JP4501119B2 - 空気入りタイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トレッド部の少なくともタイヤ外周側部分を非導電性ゴム層により構成した空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法とに関する。
近年、車両の低燃費化と関係が深い転動抵抗の低減や、濡れた路面での制動性能(WET制動性能)の向上を目的として、トレッドゴムをシリカ高配合とした空気入りタイヤが提案されている。ところが、かかるトレッドゴムは、カーボンブラック高配合としたものに比べて電気抵抗が高く、車体やタイヤで発生した静電気の路面への放出を阻害するため、ラジオノイズ等の不具合を生じ易いという問題があった。
そこで、シリカ等を配合した非導電性のトレッドゴムに、カーボンブラック等を配合した導電層を設けることで電気抵抗対策を施した空気入りタイヤが開発されている。例えば下記特許文献1〜3に記載の空気入りタイヤでは、非導電性のトレッドゴムにタイヤ径方向に延びる導電層を設け、その導電層を通じて静電気を路面に放出するようにしている。導電層は、トレッド表面からトレッドゴムの内部を通って底面まで延在し、導電性を示すベースゴムやサイドウォールゴムなどに接触して静電気を放出するための導電経路を構成する。
ところで、この種の電気抵抗対策を施した空気入りタイヤを製造する場合、タイヤの加硫成形工程を経た段階で、トレッド表面に露出すべき導電層の端部が非導電性ゴムの薄皮により被覆された“皮被り”状態になることがある。かかるタイヤをそのまま製品化してしまうと、摩耗の初期段階において静電気の放出作用が奏されず、ラジオノイズ等の不具合を生じるため問題となる。
研究の結果、このような皮被り現象は、トレッドゴムのセンター部、メディエイト部、ショルダー部の順に起こり易いことが判明した。これは、タイヤの加硫成形工程において、タイヤの径成長によるベルト層のコード角度の変化に応じて、トレッドゴムがセンター部へ寄り集まることが要因であると考えられる。タイヤの径成長はセンター部、メディエイト部、ショルダー部の順に大きくなるため、径成長の大きいセンター部では、ゴムが寄り集まる割合が大きくなり、皮被り状態になり易い。
上記の皮被りによる問題は、導電層の露出箇所をショルダー部に限定することで抑制できるが、その場合、導電層をセンター部やメディエイト部で露出させたいという要請には対応することができない。ましてや、導電層を溝部で露出させても意味をなさず、その露出箇所の設定はパターンデザインに幾分か依存することに鑑みると、パターンデザインの自由度を確保する観点からも、導電層の露出箇所が特定の部位に限定されることは好ましくない。
特開平9−71112号公報 特開平10−81110号公報 特開平10−175403号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電層の露出部位に関係なく、摩耗の初期段階から静電気の放出作用を確実に奏することができる空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部の少なくともタイヤ外周側部分を構成する非導電性ゴム層と、前記非導電性ゴム層の内部を通ってトレッド表面から前記非導電性ゴム層の底面又は側面まで延在する導電層と、を備え、前記導電層が、トレッド表面からタイヤ内周側に向かって延びる本体部と、前記本体部から枝分かれしてタイヤ外周側に向かって延びる複数本の分岐部とを有し、少なくとも1本の前記分岐部がトレッド表面に露出するとともに、残りの前記分岐部が前記非導電性ゴム層の内部で終端して、トレッドゴムの摩耗に伴って順次に露出するように構成されており、非導電性ゴムからなるリボン状の第1ゴム部と、前記第1ゴム部の片面を被覆した導電性ゴムからなる第2ゴム部とを有するゴムリボンが、前記第2ゴム部の片方の端部が隣り合う前記第2ゴム部の腹部に接触するように、タイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けられ、前記本体部と前記分岐部とが前記第2ゴム部により形成され、前記第2ゴム部が前記第1ゴム部よりもリボン幅方向に突出して設けられているものである。
