JP4490603B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤに関するものであり、さらに詳しくは、特定の共役ジエン系重合体含有ゴム組成物を、ビードフィラー及びサイドウォール部に配設されたゴム補強層(以下、サイド補強層ということがある)の少なくとも一方に用いてなる空気入りタイヤ、特にランフラット耐久性が改良された空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイヤにおいて、サイドウォール部の剛性を向上させるために、ゴム組成物単体、あるいはゴム組成物と繊維などとの複合体によるサイド補強層が配設されている。しかしながら、これらに用いられているゴム組成物においては、特に、タイヤのパンクなどによりタイヤの内部圧力(以下、内圧と称す。)が低下した状態で走行する、いわゆるランフラット走行時のように、温度が200℃以上にもなると、加硫などによって形成された架橋部や、ゴム成分を構成するポリマー自体が切断される傾向がある。このため、ゴム組成物の弾性率が低下することにより、タイヤのたわみが増加して発熱が進み、サイド補強層の破壊限界が低下し、その結果、タイヤは比較的早期に故障に至るという問題があった。
【0003】
このような故障に至る過程をできるだけ遅くする手段の一つとして、配合を変えることにより使用するゴム組成物の弾性率をできるだけ大きくし、或いはその損失正接(tanδ)をできるだけ小さく設定して、ゴム組成物自体の発熱を抑制する方法が知られているが、従来の配合面からのアプローチには限界があり、ランフラット走行において、一定以上の耐久距離を確保するには、サイド補強層及びビードフィラーを増量するしかなく、その結果、通常走行時において、乗心地の悪化や騒音レベルの悪化、重量の増加などから好ましくない事態を招来しているのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、ビードフィラーやサイドウォール部補強層に用いられるゴム成分を工夫することにより、通常走行時における良好な乗心地性は維持したままで、転がり抵抗とランフラット耐久性に優れる空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定共役ジエン系重合体と、特定の化合物と、補強性無機充填剤とを含むゴム組成物を、ビードフィラー及びサイド補強層の少なくとも一方に用いてなる空気入りタイヤは、特にランフラット走行において耐久性が著しく向上することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、左右一対のビードコアと、該ビードコアのタイヤ半径方向外側に配設されたビードフィラーとを具備してなり、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物は、(A)重量平均分子量(Mw)が20万〜90万であると共に、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であり、かつ分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(B)補強性無機充填剤とを配合してなることを特徴とする空気入りタイヤを提供するものである。
また本発明は、カーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側に配置されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部と、このサイドウォール部に配設されたゴム補強層とを具備してなり、前記サイドウォール部に配設されたゴム補強層を構成するゴム組成物は、(A)重量平均分子量(Mw)が20万〜90万であると共に、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であり、かつ分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(B)補強性無機充填剤とを配合してなることを特徴とする空気入りタイヤを提供するものである。
さらに本発明は、左右一対のビードコアと、該ビードコアのタイヤ半径方向外側に配設されたビードフィラーとカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側に配置されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部と、このサイドウォール部に配設されたゴム補強層とを具備してなり、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物及びサイドウォール部に配設されたゴム補強層を構成するゴム組成物は、(A)重量平均分子量(Mw)が20万〜90万であると共に、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であり、かつ分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(B)補強性無機充填剤とを配合してなることを特徴とする空気入りタイヤをも提供するものである。
また本発明は、前記ゴム組成物が、(C)一般式(I)
R1−S−S−A−S−S−R2 ・・・(I)
(式中Aは炭素数2〜10のアルキレン基、R1及びR2は、それぞれ独立に窒素原子を含む一価の有機基を示す。)で表される化合物、シトラコンイミド化合物及びアクリレート類化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を配合してなることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)が上記特定範囲に限定され、かつ分子中にアルコキシシリル基を含有する共役ジエン系重合体を含むゴム組成物をビードフィラー及びサイド補強層の少なくとも一方に用いたタイヤでは、該ゴム組成物の温度上昇による弾性率の低下を抑制する効果が著しいので、ランフラット走行によるタイヤのたわみの増加を抑制でき、ランフラット耐久性を向上させることができる。
本発明において、前記重合体の重量平均分子量(Mw)は20万〜90万であることが必要である。20万未満ではゴム組成物の引張り特性、転がり抵抗性が劣り、90万を超えると加工性が劣る傾向がある。この点から、Mwは30万〜80万が好ましく、特に30万〜70万が好ましい。
【0008】
さらに、前記重合体の分子量分布(Mw/Mn)については1〜4であることが必要である。発熱性の低下、及び150℃以上の温度領域での弾性率維持が困難となる傾向がある。この点から、Mw/Mnは1〜3が好ましい。
本発明における共役ジエン系重合体は、アルコキシシリル基が導入されたものであり、共役ジエン単独重合体、共役ジエン共重合体又は共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が好ましい。また、特に分岐構造を有するものが好ましい。
