JP4503935B2 - 再剥離型水性粘着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板、ガラス板、プラスチック板等の運搬、加工、切断等の際の傷防止や汚染防止等のための一時的な表面保護用、マスキング用或いは仮接着用の粘着テープ又はシートの粘着剤として有用な再剥離型の水性粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、経時での接着力上昇が少なく、かつ、再剥離時における被着体への糊残りや貼り跡などの汚染が少ないといった耐汚染性に優れ、更に水性粘着剤組成物としての機械的安定性にも優れた再剥離型水性粘着剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、再剥離型粘着剤組成物は、表面保護フイルム、塗料用マスキングテープ、粘着シール等に広く用いられている。該組成物は溶剤型と水性型のいずれかで用いられ、例えば、表面保護フイルムは、金属製品やプラスチック製品、ガラス製品等の運搬、加工、切断、貯蔵等の際に、傷付きや汚染、腐食等を防止するために、これらの製品の表面を一時的に保護するもので、目的が達した後は製品表面から剥離される。
このような表面保護フイルムは、使用中には被着体に接着して充分な接着力を持ち剥離することがないが、目的を達した使用後は被着体から容易に剥離できるといった再剥離性が要求される。
【0003】
しかし、従来使用されている粘着テープ又はシートの多くは、被着体に貼り付け後の経時変化により接着力の上昇が起こりやすく、その結果、表面保護フイルムを被着体から再剥離する際に剥離性が低下し、剥離作業に時間がかかったり、粘着剤の糊残りや貼り跡等の汚染を生じる等、剥離時の粘着性や再剥離後の汚染性等が問題となることがある。
【0004】
特に、再剥離型粘着剤組成物においても、近年の環境衛生上の観点より、溶剤を用いない水性型粘着剤への志向が強く、種々検討されており、中でも上記の問題点を解決するものとして、例えば、a)炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリレート系単量体50〜99.9重量%、b)カルボキシル基含有単量体0.1〜5重量%、c)上記a,b成分と共重合可能な単量体0〜49.9重量%からなる単量体混合物の水分散系共重合体に、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤を、上記共重合体に含まれるカルボキシル基1当量あたり、オキサゾリン基が0.1〜5当量となるように配合してなり、かつ溶剤可溶分が40重量%以下、弾性率が2〜50kg/cm2で、再剥離力が500g/20mm幅以下である再剥離型感圧接着剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
又、a)炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリレート系単量体50〜99.9重量%と、b)カルボキシル基含有単量体0.1〜5重量%と、c)上記a,b成分と共重合可能な単量体0〜49.9重量%からなる単量体混合物の水分散型アクリレート系共重合体に、カルボジイミド基を含有する架橋剤を、上記共重合体のカルボキシル基に対するカルボジイミド基の比率(カルボジイミド基/カルボキシル基)が0.1〜5.0となるように配合してなり、再剥離性が500g/20mm幅以下である水分散型再剥離用感圧接着剤も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
尚、本発明に関連のある文献としては以下のものも挙げられ、再剥離用とは異なり永久接着を目的とした感圧接着剤ではあるが、a)多官能不飽和単量体0.01〜10重量%と、b)α、β−不飽和カルボン酸0.1〜15重量%と、c)酢酸ビニル0.5〜20重量%、d)カルボニル基含有不飽和単量体0.05〜40重量%、その他の不飽和単量体15〜99.34重量%からなる単量体混合物の水分散型アクリレート系共重合体に、多官能性ヒドラジン誘導体を、上記共重合体のカルボニル基に対するヒドラジノ基の比率(ヒドラジノ基/カルボニル基)が0.02〜2モルとなるように配合してなる水分散型感圧接着剤が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
更に、主として水性塗料用途を目的とした樹脂組成物ではあるが、a)1分子中に少なくとも1個のカルボニル基を有する重合性不飽和単量体0.1〜30重量%、b)1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和結合を有する多ビニル化合物0.05〜5重量%と、c)水溶性エチレン性不飽和単量体0〜10重量%と、d)その他のエチレン性不飽和単量体55〜99.85重量%からなる単量体混合物を乳化重合の存在下で乳化重合させて得られる共重合性水分散液であって、又、この共重合性水分散液を含有し、更に架橋剤として1分子当たりに少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド化合物を、上記共重合体のカルボニル基に対するヒドラジド基の比率(ヒドラジド基/カルボニル基)が0.01〜2モルとなるように配合してなる水性塗料用樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−114887号公報
【特許文献2】
特開2001−131512号公報
【特許文献3】
特開平09−176605号公報
【特許文献4】
特開平10−324720号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1及び2の開示技術では、再剥離型粘着剤の基本物性である再剥離性の評価において、特許文献1では23℃で20分間の経時程度、特許文献2でも23℃、65%RHで24時間の経時程度というかなり緩やかな環境下での判断がなされているに過ぎず、近年の要求性能に対してまだまだ満足するものではなく更なる過酷な雰囲気下でしかも長時間の経時における再剥離性が求められている。又、耐汚染性についてもこれらの技術ではまだまだ不充分であり更なる改良が求められるうえ、更に水性粘着剤組成物としての機械的安定性も不充分であり、塗工時にブツが発生し均一な塗工ができなくなるという問題も生じるものであった。
