JP5275539B2 - タイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤに関し、特に十分な抗破壊性(悪路性能)を有しつつ優れた発熱耐久性を有するタイヤに関するものである。
従来、タイヤの発熱耐久性を向上させるために、タイヤの構造及びタイヤに使用するゴム組成物の配合の両面から様々な改良が行われてきた。例えば、トレッド部を、タイヤ半径方向内側に位置するベースゴムと、そのタイヤ半径方向外側に位置するキャップゴムとの2層構造、所謂、キャップ/ベース構造(特許文献1参照)とし、前記ベースゴムに低発熱性に優れた配合のゴム組成物を適用することで、タイヤの発熱耐久性を向上させる試みがなされてきた。ここで、上記ベースゴムの低発熱性を向上させるには、高剛性でヒステリシスロスの小さなゴム組成物を適用することが必要とされている。
例えば、ゴム組成物を低ロス化する配合手法としては、
(1)充填剤として配合するカーボンブラックを低級化する手法や、
(2)充填剤として配合するカーボンブラックの配合量を減少させる手法
が一般的に知られている。
また、ゴム組成物を高剛性化する配合手法としては、
(3)充填剤としてカーボンブラックを多量に配合する手法や、
(4)加硫剤として硫黄を多量に配合して加硫後の架橋をタイトにする手法
が一般的に知られている。
特許第3213127号公報
しかしながら、一般的な配合手法で発熱耐久性に優れるベースゴムの配合を設計しようとすると、抗破壊性、摩耗末期の外観等の他の性能との両立が困難である場合が多い。例えば、上記(1):低級のカーボンブラックを配合する手法は、ゴム組成物の低ロス化には効果的であるが、疲労後の破壊特性が低下する問題がある。また、上記(2):カーボンブラックの配合量を減少させる手法は、ゴム組成物の低ロス化には効果的であるものの、補強性が劣り、また、剛性が低下してしまう問題がある。
更に、上記(3):カーボンブラックを多量に配合する手法は、ゴム組成物の高剛性化には効果的であるが、ゴム組成物のヒステリシスロスが当然上昇してしまう。また更に、上記(4):加硫後の架橋をタイトにする手法は、高剛性化には効果的であるものの、熱老化後の破壊特性が低下する問題がある。従って、タイヤの抗破壊性を低下させることなく、発熱耐久性を向上させることが可能なゴム組成物を得ることは一般的に難しい。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、キャップ/ベース構造を有するタイヤのベースゴムにタイヤの抗破壊性を確保しつつ、発熱耐久性を向上させることが可能なタイヤ用ゴム組成物用いた、十分な抗破壊性と優れた発熱耐久性とを有するタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、充填剤としてカーボンブラック及びシリカを併用した上、ゴム成分との反応基及びシリカとの吸着基を有する化合物、更には、硫黄以外の架橋剤を配合して得たゴム組成物をキャップ/ベース構造のトレッドを有するタイヤのベースゴムに使用することで、トレッドの発熱を抑制し、タイヤの抗破壊性を維持しつつ発熱耐久性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のタイヤキャップ/ベース構造のトレッド部を備え、
トレッド部のベースゴムに、
ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分(A)100質量部に対して、
カーボンブラック(B)1〜60質量部と、
シリカ(C)0.5〜40質量部と、
同一分子内に二重結合を有する基aを1個以上有し且つカルボキシル基bを2個以上有する化合物(D)0.1〜10質量部と、
硫黄以外の架橋剤(E)0.1〜10質量部と
を配合してなり、
前記硫黄以外の架橋剤(E)が1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物又は1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンであり、
更に硫黄を含有するタイヤ用ゴム組成物を適用した
ことを特徴とする。
本発明のタイヤにおいて、前記カーボンブラック(B)は、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が90 mL/100g以下で且つ窒素吸着比表面積(N2SA)が120 m2/g以下であることが好ましい。この場合、ゴム組成物の抗破壊性の低下を確実に防止しつつ、ゴム組成物を低ロス化することができる。
本発明のタイヤの好適例においては、前記硫黄以外の架橋剤(E)が1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物又は1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンである。
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記化合物(D)が下記一般式(I):
HOOC−CH=CH−COO−R1−CO−CH=CH−COOH ・・・ (I)
[式中、R1は、式−R2O−で示される基、式−(R3O)s−で示される基、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基であり;ここで、R2は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;R3は炭素数2〜4のアルキレン基で;sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数で;R4は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基,2価の芳香族炭化水素基又は−(R6O)u6−で示される基(ここで、R6は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)で;R5は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;tは平均値で1〜30の数である]で表される。ここで、前記一般式(I)中のR1が−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基であることが更に好ましく、また、該基中のR4がブチレン基で、R5がビニレン基で、tが4であることが特に好ましい。