ここで、共役ジエン単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられ、中でも1,3−ブタジエンが好ましい。また、共役ジエン単量体との共重合に用いられる芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン,α−メチルスチレン,1−ビニルナフタレン,3−ビニルトルエン,エチルビニルベンゼン,ジビニルベンゼン,4−シクロヘキシルスチレン,2,2,6−トリルスチレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましい。
【0009】
上記共役ジエン系重合体は種々の方法で製造することができ、重合方式としては、バッチ重合方式または連続重合方式のいずれでもよい。好ましい製造方法を挙げれば次のようなものである。
すなわち、共役ジエンを含む単量体を不活性溶媒、好ましくは炭化水素溶媒中で、有機金属などの開始剤、好ましくは有機リチウム化合物開始剤の存在下で重合して得られる。上記炭化水素溶媒としては特に制限はないが、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどが上げられ、好ましい溶媒は、シクロヘキサン及びn−ヘキサンである。これらの炭化水素溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上混合してもよい。
前記開始剤として用いられる有機リチウムとしては、少なくとも1個のリチウム原子が結合されかつ炭素数2〜20の炭化水素リチウム化合物が好ましく、例えば、n−ブチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、tert−オクチルリチウム、フェニルリチウムなどであり、好ましいものはn−ブチルリチウムである。これらの有機リチウム開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
また、所望により、ジテトラヒドロフリルプロパンなどビニル結合量調整剤やランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
この重合反応における温度は、通常−80〜150℃、好ましくは−20〜100℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つ十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0010】
本発明における共役ジエン系重合体は、分子中にアルコキシシリル基を含むことが必要である。この分子鎖中にアルコキシシリル基を導入した変性重合体は、温度上昇による弾性率の低下を抑制すると共に、シリカなどの補強性無機充填剤を配合したゴム組成物における低発熱性を効果的に改良することもできるので好ましく、特に多官能変性剤を用いることにより得られる分岐構造を有するものが好ましい。また、アルコキシシリル基と共に窒素原子やスズ原子を導入した変性重合体は、補強性充填剤として、前記無機充填剤と共にカーボンブラックを用いた場合に特に有効に適用できる。
上記のアルコキシシリル基を導入した変性重合体は公知を含む方法により製造され、通常、有機リチウム開始剤によって重合を開始させ、リチウム活性末端を有する重合体の溶液に各種変性剤を添加することによって得られる。このような変性剤としては、例えば、テトラエトキシシラン,エポキシ基含有アルコキシシラン化合物,アミノ基含有アルコキシシラン化合物,イミノ基含有アルコキシシラン化合物などのアルコキシシラン化合物がある。
【0011】
具体的には、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン,2−グリシドキシエチルトリエトキリシシラン,(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン,(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランなどが挙げられる。
【0012】
また、アミノ基含有アルコキシシラン化合物としては、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン,3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン;3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン,3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン,2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン,2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン,3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン,3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランなどのジ置換アミノ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン,3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン,(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン,(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン,2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン,2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン,3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン,3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シラン,3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン,3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン,3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン,3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン,1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール,1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール,3−〔10−(トリエトキシシリル)デシル〕−4−オキサゾリンなどの環状アミノ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物が挙げれる。