【0010】
勿論、上記特許文献3の開示技術は、永久接着での高温、高湿条件下での接着力の改良を行ったものであり、これを再剥離性粘着剤として使用することは不可能であり、更に、上記特許文献4の開示技術も、タックがないなどの点から再剥離性粘着剤として用いることは困難である。
【0011】
そこで、本発明ではこのような背景下において、経時での接着力上昇が少なく、かつ、再剥離時における被着体への糊残りや貼り跡などの汚染が少ないといった耐汚染性に優れ、更に水性粘着剤組成物としての機械的安定性にも優れた再剥離型水性粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
しかるに、本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、炭素数4〜12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)50〜99.7重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)0.1〜20重量%、多官能性不飽和単量体(a3)0.1〜20重量%、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)0.1〜10重量%、その他の不飽和単量体(a5)0〜49.7重量%を含む単量体混合物を、反応性乳化剤の存在下に、乳化重合させて得られるエマルジョン[A]と、架橋剤[B]とを含有してなり、架橋剤[B]として、ヒドラジン系化合物(b1)と、オキサゾリン系化合物(b2)、カルボジイミド系化合物(b3)、エポキシ系化合物(b4)、アジリジン系化合物(b5)から選ばれる少なくとも1種を用いるものである再剥離型水性粘着剤組成物が、上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明では、架橋剤[B]が、ヒドラジン系化合物(b1)と、オキサゾリン系化合物(b2)、カルボジイミド系化合物(b3)、エポキシ系化合物(b4)、アジリジン系化合物(b5)から選ばれる少なくとも1種との併用であり、経時での接着力上昇が小さいものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のエマルジョン[A]は、炭素数4〜12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)、多官能性不飽和単量体(a3)、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)、その他の不飽和単量体(a5)を含む単量体混合物を乳化重合させてなるものである。
【0015】
炭素数4〜12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、特に限定されず、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもn−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく用いられる。又、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。
【0016】
カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)としては、特に限定されず、例えばアクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられ、中でもアクリル酸、メタクリル酸等が好ましく用いられる。又、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。
【0017】
多官能性不飽和単量体(a3)としては、特に限定されず、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシフォスフェート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジアリルテレフタレート、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート等が挙げられ、中でもトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等が好適である。又、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。
【0018】
カルボニル基含有不飽和単量体(a4)としては、特に限定はされず、例えばダイアセトンアクリルアミド、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられ、中でもダイアセトンアクリルアミド等が好適である。又、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。
【0019】
更に、その他の不飽和単量体(a5)としては、特に限定されず、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の炭素数13以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0020】
更に、不飽和単量体(a5)として、上記の他に、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)と反応する単量体、互いに反応し得る単量体や自己架橋可能な官能基をもつ単量体等、例えば水酸基含有不飽和単量体、エポキシ基含有不飽和単量体、アルコキシシリル基含有不飽和単量体、アミド基やメチロール基を含有する不飽和単量体等を用いてもよい。
【0021】
水酸基含有不飽和単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0022】
アルコキシシリル基含有不飽和単量体としては、例えばγ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリポロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン等が挙げられる。
【0023】
