以下、本発明に係るX線画像読取り装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。
図1は本発明に係るX線画像読取り装置の一実施形態を用いたX線分析装置を示している。図2は図1に示すX線画像読取り装置の内部構造を示している。また、図3は図2のA−A線に従ってX線露光位置の断面構造を示している。
図1に示すX線分析装置1は、X線測定装置2と、X線画像読取り装置3とを有する。X線測定装置2は、X線光学系4と、そのX線光学系4を包囲する光学系用気密チャンバ6と、光学系用気密チャンバ6の内部を減圧状態、例えば真空状態に減圧する減圧手段としての減圧ポンプ8とを有する。図1では光学系用気密チャンバ6の一部分だけが図示されているが、光学系用気密チャンバ6はX線光学系4の全体を気密に包囲する。光学系用気密チャンバ6は、例えば、ステンレス等といった構造用鋼や、硬質のプラスチック等によって形成できる。
X線光学系4はX線を発生するX線源Fと、試料Sを支持する試料ホルダ7とを有する。X線源Fは、例えば、通電によって発熱して熱電子を放出するフィラメントと、そのフィラメントに対向して配置されるターゲットとによって構成できる。ターゲットは、要望に応じた金属、例えばCu(銅)によって形成される。ターゲットをCuによって形成すれば、CuKα線を含むX線を発生することができる。試料ホルダ7は試料Sを固定状態で支持するものであっても良いし、試料Sに所定の動きを与えるものであっても良い。
このような所定の動きとしては、例えば、試料Sへ入射するX線の入射角度を変化させるためのω回転移動や、試料Sを平面内で回転させる面内回転移動や、試料Sを円弧状に揺動させるあおり移動や、その他の種々の動きが考えられる。なお、X線光学系4は、放射光を線源とする光学系とすることもできる。
X線光学系4は、試料Sに1次X線R1を照射してその試料Sから2次X線R2、例えば回折線、反射線、散乱線等を発生させるものである。また、光学系用気密チャンバ6は、X線光学系4の全体を真空状態等といった減圧状態に保持する。このようにX線光学系4を減圧状態に保持するのは、X線源Fから出て試料Sへ入射するX線や、試料Sから出た2次X線等が空気によって減衰することを防止するためである。
X線画像読取り装置3は、筐体ケース11を有し、その筐体ケース11の中に図2に示す構造が収容されている。図2において、2次X線R2によって露光が行われる位置E(すなわち、X線露光位置)に検出器固定配置装置12が設けられている。この検出器固定配置装置12は、図3に示すように、2次X線R2によって露光される2次元X線検出手段としての板状検出器13a,13bをその背面から支持する面板14と、X線R2の進行方向に関して面板14の上流位置に配置されたクランプ板16と、スペース部材17を介してクランプ板16に結合された可動板18と、可動板18の背面に接続されたロータリーソレノイド19とを有する。スペース部材17、可動板18、及びロータリーソレノイド19の組合せは、クランプ板16を面板14に対して平行移動させるクランプ移動手段として機能する。
面板14は、板状検出器13a,13bの幅W0よりも大きい高さを有する長方形状又は正方形状で金属製又はプラスチック製の1枚の板である。この面板14は位置が動かないように固定されている。クランプ板16は図2に示すように、板状検出器13a,13bのX線受光面をX線で露光させるための開口Qを有する金属製又はプラスチック製の枠状の部材である。
ロータリーソレノイド19は本実施形態では、可動板18の対角線に対応して2個、設けられている。図3において、これらのロータリーソレノイド19の出力軸19aが可動板18の背面に固定されている。ロータリーソレノイド19は周知の通り、その内部に回転子を有し、その回転子の正反時計方向の往復回転をネジ嵌合によって出力軸19aの往復直進移動に変換する機器である。
出力軸19aが往復直進移動すると、可動板18が平行移動し、それに応じてクランプ板16が平行移動する。出力軸19aが伸張位置まで伸びたときクランプ板16と面板14との間に大きな間隔が形成され、その大きな間隔の中に板状検出器13a,13bが入り込むことができる。また、クランプ板16と面板18との間に板状検出器13a,13bがあるときに出力軸19aが収縮位置まで引き込むと、クランプ板16は板状検出器13a,13bを面板18へ押し付け、これにより、板状検出器13a,13bはX線露光位置Eに固定状態で配置される。
図2において、X線露光位置Eの左右の両側にそれぞれ1組ずつ、検出手段処理手段としての検出器処理ユニット20a,20bが設けられている。個々の検出器処理ユニット20a,20bは、板状検出器13a,13bと、それらを支持する検出手段支持手段としてのドラム21a,21bと、支持手段回転手段としてのモータ22a,22bと、端辺固定手段としての複数の爪部材28と、第1光透過部としての石英ガラス窓37a,37bと、その石英ガラス窓37a,37bに対向して設けられた読取り装置41a,41bとを有する。
ドラム21a,21bと、モータ22a,22bと、複数の爪部材28とを有する装置は、板状検出器13a,13bをX線露光位置Eへ繰り出したり、X線露光位置Eから巻き取ったりするための装置である。図2では、右側の検出器処理ユニット20aが板状検出器13aをX線露光位置Eへ繰り出しており、左側の検出器処理ユニット20bが板状検出器13bを巻き取っている状態を示している。