【0013】
さらに、イミノ基含有アルコキシシラン化合物としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどが挙げられる。
【0014】
上記変性重合体は、例えばジエチルアミンのような2級アミノ化合物或いはヘキサメチレンイミンのようなイミン化合物と有機リチウム化合物とから得られるリチウムアミド開始剤を用いて重合させて得られる活性末端を有する重合体の溶液に、上記の如きアルコキシシラン化合物を添加することによっても得ることができる。
さらに、アルコキシシリル基を含む単量体の存在下で、有機リチウム開始剤又はリチウムアミド開始剤により共役ジエンを重合させることによっても得ることができる。
上記の如く、本発明における共役ジエン系重合体は、分子中にアルコキシシリル基を含むことを必要とするが、さらにアミノ基,イミノ基,エポキシ基またはスズ原子を含むものでもよい。
本発明において、前記分子中にアルコキシシリル基を含む共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体総量の50重量%以上であることが好ましい。また、本発明における共役ジエン系重合体としてはポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムが好ましく、特にポリブタジエンが好ましい。
【0015】
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、ビードフィラー又はサイドウォール部のゴム補強層のゴム成分としての上記共役ジエン系重合体は、ゴム成分総量の50重量%以上含まれていることが好ましい。50重量%未満では、温度上昇によるゴム弾性率の低下が抑制できないことがある。この点から、前記重合体は60重量%以上、さらに80重量%以上含まれることが好ましい。
本発明におけるゴム組成物において、前記重合体と混合され得る他のゴム成分は特に限定されるものではないが、例えば天然ゴム,ポリイソプレン合成ゴム(IR);シス−1,4−ポリブタジエンゴム(BR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),クロロプレンゴム(CR),ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。これらのゴムは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
次に、本発明におけるゴム組成物においては、(B)成分として補強性無機充填剤を配合することが必要とされる。
また、該補強性無機充填剤は、多孔質無機充填剤であることが好ましく、さらに、下記一般式
mM1・xSiOy・zH2O
(式中、M1は、Al、Mg、Ti及びCaの中から選ばれる少なくとも一種類の金属、金属酸化物又は金属水酸化物であり、mは1〜5、xは0〜10、yは2〜5、zは0〜10の整数である。)で表される化合物からなることが好ましい。例えば、アルミナ(Al2O3),水酸化アルミニウム[Al(OH)3],水酸化マグネシウム[Mg(OH)2],酸化マグネシウムMgO2,タルク(3MgO・4SiO2・H2O),アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O),チタン白(TiO2),チタン黒(TiO2n−1:nは正の整数),酸化カルシウム(CaO),水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3),クレー(Al2O3・2SiO2 ),カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O),パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O),ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O),ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5,Al4・3SiO4・5H2O等),ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4,Mg2SiO3等),ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等),ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)及びケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)等が挙げられる。なお、水酸化アルミニウムには、アルミナ水和物(Al2O3・3H2O)も含まれる。これらの無機化合物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、特にシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー及びゼオライトが好ましい。また、多孔質無機充填剤のBET式窒素吸着比表面積は50m2/g〜400m2/gであることが好ましい。
上記補強性無機充填剤の配合量は、ゴム100重量部当たり10〜85重量部であることが好ましい。また,補強性無機充填剤とカーボンブラックとを併用することが好ましい。
【0017】
さらに、本発明で使用するゴム組成物においては、耐熱性を向上させるために、(C)成分として、一般式(I)
R1−S−S−A−S−S−R2 ・・・(I)
(式中Aは炭素数2〜10のアルキレン基、R1及びR2は、それぞれ独立に窒素原子を含む一価の有機基を示す。)で表される化合物,シトラコンイミド化合物及びアクリレート類化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を配合することが好ましい。
【0018】
以下、これら各化合物についての詳細を説明する。
まず、上記一般式(I)
R1−S−S−A−S−S−R2 ・・・(I)
で表される化合物について説明する。
この一般式(I)において、Aは炭素数2〜10のアルキレン基を示し、このアルキレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状アルキレン基が好ましい。該炭素数2〜10の直鎖状アルキレン基の例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などが挙げられる。これらの中で、特に効果の点から、ヘキサメチレン基が好適である。
一方、R1及びR2は、それぞれ窒素原子を含む一価の有機基を示し、好ましくは、芳香環を少なくとも一つ含み、かつ窒素原子を含む一価の有機基であり、特に炭素原子がジチオ基に結合した=N−C(=S)−で表される結合基を含むものが好適である。R1及びR2は、たがいに同一でも異なっていてもよいが、製造の容易さなどの点から、同一であるのが好ましい。