本発明の空気入りタイヤでは、トレッド表面から非導電性ゴム層の底面又は側面まで延在する導電層を通じて、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出することができる。しかも、導電層が上記の如き本体部と分岐部とを有することから、トレッド表面上の複数箇所で導電層を露出させることができ、タイヤの加硫成形時に導電層の端部が被覆されることを抑制できる。その結果、導電層の露出部位に関係なく、摩耗の初期段階から静電気の放出作用を確実に奏することができる。
本発明において、非導電性ゴム層は、それ自体がトレッドゴムを構成するものでもよいが、そのタイヤ内周側にベースゴムが配された所謂キャップ・ベース構造のキャップゴムを構成するものでも構わない。本発明では、ベースゴムを非導電性ゴムにより形成してもよく、かかる場合には、非導電性のトレッドゴムを使用することによる改善効果(トレッドゴムをシリカ高配合とした場合には燃費性能やWET性能の向上効果)を高めることができる。
上記において、非導電性ゴムからなるリボン状の第1ゴム部と、前記第1ゴム部の片面を被覆した導電性ゴムからなる第2ゴム部とを有するゴムリボンが、前記第2ゴム部の片方の端部が隣り合う前記第2ゴム部の腹部に接触するように、タイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けられ、前記本体部と前記分岐部とが前記第2ゴム部により形成されていることにより、本発明の空気入りタイヤが備える導電層の形成が簡便となる。
上記において、前記第2ゴム部が前記第1ゴム部よりもリボン幅方向に突出して設けられていることにより、上記のゴムリボンを巻き付けた際に、第2ゴム部の片方の端部を隣り合う第2ゴム部の腹部に接触させ易くなるため、導電層の形成が更に簡便となる。
また、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、トレッド部の少なくともタイヤ外周側部分を構成する非導電性ゴム層の内部に、トレッド表面から前記非導電性ゴム層の底面又は側面まで延在する導電層を形成する導電層形成工程を含む空気入りタイヤの製造方法において、前記導電層形成工程が、非導電性ゴムからなるリボン状の第1ゴム部と、前記第1ゴム部の片面を被覆した導電性ゴムからなる第2ゴム部とを有するゴムリボンを、前記第2ゴム部の片方の端部が隣り合う前記第2ゴム部の腹部に接触するように、タイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けて、トレッド表面からタイヤ内周側に向かって延びる本体部と、前記本体部から枝分かれしてタイヤ外周側に向かって延びる複数本の分岐部とを有し、少なくとも1本の前記分岐部がトレッド表面に露出するとともに、残りの前記分岐部が前記非導電性ゴム層の内部で終端して、トレッドゴムの摩耗に伴って順次に露出するように構成された導電層を、前記第2ゴム部により形成するものであり、前記第2ゴム部が前記第1ゴム部よりもリボン幅方向に突出して設けられているものである。
本発明の空気入りタイヤの製造方法によれば、上記の如き本体部と分岐部とを有する導電層を簡便に形成することができる。この導電層は、トレッド表面上の複数箇所で露出することから、タイヤの加硫成形時に端部が被覆されることが抑制される。そのため、本発明により製造された空気入りタイヤでは、導電層の露出部位に関係なく、摩耗の初期段階から静電気の放出作用を確実に奏することができる。
上記において、前記第2ゴム部が前記第1ゴム部よりもリボン幅方向に突出して設けられていることにより、上記のゴムリボンを巻き付けた際に、第2ゴム部の片方の端部を隣り合う第2ゴム部の腹部に接触させ易くなるため、導電層の形成が更に簡便となる。
上記において、前記第2ゴム部が前記第1ゴム部の内周側面を被覆するものであり、前記導電層形成工程では、前記ゴムリボンをタイヤ径方向に対して斜めに且つタイヤ内周側に向かって巻き付けるようにすることが好ましい。これにより、上記の如き本体部と分岐部とを有する導電層を簡便に形成することができる。ここで、第1ゴム部の内周側面とは、ゴムリボンをタイヤ周方向に沿って巻き付ける際に内周側となる面を指す。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[空気入りタイヤの構成]