ドラム21a及び21bはX線露光位置Eに関して互いに対称の位置に設けられている。これらのドラム21a,21bは、例えば金属又はプラスチックによって円筒形状に形成されている。これらのドラム21a,21bから延びる軸24a,24bは、それぞれ、支持手段回転手段としてのモータ22a,22bの出力軸に連結されている。これらのモータ22a,22bは回転制御装置23からの指令に従って制御された回転数及び回転角度で、それぞれ、出力軸24a,24bを回転させる。回転制御装置23は、モータ22a及びモータ22bの動作を個別に制御する。
板状検出器13a,13bのそれぞれの第1端辺26aは、ネジその他の締結要素によって、それぞれ、ドラム21a及びドラム21bに固定されている。第1端辺26aに対向する板状検出器13a,13bの第2端辺26bはドラム21a,21bに固定されない辺、すなわち自由辺となっている。ドラム21a,21bの外周面のうち板状検出器13a,13bが固定された部分の近傍の外周面上に、ドラム21a,21bの中心軸線X0に対して平行に延びる軸部材27が設けられている。これらの軸部材27はそれぞれが独自に自らの軸線を中心として回転できるようにドラム21a,21bに取り付けられている。
各軸部材27には、端辺固定手段としての複数の爪部材28が固定されている。これらの爪部材28は軸部材27と一体になって回転する。軸部材27はバネ等といった弾性付勢部材によって付勢されて板状検出器13a,13bの第1端辺26aと反対方向へ回転するような回転習性を与えられている。それ故、軸部材27と一体に回転する爪部材28は、通常、ドラム21a,21bの外周面を弾性力によって押し付けている。
軸部材27の上部には爪側係合片29が固定されている。一方、ドラム21a,21bの上端の近傍にある機枠には固定係合片31が設けられている。爪側係合片29はドラム21a,21bの回転に従って移動する。これに対し、固定係合片31はドラム21a,21bから独立して常に一定の位置にある。ドラム21a,21bのそれぞれの近傍であってX線露光位置Eから所定距離離れた位置に検出手段押付け手段としての複数、本実施形態では4個の押えローラ32が設けられている。
これらの押えローラ32はローラ軸33上にそれぞれ回転自在に設けられている。これらの押えローラ32は、ドラム21a.21bの外周面に適宜の圧力で接触している。ドラム21a,21bが回転すると爪部材28も一体になって回転する。回転移動するこれらの爪部材28はドラム21a,21bの回転に従って押えローラ32が設けられている所を通過する。回転移動する爪部材28が押えローラ32にぶつかることを回避するため、複数の爪部材28と複数の押えローラ32は軸線X0と平行の方向において互いに交互の位置に配置される。
図2においてX線露光位置Eの右側に示されている板状検出器13aはその第2端辺26bがドラム21aから離れて外方へ張り出している。そして、その張り出した部分のうちの所定領域が検出器固定配置装置12によってX線露光位置Eに固定されている。一方、左側の板状検出器13bはその全体がドラム21bの外周面に巻き付いている。そして、板状検出器13bの第2端辺26bは爪部材28によってドラム21bの外周面に押し付けられている。
検出器固定配置装置12による板状検出器13aのクランプを解除した状態で、右側のドラム21aを図示の状態から矢印Aで示す方向、すなわち板状検出器13aを巻き取る方向へ回転すると、板状検出器13aは次第にドラム21aに巻き取られて行く。この巻取り動作の際、押えローラ32は板状検出器13aをドラム21aの外周表面へ押し付ける。これにより、板状検出器13aはドラム21aの外周面にきれいに面接触する状態で巻き取られて行く。
こうして巻き取られる板状検出器13aの第2端辺26bがドラム21aの近傍に到来すると、爪部材28を支持する軸部材27の上端に固定した爪側係合片29が固定係合片31に当たる。すると、爪側係合片29が軸部材27を伴って回転して、それまで閉じていた軸部材27上の爪部材28が開き回転する。ドラム21aに到来した板状検出器13aの第2端辺26aは、上記のように開いた爪部材28とドラム21aの外周面との間に入り込む。
ドラム21aが巻取りのための所定の最終角度位置まで回転すると、爪側係合片29と固定係合片31との係合が外れ、爪部材28はバネ力によって瞬時に閉じ回転する。こうして閉じる爪部材28により、板状検出器13aの第2端辺26bがドラム21aの外周面に押し付けられて固定される。これにより、板状検出器13aはドラム1aの外周面から容易には剥がれない状態に支持される。以上のように、本実施形態では、爪部材28と押えローラ32との協働により、板状検出器13aをドラム21aへ密着状態で巻きつけることができる。
図2のX線露光位置Eの左側に位置する板状検出器13bは、その全面が上記のようにしてドラム21bの外周面に巻き付いた状態を示している。ドラム21bがこの状態から矢印B方向へ回転すると、直ぐに爪側係合片29が固定係合片31に当たって開き回転し、これにより爪部材28が開き回転移動して、板状検出器13bの第2端辺26bを開放する。開放された第2端辺26bはドラム21bから離れ、さらに、ドラム21bの矢印B方向への回転に従って、そのドラム21bの外周面の接線方向へ張り出して行く。
