JP4510316B2 - ガスバリア性フィルムの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、工業用品及び医薬品等を保護するために用いられる酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性、透視性、耐溶剤性及びラミネート強度の優れたガスバリア性フィルムの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスバリア性フィルム及びそれを用いた包装材は既に多く知られている。最も完璧なガスバリア性を有するものとしてはアルミニウム箔があるが、単独ではピンホール強度が弱く、特殊な例を除いて使用できず、殆どラミネートフィルムの中間層として使用されている。このラミネートフィルムのガスバリア性はほぼ完璧なものであるが、不透明のため内容物が見えないこと、また、確実にヒートシールされたか判断しにくいこと等の欠点がある。
【0003】
他のガスバリア性フィルムとしてはポリ塩化ビニリデン(以下「PVDC」)のフィルム及びコーティングフィルムがよく知られている。特にPVDCのコーティングフィルムはよく知られ、酸素及び水蒸気のバリア性が必要な場合、ラミネート用基材フィルムとしてよく使用されている。PVDCは吸湿性が殆どなく、高湿下でも良好なガスバリア性を有するため、コーティング用の基材としては透湿度に関係なく種々のものが使用される。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ナイロン(ONy)、二軸延伸ポリエステル(二軸延伸ポリエチレンテレフタレートの場合(OPET))、セロファン等のフィルムが使用されている。そしてラミネートされたフィルムはガスバリア性を生かし、乾燥・水物を問わず、種々の食品包装に利用されている。しかし、これらの包装材料は利用された後、家庭から一般廃棄物として廃棄されることとなるが、PVDCは燃焼により塩化水素ガスを生じることから、他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
一方、ガスバリアフィルムとして、プラスチックフィルム上にアルミ等の金属蒸着や酸化アルミもしくは酸化珪素等を蒸着したもので、食品、工業用品及び医薬品等を容器で包装し酸素の透過を抑制することにより内容物の酸化を防止し、品質を長期間保つことが提案されている。例えば、特公昭53−12953号、特開平4−353532号公報には、厚さが5〜300μmのポリエチレンテレフタレート、セロファン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフレキシブルプラスチックフィルムの少なくとも片面に一般式SixOy(x=1,2,y=0,1,2,3)なる組成の珪素酸化物の厚さ100〜3000オングストロームの透明ガラス質薄膜層を設けた高度の耐透気性と耐透湿性を有する透明フレキシブルプラスチックフィルムが開示されている。
【0005】
このうち、一般的には、フィルム素材がポリエステル、ナイロン、セロファンのような極性基を有する樹脂である場合は、一般に、フィルムと無機酸化膜との密着強度が高く、ガスバリア性も良好である。しかしながら、ポリプロピレンのような極性基を有しないフィルムの表面に、無機酸化物からなる蒸着膜を形成させても、実用に耐えられる安定したガスバリア性は得られない。つまり、ポリプロピレンフィルムと蒸着膜との密着力が十分ではないので、この蒸着物にヒートシール性を付与するためにヒートシール性樹脂をラミネートする場合、該ラミネート物を用いて製袋や蓋シールの二次加工を行う場合、これら袋を用いたり、容器内に収容物を充填し、あるいは、ボイル・レトルト殺菌する場合などで、外部応力や熱が成形品に加わり、無機酸化物薄膜がポリプロピレンフィルムより剥離し、ガスバリア性が低下し、実用に耐えない問題がある。
【0006】
かかる問題は、例えば、特開2000−263722号にあるように、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤系樹脂コーティング液を用いると改善される方向にあるが、環境問題、人体への影響、コスト等を考えると水系コーティング剤の開発が望まれている。特開平7−126419号、特開平8−245816号公報にはポリプロピレンフィルムにポリビニルアルコール(PVA)を含有する水溶性樹脂コーテイング液を塗布した後、金属または無機化合物を蒸着する例が示されている。しかしながら、これらの例では、乾燥後のコーテイング層を形成する樹脂成分がポリビニルアルコールを主成分とするため、低湿側の酸素バリア性能が良好でも、高湿側では著しいバリア性能の低下を起きること、更には、ポリプロピレンフィルムとコーティング層間又はコーティング層と蒸着薄膜層間の密着強度が十分でないことなどの問題が残されている。