また、本発明のタイヤはトラック・バス用タイヤとして特に好適である。
本発明によれば、高剛性でヒステリシスロスが小さく、キャップ/ベース構造を有するタイヤのベースゴムに用いることで、タイヤの抗破壊性を確保しつつ、発熱耐久性を向上させることが可能なタイヤ用ゴム組成物ベースゴムに用いることで、十分な抗破壊性と優れた発熱耐久性とを有するタイヤを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のタイヤは、キャップ/ベース構造のトレッド部を備え、トレッド部のベースゴムに、ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック(B)1〜60質量部と、シリカ(C)0.5〜40質量部と、同一分子内に二重結合を有する基aを1個以上有し且つカルボキシル基bを2個以上有する化合物(D)0.1〜10質量部と、硫黄以外の架橋剤(E)0.1〜10質量部とを配合してなり、前記硫黄以外の架橋剤(E)が1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物又は1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンであり、更に硫黄を含有するタイヤ用ゴム組成物を適用したことを特徴とする
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、抗破壊性を補いつつ低ロス化するために、充填剤としてカーボンブラック(B)とシリカ(C)とを併用する。また、上記化合物(D)は、二重結合を有する基aを1個以上有するため、ゴム成分(A)との相溶性に優れ、また、カルボキシル基bを2個以上有するため、シリカ(C)との親和性にも優れる。そのため、ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分(A)に、シリカ(C)と共に化合物(D)を配合することにより、シリカのゴム成分(A)への分散性が改善され、シリカ(C)の補強効果が十分に発揮されてゴム組成物を高弾性化することができる。更に、本発明のタイヤ用ゴム組成物には硫黄以外の架橋剤(E)が配合されおり、該架橋剤(E)が高温におけるベースゴムの熱軟化を抑制できるため、タイヤが高温になる大荷重・高速走行下でもトレッド部の歪を抑制でき、トレッド部の発熱の進行を抑制することができる。従って、上記の構成を有する本発明のタイヤ用ゴム組成物をキャップ/ベース構造を有するタイヤのベースゴムに用いることで、トレッドの発熱を抑制し、タイヤの抗破壊性を確保しつつ、発熱耐久性を向上させることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分(A)は、ジエン系ゴムを主成分とすることを要し、ジエン系ゴムのみからなることが好ましい。該ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)の他、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられる。これらゴム成分は一種単独でも、ブレンドでもよい。なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ジエン系ゴム以外のゴム成分を少量添加してもよい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック(B)を1〜60質量部含有し、10〜40質量部含有することが好ましい。カーボンブラック(B)の配合量がゴム成分(A)100質量部に対して1質量部未満では、ゴム組成物の剛性が不十分であり、一方、60質量部を超えると、ゴム組成物のヒステリシスロスが大きくなる。
上記カーボンブラック(B)は、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が90mL/100g以下で且つ窒素吸着比表面積(N2SA)が120m2/g以下であることが好ましい。窒素吸着比表面積(N2SA)が120m2/g以下の低ストラクチャーのカーボンブラックを使用することで、ゴム組成物を確実に低ロス化することができるが、この場合、ゴム組成物の抗破壊性が低下することがある。これに対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が120m2/g以下であることに加え、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が90mL/100g以下のカーボンブラックを使用することで、ゴム組成物の抗破壊性の低下を防止しつつ、ゴム組成物を低ロス化することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して、シリカ(C)を0.5〜40質量部含有し、1〜20質量部含有することが好ましい。シリカ(C)の配合量がゴム成分(A)100質量部に対して0.5質量部未満では、ゴム組成物の抗破壊性が不十分であり、一方、40質量部を超えると、ゴム組成物のヒステリシスロス及び作業性の面で好ましくない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して、同一分子内に二重結合を有する基aを1個以上有し且つカルボキシル基bを2個以上有する化合物(D)を0.1〜10質量部含有する。該化合物(D)の配合量がゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部未満では、ゴム組成物を十分に高弾性化することができず、一方、10質量部を超えると、ゴム組成物を高弾性化する効果が頭打ちとなる一方、コスト高となる。
一般に、充填剤として低ストラクチャーのカーボンブラックとシリカを併用すると、ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムの弾性率が低下する傾向がある。これに対して、シリカに作用して加硫ゴムの弾性率を向上させる薬品としてシランカップリング剤が知られているが、該シランカップリング剤は、マトリクスのゴム成分とシリカとを架橋してしまうため、加硫ゴムの切断時伸びを低下させてしまう。一方、上記化合物(D)は、加硫ゴムの切断時伸びを低下させることなく、弾性率を向上させることができるため、タイヤの抗破壊性を維持することができる。