張り出し移動する板状検出器13bの第2端辺26bは、クランプ板16と面板14との間の隙間に入り込む。その後、ドラム21bが巻き出しのための所定の最終角度位置まで回転すると、板状検出器13bの第2端辺26b側の所定領域がクランプ板16の開口Qから外部へ露出する状態となる。この状態で図3においてクランプ板16がソレノイド19によって引かれれば、板状検出器13bがクランプ板16によって面板14へ押し付けられて固定される。
板状検出器13a,13bは長方形状で板状の要素であり、長方形状の基材の表面の全域に一様な厚さの蓄積性蛍光体を積層することによって形成されている。そしてこの蓄積性蛍光体の層がX線受光面を構成する。図3において、X線R2が照射される面が蓄積性蛍光体の層の面、すなわちX線受光面である。蓄積性蛍光体は周知の光学的物質であり、例えば、次のような特性を有する要素である。
すなわち、その蓄積性蛍光体に放射光やX線が当たると、その当たった部分にエネルギ潜像が蓄積される。そして、そのようにして潜像が蓄積された部分に1次光(例えば、レーザ光)が照射されると、その潜像が光に変換されて2次光として外部へ放出される。このような蓄積性蛍光体をX線受光面とする板状検出器は、例えば、イメージングプレート(登録商標)等として知られている。
図2において、板状検出器13a,13bを巻き出したり、巻き取ったりするための構成、すなわちドラム21a,21b、押えローラ32、爪部材28等から成る構成と、検出器固定配置装置12とは、気密チャンバ34によって覆われている。気密チャンバ34を形成する複数の面のうちの1つにはX線を取り込むための開口36が形成されている。気密チャンバ34はその開口36以外の部分で内部を気密に覆っている。気密チャンバ34は、例えば、ステンレス等といった構造用鋼や、プラスチック等によって形成される。ドラム21a,21bを回転駆動するための既述のモータ22a,22bは、気密チャンバ34の外部に設けられている。
気密チャンバ34を形成する背面側の隔壁のうちのX線露光位置Eの右側に配置されたドラム21aに対向する部分に、第1光透過部としての石英ガラス窓37aが設けられている。また、背面側隔壁のうちのX線露光位置Eの左側に配置されたドラム21bに対向する部分に他の第1光透過部としての石英ガラス窓37bが設けられている。さらに、気密チャンバ34を形成する右側の隔壁のうちのX線露光位置Eの右側に配置されたドラム21aに対向する部分に、第2光透過部としての石英ガラス窓38aが設けられている。また、気密チャンバ34を形成する左側の隔壁のうちのX線露光位置Eの左側に配置されたドラム21bに対向する部分に他の第2光透過部としての石英ガラス窓38bが設けられている。
そして、第1光透過部としての石英ガラス窓37aの外部位置に読取り装置41aが設けられ、他の第1光透過部としての石英ガラス窓37bの外部位置に他の読取り装置41bが設けられている。また、第2光透過部としての石英ガラス窓38aの外部位置に消去用光照射手段としての蛍光灯42aが設けられ、他の第2光透過部としての石英ガラス窓38bの外部位置に消去用光照射手段としての蛍光灯42bが設けられている。蛍光灯42a,42bは、板状検出器13a,13bのX線受光面に蓄積されたエネルギ潜像を消去できる波長の光を放出する。
石英ガラス窓37a,37b,38a,38bを形成する石英ガラスには、光の反射を抑制するための処理、例えばコーティング処理が施されている。このコーティング処理は石英ガラス等の表裏片面又は表裏両面に材料層を積層する処理であるが、反射を抑制する機能は、材料層を構成する材料自体の特性によって実現しても良いし、コーティングの仕方によってその機能を実現しても良い。また、コーティング処理に限らず、石英ガラスあるいはその他の窓形成材料の表面に加工を加えることによって反射抑制機能を実現できるのであれば、そのような加工を石英ガラス等に加えることでも良い。本実施形態では、反射を抑制できる材料の単層を650nmの厚さで石英ガラスの表裏両面にコーティングすることにより、石英ガラス窓37a,37b,38a,38bの反射率を2.2%に設定した。
図4は、図2の矢印C方向から読取り装置41a,41bを見た場合のそれらの読取り装置41a,41bの構造を示している。図4において、読取り装置41a,41bは、ドラム21a,21bの中心軸線X0と平行に延びる送りネジ軸43と、その送りネジ軸43にネジ嵌合する走査移動体44とを有する。走査移動体44の中には、1次光としてのレーザ光L1を発生する1次光発生手段としてのレーザ光発生装置46と、レーザ光を反射するプリズム47と、光を屈折するレンズ48と、レーザ光L1の通過を抑制するブルーフィルタ49と、板状検出器13a,13bで発生してレンズ48で集光された2次光L2を受光する光電変換手段としてのフォトマルチプライヤ(すなわち、光電子増倍管)51とが設けられている。フォトマルチプライヤ51の出力端子にはX線強度演算回路58が電気的に接続されている。レンズ48の表面には、石英ガラス窓37a,37b,38a,38bと同様に光の反射を抑制するためのコーティング処理が施されている。
ブルーフィルタ49は、レーザ光L1の通過を抑制すると共に板状検出器13a,13bで発生する2次光L2の通過は許容する性質を有する。また、ブルーフィルタ49のうちレンズ48を通過したレーザ光L1が通過する部分には、図5(a)に示すように、レーザ光L1を通過させるための領域53が設けられている。このレーザ光通過領域53は、例えば、ブルーフィルタ49に貫通穴を開けることによって形成できる。また、ブルーフィルタ49を透明なベース材の上にブルーフィルタ材料をコーティングして形成する場合には、レーザ光通過領域53は、当該部分にはブルーフィルタ材料をコーティングしないことによって形成できる。なお、ブルーフィルタ49の表裏両面には石英ガラス窓37a,37b,38a,38bに施したものと同様の光反射抑制用のコーティング処理が施されている。
