以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図10に沿って説明する。
[自動変速機の構成]
まず、本発明を適用し得る多段式自動変速機1(以下、単に「自動変速機」という)の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFRタイプ(フロントエンジン、リヤドライブ)の車両に用いて好適な自動変速機1は、不図示のエンジンに接続し得る自動変速機1の入力軸11を有しており、該入力軸11の軸方向を中心としてトルクコンバータ7と、変速機構2とを備えている。
上記トルクコンバータ7は、自動変速機1の入力軸11に接続されたポンプインペラ7aと、作動流体を介して該ポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bとを有しており、該タービンランナ7bは、上記入力軸11と同軸上に配設された上記変速機構2の入力軸12に接続されている。また、該トルクコンバータ7には、ロックアップクラッチ10が備えられており、該ロックアップクラッチ10が後述の油圧制御装置の油圧制御によって係合されると、上記自動変速機1の入力軸11の回転が変速機構2の入力軸12に直接伝達される。
上記変速機構2には、入力軸12(及び中間軸13)上において、プラネタリギヤDPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤDPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1に噛合するピニオンP1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP2を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2(CR3)、及びリングギヤR3(R2)を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンP4と、該ロングピニオンP4及びサンギヤS3に噛合するショートピニオンP3とを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
上記プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、例えばミッションケース3に一体的に固定されているボス部3bに接続されて回転が固定されている。該ボス部3bは、オイルポンプボディ3aから延設されている。また、上記キャリヤCR1は、上記入力軸12に接続されて、該入力軸12の回転と同回転(以下、「入力回転」という。)になっていると共に、第4クラッチC−4(摩擦係合要素)に接続されている。更に、リングギヤR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1クラッチC−1(摩擦係合要素)及び第3クラッチC−3(摩擦係合要素)に接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、係止手段としての第1ブレーキB−1(摩擦係合要素)に接続されてミッションケース3に対して固定自在となっていると共に、上記第4クラッチC−4及び上記第3クラッチC−3に接続されて、第4クラッチC−4を介して上記キャリヤCR1の入力回転が、第3クラッチC−3を介して上記リングギヤR1の減速回転が、それぞれ入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、第1クラッチC−1に接続されており、上記リングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、上記キャリヤCR2は、中間軸13を介して入力軸12の回転が入力される第2クラッチC−2(摩擦係合要素)に接続されて、該第2クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、係止手段としてのワンウェイクラッチF−1及び第2ブレーキB−2(摩擦係合要素)に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース3に対して一方向の回転が規制されると共に、該第2ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR3は、不図示の駆動車輪に回転を出力する出力軸15に接続されている。
[各変速段の伝達経路]
つづいて、上記構成に基づき、変速機構2の作用について図1、図2及び図3に沿って説明する。なお、図2は、本自動変速機の係合表であり、○はON(係合、係止)、(○)はエンジンブレーキ時のON(係止)を示す。また、図3に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤDPの部分において、横方向最端部(図3中左方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中右方側へ順に縦軸は、リングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図3中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR3(R2)、キャリヤCR2(CR3)、サンギヤS2に対応している。
例えばD(ドライブ)レンジであって、前進1速段(1ST)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進1速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、第2ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
前進2速段(2ND)では、図2に示すように、第1クラッチC−1が係合され、第1ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第1ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進2速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進3速段(3RD)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第3クラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第3クラッチC−3の係合によりリングギヤR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にリングギヤR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR3に出力され、前進3速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進4速段(4TH)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第4クラッチC−4が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第4クラッチC−4の係合によりキャリヤCR1の入力回転がサンギヤS2に入力される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも高回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進4速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進5速段(5TH)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第2クラッチC−2が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進4速段より高い減速回転となってリングギヤR3に出力され、前進5速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進6速段(6TH)では、図2に示すように、第2クラッチC−2及び第4クラッチC−4が係合される。すると、図1及び図3に示すように、第4クラッチC−4の係合によりサンギヤS2にキャリヤCR1の入力回転が入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。つまり、サンギヤS2及びキャリヤCR2に入力回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが入力回転の直結状態となり、そのまま入力回転がリングギヤR3に出力され、前進6速段(直結段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進7速段(7TH)では、図2に示すように、第2クラッチC−2及び第3クラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第3クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進7速段(上記直結段よりも増速のオーバードライブ1速段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進8速段(8TH)では、図2に示すように、第2クラッチC−2が係合され、第1ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、第1ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進7速段より高い増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進8速段(上記直結段よりも増速のオーバードライブ2速段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
後進段(REV)では、図2に示すように、第4クラッチC−4が係合され、第2ブレーキB−2が係止される。すると、図1及び図3に示すように、第4クラッチC−4の係合によりキャリヤCR1の入力回転がサンギヤS2に入力される。また、第2ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された入力回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、後進段としての逆転回転が出力軸15から出力される。
なお、本自動変速機においては、詳しくは後述する油圧制御装置20による油圧制御により、リバースレンジ時に第4クラッチC−4及び第2ブレーキB−2が係合されて、後進段を形成しているが、これは、種々変更が可能で、後進1速段のみ、もしくは、第3クラッチC−3と第2ブレーキB−2を係合(係止)した後進2速段も形成することができる。
また、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、第1クラッチC−1、第2クラッチC−2、第3クラッチC−3、及び第4クラッチC−4が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2との間、リングギヤR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤDPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となる。また、入力軸12(中間軸13)とキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸12とプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸12と出力軸15との動力伝達が切断状態となる。
[油圧制御装置の全体構成]
つづいて、本発明に係る自動変速機の油圧制御装置20について、図5を参照して説明する。なお、本第1の実施の形態においては、各バルブにおける実際のスプールは1本であるが、スプール位置の切換え位置或いはコントロール位置を説明するため、図5(及び後述する図7、図9)中に示す右半分の状態を「右半位置」、左半分の状態を「左半位置」という。
油圧制御装置20は、主に各種の元圧となる油圧を調圧・生成するための不図示の、ストレーナ、オイルポンプ、プライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブ、ソレノイドモジュレータバルブ、及びリニアソレノイドバルブSLT等を備えている。なお、本実施の形態では、上記オイルポンプ及びプライマリレギュレータバルブを合わせ、ライン圧PLを発生するライン圧発生源(元圧発生源)5として図示している(図5、及び後述の図7、図9参照)。
また、該油圧制御装置20は、電気的に油圧を制御して供給するための、リニアソレノイドバルブSL1、リニアソレノイドバルブSL2、リニアソレノイドバルブSL3、リニアソレノイドバルブSL4、リニアソレノイドバルブSL5、第1ソレノイドバルブS1(解除信号圧出力ソレノイドバルブ)、第2ソレノイドバルブS2(非解除信号圧出力ソレノイドバルブ)、第3ソレノイドバルブS3(信号圧出力ソレノイドバルブ)を備えている。さらに、パーキング切換えバルブ32、パーキングシリンダ33、元圧切換えバルブ35、及び振分け切換えバルブ36を備えている。なお、本実施の形態において上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は本発明に係る係合圧制御用ソレノイドバルブを構成しており、これは後述する第2及び第3の実施の形態においても同様である。
なお、本油圧制御装置20における第3ソレノイドバルブS3以外のソレノイドバルブ、即ちリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、並びに第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2は、非通電時(以下、「オフ」ともいう。)に入力ポートと出力ポートとを遮断し、通電時(以下、「オン」ともいう。)に連通する、いわゆるノーマルクローズ(N/C)タイプのものが用いられており、反対に第3ソレノイドバルブS3だけにノーマルオープン(N/O)タイプのものが用いられている。
そして、該油圧制御装置20には、上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5によりそれぞれ調圧されて供給される係合圧に基づき、上記第1クラッチC−1を係脱し得る油圧サーボ51、上記第2クラッチC−2を係脱し得る油圧サーボ52、上記第3クラッチC−3を係脱し得る油圧サーボ53、上記第4クラッチC−4を係脱し得る油圧サーボ54、上記第1ブレーキB−1を係脱し得る油圧サーボ61、上記第2ブレーキB−2を係脱し得る油圧サーボ62が備えられて構成されている。
つづいて、上記油圧制御装置20における各種の元圧、即ちライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧の生成部分について説明する。なお、これらライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧の生成部分は、一般的な自動変速機の油圧制御装置と同様なものであり、周知のものであるので、簡単に説明する。
