JP4495081B2 - 二輪自動車のブレーキシステム検査装置及びブレーキシステム検査方法 - Google Patents

二輪自動車のブレーキシステム検査装置及びブレーキシステム検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、二輪自動車に設けられたアンチロックブレーキシステムや、アンチロックブレーキシステムを備える前後輪連動ブレーキシステムの検査を行う検査装置及び検査方法に関する。
従来、二輪自動車のアンチロックブレーキシステム(以下ABSと言う)及び前後輪連動ブレーキシステム(以下CBSと言う)の作動を検査する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この検査装置は、前輪を着座させて支持する一対の支持ローラ(前輪支持ローラ)と、後輪を着座させて支持する一対の支持ローラ(後輪支持ローラ)とを備え、一方の前輪支持ローラと一方の後輪支持ローラとは、互いに同期して回転するように連結手段により連結されている。なお、各ローラはその表面が低摩擦材料によって形成されている。また、他方の前輪支持ローラ及び他方の後輪支持ローラには、夫々のローラの回転速度を検出する回転速度検出手段が連結して設けられている。更に、一方の後輪支持ローラにはクラッチを介して駆動モータが連結されている。
このように構成された検査装置において、二輪自動車のABSの検査を行なうときには、先ず、テスト車両の前輪及び後輪を夫々一対の前輪支持ローラ及び一対の後輪支持ローラに載置し、前記駆動モータにより後輪支持ローラを回転させる。これにより、後輪を介して後輪支持ローラが共に回転し、さらにこの回転が一方の前輪支持ローラを介して前輪及び他方の前輪支持ローラに伝達されるので、全ローラーが同期回転することになる。
続いて、前記回転速度検出手段から得られるローラの回転速度が所定の速度となったとき、前記クラッチがOFF状態となって一方の後輪支持ローラが駆動モータが切り離され、この状態で作業者がブレーキを全入力する。そして、前記クラッチにより駆動モータの駆動力から切り離された各ローラは慣性で回転を続行する一方、ブレーキ入力による減速で徐々に各ローラの回転速度が低下する。このとき、各ローラの表面が低摩擦材料によって形成されていることから二輪自動車の車輪と各ローラとの間にスリップが生じるので、ABSが作動してポンピングブレーキが行われる。その後、ブレーキの作動によって各ローラが停止し、その停止時間と予め実走測定で定められた値とを比較することで、ABSの性能の良否が判定される。
また、前記従来の検査装置により二輪自動車のCBSの検査を行なう場合にも、ABSの検査時と同様に、一方のブレーキ(例えば後輪ブレーキ)を入力して他方のブレーキ(前輪ブレーキ)を連動させ、各ローラの停止時間と予め実走測定で定められた値とを比較することで、CBSの性能の良否が判定される。
しかし、前記従来の検査装置によるABS検査では、ブレーキ入力した後に各支持ローラの回転が停止しなければ判定結果が得られず、検査時間が比較的長くかかる不都合がある。しかも、CBSの作動確認が作業者の体感によって行なわれるので、作業者に熟練が要求され、高い検査精度が望めない不都合がある。
そこで、ABSの作動時におけるブレーキのON・OFFの繰り返しに伴う車輪の回転速度の増減を測定し、この測定データに基づいて波形を求め、その波形の一部が、所定の経過時間内に定められた所定範囲内にあるか否かを判定することで、ABS及びCBSの良否判定を行うものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。これによれば、ブレーキ入力から車輪が停止するまでの経過時間を採取することなく、ブレーキシステムの検査が行えるので、検査時間を大幅に短縮することができる。
しかし、このものにおいても、一方の前輪支持ローラと一方の後輪支持ローラとは、連結手段により互いに同期して回転するように連結されている。これによって、特にCBSの検査において、前輪と後輪との回転速度の増減を測定しても、両者の回転速度の増減が、CBSの作動によるものであるのか、連結手段を介して一方の車輪から他方の車輪に制動力が伝達されたものであるのかが明確でない不都合がある。
即ち、CBSが搭載された二輪自動車によっては、後輪ブレーキと前輪ブレーキとの連動時の制動力が異なるように配分されている場合がある。このような二輪自動車において、例えば、後輪ブレーキの全入力時にCBSによる前輪ブレーキの作動が後輪ブレーキよりも極めて小さな制動力に設定されていると、前輪の回転速度の増減が前輪ブレーキによる実際の作動によるものではなく、連結手段を通じて前輪に伝達された後輪の制動力の影響によるものであることも考えられる。そして、このような状況で採取される測定データに基づいて良否判定を行うと、前輪ブレーキが作動していないにもかかわらず、CBSによる連動が正常に行われていると判定されるおそれがあり、検査精度が低くなる不都合がある。
特開2001−281108号公報 特開2003−254870号公報