また、特開平8−92400号公報には、PVAの代わりにエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」)を用いる場合の開示があるが、EVOHの場合も、高湿下でのバリア性の低下は改善されるが、その反面、オレフィン系樹脂層とAC層との密着性は低下してしまい、ガスバリア性と密着性の両方を満足させるものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のようなガスバリア性フィルムの現状を踏まえ、PVDCコートOPP(いわゆるK−OP)に代わる安価な包装材料でとして、ポリプロピレン系樹脂フィルムに、有機溶剤臭のない環境にやさしい水系AC剤をコーテイングし、無機酸化物薄膜を蒸着したガスバリア性フィルムであって、低湿側のみならず高湿側でもガスバリア性に優れ、更に、これの二次加工時や使用時に無機酸化物薄膜が剥離してガスバリア性が低下するようなことがなく、しかも透視性、耐溶剤性に優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的のために鋭意検討した結果達成されたものであって、ポリプロピレン系樹脂を溶融押出して得た未延伸のフィルムを縦方向に延伸し、コロナ放電処理を行い、次いで該縦延伸フィルムのコロナ処理面に、(A)水溶性アクリル樹脂、(B)水溶性ウレタン樹脂及び(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂とからなり、固形分での重量比が下記式(1)〜(3)を満たす水溶性樹脂コーティング液を塗布し、横方向に延伸した後、該コーテイング面上に無機酸化物の蒸着膜を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造法に関する。
【式2】
75wt%≦(A)+(B)≦98wt% (1)
0.8≦(A)/(B)≦2.8 (2)
2wt%≦(C)≦25wt% (3)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、ポリプロピレン基材フィルムに、特定の水溶性コーテイング液を、いわゆるインラインコーテイング法にて塗布、延伸し、最後に無機酸化物を蒸着するものである。(A)水溶性アクリル樹脂、(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂と無機酸化物を組み合わせることにより良好なガスバリア性が得られる。また、(B)水溶性ウレタン樹脂と(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂を組み合わせることにより、コロナ放電処理したポリプロピレン表面の水酸基やパーオキサイド基と(B)や(C)に含まれる極性基との強固な結合と、蒸着薄膜中の無機原子や酸素原子と(B)や(C)に含まれる極性基との強固な結合が得られ、最終的に基材と無機酸化物蒸着膜の十分な密着強度が得られる。
【0010】
基材層用のポリプロピレン系樹脂はプロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂、分岐低密度ポリエチレン、リニア−ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいは、α,β−不飽和カルボン酸で変性したポリプロピレン系樹脂が利用できる。これらは2種以上混合して用いてもよいし、あるいは、積層して用いてもよい。更に目的に応じて、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、抗ブロッキング剤、抗菌剤、核剤等を極微量から数十%まで含有していてもよい。
【0011】
水溶性樹脂コーティング液に用いる(A)水溶性アクリル樹脂としては特に限定されるものではないが、濡れ性の点で、エマルジョンタイプより粒子径の小さい、コロイダルディスパージョンタイプや水溶性タイプの方が好ましい。具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する物や、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するもの等から選ばれるモノマー単位の1種または2種以上を含有する水分散型の(共)重合体であればよく、この時、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ソーダ、(メタ)アクリル酸カリ等の(メタ)アクリル酸系モノマー単位を含んでいると、オキサゾリン基との架橋反応が促進されるのでなお良い。また構成成分の異なる(共)重合体の2種以上を併用して用いてもよい。