アミド基やメチロール基を含有する不飽和単量体としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ブトキシN−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0024】
本発明において、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)、多官能性不飽和単量体(a3)、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)、その他の不飽和単量体(a5)の含有割合としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が50〜99.7重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)が0.1〜20重量%、多官能性不飽和単量体(a3)が0.1〜20重量%、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)が0.1〜10重量%、その他の不飽和単量体(a5)が0〜49.7重量%であり、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が55〜99.1重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)が0.5〜15重量%、多官能性不飽和単量体(a3)が0.2〜15重量%、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)が0.2〜5重量%、その他の不飽和単量体(a5)が0〜44.1重量%であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が60〜98.2重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)が1〜10重量%、多官能性不飽和単量体(a3)が0.3〜10重量%、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)が0.5〜3重量部、その他の不飽和単量体(a5)が0〜38.2重量%である。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が50重量%未満では充分な接着力、タックが得られず、99.7重量%を越えるとカルボキシル基含有不飽和単量体(a2)や多官能性不飽和単量体(a3)やカルボニル基含有不飽和単量体(a4)が少量となり充分な再剥離性が得られない。カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)が0.1重量%未満では重合安定性や機械安定性が低下し、20重量%を越えるとエマルジョンの粘度が上昇し取り扱いが悪くなり、又接着力、タックも低下することとなる。多官能性不飽和単量体(a3)が0.1重量%未満では接着力の経時上昇が大きくなり、耐剥離性も低下することとなり、20重量%を越えると糊残りが大きくなったり、重合時の安定性が低下することとなる。カルボニル基含有不飽和単量体(a4)が0.1重量%未満では再剥離性が低下し、10重量%を越えると、接着力、タックが低下し好ましくない。その他の不飽和単量体(a5)が49.7重量%を越えると接着力、タックが低下し好ましくない。
【0026】
本発明では、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)、多官能性不飽和単量体(a3)、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)、その他の不飽和単量体(a5)の単量体混合物を用いて、乳化重合させてエマルジョン[A]を得るわけであるが、かかる乳化重合においては反応性乳化剤の存在下に行うことが必要であり、かかる反応性乳化剤を用いることにより、重合を安定に行うことができ、かつ基材密着性や再剥離性が良好となり、本発明の効果を顕著に発揮する。
【0027】
かかる反応性乳化剤としては、反応性を有する乳化剤であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)〜(11)のような構造をもつものが挙げられる。
【0028】
【化1】
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
〔ここで、一般式(1)〜(11)において、R1はアルキル基、R2は水素又はメチル基、R3はアルキレン基、nは1以上の整数、m、lは1以上の整数(m+l=3)、XはH又はSO3NH4、SO3Naのいずれかである。〕
【0040】
上記乳化剤として、アニオン型としては、例えば上記一般式(1)〜(11)において、XがSO3NH4、SO3Naのいずれかの場合であるが、具体的には、「アデカリアソープSE−20N」、「アデカリアソープSE−10N」、「アデカリアソープPP−70」、「アデカリアソープPP−710」、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」〔以上、旭電化工業社製〕、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」〔以上、三洋化成工業社製〕、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」〔以上、花王社製〕、「アクアロンBC−05」、「アクアロンBC−10」、「アクアロンBC−20」、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」、「アクアロンHS−20」、「ニューフロンティアS−510」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」〔以上、第一工業製薬社製〕、「フォスフィノ−ルTX」〔東邦化学工業社製〕等の市販品が挙げられる。
【0041】