オイルポンプ(不図示)は、例えば上記トルクコンバータ7のポンプインペラ7aに回転駆動連結されており、エンジンの回転に連動して駆動され、不図示のオイルパンからストレーナ(不図示)を介してオイルを吸上げる形で油圧を発生させる。また、上記油圧制御装置20には、不図示のリニアソレノイドバルブSLTが備えられており、該リニアソレノイドバルブSLTは、不図示のソレノイドモジュレータバルブにより調圧されたモジュレータ圧を元圧として、スロットル開度に応じた信号圧を調圧出力する。
不図示のプライマリレギュレータバルブは、オイルポンプにより発生された油圧を、そのスプリングの付勢力が負荷されたスプールに入力する上記リニアソレノイドバルブSLTの信号圧に基づき一部排出する形でライン圧PLに調圧する。このライン圧PLは、上述した種々のバルブに供給される。
また、上記プライマリレギュレータバルブにより排出された油圧は、更にセカンダリレギュレータバルブ(不図示)によって、そのスプリングの付勢力が負荷されたスプールに入力する上記リニアソレノイドバルブSLTの信号圧に基づき一部排出する形でセカンダリ圧に調圧される。このセカンダリ圧は、不図示の潤滑油路等に供給されると共に、ロックアップリレーバルブ(不図示)に供給され、ロックアップクラッチ10の制御用の元圧として用いられる。ソレノイドモジュレータバルブ(不図示)は、上記プライマリレギュレータバルブにより調圧されたライン圧PLをそのスプリングの付勢力に基づき、ライン圧PLが所定圧以上となると略々一定となるモジュレータ圧に調圧する。このモジュレータ圧は、上述のリニアソレノイドバルブSLT(不図示)等に元圧として供給される。
[ソレノイド・オールオフフェールに係る機能部分の構成]
ついで、本油圧制御装置20における、ソレノイド・オールオフフェールに係る機能部分について図5に沿って説明する。油圧制御装置20は、運転者の不図示のシフトレバー操作(又はボタン操作等)に基づく制御部6からの電気信号が入力されるように接続されている。
図5に示すように、ノーマルクローズ(N/C)タイプの上記第1及び第2ソレノイドバルブ(ON/OFFソレノイド)S1,S2は、入力ポートS1a,S2aにそれぞれ油路a,a2及び油路a3を介してライン圧PL(元圧、ロック圧)が入力されており、通電された(オンした)際に出力ポートS1b,S2bからパーキング切換えバルブ32の第1及び第2制御油室32a,32cに、油路b、b1及び油路cを介してそれぞれ信号圧PS1,PS2を出力するように構成されている。出力ポートS1bからの該信号圧PS1(ロック解除圧)は、油路b,b2を介して後述の振分け切換えバルブ36の第1制御油室36a(ロック解除圧入力油室)にも入力される。また、上記ライン圧PLは、油路a,a1を介してパーキング切換えバルブ32の入力ポート32bと、油路a,a1,a4を介して後述の元圧切換えバルブ35の入力ポート35bにも入力される。なお、第1,第2及び第3ソレノイドバルブS1,S2,S3とそれらの信号圧とは、上記のように同じ符号S1,S2,S3を用いて説明する。また、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5とそれらの係合圧とについても、同じ符号SL1〜SL5を用いて説明する。他のバルブについても同様とする。
上記パーキング切換えバルブ32は、1本のスプール32pと、該スプール32pの一端側に縮設されて該スプール32pをX1方向側(図中上方)に付勢するスプリング32sとを有している。また、パーキング切換えバルブ32は、スプール32pの一端(矢印X1側)に配置されて第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が作用する第1制御油室32aと、該スプール32pの他端(矢印X2側)に配置されて第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bからの信号圧PS2が作用する第2制御油室32cとを有している。
さらに、パーキング切換えバルブ32は、排出ポートEXと、ライン圧PLが供給される入力ポート32bと、スプール32pの移動に応じて入力ポート32bに連通し又は遮断される出力ポート32dとを有している。該出力ポート32dは、パーキング装置のパーキングシリンダ33に油路nを介して連通している。そして、上記スプール32pは、図中下側の大径ランド部と図中上側の小径ランド部とを有しており、これら大径ランド部と小径ランド部との間には、くびれ部が形成されると共に油室が形成されており、スプール32pがスプリング32sの付勢力に抗して下方に移動した右半位置にあって、該くびれ部に入力ポート32bから入力されるライン圧PLが作用した際に、上記大径ランド部と小径ランド部との外径差、つまり受圧面積の差によって、該スプール32pがスプリング32sの付勢方向と逆方向、即ち矢印X2方向に該スプリング32sの付勢力よりも強い力で付勢されてロックされるように構成されている。
ここで、図6を参照して、パーキングシリンダ33によって作動させられるパーキング装置9について説明する。該パーキング装置9は、同図に示すように、パーキングシリンダ33、パーキングロッド23、サポート16、パーキングポール17、パーキングギヤ21を備えている。上記パーキングシリンダ33は、バルブボディ22に接続されており、パーキングロッド23が、その基端側において、軸方向に移動自在となるように貫通配置されている。該パーキングロッド23は、その先端側において軸方向移動自在となるように遊嵌された円錐状のウエッジ24を備えており、ケース(不図示)に固定された鍔部14と該ウエッジ24との間には、スプリング15が配置されている。上記サポート16は、該パーキングロッド23の先端側の下方に配置されており、パーキングポール17との間にウエッジ24が挿脱されるように配置されている。パーキングポール17は、基端側の軸18を中心に略々上下方向に揺動自在に配置されており、中間部分の上方側には、自動変速機の出力軸(不図示)に固定されたパーキングギヤ21に対して係脱可能な爪部19が突設されている。
上記パーキングシリンダ33は、パーキング切換えバルブ32の出力ポート32dから油圧が作用すると、パーキングロッド23がスプリング15の付勢力に抗して該パーキングシリンダ33側に移動し、ウエッジ24をサポート16とパーキングポール17との間から離脱させ、該パーキングポール17を下方側に揺動して爪部19をパーキングギヤ21との噛合いから外すことによりパーキング解除状態となるように構成されている。また、パーキング切換えバルブ32からの油圧が遮断され、パーキングシリンダ33に作用する油圧がドレーンされると、パーキングロッド23がスプリング15の付勢力によりパーキングポール17側に移動し、ウエッジ24がサポート16とパーキングポール17との間に挿入され、該パーキングポール17を上方側に揺動して爪部19をパーキングギヤ21と噛合わせることによりパーキング状態となる。
また、図5に示すように、上記パーキング切換えバルブ32は、スプール32pが、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が第1制御油室32aに作用しない状態では、スプリング32sの付勢力により図の上方に移動して左半位置となり、出力ポート32dからパーキングシリンダ33への出力が遮断される。また、該パーキング切換えバルブ32は、第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bからの信号圧PS2が第2制御油室32cに作用せずに、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートSL1bからの信号圧PS1が第1制御油室32aに入力される状態、或いは、信号圧PS2が第2制御油室32cに作用せずに、ライン圧PLが入力ポート32bに作用し続けている状態にあっては、スプール32pが図の下方に移動して右半位置となり、出力ポート32dからパーキングシリンダ33に油圧が供給される。
ノーマルオープンタイプの上記第3ソレノイドバルブ(ON/OFFソレノイド)S3は、入力ポートS3aに、油路a5を介して、パーキング切換えバルブ32の入力ポート32bへのライン圧PLが分岐する形で作用しており、非通電状態(オフ)にあっては、該ライン圧PLを信号圧PS3として出力ポートS3bから元圧切換えバルブ35の制御油室35aに油路jを介して出力し、通電状態(オン)にあっては、該信号圧PS3を遮断するように構成されている。
また、上記元圧切換えバルブ35は、上記制御油室35aと、入力ポート35bと、出力ポート35cと、出力ポート35dと、出力ポート35eと、入力ポート35fと、排出ポートEXと、スプール35pと、該スプール35pを図の上方に付勢するスプリング35sとを有している。該スプール35pは、制御油室35aに上記信号圧PS3が入力された際に図の下方に移動して右半位置にされ、それ以外はスプリング35sの付勢力により図の上方に移動して左半位置にされる。
上記振分け切換えバルブ36は、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bから出力される信号圧PS1を分岐する形で入力する第1制御油室36aと、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから出力される係合圧を入力する入力ポート36bと、ライン圧PL(ロック圧)を油路a6を介して入力する入力ポート36c(第2ロック圧入力油室)と、ソレノイド・オールオフフェール時(全てのソレノイドバルブの非通電にする故障時)に元圧切換えバルブ35の出力ポート35eから出力される油圧を油路dを介して入力する入力ポート36dと、スプール36pの右半位置にあって該入力ポート36dに入力された出力ポート35eからの油圧を上記入力ポート35fに油路d1を介して出力する出力ポート36eと、入力ポート36bに入力されたリニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2をスプール36pの左半位置にあっては油圧サーボ62に油路e1を介して出力する出力ポート36fと、上記係合圧PSL2をスプール36pの右半位置にあっては油圧サーボ52に油路e2を介して出力する出力ポート36gと、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bからの係合圧PSL1を油路g1を介して入力する第2制御油室36h(前進係合圧入力油室)と、スプール36pと、該スプール36pを図の下方に付勢するスプリング36s(付勢手段)とを有している。
該振分け切換えバルブ36のスプール36pは、第1制御油室36aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されない状態で第2制御油室36hに出力ポートSL1bから係合圧PSL1が入力されると、図の上方に移動して右半位置になる。該振分け切換えバルブ36は、スプール36pに、図中最下部に形成された小径ランド部と、該小径ランド部の直上方に括れ部を挟んで形成された大径ランド部とを有しており、該括れ部の部分に設けられた油室に上記入力ポート36cからライン圧PLが入力され得るように構成されている。従って、振分け切換えバルブ36は、スプリング36sの付勢力に抗してスプール36pが上方に移動した右半位置になると入力ポート36cから上記油室にライン圧PLが入力されて、上側の大径ランド部と下側の小径ランド部との受圧面積の差に基づき、該スプール36pがスプリング36sの付勢方向と逆方向、即ち図の上方に該スプリング36sの付勢力よりも強い力で付勢されてロックされる。該ロック状態において第1制御油室36aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されると、該信号圧PS1による付勢力とスプリング36sによる付勢力とが相俟って上記ロックの付勢力に打ち勝つため、スプール36pは図の下方に移動して左半位置にされる。
また、上記リニアソレノイドバルブSL1は、正常時の元圧切換えバルブ35の出力ポート35cからのライン圧PLを油路a7,a10を介して入力する入力ポートSL1aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ51に油路gを介して係合圧PSL1として出力する出力ポートSL1bと、主に油圧サーボ51の係合圧PSL1をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
上記リニアソレノイドバルブSL2は、正常時の元圧切換えバルブ35の出力ポート35cからのライン圧PLを油路a7,a8を介して入力する入力ポートSL2aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して、振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに油路eを介して出力する出力ポートSL2bと、上記元圧切換えバルブ35の出力ポート35dに油路d2,d3を介して連通する排出ポートSL2cとを有している。該排出ポートSL2cは、正常時にあっては、上記出力ポート35dを介して排出ポートEXからドレーンし、また、ソレノイド・オールオフフェール時にあっては、油路d2,d3を介して上記出力ポート35dから逆入力圧P35dを逆入力される。
上記リニアソレノイドバルブSL3は、正常時の元圧切換えバルブ35の出力ポート35cからのライン圧PLを油路a7,a9を介して入力する入力ポートSL3aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ53に油路fを介して係合圧PSL3として出力する出力ポートSL3bと、元圧切換えバルブ35の出力ポート35dに連通する排出ポートSL3cとを有している。該排出ポートSL3cは、正常時にあっては、上記出力ポート35dを介して排出ポートEXからドレーンされ、また、ソレノイド・オールオフフェール時にあっては、油路d2,d4を介して上記出力ポート35dから逆入力圧P35dを逆入力される。
上記リニアソレノイドバルブSL4は、正常時の元圧切換えバルブ35の出力ポート35cからのライン圧PLを油路a7,a11を介して入力する入力ポートSL4aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ54に油路hを介して係合圧PSL4として出力する出力ポートSL4bと、主に油圧サーボ54の係合圧PC4をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
上記リニアソレノイドバルブSL5は、正常時の元圧切換えバルブ35の出力ポート35cからのライン圧PLを油路a7,a12を介して入力する入力ポートSL5aと、通電された際に該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ61に油路iを介して係合圧PSL5として出力する出力ポートSL5bと、主に油圧サーボ61の係合圧PB1をドレーンするための排出ポート(不図示)とを有している。
本第1の実施の形態においては、油路d,d1,d2,d3,d4の経路により、状態変更油路及び逆入力用油路が構成されている。
[各変速段の作用]
以上のような油圧制御装置20における各変速段の作用について、図4の本自動変速機の作動表と図5とを併せて参照して説明する。なお、本油圧制御装置20を搭載する自動車の運転席に配置されたシフトレバー(不図示)は、該レバーの移動方向の上側から下側に向かってP(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジの順に操作可能である。