この一般式(I)で表される化合物としては、例えば一般式(I−a)
【0019】
【化1】
【0020】
で表されるα,ω−ビス(N,N’−ジヒドロカルビルチオカルバモイルジチオ)アルカンを好ましく挙げることができる。
上記一般式(I−a)において、R3〜R6は、それぞれアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示すが、R3及びR4の少なくとも一方、並びにR5及びR6の少なくとも一方がアリール基又はアラルキル基であり、nは2〜10の整数を示す。
【0021】
ここで、アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、また、直鎖状、枝分かれ状及び環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、また、環上には、低級アルキル基などの適当な置換基を有していてもよい。このようなアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが挙げられる。アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、また、環上には、低級アルキル基などの適当な置換基を有していてもよい。このようなアラルキル基の例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基、ナフチルメチル基、(メチルナフチル)メチル基、(ジメチルナフチル)メチル基、ナフチルエチル基、(メチルナフチル)エチル基、(ジメチルナフチル)エチル基などが挙げられる。
【0022】
このR3〜R6としては、全てが上記アリール基又はアラルキル基であるのが好ましく、特に全てがベンジル基であるのが、熱老化防止及び製造の容易さなどの点から好適である。このような化合物の例としては、1,2−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)エタン;1,3−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)プロパン;1,4−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ブタン;1,5−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ペンタン;1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン;1,7−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘプタン;1,8−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)オクタン;1,9−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ノナン;1,10−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)デカンを挙げることができる。これらの中で、効果の点から、特に、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンが好適である。
【0023】
この一般式(I)で表される化合物は、ゴム組成物の耐熱性を向上させる効果を発揮するが、その作用は、高温下において架橋切断と平行してより耐熱安定性の高いモノスルフィド架橋を効率的に生成することに起因するものと考えられる。
また、本発明で使用するゴム組成物において用いられる上記の(C)成分としてのシトラコンイミド化合物としては、効果の点から、ビスシトラコンイミド類が好ましく、該ビスシトラコンイミド類としては、例えば一般式(II)
【0024】
【化2】
【0025】
で表される化合物を好ましく挙げることができる。
この一般式(II)において、Arはアリーレン基を示し、このアリーレン基としては、環上に置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリーレン基が好ましい。上記置換基としては、加硫に影響を及ぼすことがなく、かつ170℃以上の高温で安定な基であればよく特に制限されず、例えば低級のアルキル基やアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などを挙げることができる。該アリーレン基としては、フェニレン基及びナフチレン基などが挙げられ、特にフェニレン基が好適である。
一方、Q1及びQ2は、それぞれ炭素数1〜4のアルキレン基を示し、このアルキレン基は直鎖状、枝分かれ状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基が挙げられる。該Q1及びQ2は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造の容易さなどの点から、同一であるのが好ましい。
上記一般式(II)で表される化合物の例としては、1,2−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;1,4−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;1,6−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;2,3−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン;2,4−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン;2,5−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン、2,6−ビス(シトラコンイミドメチル)トルエン、及びこれらに対応するビス(シトラコンイミドエチル)化合物などを挙げることができる。これらの中で、効果の点から、特に1,6−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンが好適である。
【0026】
この(C)成分のシトラコンイミド化合物は、ゴム組成物の耐熱性を向上させる効果を発揮するが、その作用は高温での架橋切断時に発生する主鎖内の共役C=Cに反応し、C−C架橋を早期に生成することに起因するものと考えられる。さらに、(C)成分としてのアクリレート類としては、効果の点から、多価アルコールとアクリル酸との多価エステル、又は多価アルコールとアクリル酸及び他のカルボン酸との多価エステルが好ましく、該多価エステルとしては、例えば一般式(III)
【0027】
【化3】
【0028】
で表される化合物を好ましく挙げることができる。