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、ビード部1から各々タイヤ外周側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ外周側端に連なるトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビード1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライからなり、ビード部1の間に架け渡されるようにして配されている。カーカスプライは、タイヤ赤道Cに対して略90°の角度で延びるコードをゴム被覆して形成され、その端部がビード1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層7の内周には、空気圧保持のためのインナーライナーゴム5が配されている。
カーカス層7のトレッド部3外周には、2枚のベルトプライからなるベルト層6が配され、たが効果による補強を行っている。各ベルトプライは、タイヤ赤道Cに対して25°前後の角度で傾斜して延びるスチールコードにより構成され、該スチールコードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。また、ベルト層6の外周にはベルト補強層8が配設されている。
カーカス層7のビード部1外周には、不図示のリムに接するリムストリップゴム4が配されている。また、カーカス層7のサイドウォール部2外周には、サイドウォールゴム9が配されている。本実施形態では、上述したカーカスプライ、リムストリップゴム4及びサイドウォールゴム9が、原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックが高比率で配合された導電性ゴムにより形成されている。
ベルト層6及びベルト補強層8のタイヤ外周側には、非導電性のトレッドゴム10が配されており、その表面には、周方向に延びた主溝15a,15bや横溝を含むトレッドパターンが形成されている。本実施形態のトレッドゴム10は、ベースゴム11と、ベースゴム11の外周に積層されてトレッド部3のタイヤ外周側部分を構成するキャップゴム12(前記非導電性ゴム層に相当する。)との二層構造を有する。また、トレッドゴム10の端部外周面上にサイドウォールゴム9のタイヤ外周側端部を積層した、いわゆるサイドオントレッド構造を採用している。
キャップゴム12は、原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合した非導電性ゴムにより形成され、その内部には、導電性ゴムにより形成された導電層13がタイヤ周方向に連続して設けられている。ベースゴム11は、導電性ゴムにより形成しても構わないが、本実施形態では、後述するように導電経路がベースゴム11を介さずに形成されるため、非導電性ゴムにより形成することもできる。したがって、例えばベースゴム11をシリカ高配合とすることにより、タイヤの転動抵抗を低減して燃費性能が高めることができる。
ここで、導電性ゴムとしては、体積抵抗率が10Ω・cm未満を示すものが例示され、カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を所定量配合することによって得ることができる。また、非導電性ゴムとしては、体積抵抗率が10Ω・cm以上を示すものが例示される。
導電性ゴム及び非導電性ゴムの原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
導電層13は、キャップゴム12の内部を通ってトレッド表面からキャップゴム12の底面まで延在するとともに、キャップゴム12とベースゴム11との界面に介在してサイドウォールゴム9に接触している。これにより、リム、リムストリップゴム4、サイドウォールゴム9及び導電層13を介した導電経路が形成され、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出して、ラジオノイズ等の発生を防止することができる。
図2は、図1の要部拡大図であり、導電層13の露出部位を拡大して示している。本発明では、導電層13が、トレッド表面からタイヤ内周側に向かって延びる本体部13aと、本体部13aから枝分かれしてタイヤ外周側に向かって延びる複数本の分岐部13bとを有し、少なくとも1本の分岐部13b(本実施形態では最もタイヤ外周側にある分岐部13b)がトレッド表面に露出する。なお、図示の都合上、図1では分岐部13bの記載を省略している。