かかる不都合を解消して、本発明は、二輪自動車の各検査にかかる時間を短縮して二輪自動車の検査を効率よく行えるだけでなく、検査精度を飛躍的に向上させることができる二輪自動車のブレーキシステム検査装置及びブレーキシステム検査方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は、二輪自動車に搭載されたアンチロックブレーキシステム及び前後輪連動ブレーキシステムの作動を検査する二輪自動車のブレーキシステム検査装置であって、二輪自動車の前輪を支持すべく互いに軸線が平行に配置された回転自在の一対の支持ローラと、二輪自動車の後輪を支持すべく互いに軸線が平行に配置された回転自在の一対の支持ローラと、前輪を支持する少なくとも一方の支持ローラと後輪を支持する少なくとも一方の支持ローラとを連結して同期回転させる連結手段と、二輪自動車の各々の車輪にアンチロックブレーキシステムが作動するとき、該車輪を支持する支持ローラを介して該車輪の回転速度を測定する第1測定手段と、前輪に備えるブレーキ作動部と後輪に備えるブレーキ作動部とのうち少なくとも一方のブレーキ作動部の少なくとも一部の温度を測定する第2測定手段と、第1測定手段の測定データに基づく第1の良否判定要素と第2測定手段の測定データに基づき該第1の良否判定要素がブレーキ作動部の作動によるものか否かを確認するための第2の良否判定要素とを用いてブレーキシステムの良否を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、二輪自動車に搭載されたアンチロックブレーキシステム及び前後輪連動ブレーキシステムの作動を検査する二輪自動車のブレーキシステム検査方法であって、一対の前輪支持ローラに支持された二輪自動車の前輪を回転させると共に、前輪支持ローラと同期回転する一対の後輪支持ローラに支持された二輪自動車の後輪を回転させて、一方の車輪のブレーキを全入力することによりアンチロックブレーキシステム及び前後輪連動ブレーキシステムを作動させるブレーキ入力工程と、該ブレーキ入力工程における前輪の回転速度と後輪の回転速度とを夫々の支持ローラを介して測定する第1測定工程と、該ブレーキ入力工程における前輪に備えるブレーキ作動部と後輪に備えるブレーキ作動部とのうち少なくとも一方のブレーキ作動部の少なくとも一部の温度を測定する第2測定工程と、第1測定手段の測定データに基づく第1の良否判定要素と第2測定手段の測定データに基づき該第1の良否判定要素がブレーキ作動部の作動によるものか否かを確認するための第2の良否判定要素とを用いてブレーキシステムの良否を判定する判定工程とを備えることを特徴とする。
本発明によって二輪自動車のアンチロックブレーキシステム(ABS)及び前後輪連動ブレーキシステム(CBS)の作動を検査するときには、先ず、前輪と後輪とを、夫々に対応する一対の支持ローラに着座させる。次いで、二輪自動車の検査対象となるABSが作動する車輪(前輪又は後輪)のブレーキを入力してABSを作動させる。具体的には、例えば、作業者が前記支持ローラ上で二輪自動車のエンジンを駆動し、所定の検査開始速度になったときに二輪自動車のギヤをニュートラルにしてブレーキを全入力する(ブレーキ入力工程)。これによって、車輪は急ブレーキ状態となるので、車輪とローラとの間にスリップ現象が発生しABSが作動を開始する。このとき、二輪自動車の検査対象となるABSが作動する一方の車輪のブレーキが全入力されたことにより、二輪自動車の検査対象となるCBSが作動する他方の車輪のブレーキが自動的に入力される。そして、両車輪のABSが作動を開始する。
前輪ABSと後輪ABSとが共に作動することによって、前輪と後輪との夫々においてブレーキのON・OFFが繰り返されるので、それに応じて両車輪の回転速度が増減し、両車輪の回転挙動が伝達された前輪支持ローラの回転速度と後輪支持ローラの回転速度とが第1測定手段により測定される(第1測定工程)。
そして、該第1測定手段から得られた測定データに基づく第1の良否判定要素、例えば具体的には、該第1測定手段から得られた測定値に基づいて演算された車輪の回転速度の変化(例えば減速度或いは加速度の増減)に伴う波形を求め、波形の一部が所定の経過時間内に定められた所定範囲内にあるか否かを前記判定手段によって判定する。このように、第1測定手段から得られた測定データに基づく第1の良否判定要素を、前記判定手段による判定に用いることで、ブレーキ入力から車輪が停止するまでの経過時間を採取することなく、両輪のABSの良否を判定することができる。また、第1の良否判定要素が前輪ブレーキに対する後輪ブレーキの利き具合を示すものであるので、一方の車輪のブレーキに対して他方の車輪のブレーキが過剰に作動しているか、或いは一方の車輪のブレーキに対して他方の車輪のブレーキの作動が不十分であるかが確認でき、ブレーキ入力から車輪が停止するまでの経過時間を採取することなく、CBSの良否を判定することができる。
更に、夫々の車輪支持ローラが連結手段により同期回転されていると、一方の車輪のブレーキが全入力されたときの制動力が連結手段を介して他方の車輪に影響し、CBSが作動せず、他方の車輪のブレーキが自動的に入力されなくても、他方の車輪の回転速度が低下する場合が考えられる。この場合には、第1測定手段から得られた測定データに基づく第1の良否判定要素だけではCBSの良否の判定精度が低下するおそれがある。
そこで、本発明においては、前輪に備えるブレーキ作動部と後輪に備えるブレーキ作動部とのうち少なくとも一方、即ち、二輪自動車の検査対象となるCBSが作動する他方の車輪のブレーキ作動部の少なくとも一部の温度が前記第2測定手段により測定される(第2測定工程)。そして、該第2測定手段から得られた測定データに基づく第2の良否判定要素、例えば具体的には、該第2測定手段から得られた測定値に基づいてブレーキ作動部の温度変化(差分)を求め、この温度変化が十分に生じているか否かを前記判定手段によって判定する。
このように、本発明によれば、第1測定手段の測定データに基づく第1の良否判定要素と第2測定手段の測定データに基づく第2の良否判定要素とからブレーキシステムの良否を判定するので、検査時間を短縮することができるだけなく、検査精度を飛躍的に向上させることができる。
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の装置構成を示す説明的平面図、図2は図1に示す装置の要部を示す説明的側面図、図3は本実施形態の検査手段を模式的に示すブロック図、図4及び図5は判定手段において用いられる波形を示す線図である。
図1及び図2において、1は本実施形態の二輪自動車の検査装置1であり、2はベース、3は該ベース2上に設けられて二輪自動車(図示せず)の後輪R側に設けられた後輪用機台、4はその前輪F側に設けられた前輪用機台である。