又、ノニオン型としては、例えば上記一般式(1)〜(5)、(8)〜(11)において、Xが水素の場合であるが、具体的には、「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」、「アデカリアソープER−10」、「アデカリアソープER−20」、「アデカリアソープER−30」、「アデカリアソープER−40」〔以上、旭電化工業社製〕、「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」〔以上、第一工業製薬社製〕等の市販品が挙げられる。
【0042】
上記乳化剤の中でもエマルジョンの安定性がよく、再剥離性にも優れる点で、上記一般式(1)〜(11)のアニオン型反応性乳化剤が好ましく、中でも特に、上記(a1)〜(a5)の不飽和単量体との反応が良好であり、エマルジョンの安定性がよく、再剥離性にも優れる点でアルキルフェノール構造を有さないアニオン型反応性乳化剤、例えば、上記一般式(3)、(4)、(5)、(8)、(9)、(10)などで示される構造の乳化剤、具体的には、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」等が好適である。上記乳化剤は1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0043】
かかる反応性乳化剤の使用量は、(a1)〜(a5)の単量体混合物100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.8〜7重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。該乳化剤が0.5重量部未満では乳化重合が不安定となり、10重量部を越えると未反応の乳化剤が多くなり基材密着性や被着体汚染の原因となり好ましくない。
尚、乳化剤は単量体混合物からなる乳化モノマー液に添加したり、予め重合缶に添加しておいたりしてもよく、又両者を併用してもよい。
【0044】
又、必要に応じて、反応性を有しないアニオン型乳化剤や、反応性を有しないノニオン型乳化剤を併用することもできる。
反応性を有しないアニオン型乳化剤としては、例えばアルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0045】
反応性を有しないノニオン型乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸等が挙げられる。
【0046】
乳化重合を行うに当たっては重合開始剤を用いるが、かかる重合開始剤としては、特に制限されず、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能で、具体的には、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等が挙げられ、これらの中でも過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、各種レドックス系触媒等が好適である。
【0047】
重合開始剤の使用量は、(a1)〜(a5)の単量体混合物100重量部に対して、0.03〜5重量部、更には0.05〜3重量部であることが好ましく、0.03重量部未満では重合速度が遅くなり、5重量部を越えると耐剥離性が低下し好ましくない。
【0048】
尚、該重合開始剤は重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、必要に応じて重合途中に追加添加してもよい。又、(a1)〜(a4)の単量体混合物に予め添加したり、該単量体混合物からなる乳化液に添加してもよい。添加に当たっては重合開始剤を別途溶媒や上記単量体に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤を更に乳化状にして添加してもよい。
【0049】
又、必要に応じて、重合時のpH調整のため、pH緩衝剤を併用してもよく、該pH緩衝剤の使用量は、(a1)〜(a5)の単量体混合物100重量部に対して0〜10重量部、特には0〜3重量部であることが好ましい。
かかるpH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであれば特に制限されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0050】
重合用媒体としての水の使用量は、(a1)〜(a5)の単量体混合物100重量部に対して、20〜400重量部であることが好ましく、より好ましくは25〜200重量部、特に好ましくは30〜150重量部である。水の使用量が20重量部未満では得られるエマルジョンが高粘度となり、又、重合安定性も低下することとなり、400重量部を越えると得られるエマルジョンの樹脂分濃度が低くなり、テープ等の基材へ塗工する際の乾燥性が低下し好ましくない。
【0051】
上記(a1)〜(a5)の単量体混合物を反応性乳化剤の存在下に、上記開始剤により重合を行うのであるが、その方法としては、
(1)単量体混合物、乳化剤、水等の全量を仕込み、昇温し重合する。
(2)重合缶に水、乳化剤、単量体混合物の一部を仕込み、昇温し重合した後、残りの単量体混合物を滴下又は分割添加して重合を継続する。
(3)重合缶に水、乳化剤等を仕込んでおき昇温した後、単量体混合物を全量滴下又は分割添加して重合する。
等が挙げられるが、重合温度の制御が容易である点で、(2)、(3)の方法が好ましい。
【0052】
上記重合方法における重合条件としては、特に限定されないが、例えば、
(1)の方法では、通常40〜100℃程度の温度範囲が適当であり、昇温開始後1〜8時間程度反応を行う。
(2)の方法では、単量体混合物の1〜50重量%を40〜90℃で0.1〜4時間重合した後、残りの単量体混合物を1〜5時間程度かけて滴下又は分割添加して、その後同温度で1〜3時間程度熟成する。
(3)の方法では、重合缶に水を仕込み、40〜90℃に昇温し、単量体混合物を2〜5時間程度かけて滴下又は分割添加し、その後同温度で1〜3時間程度熟成する。
【0053】
上記重合方法において、単量体混合物は、乳化剤(又は乳化剤の一部)を単量体混合物に溶解しておくか、又は、予めO/W型の乳化液の状態としておいたほうが重合安定性の点で好ましい。
乳化液の調製方法としては、特に限定されないが、水に乳化剤を溶解した後上記(a1)〜(a5)を仕込み、この混合液を撹拌乳化する方法、或いは水に乳化剤を溶解した後撹拌しながら上記(a1)〜(a5)を仕込む方法等が挙げられる。
【0054】