【0012】
水溶性樹脂コーティング液に用いる(B)水溶性ウレタン樹脂としては特に限定されるものではないが、ディスパージョンタイプが好ましく、脂肪族または芳香族ポリエーテル系ウレタン、脂肪族または芳香族ポリエステル系ウレタン、脂肪族または芳香族ポリカーボネート系ウレタン等が挙げられる。これらの1種または2種以上を併用してもよい。
【0013】
(A)水溶性アクリル樹脂と(B)水溶性ウレタン樹脂は、両者の固形分重量合計で、75〜98wt%であることが好ましく、75wt%未満では十分なガスバリア性能が得られなく、逆に98wt%より多くなるとガスバリア性能は良好ながら、相対的に(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂の割合が少なくなるので架橋剤としての機能が不十分となり、基材とAC層又はAC層と無機酸化物薄膜との十分な密着強度が得られなくなる。
【0014】
また、(A)水溶性アクリル樹脂と(B)水溶性ウレタン樹脂の配合割合は両者の固形分重量比で0.8≦(A)/(B)≦2.8であるのが好ましく、(A)/(B)の値が0.8未満では耐溶剤性は良好となるが、酸素ガスバリア性能が満足できるものとならず、場合によっては樹脂コーティング膜が固くなる。一方、2.8より大きくなると無機酸化物薄膜への印刷等の場合の耐溶剤性が劣ってしまうばかりでなく、基材からのブリード物等を抑える効果が弱くなる。
【0015】
水溶性樹脂コーティング液に用いる(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂としては特に限定されるものではなく、架橋剤として作用し得るオキサゾリン環をその構造式中に持つものであれば良い。分子量は特に限定されないが、1000〜10000程度が好ましく、また、樹脂中のオキサゾリン環の含量は特に限定されないが、1〜20wt%程度が好ましい。またエマルジョンタイプ、水溶性タイプいずれでもよいが、(A)水溶性アクリル樹脂や(B)水溶性ウレタン樹脂との相溶性、低温架橋が可能である点で、水溶性タイプの方が好ましい。なお、(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂を加えることによって、基材とAC層又はAC層と無機酸化物薄膜との十分な密着強度が得られる理由については架橋によるものと考えられるが、十分明確ではない。
【0016】
水溶性樹脂コーティング液中の固形分濃度は均一塗布できれば特に限定されるものではないが、通常1.0〜10wt%、好ましくは2.0〜5wt%である。、該水溶性樹脂コーティング液には少量の溶剤が含まれていてもよいし、また、オキサゾリン基とカルボキシル基の反応が配合時に起こらないよう、カルボキシル基の中和剤として少量の無機アンモニウム塩等を含んでいてもよい。なお、目的に応じて消泡剤、塗布性改良剤、粘度調整剤、乳化剤、帯電防止剤、pH調整剤、ブロッキング防止剤、撥水剤、架橋剤、潤滑剤、有機系高分子粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加物を適宜添加してもよい。
【0017】
基材への水溶性樹脂コーティング液の塗布は、例えば、スプレーコート法、エアナイフコート法、メタリングバーコート法、マイヤーバーコート法、グラビアロールコート法、リバースロールコート法、キスロールコート法、またはこれらの組み合わせによる各種コーティング方式を採用することができる。水溶性樹脂コーティング液の適性粘度保持が難しい場合や、均一塗布が困難な場合は該コーティング液を、例えば30〜90℃に加温して用いてもよい
【0018】
塗布厚みは、WET膜厚みで通常10〜60μmの範囲であり、横延伸、熱固定後、ロール状に巻き取った時の状態で通常0.01〜2μm、好ましくは0.03〜1μmとなるように選択される。0.01μm未満では凹凸の激しいポリプロピレン系樹脂表面を十分に平滑にすることができず、従って、十分な酸素バリア性が得られない。また、基材からのブリード物等を抑える効果が弱くなってしまう。一方、2μmより厚くなると、ロール状に巻き取った時、ブロッキングを起こし易くなるばかりか、コスト的にも高いものになってしまう。