図1に示すように、後輪用機台3は、二輪自動車の後輪Rを着座支持する一対の後輪支持ローラ5、6を備えている。後輪Rの前側に位置する第1の後輪支持ローラ5は、その回転軸7が一対の軸受け8を介して回転自在に支持されている。後輪Rの後側に位置する第2の後輪支持ローラ6は、その回転軸9が第1の後輪支持ローラ5の回転軸7と平行に、一対の軸受け10を介して回転自在に支持されている。第1の後輪支持ローラ5は、第2の後輪支持ローラ6よりも大径に形成されており、これによって、第1の後輪支持ローラ5の回転慣性力が第2の後輪支持ローラ6よりも大きく設定されている。
第1の後輪支持ローラ5と第2の後輪支持ローラ6とは所定間隔を存して並設され、更に、図2に示すように、第2の後輪支持ローラ6は、後輪Rに接する位置が第1の後輪支持ローラ5と同一の高さとなるように前記軸受け10により支持されている。
図1に示すように、第1の後輪支持ローラ5の回転軸7の一方端には電磁ブレーキ11が連結されており、該電磁ブレーキ11の作動により第1の後輪支持ローラ5に掛かる負荷の調整が可能となっている。
第2の後輪支持ローラ6の回転軸9の一端部にはクラッチ12を介してプーリ13が設けられている。該プーリ13はベルト14を連動部材としてベース2上に設けられたスタータ作動用モータ15のプーリ16に従動する。クラッチ12がONとされたときには、プーリ13が回転軸9に連結され、スタータ作動用モータ15による第2の後輪支持ローラ6の駆動が可能となる。
また、第2の後輪支持ローラ6の回転軸9の他端部には、クラッチ17を介してモータ18が連結されている。クラッチ17がONとされたときには、回転軸9とモータ18の駆動軸19とが接続され、モータ18による第2の後輪支持ローラ6の駆動が可能となる。
更に、第2の後輪支持ローラ6の回転軸9の一端部には、回転軸9の回転速度を測定する第1ロータリーエンコーダ20が設けられ、回転軸9の他端部には、クラッチ17とモータ18との間に位置して回転軸9の回転トルクを測定する第1トルクメータ21が設けられている。後述するが、第1トルクメータ21は制動力の検査時に使用され、第1ロータリーエンコーダ20は、アンチロックブレーキシステム(ABS)及び前後輪連動ブレーキシステム(CBS)の検査時に使用される。
前輪用機台4は、二輪自動車の前輪Fを着座支持する一対の前輪支持ローラ22、23を備えている。前輪Fの前側に位置する第1の前輪支持ローラ22は、その回転軸24が一対の軸受け25を介して回転自在に支持されている。前輪Fの後側に位置する第2の前輪支持ローラ23は、その回転軸26が第1の前輪支持ローラ22の回転軸24と平行に、一対の軸受け27を介して回転自在に支持されている。第1の前輪支持ローラ22は、第2の前輪支持ローラ23よりも大径に形成されており、これによって、第1の前輪支持ローラ22の回転慣性力が第2の前輪支持ローラ23よりも大きく設定されている。
第1の前輪支持ローラ22と第2の前輪支持ローラ23とは所定間隔を存して並設され、更に、図2に示すように、第2の前輪支持ローラ23は、前輪Fに接する位置が第1の前輪支持ローラ22と同一の高さとなるように前記軸受け27により支持されている。なお、第1の後輪支持ローラ5と第1の前輪支持ローラ22とは同一形状とされ、第2の後輪支持ローラ6と第2の前輪支持ローラ23とは同一形状とされている。
第2の前輪支持ローラ23の回転軸26の一端部には、クラッチ28を介してモータ29が連結されている。クラッチ28がONとされたときには、回転軸26とモータ29の駆動軸30とが接続され、モータ29による第2の前輪支持ローラ23の駆動が可能となる。
第2の前輪支持ローラ23の回転軸26の他端部には、回転軸26の回転速度を測定する第2ロータリーエンコーダ31が設けられ、回転軸26の一端部側には、前記クラッチ28とモータ29との間に位置して回転軸26の回転トルクを測定する第2トルクメータ32が設けられている。後述するが、第2トルクメータ32は制動力の検査時に使用され、第2ロータリーエンコーダ31はアンチロックブレーキシステム(ABS)及び前後輪連動ブレーキシステム(CBS)の検査時に使用される。
更に、第1の前輪支持ローラ22の回転軸24の一端部には、回転軸24の回転速度を測定する第3ロータリーエンコーダ33が設けられている。後述するが、第3ロータリーエンコーダ33は、二輪自動車に搭載された速度計の検査時に使用される。
前輪用機台4は、車輪間距離の異なる二輪自動車にも対応可能とするために、後輪用機台3に向かって進退自在とされている。即ち、前輪用機台4は、図2に示すように、ベース2に設けられたスライドレール34に沿って案内されるガイド部材35と、モータ36によって回転されるボール螺子37に螺合する螺合部材38とを備えている。これにより、前輪用機台4は、モータ36によるボール螺子37を回転させることで、スライドレール34に沿って後輪用機台3に向かって進退される。
また、第1の前輪支持ローラ22と第1の後輪支持ローラ5とは、連結手段39を介して同期して回転されるようになっている。連結手段39は、第1の後輪支持ローラ5の回転軸7に連結された第1ギヤボックス40と、第1の前輪支持ローラ22の回転軸24に連結された第2ギヤボックス41とを備え、第1ギヤボックス40と第2ギヤボックス41とを互いに連結する連結シャフト42によって回転軸7と回転軸24とが同期回転するようになっている。なお、第1ギヤボックス40及び第2ギヤボックス41は、傘歯車を組み合わせてなる周知のものであり、また、連結シャフト42は、前述した前輪用機台4の進退動に第2ギヤボックス41を追従させるために第2ギヤボックス41側においてスプライン嵌合するスプラインシャフトが採用されている。