すなわち、Pレンジにおいては、制御部6の制御で第1ソレノイドバルブS1がオフされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されず、制御部6の制御で第2及び第3ソレノイドバルブS2,S3がオンされて出力ポートS2bから信号圧PS2が出力される。これにより、パーキング切換えバルブ32では、第1制御油室32aに信号圧PS1が作用されず、第2制御油室32cに信号圧PS2が作用するため、スプリング32sの付勢力と相俟ってスプール32pが左半位置となり、入力ポート32bへのライン圧PLの入力が遮断される。このため、パーキングシリンダ33がパーキング切換えバルブ32からの油圧が遮断されて、パーキングロッド23がスプリング15の付勢力によりパーキングポール17側に移動することで、ウエッジ24がサポート16とパーキングポール17との間に挿入されて、爪部19がパーキングギヤ21に噛合うことでパーキング状態となる。
この際、制御部6の制御で第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、元圧切換えバルブ35は、その制御油室35aに出力ポートS3bからの信号圧PS3が作用されず、スプール35pが左半位置となるため、入力ポート35bに作用するライン圧PLは、出力ポート35cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、これらリニアソレノイドバルブSL1〜SL5は何れもオフ状態であるため、係合圧PSL1〜PSL5は出力されない。
また、シフトレバーがRレンジに操作されると、制御部6の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されることにより、パーキング切換えバルブ32では、第1制御油室32aに信号圧PS1が作用されるため、スプリング32sの付勢力に抗してスプール32pが右半位置となり、入力ポート32bへのライン圧PLの入力が出力ポート32dから出力される。このため、パーキングロッド23がスプリング15の付勢力に抗してパーキングシリンダ33側に移動し、ウエッジ24をサポート16とパーキングポール17との間から離脱させて、爪部19をパーキングギヤ21との噛合いから外すことでパーキング解除状態となる。そして、スプール32pが右半位置になったパーキング切換えバルブ32は、大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差によって右半位置にロックされる。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、元圧切換えバルブ35は、その制御油室35aに出力ポートS3bからの信号圧PS3が作用されず、スプール35pが左半位置となるため、入力ポート35bに作用するライン圧PLは、出力ポート35cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。このとき、リニアソレノイドバルブSL2,SL4がオンするため、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2が出力されるが、第1ソレノイドバルブS1はオンを維持し、スプール36pが左半位置になっていることで、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート36bから出力ポート36fを介して油圧サーボ62に供給され、これにより、第2ブレーキB−2が係止される。同時に、上記リニアソレノイドバルブSL4のオン作動により、元圧切換えバルブ35の出力ポート35cからのライン圧PLが、出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4として調圧出力され、第4クラッチC−4が係合される。従って、上記第2ブレーキB−2の係止と相俟って、後進段が達成される。
さらに、シフトレバーがNレンジに操作されると、上記Rレンジのときと同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置となることに基づき、パーキング解除状態となる。そして、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、元圧切換えバルブ35は左半位置になり、入力ポート35bに作用するライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力される。この際、上記Pレンジ時と同様、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は何れもオフ状態であるため、係合圧PSL1〜PSL5は出力されず、従って、ニュートラル状態が達成される。
そして、シフトレバーがDレンジにある前進レンジ時の前進1速段においては、制御部6の制御で第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオフされて出力ポートS1b,S2bの双方から信号圧PS1,PS2は出力されない状態にて、上述のようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることでパーキング解除状態となっている。
この際、制御部6の制御で第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、元圧切換えバルブ35は、スプール35pが左半位置となるため、入力ポート35bに作用するライン圧PLは、出力ポート35cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。ここで、リニアソレノイドバルブSL1がオンするため、その出力ポートSL1bから第1クラッチC−1に係合圧PSL1が供給されて該クラッチC−1が係合し、ワンウェイクラッチF−1の係止と相俟って、前進1速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進1速段のエンジンブレーキ時においては、上記R、Nレンジのときと同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置になることに基づき、パーキング解除状態となる。そして、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、元圧切換えバルブ35が左半位置になり、入力ポート35bに作用するライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力される。
この際、前進レンジ時の前進1速段時と同様、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで元圧切換えバルブ35が左半位置になり、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される状態となり、この状態においてリニアソレノイドバルブSL1,SL2の双方がオンされる。このため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1を供給して第1クラッチC−1を係合させる。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ36は、第2制御油室36hに係合圧PSL1が入力されるが、第1制御油室36aに信号圧PS1が入力されることで、スプリング36sの付勢力と相伴って左半位置になっているため、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート36bから出力ポート36fを介して油圧サーボ62に供給されて、第2ブレーキB−2が係止される。これにより、第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進2速段においては、制御部6の制御で第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオフされて出力ポートS1b,S2bの双方から信号圧PS1,PS2が出力されない状態にて、上述のようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。
この際、制御部6の制御で第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、元圧切換えバルブ35は、その制御油室35aに出力ポートS3bからの信号圧PS3が作用されず、スプール35pが左半位置となるため、入力ポート35bに作用するライン圧PLは、出力ポート35cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL5がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL5にあっては、その出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて第1ブレーキB−1が係止され、これにより、前進2速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進3速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。
この際、上記第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL3がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL3にあっては、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて第3クラッチC−3が係止され、これにより、前進3速段が達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進4速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL4がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL4にあっては、その出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給されて第4クラッチC−4が係止され、これにより、前進4速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進5速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL2がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合する。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ36は、第2制御油室36hに係合圧PSL1が入力されることで右半位置になっているため、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート36bから出力ポート36gを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、上記第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進5速段が達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進6速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL4がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL4にあっては、その出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4を供給し、これにより、第4クラッチC−4が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ36は、前進1速段〜前進5速段の何れかにおいて、リニアソレノイドバルブSL1からの係合圧PSL1が第2制御油室36hに一旦入力された際に、右半位置にされているため、上記係合圧PSL2は、入力ポート36bから出力ポート36gを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、上記第4クラッチC−4の係合と相俟って、前進6速段が達成される。
また、シフトレバーがDレンジにある前進7速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL3がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL3にあっては、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて、第3クラッチC−3が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、上記前進6速段の場合と同様に、該係合圧PSL2が入力ポート36bから出力ポート36gを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。従って、上記第3クラッチC−3の係合と相俟って、前進7速段が達成される。
さらに、シフトレバーがDレンジにある前進8速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、上述と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL5がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL5にあっては、その出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて、第1ブレーキB−1が係止される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、上記前進6速段の場合と同様に、該係合圧PSL2が入力ポート36bから出力ポート36gを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。従って、上記第1ブレーキB−1の係止と相俟って、前進8速段が達成される。
以上の多段式自動変速機の油圧制御装置20は、第1〜第4クラッチC−1〜C−4並びに第1及び第2ブレーキB−1,B−2、それら第1〜第4クラッチC−1〜C−4並びに第1及び第2ブレーキB−1,B−2を係脱させる複数の油圧サーボ51〜54,61,62、及び該油圧サーボ51〜54,61,62より1つ少ないリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の少なくとも1つ(SL2)からの係合圧PSL2を上記油圧サーボのうちの2つ(52,62)に振り分ける振分け切換えバルブ36(後述する図7では符号38、図9では符号40)を備え、該振分け切換えバルブ36が、少なくともリバース(R)レンジ(後進レンジ)、非走行レンジ(Pレンジ,Nレンジ)、及び前進レンジの特定変速段(前進1速段のエンジンブレーキ)の際に油圧サーボ62に係合圧PSL2を供給し得る左半位置(第1の位置)となり、かつそれら以外の前進レンジ(前進1速段〜前進8速段)の際に油圧サーボ52に係合圧PSL2を供給し得る右半位置(第2の位置)となるように構成されている。
