本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、シリカと、同一分子内にゴム成分に対する反応基を1個以上、シリカに対する吸着基を2個以上有する化合物と、樹脂架橋剤とを含む。シリカ、該化合物及び樹脂架橋剤の併用により、低燃費性、耐オゾン性、耐変色性等の性能バランスが顕著に(相乗的に)改善される。このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
同一分子内にゴム成分に対する反応基を1個以上、シリカに対する吸着基を2個以上有する本願特定の化合物を配合することで、該化合物がタイヤ表面にブルームして老化防止剤による茶変色等(外観悪化)を隠すという作用効果が発揮される。更に樹脂架橋剤を用いて、例えば、ベンゼン環を有する架橋を実現することで、低燃費化の作用効果が発揮される。その一方で、加硫速度が早くなりすぎるという新たな課題が生じるが、シリカの添加により、樹脂架橋剤の配合に起因して早くなった加硫速度が適正レベルに戻り、ゴム組成物に所望の各種物性を付与できる。このようにして、本発明により、低燃費性、耐オゾン性、耐変色性等の性能バランスが顕著に(相乗的に)改善されると推察される。
ゴム成分としては特に限定されず、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等のジエン系ゴム等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を併用できる。なかでも、低燃費性、耐オゾン性、耐変色性等の点から、イソプレン系ゴム、BRが好ましい。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、低燃費性、耐オゾン性、耐変色性等の性能バランスが顕著に改善される。
BRとしては特に限定されず、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。例えば、高シス含量のBR、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。BRは、市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。上記範囲内であると、低燃費性、耐オゾン性、耐変色性等の性能バランスが顕著に改善される。
BRのシス含量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
本発明の効果の点から、BRとして、SPB含有BRとスズ変性BRを併用することが好ましい。併用する場合、本発明の効果の点から、SPB含有BR/スズ変性BR(質量比)は、20/80〜80/20が好ましく、40/60〜60/40がより好ましい。
SPB含有BRにおいて、SPBは、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散していることが好ましい。SPBの融点は、180〜220℃が好ましい。SPBを含むBR中におけるSPBの含有量は、2.5〜20質量%が好ましい。ここで、SPBを含むBR中におけるSPBの含有量とは、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量を示す。
スズ変性BRは、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合を行った後、スズ化合物を添加することにより得られ、更に該スズ変性BR分子の末端はスズ−炭素結合で結合されているものが好ましい。
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム等のリチウム系化合物、スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド等が挙げられる。また、スズ変性BRのスズ原子の含有量は50〜3000ppmが好ましく、スズ変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は2以下であることが好ましい。なお、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。また、スズ変性BRのビニル含量は、好ましくは5〜50質量%である。なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びBRの合計含有量は、低燃費性、耐オゾン性、耐変色性等の点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%でもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。下限以上にすることで、スコーチの抑制効果や破壊強度の改善効果が充分に得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上限以下にすることで、スコーチ時間が長くなり過ぎる(架橋が弱くなる)ことと、加硫時間が長くなり、生産性悪化が抑制され、良好な加硫後物性が得られる傾向がある。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上である。下限以上にすることで、良好な耐クラック性、耐オゾン性が得られる傾向がある。該N2SAは、好ましくは280m2/g以下、より好ましくは240m2/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が確保され、良好な耐クラック性、耐オゾン性が得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
前記ゴム組成物は、シリカ100質量部に対するシランカップリング剤の含有量が2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下が更に好ましく、シランカップリング剤を含まないことが特に好ましい。シリカを添加し、かつシランカップリング剤を添加しないことで、樹脂架橋剤により早くなる加硫速度を非常に良好に適正レベルに戻すことが可能となる。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT−Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品が挙げられる。
前記ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、良好な補強性が得られ、良好な耐クラック性、耐オゾン性が得られる。また、後述の化合物のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果が良好に得られる。
カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。下限以上にすることで、充分な補強性が得られ、良好な耐クラック性、耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性が得られる傾向がある。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、20〜200m2/gが好ましく、30〜60m2/gがより好ましい。下限以上にすることで、良好な耐クラック性、耐候性が得られる傾向がある。上限以下にすることで、充分な低燃費性、加工性が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
前記ゴム組成物には、カーボンブラック、シリカ以外の無機充填剤や有機充填剤を配合してもよい。前記無機充填剤としては、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、チタン白、チタン黒、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウムマグネシウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭化ケイ素、ジルコニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。前記有機充填剤としては、セルロースナノファイバー等が挙げられる。
前記ゴム組成物は、同一分子内にゴム成分に対する反応基を1個以上、シリカに対する吸着基を2個以上有する化合物を含む。該化合物のゴム表面へのブルームにより、表面変色が防止される。また、タイヤの転がり抵抗も低減され、本発明の効果が良好に得られる。
ゴム成分に対する反応基は、2重結合を有する基であって、該2重結合を活性化する基が隣接するものが好ましく、特に非芳香族共役2重結合基又は2重結合にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種が隣接した基であることが好ましい。なお、ここで隣接とは、2重結合の両端又は一方にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種を有することをいう。
前記化合物としては、反応基がマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基(好ましくはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸から誘導される基、特に好ましくはマレイン酸、アクリル酸から誘導される基)、吸着基がカルボキシル基である化合物が好適である。
前記化合物は、更にオキシアルキレン基を有することが好ましい。これにより、ゴムとの相溶性が向上し、シリカとの親和性が良好となる。オキシアルキレン基の平均付加モル数は、ゴムに対する反応基の個数1個当たり、1〜30モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜20モル、更に好ましくは2〜15モルの範囲である。
前記化合物の具体例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、クエン酸等のポリカルボン酸のモノ((メタ)アクリロイルオキシアルキル)エステル;マレイン酸モノリンゴ酸エステル等の不飽和カルボン酸とオキシカルボン酸との(ポリ)エステル;エチレングリコール、へキサンジオール、シクロへキサンジメタノール等のジオールとマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸との両末端にカルボキシル基を有するエステル;N−(2−カルボキシエチル)マレアミド酸等のN−(カルボキシアルキル)マレアミド酸;下記式(1)、(2)、(3)で表される化合物;等が挙げられる。
〔式中、A
11、A
12及びA
13は、これらのうち一つが式−(R
11O)
n−CO−CR
12=CR
13−R
14で表される基で、他は水素原子である。R
11は、炭素数2〜4のアルキレン基(好ましくはエチレン基又はプロピレン基)である。R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基(好ましくはR
12が水素原子又はメチル基、R
13及びR
14が水素原子)である。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30(好ましくは1〜20、より好ましくは2〜15)の数である。〕
〔式中、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基(好ましくはエチレン基又はプロピレン基)である。m1、m2及びm3は、それぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す数で、m1+m2+m3が0〜90(好ましくは3〜60、より好ましくは6〜45)となる数である。〕
〔式中、R
31は、式−R
32O−で示される基、式−(R
33O)
S−で示される基、式−CH
2CH(OH)CH
2O−で示される基、又は式−(R
34O−COR
35−COO−)
tR
34O−で示される基である。R
32は、炭素数2〜36のアルキレン基、アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、より好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基)である。R
33は、炭素数2〜4のアルキレン基(好ましくはエチレン基又はプロピレン基)であり、sは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60(好ましくは2〜40、より好ましくは4〜30)の数である。R
34は、炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族炭化水素基又は−(R
36O)
uR
36−(R
36は炭素数2〜4のアルキレン基、uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30(好ましくは1〜20、より好ましくは2〜15)の数である。)で示される基である。R
35は、炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基)である。tは、平均値で1〜30(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜15)の数である。〕