また、ここで検査される二輪自動車は、図2に仮想線示するが、ブレーキディスク43とキャリパー44とで構成されるブレーキ作動部45を各車輪F,Rに備える。そして、図1に示すように、前輪用機台4には温度センサ46が設けられている。温度センサ46は、図2に示すように、前輪Fに設けられているブレーキ作動部45を構成するブレーキディスク43の温度を非接触状態で測定する。ここで採用する温度センサ46としては、ブレーキディスク43から放射された赤外線を検出してブレーキディスク43の表面温度を出力するパイロメータが好適である。この温度センサ46によって測定される熱は、フロントフォーク(図示しない)に固定されたキャリパー44のピストンが前輪Fと共に回転するブレーキディスク43に圧接して制動力が生じたとき、前輪Fの運動エネルギーから変換されてブレーキディスク43に伝達されたものである。
図3に示すように、前記第1ロータリーエンコーダ20、第2ロータリーエンコーダ31、第3ロータリーエンコーダ33、第1トルクメータ21、第2トルクメータ32及び温度センサ46は、何れも検査手段48に接続されており、各測定値の信号が検査手段48に入力されるようになっている。検査手段48は、各測定値から各検査に応じた演算を行なう演算手段49と、各検査の良否を判定する判定手段50とを備えている。更に、検査手段48には、判定手段50による判定結果や測定情報を表示する表示手段51と、作業者が二輪自動車に搭乗した状態で操作するための作業者用操作手段52が接続されている。なお、演算手段49によって行なわれる演算処理及び判定手段50によって行なわれる判定処理については後述する。
次に、本実施形態の検査装置1による二輪自動車の検査について説明する。検査装置1によって検査を行なう二輪自動車は多種に及ぶが、先ず、図示しないが、前輪ブレーキと後輪ブレーキとの夫々にABSが作動し、前輪ブレーキと後輪ブレーキとを連動させるCBSが作動する二輪自動車の検査について説明する。この種の二輪自動車は、運転者がハンドルに設けられた右ブレーキレバーのみを操作したとき、前輪ブレーキが作動し、それに連動して後輪ブレーキが作動する。また、運転者がブレーキペダルのみを操作したときにも、後輪ブレーキが作動し、それに連動して前輪ブレーキが作動する。更に、前輪ブレーキと後輪ブレーキとは共にABSが作動する。
この種の二輪自動車に対する検査は、前輪制動力検査、後輪制動力検査、速度計検査、前輪ABS・CBS検査、及び、後輪ABS・CBS検査の順序で行なわれる。
前輪制動力検査は次のように行なわれる。検査開始時には、作業者が二輪自動車に乗った状態で二輪自動車の後輪Rを第1の後輪支持ローラ5及び第2の後輪支持ローラ6に着座させると共に、前輪Fを第1の前輪支持ローラ22及び第2の前輪支持ローラ23に着座させる。このとき、二輪自動車はエンジンが停止され、ギヤがニュートラルの状態とされている。一方、検査装置1は、前記クラッチ12がOFFの状態で、プーリ13と回転軸9とが切り離され、モータ15、プーリ16、ベルト14により発生する負荷を回転軸9及び第2の後輪支持ローラ6にかけない状態になっている。また、クラッチ17はONとされ、回転軸9とモータ18とが接続される。これにより、モータ18により回転軸9を介して第2の後輪支持ローラ6を駆動可能な状態になっている。
そして、作業者が二輪自動車に乗った状態で右ブレーキレバーのみを操作して前輪ブレーキを全入力し、この状態を維持して作業者用操作手段52(図3示)の図示しないフロントブレーキ制動力検査開始ボタンを押す。これにより、モータ18、29が作動し、所定の時間第2の後輪支持ローラ6と第2の前輪支持ローラ23との回転を駆動する。このとき、作業者によって二輪自動車の右ブレーキレバーから前輪ブレーキが全入力されていることによって、前輪Fと、CBSの作動による後輪Rとの回転が阻止され、第2の前輪支持ローラ23及び第2の後輪支持ローラ6と前輪F及び後輪Rとの間に摩擦が発生する。これにより、モータ18、29と第2の後輪支持ローラ6の回転軸9と第2の前輪支持ローラ(23)の回転軸26とにひずみが発生し、第1トルクメータ21及び第2トルクメータ32により、前輪ブレーキが全入力された際の第2の前輪支持ローラ23と第2の後輪支持ローラ6とに掛かるトルクが計測され、図3に示す前記検査手段48に入力される。検査手段48においては前記判定手段50によって第1トルクメータ21及び第2トルクメータ32により測定されたトルク値と所定のトルク値(予め設定された判定値)とが比較され、測定したトルクの最大値が所定のトルク値を越えていれば前記表示手段51に「OK」を表示させ、測定したトルクの最大値が所定のトルク値以下であれば十分な制動力が得られていないとして表示手段51に「NG」を表示させる。そして、制動力が「NG」である場合には、二輪自動車を検査装置1から降ろしてブレーキの調整が行なわれ、制動力が「OK」である場合には、続いて後輪制動力検査が行なわれる。
後輪制動力検査は、モータ18、29を停止させて第2の後輪支持ローラ6と第2の前輪支持ローラ(23)の回転を停止させた後に行なわれる。そして、検査作業は、作業者が右ブレーキレバーを開放した状態でブレーキペダルを踏むことにより後輪ブレーキを全入力とする以外は上述した前輪制動力検査と同様であるので説明を省略する。
後輪制動力検査が終了した後、続いて速度計検査が行なわれる。速度計検査においては二輪自動車の搭載された速度計の良否が検査される。図1を参照すれば、検査装置1は次に示す状態とされる。即ち、前記クラッチ12がOFFの状態で、プーリ13と回転軸9とが切り離され、モータ15、プーリ16、ベルト14により発生する負荷が回転軸9及び第2の後輪支持ローラ6に掛からない状態になっている。前記クラッチ17はOFFとされて、回転軸9とモータ18及び第1トルクメータ21とが切り離され、モータ18及び第1トルクメータ21により発生する負荷が回転軸9及び第2の後輪支持ローラ6に掛からない状態とされる。同じく、前記クラッチ28はOFFとされ、モータ29及び第2トルクメータ32により発生する負荷が回転軸26及び第2の前輪支持ローラ23に掛からない状態とされる。