上記化合物(D)において二重結合を有する基aは、該二重結合を活性化する基が隣接するものが好ましく、特に非芳香族共役二重結合基又はカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種が隣接した二重結合基であることが好ましい。ここで、隣接とは二重結合の両端又は一方にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種を有することをいう。
上記化合物(D)において、二重結合を有する基aとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基が好ましく、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸又はアクリル酸から誘導される基が更に好ましく、マレイン酸又はアクリル酸から誘導される基が最も好ましい。一方、上記化合物(D)は、吸着基として、カルボキシル基bを有する
また、上記化合物(D)は、更にオキシアルキレン基を有することが好ましい。化合物(D)がオキシアルキレン基を有する場合、ゴム成分(A)との相溶性が更に向上し、シリカ(C)との親和性が更に良好となる。オキシアルキレン基の平均付加モル数は、ジエン系ゴムに対する反応基aの個数1個当たり、1〜30モルの範囲が好ましく、1〜20モルの範囲が更に好ましく、2〜15モルの範囲が特に好ましい。
上記化合物(D)の具体例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、クエン酸等のポリカルボン酸のモノ((メタ)アクリロイルオキシアルキル)エステル(ここで、(メタ)アクリロイルは、メタクリロイル又はアクリロイルを示す);マレイン酸モノリンゴ酸エステル等の不飽和カルボン酸とオキシカルボン酸との(ポリ)エステル;エチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオールとマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸との両末端にカルボキシル基を有するエステル;N-(2-カルボキシエチル)マレアミド酸等のN-(カルボキシアルキル)マレアミド酸;下記一般式(I)、一般式(II)又は一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
HOOC−CH=CH−COO−R1−CO−CH=CH−COOH ・・・ (I)
式(I)中、R1は、式−R2O−で示される基、式−(R3O)s−で示される基、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基である。ここで、R2は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基である。また、R3は炭素数2〜4のアルキレン基で、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数であり、好ましくは2〜40、更に好ましくは4〜30の数である。R4は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基,2価の芳香族炭化水素基又は−(R6O)u6−で示される基(ここで、R6は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)である。R5は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。tは平均値で1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15の数である。
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、グリセリンジマレエート、1,4-ブタンジオールジマレエート、1,6-ヘキサンジオールジマレエート等のアルキレンジオールのジマレエート;1,6-ヘキサンジオールジフマレート等のアルキレンジオールのジフマレート;PEG200ジマレエート,PEG600ジマレエート等のポリオキシアルキレングリコールのジマレエート(ここで、PEG200、PEG600とは、それぞれ平均分子量200又は600のポリエチレングリコールを示す);両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)マレエート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/マレイン酸ポリエステル;両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンアジペートマレエート、PEG600ジフマレート等のポリオキシアルキレングリコールのジフマレート;両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)フマレート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/フマル酸ポリエステル等が挙げられる。
Figure 0005275539
式(II)中、R7、R8及びR9はこれらのうち一つが式−(R10O)n−CO−CR11=CR12−R13で表される基であり、他は水素原子である。ここで、R10は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基である。また、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、好ましくはR11が水素原子又はメチル基、R12及びR13が水素原子である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜15の数である。
上記式(II)で表される化合物の具体例としては、トリメリット酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)エステル、トリメリット酸モノ[2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチル]エステル、トリメリット酸モノ(ω-(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレン(10))エステル等のトリメリット酸モノ(ω-(メタ)アクリロイルオキシPOA(n))エステル[ここで(メタ)アクリロイルはメタクリロイル又はアクリロイルを示し、POA(n)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均して1〜30モル付加したポリオキシエチレン(以下「POE」と略記することがある)又はポリオキシプロピレン(以下「POP」と略記することがある)を示す]が挙げられる。