上記乳化液の調製の際の撹拌は、ホモディスパー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて行うことができる。
乳化時の温度は、乳化中に混合物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。
【0055】
かくしてエマルジョン[A]が得られるが、本発明においては、かかるエマルジョン[A]のゲル分率が70重量%以上であることが好ましく、更に75重量%以上、特には80重量%以上が好ましい。かかるゲル分率が70重量%未満では糊残りが多く耐汚染性が不良となり、又経時での接着力上昇が大きくなり好ましくない。
【0056】
かかるエマルジョン[A]のゲル分率を70%以上に調整する方法としては、特に限定されないが、多官能性不飽和単量体や自己架橋性官能基を有する不飽和単量体(加水分解性シリル基含有単量体やメチロール基含有単量体等)を共重合する方法や、互いに反応しうる官能基をもつ不飽和単量体を共重合する方法等が挙げられる。
【0057】
尚、エマルジョン[A]のゲル分率とは、樹脂組成物中の溶剤不溶解分の割合のことであり、エマルジョン[A]を、40℃で24時間乾燥して得られる10μmの塗膜を、トルエンに20℃で24時間浸漬し乾燥したときの、浸漬前の塗膜重量に対する浸漬後の塗膜重量の割合(%)として求められる。
【0058】
又、得られたエマルジョン[A]の粒子径については0.5μm以下、特には0.3μm以下の微粒子であることが基材密着性や接着力の経時安定性の点で好ましい。
更に、エマルジョン[A]の樹脂分濃度は10〜65重量%、特には20〜55重量%であることが乾燥性、塗工性の点で好ましい。
【0059】
次に、本発明で用いられる架橋剤[B]としては、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)と架橋する分子内に少なくとも2個以上のヒドラジド基を有するヒドラジン系化合物(b1)と、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)のカルボキシル基と架橋するオキサゾリン系化合物(b2)、カルボジイミド系化合物(b3)、エポキシ系化合物(b4)、アジリジン系化合物(b5)から選ばれる少なくと1種を併用するものであり、架橋剤の安定性がよく、再剥離性、即ち、経時での接着力上昇が少ないことや耐汚染性にも優れるものである。
【0060】
ヒドラジン系化合物(b1)としては、分子中に少なくとも2個以上のヒドラジド基を有するものであればよく、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0061】
オキサゾリン系化合物(b2)としては、分子中に少なくとも2個以上のオキサゾリン基を有するものであればよく、例えば、2位の炭素位置に不飽和炭素−炭素結合をもつ置換基を有する付加重合性2−オキサゾリン(例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)と他の不飽和単量体との共重合体等が挙げられ、市販品として、日本触媒社製の「エポクロスWS−500」、「エポクロスK−2010E」等が挙げられる。
カルボジイミド系化合物(b3)としては、分子中に少なくとも2個以上のカルボジイミド基を有するものであればよく、例えば日清紡社製の「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」等が挙げられる。
【0062】
エポキシ系化合物(b4)としては、分子中に少なくとも2個以上のグリシジル基を有するものであればよく、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−611」、「デコナールEX−612」、「デコナールEX−614」、「デコナールEX−614B」、「デコナールEX−622」等)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−512」、「デコナールEX−521」等)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−411」等)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−421」等)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−313」、「デコナールEX−314」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−321」等)、レソーシノールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−201」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−211」等)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−212」等)、ヒドロジェネイティッドビスフェノールAジグリしジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−252」等)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−810」、「デコナールEX−811」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−850」、「デコナールEX−851」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−821」、「デコナールEX−830」、「デコナールEX−832」、「デコナールEX−841」、「デコナールEX−861」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−911」等)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デコナールEX−941」、「デコナールEX−920」、「デコナールEX−931」等)、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N′,N′−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。中でも、水性タイプのものが好適である。
