JP2006274046A - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】0℃付近及び30℃付近でのtanδが高く、60℃付近でのtanδが低く、タイヤのドライ性能及びウェット性能、並びに低燃費性を向上させることが可能なゴム組成物を提供する。
【解決手段】スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選択される少なくとも一種の充填剤(B)20〜70質量部と、軟化剤(C)0〜30質量部と、ポリスチレン換算重量平均分子量が2×103〜50×103であり、一種以上のスチレン誘導体単位を含むスチレン系(共)重合体(D)3〜30質量部とを配合して、ゴム組成物を構成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤに関し、特にタイヤのドライ性能及びウェット性能、並びに低燃費性を向上させることが可能なゴム組成物に関するものである。
近年、車両の安全性を向上させるために、タイヤの乾燥路面及び湿潤路面の双方における摩擦係数(μ)を上昇させて、タイヤのドライ性能及びウェット性能を同時に向上させることが求められており、このドライ性能及びウェット性能に関する改善要求に対して、種々の技術が開発されてきた。ここで、タイヤのドライ性能及びウェット性能に直接寄与するタイヤのトレッド用ゴム組成物の開発にあたっては、0℃付近での損失正接(tanδ)と30℃付近での損失正接(tanδ)とを指標とすることが一般に有効であり、具体的には、0℃付近でのtanδが高いゴム組成物をトレッドに用いることで、タイヤの湿潤路面での摩擦係数(μ)を上昇させてウェット性能を向上させることができ、一方、30℃付近でのtanδが高いゴム組成物をトレッドに用いることで、タイヤの乾燥路面での摩擦係数(μ)を上昇させてドライ性能を向上させることができる。
また、昨今の環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求も強まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。ここで、タイヤの転がり抵抗に寄与するタイヤのトレッド用ゴム組成物の開発にあたっては、60℃付近での損失正接(tanδ)を指標とすることが一般に有効であり、具体的には、60℃付近でのtanδが低いゴム組成物をトレッドに用いることで、タイヤの発熱を抑制して転がり抵抗を低減し、結果として、タイヤの低燃費性を向上させることができる。
これに対して、従来、ゴム組成物のtanδを上昇させる手法として、ガラス転移点(Tg)の高いC9芳香族系樹脂をゴム組成物に配合する技術(特許文献1参照)や、分子量が数万の液状スチレン−ブタジエン共重合体をゴム組成物に配合する技術(特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、一般に、ゴム組成物の0℃付近及び30℃付近でのtanδを上昇させつつ、60℃付近でのtanδを低下させることは難しく、これら総ての特性を満たすゴム組成物の開発が求められている。
特開平5−9338号公報 特開昭61−203145号公報
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、0℃付近及び30℃付近でのtanδが高く、60℃付近でのtanδが低く、タイヤのドライ性能及びウェット性能、並びに低燃費性を向上させることが可能なゴム組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、かかるゴム組成物をトレッドに用いた、ドライ性能及びウェット性能、並びに低燃費性に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分に対して、ゴム成分との相溶性が良好で、ガラス転移点が高く且つ比較的分子量の高いスチレン系(共)重合体を配合すると共に、充填剤及び軟化剤の配合量を特定の範囲に規定することで、ゴム組成物の0℃付近及び30℃付近でのtanδが上昇すると共に、60℃付近でのtanδが低下することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のゴム組成物は、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選択される少なくとも一種の充填剤(B)20〜70質量部と、軟化剤(C)0〜30質量部と、ポリスチレン換算重量平均分子量が2×103〜50×103であり、一種以上のスチレン誘導体単位を含むスチレン系(共)重合体(D)3〜30質量部とを配合してなることを特徴とする。
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記スチレン・ブタジエン共重合体ゴムが、少なくとも一種の官能基を有する変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴムである。
本発明のゴム組成物において、前記スチレン系(共)重合体(D)としては、スチレン誘導体を単独重合してなるスチレン系重合体、スチレンと1種以上のスチレン誘導体とを共重合してなるスチレン系共重合体、及び2種以上のスチレン誘導体を共重合してなるスチレン系共重合体が好ましい。
本発明のゴム組成物においては、前記スチレン誘導体の少なくとも一種が、ベンゼン環の置換基として炭素数1〜12のアルキル基を有することが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基を有することが更に好ましく、tert-ブチル基を有することがより一層好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とする。
本発明によれば、0℃付近及び30℃付近でのtanδが高く、60℃付近でのtanδが低く、タイヤのドライ性能及びウェット性能、並びに低燃費性を向上させることが可能なゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物をトレッドに用いた、ドライ性能及びウェット性能、並びに低燃費性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選択される少なくとも一種の充填剤(B)20〜70質量部と、軟化剤(C)0〜30質量部と、ポリスチレン換算重量平均分子量が2×103〜50×103であり、一種以上のスチレン誘導体単位を含むスチレン系(共)重合体(D)3〜30質量部とを配合してなる。