Figure 0005275539
式(III)中、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、m1、m2及びm3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す数で、m1+m2+m3が0〜90、好ましくは3〜60、更に好ましくは6〜45となる数である。
上記式(III)で表される化合物の具体例としては、POE(8)グリセリントリマレエート、POE(3)グリセリントリマレエート、POP(10)グリセリントリマレエート等のPOA(m)グリセリントリマレエート(ここで、POA(m)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均して0〜90モル付加したポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンを示す)等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、多塩基酸の部分エステルが好ましく、上記一般式(I)で表される化合物が更に好ましい。
また、式(I)中のR1が−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基である化合物がより一層好ましく、前記R4がブチレン基であり、前記R5がビニレン基であり、tが4である化合物[HOOC−CH=CH−CO−(OC48O−CO−CH=CH−CO)5−OH]が特に好ましい。
上記化合物(D)は、分子量250以上であることが好ましく、分子量250〜5000であることが更に好ましく、分子量250〜3000であることが特に好ましい。分子量がこの範囲であると引火点が高く、安全上望ましいばかりでなく、発煙が少なく作業環境上も好ましい。なお、上記化合物(D)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して、硫黄以外の架橋剤(E)を0.1〜10質量部含有する。硫黄と共に硫黄以外の架橋剤(E)を併用したゴム組成物をベースゴムに用いることで、ベースゴムの熱軟化を防止して、タイヤの発熱耐久性を更に向上させることができる。但し、硫黄以外の架橋剤(E)の配合量がゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部未満では、ベースゴムの熱軟化を十分に防止することができず、一方、10質量部を超えると、熱軟化防止効果が頭打ちとなり、また、初期の伸びが低下してしまう。
一般に、タイヤは大荷重・高速走行で使用されると、トレッド部が大きく発熱する。この際、トレッドゴムが高温になるため軟化し、トレッド部の歪が大きくなる。そして、トレッド部の歪が大きくなることで、トレッド部の発熱が更に促進される。これに対し、硫黄以外の架橋剤(E)をトレッド部のベースゴムに用いることで、ベースゴムの熱軟化を抑制して、トレッド部の歪を小さくすることができ、その結果、トレッド部の発熱の進行を抑制して、タイヤの発熱耐久性を改善することができる。
上記硫黄以外の架橋剤(E)、下記化学式(IV):
NaO3S−S−(CH2)6−S−SO3Na・2H2O ・・・ (IV)
で表される1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物、又は下記化学式(V):
Figure 0005275539
で表される1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンである。なお、1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物は、FLEXSYS社から商品名「DURALINK HTS」として市販されており、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンは、同じくFLEXSYS社から商品名「PERKALINK 900」として市販されている。
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上述のゴム成分(A)、カーボンブラック(B)、シリカ(C)、化合物(D)、硫黄以外の架橋剤(E)の他、軟化剤、硫黄、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分(A)に、カーボンブラック(B)、シリカ(C)、化合物(D)及び硫黄以外の架橋剤(E)と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
本発明のタイヤは、キャップ/ベース構造のトレッド部を備え、該トレッド部のベースゴムに上述したゴム組成物を適用したことを特徴とする。本発明のタイヤは、高剛性でヒステリシスロスの小さなゴム組成物がベースゴムに用いられているため、発熱耐久性が高い上、抗破壊性も十分に確保されている。そのため、本発明のタイヤは、走行時の発熱が大きい重荷重用タイヤや悪路走行用のオフロードタイヤとして好適であり、トラック・バス用タイヤとして特に好適である。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物をキャップ/ベース構造のトレッドのベースゴムに用い、通常の加硫条件で加硫して、サイズ11R22.5のブロックパターンを有するタイヤを作製し、下記に示す方法で走行時の温度及び抗破壊性を評価した。結果を表1に示す。
(1)走行時の温度
供試タイヤを正規荷重、60km/hの条件下、ドラム上で走行させ、その際のベルト端近傍の温度を熱電対で測定し、実施例1のタイヤのベルト端近傍の温度を基準として、温度差を求めた。従って、マイナス側の方が走行時のベルト端近傍の温度が低く、低発熱性に優れることを示す。
(2)抗破壊性
試作したタイヤをトラックのドライブ軸に装着して、実地で5万km走行させた(ローテーション無し)。その後、タイヤを回収し、タイヤのチッピングの個数を目視でカウントした。従って、数値が小さい程、抗破壊性に優れることを示す。
Figure 0005275539
*1 DBP吸油量=72mL/100g, N2SA=78m2/g.