レーザ光通過領域53は矢印D方向から見て円形状に形成されている。この円形の径はレーザ光L1を通過させることができる範囲内でできるだけ小さいことが望ましい。本実施形態では、レーザ光通過領域53の径を直径で2mmとした。レーザ光通過領域53の前位置には開口部材54が設けられている。この開口部材54は金属製又はプラスチック製の矢印D方向から見て円板又は四角板の中央に円形状の貫通穴を設けることによって形成されている。この貫通穴は、例えば、直径0.8mmの大きさに形成されている。また、レーザ発生装置46のレーザ光出射口の前位置にも開口部材56が設けられている。この開口部材56は、例えば、金属製又はプラスチック製の円板又は四角板の中央に円形状の貫通穴を設けることによって形成されている。この貫通穴は、例えば、直径1.5mmの大きさに形成されている。
図4において、ドラム21a,21bはモータ2a,22bに駆動されて自身の中心軸線X0を中心として回転する。このとき、ドラム21a,21bの外周面上に巻かれた板状検出器13a,13bも一体になって回転する。このとき、走査移動体44から板状検出器13a,13bへレーザ光L1が照射されれば、そのレーザ光L1は板状検出器13a,13bを横方向(すなわち、図4の紙面垂直方向)に走査する。このようなレーザ光L1の板状検出器13a,13bに対する横方向の走査が主走査である。
次に、送りネジ軸43は、回転数を制御可能なモータ52(例えば、パルスモータ、サーボモータ等)の出力軸に連結されている。モータ52が例えば出力軸を正時計方向へ回転させれば送りネジ軸43が同じ方向へ自身の軸線を中心として回転し、それにネジ嵌合している走査移動体44が矢印Z方向へ平行移動する。一方、モータ52が自身の出力軸を反時計方向へ回転させれば、走査移動体44は反対方向であるZ’方向へ平行移動する。
走査移動体44がZ方向へ移動するとき、その走査移動体44から出射するレーザ光L1は板状検出器13a,13bを縦方向(すなわち、図4の上下方向)に走査する。このようなレーザ光L1の板状検出器13a,13bに対する縦方向の走査が副走査である。走査移動体44のZ’方向への移動はホーム位置へ戻るための移動である。以上のように、レーザ光L1が板状検出器13a,13bを主走査及び副走査することにより、その板状検出器13a,13bのX線受光面の全面をレーザ光L1によって走査できる。
図5(a)において、レーザ光発生装置46から出射したレーザ光L1は開口部材56の開口を通ってプリズム47で反射してレンズ48へ入射する。レーザ光L1のレンズ48への入射点Aは、図5(b)に示すように、レンズ48の中心軸、すなわちレンズ48の光軸X1からずれている。具体的には、レーザ光L1の板状検出器13a,13bに対する主走査方向及び副走査方向の両方に関してずれている。より具体的には、入射点Aは、レンズ光軸X1に対して主走査方向の前方側(すなわち、下流側)にずれると共に副走査方向の前方側(すなわち、下流側)にずれている。さらに具体的には、入射点Aは、主走査方向に対して角度θ0=45°且つ副走査方向に対して角度θ1=45°の位置に設定されている。
以下、上記構成より成るX線分析装置に関してその動作を説明する。
図1において、X線測定装置2を構成する光学系用気密チャンバ6の先端と、X線画像読取り装置3内の気密チャンバ34に設けられた開口36(図2参照)とを、カップリング装置57によって気密に連結する。これにより、X線測定装置2とX線画像読取り装置3との全体が外部から完全に気密に遮蔽される。なお、筐体ケース11は気密チャンバ34を気密に覆う必要はない。
次に、X線測定装置2に付設した減圧ポンプ8を作動させてX線測定装置2の光学系用気密チャンバ6内を真空又はそれに近い減圧状態(以下、これらの状態を単に真空状態と言う)に減圧する。このとき、X線画像読取り装置3内の気密チャンバ34の内部も開口36を通して排気されて真空又はそれに近い減圧状態に設定される。
次に、X線画像読取り装置3内の気密チャンバ34内において、図2に示すように、ドラム21a及び板状検出器13aを備えた右側の検出器処理ユニット、又はドラム21b及び板状検出器13bを備えた左側の検出器処理ユニットのいずれかから板状検出器13a又は13bを張り出させて、その板状検出器13a又は13bをX線露光位置Eに置き、その板状検出器13a又は13bを検出器固定配置装置12によって固定する。以下の説明では、図2に示す通りに右側の板状検出器13aがX線露光位置Eに張り出されたものとする。
その後、図1において、X線源FからX線を放射して試料SへX線を入射する。試料Sへ入射するX線と試料S内の結晶との間で所定の回折条件が満足されると、その試料Sから2次X線R2としての回折線が出る。また、測定の種類によっては、2次X線R2として散乱線や蛍光X線が出る。この2次X線R2は図2においてX線露光位置Eに置かれている板状検出器13aのX線受光面を露光する。このX線露光により、板状検出器13aのX線が当たった所にエネルギ潜像が形成され保存される。図1の光学系用気密チャンバ6及び気密チャンバ34の両方のチャンバ内は真空状態になっているので、X線源Fから出てX線露光位置Eに到達するX線は空気散乱によって減衰することが無く、それ故、試料Sから出る2次X線R2の強度が弱い場合でも、板状検出器13aに鮮明なエネルギ潜像を形成できる。
