JP4502533B2 - アップルファイバー原液の製造方法、およびその原液を用いる改質ペクチン粉末体の製造方法、ならびにアップルファイバー原液を使ったドリンク剤。 - Google Patents
アップルファイバー原液の製造方法、およびその原液を用いる改質ペクチン粉末体の製造方法、ならびにアップルファイバー原液を使ったドリンク剤。 Download PDFInfo
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Description
【発明の目的】
この発明は、「植物繊維の中の繊維」と言われるアップルファイバ−の有効利用に係わるものであって、特にリンゴジュース搾汁後に大量に発生するリンゴ搾り滓を加熱、乾燥させて粉砕、粉末化してなるアップルファイバーを使い、その中に含まれる水溶性成分であるペクチンを効率的に溶出させるようにした新規な構成からなるアップルファイバー原液の製造方法と、その製造方法によって得られるアップルファイバー原液を用いてなる改質ペクチン粉末体の製造方法、ならびにアップルファイバー原液を使ったドリンク剤を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、我が国を含め先進諸国においては、快適な生活環境と豊かな食生活との構築、更には抗生物質の開発等医療技術の革新が続き、人々の健康維持、管理面については、一見、恵まれた方向へ推移しているかの如き情勢にあるような錯覚を覚える。しかし、もっと広く社会的な視野で冷静に判断すると、例えば、医療技術の革新は、特に癌等細菌性疾患による死亡率を大幅に低下させ、平均寿命を著しく伸ばすという生理学的貢献を果たし、我が国を男女とも世界一の長寿国にまで伸し上げさせる上で大きな要因の一つであったことに何らの相違はないものの、その結果、今度は、我々がかつて経験したことのない高齢化社会がもたらされることとなり、それに伴う社会福祉基盤の整備を如何に進めるかといった新たな社会問題を提起することとなってきている。
【0003】
また、豊かな食生活の構築によって、人々の食欲は満たされ、充実した日常生活が保証されるようになってきていることも、確かな事実として首肯せざるを得ないものの、反面では肥満、高血庄症、糖尿病、ガン、循環器性疾患、脳卒中等の生活習慣病(成人病)の割合が、若年層から老人層まで増加の−途を辿ることとなって、最近では主婦層を中心に食生活による生活習慣病予防のための情報収集やそのための学習、実践の動きが活発化し始め、それに応えるべく、各種メディアは、「食と健康」というテーマで溢れんばかりの情報を発信し続けてきた結果、若い人達までをも巻き込んで、健康のためには金銭を惜しまないといつた社会現象を生み出し、昨今では、その風潮が、既に国民的合意として定着してしまったかのようにさへ見えてしまう程である。
【0004】
こうした傾向から、巷には得体の知れないものも含めて数え切れない程のダイエット食品やダイエット本が氾濫し、スーパーを始め、コンビニエンスストアやドラッグストア、そして歩道際に林立する自動販売機から、仕事に疲れたサラリーマンやダイエットに疲れた O L等は固よりのこと、学習塾に通う幼児や小学生の果てに至る者までが、各種ドリンク剤を求めては街中で満足げに飲み干していく姿等は、最早、街の風物詩然となつてしまっていて誰の目にも奇異に映ること等はなく、かえって、多くの人々は、それらへの投資が自らの健康維持、管理に有効であり、しかも、それらの投資は正しい選択でもあるかのような誤解さへも生み出しているような感さへ伺える。
【0005】
確かに、大衆に愛用されるダイエット食品やドリンク剤の中には、長年の研究成果に基づき、厳しい臨床データーを積み重ねてきた結果から提供されている物も少なくはなく、症状に合わせた正しい用い方によって期待どおりの効果がもたらされることに間違いはないとしなければならないものの、多くの人々の理解は、それが万能薬的な機能を果たしているといったものであって、本来は一時的に不足気味となってしまうビタミン類等、体外からの摂取を必要とする栄養素を補填あるいは排斥しているだけに過ぎない食品であるという事実を超えた理解になってしまっており、健康維持に欠かせない健全な細胞増殖活動に有効な疫学的効果までをもそれらに求め、実質的に納得してしまっているといった傾向を到底否定することはできない。
【0006】
このような風潮が浸透、加速していく中で、疫学的研究分野において一つの重要なテーマがその成果を実証し始めている。それは、植物性食物繊維の疫学的作用についての成果である。即ち、ペクチン、ヘミセルロース、セルロースおよび難溶性物質からなる植物性食物繊維は、栄養価もなく、人間が生命を維持していく上で何ら必要のないものと考えられていたところ、1971年、イギリスのバーキット(Burrkitt)博士が、赴任地アフリカでの人々の中に大腸癌、便秘および糖尿病等の疾患が少ないことに注目し、その原因を調査した結果、アフリカ現地人が摂取する食品中に含まれる植物繊維の量が、博士が長年暮らしてきたヨーロッパ人のそれと比較して著しく多いことに気づき、それまでは栄養的価値がないことから、それ程重要視されていなかった食物繊維について、疫学的が見地から、博士が、その見直しを求める論文を発表し、以来、この食物繊維の有効性、特に含有物質中の水溶性物質であるペクチンの疫学的作用について数多くの論文発表や臨床データーの報告等が積み上げられ、成果を見るようになってきている。