この一般式(III)において、Aは(p+q)価の多価アルコールの水酸基を除いた残基を示し、Rは水素原子又はアクリロイル基以外のアシル基を示す。このアシル基としては特に制限はないが、飽和若しくは不飽和の炭素数2〜20の脂肪族アシル基を好ましく挙げることができる。pは2〜10の整数及びqは0〜8の整数を示すが、p+q=2〜10である。
この一般式(III)で表される化合物の中で、pが3〜6の整数及びqが0〜3の整数であり、かつp+q=3〜6であるものが、効果の点で好ましい。
上記一般式(III)で表されるアクリレート類の形成に用いられる、一般式(IV)
A−(OH)p+q …(IV)
(式中、A及びp,qは前記と同じである。)
で表される多価アルコールとしては、三〜六価のアルコールが好ましく、このようなものとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
前記一般式(III)で表される化合物としては、効果の点から、一分子中にアクリロイル基を3〜6個有するジペンタエリスリトールとアクリル酸との多価エステル及び一分子中にアクリロイル基3〜5個を有するアシル基変性ジペンタエリスリトールアクリレートが好適である。
このような化合物は、以下に示すように市販品として入手可能である。
例えば、式
【0029】
【化4】
a=5,b=1の化合物とa=6,b=0の化合物との混合物)
で表される化合物は、「KAYARAD DPHA」〔商標、日本化薬(株)製)として、式
【0030】
【化5】
(R7はアルキノイル(Alkynoyl)基を示す。)
で表される化合物は、c=5,d=1の場合「KAYARAD D−310」〔商標、日本化薬(株)製〕として、c=3,d=3の場合「KAYARAD D−330」〔商標、日本化薬(株)製〕として入手することができる。
この(C)成分のアクリレート類は、ゴム組成物の耐熱性を向上させる効果を発揮するが、その作用は高温での架橋切断時に発生する主鎖内の共役C=Cに反応し、C−C架橋を効果的に生成することに起因するものと考えられる。
【0031】
また、(C)成分の配合量は、前記(A)成分のゴム成分100重量部に対し、好ましくは0.5〜20重量部の範囲で選定される。この量が0.5重量部未満では熱老化防止の効果が充分に得られず、所望の耐熱性向上効果が発揮されないおそれがある。一方、20重量部を超えると、その量の割には効果の向上はあまり認められず、むしろ経済的に不利となる上、得られるゴム組成物の他の物性が低下する原因となる。熱老化防止効果、ゴム組成物の他の物性及び経済性などを考慮すると、この(C)成分のより好ましい配合量は、0.7〜15重量部,特に好ましくは1.0〜10重量部の範囲である。
【0032】
本発明においては、所望により、上記(C)成分の化合物と共に、他の熱老化防止剤を適宜併用することができる。この他の熱老化防止剤としては、例えば1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物や、一分子中にエステル基を2個以上有する化合物などが挙げられる。
ここで、一分子中にエステル基を2個以上有する化合物としては、特に制限はないが、アクリレート又はメタクリレート、特に、多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸との多価エステルが好ましい。
多価アルコールとしては、エチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,ペンタンジオール,ヘキサンジオールなどのアルキレングリコール及びその多量体、さらには、これらのメチロール置換体,ペンタエリスリトール類,多価アルコールのアルキレンオキシド付加物,アルコール性水酸基を2つ以上有するポリエステル類又オリゴエステル類などが挙げられ、その中でも特に好ましいのは、アルキレングリコールのメチロール置換体及びその多量体である。
【0033】
一分子中に2個以上のエステル基を有する化合物の具体例としては、1,3−ブチレングリコールジアクリレート;1,5−ペンタンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;ポリプロピレングリコールジアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;オリゴエステルポリアクリレート;ジプロピレングリコールジメタクリレート;トリメチロールエタントリメタクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート;ジペンタエリスリトールトリメタクリレートなどが挙げられるが、その中でも特に好ましいのは、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート;ジペンタエリスリトールトリメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートである。
【0034】
前記1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・二水和物は、ゴム成分を構成するポリマー分子間の架橋切断を抑制する作用を有する。一方、前記一分子中に2個以上のエステル基を有する化合物の作用については、次のように考えられる。ゴム組成物の温度が170℃以上になると、ゴムの劣化が始まり、架橋点やポリマー鎖の切断が起こり始めるが、一方で、該化合物によるC−C架橋も進むため、弾性率の低下が抑えられ、その結果、高温下でも発熱が抑制される。
本発明で使用するゴム組成物には、前記の各成分の他に、通常ゴム業界で用いられる硫黄、過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、無機充填材などの各種配合剤を、適宜含有させることができる。また、本発明で使用するゴム組成物は、さらに、各種材質の粒子、繊維、布などとの複合体としてもよい。
【0035】
本発明のゴム組成物は、耐熱性、耐久性に優れており、特にタイヤ用ビードフィラーゴムとして、またタイヤ用サイドウォール部補強ゴムとして好適である。本発明の空気入りタイヤは、ビードフィラー及びサイドウォール部に配設されたゴム補強層の少なくとも一方に前記ゴム組成物を適用し、常法により製造することができる。
【0036】
次に、本発明の空気入りタイヤについて、添付図面に従って説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの一例の左半の部分断面図であって、該空気入りタイヤ1は、左右一対のリング状のビードコア4と、該ビードコア4のタイヤ半径方向外側に配設されたビードフィラー5と、並列された複数のコードが被覆ゴム中に埋設されてなるプライ少なくとも1枚からなるカーカス層2と、該カーカス層2のタイヤ半径方向外側に配置されたベルト層3と、該ベルト層3のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部8と、該トレッド部8の左右に配置された一対のサイドウォール部6と、このサイドウォール部6に配設されたゴム補強層7を具備している。