[ソレノイドバルブ・オールオフフェール時の作用]
ついで、ソレノイド・オールオフフェール時について図4及び図5に沿って説明する。本自動変速機の油圧制御装置20にあっては、ソレノイドバルブ、各種切換えバルブ、各種コントロールバルブ等における故障を検出した際に、制御部6の制御で、全てのソレノイドバルブをオフにするソレノイド・オールオフフェールモードに移行する。なお、例えば断線・ショート等が生じた場合にあっても、同様にソレノイドがオールオフとなるので、本明細書中にあっては、これらの状態も含め、ソレノイド・オールオフフェールモードとする。
例えば車両が前進レンジで走行中に、何らかの原因によって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされる(故障時となる)。この際、全てのソレノイドバルブがオフされることにより、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3だけ信号圧PS3を出力する状態となり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止するため、特にリニアソレノイドバルブSL2,SL3にあっては、出力ポートSL2b,SL3bと排出ポートSL2c,SL3cとが連通した状態とされる。
また、元圧切換えバルブ35にあっては、オンしている第3ソレノイドバルブS3の信号圧PS3が制御油室35aに入力され、スプリング35sの付勢力に打勝って、スプール35pが右半位置(逆入力圧出力位置)に切換わるため、入力ポート35bに入力されるライン圧PLは出力ポート35eから出力されて、振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに入力される。この際、該振分け切換えバルブ36は、上述のように大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差に基づき右半位置にロックされているため、入力ポート36dに入力されたライン圧PLは、出力ポート36eから元圧切換えバルブ35の逆圧入力ポート35fに入力され、出力ポート35dを介して、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに、それぞれ逆入力圧P35dとして入力される。
これにより、排出ポートSL2cから逆入力圧P35dが入力されたリニアソレノイドバルブSL2は、排出ポートSL2cから係合圧PSL2として出力され、振分け切換えバルブ36の入力ポート36bから出力ポート36gを介して油圧サーボ52に供給され、これにより、第2クラッチC−2が係合される。同時に、排出ポートSL3cから逆入力圧P35dが入力されたリニアソレノイドバルブSL3は、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3を供給するため、これにより、第3クラッチC−3が係合される。従って、上記第2クラッチC−2の係合と相俟って、前進7速段が達成される。
以上のように、車両が前進レンジで走行中のソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第2クラッチC−2と第3クラッチC−3とが係合された前進7速段とされる。
ただし、前進1速段のエンジンブレーキでの走行中にソレノイド・オールオフフェールモードとされた場合には、ソレノイド・オールオフフェール発生前の時点で第1ソレノイドバルブS1がオンしていたことで、振分け切換えバルブ36の第1制御油室36aに信号圧S1が入力されていたことから、スプール36pは既に左半位置にあり、従って、ソレノイド・オールオフフェール時に第3ソレノイドバルブS3のオフに基づいて入力ポート36dに出力ポート35eからのライン圧PL(フェール用油圧)が作用しても、該ライン圧PLは遮断され、従って、リニアソレノイドバルブSL2,SL3に逆入力されることはなく、Nレンジを達成することになる。
一方、例えば車両がPレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされて、ノーマルオープンである第3ソレノイドバルブS3だけが信号圧PS3を出力する状態となって、ライン圧PLが元圧切換えバルブ35の入力ポート35b及び出力ポート35eを介して振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに作用する状態となる。しかしその際、Pレンジにおいては、ソレノイド・オールオフフェール発生前の時点でリニアソレノイドバルブSL1がオフされており、出力ポートS1bから係合圧PSL1が第2制御油室36hに作用されず、スプール36pが左半位置にあったため、入力ポート36dに作用するライン圧PLは遮断されて、元圧切換えバルブ35の入力ポート35fには作用しない。従って、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧P35dが入力されることはない。また、ソレノイド・オールオフフェール発生の時点で、既にパーキング切換えバルブ32は左半位置にあって、パーキングシリンダ33へのライン圧PLが遮断されていたため、パーキング状態が維持される。
このように、車両がPレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Pレンジが維持される。
また、例えば車両がRレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、同様に、全てのソレノイドバルブがオフされて、第3ソレノイドバルブS3だけが信号圧PS3を出力する状態となり、ライン圧PLが振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに作用する状態となるが、その際、Rレンジにおいても、ソレノイド・オールオフフェール発生前の時点でリニアソレノイドバルブSL1がオフされており、スプール36pが当初より左半位置にあったため、入力ポート36dに作用するライン圧PLは遮断される。このため、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧P35dが入力されることはなく、また、ソレノイド・オールオフフェール発生の前から右半位置にロックされていたスプール32pは、入力ポート32bにライン圧PLが作用し続けるため該右半位置に維持され、従って、パーキング解除状態が維持される。
このように、車両がRレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Nレンジに移行することになる。
そして、例えば車両がNレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、同様に、第3ソレノイドバルブS3だけが信号圧PS3を出力する状態となり、ライン圧PLが振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに作用する状態となるが、その際、Nレンジにおいても、ソレノイド・オールオフフェール発生前の時点でリニアソレノイドバルブSL1がオフされて、スプール36pが当初より左半位置にあったため、入力ポート36dに作用するライン圧PLは遮断される。このため、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧P35dが入力されることはなく、また、ソレノイド・オールオフフェール発生の前から右半位置にロックされていたスプール32pは、入力ポート32bにライン圧PLが作用し続けるため該右半位置に維持され、従って、パーキング解除状態が維持される。
このように、車両がNレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Nレンジが維持されることになる。
以上のように、本実施の形態によると、前進1速段のエンジンブレーキの場合を除く前進1速段〜前進8速段の何れにおいてソレノイド・オールオフフェールモードになった場合であっても、前進7速段(所定前進変速段)を形成して車両の走行を確保することができると共に、車両がPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、前進1速段のエンジンブレーキの何れかでソレノイド・オールオフフェールモードになった場合には、前進7速段(所定前進変速段)を形成することなく、PレンジではPレンジを維持し、RレンジではNレンジに移行させ、NレンジではNレンジを維持し、前進1速段のエンジンブレーキではNレンジに移行させるようにして、車両の走行安全性を確保することができる。また、エンジンを停止させた際には、元圧であるライン圧PLの供給が全て停止するため、たとえエンジン駆動時に振分け切換えバルブ36が右半位置にロックされていたとしてもスプール36pが左半位置に復帰することから、PレンジやNレンジでエンジンを再始動させたとしても、逆入力圧P35dは出力されず、従って、前進7速段を形成することはなく、パーキング状態、或いはニュートラル状態とされる。
[第2の実施の形態]
ついで、上述した第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態を図7に沿って説明する。この第2の実施の形態にあっては、上記元圧切換えバルブ35及び振分け切換えバルブ36の代わりに、図7に示す元圧切換えバルブ37及び振分け切換えバルブ38を用い、また、リニアソレノイドバルブSL2,SL3をノーマルオープンタイプとしたものである。なお、該第2の実施の形態は、先の第1の実施の形態に比し、主に上記バルブ構成が異なるだけで、他の部分は略々同一であるため、主要部分に同一符号を付して説明を省略する。
すなわち、本第2の実施の形態における元圧切換えバルブ37は、制御油室37aと、ライン圧PLを入力する入力ポート37bと、出力ポート37cと、排出ポートEXと、スプール37pと、該スプール37pを図の上方に付勢するスプリング37sとを有している。該スプール37pは、振分け切換えバルブ38から信号圧P38が制御油室37aに入力された際に図の下方に移動して右半位置にされ、それ以外はスプリング37sの付勢力により図の上方に移動して左半位置にされる。
また、振分け切換えバルブ38は、第1ソレノイドバルブS1(解除信号圧出力ソレノイドバルブ)の出力ポートS1bから出力される信号圧PS1(ロック解除圧)を分岐する形で入力する第1制御油室38a(ロック解除圧入力油室)と、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから出力される係合圧PSL2を入力する入力ポート38bと、ライン圧PL(ロック圧)を入力する入力ポート38c(第2ロック圧入力油室)と、ソレノイド・オールオフフェール時(全てのソレノイドバルブの非通電にする故障時)に第3ソレノイドバルブS3の出力ポートS3bから出力される信号圧PS3を油路kを介して入力する入力ポート38eと、スプール38pの左半位置にあって該入力ポート38eに入力された上記信号圧PS3を油路k1を介して上記制御油室37aに出力する出力ポート38dと、入力ポート38bに入力されたリニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2をスプール38pの左半位置にて油圧サーボ62に出力する出力ポート38fと、上記係合圧PSL2をスプール38pの右半位置にて油圧サーボ52に出力する出力ポート38gと、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSLb1からの係合圧PSL1を入力する第2制御油室38h(前進係合圧入力油室)と、スプール38pと、該スプール38pを図の下方に付勢するスプリング38s(付勢手段)とを有している。
該振分け切換えバルブ38のスプール38pは、第1制御油室38aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されない状態で第2制御油室38hに出力ポートSL1bから係合圧PSL1が入力されると、図の上方に移動して右半位置になる。該振分け切換えバルブ38は、前述した振分け切換えバルブ36と同様の構成を備えることにより、スプリング38sの付勢力に抗してスプール38pが上方に移動した右半位置になると入力ポート38cから油室にライン圧PLが入力されて、上側の大径ランド部と下側の小径ランド部との受圧面積の差に基づき、該スプール38pがスプリング38sの付勢方向と逆方向、即ち図の上方に該スプリング38sの付勢力よりも強い力で付勢されてロックされる。さらに、該ロック状態において第1制御油室38aに出力ポートS1bから信号圧PS1が入力されると、スプール38pは図の下方に移動して左半位置にされる。
上記振分け切換えバルブ38のスプール38pは、第1制御油室38aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されない状態で、第2制御油室38hに出力ポートSL1bからの係合圧PSL1が入力された際に、右半位置にされる。また、上記スプール38pは、第2制御油室38hに係合圧PSL1が入力されない状態で、第1制御油室38aに信号圧PS1が入力された際に、左半位置にされる。
本第2の実施の形態においては、油路k,k1の経路により、状態変更油路及び信号圧油路が構成されている。
[各変速段の作用]
以上のような本第2の実施の形態の油圧制御装置20における各変速段の作用について、図8の本自動変速機の作動表と図7とを併せて参照して説明する。
すなわち、Pレンジにおいては、第1の実施の形態におけるPレンジの場合と同様の作用によりパーキング状態となる。その際、制御部6の制御で上記第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3は出力されず、また、振分け切換えバルブ38は、第1制御油室38aに信号圧PS1が入力されずスプール38pが左半位置になっているが、入力ポート38eには信号圧PS3が出力されていないため影響はない。従って、信号圧PS3が出力ポート38dから制御油室37aに作用されないことで、元圧切換えバルブ37が左半位置にされて、出力ポート37cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てにライン圧PLを出力するが、この際、リニアソレノイドバルブSL2,SL3がオン状態で、かつリニアソレノイドバルブSL1,SL4,SL5がオフ状態であるため、係合圧PSL1〜PSL5は一切出力されず、Pレンジが達成される。