【0007】
この植物性食物繊維の中の繊維と称されているものの一つにアップルファイバ−が挙げられている。ところが、このアップルファイバ−の我が国における取り扱いの現状を見てみると、例えば、青森県は、国産リンゴの代表的な産地であり、生食としての生産、販売の外、その果汁は、その品質改善と共に市場への受け入れ体制も順調に進んできたことから、今ではリンゴジュースでも我が国の一大生産地にまで伸し上がってきている。しかしながら、このジュースを搾った後に大量に発生してしまう残渣、即ち搾り滓については、その大部分を産業廃棄物として経費を掛けてまで処分しなければなず、ジュース生産者にとって、言わば邪魔者であって、大部分の搾り滓は無用の長物化したままであり、極僅かのアップルファイバ−についてだけ、これまでにも、大手企業を含む数社において粉末状アップルファイバー(林檎搾り滓を乾燥、粉砕しただけの粉末体)の製造が実施されていた程度の取扱い状況にあったことが判明する。
【0008】
ところが、一部、こうして有効利用に回されて製造、実施されていた粉末状アップルファイバーの殆どは、林檎搾り滓を乾燥、粉砕しただけのもので、当然水には溶解せず、単に対象とする食品素材に混入使用できるに過ぎず、したがって、その粒度に係わらず繊維物質特有のざらつき感が残存してしまって、折角の対象食品の食味に悪影響を及ぼし兼ねないという性状上の欠点を有するものとなってしまっていた外、1kg当り約1000円前後での取り引きとなってしまっていて、仮令それが前記の如くに優良な「植物繊維の中の繊維」であって、しかも健康食品ブームで需要が見込まれるとはいっても、食品素材の単価としては高過ぎ、最終商品のコストアップに直接繋がってしまうことから加工食品分野では使ってもらえないという採算ベース上の理由等もあって、期待どおりに需要が伸びないまま推移してしまったことから、アップルファイバー製造工場の稼働率は悪化し、製造を中止して撤退を余儀なくされようとしているといった状況下にあるのが実情となってしまっている。
【0009】
そこで、この粉末状アップルファイバーの製造が高騰化する原因を様々に分析したところ、このリンゴ搾り滓は、水分を多量に含む上に糖質が高く、取扱い中に繊維が絡み合ってしまって団子状になり易いという特異な性質を有していることから、従前からの一般的な乾燥手段では不十分な乾燥状態に止まってしまい、充分に水分を除去しきれていないため、乾燥後に腐敗や黴を発生してしまって二次利用が難しく、また、その弊害を除去しようとして急激な加熱処理によって強制的に含水率を下げようとすると、簡単に焦げ付いて商品にならないだけではなく、乾燥装置を痛める結果となってしまうという厄介な問題も抱えていることから、リンゴ搾り滓を始めとする糖質の高い果実搾り滓は、紛状または粒状の加工には不向きな物質であるという事実を知得するに至った。
【0010】
この発明では、そうしたアップルファイバ−の紛状または粒状加工上の特質に関する知見を十分理解した上で、国産リンゴの代表的な産地であり、しかも、リンゴジュースでも我が国の一大生産地でもある青森県に在住する食品加工分野に長年従事してきている者の一人として、「植物繊維の中の繊維」とまで言われているアップルファイバ−の利用、活用は、単に大量に排出するリンゴ搾り滓の処分という観点からだけではなく、既に実証済みとなっている上記した事実の実践にも繋がり、人間の疫学的有用性に寄与し得ることになるとの信念から、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、本願出願人においては、既に特開2000−189097号「果実繊維食品の製造方法、およびそのための果実繊維食品の製造装置」発明を完成し得ているものであり、更に、その成果によって初めて製造可能とするようになった良質で安価な粉末状アップルファイバーか、それに相当するような粉末状アップルファイバーを各種食品へ利用し易くするための応用技術の開発、研究を継続、実施してきたところ、遂に茲にきて、それを実現し得る新規な構成からなるアップルファイバー原液の製造方法、およびその原液を用いる水溶性アップルファイバー粉末体の新規な製造方法、ならびにアップルファイバー原液を使った新規なドリンク剤について、その完成を見るに至ったものであり、以下では、この発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述していくこととする.