*2 DBP吸油量=102mL/100g, N2SA=79m2/g.
*3 日本シリカ工業(株)製, ニップシールAQ.
*4 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*5 ブチレングリコールポリマレート(BM), 式(I)において、R1が−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基であり、R4がブチレン基で、R5がビニレン基で、t=4の化合物[HOOC−CH=CH−CO−(OC48O−CO−CH=CH−CO)5−OH].
*6 1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン, FLEXSYS社製, 商品名「PERKALINK 900」.
*7 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド.
表1の実施例の結果から、ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分に対して、カーボンブラック、シリカ、化合物(D)、耐熱架橋剤を配合したゴム組成物をベースゴムに用いることで、タイヤの走行時の発熱を抑制できることが分る。但し、実施例4の結果から、N2SAが120m2/g以下であるもののDBP吸油量が90mL/100gを超えるカーボンブラック(即ち、高ストラクチャーのカーボンブラック)を配合したゴム組成物をベースゴムに用いると、疲労性が悪く、タイヤの抗破壊性が劣るため、N2SAが120m2/g以下で且つDBP吸油量が90mL/100g以下のカーボンブラックを使用することが好ましいことが分った。
一方、化合物(D)を含まないゴム組成物をベースゴムに用いた比較例1のタイヤは、ベースゴムの剛性が低く、走行時のベルト端部の温度が実施例に比べて大きかった。また、硫黄以外の架橋剤(E)を含まないゴム組成物をベースゴムに用いた比較例2のタイヤは、走行温度の領域でベースゴムが熱軟化を起こし、トレッド部の歪が大きいため、走行時のベルト端部の温度が更に高かった。

Claims (6)

  1. キャップ/ベース構造のトレッド部を備えたタイヤにおいて、
    トレッド部のベースゴムに、
    ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック(B)1〜60質量部と、シリカ(C)0.5〜40質量部と、同一分子内に二重結合を有する基aを1個以上有し且つカルボキシル基bを2個以上有する化合物(D)0.1〜10質量部と、硫黄以外の架橋剤(E)0.1〜10質量部とを配合してなり、
    前記硫黄以外の架橋剤(E)が1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物又は1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンであり、
    更に硫黄を含有するタイヤ用ゴム組成物を適用した
    ことを特徴とするタイヤ
  2. 前記カーボンブラック(B)は、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が90 mL/100g以下で且つ窒素吸着比表面積(N2SA)が120 m2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ
  3. 前記化合物(D)が下記一般式(I):
    HOOC−CH=CH−COO−R1−CO−CH=CH−COOH ・・・ (I)
    [式中、R1は、式−R2O−で示される基、式−(R3O)s−で示される基、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基であり;ここで、R2は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;R3は炭素数2〜4のアルキレン基で;sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数で;R4は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基,2価の芳香族炭化水素基又は−(R6O)u6−で示される基(ここで、R6は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)で;R5は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;tは平均値で1〜30の数である]、下記一般式(II):
    Figure 0005275539
    [式中、R7、R8及びR9はこれらのうち一つが式−(R10O)n−CO−CR11=CR12−R13で表される基であり、他は水素原子であり、ここで、R10は炭素数2〜4のアルキレン基であり、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である]、又は、下記一般式(III):
    Figure 0005275539
    [式中、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基であり、m1、m2及びm3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す数で、m1+m2+m3が0〜90となる数である]で表されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ
  4. 前記化合物(D)が前記一般式(I)で表わされ、該一般式(I)中のR1が−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基であることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ
  5. 前記R4がブチレン基であり、前記R5がビニレン基であり、tが4であることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ
  6. トラック・バス用タイヤであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
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