また、シフトレバーがRレンジに操作されると、制御部6の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されることで、パーキング切換えバルブ32では、第1制御油室32aに信号圧PS1が作用されるため、スプール32pが右半位置となり、入力ポート32bに入力されるライン圧PLが出力ポート32dからパーキングシリンダ33に出力される。これにより、第1の実施の形態におけるRレンジの場合と同様、パーキング解除状態になると共に、スプール32pが右半位置にロックされる。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされるため、振分け切換えバルブ38は、入力ポート38eに信号圧PS3を作用されることがなく、従って、元圧切換えバルブ37は、制御油室37aに信号圧PS3が作用されず、左半位置になる。このため、該元圧切換えバルブ37は、入力ポート37bに作用するライン圧PLを、出力ポート37cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力する。このとき、リニアソレノイドバルブSL3,SL4がオンされると共に、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL4にあっては、その出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給され、これにより、第4クラッチC−4が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、調圧した係合圧PSL2が出力ポートSL2bから出力されて、振分け切換えバルブ38の入力ポート38bに入力される。この際、振分け切換えバルブ38は、第1ソレノイドバルブS1がオンされて信号圧PS1が第1制御油室38aに入力されたことで左半位置になっているため、入力ポート38bに入力された上記係合圧PSL2は、出力ポート38fから油圧サーボ62に出力され、これにより、第2ブレーキB−2が係止される。従って、上記第4クラッチC−4の係合が相俟って、後進段が達成される。
また、シフトレバーがNレンジに操作されると、上記Rレンジのときと同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置となることに基づき、パーキング解除状態になると共に、スプール32pが右半位置にロックされる。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされるため、振分け切換えバルブ38は、入力ポート38eに信号圧PS3を作用されることがなく、従って、元圧切換えバルブ37は、上述と同様、左半位置になる。このため、該元圧切換えバルブ37の出力ポート37cから、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けてライン圧PLが出力される。このとき、リニアソレノイドバルブSL2,SL3がオンされると共に、リニアソレノイドバルブSL1,SL4,SL5がオフされるため、係合圧PSL1〜PSL5は一切出力されず、従って、ニュートラル状態が達成される。
さらに、前進レンジ時の前進1速段においては、制御部6の制御で第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオフされて出力ポートS1b,S2bの双方から信号圧PS1,PS2は出力されないが、上述したようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態が維持されている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされるため、振分け切換えバルブ38は、入力ポート38eに信号圧PS3を作用されることがなく、従って、元圧切換えバルブ37は、上述と同様、左半位置になる。このため、該元圧切換えバルブ37の出力ポート37cから、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けてライン圧PLが出力される。このとき、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3がオンされると共に、リニアソレノイドバルブSL4,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合される。従って、前進1速段が達成される。
また、前進1速段のエンジンブレーキ時においては、上記R、Nレンジのときと同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置となることに基づき、パーキング解除状態となる。そして、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、上述と同様、入力ポート37bに作用するライン圧PLが出力ポート37cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力される。
この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL3がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5がオフされるため、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2がオフされることで、調圧された係合圧PSL2が、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ38の入力ポート38bに出力される。この際、第1ソレノイドバルブS1がオンされたことで、振分け切換えバルブ38の第1制御油室38aに信号圧PS1が入力されて、スプール38pが左半位置になるため、入力ポート38bに入力される上記係合圧PSL2は出力ポート38fから油圧サーボ62に供給され、これにより、第2ブレーキB−2が係止される。従って、ワンウェイクラッチF−1の係止、第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。
さらに、前進2速段においても、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされて出力ポートS1b,S2bから信号圧PS1,PS2は出力されないが、上述のようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態が維持されている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされるため、振分け切換えバルブ38は、入力ポート38eに信号圧PS3を作用されることがなく、従って、元圧切換えバルブ37は、上述と同様に左半位置となり、出力ポート37cから、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けてライン圧PLを出力する。このとき、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL5がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL4がオフされるため、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合されると共に、出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて第1ブレーキB−1が係止される。これにより、前進2速段が達成される。
また、前進3速段においても、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされて出力ポートS1b,S2bから信号圧PS1,PS2は出力されないが、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態が維持されている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL2がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL3,SL4,SL5がオフされるため、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合されると共に、出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて第3クラッチC−3が係合される。これにより、前進3速段が達成される。
さらに、前進4速段においても、上述と同様、パーキング解除状態が維持されている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL5がオフされるため、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合されると共に、出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給されて第4クラッチC−4が係合される。これにより、前進4速段が達成される。
また、前進5速段においても、上述と同様、パーキング解除状態が維持されている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL3がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて、第1クラッチC−1が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ38の入力ポート38bに係合圧PSL2を出力するが、この際、振分け切換えバルブ38は、第1ソレノイドバルブS1がオンされず信号圧PS1が第1制御油室38aに作用されない状態で、第2制御油室38hに出力ポートSL1bから係合圧PSL1が作用することでスプール38pが右半位置になっており、従って、上記係合圧PSL2が出力ポート38gを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進5速段が達成される。
さらに、前進6速段においても、上述と同様、パーキング解除状態が維持されている。この際、リニアソレノイドバルブSL3,SL4がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL4にあっては、出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給されて、第4クラッチC−4が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ38の入力ポート38bに係合圧SL2を出力するが、この際、振分け切換えバルブ38は、大小の面積差でロックされて、スプール38pが右半位置になるため、上記係合圧PSL2が油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進6速段が達成される。
また、前進7速段においても、上述と同様、パーキング解除状態が維持されている。この際、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5が全てオフされるため、リニアソレノイドバルブSL3にあっては、出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて、第3クラッチC−3が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、振分け切換えバルブ38の入力ポート38bに係合圧SL2を出力するが、振分け切換えバルブ38が、上述と同様、右半位置になるため、上記係合圧PSL2が油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進7速段が達成される。
さらに、前進8速段においても、上述と同様、パーキング解除状態が維持されている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4がオフされ、かつリニアソレノイドバルブSL3,SL5がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL5にあっては、出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて、第1ブレーキB−1が係止される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、入力ポート38bに係合圧PSL2を出力するが、振分け切換えバルブ38が、上述と同様、右半位置になるため、上記係合圧PSL2が油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進8速段が達成される。
[ソレノイドバルブ・オールオフフェール時の作用]
ついで、第2の実施の形態におけるソレノイド・オールオフフェール時について図7及び図8に沿って説明する。
例えば車両が前進レンジで走行中に、ソレノイド・オールオフフェールモードとされて全てのソレノイドバルブがオフされると、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,PSL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
また、第3ソレノイドバルブS3がオンして出力ポートS3bから信号圧PS3を振分け切換えバルブ38の入力ポート38eに出力するが、この際、振分け切換えバルブ38は、上述したように大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差に基づき右半位置にロックされているため、上記入力ポート38eへの信号圧PS3は遮断される。これにより、元圧切換えバルブ37は左半位置に保持されて、入力ポート37bに入力されるライン圧PLが出力ポート37cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに供給される。
この際、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3がオフしていることで、リニアソレノイドバルブSL3の出力ポートS3bから出力される係合圧SL3が油圧サーボ53に供給されて、第3クラッチC−3が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ38の入力ポート38bに係合圧SL2が出力されるが、このとき振分け切換えバルブ38は、スプール38pが右半位置にロックされているため、入力ポート38bへの上記係合圧SL2が、出力ポート38gを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進7速段が達成される。
以上のように、車両が前進レンジで走行中のソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、本実施の形態においても、第2クラッチC−2と第3クラッチC−3とが係合された前進7速段とされる。
ただし、前進1速段のエンジンブレーキでの走行中にソレノイド・オールオフフェールモードとされた際には、ソレノイド・オールオフフェール発生前の時点で第1ソレノイドバルブS1がオンして、振分け切換えバルブ38の第1制御油室38aに信号圧S1が入力されていたことから、スプール38pは左半位置にあり、従って、ソレノイド・オールオフフェール時に第3ソレノイドバルブS3のオフに基づいて入力ポート38eに信号圧PS3が作用しても、該信号圧PS3は遮断されない。信号圧PS3は油路k1を介して制御油室37aに入力し、スプール37pを右半位置とする。これにより、入力ポート37bのライン圧PLが遮断され、Nレンジに移行することになる。
一方、例えば車両がPレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされて全てのソレノイドバルブがオフされると、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,SL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