【0011】
【発明の構成】
この発明を代表する後述の実施例からも明確に理解されるように、この発明のアップルファイバー原液の製造方法は、基本的に次のような桶成から成り立っている.
即ち、リンゴ搾り滓を加熱、乾燥させて粉砕してなるアップルファイバーを所定時間掛けて煮込み、得られる煮込み液を濾過してタンクに貯留、静止させた上、液内の不溶性混入物質等を沈殿させてから上澄み液を採取し、水溶液100m・中に水溶性アップルファイバーのペクチンが約1.0g以上含有されてなる水溶液を製造するようにした構成を要旨とするアップルファイバー原液の製造方法である。
【0012】
上記の基本的な構成からなるこの発明のアップルファイバー原液の製造方法は、より具体的なものとして示せば、リンゴ搾り滓を加熱、乾燥させて粉砕してなるアップルファイバーを、水に対して約10ないし20重量部程度の割合となるように混合すると共に、適量の酸類を添加してアップルファイバー混入水となし、該アップルファイバー混入水を約80ないし約100℃に加熱、約30ないし60分間程度の時間を掛けて煮込んで煮込み液とした上、それら煮込み液を搾汁してタンクに貯留、静止し、液内の不溶性混入物質等を沈殿させてから上澄み液を採取することにより、水溶液100m・中に水溶性アップルファイバーのペクチンが約1.0g以上含有されてなる水溶液を製造するようにしたアップルファイバー原液の製造方法ということができる。
【0013】
更に具体的には、リンゴ搾り滓を加熱、乾燥させて粉砕し、更に篩に掛けて得られる60ないし80メッシュ程度に微粉末化してなるアップルファイバーを、水に対して約10ないし20重量部程度の割合となるように混合すると共に、適量の酸類を添加してアップルファイバー混入水となし、該アップルファイバー混入水を約80ないし約100℃に加熱、約30ないし60分間程度の時間を掛けて煮込んで煮込み液とした上、それら煮込み液を搾汁してタンクに貯留、静止し、液内の不溶性混入物質等を沈殿させてから上澄み液を採取することにより、水溶液100m・中に水溶性アップルファイバーのペクチンが約1.0g以上含有されてなる水溶液を製造するようにした構成を要旨とするアップルファイバー原液の製造方法ということができる。
【0014】
アップルファイバーとするリンゴ搾り滓は、例えば、前記した既に開発済みの「果実繊維食品の製造方法」、即ち、果汁の抽出後に得られるリンゴ搾汁滓の適量を、適宜手段で所定含水量となるまで乾燥させて乾燥済み搾汁滓とした上、該乾燥済み搾汁滓を、その混合割合が約20ないし50重量パーセント程度なるようにして、未乾燥のままのリンゴ搾汁滓に加えて約100重量パーセント相当量となる混練物にすると共に、乾燥機を用いて所定含水量となるまで乾燥させて乾燥済み搾汁滓とした後、引き続き、その中から約20ないし50重量パーセント相当量を分離した上、それらを、次の未乾燥のままの新たなリンゴ搾汁滓に戻して約100重量パーセント相当量の混練物としてから、乾燥機を用いて乾燥させて乾燥済み搾汁滓とする工程を繰り返していくようにする一方、その都度約20ないし50重量パーセント相当量が分離されて残る約80ないし50重量パーセント相当量の乾燥済み搾汁滓だけを、その都度直接か、さらに含水量の調整されたものとして粉砕工程に回していくようにした上、必要に応じてそれら粉末体に適量の各種有効成分からなる添加剤等を加えるか、加えずして、粉末あるいは粒状のリンゴ繊維食品に加工していくようにした製造方法等によって得られる高品質の処理されるアップルファイバーを、所望のアップルファイバーとするのが望ましい.
