁44)の作動状態を切換えることができるため、オンオフソレノイド弁を減らすことができる。更にC4カットオフ弁44を除くフェールセーフ弁を制御弁の上流に配置したので、係合圧の漏れ等が低減でき、制御応答性が向上する。
また、同時係合するとタイアップする係合要素への供給油圧を信号圧として切換えるフェールセーフ弁では、同時係合するとタイアップする係合要素の組の掴み替えによる変速時に、フェールセーフ弁の油圧バランスによってフェールセーフ弁が変速途中で切換わらないようにする必要があるため、制御性が悪いのに対して、本実施例では、C4カットオフ弁切換油圧はC3カットオフ弁及びB1カットオフ弁がそれぞれ油圧供給状態(図示右側)になったとき、C4カットオフ弁に供給され(但し、C3カットオフ弁、B1カットオフ弁の少なくとも一方が油圧遮断状態となったときには供給されない)、C4カットオフ弁が油圧供給状態(図示右側)に切換わる。そして、変速過渡状態では、C3カットオフ弁及びB1カットオフ弁が油圧供給状態とされ、それによってC4カットオフ弁も油圧供給状態とされ、変速が終了すると、変速段に対応して切換用のソレノイドを設定を戻すようにしたので、係合要素の掴み替えを行っているとき等の変速過渡状態では、すべての係合要素を油圧供給状態とすることができるため、係合要素の掴み替えの制御性が向上する。
更に、C4カットオフ弁は、C3カットオフ弁及びB1カットオフ弁が油圧遮断状態となったときに供給されるDレンジ圧(但し、C3カットオフ弁及びB1カットオフ弁の少なくとも一方が油圧供給状態となったときには供給されない)によって、油圧供給状態に切換えられるC3クラッチ油圧サーボ、B1ブレーキ油圧サーボの両方を油圧供給状態とすることなく、C4クラッチ油圧サーボに油圧を供給することができるため、C3クラッチ、B1ブレーキ、C4クラッチのタイアップを確実に防止できる。
なお、本実施例において、C3カットオフ弁43とB1カットオフ弁45は、それぞれ係合要素の制御弁としてのC3クラッチ制御弁31とB1ブレーキ制御弁35の上流側に設けられているが、発明における第1フェールセーフ弁と第2フェールセーフ弁に該当するこれらカットオフ弁は制御弁の下流側に設けても発明の目的に沿った効果を達成することができる。