かかる構成によれば、トレッド表面上の複数箇所(本実施形態では2箇所)で導電層13を露出させることができるため、タイヤの加硫成形時に導電層13の端部が皮被りになることを抑制できる。その結果、導電層13の露出部位に関係なく、たとえ本実施形態のようにトレッドゴム10のセンター部側(図1左側)で導電層13を露出させる場合においても、摩耗の初期段階から静電気の放出作用を確実に奏することができる。加えて、本発明では、導電層13の露出部位が特に制限されず、メディエイト部やショルダー部で露出させてもよいため、パターンデザインの自由度が確保される。
本実施形態では、本体部13aがタイヤ径方向に対して傾斜して延びており、分岐部13bの各々がタイヤ径方向に略沿って延びる例を示すが、本発明はこれに限られるものではない。但し、後述するような工程の関係上、本体部13aはタイヤ径方向に対して傾斜して延びることが好ましい。また、本体部13aは、その断面が直線状に延在するものに限られず、湾曲したり屈曲したりしていても構わない。
摩耗の初期段階においてトレッド表面に露出しない分岐部13bは、トレッドゴム10が摩耗するにつれて順次に露出することになる。これにより、導電層13と路面との接触が好適に確保されるため、導電性能を摩耗末期まで維持することができ、後述するような導電層13が薄肉である場合に特に有用となる。分岐部13bは、キャップゴム12とベースゴム11との界面に存してもよいが無くても構わない。
この空気入りタイヤTは、トレッドゴム10に関する点を除けば、従来と同様にして製造することができる。詳しくは後述するが、本体部13a及び分岐部13bは、非導電性ゴムからなるリボン状の第1ゴム部と、その第1ゴム部の片面を被覆した導電性ゴムからなる第2ゴム部と、を有する複層のゴムリボンを巻き付けして、その第2ゴム部により形成されたものである。
本発明の空気入りタイヤは、上記の如き非導電性ゴム層と導電層とを備えること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、静電気を路面に放出する機能を発揮する限りにおいて、従来公知の材料、形状、構造などが何れも本発明に採用することができる。
[空気入りタイヤの製造方法]
次に、この空気入りタイヤTを製造する方法について説明する。なお、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、非導電性のトレッドゴム10を形成するにあたり、導電層13を形成するための導電層形成工程が下記の如きである他は、通常のタイヤ製造と同様にして行うことができる。
図3は、トレッドゴム10単体の断面図である。なお、図示の都合上、図3では分岐部13bの記載を省略している。このトレッドゴム10をカーカス層7やサイドウォールゴム9などの他のタイヤ構成部材と貼り合わせてグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫成形することで、図1に示した空気入りタイヤが製造できる。
本実施形態では、ベースゴム11を成形した後、その外周にキャップゴム12を積層することで、図3のトレッドゴム10を成形する例を示す。ベースゴム11の成形は、押出成形法やリボン巻き工法により行うことができる。ここで言う押出成形法とは、所定の断面形状を有する帯状ゴム部材を押出成形し、その端部同士をジョイントして環状に成形する工法であり、リボン巻き工法とは、小幅且つ小厚さのゴムリボンをタイヤ周方向に沿ってらせん状に巻き付けることにより、所望の断面形状を有するゴム部材を成形する工法である。
本実施形態では、ベースゴム11の外周にキャップゴム12を積層するにあたり、導電層13の露出部位であるセンター部に図4に示すような斜面16を設ける。つまり、キャップゴム12については、まず図3の左半分だけを成形し、センター部にある側面を斜面16により形成するのである。このキャップゴム12の半分の成形は、押出成形法及びリボン巻き工法の何れによるものでも構わない。
次に、図5に示すようなゴムリボン20を使って、リボン巻き工法により導電層13を形成する。ゴムリボン20は、非導電性ゴムからなるリボン状の第1ゴム部21と、第1ゴム部21の片面を被覆した導電性ゴムからなる第2ゴム部22とを有する複層のゴムリボンである。第1ゴム部21を形成する非導電性ゴムは、キャップゴム12を形成する非導電性ゴムと同一のゴムであることが好ましい。ゴムリボン20を巻き付ける際には図5の下方が内周側となり、第2ゴム部22は第1ゴム部21の内周側面を被覆している。