【0015】
アップルファイバー混入水は、上記のようにして得られたアップルファイバーをそのままか、望ましくは、その後の加熱処理によるペクチンの溶出効果が高められるよう、60ないし80メッシュ程度に微粉末化してなるアップルファイバーを水に対して約10ないし20重量部程度の割合、即ち約10重量部以下の割合では、水溶液100m・中に水溶性アップルファイバーのペクチンが約1.0g以上含有されてなる水溶液を作る時間に支障を来し、また、約20重量部以上の混入割合にしたものでは、当該所定量のペクチン含有水溶液を作る煮込み課程で焦げ付かせてしまう虞が高く、実用的な製造を期待できないことから、その程度のアップルファイバー混入水とするのが最も望ましいといえる。
但し、この混入割合を外れた範囲において、上記した弊害が払拭可能な技術が見出されるとすれば、何らこの混入割合に拘泥する必要はなく、この発明のアップルファイバー混入割合には、それらが包含されてしまうことは言うまでもないことである。
【0016】
また、アップルファイバー混入水には、加熱処理段階におけるアップルファイバーからのペクチン溶出効果を助長する目的で、予め、リンゴ酸やクエン酸、フマル酸、酢酸等を代表とする適宜酸類の適量、望ましくは、混合するアップルファイバー100重量部に対して約2重量部程度の酸類が添加されてなるものにすると共に、最終的に得られるアップルファイバー原液の固有の臭みを緩和する目的で、適量の果汁、例えばリンゴやレモン、パイナップル、カリン等のジュース類を混入してなるものにすると、極めて好都合のものとなる。
【0017】
このアップルファイバー混入水は、二重釜等の加熱容器に満たされて所定時間を掛けて加熱し、その過程でアップルファイバーに含まれる水溶性物質であるペクチンを最大限溶出されるようにするものであり、実用上で望ましい煮込み手段としては、約80ないし約100℃、できれば高温域での加熱によって約30ないし60分間程度(品種や成熟度、粉末度等の要因が左右するアップルファイバーの性状や、室温等の環境その他諸条件によって最適な加熱時間を選択しなければならない。)の時間を掛けて煮込み、その煮込み液中に、少なくとも100m・中に水溶性アップルファイバーからのペクチンが約1.0g以上、望ましくは1.2g以上溶出するようにした最適な時間が採用されるようにしなければならない。
【0018】
当該煮込み液は、その後、処理可能な温度において濾過することにより、煮込み液中に浮遊する物質、例えばヘミセルロース、セルロースおよび難溶性物質等といったアップルファイバーを構成するペクチン以外の不溶性物質や、紛れ込んだ異物等を除去してしまうようにした上で、所定の貯留タンクにおいてその搾汁液を静置し、未だ搾汁液内に混入している不溶性物質が十分沈殿してしまうようにし、その上部に茶褐色で透明な水溶性アップルファイバー原液が分離、形成されてから、それら上澄み液を取り出すことにより、この発明の、少なくとも水溶液100m・中に水溶性アップルファイバーのペクチンが約1.0g以上、望ましくは1.2g以上含有されてなる水溶液からなる水溶性アップルファイバー原液を製造することができるものである。
【0019】
【関連する発明1】
以上のとおりの構成を基本とするこの発明には、その製造方法によって得られる水溶性アップルファイバー原液を使って製造する改質ペクチン粉末体の製造方法も包含しており、その構成の要旨は、水溶液100m・中に水溶性アップルファイバーのペクチンを約1.0g以上含有するアップルファイバー原液を粉末化したペクチン粉末体と、ポリデキシトリンとが固形分に換算して約3対1ないし2対1程度となる割合でスプレードライヤー内に噴霧、乾燥されてなるものとすることにより、その表面微細構造を改善して粉臭や色、ザラザラ感等の点で違和感を減少させた水溶性アップルファイバーの微粉末を製造することにより、粉末100g中に約10g以上の改質ペクチンを含有するようにした、前記の製造方法によって得られるアップルファイバー原液を用いてなる改質ペクチン粉末体の製造方法である。
【0020】