以上のようにして、試料Sの内部の結晶構造に対応して発生した2次X線R2に対応するエネルギ潜像が板状検出器13aの内部に蓄積される。そして、その潜像が以下のようにして読取られる。すなわち、図2において、右側の検出器処理ユニット内のドラム21aがモータ22aによって駆動されて矢印A方向へ回転する。すると、板状検出器13aはそのドラム21aの回転に従ってドラム21aへ巻き取られる。このとき、板状検出器13aは押えローラ32によってドラム21aの外周表面に押し付けられるので、板状検出器13aはドラム21aの外周面に密着する。
ドラム21aがほぼ1回転すると、板状検出器13aの第2端辺26bがドラム21aの外周面に近づき、また、爪部材28が固定されている軸部材27の上端に固定された爪側係合片29が固定係合片31に近づく。ドラム21aの回転がさらに続くと、爪側係合片29が固定係合片31に当たってその爪側係合片29が開き移動を行い、爪部材28がバネ等といった弾性部材の弾性力に抗してドラム21aの外周面から離れて開く。そして、開いた爪部材28とドラム21aの外周面との間に板状検出器13aの第2端片26bが入り込む。
さらにドラム21aの回転が続くと、爪側係合片29が固定係合片31から外れ、爪部材28はバネ等といった弾性部材の弾性力によってドラム21aの外周面上へ瞬時に戻り移動する。これにより、板状検出器13aの第2端片26bがドラム21aの外周面に押し付けられ、板状検出器13aの全面がドラム21aの外周面に密着状態で保持される。図4では、板状検出器13aの全面がドラム21aの外周面に保持されている状態が示されている。
その後、X線検出器13aのX線受光面の内部に蓄積されたエネルギ潜像を読取るための処理が行われる。この読取り処理にあたって、図4の走査移動体44は、当初、板状検出器13aの上端に対応する位置であるホームポジションに置かれている。読取り処理が開始されると、ドラム21aがモータ22aによって駆動されて所定の回転速度で回転する。そして同時に、走査移動体44がモータ52及び送りネジ軸43によって駆動されて所定の速度で矢印Z方向へ平行移動する。
さらに同時に、レーザ光発生装置46からレーザ光L1が出射され、そのレーザ光L1がプリズム47で反射してレンズ48へ入射し、さらにそのレーザ光L1がレンズ48で屈折した後、ブルーフィルタ49及び石英ガラス窓37aを通過してドラム21a上の板状検出器13aへ照射される。本実施形態では、隔壁としての石英ガラス窓37aを介して板状検出器13aへレーザ光L1を照射するようにしたので、板状検出器13aを真空雰囲気に置いた状態のままでレーザ光L1をその板状検出器13aへ照射できるようになっている。
板状検出器13aを照射するレーザ光L1は、ドラム21aの回転に従って板状検出器13aを主走査し、さらに、走査移動体44のZ方向への平行移動に従って板状検出器13aを副走査する。これらの主走査及び副走査により、レーザ光L1は板状検出器13aのX線受光面の全面を走査する。この走査が行われている間、板状検出器13aのX線受光面の内部であってエネルギ潜像を保有している部分にレーザ光L1が照射されると、図5(a)に示すように、エネルギ潜像から光が励起されて2次光L2となって放出される。
放出された2次光L2は石英ガラス窓37a及びブルーフィルタ49を通過し、さらにレンズ48で屈折してフォトマルチプライヤ51へ向けられる。フォトマルチプライヤ51は受光した2次光L2の量に対応した信号を出力し、この出力信号は図4のX線強度演算回路58へ伝送される。X線強度演算回路58は受け取ったその信号に基づいてX線強度を演算によって求める。
板状検出器13aのX線受光面を平面視した場合において2次光L2を放出した位置は、主走査方向の位置と副走査方向の位置とによって特定できる。そして、このようにして特定されたX線受光面内の位置は、図2において試料Sで回折等したX線の回折角度に対応している。具体的に言えば、X線光軸X2と交差する原点が回折角度2θ=0°の位置であり、原点から離れるに従って回折角度2θが大きくなり、原点を中心とする1つの円上の点は同じ回折角度にあることを表している。原点を中心とする1つの円の上に複数のエネルギ潜像が記録された場合、図4のX線強度演算回路58はそれらの潜像に起因する信号を積算して1つの回折角度2θにおけるX線強度として演算する。このようにして試料Sから出る2次X線の回折角度2θとその2次X線の強度Iとが求められ、適宜の記憶媒体内に(2θ,I)のデータとして記憶される。記憶された測定データは必要に応じて画像表示装置の画面上に画像として表示されたり、プリンタによって用紙上に印刷されたりする。
以上により板状検出器13aに対する像の読取り処理が終了すると、板状検出器13aのX線受光面に残存するエネルギを消去してエネルギ状態を平面内で均一な初期状態に設定する処理が行われる。具体的には、図2において、ドラム21aの外周面に板状検出器13aを巻き付けたままの状態でドラム21aをモータ22aによって高速で回転させながら、蛍光灯42aを点灯する。蛍光灯42aから放出された光は、石英ガラス窓38aを通過して、高速で回転する板状検出器13aに照射される。これにより、板状検出器13aのX線受光面内の不要なエネルギが消去されて、板状検出器13aが再び使用できる状態に設定される。このX線消去処理も気密チャンバ34の外側から石英ガラス窓38aを介して行われるので、板状検出器13aは気密チャンバ34の中で真空雰囲気に置かれたままの状態で行われる。