なかでも、多塩基酸の部分エステルが好ましく、式(1)、(2)又は(3)で表される化合物がより好ましい。
式(1)で表される化合物の具体例としては、トリメリット酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)エステル、トリメリット酸モノ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチル]エステル、トリメリット酸モノ(ω−(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレン(10))エステル等のトリメリット酸モノ(ω−(メタ)アクリロイルオキシPOA(n))エステル(ここで、POA(n)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均してnモル(nは1〜30)付加したポリオキシエチレン(以下「POE」とも称する)又はポリオキシプロピレン(以下「POP」とも称する)を示す。)が挙げられる。
式(2)で表される化合物の具体例としては、POE(8)グリセリントリマレエート、POE(3)グリセリントリマレエート、POP(10)グリセリントリマレエート等のPOA(m)グリセリントリマレエート(ここで、POA(m)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均してmモル(mは0〜90)付加したポリオキシエチレン(POE)又はポリオキシプロピレン(POP)を示す)等が挙げられる。
式(3)で表される化合物の具体例としては、グリセリンジマレエート、1,4−ブタンジオールジマレエート、1,6−へキサンジオールジマレエート等のアルキレンジオールのジマレエート、1,6−へキサンジオールジフマレート等のアルキレンジオールのジフマレート、PEG200ジマレエート、PEG600ジマレエート等のポリオキシアルキレングリコールのジマレエート(ここで、PEG200、PEG600とは、それぞれ平均分子量200又は600のポリエチレングリコール(PEG)を示す)、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)マレエート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/マレイン酸ポリエステル、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンアジぺートマレエート、PEG600ジフマレート等のポリオキシアルキレングリコールのジフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)フマレート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/フマル酸ポリエステル等が挙げられる。特に、式(3)において、R31が式−(R34O−COR35−COO−)tR34O−で示される基であって、(i)R34が−(R36O)uR36−(R36がエチレン基、u=3.5)であり、R35がビニレン基(−CH=CH−)、tが4の化合物、及び(ii)R34がブチレン基であり、R35がビニレン基(−CH=CH−)、tが4の化合物が好適である。すなわち、両末端カルボン酸型の平均重合度4.5のポリエチレングリコール/マレイン酸ポリエステル(ポリエステル部分の重合度5)(PEGM)、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート(重合度5)(BM)が特に好適である。
前記化合物は、分子量が250以上であることが好ましく、より好ましくは250〜5000、更に好ましくは250〜3000の範囲である。
なお、前記化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記化合物の製造過程における未反応分を含んでいてもよく、更にはプロセス油、前記化合物以外のエステル等を含有することができ、この場合、前記化合物の含有量は50〜100質量%の範囲が好ましく、80〜100質量%の範囲がより好ましく、取り扱い性の観点からシリカ等の粉体に担持させて用いることが好ましい。
前記化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上である。下限以上にすることで、良好な耐変色性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下である。上限以下にすることで、耐変色性、コストのバランスが良好になる傾向がある。
前記ゴム組成物は、樹脂架橋剤を含む。これにより、タイヤの転がり抵抗が低減され、本発明の効果が良好に得られる。
樹脂架橋剤としては特に限定されず、フェノール系樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の効果の点から、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物が好適である。
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物としては特に限定されないが、低発熱性、硬度などが良好に得られ、リバージョンを抑制できるという点から、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
(式中、R
101、R
102及びR
103は、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を表す。x及びyは、同一若しくは異なって、1〜3の整数を表す。kは0〜250の整数を表す。)
kは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、0〜250の整数が好ましく、0〜100の整数がより好ましい。x及びyは、高硬度が効率良く発現できる点から、共に2が好ましい。R101〜R103は、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、炭素数6〜9のアルキル基が好ましい。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は、公知の方法で調製でき、例えば、アルキルフェノールと塩化硫黄とを、モル比1:0.9〜1.25などで反応させる方法などが挙げられる。アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の具体例として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(下記式(I−1))などが挙げられる。