前記したこの発明の基礎をなすアップルファイバー原液の製造方法によって得られるアップルファイバー原液を、そのまま従前からの粉末化手段、例えばフリーズドドライ法等によって粉末化してペクチン粉末体とした上、それら手段によって得られるペクチン粉末体の場合には、水溶性アップルファイバーであるペクチン固有の性状および表面微細構造により、粉臭や色、ザラザラ感等の点で違和感が残ってしまい、それら水溶性アップルファイバー粉末体を、他の加工食品等、例えば菓子やパン、麺包類、医薬品等へ添加、混入して利用したときに、本来の加工食品等の食味に悪影響を及ぼす虞があることから、それらの性状を改善するために、アップルファイバー原液をそのまま粉末化してなるペクチン粉末体と、ポリデキシトリンとが固形分に換算して略2対1となるようにした割合でスプレードライヤー内に噴霧、乾燥し、ペクチン粉末体の表面構造を変えてしまうことにより、改質されたペクチン粉末体とするものである。
【0021】
実験によれば、ペクチン粉末体を5段階に分別したものの夫々について、各種割合のデキストリン溶液としてスプレードライヤー内に同時に噴霧して乾燥した上、その表面微細構造を実体顕微鏡および電子顕微鏡によって調べると共に、その粉臭や色、ザラザラ感との関係を解明したところ、スプレードライヤー内に同時に噴霧する割合で、固形分換算で略3対1ないし2対1程度となる割合のものが最も実用的であって、デキストリン溶液噴霧割合を略3対1以下にしてしまうと、特に各種加工食品へ添加したときに、その食味に影響を及ぼす虞があり、また、略2対1以上の割合にしても、別段有利な効果も見出せず、無駄な使用となることが判明したものであり、したがって、デキストリン溶液噴霧割合において、固形分換算で略3対1ないし2対1程度とする範囲には、固形分換算でペクチン粉末体と1/2以上となる噴霧割合が当然に包含されていることは言うまでもないことである。
【0022】
【関連する発明2】
更に、この発明の基礎をなすアップルファイバー原液の製造方法に関連し、この発明には、水溶液100m・中に水溶性アップルファイバーのペクチンを約1.0g以上、望ましくは1.2g以上含有するアップルファイバー原液が約10重量部、それに少なくともpH調整剤およびビタミンCが夫々約1重量部ずつを含有するようにした構成を要旨としてなる、前記した製造方法によって得られるアップルファイバー原液を使って得られるドリンク剤が包含されている。
【0023】
なお、アップルファイバー原液に併用されるpH調整剤およびビタミンC以外の物質に特に制約はなく、例えば各種ジュース類、デキストリンやブドウ糖、黒糖、蜂蜜、カルシウム等を単独か、あるいは適宜組み合せて採用可能とするものである。
以下、この発明を代表する幾つかの実施例について具体的な説明を加え、上記までのこの発明の構成が更に明確に把握できるようにする。
【0024】
【実施例1】
図1のフロー図には、この発明の最も基本をなすアップルファイバー原液の製造方法に係わる工程を示してある。
先ず、果実搾汁滓を含水率6ないし約10パーセント程度となるまで乾燥させてなる乾燥済み搾汁滓を、その混合割合が約20ないし50重量パーセント程度なるようにして、未乾燥のままの果実搾汁滓に加えて約100重量パーセント相当量となる混練物にすると共に、乾燥機を用いて含水率6ないし約10パーセント程度となるまで乾燥させて乾燥済み搾汁滓とした後、引き続き、その中から約20ないし50重量パーセント相当量を分離した上、それらを、次の未乾燥のままの新たな果実搾汁滓に戻して約100重量パーセント相当量の混練物としてから、乾燥機を用いて含水率6ないし約10パ−セント程度となるまで乾燥していくようにする一方、その都度約20ないし50重量パーセント相当量が分離されて残る約80ないし50重量パーセント相当量の乾燥済み搾汁滓だけを粉砕するようにした製造方法等によって良質のアップルファイバーを製造する。
【0025】
こうして得られるアップルファイバー20Kgを、一旦篩に掛けて60メッシュアンダーの粉末体に調整した上、二重釜に入れられている80リットルの水の中に、リンゴ酸2gと共に混入した上、約100ないし約100℃の温度にまで加熱し、約60分間程度の時間に渡って十分に煮込み、アップルファイバーに含まれる水溶性物質のペクチンが、十分に溶出してなる煮込み液を作る煮込み工程を実施する。
【0026】
それら煮込み液が冷め過ぎない中に、その全量を順次搾汁して煮込み液中から不溶性物質であるヘミセルロース、セルロースその他の難溶性物質や、紛れ込んだ異物等を除去した上、タンクに移して貯留、静止し、先の搾汁によっても濾過しきれていない液内の不溶性混入物質等を沈殿させてから、その上澄み液を採取することにより、得られた溶液100m・中には、水溶性アップルファイバーからのペクチンを、少なくとも約1.0g以上、望ましくは1.2g以上の割合で含有してなるアップルファイバー原液が製造され、この事実は、青森県工業試験場の実験成績書によっても裏付けられいる。