【0019】
本発明での蒸着前の延伸フィルムは次のように製造される。即ち、前記ポリプロピレン系樹脂を、単層、または多層でフィルム状に溶融押出し、この未延伸フィルムを通常120〜140に加熱したロール群の周速差を利用して通常3〜8倍縦方向に延伸した後、コロナ放電処理を行い、該縦延伸フィルムのコロナ処理面に水溶性樹脂コーティング液を塗液し、テンターで横方向に通常4〜12倍に延伸し、必要に応じて熱固定を行い、一般的は、最後に、フィルム両端をトリミングし、ロール状に巻き取ることにより製造される。
【0020】
上記のコロナ放電処理の量は、通常30〜100w・分/m2とする。30w・分/m2 未満ではポリプロピレン系樹脂の表面を十分に改質することが難しく、水溶性樹脂コーティング液との十分な密着強度が得られない。逆に100w・分/m2 を越えると放電スパークが大きくなり、塗膜に白化筋模様を生じるような場合にはこれが塗布ムラの原因となってしまう。また、コロナ放電処理したフィルム表面の表面張力レベルは35ダイン/cm以上、好ましくは40〜50ダイン/cmであるのが望ましい。
【0021】
上記の延伸フィルムは、好ましくは、基材層が肉厚10〜100μmの二軸延伸ポリポリプロピレンフィルムで、少なくとも片方の面に肉厚0.01〜2μmの水溶性樹脂コーティング液膜の一軸延伸フィルムが積層された構造体である。また、その透視性は良好であり、フィルムの全光線透過率が、通常85%以上、好ましくは90%以上である。
【0022】
以上の延伸フィルムのコーテイング面には無機酸化物を蒸着する。この場合の無機酸化物とは、金属、非金属、亜金属の酸化物であり、具体例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、珪素酸化物、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウム等が挙げられるが、高度な酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性及び透視性とを兼ね備え、かつ工業的に安価であるという点で、珪素酸化物、酸化アルミニウムが特に好ましい。かかる珪素酸化物、酸化アルミニウムは各々単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。尚、無機酸化物には、微量の金属、非金属、亜金属単体やそれらの水酸化物、また、可撓性を向上させる目的で適宜炭素又は弗素が含まれていてもよい。
【0023】
蒸着膜の形成には膜の均一性、基材との密着力等の点から真空蒸着法が好ましく、抵抗加熱法、高周波誘導加熱法、電子ビーム法等が挙げられる。珪素酸化物を真空蒸着法により形成する場合は、蒸着源材料としてSiO、SiO2、またはこれらの混合物、更にSiとSiO2の混合物などが採用され、同時に酸素ガスを供給しながら行う反応蒸着法も採用できる。また、酸化アルミニウムを真空蒸着法により形成する場合は、蒸着源材料として酸化アルミニウムの粉末や固形物が採用されるが、アルミニウム金属を用いて酸素ガスを導入しなが行う反応蒸着法の方が、非結晶性で可撓性のある酸化アルミニウム薄膜層を形成できる点でより好ましい。蒸着膜の厚みに特に制限はなく、無機酸化物の種類等によっても異なるが、酸素ガスバリア性及び水蒸気バリア性、透視性、コスト等の点から、通常50〜2000オングストローム、好ましくは100〜500オングストロームである。
【0024】
本発明の製造方法で得られたガスバリア性フィルムは用途に応じてそのまま用いてもよいし、更に蒸着膜上にヒートシール層または保護層などを設けてもよい。ヒートシール層としては特に制限はなく、通常無延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−アクリル酸系共重合体、或いはエチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−アクリル酸系共重合体などのエチレン系のアイオノマーなどが挙げられる。ヒートシール層は通常ドライラミネート法或いは押し出し法によって設けられる。厚さは、通常20〜100μm、好ましくは40〜80μmである。また、保護層は、ポリエステル、ナイロン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのフィルムをラミネートするか、あるいは、耐熱性のあるエポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などをコーティングすることなどによって設けられる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、これにより本発明の範囲は特に限定されるものではない。