(式中、kは0〜100の整数を表す。)
樹脂架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。下限以上にすることで、低燃費性の改善効果が充分に得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下である。上限以下にすることで、加硫速度が適正レベルになる傾向がある。
前記ゴム組成物において、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成するという点で、硫黄を配合することが好ましい。これにより、上記化合物のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果が良好に得られる。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。下限以上にすることで、本発明の効果が充分に得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好な耐オゾン性、耐変色性、タイヤの外観が得られる傾向がある。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂架橋剤及び硫黄の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。下限以上にすることで、本発明の効果が充分に得られる傾向がある。該合計含有量は、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好な耐オゾン性、耐変色性、タイヤの外観が得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、前記性能バランスの観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
前記ゴム組成物には、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、ワックスを配合することが好ましい。本発明では、ワックスを配合しても茶変色や白変色を軽減できる。また、タイヤ表面に適度な黒色外観と光沢を与えるなど、タイヤ外観が改善される。更に、良好な耐クラック性、耐オゾン性が維持又は改善される。
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、耐オゾン性、コストのバランスが良好になる傾向がある。
前記ゴム組成物は、オイルを配合してもよい。これにより、加工性が改善され、タイヤに柔軟性を与えることができ、本発明の効果が良好に得られる。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。パラフィン系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のPW−32、PW−90、PW−150、PS−32などが挙げられる。また、アロマ系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のAC−12、AC−460、AH−16、AH−24、AH−58などが挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果が好適に得られるという理由から、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。自らもタイヤ表面にブルームするオイルの含有量を上記範囲内とすることにより、後述の化合物のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
前記ゴム組成物は、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、老化防止剤を含有することが好ましい。本発明では、老化防止剤を配合しても、良好な低燃費性を維持又は改善しつつ、茶変色や白変色を軽減でき、耐変色性、タイヤの外観を向上できる。
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、老化防止剤のブルーム量をコントロールし、良好なタイヤの外観が得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部以上、より好ましくは0.5〜5質量部である。
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
前記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜190℃であり、混練時間は、通常30秒〜30分、好ましくは1分〜30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温〜80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。
前記ゴム組成物は、タイヤの各部材に適用可能であるが、なかでも、サイドウォール、内層サイドウォール、サイドウォール補強層等のタイヤ側壁用部材に好適に適用できる。
ここで、サイドウォールとは、ショルダー部からビード部にかけてケースの外側に配された部材であり、具体的には、特開2005−280612号公報の図1、特開2000−185529号公報の図1等に示される部材である。内層サイドウォールとは、多層構造を有するサイドウォールの内層部であり、具体的には、特開2007−106166号公報の図1等に示される部材である。サイドウォール補強層とは、サイドウォール部の内側に配置されたライニングストリップ層のことをいい、具体的には、カーカスプライの内側に接してビード部からショルダー部にわたって配置され、両端方向に厚さを漸減する三日月状の補強ゴム層、カーカスプライ本体部分とその折り返し部の間にビード部からトレッド部にわたって配置される補強ゴム層、複数のカーカスプライ又は補強プライの間に配置される2層の補強ゴム層等が挙げられる(特開2007−326559号公報の図1、特開2004−330822号公報の図1などに示される部材)。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォール等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。