【0037】
カーカス層2は折り返しカーカスプライ2a及びダウンカーカスプライ2bを有し、折り返しカーカスプライ2aの両端部は、ビードコア4の周りに折り返され、折り返し端部を形成している。ビードフィラー5は、折り返しカーカスプライ2aとその折り返し端部との間に位置しており、また、ダウンカーカスプライ2bは、サイドウォール部6と折り返しカーカスプライ2aの折り返し端部との間に配置されている。ゴム補強層7は、折り返しカーカスプライ2aのサイドウォール部の内側外周方向面に配置されている。サイドウォール部6を補強するこのゴム補強層7のゴムは有機繊維や無機粒子などとの複合体であってもよく、また、その断面形状はサイド補強の機能を有するものであれば特に限定されない。
【0038】
本発明の空気入りタイヤにおいては、上記のビードフィラー5及びゴム補強層7の少なくとも一方が、前述の共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を用いて形成されている。
本発明の空気入りタイヤは、通常走行時において、弾性率の増加による乗心地性、騒音レベルの悪化は実質的に起こらない。また、タイヤのパンクなどによる大きな変形により、前記ゴム組成物の温度が170℃以上になっても弾性率の低下が抑えられるため、高温下での発熱が抑制される。
したがって、このゴム組成物をビードコアやサイドウォール部のゴム補強層に用いた本発明の空気入りタイヤは、特にランフラット走行において、耐久性が大幅に向上し、その走行距離を著しく伸ばすことができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各種測定は下記の方法に従い求めた。
(1)重合体のミクロ構造
共役ジエンユニットにおけるビニル結合(1,2−結合)量は、赤外法(モレロ法)によって求めた。
(2)動的貯蔵弾性率(E’)などの特性
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。この試料について、上島製作所(株)製スペクトロメータを用い、チャック間距離10mm、初期歪み200マイクロメ−トル(ミクロン)、動的歪1%、周波数52Hz、測定開始温度25℃、昇温速度3℃/分、測定終了温度250℃の測定条件で、動的貯蔵弾性率を測定した。
また、50℃の動的貯蔵弾性率に対する200〜250℃での温度領域における動的貯蔵弾性率最小値の比を指数で表示した。この指数が大きいほど高温化による動的貯蔵弾性率の低下が少ないことを示す。
【0040】
(3)ランフラット耐久性
各試作タイヤを常圧でリム組みし、内圧200kPaを封入してから38℃の室温中に24時間放置後、バルブのコアを抜き内圧を大気圧として、荷重5.14kN(524kgf)、速度89km/h、室温38℃の条件でドラム走行テストを行った。この際の故障発生までの走行距離をランフラット耐久性とし、実施例1〜3については比較例1を100とした指数で表わし、実施例4〜6については比較例2を100とした指数で表わした。また、実施例7〜10については比較例3を100とした指数で表わし、実施例11〜13については比較例4を100とした指数で表わし、実施例14〜17については比較例5を100とした指数で表わした。指数が大きいほど、ランフラット耐久性は良好である。
(4)転がり抵抗
転がり抵抗は、惰行法にて測定したものであり、タイヤ内圧は1.7kg/cm2 、荷重はJIS100%荷重、惰行開始速度100km/hrの条件で行ない、実施例1〜3については比較例1を100とした指数で表わし、実施例4〜6については比較例2を100とした指数で表わした。また、実施例7〜10については比較例3を100とした指数で表わし、実施例11〜13については比較例4を100とした指数で表わし、実施例14〜17については比較例5を100とした指数で表わした。指数が小さいほど、転がり抵抗は小さい。
【0041】
製造例1(重合体A)
乾燥し、窒素置換された温度調整ジャッケットつき8リットルの耐圧反応装置に、シクロヘキサン3kg、ブタジエン単量体500g、0.2mmolのジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)を注入し、4mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、4 0℃の開始温度で1時間重合を行った。重合は、昇温条件下で行い最終温度が75℃を超えないようにジャッケット温度を調整した。重合系は重合開始から終了まで、全く沈澱は見られず均一に透明であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。
この重合系に、BHTのイソプロパノール5%溶液0.5ミリリットルを加えて反応を停止させ、常法に従い重合体を乾燥して重合体Aを得た。
上記により得られた重合体Aについてミクロ構造(ビニル結合量)、分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果を第1表に示す。
製造例2〜6(重合体B〜F)
乾燥し、窒素置換された温度調整ジャッケットつき8リットルの耐圧反応装置に、シクロヘキサン3kg、ブタジエン単量体500g、0.2mmolのジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)を注入し、5mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、4 0℃の開始温度で1時間重合を行った。重合は、昇温条件下で行い最終温度が75℃を超えないようにジャッケット温度を調整した。重合系は重合開始から終了まで、全く沈澱は見られず均一に透明であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。
この重合系に、末端変性剤としてテトラエトキシシラン(TEOS,1Mシクロヘキサン溶液)を4.3ミリリットル加えた後、30分間変性反応を行った。この後重合系にBHTのイソプロパノール5%溶液0.5ミリリットルを加えて反応を停止させ、常法に従い重合体を乾燥して重合体Bを得た。
また、上記重合体Bの製法において、BuLi量と末端変性剤の種類と量を第1表に示すものに代えたこと以外は、上記と同様にして重合体C〜Fを得た。
上記により得られた変性ポリブタジエン重合体B〜Fについてミクロ構造(ビニル結合量)、分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果を第1表に示す。
【0042】
製造例7(重合体G)