ゴムリボン20の成形及び巻き付けは、例えば図6に示すような製造設備を用いて行うことができる。この製造設備は、非導電性ゴムと導電性ゴムとを共押出してゴムリボン20を成形可能なゴムリボン成形装置30と、ゴムリボン成形装置30より供給されたゴムリボン20が巻き付けられる回転支持体31と、ゴムリボン成形装置30及び回転支持体31の作動制御を行う制御装置32とを備える。
ゴムリボン成形装置30は、一対の押出機33、34と、その押出機33、34の先端に共通して設けられたゴム合体部35と、ゴム合体部35の先端に付設された口金36とを備えており、口金36の吐出口36aは、ゴムリボン20の断面形状に対応した形状にて開口している。回転支持体31は、軸31aを中心にR方向に回転可能に構成されているとともに、軸方向に移動可能に構成されている。
押出機33は、ゴム材料が投入されるホッパー33aと、ゴム材料を前方に送り出すスクリュー33bと、スクリュー33bを内蔵するバレル33cと、スクリュー33bを駆動する駆動装置33dと、ギアポンプを内蔵するヘッド部33eとを備えている。押出機34は、押出機33と同様に構成され、ホッパー34aと、スクリュー34bと、バレル34cと、駆動装置35dと、ヘッド部35eとを備えている。制御装置32は、スクリュー33b、34b及びギアポンプの駆制動、並びに回転支持体31の回転と軸方向への移動を制御する。
ゴム材料としての非導電性ゴムをホッパー33aに投入し、ゴム材料としての導電性ゴムをホッパー34aに投入すると、各ゴム材料はスクリュー33b、34bによって混練されながら前方に送り出され、ヘッド部33e、34eを経由してゴム合体部35に供給される。このとき、ヘッド部33e、34eに内蔵したギアポンプによって、ゴム合体部35にはゴム材料が定量で供給される。
ゴム合体部35では、非導電性ゴムが第1ゴム部21に対応した形状に成形されるとともに、導電性ゴムが第2ゴム部22に対応した形状に成形され、両ゴムが合体して図5に示すようなゴムリボン20が吐出口36aより押し出される。押出成形されたゴムリボン20は、ロール37によって断面形状を整えられながら前方に送り出され、回転支持体31上でタイヤ周方向に沿って巻き付けられる。ローラ38は、ゴムリボン20を回転支持体31に押さえ付けるために設けられている。
ゴムリボン20は、図7に示すように、斜面16上にてタイヤ径方向に対して斜めに且つタイヤ内周側に向かって巻き付けられる。このとき、第2ゴム部22の片方の端部22aが隣り合う第2ゴム部22の腹部22bに接触するように、タイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付ける。これにより、全体として、第2ゴム部22が、斜面16に沿って延びる部分と、斜面16からタイヤ外周側に向かって延びる部分とを有することになり、前者の部分が本体部13aを形成し、後者の部分が分岐部13bを形成する。
また、ゴムリボン20を巻き付ける際には、少なくとも1本の分岐部13bがトレッド表面に露出するよう、ゴムリボン20の重なり代などが調整される。本実施形態は、図7に示した断面において2番目に巻き付けられたゴムリボン20の第2ゴム部22の端部22cが、トレッド表面上に配置されるように巻き付けた例を示しており、この端部22cを含んだ部分が、上述した「最もタイヤ外周側にある分岐部13b」となる。
分岐部13bが形成される領域では、ゴムリボン20を重ねるに際して、第2ゴム部22の端部22aを、これに隣り合う第2ゴム部22の腹部22bであって、そのゴムリボン20の中央から両側にそれぞれリボン幅wの40%となる範囲に接触させることが好ましい。これにより、分岐部13bの長さを確保して、上述したような効果を適切に発揮することができる。リボン幅wとしては、10〜40mmが例示される。
2ゴム部22は、第1ゴム部21よりもリボン幅方向に突出して設けられている。図5は、第2ゴム部22がリボン幅方向の両側で突出している例であるが、少なくとも本体部13aを形成する端部22a側にて突出していれば、好ましい実施形態となる。この場合、ゴムリボン20を巻き付けるに際して、第2ゴム部22の端部22aを隣り合う第2ゴム部22の腹部22bに接触させ易くなるため、導電層13の形成、特に本体部13aの形成が簡便となる。なお、第2ゴム部22の端部の形状安定性を確保する観点から、突出量pは0.3〜4.0mm程度が好適である。