板状検出器13aに対するX線消去処理が以上のようにして終了したとき、板状検出器13aはその全面がドラム21aに巻き付いた状態にある。この状態は、X線露光位置Eの左側に描かれている板状検出器13bと同じ状態である。板状検出器13aを再びX線露光位置Eへ張り出させてX線画像の記録に供する場合には、ドラム21aをモータ22aによって駆動して矢印B方向へ回転させる。すると、回転の当初に爪側係合片29が固定係合片31に当たって開き、板状検出器13aの第2端片26bの固定が解除される。
そして、ドラム21aの回転がさらに続くと、板状検出器13aがドラム21aの外周面の接線方向へ繰り出される。このとき、板状検出器13aは図3に示すように、検出器固定配置装置12のクランプ板16と面板14との間の空間に入り込んで図2のX線露光位置Eへ張り出して行く。板状検出器13aのX線受光面の所定領域がX線露光位置Eへ張り出すと、ドラム21aの回転が停止する。この状態で、板状検出器13aが再度のX線露光処理を受け得る状態に設定される。
以上の説明から明らかな通り、本実施形態によれば、板状検出器13aに対するX線露光処理、像の読取り処理、そして像の消去処理という一連の処理を、その板状検出器13aを気密チャンバ34の外部へ持ち出すことなく、すなわち板状検出器13aを真空雰囲気の中に置いたままの状態で、繰り返して連続して自動的に行うことができる。
また、以上に説明したのは、専ら、X線露光位置Eの右側に配設されたドラム21a及び板状検出器13aに関する動作であるが、X線露光位置Eの左側に配設されたドラム21b及び板状検出器13bを含む検出器処理ユニットも同じ動作を行うことができる。従って、X線露光位置Eの左側に置かれた検出器処理ユニットとその右側に置かれた検出器処理ユニットとの両方を用いてX線露光処理、像読取り処理、及び像消去処理の一連の処理を行えば、非常の効率の高い測定を行うことができる。
より具体的に説明すれば、図2において、X線露光位置Eの右側の検出器処理ユニットから板状検出器13aを繰り出してX線露光処理を行っている間に、左側の検出器処理ユニット内の板状検出器13bに対して、読取り装置41bを用いた像読取り処理及び蛍光灯42bを用いた像消去処理を行うことが効率的である。また、X線露光位置Eの左側の検出器処理ユニットから板状検出器13bを繰り出してX線露光処理を行っている間に、右側の検出器処理ユニット内の板状検出器13aに対して、読取り装置41aを用いた像読取り処理及び蛍光灯42aを用いた像消去処理を行うことが効率的である。このようにX線露光位置Eの両側に設けた検出器処理ユニットを交互に使用することも、本実施形態によれば、気密チャンバ34の中において真空状態を解除することなく、繰り返して連続して行うことができる。
以上のように、本実施形態によれば、板状検出器13a,13bを気密チャンバ34の中に収納した状態のままで、それらの板状検出器13a,13bのX線受光面をX線で露光でき、さらにそれらの板状検出器13a,13bを気密チャンバ34から取り出すことなく、連続して像の読取り処理を行うことができる。すなわち、本実施形態によれば、板状検出器13a,13bに対するX線露光から像読取りに至る一連の処理を気密チャンバ34内の真空雰囲気内で行うことができる。これにより、真空雰囲気下でのX線露光から像読取り処理を短時間で、且つ必要に応じて複数回連続して行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、ドラム21a,21bから張り出した板状検出器13a,13bをX線によって露光する際、その板状検出器13a,13bを検出器固定配置装置12によってX線露光位置Eに振動や位置ずれしないようにしっかりと固定できる。そのため、板状検出器13a,13bのX線受光面の中に信頼性の高いX線画像データを得ることができる。
また、本実施形態では、ドラム21a,21bの外周面に巻き付けられる板状検出器13a,13bを、ドラム21a,21bの軸方向に並べられた複数の押えローラ32によってドラム21a,21bの外周面へ押し付けるようにしたので、板状検出器13a,13bをドラム21a,21bの外周面に密着させることができ、また、読取り装置41a,41bを用いた像の読取り処理の最中に板状検出器13a,13bがドラム21a,21bから剥がれたり、位置ずれしたりすることを防止できる。それらの結果、(2θ,I)の測定データを正確に測定できる。
(先読み及び後読みの解消)
本実施形態では、図5(a)及び図5(b)において、(1)石英ガラス窓37a,37bとレンズ48との間にブルーフィルタ49を設けた。また、(2)レンズ48へ入射するレーザ光L1の入射点Aをレンズ48の中心光軸X1からずれた位置に設定した。また、(3)レーザ光発生装置46におけるレーザ光L1の出射口の近傍に開口部材56を設けた。また、(4)ブルーフィルタ49へのレーザ光L1の入射点の近傍に開口部材54を設けた。以上の(1)〜(4)の構成は、図5(a)及び図5(b)に示した読取り系においてそれらの構成を用いない場合に発生すると考えられる、いわゆる先読み現象及び後読み現象を解消するために採用した構成である。以下、先読み現象、後読み現象、及びそれらの現象と上記の(1)〜(4)の構成との関係について説明する。