そして、作業者は二輪自動車のエンジンを始動させ、次いで、二輪自動車に備えられた速度計を観察しながらアクセル調整する。そして、二輪自動車の速度計が所定の速度(例えば40km/h)を示したとき、前記作業者用操作手段52(図3示)に備えられた図示しない速度計検査ボタンを押す。一方、図3に示すように、前記検査手段48においては、第3ロータリーエンコーダ33から得られる第1の前輪支持ローラ22の回転速度が、演算手段49によって車速に換算される。そして、判定手段50は、速度計検査ボタンが押された時点の二輪自動車の速度計に表示される値と演算手段49によって算出された車速との差が、予め設定された許容範囲内にあれば前記表示手段51に「OK」を表示させ、許容範囲内になければ二輪自動車の速度計が精度不十分として表示手段51に「NG」を表示させる。
続いて、前輪ABS・CBS検査が行なわれる。前輪ABS・CBS検査においては、速度計検査に継続して二輪自動車のエンジンによる駆動を維持させ、作業者がアクセルを調整して所定の検査開始速度(例えば60km/h)に合わせる。このとき、作業者は、二輪自動車に備えられた速度計の表示ではなく、前記検査手段48を介して表示手段51に表示される車速を確認してアクセル調整を行なう。二輪自動車のエンジンによる駆動を維持することで、各支持ローラ5、22、6、23の回転が維持されるので、所定の検査開始速度までの速度上昇時間を飛躍的に短縮させることができる。
そして、車速が所定の検査開始速度になったとき、作業者は二輪自動車のアクセルを戻してギヤをニュートラルの状態にすると同時に、右ブレーキレバーを操作して前輪ブレーキを全入力する。これにより二輪自動車は前輪Fに急ブレーキが掛けられた状態となる。検査装置1においては、図2に示すように、第1の後輪支持ローラ5及び第1の前輪支持ローラ22の回転慣性力が第2の後輪支持ローラ6及び第2の前輪支持ローラ23の回転慣性力より大きくしてあるので、前輪ブレーキが全入力されたことにより、前輪Fと第1の前輪支持ローラ22との間にスリップ現象が発生し前輪ABSが作動を開始する。一方、第2の前輪支持ローラ23は前輪Fの回転挙動に追従する。なお、第1の後輪支持ローラ5は、前記連結手段39によって第1の前輪支持ローラ22と同期して回転されており、後輪Rに対しても路面の状況が再現される。また、二輪自動車の前輪ブレーキが入力されたことによってCBSが作動し後輪ブレーキが作動する。更に、二輪自動車の後輪Rは前輪Fに追従してABSが作動する。このときにも、前輪Fの場合と同様に、第2の後輪支持ローラ6は後輪Rの回転挙動に追従する。
検査手段48においては、常時第2の前輪支持ローラ23と第2の後輪支持ローラ6との回転速度を第2ロータリーエンコーダ31と第1ロータリーエンコーダ20とによって測定し、測定した値から演算手段49によって前輪F側と後輪R側との夫々の減速度(加速度)を算出する処理を演算手段49により行なっている。このとき得られた減速度(加速度)に対応する波形を図4に示す。図4において、実線により示す波形は前輪F側、即ち第2の前輪支持ローラ23の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形であり、一点鎖線により示す波形は後輪R側、即ち第2の後輪支持ローラ6の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形である。なお、本実施形態においては減速度(加速度)の波形として説明するが、減速度をトルクに置き換えても同一の波形を得ることができる。
図4に示すように、第2の前輪支持ローラ23の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形においては、前輪ブレーキが全入力されたと同時に上昇(減速)し、第1変化部aを介して下降(加速)する。第1変化部aはABSが作動して前輪ブレーキが初回OFFの状態となった時点の第2の前輪支持ローラ23の回転速度の変化に対応し、それに続く下降は、第1の前輪支持ローラ22の回転慣性が前輪Fを介して第2の前輪支持ローラ23に伝達されたものである。
そして、再びブレーキがONの状態となると第2変化部bが現れ、第2の前輪支持ローラ23が減速する。次いで、再びブレーキがOFFの状態となると第3変化部cが現れ、第2の前輪支持ローラ23が加速する。その後、ABSの作動により、前輪ブレーキはON・OFFが数回繰り返される。
第2の後輪支持ローラ6の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形においては、CBSが作動して後輪ブレーキが前輪ブレーキに連動し、後輪R側のABSが作動することによって第2の後輪支持ローラ6の回転速度の変化に応じたものとなる。そして、ABSが作動して後輪ブレーキが初回OFFの状態となった時点の第1変化部dが現れる。
検査手段48の判定手段50においては、前輪F側の減速度(加速度)の波形から第1変化部a、第2変化部b、及び第3変化部cを採取して前輪ABSの作動の良否が判定され、前輪F側の減速度(加速度)の波形における第1変化部aと後輪R側の減速度(加速度)の波形における第1変化部dとを採取してCBSの作動の良否が判定される。
即ち、前輪F側の減速度(加速度)の波形における第1変化部aについては、予め設定された第1合格エリアA(図4中二点鎖線により囲まれた領域)が設けられる。該第1合格エリアAは第2ロータリーエンコーダ31(図1参照)の測定値に基づいて演算手段49により算出された減速度が0.5Gに達した時(ブレーキの作動に基づく減速であるとみなされた時)が時間的基点とされ、所定時間内の許容減速度の上限と下限とによって定められている。前輪F側の減速度(加速度)の波形における第2変化部bについては、予め設定された第2合格エリアBが設けられる。該第2合格エリアBは第1変化部aが現れた時が時間的基点とされ、所定時間内の許容減速度の上限と下限とによって定められている。同じように、前輪F側の減速度(加速度)の波形における第3変化部cについては、予め設定された第3合格エリアCから設けられる。該第3合格エリアCは第2変化部bが現れた時が時間的基点とされ、所定時間内の許容減速度の上限と下限とによって定められている。