【0027】
こうして得られたアップルファイバー原液は、その原液を1/10程度に希釈すると共に、飲み易くしたり、栄養バランスを保つために、デキストリンやブドウ糖、黒糖、蜂蜜、カルシウム、pH調整剤およびビタミンCその他栄養素材を、目的、用途によって適宜組合せとするか、あるいは何れかを単独で添加することによってドリンク剤とする外、医薬品として、あるいは各種食品、例えば菓子類や麺包類、惣菜等への添加材としての使用に際して、その利便性を高めるために、アップルファイバー原液とポリデキシトリンとが、固形分に換算して略2対1となるようにした割合でスプレードライヤー内に噴霧、乾燥させて粉末化し、ペクシン粉末体として商品化する。
【0028】
【実施例2】
この実施例では、本発明のアップルファイバー原液から抽出されたペクチン(水溶性アップルファイバー)を使い、富山医科薬科大学・医学部(田沢賢次教授等)で実施された発癌抑制作用に係わるラット実験の結果が示されている。 即ち、2種類のペクチン、一つはアップルペクチン(以下、AP)とシトラスペクチン(以下、CP)を使用し、発癌としてはアゾキシメタソ(AOM)を用いた。発癌剤を投与しながら、以下のような群を組み立て、腸内細菌由来の発癌に関連していると考えられている酵素活性を中心にした腸内代謝、および大腸癌の促進因子といわれている便中胆汁酸、大腸粘膜内プロスタクランジンE2(以下、PGE2)等を測定し、コントロール群と2種頬のベクチンの効果を比較したものである。
【0029】
(対象と方法)
1. 使用動物および実験食:4週齢の雄ドンリュウ系ラットを用い、1週間基礎飼料(MM−3)で、予備飼育した後、
1:基礎食のみを与えた群(対照群;n=18)、
2:基礎食に20%の割合でCPを添加した群(CP群;n=20)、
3:基礎食に20%の割合でAPを添加した群(AP群;n=24)、
の3群に分けた。
2. 発癌剤および投与方法:各飼料を投与して2週間後から、アゾキシメタン(以下、AOM)7.4mg/kgを背部皮下に週1回、連続10週間注射して大腸腫瘍を誘発した。
3. 便中酵素活性:β-Glucosidase,β-Glucuronidase,Tryptophanaseの測定を、AOM投与開始直前、11、19、30週目に行った。
4. 糞便中短鎖脂肪酸:犠死解剖により得られた盲腸内容物をガスクロマトグラフィーにて測定した。
5. 糞便中胆汁酸量:AOM投与開始後24週の糞便中胆汁酸を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
6. 大腸粘膜のPGE2含有量:犠死時に大腸粘膜を採取し、ラジオイムノアッセイ(RIA)法にて測定した。
【0030】
(結 果)
1. AOM誘発大腸腫瘍に対する抑制効果
1) 腫瘍発生率:対照群の15/18(83.3%)に対し、CP群11
/20(55.0%)、AP群9/24(37.5%)であり、AP群に
おいて有意な腫瘍誘発抑制が認められた(CP群:p<0.1、AP群:p
<0.05)。
2) 一匹あたりの発生腫瘍数:対照群の1.61±0.27個に対し、C
P群1.05±0.29個、AP群0.46±0.18個と、AP群にお
いて有意な減少が認められた(p<0.001)。
【0031】
2. 糞便の酸素活性:β-GlucoSidaseがCP、AP群とも低下していた。β
−Glucuronidaseは、CP、AP群ともに0日目に低下し、11週目以降は
有意に上昇していた(p<0.01)。特に、AP群は0日目に、対照群の
10%までに低下していた。(p<0.05)。
Tryptophanaseは、対照群に対してCP群で0日目と30週目に低下し
たが、明らかな傾向は認められなかった。AP群では、0日目から低下傾
向を示した。
3. 糞便中短鎖脂肪酸(盲腸内):総量では各群間に有意差は認めなかった
が、対照群に比ベ、AP群で酢酸量が有意に増加し(p<0.05)、CP
群で酪酸量が有意に減少していた(p<0.05)。
4. 便中胆汁酸:一次および二次胆汁酸の総量では、対照群に対して、AP
群で総胆汁酸量の減少傾向が見られ(p<0.1)、特に一次胆汁酸量が