この際、パーキング切換えバルブ32は、パーキング切換えバルブ32が左半位置に保持され、パーキング装置9はパーキング状態を保持する。また、第3ソレノイドバルブS3がオフされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3が振分け切換えバルブ38の入力ポート38eに出力されるが、Pレンジにおいては、ソレノイド・オールオフフェール発生前の時点でリニアソレノイドバルブSL1がオフされて、出力ポートS1bから係合圧PSL1が第2制御油室38hに作用されず、スプール38pが左半位置にあったため、入力ポート38eへの信号圧PS3は遮断されない。該信号圧PS3は油路k1を介して制御油室37aに入力し、スプール37pを右半位置とする。そうすることで、入力ポート37bのライン圧PLが遮断され、Pレンジが達成される。
このように、車両がPレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もすることがなく、従って、Pレンジが維持されることになる。
また、例えば車両がRレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされて、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,PSL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
この際、パーキング切換えバルブ32は、入力ポート32bにライン圧PLが入力され続けることでスプール32pが右半位置にロックされ、これにより、パーキング装置9はパーキング解除状態を保持する。また、第3ソレノイドバルブS3がオフされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3が振分け切換えバルブ38の入力ポート38eに出力されるが、スプール38pは、ソレノイド・オールオフフェール発生前にRレンジに切換えられた時点で第1ソレノイドバルブS1がオンしたことで信号圧PS1が第1制御油室38aに入力されて左半位置になっており、従って、上記信号圧PS3は、出力ポート38dから元圧切換えバルブ37の制御油室37aに出力される。これにより、元圧切換えバルブ37は、スプール37pが右半位置になり、ライン圧PLを遮断するため、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れにもライン圧PLが供給されることはなく、Nレンジが達成される。
このように、車両がRレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の何れも係合、係止されることなく、Nレンジに変更される。
そして、例えば車両がNレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされて、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,PSL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
この際、パーキング切換えバルブ32は、入力ポート32bにライン圧PLが入力され続けることでロックされ、これにより、パーキング装置9はパーキング解除状態を保持する。また、第3ソレノイドバルブS3がオフされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3が振分け切換えバルブ38の入力ポート38eに出力されるが、スプール38pは、上述したRレンジの場合と同じ理由で左半位置になっており、従って、入力ポート38eへの上記信号圧PS3が出力ポート38dから制御油室37aに出力される。これにより、元圧切換えバルブ37は、スプール37pが右半位置になり、ライン圧PLを遮断するため、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れにもライン圧PLが供給されることはなく、Nレンジが達成される。
このように、車両がNレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Nレンジが維持される。
以上のように、本第2の実施の形態においても、前進1速段のエンジンブレーキの場合を除く前進1速段〜前進8速段の何れにおいてソレノイド・オールオフフェールモードになった場合であっても、前進7速段(所定前進変速段)を形成して車両の走行を確保することができると共に、車両がPレンジ、Rレンジ、Nレンジの何れかでソレノイド・オールオフフェールモードになった場合には前進7速段(所定前進変速段)を形成することなく、PレンジではPレンジを維持し、RレンジではNレンジに移行させ、NレンジではNレンジを維持するようにして、車両の走行安全性を確保することができる。また、エンジンを停止させた際には、元圧であるライン圧PLの供給が全て停止するため、エンジン駆動時に振分け切換えバルブ38が右半位置にロックされていたとしてもスプール38pが左半位置に復帰するため、第3ソレノイドバルブS3が出力するが、バルブが作動し、全リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の元圧が遮断されることで、前進7速段を形成することはなく、パーキング状態、或いはニュートラル状態とされる。
[第3の実施の形態]
ついで、前述した第1の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態を図9に沿って説明する。該第3の実施の形態にあっては、上記元圧切換えバルブ35及び振分け切換えバルブ36の代わりに、図9に示す元圧切換えバルブ39及び振分け切換えバルブ40を用い、また、リニアソレノイドバルブSL2,SL3をノーマルオープンタイプとしたものである。なお、この第3の実施の形態は、先の第1の実施の形態に比し、主に上記バルブ構成が異なるだけで、他の部分は略々同一であるため、主要部分に同一符号を付して説明を省略する。
すなわち、本第3実施の形態における元圧切換えバルブ39は、ソレノイド・オールオフフェール時に第3ソレノイドバルブS3の出力ポートS3bから出力される信号圧PS3を油路lを介して入力する第1制御油室39aと、ライン圧PLを入力する入力ポート39bと、出力ポート39cと、排出ポートEXと、第2制御油室39d(第1ロック圧入力油室)と、スプール39pと、該スプール39pを図の上方に付勢するスプリング39sとを有している。該スプール39pは、第3ソレノイドバルブS3の出力ポートS3bからの信号圧PS3が制御油室39aに作用した際にスプリング39sに抗して図の下方に移動して右半位置にされ、第1制御油室39aに信号圧PS3が作用しないとき、或いは該第1制御油室39aに信号圧PS3が作用していても第2制御油室39dに振分け切換えバルブ40の出力ポート40fからの信号圧P40(ロック圧)が油路mを介して作用したときに図の上方に移動して左半位置にされる。
上記振分け切換えバルブ40は、第1ソレノイドバルブS1(解除信号圧出力ソレノイドバルブ)の出力ポートS1bから出力される信号圧PS1を分岐する形で入力する第1制御油室40a(ロック解除圧入力油室)と、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから出力される係合圧PSL2を入力する入力ポート40bと、ライン圧PLを入力する入力ポート40c(第2ロック圧入力油室)と、スプール40pの左半位置にあって該入力ポート40bに入力された信号圧PSL2を油圧サーボ62に出力する出力ポート40dと、スプール40pの右半位置にあって該入力ポート40bに入力される信号圧PSL2を油圧サーボ52に出力する出力ポート40eと、スプール40pの右半位置にあって入力ポート40cに入力されたライン圧PLを元圧切換えバルブ39の第2制御油室39dに出力する出力ポート40fと、スプール40pと、該スプール40pを図の下方に付勢するスプリング40s(付勢手段)とを有している。
該振分け切換えバルブ40のスプール40pは、第1制御油室40aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されない状態で第2制御油室40g(前進係合圧入力油室)に出力ポートSL1bから係合圧PSL1が入力されると、図の上方に移動して右半位置になる。該振分け切換えバルブ40は、前述した振分け切換えバルブ36と同様の構成を備えることにより、スプリング40sの付勢力に抗してスプール40pが上方に移動した右半位置になると入力ポート40cから油室にライン圧PLが入力されて、上側の大径ランド部と下側の小径ランド部との受圧面積の差に基づき、該スプール40pがスプリング40sの付勢方向と逆方向、即ち図の上方に該スプリング40sの付勢力よりも強い力で付勢されてロックされる。さらに、該ロック状態において第1制御油室40aに出力ポートS1bから信号圧PS1が入力されると、スプール40pは図の下方に移動して左半位置にされる。
本第3の実施の形態においては、ライン圧発生源(元圧発生源)5から油路a,a1,a4,a6,mへの経路により、状態変更油路及びロック圧油路が構成されている。
[各変速段の作用]
以上のような本第3の実施の形態の油圧制御装置20における各変速段の作用について、図10の本自動変速機の作動表と図9とを併せて参照して説明する。
すなわち、Pレンジにおいては、第1の実施の形態におけるPレンジの場合と同様の作用で、パーキング状態となる。その際、制御部6の制御で第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、出力ポートS3bからの信号圧PS3が出力されず、スプール39pが左半位置にあるため、入力ポート39bに作用するライン圧PLは出力ポート39cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、リニアソレノイドバルブSL2,SL3がオン状態であり、かつリニアソレノイドバルブSL1,SL4,SL5が何れもオフ状態であるため係合圧PSL1〜PSL5は一切出力されず、Pレンジが達成される。
また、シフトレバーがRレンジに操作されると、制御部6の制御で第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されることで、パーキング切換えバルブ32では、第1制御油室32aに信号圧PS1が作用されてスプール32pが右半位置となり、入力ポート32bに入力されるライン圧PLが出力ポート32dからパーキングシリンダ33に出力される。これにより、第1の実施の形態におけるRレンジの場合と同様、パーキング解除状態となると共に、スプール32pが右半位置にロックされる。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされるため、元圧切換えバルブ39は、第1制御油室39aに信号圧PS3を作用されることなくスプール39pが左半位置にあり、従って、入力ポート39bに作用されるライン圧PLを出力ポート39cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力する。このとき、リニアソレノイドバルブSL3,SL4がオンされると共に、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL4にあっては、調圧した係合圧PSL4を出力ポートSL4bから油圧サーボ54に供給し、これにより、第4クラッチC−4が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、調圧した係合圧PSL2を出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ40の入力ポート40bに出力する。この際、振分け切換えバルブ40は、第1ソレノイドバルブS1がオンされて信号圧PS1が第1制御油室40aに入力されたことで左半位置になっているため、入力ポート40bに入力された係合圧PSL2は、出力ポート40dから油圧サーボ62に出力され、これにより、第2ブレーキB−2が係止される。従って、上記第4クラッチC−4の係合と相俟って、後進段が達成される。
さらに、シフトレバーがNレンジに操作されると、上記Rレンジのときと同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置となることに基づき、パーキング解除状態となる。そして、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3は出力されず、また元圧切換えバルブ39は、第1制御油室39aに信号圧PS1が入力されずスプール39pが左半位置にあるため、入力ポート39bに作用するライン圧PLは出力ポート39cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。この際、リニアソレノイドバルブSL2,SL3はオン状態であり、かつリニアソレノイドバルブSL1,SL4,SL5が何れもオフ状態であるため、係合圧PSL1〜PSL5は一切出力されず、従って、Nレンジが達成される。
そして、前進レンジ時の前進1速段においては、制御部6の制御で第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオフされて出力ポートS1b,S2bの双方から信号圧PS1,PS2は出力されないが、上述したようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態になっている。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3が出力されず、元圧切換えバルブ39が左半位置にあるため、入力ポート39bに作用するライン圧PLが出力ポート39cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。このとき、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3がオン状態であり、かつリニアソレノイドバルブSL4,SL5がオフ状態であるため、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合される。従って、ワンウェイクラッチF−1の係止と相俟って、前進1速段が達成される。
また、前進1速段のエンジンブレーキ時においては、上記R、Nレンジの場合と同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置となることに基づき、パーキング解除状態となる。
この際、第3ソレノイドバルブS3がオンされることで、出力ポートS3bからの信号圧PS3が出力されず、元圧切換えバルブ39が左半位置にあるため、入力ポート39bに作用するライン圧PLが出力ポート39cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。このとき、リニアソレノイドバルブSL1,SL3がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、調圧した係合圧PSL1を出力ポートSL1bから油圧サーボ51に供給し、これにより、第1クラッチC−1が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、調圧した係合圧PSL2を出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ40の入力ポート40bに出力するが、該振分け切換えバルブ40は、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bから信号圧PS1が第1制御油室40aに入力されることでスプール40pが左半位置にあるため、入力ポート40bへの上記係合圧PSL2が出力ポート40dを介して油圧サーボ62に供給され、これにより、第2ブレーキB−2が係止される。従って、上記第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。