判定手段50は、先ず、第1変化部a、第2変化部b、及び第3変化部cが夫々第1合格エリアA、第2合格エリアB、及び第3合格エリアC内にあるか否かで前輪ABSの作動の良否判定を行なう。即ち、全ての変化部a、b、cが、夫々の合格エリアA、B、C内にあるとき、前記表示手段51を介して「ABS OK」の表示を行ない、何れか一つでも合格エリアから外れている場合には前記表示手段51を介して「ABS NG」の表示を行なう。このとき更に、第1変化部a、第2変化部b、及び第3変化部cについて夫々第1合格エリアA、第2合格エリアB、及び第3合格エリアC内に一部が存在したとしても、所定時間内の許容減速度の上限を超えて外れているとき、又は下限未満に外れているときには、前記表示手段51を介して「ABS NG」の表示を行なう。
ここで、波形に影響する要因としては、カプラ外れ、ブレーキセンサ異常、配管詰まり、エアかみ、パッドの当たり不良、各ローラ5,6,22,23と車輪R,Fとの滑り、及び、ブレーキをかける強さやタイミングといった操作ミス等を挙げることができる。
なお、第1変化部a、第2変化部b、及び第3変化部cにおいては、各変化部のピーク値が夫々第1合格エリアA、第2合格エリアB、及び第3合格エリアC内にあるか否かで前輪ABSの作動の良否判定を行なうことも考えられるが、波形によってはなだらかな曲線を描いてピーク値を採取することが困難な場合がある。こうした場合には、前輪ABSの作動が良と判定されるべきものであっても、ピーク値が採取できないために不良とされてしまうことが考えられる。そこで、ピーク値ではなく、波形の各変化部によって良否を判定することで正確な良否判定を行うことができる。
同時に、演算手段49においては、前輪F側の減速度(加速度)の波形における第1変化部aを構成する値と後輪R側の減速度(加速度)の波形における第1変化部dを構成する値との差(本実施形態においては前輪側第1変化部aに対する後輪側第1変化部dの割合)を算出し、判定手段50においてはここで算出された値が所定範囲I(前輪側第1変化部aの65%〜15%)内にあるか否かでCBSの作動の良否判定を行なう。ここで指定された所定範囲Iは、前輪Fに対して後輪Rが連動されるタイミング及び強さから最も適したブレーキの連動配分となるように考慮して定められたものである。そして、後輪側第1変化部dが、所定範囲I内にあれば前記表示手段51を介して「CBS OK」の表示を行ない、所定範囲Iから外れている場合には前記表示手段51を介して「CBS NG」の表示を行なう。
このように、本実施形態においては、前輪F側の減速度(加速度)の波形のうち、第1変化部a、第2変化部b、及び第3変化部cを採取して前輪ABSの作動の良否を判定し、前輪F側の減速度(加速度)の波形のうち第1変化部aと後輪R側の減速度(加速度)の波形のうち第1変化部dとを採取してCBSの作動の良否を判定するので、前輪ABS・CBS検査が開始されて比較的初期の段階で検査を終了させることができ、検査時間を飛躍的に短縮させることができる。
また、前輪F側の減速度(加速度)の波形においては、第3変化部cの後にも波形の変化が現れるが、周知のABS特性により、通常第3変化部cの後に現れる波形の変化は比較的加速と減速との変動が小さい。それに対して、ABS作動初期の第1変化部a、第2変化部b、及び第3変化部cの現れる時期は、最も車速変化が大きいので、ABSの作動不良が明確に現れる。これによって、本実施形態においては、前輪F側の減速度(加速度)の変化が比較的大きく見られる第1変化部a、第2変化部b、及び第3変化部cに基づいて良否を判定することで、高い判定精度を維持しつつ判定時間の短縮を実現したものである。
続いて、後輪ABS・CBS検査が行なわれる。後輪ABS・CBS検査においては、前輪ABS・CBS検査に継続して二輪自動車のエンジンによる駆動を維持させ、作業者がアクセルを調整して所定の検査開始速度(例えば60km/h)に合わせる。このとき、二輪自動車のエンジンによる駆動を維持することで、各支持ローラ5、22、6、23の回転が維持され、所定の検査開始速度までの速度上昇時間を飛躍的に短縮させることができる。
そして、車速が所定の検査開始速度になったとき、作業者は二輪自動車のアクセルを戻してギヤをニュートラルの状態にすると同時に、ブレーキペダルを踏んで後輪ブレーキを全入力する。これにより二輪自動車は後輪Rに急ブレーキが掛けられた状態となる。検査装置1においては、図2に示すように、第1の後輪支持ローラ5及び第1の前輪支持ローラ22の回転慣性力が第2の後輪支持ローラ6及び第2の前輪支持ローラ23の回転慣性力より大きくしてあるので、後輪ブレーキが全入力されたことにより、後輪Rと第1の後輪支持ローラ5との間にスリップ現象が発生し後輪ABSが作動を開始する。一方、第2の後輪支持ローラ6は後輪Rの回転挙動に追従する。なお、第1の前輪支持ローラ22は、前記連結手段39によって第1の後輪支持ローラ5と同期して回転されており、前輪Fに対しても路面の状況が再現される。また、二輪自動車の後輪ブレーキが入力されたことによってCBSが作動し前輪ブレーキが作動する。更に、二輪自動車の前輪Fは後輪Rに追従してABSが作動する。このときにも、第2の前輪支持ローラ23は前輪Fの回転挙動に追従する。