【0063】
アジリジン系化合物(b4)としては、分子中に少なくとも2個以上のアジリジン基を有するものであればよく、例えば「ケミタイトPZ−33」、「ケミタイトDZ−22E」(日本触媒社製)等が挙げられる。
イソシアネート系化合物としては、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、等のイソシアネート化合物、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン社製)の如きビュレットポリイソシアネート化合物、「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(バイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ウレタン社製)の如きイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製)の如きアダクトポリイソシアネート化合物、「コロネートHL」(日本ポリウレタン社製)の如きアダクトポリイソシアネート化合物、「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」(日本ポリウレタン社製)の如き自己乳化型の水分散ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、水分散タイプが好適である。又、ブロックイソシアネートを使用してもかまわない。
【0064】
メラミン系化合物としては、ヘキサメトキシメチロールメラミン、メトキシメチロールユリア等が挙げられる。
金属系化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、アルミニウムイソプロピオネート等の金属アルコキシドや、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセト酢酸エステル、エチレンジアミン四酢酸配位化合物の金属キレート化合物等や、酢酸−アンモニウム錯塩、アンモニウム−カーボネート錯塩等が挙げられる。中でも水性タイプが好適である。
アミン系化合物としては、1,3−ジアミノプロパン、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,4−ジアミノブタン等が挙げられる。
【0065】
上記架橋剤[B]の含有量は、上記エマルジョン[A]の固形分100重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましく、更には0.1〜20重量部、特には0.5〜10重量部であることが好ましい。かかる含有量が0.01重量部未満では粒子間の架橋が不充分となり糊残りが大きく耐汚染性が不良となり、30重量部を越えると未反応の架橋剤により被着体汚染の原因となり好ましくない。
【0066】
又、必要に応じて更に、粘着付与剤(例えばロジン系、ロジンエステル系、ポリテルペン樹脂、クロマン−インデン樹脂、石油系樹脂及びテルペンフェノール系樹脂等)、可塑剤(例えば液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン及び液状ポリアクリレート等)、防腐・防黴剤、防錆剤、凍結融解安定剤、可塑剤、高沸点溶剤、顔料、着色剤、充填剤(亜鉛華、チタン白、炭酸カルシウム、クレー等)、金属粉末、消泡剤、増粘剤、接着力コントロール剤等を適宜添加することができる。かかる添加剤は、重合後のエマルジョン[A]に添加されることが多いが、上記の乳化重合の重合前や重合途中に添加したりすることもできる。
【0067】
かくして本発明の再剥離型水性粘着剤組成物が得られるが、かかる再剥離型水性粘着剤組成物は、通常、基材シート等に塗布されて粘着シートや粘着テープ等として実用に供されることが多く、かかる粘着シートや粘着テープ等を製造するには、まず本発明の再剥離型水性粘着剤組成物をそのまま又は適当な濃度に調整し、シリコン処理等が施された基材の処理面に塗工したり、あるいは直接基材に塗工して、例えば80〜105℃、5秒〜10分間加熱処理等により乾燥させて粘着層を形成させることができる。
又、再剥離型水性粘着剤組成物を離型フイルムに塗布し乾燥した後、基材上に転写することもできる。
【0068】
かかる基材としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリピロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート等のフイルムや金属箔、紙や不織布等の多孔性材料等が挙げられる。
基材の厚さは通常、10〜300μm、特には20〜100μmが好ましく、かかる基材の片面又は両面に、上記の再剥離型水性粘着剤組成物からなる層を1〜100μm、更には3〜50μm、特には5〜30μmの厚さに設けて、シート状やテープ状等の形態とする。
【0069】
本発明の再剥離型水性粘着剤組成物は、金属板、ガラス板、プラスチック板等の運搬、加工、切断等の際の傷防止や汚染防止等のための一時的な表面保護用或いは仮接着用、更には塗料の塗工時におけるマスキング材用の粘着テープ又はシートの粘着剤として用いられるものである。
例えば、被着体の表面を保護する時には充分な粘着力を有しており、運搬、加工、切断等の処理が行われた後には、粘着シート又は粘着テープ等を被着体から容易に剥離することができる。
【0070】
かくして本発明の再剥離型粘着剤組成物は、炭素数4〜12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)50〜99.7重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)0.1〜20重量%、多官能性不飽和単量体(a3)0.1〜20重量%、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)0.1〜10重量%、その他の不飽和単量体(a5)0〜49.7重量%を含む単量体混合物を、反応性乳化剤の存在下に、乳化重合させて得られるエマルジョン[A]と、架橋剤[B]とを含有してなるため、経時での接着力上昇が少なく、かつ、再剥離時における被着体への糊残りや貼り跡などの汚染が少ないといった耐汚染性に優れ、更に塗工時のブツ発生等の恐れもなく、機械的安定性にも優れた効果を示すものである。