上記の如くゴムリボン20を巻き付けた後、引き続いてゴムリボン20をベースゴム11の外周面上に巻き付け、ベースゴム11の幅方向端部にまで到達させる。このとき、隣り合う第2ゴム部22同士が接触するようにして、導電層13がセンター部からベースゴム11の側方まで連続するようにする。或いは、図7に示すような巻き付け状態にてゴムリボン20の巻き付けを終了し、導電性ゴムからなるシート状ゴム部材をベースゴム11の外周面上に敷設することで、導電層13がセンター部からベースゴム11の側方まで連続するようにしても構わない。
導電層13の厚みは特に制限されないが、導電性能を確保する観点から第2ゴム部22の厚みtが0.2mm以上であることが好ましい。また、非導電性のトレッドゴムを使用することによる改善効果を十分に発揮させるには、導電層13のボリュームを極力低減することが好ましいところ、本発明では、第2ゴム部22の厚みtを1mm以下にすることができ、更には0.1mm以下にすることも可能である。導電層13の厚みが小さいと皮被りが起こり易い傾向にあるが、本発明では導電層13を複数箇所で露出させうるため、第2ゴム部22をこのように薄肉化しても問題がない。
導電層13を形成した後、押出成形法又はリボン巻き工法によってキャップゴム12の残り半分(図3の右半分)を成形し、図3に示したトレッドゴム10を完成させる。既述のように、このトレッドゴム10を他のタイヤ構成部材と貼り合わせてグリーンタイヤを成形し、得られたグリーンタイヤを加硫成形すれば、図1,2に示すような導電層13を備えた空気入りタイヤが製造できる。
本実施形態の製造設備によれば、キャップゴム12をリボン巻き工法で成形するにあたり、ゴムリボンの押出を中断することなく連続成形して作業効率を高めることができる。すなわち、キャップゴム12の左半分を成形した後にゴムリボン20を巻き付けるに際して、並びに、ゴムリボン20により導電層13を形成してからキャップゴム12の残部を成形して断面形状を仕上げるに際して、ゴムリボンの押出を中断させずに成形を行うことができる。
つまり、ゴムリボン20を押出可能な状態から、ヘッド部34e内のギアポンプの回転を制止し、必要であればスクリュー34bの回転も制止して、導電性ゴムの押出を停止すれば、第1ゴム部21のみで形成したゴムリボンが得られ、これと逆の動作を行えば、第1ゴム部21のみで形成されたゴムリボンが二層のゴムリボン20に変わることから、これを利用することで、キャップゴム12を連続成形することができる。このようなヘッド部33e、34e内のギアポンプ及びスクリュー33b、34bの作動制御は、制御装置32により行うことができる。
[別実施形態]
(1)前述の実施形態では、導電層がトレッド表面から非導電性ゴム層の底面まで延在する例を示したが、これを非導電性ゴム層の底面ではなく側面に延在させ、そのうえで導電性を示すサイドウォールゴムなどに接触させるようにしても構わない。
(2)前述の実施形態では、断面が偏平楕円形状をなすゴムリボンを用いて導電層を形成する例を示したが、本発明ではゴムリボンの形状は特に限られるものではなく、例えば断面が三角形状をなすものでもよい。但し、導電層の形成における利便性や、第2ゴム部の薄肉化による導電層のボリューム低減を考慮すると、リボン幅が厚みよりも大となる偏平形状をなすものが好ましい。また、本発明では、ゴムリボンの積層数は特に制限されない。
(3)本発明では、ベースゴムを導電性ゴムにより形成したうえで、導電層がキャップゴムの底面にて終端するようにしてもよい。この場合には、ベースゴムを介した導電経路が形成されることになる。また、本発明では、導電層が、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出するための導電経路が形成されるよう、リム又はリムから導電可能なゴム(前述の実施形態におけるサイドウォールゴム9やリムストリップゴム4が該当する。)に接触するように延在するものであれば、トレッド表面から延びて何処で終端していようと構わない。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図 図1の要部拡大図 トレッドゴム単体の断面図 導電層を形成する工程を概略的に示す断面図 ゴムリボンの断面図 ゴムリボンの巻き付けを行うための製造設備を示す概略構成図 導電層を形成する工程を概略的に示す断面図