乾燥し、窒素置換された温度調整ジャッケットつき8リットルの耐圧反応装置に、シクロヘキサン3kg、ブタジエン単量体500g、0.2mmolのジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)を注入し、5mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、これに0.45mmolのヘキサメチレンイミン(HMI)をすばやく加え、4 0℃の開始温度で1時間重合を行った。重合は、昇温条件下で行い最終温度が75℃を超えないようにジャッケット温度を調整した。重合系は重合開始から終了まで、全く沈澱は見られず均一に透明であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。
この重合系に、末端変性剤として1−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}−4,5−ジヒドロイミダゾール(TEOSDI,1Mシクロヘキサン溶液)を4.5ミリリットル加えた後、30分間変性反応を行った。この後重合系にBHTのイソプロパノール5%溶液0.5ミリリットルを加えて反応を停止させ、常法に従い重合体を乾燥して重合体Gを得た。
得られた重合体Gについてミクロ構造(ビニル結合量)、分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果を第1表に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
(注)
末端変性剤
TEOS:テトラエトキシシラン
TEOSDI:1−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}−4,5−ジヒドロイミダゾール
【化6】
S340:商標「サイラエース S340」、チッソ(株)製、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン
【化7】
DMAPTE:ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン
【化8】
GPEOS:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
【化9】
【0045】
実施例1〜6及び比較例1〜2
第2表に示す種類と量の(A)ゴム成分100重量部に(B)成分としてのシリカ及びその他の配合剤とを第2表により配合してゴム組成物を調製した。
上記ゴム組成物を、サイドウォール部補強層(サイド補強ゴム)、又はサイド補強ゴムとビードフィラーゴムの双方に用いて、サイズ225/55R17の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って製造し、そのタイヤ(リムサイズ;6.5JJ−16)ついてランフラット耐久性及び転がり抵抗を評価した。なお、補強ゴムゲージ(サイドウォール部補強層の最大厚み)及びビードフィラーの高さは第2表中に記載した。結果を第2表に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
(注)
*1)シリカ:ニプシルAQ〔商標、日本シリカ工業(株)製〕
*2)カーボンブラック:「FEF」〔商標;旭#60,旭カーボン(株)製〕
*3)シランカップリング剤:Si69(商標;デグサAG製)
*4)軟化剤:「ダイアナプロセスオイル NPー24」〔商標、出光興産(株)製〕
*5)亜鉛華:3号〔商標、三井金属鉱業(株)製〕
*6)ステアリン酸:「LUNAC RSビーズ」〔商標、花王(株)製〕
*7)老化防止剤:「ノクラック6C」〔商標、大内新興化学工業(株)製、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン〕
*8)加硫促進剤:「ノクセラ−NS」〔商標、大内新興化学工業(株)製、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〕
*9)硫黄「MUCRONーOT」〔商標、四国化成(株)製〕
【0048】
実施例7〜17及び比較例3〜5
第3表に示す種類と量からなる(A)ゴム成分100重量部に、(B)成分としてのシリカ、(C)成分としての化合物及びその他の配合剤を第3表により配合してゴム組成物を調製した。
上記ゴム組成物を、サイドウォール部補強層(サイド補強ゴム)、又はサイド補強ゴムとビードフィラーゴムの双方に用いて、サイズ245/45ZR17(リムサイズ8JJ−17)の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って製造し、そのタイヤについてランフラット耐久性及び転がり抵抗を評価した。結果を第3表に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
(注)
*10)一般式(I)の化合物
一般式(I)の化合物A:1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(VULCUREN TRIAL PRODUCT KA9188 BAYER社製)
一般式(I)の化合物B:1,6−ビス(N,N’−ジメチルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(試作合成品)
一般式(I)の化合物C:1,6−ビス(N,N’−ジエチルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(試作合成品)
一般式(I)の化合物D:1,6−ビス(N,N’−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ)ヘキサン(試作合成品)
一般式(I)の化合物E:1,6−ビス(ベンゾチアゾリルジチオ)ヘキサン(試作合成品)
*11)シトラコンイミド化合物
シトラコンイミド化合物A:PERKALINK 900(商標、FLEXSYS社製)
シトラコンイミド化合物B:N,N’- m−フェニレン−ビスシトラコンイミド(試作合成品)
*12)アクリレート類
アクリレート類A:KAYARAD D−310〔商標、日本化薬(株)製〕
アクリレート類B:KAYARAD DPHA〔商標、日本化薬(株)製〕
アクリレート類C:KAYARAD D−330〔商標、日本化薬(株)製〕
【0052】
上記の結果より、本発明における特定性状のゴム組成物を、サイドウォール部補強層及び/又はビードフィラーに用いてなる空気入りタイヤは、ランフラット耐久性及び転がり抵抗の双方において優れていることがわかる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、特定性状の共役ジエン系重合体を配合してなるゴム組成物を、タイヤ用サイドウォール部補強ゴム及び/又はタイヤ用ビードフィラーゴムに用いてなる本発明の空気入りタイヤは、ランフラット耐久性及び転がり抵抗の双方において優れた性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
【符号の説明】
1 本発明の空気入りタイヤ
2 カーカス層
2a 折り返しカーカスプライ
2b ダウンカーカスプライ
3 ベルト層
4 ビードコア
5 ビードフィラー
6 サイドウォール部
7 ゴム補強層
8 トレッド部
Claims (21)