上記スチレン系(共)重合体(D)は、ガラス転移点が高いため、ゴム組成物の0℃付近及び30℃付近でのtanδを上昇させることができる。また、該スチレン系(共)重合体(D)は、比較的分子量が高いと共に、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分(A)との相溶性も比較的良好なため、ゴム組成物の60℃付近でのtanδを低減することができる。そのため、本発明のゴム組成物をタイヤのトレッドに適用することで、タイヤの乾燥路面及び湿潤路面での摩擦係数(μ)の双方を上昇させて、タイヤのドライ性能及びウェット性能を向上させることでき、加えて、タイヤの低燃費性を向上させることもできる。
本発明のゴム組成物のゴム成分(A)は、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含むことを要する。該ゴム成分(A)は、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムの他にも、天然ゴム(NR)や、スチレン・イソプレン共重合体ゴム(SIR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)及びエチレン・プロピレン共重合体等の合成ゴムを含んでもよい。ここで、上記ゴム成分(A)におけるスチレン・ブタジエン共重合体ゴムの含有率は、10〜100質量%の範囲が好ましい。
本発明のゴム組成物においては、上記スチレン・ブタジエン共重合体ゴムとして、少なくとも一種の官能基を有する変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを用いることが好ましい。該官能基としては、充填剤(B)と親和性を有する官能基が好ましく、スズを含む官能基、ケイ素を含む官能基及び窒素を含む官能基等が更に好ましい。ゴム成分(A)が変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含む場合、ゴム組成物の60℃付近でのtanδが更に低くなり、ゴム組成物の低発熱性が更に向上する。上記変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴムは、例えば、活性末端を有するスチレン・ブタジエン共重合体を合成した後、該活性末端を変性剤で変性することで製造できる。ここで、活性末端を有するスチレン・ブタジエン共重合体は、アニオン重合や配位重合により製造することができる。
アニオン重合で活性末端を有するスチレン・ブタジエン共重合体を製造する場合、重合開始剤としては、有機アルカリ金属化合物を用いることが好ましく、リチウム化合物を用いることが更に好ましい。該リチウム化合物としては、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物等が挙げられる。重合開始剤としてヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位であるスチレン・ブタジエン共重合体が得られる。一方、重合開始剤としてリチウムアミド化合物を用いる場合、重合開始末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位であるスチレン・ブタジエン共重合体が得られ、該重合体は、変性剤で変性することなく、本発明における変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴムして用いることができる。なお、重合開始剤としてのリチウム化合物の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられ、これらの中でも、n-ブチルリチウムが好ましい。一方、上記リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。
上記リチウムアミド化合物として、式:Li−AM[式中、AMは、下記式(I):
Figure 2006274046

で表される置換アミノ基又は下記式(II):
Figure 2006274046

で表される環状アミノ基である]で表されるリチウムアミド化合物を用いることで、式(I)で表される置換アミノ基及び式(II)で表される環状アミノ基からなる群から選択される少なくとも一種の窒素含有官能基が導入されたスチレン・ブタジエン共重合体が得られる。
式(I)において、R1は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、3-フェニル-1-プロピル基及びイソブチル基等が好適に挙げられる。また、式(II)において、R2は、3〜16個のメチレン基を有するアルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN-アルキルアミノ-アルキレン基である。ここで、置換アルキレン基には、一置換から八置換のアルキレン基が含まれ、置換基としては、炭素数1〜12の鎖状若しくは分枝状アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。また、R2として、具体的には、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オキシジエチレン基、N-アルキルアザジエチレン基、ドデカメチレン基及びヘキサデカメチレン基等が好ましい。