検査手段48においては、前輪ABS・CBS検査と同様に、常時第2の後輪支持ローラ6と第2の前輪支持ローラ23との回転速度を第1ロータリーエンコーダ20と第2ロータリーエンコーダ31とによって測定し、測定した値から演算手段49によって後輪R側と前輪F側との夫々の減速度(加速度)を算出する処理を行なっている。このとき得られた減速度(加速度)に対応する波形を図5に示す。図5において、一点鎖線により示す波形は後輪R側、即ち第2の後輪支持ローラ6の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形であり、実線により示す波形は前輪F側、即ち第2の前輪支持ローラ23の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形である。本実施形態においては減速度(加速度)の波形として説明するが、減速度をトルクに置き換えても同一の波形を得ることができることは前述した通りである。
図5に示すように、第2の後輪支持ローラ6の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形においては、後輪ブレーキが全入力されたと同時に上昇(減速)し、第1変化部eを介して下降(加速)する。第1変化部eはABSが作動して後輪ブレーキが初回OFFの状態となった時点の第2の後輪支持ローラ6の回転速度の変化に対応し、それに続く下降は、第1の後輪支持ローラ5の回転慣性が後輪Rを介して第2の後輪支持ローラ6に伝達されたものである。
そして、再びブレーキがONの状態となると第2変化部kが現れ、第2の後輪支持ローラ6が減速する。次いで、再びブレーキがOFFの状態となると第3変化部gが現れ、第2の後輪支持ローラ6が加速する。その後、ABSの作動により、後輪ブレーキはON・OFFが数回繰り返される。
第2の前輪支持ローラ23の回転数に基づいて算出された減速度(加速度)の波形は、CBSが作動して前輪ブレーキが後輪ブレーキに連動し、前輪F側のABSが作動することによって第2の前輪支持ローラ23の回転速度の変化に応じたものとなる。そして、ABSが作動して前輪ブレーキが初回OFFの状態となった時点の第1変化部hが現れる。
そして、検査手段48の判定手段50においては、前述した前輪ABS・CBS検査と同様にして良否判定が行なわれる。即ち、判定手段50は、第1変化部e、第2変化部k、及び第3変化部gが夫々第1合格エリアE、第2合格エリアK、及び第3合格エリアG内にあるか否かで前輪ABSの作動の良否判定を行ない、全ての変化部e、k、gが、夫々の合格エリアE、K、G内にあるとき、前記表示手段51を介して「ABS OK」の表示を行ない、何れか一つでも合格エリアから外れている場合には前記表示手段51を介して「ABS NG」の表示を行なう。このとき更に、第1変化部e、第2変化部k、及び第3変化部gについて夫々第1合格エリアE、第2合格エリアK、及び第3合格エリアG内に一部が存在したとしても、所定時間内の許容減速度の上限を超えて外れているとき、又は下限未満に外れているときには、前記表示手段51を介して「ABS NG」の表示を行なう。
なお、第1変化部e、第2変化部k、及び第3変化部gにおいては、各変化部のピーク値が夫々第1合格エリアE、第2合格エリアK、及び第3合格エリアG内にあるか否かで前輪ABSの作動の良否判定を行なうことも考えられるが、波形によってはなだらかな曲線を描いてピーク値を採取することが困難な場合がある。こうした場合には、前輪ABSの作動が良と判定されるべきものであっても、ピーク値が採取できないために不良とされてしまうことが考えられる。そこで、ピーク値ではなく、波形の各変化部によって良否を判定することで判定精度を向上させることができる。
同時に、演算手段49においては、後輪R側の減速度(加速度)の波形における第1変化部eを構成する値と前輪F側の減速度(加速度)の波形における第1変化部hを構成する値との差(本実施形態においては後輪側第1変化部eに対する前輪側第1変化部hの割合)を算出し、判定手段50においてはここで算出された値が所定範囲J(後輪側第1変化部eの100%〜35%)内にあるか否かでCBSの作動の良否判定を行なう。
ところで、検査対象とする二輪自動車によっては、CBSの作動設定において、後輪ブレーキが全入力された際に連動する前輪ブレーキの制動力が後輪ブレーキよりも小さく設定されているものがある。このような二輪自動車に対して前述の後輪ABS・CBS検査を行った場合、後輪Rから連結シャフト42を通じて伝達される制動力を前輪Fの第2ロータリーエンコーダ31が感知してしまい、前輪ブレーキによる実際の作動が精度良く検知できないことが考えられる。即ち、全ての変化部e、k、gが、夫々の合格エリアE、K、G内にあり(ABSについての良判定)、前輪側第1変化部hが所定範囲J内にあった(CBSについての良判定)としても、前輪ブレーキによる実際の作動によるものではなく、前輪側第1変化部hに示される波形が後輪Rから連結シャフト42を通じて前輪Fに伝達される制動力の影響によるものであることも考えられる。
そこで、判定手段50においては、上記各変化部の波形(第1の良否判定要素)による良否判定に加えて、温度センサ46の測定データによって得られた前輪Fのブレーキディスク43の温度変化(第2の良否判定要素)に基づくCBSの作動の良否判定をも行なう。
即ち、判定手段50は、温度センサ46から入力される前輪ブレーキ作動開始前と前輪ブレーキ作動後との温度の差分(ΔT)を算出し、このΔTが許容値に達したか否かでCBSの作動の良否判定を行なう。こうすることにより、上記各変化部の波形が前輪ブレーキによる実際の作動によるものか否かが明確になり、判定精度を飛躍的に向上させることができる。
そして、前輪側第1変化部hが、所定範囲J内にあり、且つ、ΔTが許容値に達すれば前記表示手段51を介して「CBS OK」の表示を行ない、所定範囲Jから外れている場合、或いは、ΔTが許容値に達しない場合には前記表示手段51を介して「CBS NG」の表示を行なう。