- 左右一対のビードコアと、該ビードコアのタイヤ半径方向外側に配設されたビードフィラーとを具備してなり、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物は、(A)重量平均分子量(Mw)が20万〜90万であると共に、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であり、かつ分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(B)補強性無機充填剤とを配合してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
- カーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側に配置されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部と、このサイドウォール部に配設されたゴム補強層とを具備してなり、前記サイドウォール部に配設されたゴム補強層を構成するゴム組成物は、(A)重量平均分子量(Mw)が20万〜90万であると共に、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であり、かつ分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(B)補強性無機充填剤とを配合してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
- 左右一対のビードコアと、該ビードコアのタイヤ半径方向外側に配設されたビードフィラーとカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側に配置されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部と、このサイドウォール部に配設されたゴム補強層とを具備してなり、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物及びサイドウォール部に配設されたゴム補強層を構成するゴム組成物は、(A)重量平均分子量(Mw)が20万〜90万であると共に、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であり、かつ分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(B)補強性無機充填剤とを配合してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体が、共役ジエン系重合体総量の50重量%以上含まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- ゴム成分中、(A)重量平均分子量(Mw)が20万〜90万であると共に、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であり、かつ分子中にアルコキシシリル基を有する共役ジエン系重合体が、ゴム成分総量の50重量%以上含まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記共役ジエン系重合体が、分岐構造を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記共役ジエン系重合体が、共役ジエン単独重合体、共役ジエン共重合体または共役ジエン−芳香族ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記共役ジエン系重合体が、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- (B)補強性無機充填剤が、多孔質無機充填剤であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- (B)成分の多孔質無機充填剤が、下記一般式
mM1・xSiOy・zH2O
〔上式中、M1はAl,Mg,Ti及びCaから選ばれる少なくとも一つの金属、該金属の金属酸化物又は金属水酸化物であり、mは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、及びzは0〜10の整数を示す。〕
で表わされることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。 - 多孔質無機充填剤が、シリカ,水酸化アルミニウム,酸化アルミニウム,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,クレー,ゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 多孔質無機充填剤のBET式窒素吸着比表面積が50m2/g〜400m2/gであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記多孔質無機充填剤は、さらに、カーボンブラックを含むことを特徴とする請求項12に記載の空気入りタイヤ。
- さらに、(C)一般式(I)
R1−S−S−A−S−S−R2 ・・・(I)
〔式中Aは炭素数2〜10のアルキレン基、R1及びR2は、それぞれ独立に窒素原子を含む一価の有機基を示す。〕で表される化合物、シトラコンイミド化合物及びアクリレート類化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。 - (C)成分の一般式(I)中のAが、ヘキサメチレン基であることを特徴とする請求項14に記載の空気入りタイヤ。
- (C)成分のシトラコンイミド化合物が、ビスシトラコンイミド類であることを特徴とする請求項14に記載の空気入りタイヤ。
- (C)成分のアクリレート類が、多価アルコールとアクリル酸との多価エステル、又は多価アルコールとアクリル酸及び他のカルボン酸との多価エステルであることを特徴とする請求項14に記載の空気入りタイヤ。
- 一般式(I)で表される化合物が、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンであることを特徴とする請求項15に記載の空気入りタイヤ。
- ビスシトラコンイミド類が、1,6−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンであることを特徴とする請求項16に記載の空気入りタイヤ。
- アクリレート類が、アシル基変性ジペンタエリスリトールアクリレートであることを特徴とする請求項17に記載の空気入りタイヤ。
- (A)ゴム成分100重量部に対し、(C)成分を0.5〜20重量部配合することを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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