今、図5(a)及び図5(b)に示す読取り系であって、(A)ブルーフィルタ49を取り除き、(B)レンズ48へ入射するレーザ光の入射点Aをレンズ48の中心光軸X1に一致させ、(C)レーザ光発生装置46におけるレーザ光L1の出射口の近傍から開口部材56を取り除き、(D)ブルーフィルタ49へのレーザ光L1の入射点の近傍から開口部材54を取り除いた構成の読取り系を考える。この読取り系は、例えば、図6に示す構成である。
そして、図6に示すこの読取り系を用いて、図7に示す板状検出器13a,13bに形成された真像61を読取るものとする。図7において矢印で示す主走査方向は、板状検出器13a,13bの回転に対してレーザ光が板状検出器13a,13bの横方向へ相対的に移動する方向を示している。また、矢印で示す副走査方向は、図4の走査移動体44がZ方向へ平行移動する際にレーザ光が板状検出器13a,13bの縦方向へ相対的に移動する方向を示している。
図6に示す読取り系は、本来であれば、図7の真像61だけを読取るべきものであるが、実際には、符号62A,62B,62C,62Dで示す位置に像があるものと読取ってしまう。像62A及び像62Cは真像61の影のように現れた。つまり、真像61よりも薄い像として現れた。また、像62Bは斑点状に現れた。また、像62Dは真像61の上を覆う帽子状に現れた。
像62Aは、図6において、レーザ光L1が板状検出器13a,13bとレンズ48との間で反射することに起因して先読み現象が生じたことが原因となって生じたものと考えられる。また、像62B及び像62Cは、図6において、レンズ48からの反射が、さらに石英ガラス窓37a,37bで反射したことに起因して先読み現象及び後読み現象が生じたことが原因となって生じたものと考えられる。
ここで、先読み及び後読みについて図8を用いて説明する。図8において、レーザ光L3がレンズ48を通過して板状検出器13a,13bを照射する際、そのレーザ光L3は板状検出器13a,13bで反射する。反射するレーザ光は読取り点Bの先方に進むものL30もあるし、読取り点Bの後方に進むものL31もある。先方に反射したレーザ光L30が図7の真像61を読取ってしまうのが先読み現象であり、後方へ反射したレーザ光が真像61を読取ってしまうのが後読み現象である。
図7の像62Dは、図8で示したレンズ48からのレーザ光の反射ではなく、主に、図6の石英ガラス窓37a,37bでの反射に起因して生じたものであると思われる。この場合、レーザ光は読取り前の強度の方が読取り後の強度よりも強いので、先読み現象による影響の方が強いと思われる。また、レーザ光の裾の広がりや、読取り点Bでの検出器13a,13bのニジミによって像がボケて読み出されることも原因になると思われる。
以上のような不要な読取り像62A,62B,62C,62Dに関し、図5(a)に示すように、レーザ光通過領域53を備えたブルーフィルタ49を石英ガラス窓7a,37bとレンズ48との間に配置すると、それらの不要な像62A,62B,62C,62Dを読取ってしまうことを実用上差し支えのない程度まで抑制できた。これは、レンズ48、石英ガラス窓37a,37b、及び板状検出器13a,13bとの間で発生していたレーザ光L1の反射をブルーフィルタ49によって抑制できたからであると考えられる。
また、図5(b)に示すように、レンズ48へのレーザ光の入射点Aをレンズ光軸X1に対して主走査方向の下流側に設定することと、その入射点Aをレンズ光軸X1に対して副走査方向の下流側に設定することの、いずれか一方又は両方を行ったところ、不要な像62A,62B,62C,62Dを読取ってしまうことをより一層抑制できた。これは次の理由によるものと考えられる。
すなわち、レンズ48の光軸X1以外の点に入射したレーザ光は、一般に、レンズ48の下流側において光軸X1へ向けて屈折する。従って、レンズ48へのレーザ光の入射点Aを光軸X1よりも走査方向の下流側へずらせば、レーザ光はレンズ48で屈折して走査方向の上流側(すなわち、走査方向の後方)へ屈折する。つまり、レーザ光はレンズ48の後方へ向かって進むことになる。このようにしてレーザ光がレンズ48の後方へ向かって進むように規制すれば、先読み現象の発生を抑制できる。図7に示した不要な読取り像62A,62B,62C,62Dは、後読み現象よりも先読み現象に起因して発生する割合の方が大きいので、上記のように先読み現象の発生を抑制したことにより、それらの不要な像の発生を効果的に抑制できたものと思われる。
なお、図5(b)において、レーザ光のレンズ48への入射点Aを走査方向の下流側へずらして設定することは、主走査方向又は副走査方向のいずれか一方であっても良いし、あるいは、それらの両方であっても良い。但し、レーザ光照射点Aを主走査方向又は副走査方向のいずれか一方だけへずらす場合よりも、それを両方向へずらす場合の方が、不要な像の読取りを抑制することに関してより一層効果的であった。
レーザ光のレンズ48への入射点Aを主走査方向及び副走査方向の両方に関してレンズ光軸からずらすことは、レーザ光のレンズ48への入射点Aを、図5(b)に示すように、主走査方向軸線又は副走査方向軸線に対して45°の角度だけずらすことによって実現できる。この場合には、入射点Aはレンズ光軸に対して主走査方向及び副走査方向へ等距離だけずれることになる。