なお、本実施形態においては、前輪ブレーキと後輪ブレーキとの夫々にABSが作動し、しかも、前輪ブレーキのみの入力でCBSが作動して後輪ブレーキが連動し、後輪ブレーキのみの入力でCBSが作動して前輪ブレーキが連動する二輪自動車を検査対象とした。それ以外に、前輪ブレーキと後輪ブレーキとの夫々にABSが作動し、前輪ブレーキのみの入力ではCBSは作動せず、後輪ブレーキのみの入力でCBSが作動して前輪ブレーキが連動する二輪自動車を検査対象とすることができる。この二輪自動車を検査する場合には、前述した前輪ABS・CBS検査においてCBSの判定を省略することで容易に対応することができる。
また、本実施形態では、CBSの作動設定において、後輪ブレーキが全入力された際に連動する前輪ブレーキの制動力が後輪ブレーキよりも小さく設定されている二輪自動車を検査対象とした場合を挙げた。一方、後輪ブレーキと前輪ブレーキとの連動時の制動力配分は検査対象とする二輪自動車の種類に応じて設定されるものである。従って、図1に示すように、後輪Rに設けられているブレーキ作動部(図示せず)の一部の温度を測定する他の温度センサ47を後輪用機台3に設けておき、前輪ブレーキが全入力された際に連動する後輪ブレーキの制動力が前輪ブレーキよりも小さく設定されている場合に備えることができる。そして、この場合にも前述したものと同様に、判定手段50によって、他の温度センサ47から入力される前輪ブレーキ作動開始前と前輪ブレーキ作動後との温度の差分(ΔT)を算出し、このΔTが許容値に達したか否かでCBSの作動の良否判定を行なうことで、判定精度を飛躍的に向上させることができる。
また、本実施形態では、前輪ABS・CBS検査及び後輪ABS・CBS検査において二輪自動車のエンジンにより後輪Rを回転駆動させたが、それに限らず、例えば、作業者が二輪自動車のギヤをニュートラルの状態として第2の後輪支持ローラ6をモータ18等によって回転駆動させてもよい。この場合には、第2の後輪支持ローラ6の駆動により所定の検査開始速度(例えば60km/h)になったとき、作業者がブレーキを入力する直前にクラッチ17をOFFとする。
また、図1及び図2を参照して、本実施形態の検査装置1は、モータ36によってボール螺子37を回転させるだけで前輪用機台を適切な位置に移動させることができるので、二輪自動車の機種によって前輪Fと後輪Rとの間隔距離が異なる場合であっても容易に対応させることができる。
更に、モータ15は通常使用することはないが、二輪自動車の機種によってはセルモータがなく、キック及び押しがけでしかエンジン始動できない場合には、クラッチ12をONとしてモータ15によって、第2の後輪支持ローラ6及び後輪Rを介してエンジンを始動させることができるようになっている。
また、本実施形態の検査装置1においては、図示しないが、前輪及び後輪の走行状態を安定させる補助ローラや、検査する二輪自動車の排ガスを屋外に排出するダクト等が設けられている。
本発明の一実施形態の装置構成を示す説明的平面図。 図1に示す装置の要部を示す説明的側面図。 本実施形態の装置構成を模式的に示すブロック図。 判定手段において用いられる波形を示す線図。 判定手段において用いられる波形を示す線図。
符号の説明
1…検査装置、F…前輪、R…後輪、5…第1の後輪支持ローラ(支持ローラ)、6…第2の後輪支持ローラ(支持ローラ)、20…第1ロータリーエンコーダ(第1測定手段)、22…第1の前輪支持ローラ(支持ローラ)、23…第2の前輪支持ローラ(支持ローラ)、31…第2ロータリーエンコーダ(第1測定手段)、39…連結手段、45…ブレーキ作動部、46,47…温度センサ(第2測定手段)、50…判定手段。

Claims (2)

  1. 二輪自動車に搭載されたアンチロックブレーキシステム及び前後輪連動ブレーキシステムの作動を検査する二輪自動車のブレーキシステム検査装置であって、
    二輪自動車の前輪を支持すべく互いに軸線が平行に配置された回転自在の一対の支持ローラと、
    二輪自動車の後輪を支持すべく互いに軸線が平行に配置された回転自在の一対の支持ローラと、
    前輪を支持する少なくとも一方の支持ローラと後輪を支持する少なくとも一方の支持ローラとを連結して同期回転させる連結手段と、
    二輪自動車の各々の車輪にアンチロックブレーキシステムが作動するとき、該車輪を支持する支持ローラを介して該車輪の回転速度を測定する第1測定手段と、
    前輪に備えるブレーキ作動部と後輪に備えるブレーキ作動部とのうち少なくとも一方のブレーキ作動部の少なくとも一部の温度を測定する第2測定手段と、
    第1測定手段の測定データに基づく第1の良否判定要素と第2測定手段の測定データに基づき該第1の良否判定要素がブレーキ作動部の作動によるものか否かを確認するための第2の良否判定要素とを用いてブレーキシステムの良否を判定する判定手段とを備えることを特徴とする二輪自動車のブレーキシステム検査装置。
  2. 二輪自動車に搭載されたアンチロックブレーキシステム及び前後輪連動ブレーキシステムの作動を検査する二輪自動車のブレーキシステム検査方法であって、
    一対の前輪支持ローラに支持された二輪自動車の前輪を回転させると共に、前輪支持ローラと同期回転する一対の後輪支持ローラに支持された二輪自動車の後輪を回転させて、一方の車輪のブレーキを全入力することによりアンチロックブレーキシステム及び前後輪連動ブレーキシステムを作動させるブレーキ入力工程と、
    該ブレーキ入力工程における前輪の回転速度と後輪の回転速度とを夫々の支持ローラを介して測定する第1測定工程と、
    該ブレーキ入力工程における前輪に備えるブレーキ作動部と後輪に備えるブレーキ作動部とのうち少なくとも一方のブレーキ作動部の少なくとも一部の温度を測定する第2測定工程と、
    第1測定手段の測定データに基づく第1の良否判定要素と第2測定手段の測定データに基づき該第1の良否判定要素がブレーキ作動部の作動によるものか否かを確認するための第2の良否判定要素とを用いてブレーキシステムの良否を判定する判定工程とを備えることを特徴とする二輪自動車のブレーキシステム検査方法。
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