有意に減少していた(p<0.05)。
【0032】
【作用効果】
以上のとおりの構成からなるこの発明のアップルファイバー原液の製造方法は、アップルファイバー組成物の一つであって、水溶性物質であるペクチンが、溶液100m・中に、少なくとも約1.0g以上の割合で含有されてなるところのアップルファイバー原液を極めて効率的且つ確実に製造可能にするものであり、特に、乾燥過程において、リンゴ搾汁滓を含水率6ないし約10パーセント程度となるまで乾燥させてなる乾燥済み搾汁滓を、その混合割合が約20ないし50重量パーセント程度なるようにして、未乾燥のままの果実搾汁滓に加えて約100重量パーセント相当量となる混練物にするようにして繰り返し乾燥させる手段によって含水率6ないし約10パーセント程度となし、それら乾燥済み搾汁滓だけを粉砕してなる良質のアップルファイバーを採用したものでは、従前までのものに比較して極めて経済的なものとしての提供が可能になると言う大きな特徴を発揮するものとなる。
【0033】
そして、溶液100m・中に少なくともペクチンを約1.0g以上、望ましくは1.2g以上含有するアップルファイバー原液を使って製造する改質ペクチン粉末体は、当該粉末体100g中に約10g以上という多量の改質ペクチン(水溶性林檎繊維質体)を含有するものとなって、30000円/Kg以上の単価でも従前のもの以上に経済的なものとなる上、従前までのもののようなペクチン粉末体独自の粉臭や色、ザラザラ感がない極めて良質の林檎繊維質体としての提供が可能になることから、特に各種加工食品への添加材として、その食味に殆ど影響を及ぼす虞のないものとしての提供が可能になる上、従前までのこの種粉末体の単価の略8割程度か、あるいはそれ以下のものとしての提供の可能性もあり、したがって、十分1kg当たり1000円以下の食品素材とすることができ、各種加工食品の最終価格を高騰させることなく、これまでにない健康食品としてその付加価値を高めることとなって、食品業界の活性化に寄与することができるという秀れた効果が得られるものとなる。
【0034】
更に、この発明によって得られる、溶液100m・中に少なくともペクチンを約1.0g以上、望ましくは1.2g以上含有するアップルファイバー原液を使い、それを略1/10程度まで希釈して得られるドリンク剤によれば、現代人に不足がちと言われている良質の水溶性植物繊維の摂取をかなり安価に可能とすることになって、従前までに提供されているこの種ドリンク剤では比較的高価についてしまうため、日常的な摂取に無理があった状況を確実に改善して、誰でもが日々必要とするに十分なだけの量の水溶性植物繊維の摂取を日常的な食習慣のように定着させることも可能になる。
【0035】
現代人の食生活と健康面との関係については、昭和30年代と比較して肉の量は2〜3倍に、脂肪の量は3〜4倍近くに増量しているにも拘わらず、食物織維に属する繊維成分は、野菜等を含めても1/2以下にまで減ってしまってきているといわれ、こうした現代人の肉食を中心とした消化吸収の良い食べ物ばかりを摂取しているために便秘傾向となり、腸の中の環境が大腸癌発生に適した状態になり、この21世紀初頭には胃癌の発生件数を超えるのではないかとの警鐘が鳴らされている。
【0036】
この警鐘は、1971年、バーキット博士(Dr.Burrkitt イギリス)が、アフリカ人の大腸癌発生がすこぶる低率なのは、食物繊維の摂取量が多いからだと発表し、大腸癌発生の要因の一つとして食物繊維欠乏説を提唱し、肉食を主体とする欧米人よりもアフリカの人達の方が腸の中は椅麗であって、腸内細菌も腐敗菌が少なく、癌原性物質の生産性も少ないのではないかという考え方に基づくものであり、我が国でも、田沢賢次教授等(富山医科薬科大学・医学部)による「ペクチンと癌」と題する研究、報告の中のドンリュウ系ラットを使った発癌抑制作用に係わる上述の実験結果によっても裏付けられており、また、その他にも、糖尿病等の各種成人病抑制作用に有効であるとする多数の報告もなされており。したがって、この発明によって得られるアップルファイバー原液を使ったドリンク剤が、現代人の健康の維持、管理面に非常に役立つことになるであろうという極めて重要な効果が期待できる。
【0037】