また、レーザ光のレンズ48への入射点Aをレンズ光軸からずらすことに関して、主走査方向軸線又は副走査方向軸線に対して45°の角度だけずらすことに替えて、図9に示すように、主走査方向軸線に対する角度θ0を大きくとり、副走査方向軸線に対する角度θ1を小さくとるようにしても良い。一般に、先読み現象及び後読み現象は主走査方向に関してよりも副走査方向に関して大きく影響を及ぼすので、副走査方向に関するレーザ光入射点のレンズ光軸からの距離的なずれ量を大きくとった方が不要な像の読取りをより効果的に押えることができるからである。図9では、副走査方向に関する距離的なずれ量を大きくとるために、主走査方向軸線に対する角度θ0を60°とし、副走査方向軸線に対する角度θ1を30°としている。
また、図5(a)に示すように、ブルーフィルタ49のレーザ光通過領域53の前方位置に開口部材54を設けるか、又は、レーザ光発生装置46のレーザ出射口の前方に開口部材56を設けるか、又は開口部材54と開口部材56の両方を設けたことにより、不要な像の読取りを抑制することができた。これは、開口要素54,56を設けることにより、板状検出器13a,134bのX線受光面を照射するレーザ光L1のスポットの周囲部分がボケることを防止できたからであると思われる。また、レーザ光が読取り光学系の内部で不要な方向へ進んで不要な読取りを行うことを防止できたためとも考えられる。
また、本実施形態では、図2の石英ガラス窓37a,37b,38a,38bを形成する石英ガラスの表面や、図5(a)のレンズ48の表面に、光の反射を抑制するためのコーティング処理を施した。これにより、読取り時に不要な像を読取ってしまうことを抑制できた。これは、レーザ光が石英ガラス窓やレンズで反射することが防止できたからであると思われる。
図10は、板状検出器13a,13bとレンズ48とを含む読取り光学系との間に石英ガラス窓37a,37bを設けた場合におけるレーザ光L1の反射状態を示している。図示の通り、レーザ光L1は大きく分けて、“A”、“B”、“C”の3種類の反射を行うと考えられる。“A”は、レンズ48、ブルーフィルタ49、石英ガラス窓37a,37bを通過し、板状検出器13a,13bで反射し、さらにレンズ48で反射して、板状検出器13a,13bへ到達する反射経路である。
“B”は、レンズ48、ブルーフィルタ49を通過して石英ガラス窓37a,37bで反射し、さらにレンズ48で反射して、板状検出器13a,13bへ到達する反射経路である。また、“C”は、レンズ48、ブルーフィルタ49、石英ガラス窓37a,37bを通過し、板状検出器13a,13bで反射し、さらに石英ガラス窓37a,37bで反射して、板状検出器13a,13bへ到達する反射経路である。以上の各反射光は、それぞれ、先読み現象及び後読み現象を生じて不要な読取り像を形成するおそれがある光である。
しかしながら、本実施形態によれば、ブルーフィルタ49を設けたことにより、主に、“A”及び“B”の反射光の影響を除去できる。また、ブルーフィルタ49の表面に施したコーティング処理により、主に、“B“、“C”の反射光の影響を除去できる。なお、コーティング処理を、ブルーフィルタ49に加えて、石英ガラス窓37a,37bの表面及びレンズ48の表面にも施せば、“B“、“C”の反射光の影響を除去する効果をより一層高めることができる。
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、図2に示した実施形態では、ドラム21a及び板状検出器13aを含む検出器処理ユニットと、ドラム21b及び板状検出器13bを含む検出器処理ユニットとの一対のユニットをX線露光位置Eの左右の両側に設けたが、この構成に替えて、1つの検出器処理ユニットをX線露光位置Eの左右のいずれか一方に設けるようにしても良い。
また、図2の実施形態では、蛍光灯42a,42bを気密チャンバ34の外側に設けたが、これらは、気密チャンバ34の内側に設けても良い。
また、ドラム21a,21bから張り出した板状検出器13a,13bが自然な状態でX線露光位置Eに安定状態で静止できるのであれば、検出器固定配置装置12は必ずしも設ける必要はない。また、図3の面板14だけを設ける構成とすることもできる。また、ドラム21a,21bからX線露光位置Eに至るまでの間に板状検出器13a,13bを案内するためのガイド板を設けても良い。
また、図1に示した実施形態では、フィラメントとターゲットとによって構成されるX線源Fから放射されるX線を用いて測定を行うものとした。この様な、実験室系X線回折装置は、一般に、強度が弱いので、全ての処理を真空雰囲気内で行うことができる本発明のX線分析装置を、実験室系X線回折装置として用いる場合に適用すれば非常に有効である。また、本発明のX線分析装置を、放射光を用いる場合に適用しても、X線強度の増強やバックグラウンドの低減に有効である事にかわりはない。
また、本実施形態では、図5(a)において、反射を抑制できる材料の単層を650nmの厚さで石英ガラスの表裏両面にコーティングすることにより、図2の石英ガラス窓37a,37b,38a,38bの反射率を2.2%に設定した。しかしながら、単層コーティングに替えて、同じ650nmの厚さの多層膜材料をコーティングしても良い。多層膜コーティングによれば、石英ガラスの反射率をさらに低くすることができる。例えば、多層膜コーティングを採用すれば、反射率RをR≦1%にすることができる。
また、上記の実施形態では、図5(b)に示したように、レンズ48へのレーザ光の入射点Aを、主走査方向及び副走査方向の両方に関して下流側へずらせたが、これに替えて、主走査方向及び副走査方向のいずれか一方に関して入射点Aを中心軸X1に対してずらせるようにしても良い。