本発明の空気入りタイヤは、例えば、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ(競技用タイヤ等)として使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR1:日本ゼオン社製のBR1250H(リチウム開始剤を用いて重合したスズ変性BR、ビニル含量:10〜13質量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
BR2:宇部興産(株)製のVCR617(SPB含有BR、SPBの含有量:17質量%、SPBの融点:200℃)
カーボンブラック:キャボットジャパン社製のショウブラックN550(N2SA:42m2/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
オイル:出光興産(株)製のプロセスオイルPW−32(パラフィン系プロセスオイル)
化合物1:マレイン酸モノリンゴ酸エステル
化合物2:エチレングリコールジマレエート
化合物3:1,6−へキサンジオールジフマレート
化合物4:N−(カルボキシエチル)マレアミド酸
化合物5:トリメリット酸モノ(ω−アクリロイルオキシPOP(10) )エステル
化合物6:トリメリット酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル )エステル
化合物7:トリメリット酸モノ(ω−メタクリロイルオキシPOP(9) )エステル
化合物8:POE(8)グリセリントリマレエート
化合物9:グリセリンジマレエート
化合物10:ポリブチレンジマレエート
化合物11:ポリ(PEG200)マレエート
化合物12:ポリブチレンアジぺートマレエート
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
樹脂架橋剤:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、上記式(I−1)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、硫黄含有率:24質量%、重量平均分子量:9000)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
加硫促進剤:大内新興化学社製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、V200及び加硫促進剤以外の薬品を180℃になるまで混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄、V200及び加硫促進剤を添加して105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。次に、得られた未加硫ゴム組成物を160℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
得られた加硫ゴム組成物を下記により評価し、結果を表1に示した(基準比較例:比較例1)。
<スコーチタイム>
JIS K 6300に準じて、130℃で所定の未加硫ゴム組成物のスコーチタイム(t10)を測定した。測定結果を、基準比較例を100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほどスコーチタイムが長く、指数は100以上120未満を目標とした。
(スコーチタイム指数)=(基準比較例のスコーチタイム)/(各配合のスコーチタイム)×100
<硬度測定>
JIS K6253に準拠し、25℃の温度で硬度計を用いて各加硫ゴム組成物の硬度を測定(ショア−A測定)し、基準比較例の硬度を100とした指数(各配合の硬度/基準比較例の硬度×100)を計算した。指数が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。なお、硬度指数は98以上を目標とした。
<破断時伸び>
各加硫ゴム組成物から3号ダンベル型を用いて試験片を作成し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定し、基準比較例のEBを100とした指数(各配合のEB/基準比較例のEB×100)を計算した。指数が大きいほど、破壊強度に優れることを示す。なお、EB指数は90以上を目標とした。
<低燃費性>
各加硫ゴム組成物から作成した試験片について、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み±1%の条件下で、tanδを測定し、基準比較例のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗特性(低燃費性)が優れている。なお、転がり抵抗指数は、100以上を目標とした。
(転がり抵抗指数)=(基準比較例のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
<耐オゾン性評価>
JIS K 6259「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に準じて、得られた加硫ゴム組成物から所定のサイズの試験片を作製し、動的オゾン劣化試験を行った。往復運動の周波数0.5±0.025Hz、オゾン濃度50±5pphm、試験温度40℃、引張歪み20±2%の条件下で、48時間試験した後の亀裂(クラックの発生の有無)の状態を観察することで、耐オゾン性を評価した。なお、評価方法は、JIS K 6259に記載の方式にしたがい、亀裂の数と大きさから指数化した数値を、耐オゾン性の指標とした。基準比較例の指標を100として、指数が大きいほど亀裂の数が少なく、亀裂の大きさが小さく、耐オゾン性に優れていることを示す。なお、耐オゾン性指数は100以上を目標とした。
<耐変色性評価>
耐オゾン性試験を終えたサンプルを(株)ミノルタ製色彩色差度計(CR−310)を用い、a値、b値を求めた(L*a*b*表色系)。指標を(a2+b2)−0.5とし、基準比較例の指標を100とした指数(各配合の指標/基準比較例の指標×100)を計算した。指数が大きいほど、変色が少なく、耐変色性に優れることを示す。なお、耐変色性指数は100以上を目標とした。
<外観評価>
耐オゾン性試験を終えたサンプルを屋外に持ち出し、下記指標にて外観評価を行った。
◎基準比較例より黒く、光沢がある
○基準比較例より黒く、やや光沢がある
△基準比較例と同等の茶色
×基準比較例より茶色い
ゴム成分、シリカ、本願特定の化合物、樹脂架橋剤を含む実施例のゴム組成物では、操縦安定性、耐オゾン性(耐クラック性)、耐変色性、タイヤの外観、低燃費性、破壊強度(EB)、耐スコーチ性の性能バランスが顕著に改善された。また、実施例3、比較例1、4〜6から、シリカ、本願特定の化合物、樹脂架橋剤の3成分の併用により、これらの性能バランスが相乗的に改善されることも明らかとなった。