さらに、前進2速段においては、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされて出力ポートS1b,S2bの双方から信号圧PS1,PS2は出力されないが、上述のようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態になっている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL5がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL4がオフされるため、出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合されると共に、出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて第1ブレーキB−1が係止される。これにより、前進2速段が達成される。
また、前進3速段においても、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされ、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることでパーキング解除状態になっている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL2がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL3,SL4,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合されると共に、リニアソレノイドバルブSL3の出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて第3クラッチC−3が係合される。これにより、前進3速段が達成される。
さらに、前進4速段においても、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされ、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることでパーキング解除状態になっている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合されると共に、リニアソレノイドバルブSL4の出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給されて第4クラッチC−4が係合される。これにより、前進4速段が達成される。
また、前進5速段においても、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされ、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることでパーキング解除状態になっている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL3がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5がオフされるため、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ40の入力ポート40bに係合圧PSL2が出力されるが、この際、振分け切換えバルブ40のスプール40pは、第1ソレノイドバルブS1がオンされず信号圧PS1が第1制御油室40aに作用しない状態で、第2制御油室40gに出力ポートSL1bから係合圧PSL1が作用するため、入力ポート40bに入力される上記係合圧PSL2が出力ポート40eを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進5速段が達成される。
さらに、前進6速段においても、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされ、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることでパーキング解除状態になっている。この際、リニアソレノイドバルブSL3,SL4がオンされ、かつリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL5がオフされるため、出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給されて第4クラッチC−4が係合される。また、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ40の入力ポート40bに係合圧PSL2が出力されるが、この際、振分け切換えバルブ40は、上述のように大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差に基づき右半位置にロックされているため、スプール40pが右半位置になり、入力ポート40bに入力される係合圧PSL2が出力ポート40eを介して油圧サーボ52に供給されて第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進6速段が達成される。
また、前進7速段においても、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされ、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることでパーキング解除状態になっている。この際、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5が全てオフされるため、調圧した係合圧PSL3がリニアソレノイドバルブSL3の出力ポートSL3bから油圧サーボ53に供給されて、第3クラッチC−3が係合される。また、調圧した係合圧PSL2がリニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ40の入力ポート40bに出力されるが、この際、振分け切換えバルブ40は、前進6速段の場合と同様、スプール40pが右半位置になるため、入力ポート40bに入力される係合圧PSL2が出力ポート40eを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進7速段が達成される。
さらに、前進8速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされ、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることでパーキング解除状態になっている。この際、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4がオフされ、かつリニアソレノイドバルブSL3,SL5がオンされるため、調圧した係合圧PSL5がリニアソレノイドバルブSL5の出力ポートSL5bから油圧サーボ61に供給されて、第1ブレーキB−1が係止される。また、調圧した係合圧PSL2がリニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ40の入力ポート40bに出力されるが、この際、振分け切換えバルブ40は、前進6速段の場合と同様、スプール40pが右半位置になるため、入力ポート40bに入力される上記係合圧PSL2が出力ポート40eを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進8速段が達成される。
[ソレノイドバルブ・オールオフフェール時の作用]
ついで、本第3の実施の形態におけるソレノイド・オールオフフェール時について図9及び図10に沿って説明する。
例えば車両が前進レンジで走行中に、ソレノイド・オールオフフェールモードとされて全てのソレノイドバルブがオフされると、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,PSL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
また、元圧切換えバルブ39にあっては、オフしている第3ソレノイドバルブS3の信号圧PS3が第1制御油室39aに作用して、スプール39pが右半位置になろうとするが、この際、振分け切換えバルブ40は、入力ポート40cにライン圧PLが作用され続け、上述した受圧面積の差に基づき右半位置にロックされているため、ライン圧PLに基づく信号圧P40を出力ポート40fから第2制御油室39dに出力するため、スプール39pは図の上方に付勢されて左半位置に保持される。これにより、入力ポート39bに入力されるライン圧PLが、出力ポート39cからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに供給される。
この際、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3がオフしているため、リニアソレノイドバルブSL3の出力ポートSL3bから出力される係合圧PSL3が油圧サーボ53に供給されて、第3クラッチC−3が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ40の入力ポート40bに係合圧PSL2が出力されるが、この際、スプール40pは右半位置になっており、従って、入力ポート40bに入力される上記係合圧PSL2が出力ポート40eを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、前進7速段が達成される。
以上のように、車両が前進レンジで走行中のソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、本実施の形態においても、第2クラッチC−2と第3クラッチC−3とが係合された前進7速段とされる。
ただし、前進1速段のエンジンブレーキでの走行中にソレノイド・オールオフフェールモードとされた場合には、ソレノイド・オールオフフェール発生前の時点で第1ソレノイドバルブS1がオンしていたため、振分け切換えバルブ40の第1制御油室40aに信号圧PS1が入力されてスプール40pは左半位置になり、入力ポート40cに作用するライン圧PLが遮断されることで第2制御油室39dに信号圧P40は作用しない。これにより、元圧切換えバルブ39のスプール39pが右半位置になり、入力ポート39bに作用されるライン圧PLは遮断されてリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れにも供給されない。従って、Nレンジに移行することになる。
一方、例えば車両がPレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされて全てのソレノイドバルブがオフされると、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,PSL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
この際、パーキング切換えバルブ32のスプール32pが左半位置にされ、パーキング装置9はパーキング状態を保持する。また、第3ソレノイドバルブS3がオフされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3が第1制御油室39aに出力されてスプール39pが右半位置にされるため、入力ポート39bに作用しているライン圧PLが遮断される。このため、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れにもライン圧PLが供給されることはなく、これにより、Pレンジが達成される。
このように、車両がPレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Pレンジが維持される。
また、例えば車両がRレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされて、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,PSL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
この際、パーキング切換えバルブ32は、入力ポート32bにライン圧PLが入力され続けることでスプール32pが右半位置にロックされ、これにより、パーキング装置9はパーキング解除状態を保持する。また、第3ソレノイドバルブS3がオフされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3が第1制御油室39aに出力されるが、振分け切換えバルブ40は、ソレノイド・オールオフフェール発生前にRレンジに切換えられた時点で第1ソレノイドバルブS1がオンしたことで信号圧PS1が第1制御油室40aに入力されて左半位置になり、出力ポート40fから第2制御油室39dへの信号圧P40は出力されないため、スプール39pは、第1制御油室39aへの上記信号圧PS3の入力で右半位置になり、ライン圧PLを遮断する。このため、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れにもライン圧PLが供給されることはなく、従って、Nレンジが達成される。
このように、車両がRレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Nレンジに変更される。
そして、例えば車両がNレンジにあって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされて、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3が信号圧PS3を出力する状態になると共に、ノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブSL2,SL3が係合圧PSL2,PSL3を出力し得る状態になり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止する。
この際、パーキング切換えバルブ32は、入力ポート32bにライン圧PLが入力され続けることでスプール32pが右半位置にロックされ、これにより、パーキング装置9はパーキング解除状態を保持する。また、第3ソレノイドバルブS3がオフされることで、出力ポートS3bから信号圧PS3が第1制御油室39aに出力されるが、振分け切換えバルブ40が上記Rレンジの場合と同じ理由で左半位置になり、第2制御油室39dへの信号圧P40が出力されないため、スプール39pは上記信号圧PS3の入力で右半位置になり、ライン圧PLを遮断する。このため、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れにもライン圧PLが供給されることはなく、これにより、Nレンジが達成される。