上記リチウムアミド化合物は、二級アミンとリチウム化合物から予備調製して重合反応に用いてもよいが、重合系中で生成させてもよい。ここで、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン等の他、アザシクロヘプタン(即ち、ヘキサメチレンイミン)、2-(2-エチルヘキシル)ピロリジン、3-(2-プロピル)ピロリジン、3,5-ビス(2-エチルヘキシル)ピペリジン、4-フェニルピペリジン、7-デシル-1-アザシクロトリデカン、3,3-ジメチル-1-アザシクロテトラデカン、4-ドデシル-1-アザシクロオクタン、4-(2-フェニルブチル)-1-アザシクロオクタン、3-エチル-5-シクロヘキシル-1-アザシクロヘプタン、4-ヘキシル-1-アザシクロヘプタン、9-イソアミル-1-アザシクロヘプタデカン、2-メチル-1-アザシクロヘプタデセ-9-エン、3-イソブチル-1-アザシクロドデカン、2-メチル-7-t-ブチル-1-アザシクロドデカン、5-ノニル-1-アザシクロドデカン、8-(4'-メチルフェニル)-5-ペンチル-3-アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1-ブチル-6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8-エチル-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1-プロピル-3-アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3-(t-ブチル)-7-アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5-トリメチル-3-アザビシクロ[4.4.0]デカン等の環状アミンが挙げられる。一方、リチウム化合物としては、上記ヒドロカルビルリチウムを用いることができる。
上記有機アルカリ金属化合物等を重合開始剤として、アニオン重合によりスチレン・ブタジエン共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、1,3-ブタジエンとスチレンとの混合物を重合させることでスチレン・ブタジエン共重合体を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
上記アニオン重合は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。該ランダマイザーは、スチレン・ブタジエン共重合体のミクロ構造を制御することができ、例えば、ブタジエン単位の1,2-結合含量を制御したり、ブタジエン単位とスチレン単位とをランダム化する等の作用を有する。上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレート等が挙げられる。これらランダマイザーの使用量は、重合開始剤の有機アルカリ金属化合物1モル当り0.01〜100モル当量の範囲が好ましい。
上記アニオン重合は、溶液重合、気相重合、バルク重合のいずれで実施してもよいが、溶液重合の場合、溶液中の単量体の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましい。なお、単量体混合物中のスチレンの含有率は、3〜50質量%の範囲が好ましい。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。また、上記アニオン重合の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましい。更に、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うことが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧するのが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いるのが好ましい。
一方、配位重合で活性末端を有するスチレン・ブタジエン共重合体を製造する場合、重合開始剤としては、希土類金属化合物を用いることが好ましく、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分を組み合わせて用いることが更に好ましい。
上記配位重合に用いる(a)成分は、希土類金属化合物、及び希土類金属化合物とルイス塩基との錯化合物等から選択される。ここで、希土類金属化合物としては、希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β-ジケトン錯体、リン酸塩及び亜リン酸塩等が挙げられ、ルイス塩基としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価又は2価のアルコール等が挙げられる。上記希土類金属化合物の希土類元素としては、ランタン、ネオジム、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウムが好ましく、これらの中でも、ネオジムが特に好ましい。また、(a)成分として、具体的には、ネオジムトリ-2-エチルヘキサノエート,それとアセチルアセトンとの錯化合物,ネオジムトリネオデカノエート,それとアセチルアセトンとの錯化合物,ネオジムトリn-ブトキシド等が挙げられる。これら(a)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
上記配位重合に用いる(b)成分は、有機アルミニウム化合物から選択される。該有機アルミニウム化合物としては、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物、ヒドロカルビルアルミニウム水素化物、ヒドロカルビルアルミノキサン化合物等が挙げられ、より具体的には、トリアルキルアルミニウム,ジアルキルアルミニウムヒドリド,アルキルアルミニウムジヒドリド,アルキルアルミノキサン等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。なお、(b)成分としては、アルミノキサンと他の有機アルミニウム化合物とを併用することが好ましい。
上記配位重合に用いる(c)成分は、加水分解可能なハロゲンを有する化合物又はこれらとルイス塩基の錯化合物;三級アルキルハライド、ベンジルハライド又はアリルハライドを有する有機ハロゲン化物;非配位性アニオン及び対カチオンからなるイオン性化合物等から選択される。かかる(c)成分として、具体的には、アルキルアルミニウム二塩化物、ジアルキルアルミニウム塩化物、四塩化ケイ素、四塩化スズ、塩化亜鉛とアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化マグネシウムとアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化ベンジル,塩化t-ブチル,臭化ベンジル,臭化t-ブチル、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これら(c)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