【0071】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「%」、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0072】
実施例1
2−エチルヘキシルアクリレート(a1)62.6部、n−ブチルメタクリレート(a1)28.0部、アクリル酸(a2)3.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a3)2.7部、1,9−ノナンジオールジアクリレート(a3)2.7部、ダイアセトンアクリルアミド(a4)1.0部、反応性乳化剤(旭電化社製、「アデカリアソープSR−10」)2.0部、水48.0部を混合撹拌し、単量体混合物からなる乳化液を得た。
次に、冷却管、撹拌翼を備えたフラスコに、反応性乳化剤(旭電化社製、「アデカリアソープSR−10」)0.15部とpH緩衝剤としての第二リン酸ナトリウム0.3部及び水67.5部を加え撹拌して溶解して、75℃に昇温した後、上記乳化液の7.5部を添加した。更に、80℃に昇温した後、3%過硫酸カリウム水溶液を1.33部添加し、乳化重合を行い、その後15分後に、乳化液の残り142.5部と3%過硫酸カリウム水溶液5.33部を混合した混合液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃に保持したまま2時間撹拌し重合を続けた後、60℃まで冷却し、10%アンモニア水溶液2部を添加し、酸基を中和した。その後、55℃まで冷却し、10%ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)水溶液0.5部と10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.5部をそれぞれ添加し、15分間更に重合反応させた後、再度、10%ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)水溶液0.5部と10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.5部をそれぞれ添加し、15分間更に重合反応させた。その後、30℃まで冷却し、200meshのナイロンメッシュでろ過し、10%アンモニア水でpHを8に調整して、エマルジョン[A]を得た(ゲル分率86%、固形分45%、粘度940mPa・s、粒子径0.14μm)。
【0073】
得られたエマルジョン[A]について以下の評価を行った。
(粗粒子量)
上記の如くエマルジョン[A]を得る際の、ナイロンメッシュの濾過残分を105℃で1時間乾燥して得られた粗粒子について、その重量をエマルジョン100gに対する重量(mg)で評価した。
【0074】
更に、得られたエマルジョン[A]に、架橋剤として10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液をエマルジョンの固形分100部に対して10.00部(有効成分として1.00部)と、「エポクロスWS−500」をエマルジョンの固形分100部に対して4.78部(有効成分として1.91部)添加し、本発明の再剥離型水性粘着剤組成物を得た。
得られた再剥離型水性粘着剤組成物について、以下の評価を行った。
【0075】
(機械的安定性)
得られた再剥離型水性粘着剤組成物を50g採取し、マーロン試験機(日立工機社製、「B13SH」)にて、20kg×1000rpmの条件で20分間撹拌したものを、200meshのナイロンメッシュでろ過し、その残留粗粒子量より、機械安定性を以下の通り評価した。
○・・・水性粘着剤組成物50g中の粗粒子量が5mg未満
△・・・水性粘着剤組成物50g中の粗粒子量が5mg以上15mg未満
×・・・水性粘着剤組成物50g中の粗粒子量が15mg以上
【0076】
(初期接着力)
得られた再剥離型水性粘着剤組成物を表面コロナ処理された60μmのポリエチレンフイルム上に乾燥後の厚みが10μmになるように塗布し、室温で10分間、80℃で1分間乾燥させた後、未処理のポリエチレンフイルムを貼り合わせて粘着シートを作製した。該粘着シートを、40℃で3日間エージング処理した後、未処理のポリエチレンフイルムを剥離してから、SUS304BA板に20℃、65%RHにて、2kgローラーを2往復させて接着させて、30分後に、JIS Z 0237の接着力の測定法に準じて180度剥離強度(gf/25mm)を測定した。
【0077】
(再剥離性)
(1)経時後の接着力
得られた再剥離型水性粘着剤組成物を表面コロナ処理された60μmのポリエチレンフイルム上に乾燥後の厚みが10μmになるように塗布し、室温で10分間、80℃で1分間乾燥させた後、未処理のポリエチレンフイルムを貼り合わせて粘着シートを作製した。該粘着シートを、40℃で3日間エージング処理した後、未処理のポリエチレンフイルムを剥離してから、SUS304BA板に20℃、65%RHにて2kgローラーを2往復させて接着させて、その後▲1▼65℃、10日間放置した後と、▲2▼40℃、95%RH、5日間放置した後について、JIS Z 0237の接着力の測定法に準じて180度剥離強度(gf/25mm)を測定した。
【0078】
(2)再剥離後の耐汚染性
上記での接着力を測定した後に、被着体表面の汚染度合いを目視観察し、耐汚染性を以下の通り評価した。
A・・・汚染は認められない
B・・・わずかに貼り跡(表面の艶変化)が認められた
C・・・貼り跡が認められた
D・・・白化の汚染が認められた
E・・・糊残りの汚染が認められた
【0079】
実施例2〜4、比較例1〜4
水性粘着剤組成物の組成を表1,2に示す如き配合に変更した以外は実施例1と同様の実験を行い、実施例1と同様に評価した。
ただし、比較例4のエマルジョンの調製は以下の通り行った。
【0081】
(比較例4)
表2に示す如き単量体及び、反応性乳化剤(花王社製、「ラテムルE−118B」、有効成分25%)8.0部、水42.0部を混合撹拌し、単量体混合物からなる乳化液を得た。