このように、車両がNレンジでのソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Nレンジが維持される。
以上のように、本第3の実施の形態においても、前進1速段のエンジンブレーキの場合を除く前進1速段〜前進8速段の何れにおいてソレノイド・オールオフフェールモードになった場合であっても、前進7速段(所定前進変速段)を形成して車両の走行を確保することができると共に、車両がPレンジ、Rレンジ、Nレンジの何れかでソレノイド・オールオフフェールモードになった場合には前進7速段(所定前進変速段)を形成することなく、PレンジではPレンジを維持し、RレンジではNレンジに移行させ、NレンジではNレンジを維持するようにして、車両の走行安全性を確保することができる。また、エンジンを停止させた際には、元圧であるライン圧PLの供給が全て停止するため、エンジン駆動時に振分け切換えバルブ40が右半位置にロックされていたとしてもスプール40pが左半位置に復帰することで、入力ポート40cのライン圧PLは遮断され、第3ソレノイドバルブS3の出力により元圧切換えバルブ39が作動し、全リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の元圧が遮断されることで、前進7速段を形成することはなく、パーキング状態、或いはニュートラル状態とされる。
[本発明のまとめ]
以上説明したように、本発明によると、油圧制御装置20が、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5を全て用いて全変速段を形成し得る第1の状態、ソレノイド・オールオフフェール時にリニアソレノイドバルブSL2,SL3を介して油圧サーボ52,53に係合圧PSL2,PSL3を供給する第2の状態、及びソレノイド・オールオフフェール時にリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに対する一切の元圧を遮断する第3の状態になり得るように構成され、振分け切換えバルブ36,38又は40を通過すると共に圧力の出力状態に応じて第2の状態と第3の状態とを変更し得る状態変更油路(d,d1,d2,d3,d4)(k,k1)又は(a,a1,a4,a6,m)を備え、振分け切換えバルブ36,38,40の第2の位置(右半位置)でのソレノイド・オールオフフェール時には第2の状態になるように、かつ振分け切換えバルブ36,38又は40の第1の位置(左半位置)でのソレノイド・オールオフフェール時には第3の状態になるように構成される。
これにより、リニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2を油圧サーボ52,62に振り分ける振分け切換えバルブ36,38又は40を、状態変更油路(d,d1,d2,d3,d4)(k,k1)又は(a,a1,a4,a6,m)が通過するように構成して用いることで、バルブ数を削減しながらも、前進1速段のエンジンブレーキ以外の前進変速段で走行している場合にソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、油圧サーボ52,53を用いた前進7速段(所定前進変速段)に移行させて走行を確保することができる。また、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ及び前進1速段のエンジンブレーキ(特定変速段)にてソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに対する一切の元圧を遮断することで前進7速段に移行しないようにできるので、Pレンジの場合はPレンジに維持させ、Rレンジの場合はNレンジに移行させ、Nレンジの場合はNレンジに維持させ、前進1速段のエンジンブレーキの場合はNレンジに移行させるようにすることで、運転者が意図しない走行状態になって信頼性に欠けるような問題を確実に発生させないようにできる。
本発明によると、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5に元圧としてライン圧PLを供給する供給位置(図5左半位置)と、振分け切換えバルブ36を通過してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧P35dを入力させる逆入力位置(図5右半位置)とに切換わる元圧切換えバルブ35と、ソレノイド・オールオフフェール時に該元圧切換えバルブ35を逆入力位置(右半位置)に切換える信号圧PS3を出力する第3ソレノイドバルブS3(信号圧出力ソレノイドバルブ)とを備え、状態変更油路を、元圧切換えバルブ35から振分け切換えバルブ36を通過してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cまで逆入力圧P35dを連通し得る、油路d,d1〜d4からなる逆入力用油路によって構成し、さらに、振分け切換えバルブ36が、第2の位置(右半位置)にて上記逆入力用油路を連通し、第1の位置(左半位置)にて該逆入力用油路を遮断するように構成している。
これにより、リニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2を油圧サーボ52,62に振り分ける振分け切換えバルブ36を第2の位置(図5右半位置)と第1の位置(図5左半位置)とに切換えるだけで上記逆入力用油路(d,d1〜d4)の連通/遮断状態を確実に切換えることができ、従って、バルブ数を削減しながらも、前進1速段のエンジンブレーキ以外の前進変速段で走行している場合にソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、油圧サーボ52,53を用いた前進7速段に移行させて走行を確保することができる。また、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ及び前進1速段のエンジンブレーキにてソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに対する一切の元圧を遮断することで前進7速段に移行しないようにすることができる。このように、ソレノイド・オールオフフェール時に前進7速段、及び該前進7速段以外のレンジを形成し得る機能を、バルブ本数を増やすことなく主に元圧切換えバルブ35及び振分け切換えバルブ36によって達成することができ、油圧回路構成をシンプルにすることができる。
本発明によると、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5に元圧としてライン圧PLを供給する供給位置(図7左半位置)と該ライン圧PLを遮断する遮断位置(図7右半位置)とに切換わる元圧切換えバルブ37と、ソレノイド・オールオフフェール時に元圧切換えバルブ37を上記遮断位置(図7右半位置)に切換える信号圧PS3を出力する第3ソレノイドバルブS3(信号圧出力ソレノイドバルブ)とを備え、状態変更油路を、第3ソレノイドバルブS3から振分け切換えバルブ38を通過して元圧切換えバルブ37まで信号圧PS3を連通し得る、油路k,k1からなる信号圧油路によって構成し、さらに、振分け切換えバルブ38が、第2の位置(右半位置)にて上記信号圧油路を遮断し、第1の位置(左半位置)にて該信号圧油路を連通するように構成している。
これにより、リニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2を油圧サーボ52,62に振り分ける振分け切換えバルブ38を第2の位置(図7右半位置)と第1の位置(図7左半位置)とに切換えるだけで上記信号圧油路の連通/遮断状態を確実に切換えることができ、従って、バルブ数を削減しながらも、前進1速段のエンジンブレーキ以外の前進変速段で走行している場合にソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、油圧サーボ52,53を用いた前進7速段に移行させて走行を確保することができる。また、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ及び前進1速段のエンジンブレーキにてソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに対する一切の元圧を遮断することで前進7速段に移行しないようにすることができる。このように、ソレノイド・オールオフフェール時に前進7速段、及び該前進7速段以外のレンジを形成し得る機能を、バルブ本数を増やすことなく主に元圧切換えバルブ37及び振分け切換えバルブ38によって達成することができ、油圧回路構成をシンプルにすることができる。
本発明によると、振分け切換えバルブ36又は38が、第1の位置(図5又は図7左半位置)となるようにスプール36p又は38pを付勢するスプリング36s,38sと、前進発進時に係合される第1クラッチC−1の油圧サーボ51に供給される係合圧PSL1を入力してスプリング36s又は38sの付勢力に抗してスプール36p又は38pを第2の位置(図5又は図7右半位置)に切換えさせる第2制御油室36h又は38h(前進係合圧入力油室)と、第2の位置(右半位置)の際にロック圧としてライン圧PLを入力して上記スプール36p又は38pを該第2の位置(右半位置)にロックする入力ポート36c又は38c(第2ロック圧入力油室)と、第2の位置(右半位置)にロックされたスプール36p又は38pを第1の位置(左半位置)に復帰させるロック解除圧としての信号圧PS1を入力する第1制御油室36a又は38a(ロック解除圧入力油室)とを有し、元圧であるライン圧PLを停止した際、上記スプリング36s又は38sの付勢力により上記スプール36p又は38pが上記第1の位置(左半位置)に復帰されるように構成される。これにより、第2制御油室36h又は38hに係合圧PSL1を、第1制御油室36a又は38aにロック解除圧として信号圧PS1を入力させるだけのシンプルな構成により、エンジン駆動を停止して元圧(PL)が停止された際に、スプリング36s又は38sの付勢力でスプール36p又は38pを第1の位置(左半位置)に復帰できることで、油圧回路をシンプルに構成して、油圧制御装置20のさらなるコンパクト化を実現することができる。
本発明によると、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5に元圧としてライン圧PLを供給する供給位置(図9左半位置)と該元圧(PL)を遮断する遮断位置(図9右半位置)とに切換わると共に、ロック圧(P40)としてライン圧PLを入力して上記供給位置(左半位置)にロックする第2制御油室39d(第1ロック圧入力油室)を有する元圧切換えバルブ39と、ソレノイド・オールオフフェール時に該元圧切換えバルブ39を上記遮断位置(右半位置)に切換える信号圧PS3を出力する第3ソレノイドバルブS3(信号圧出力ソレノイドバルブ)とを備え、振分け切換えバルブ40が、第2の位置(図9右半位置)の際にロック圧としてライン圧PLを入力して該第2の位置(右半位置)にロックする入力ポート40c(第2ロック圧入力油室)を有し、状態変更油路を、振分け切換えバルブ40の該入力ポート40cを介して元圧切換えバルブ39の第2制御油室39d(第1ロック圧入力油室)に上記ロック圧(PL)を連通し得る、油路a,a1,a4,a6,mからなるロック圧油路によって構成し、さらに、振分け切換えバルブ40が、上記第2の位置(右半位置)にて上記ロック圧油路を連通し、上記第1の位置(左半位置)にて該ロック圧油路を遮断するように構成している。
これにより、リニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2を油圧サーボ52,62に振り分ける振分け切換えバルブ40を第2の位置(図9右半位置)と第1の位置(図9左半位置)とに切換えるだけで上記ロック圧油路の連通/遮断状態を確実に切換えることができ、従って、バルブ数を削減しながらも、前進1速段のエンジンブレーキ以外の前進変速段で走行している場合にソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、油圧サーボ52,53を用いた前進7速段に移行させて走行を確保することができる。また、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ及び前進1速段のエンジンブレーキにてソレノイド・オールオフフェールモードになった際には、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに対する一切の元圧を遮断することで前進7速段に移行しないようにすることができる。このように、ソレノイド・オールオフフェール時に前進7速段、及び該前進7速段以外のレンジを形成し得る機能を、バルブ本数を増やすことなく主に元圧切換えバルブ39及び振分け切換えバルブ40によって達成することができ、油圧回路構成をシンプルにすることができる。
本発明によると、振分け切換えバルブ40が、第1の位置(図9左半位置)となるようにスプール40pを付勢するスプリング40s(付勢手段)と、前進発進時に係合される第1クラッチC−1の油圧サーボ51に供給される係合圧PSL1を入力してスプリング40sの付勢力に抗してスプール40pを第2の位置(図9右半位置)に切換えさせる第2制御油室40g(前進係合圧入力油室)と、上記第2の位置(右半位置)にロックされたスプール40pを上記第1の位置(左半位置)に復帰させるロック解除圧として信号圧PS1を入力する第1制御油室40a(ロック解除圧入力油室)とを有し、元圧であるライン圧PLを停止した際、スプリング40sの付勢力によりスプール40pが上記第1の位置(左半位置)に復帰されるように構成される。これにより、第2制御油室40gに係合圧PSL1を、第1制御油室40aにロック解除圧として信号圧PS1を入力させるだけのシンプルな構成により、ばエンジン駆動を停止して元圧(PL)が停止された際に、スプリング40sの付勢力でスプール40pを第1の位置(左半位置)に復帰できることで、油圧回路をシンプルに構成して、油圧制御装置20のさらなるコンパクト化を実現することができる。
本発明によると、図5、図7及び図9において、非走行レンジにおけるPレンジではパーキングシリンダ33に対する元圧(PL)を遮断してパーキング状態とし、かつPレンジ以外ではパーキングシリンダ33に対する元圧(PL)を供給してパーキング解除状態とするように切換えられると共に、切換えられた位置に保持されるパーキング切換えバルブ32と、パーキング解除状態をパーキング状態に切換える切換え信号圧としての信号圧PS2を上記パーキング切換えバルブ32に出力する第2ソレノイドバルブS2(非解除信号圧出力ソレノイドバルブ)と、パーキング状態をパーキング解除状態に切換える切換え信号圧としての信号圧PS1を上記パーキング切換えバルブ32に出力する第1ソレノイドバルブS1(解除信号圧出力ソレノイドバルブ)とを備え、該第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1を、振分け切換えバルブ36,38又は40に対するロック解除圧として兼用したので、振分け切換えバルブ36,38又は40の切換えのための専用ソレノイドバルブを不要にすることができ、油圧回路に使用するソレノイドバルブの個数を一層削減して、油圧回路構成のシンプル化を促進させることができる。
なお、以上説明した本実施の形態においては、本油圧制御装置20を前進8速段、及び後進1速段を可能とする多段式自動変速機1に適用する場合を一例として説明したが、勿論これに限るものではなく、特に前進変速段が多い自動変速機であれば好適であるものの、有段式の自動変速機であればどのようなものにも適用できる。