叙述の如く、アップルファイバー原液の製造方法、およびその原液を用いる改質ペクチン粉末体の製造方法、ならびにアップルファイバー原液を使ったドリンク剤は、一大リンゴジュース王国であって、ジュース搾汁後に発生する大量の残渣を産業廃棄物として経費を掛けてまで処理しなければならなかった青森県の実情を一変し、「植物繊維の中の繊維」と言われるアップルファイバ−を有効利用することによって経済効果を上げ、地域の活性化に大いに役立つことになると共に、その結果によって得られるところの水溶性植物繊維であるアップルファイバーのペクチンは、医薬としては勿論のこと、各種加工食品用の添加素材として効率的且つ安価に提供することが可能なり、その疫学的有用性から多くの現代人の健康の維持、管理に寄与するものになることから、関係各方面から高い評価がなされ、広く普及、活用されるものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
図面は、この発明に係わるアップルファイバー原液の製造方法の最も基本的な構成に基づく代表的な実施例を示している。
【図1】この発明のアップルファイバー原液の製造方法の代表的な製造工程を示す工程図である。
Claims (5)
- リンゴ搾り滓を加熱、乾燥させて粉砕し、更に篩に掛けて得られる60ないし80メッシュ程度に微粉末化してなるアップルファイバーを、水に対して10ないし20重量部程度の割合となるように混合すると共に、適量の酸類を添加してアップルファイバー混入水となし、該アップルファイバー混入水を80ないし100℃に加熱、30ないし60分間程度の時間を掛けて煮込んで煮込み液とした上、それら煮込み液を搾汁してタンクに貯留、静止し、液内の不溶性混入物質等を沈殿させてから上澄み液を採取することにより、水溶液100ml中に水溶性アップルファイバーのペクチンが1.0g以上含有されてなる水溶液を製造するようにしたことを特徴とするアップルファイバー原液の製造方法。
- アップルファイバーは、果汁の抽出後に得られるリンゴ搾汁滓の適量を、適宜手段で所定含水量となるまで乾燥させて乾燥済み搾汁滓とした上、該乾燥済み搾汁滓を、その混合割合が20ないし50重量パーセント程度なるようにして、未乾燥のままのリンゴ搾汁滓に加えて100重量パーセント相当量となる混練物にすると共に、乾燥機を用いて所定含水量となるまで乾燥させて乾燥済み搾汁滓とした後、引き続き、その中から20ないし50重量パーセント相当量を分離した上、それらを、次の未乾燥のままの新たなリンゴ搾汁滓に戻して100重量パーセント相当量の混練物としてから、乾燥機を用いて乾燥させて乾燥済み搾汁滓とする工程を繰り返していくようにする一方、その都度20ないし50重量パーセント相当量が分離されて残る80ないし50重量パーセント相当量の乾燥済み搾汁滓だけを、その都度直接か、さらに含水量の調整されたものとして粉砕工程に回していくようにした上、必要に応じてそれら粉末体に適量の各種有効成分からなる添加剤等を加えるか、加えずして粉末化することによって得られる、含水率6ないし12パーセント程度に調整され高品質のものとしてなる、請求項1記載のアップルファイバー原液の製造方法。
- アップルファイバー混入水に添加される適量の酸類は、混合するアップルファイバー100重量部に対して、リンゴ酸が2重量部程度としてした、請求項1記載のアップルファイバー原液の製造方法。
- 水溶液100ml中に水溶性アップルファイバーのペクチンを1.0g以上含有するアップルファイバー原液を粉末化してなるペクチン粉末体と、ポリデキシトリンとが固形分に換算して3対1ないし2対1程度となる割合でスプレードライヤー内に噴霧、乾燥されてなるものとすることにより、その表面微細構造を改善して粉臭や色、ザラザラ感等の点で違和感を減少させた水溶性アップルファイバーの微粉末を製造することにより、粉末100g中に10g以上の改質ペクチンを含有させてなるものとしたことを特徴とする、請求項1および2何れか記載の製造方法によって得られるアップルファイバー原液を用いてなる改質ペクチン粉末体の製造方法。
- 水溶液100ml中に水溶性アップルファイバーのペクチンを1.0g以上、望ましくは1.2g以上含有するアップルファイバー原液が10重量部、それに少なくともpH調整剤およびビタミンCが夫々1重量部ずつを含有してなる、請求項1記載の製造方法によって得られるアップルファイバー原液を使ったドリンク剤。
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