以下の例において得られたフィルムの評価は下記の方法によって行ったものである。尚、ラミネートフィルムとあるのは、本発明のガスバリア性の付与されたプラスチックフィルムの無機酸化物薄膜面に、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネートし、40℃で3日間エージングさせたものであり、ヒートシール層が設けられているガスバリア性の付与されたプラスチックフィルムを意味する。
【0026】
<MFR[g/10分]>
JIS K−6758により荷重2160g、測定温度190℃で測定した。
<水溶性樹脂コーティング層の厚さ[μm]>
巻き取った延伸フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−600型)で観察し、測定した。
<蒸着膜の厚さ[オングストローム]>
理学電機工業社製の蛍光X線装置を使用し、Siとしての蒸着膜の厚さを測定した。
<全光線透過率[%]及びヘイズ>
日本電色工業製ヘイズメータNDH300A型を使用して測定した。
<黄色度>
日本電色工業製色差計Z−Σ80型を使用して測定した。
<耐溶剤性>
酢酸エチルを染み込ませた綿棒を用い、無機酸化物薄膜面の上から一定方向に表面を軽く5回擦り、無機酸化物薄膜の剥離状況を光学顕微鏡(200倍)で観察し、下記の基準で判定した。
○・・・・擦った部分が剥離していない。
△・・・・擦った部分が少し剥離している。
×・・・・擦った部分が剥離している。
【0027】
<酸素透過率[cc/m2・24h・atm]>
ラミネートフィルムを用い、モダンコントロール社製のOX−TRAN2/20型酸素透過率測定装置を使用し、温度25℃、相対湿度90%の条件下で測定した。
<水蒸気透過度(透湿度)[g/m2・24h]>
ラミネートフィルムのヒートシール層を内面にして表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃・90%RHの雰囲気に7日間放置し、重量増加量から水蒸気透過度を求めた。
<ラミネート強度[g/15mm]>
ラミネートフィルムから切り出した幅15mm、長さ10cmの短冊状試験片を用い、島津製作所オートグラフAG−I型を使用し、ロードセル5kg、テストスピード300mm/分での180°剥離強度から求めた。
【0028】
実施例1及び比較例1
ポリプロピレン樹脂として日本ポリケム(株)製『ノバテックPP FL6CK』(MFR2.4、融点161℃)を使用し、押出機温度220℃で溶融してTダイよりシート状に押し出し、これを30℃のキャストロールに密着させて未延伸のシートを得た。次に、周速の異なる加熱ロール群からなる縦延伸機を用い、この未延伸シートを130℃の温度で最終的に5倍になるよう多段延伸し、続いてコーティングする面側を90w・分/m2 の条件でコロナ放電処理を施した。次に、固形分重量比が表1の実施例―1及び比較例1となるように調整した水溶性樹脂コーティング液(固形分濃度約2.5wt%)をメタリングバーコーターを用いてWET膜厚さ約15μmにコーティングし、続いて150℃のテンターオーブン内に導入し、横方向に10倍延伸し、158℃で熱固定し、厚さ20μmのコーティングフィルムを得た。コーティング層の厚さはいずれも約0.04μmであった。
【0029】
上記各々のフィルムの水溶性樹脂コーティング面に、1×10-5Torrの高真空にした後酸素を導入して4×10-5Torrの真空下とし、電子ビーム加熱方式で純度99.9%の一酸化珪素(SiO)を加熱蒸発させ、蒸着膜積層延伸フィルムを得た。得られたフィルムはそのままの状態で、蒸着膜の厚さ、全光線透過率、ヘイズ、黄色度を測定し、耐溶剤性を評価した。次に、ラミネートフィルムとした後、酸素透過率、水蒸気透過率、及びラミネート強度を測定した。結果を表―2の実施例1及び比較例1に示す。比較例1の組成では特に酸素バリア性能が好ましくない。
【0030】
実施例2及び比較例2
実施例1において、水溶性樹脂コーティング液の固形分重量比を表―1の実施例2及び比較例2に示される組成に変更した点、及び水溶性樹脂コーティング面に、8×10-5Torrの高真空にした後酸素を導入して3×10-4Torrの真空下として、純度99.99%のアルミニウム金属を加熱蒸発させた点以外は、実施例1と同様にして蒸着膜積層延伸フィルムを得た。各物性の測定結果を表―2の実施例2及び比較例2に示す。比較例2の組成では特に酸素バリア性能が好ましくない。