符号の説明
3 トレッド部
4 リムストリップゴム
6 ベルト層
7 カーカス層
9 サイドウォールゴム
10 トレッドゴム
11 ベースゴム
12 キャップゴム(非導電性ゴム層)
13 導電層
13a 本体部
13b 分岐部
16 斜面
20 ゴムリボン
21 第1ゴム部
22 第2ゴム部
22a 第2ゴム部の端部
22b 第2ゴム部の腹部

Claims (5)

  1. トレッド部の少なくともタイヤ外周側部分を構成する非導電性ゴム層と、前記非導電性ゴム層の内部を通ってトレッド表面から前記非導電性ゴム層の底面又は側面まで延在する導電層と、を備え、
    前記導電層が、トレッド表面からタイヤ内周側に向かって延びる本体部と、前記本体部から枝分かれしてタイヤ外周側に向かって延びる複数本の分岐部とを有し、少なくとも1本の前記分岐部がトレッド表面に露出するとともに、残りの前記分岐部が前記非導電性ゴム層の内部で終端して、トレッドゴムの摩耗に伴って順次に露出するように構成されており、
    非導電性ゴムからなるリボン状の第1ゴム部と、前記第1ゴム部の片面を被覆した導電性ゴムからなる第2ゴム部とを有するゴムリボンが、前記第2ゴム部の片方の端部が隣り合う前記第2ゴム部の腹部に接触するように、タイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けられ、前記本体部と前記分岐部とが前記第2ゴム部により形成され、
    前記第2ゴム部が前記第1ゴム部よりもリボン幅方向に突出して設けられている空気入りタイヤ。
  2. トレッドゴムが、非導電性ゴムからなるベースゴムと、そのベースゴムの外周に積層された前記非導電性ゴム層としてのキャップゴムとを有し、前記キャップゴムが前記本体部によりタイヤ軸方向に二分割され、前記第2ゴム部が、前記ベースゴムと前記キャップゴムとの界面、及び、前記本体部による前記キャップゴムの分割面に沿った部位にのみ配置されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. トレッド部の少なくともタイヤ外周側部分を構成する非導電性ゴム層の内部に、トレッド表面から前記非導電性ゴム層の底面又は側面まで延在する導電層を形成する導電層形成工程を含む空気入りタイヤの製造方法において、
    前記導電層形成工程が、
    非導電性ゴムからなるリボン状の第1ゴム部と、前記第1ゴム部の片面を被覆した導電性ゴムからなる第2ゴム部とを有するゴムリボンを、前記第2ゴム部の片方の端部が隣り合う前記第2ゴム部の腹部に接触するように、タイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けて、
    トレッド表面からタイヤ内周側に向かって延びる本体部と、前記本体部から枝分かれしてタイヤ外周側に向かって延びる複数本の分岐部とを有し、少なくとも1本の前記分岐部がトレッド表面に露出するとともに、残りの前記分岐部が前記非導電性ゴム層の内部で終端して、トレッドゴムの摩耗に伴って順次に露出するように構成された導電層を、前記第2ゴム部により形成するものであり、
    前記第2ゴム部が前記第1ゴム部よりもリボン幅方向に突出して設けられていることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  4. 前記第2ゴム部が前記第1ゴム部の内周側面を被覆するものであり、前記導電層形成工程では、前記ゴムリボンをタイヤ径方向に対して斜めに且つタイヤ内周側に向かって巻き付けるようにする請求項3に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  5. 非導電性ゴムからなるベースゴムと、そのベースゴムの外周に積層された前記非導電性ゴム層としてのキャップゴムとを有し、前記キャップゴムを前記本体部によりタイヤ軸方向に二分割したトレッドゴムを形成し、
    前記第2ゴム部を、前記ベースゴムと前記キャップゴムとの界面、及び、前記本体部による前記キャップゴムの分割面に沿った部位にのみ配置する請求項3又は4に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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