次に、冷却管、撹拌翼を備えたフラスコに、反応性乳化剤(花王社製、「ラテムルE−118B」、有効成分25%)0.6部とpH緩衝剤としての第二リン酸ナトリウム0.3部及び水67.1部を加え撹拌して溶解して、75℃に昇温した後、上記乳化液の7.5部を添加した。その後は実施例1と同様にして実験を行い、エマルジョンを得た。
【0082】
更に、得られたエマルジョンに、表1,2に示す通り架橋剤を添加し、再剥離型水性粘着剤組成物を得、得られた再剥離型水性粘着剤組成物について実施例1と同様の評価を行った。
実施例の評価結果を表3に、比較例の評価結果を表4に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
尚、表中の数値は配合量(部)を示す。但し、架橋剤の( )内の数値は有効成分量(部)を示す。
単量体:2EHA(2−エチルヘキシルアクリレート)
nBMA(n−ブチルメタクリレート)
nBA(n−ブチルアクリレート)
AA(アクリル酸)
MAA(メタクリル酸)
TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート)
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート)
1,9−NDA(1,9−ノナンジオールジアクリレート)
DAAM(ダイアセトンアクリルアミド)
MMA(メチルメタクリレート)
【0090】
乳化剤:SR−10(旭電化工業社製の「アデカリアソ−プSR−10」:有効成分100%)(上記一般式(10)の構造で、n:10、R1:アルキル基、X:SO3NH4)
KH−10(第一工業製薬社製の「アクアロンKH−10」:有効成分100%)(上記一般式(9)の構造で、R1:アルキル基、X:SO3NH4)
JS−2(三洋化成工業社製の「エレミノールJS−2」:有効成分38%)(上記一般式(3)の構造で、R1:アルキル基、X:SO3Na)
E−118B(花王社製の「ラテムルE−118B」:有効成分25%)(反応性を有しない乳化剤である。)
【0091】
架橋剤:ADH(大塚化学社製の「アジピン酸ジヒドラジド」を10%となるように水希釈したものを使用)
WS−500(日本触媒社製の「エポクロスWS−500」:有効成分40%)
V−04(日清紡社製の「カルボジライトV−04」:有効成分40%)
EX−313(ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−313」:有効成分100%)(グリセロールポリグリシジルエーテル)
PZ―33(日本触媒社製の「ケミタイトPZ−33」:有効成分99%以上)(2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス〔3−(1−アジリジニル)プロピオネート〕
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
注)粗粒子量はエマルジョン100gに対する重量(mg)である。
表中の▲1▼は65℃、10日間放置した後の評価、▲2▼は40℃、95%RH、5日間放置した後の評価である。
経時後の接着力の( )内の数値は初期接着力に対する割合(%)である。
【0095】
【発明の効果】
本発明の再剥離型水性粘着剤組成物は、炭素数4〜12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)50〜99.7重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)0.1〜20重量%、多官能性不飽和単量体(a3)0.1〜20重量%、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)0.1〜10重量%、その他の不飽和単量体(a5)0〜49.7重量%を含む単量体混合物を、反応性乳化剤の存在下に、乳化重合させて得られるエマルジョン[A]と、架橋剤[B]とを含有してなり、架橋剤[B]として、ヒドラジン系化合物(b1)と、オキサゾリン系化合物(b2)、カルボジイミド系化合物(b3)、エポキシ系化合物(b4)、アジリジン系化合物(b5)から選ばれる少なくとも1種を用いるものであるため、経時での接着力上昇が少なく、かつ、再剥離時における被着体への糊残りや貼り跡などの汚染が少ないといった耐汚染性に優れ、更に塗工時のブツ発生などの恐れもなく、水性粘着剤組成物としての機械安定性にも優れた効果を示すものである。
Claims (6)
- 炭素数4〜12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)50〜99.7重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)0.1〜20重量%、多官能性不飽和単量体(a3)0.1〜20重量%、カルボニル基含有不飽和単量体(a4)0.1〜10重量%、その他の不飽和単量体(a5)0〜49.7重量%を含む単量体混合物を、反応性乳化剤の存在下に、乳化重合させて得られるエマルジョン[A]と、架橋剤[B]とを含有してなり、架橋剤[B]として、ヒドラジン系化合物(b1)と、オキサゾリン系化合物(b2)、カルボジイミド系化合物(b3)、エポキシ系化合物(b4)、アジリジン系化合物(b5)から選ばれる少なくとも1種を用いるものである
ことを特徴とする再剥離型水性粘着剤組成物。 - 反応性乳化剤が、アニオン型反応性乳化剤であることを特徴とする請求項1記載の再剥離型水性粘着剤組成物。
- 反応性乳化剤が、アルキルフェノール構造を有さないアニオン型反応性乳化剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の再剥離型水性粘着剤組成物。
- エマルジョン[A]のゲル分率が70重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の再剥離型水性粘着剤組成物。
- 表面保護用粘着部材の粘着剤に用いることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の再剥離型水性粘着剤組成物。
- マスキング用粘着部材の粘着剤に用いることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の再剥離型水性粘着剤組成物。
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