【0031】
実施例3及び比較例3
ポリプロピレン樹脂として日本ポリケム(株)製『ノバテックPP FL6CK』(MFR2.4、融点161℃)と、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(MFR2.3;無水マレイン酸グラフト率0.05wt;融点138℃)を使用し、これらを別々の押出機で各々220℃で溶融し、フィードブロック内で層状に重ね、T−ダイより押し出して未延伸シートを作成した(無水マレイン酸グラフトポリプロピレン層の厚みは全体の13%であった)点、及び水溶性樹脂コーティング液の固形分重量比を表―1の実施例3及び比較例3に示される組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして蒸着膜積層延伸フィルムを得た。各物性の測定結果を表―2の実施例3及び比較例3に示す。比較例3の組成では耐溶剤性が十分でない。
【0032】
実施例4及び比較例4
実施例2において、水溶性樹脂コーティング液の固形分重量比を表―1の実施例4及び比較例4に示される組成に変更し、かつ該コーティング液の固形分濃度を約5wt%とした(コーティング層の厚さはいずれも約0.08μmであった)点以外は、実施例2と同様にして蒸着膜積層延伸フィルムを得た。各物性の測定結果を表―2の実施例4及び比較例4に示す。比較例4の組成では酸素バリア性、耐溶剤性、ラミネート強度いずれも好ましくない。
【0033】
比較例5
実施例1において、水溶性樹脂コーティング液をコーティングしない点以外は、実施例1と同様にして蒸着膜積層延伸フィルムを得た。各物性の測定結果を表―2の比較例5に示す。この構成では酸素バリア性、耐溶剤性、ラミネート強度いずれも好ましくない。
比較例6
実施例1において、蒸着する前のコーティングフィルムをサンプルとした。各物性の測定結果を表―2の比較例6に示す。この構成では特に酸素バリア性が好ましくない。
【0034】
【表1】
【0035】
表−1におけるコーテイング樹脂(A),(B),(C)は以下の通りである。
<(A)水溶性アクリル樹脂>
アクリル1:日本純薬(株)製『ジュリマーFC−60』(配合量は固形分濃度25%として計算)
<(B)水溶性ウレタン樹脂>
ウレタン1:ゼネカ(株)製『NeoRez R−9603』(配合量は固形分濃度34%として計算)
ウレタン2:大日本インキ化学工業(株)製『ハイドラン AP−30』(配合量は固形分濃度20%として計算)
<(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂>
オキサ1:(株)日本触媒製『エポクロスWS−500』(配合量は固形分濃度40%として計算)
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明により得られる、ガスバリア性フィルム、即ち、無機酸化物薄膜が蒸着されたポリプロピレン系樹脂成形品は、低湿側のみならず高湿側でもガスバリア性に優れ、更に、これの二次加工時や使用時に金属酸化物薄膜が剥離してガスバリア性が低下するようなことが\なく、併せて透視性、耐溶剤性に優れるので、PVDCコートOPPに代わる安価な包装材料として食品、工業用品及び医薬品等を保護するために用いられる包装用樹脂成形品として広く供することができる。
Claims (2)
- ポリプロピレン系樹脂を溶融押出して得た未延伸のフィルムを縦方向に延伸し、コロナ放電処理を行い、次いで該縦延伸フィルムのコロナ処理面に、(A)水溶性アクリル樹脂、(B)脂肪族ポリカーボネート系ウレタンからなる水溶性ウレタン樹脂及び(C)オキサゾリン基含有水溶性樹脂とからなり、固形分での重量比が下記式(1)〜(3)を満たす水溶性樹脂コーティング液を塗布し、横方向に延伸した後、該コーテイング面上に無機酸化物の蒸着膜を形成するガスバリア性フィルムの製造法。
80wt%≦(A)+(B)≦98wt% (1)
1.7≦(A)/(B)≦2.8 (2)
2wt%≦(C)≦20wt% (3) - 請求項1のガスバリア性フィルムにヒートシール層を設けてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルムの製造法。
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