上記重合開始剤は、上記の(a),(b),(c)成分以外に、必要に応じて、1,3-ブタジエン及び/又は非共役ジエン化合物を用いて予備的に調製してもよい。また、(a)成分又は(c)成分の一部又は全部を不活性な固体上に担持して用いてもよい。上記各成分の使用量は、適宜設定することができるが、通常、(a)成分は単量体100g当たり0.001〜0.5mmolである。また、モル比で(b)成分/(a)成分は5〜1000、(c)成分/(a)成分は0.5〜10が好ましい。上記配位重合における重合温度は、-80〜150℃の範囲が好ましい。また、配位重合に用いる溶媒としては、上述のアニオン重合で例示した反応に不活性な炭化水素溶媒を用いることができ、反応溶液中の単量体の濃度もアニオン重合の場合と同様である。更に、配位重合における反応圧力もアニオン重合の場合と同様であり、反応に使用する原材料も、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を実質的に除去したものが望ましい。
上記活性末端を有するスチレン・ブタジエン共重合体の活性末端を変性剤で変性するにあたって、変性剤としては、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、スズ含有化合物等を用いることができる。該変性剤として用いることができる窒素含有化合物としては、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン等が挙げられる。これらの窒素含有化合物を変性剤として用いることで、置換及び非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基並びにピリジル基等の窒素を含む官能基をスチレン・ブタジエン共重合体に導入することができる。
また、上記変性剤として用いることができるケイ素含有化合物としては、ヒドロカルビルオキシシラン化合物が好ましく、下記式(III):
Figure 2006274046

[式中、A1は(チオ)エポキシ、(チオ)インシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリエステル、(チオ)カルボン酸ヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基で;R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基で;R5は単結合又は炭素数1〜20の二価の不活性炭化水素基であり;nは1〜3の整数である]で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物が更に好ましい。該ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該ヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
式(III)において、A1における官能基の中で、イミンはケチミン、アルジミン、アミジンを包含し、(チオ)カルボン酸エステルは、アクリレートやメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを包含する。また、(チオ)カルボン酸の金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Zn等を挙げることができる。上記R3及びR4としては、炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜18のアルケニル基,炭素数6〜18のアリール基,炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,sec-ブチル基,tert-ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロペニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基等が挙げられる。また、上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基等が挙げられる。更に、上記アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。上記R5の内の炭素数1〜20の二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基は、直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。該直鎖状アルキレン基としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基等が挙げられる。また、nは1〜3の整数であるが、3が好ましく、nが2又は3の場合、各R3Oは、同一でも異なってもよい。
式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを挙げることができるが、これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
また、イミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物,メチルジエトキシシリル化合物,エチルジエトキシシリル化合物,メチルジメトキシシリル化合物,エチルジメトキシシリル化合物等を挙げることができるが、これらの中でも、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが特に好ましい。
また、イミン(アミジン)基含有化合物としては、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール,1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールが好ましい。
更に、その他のヒドロカルビルオキシシラン化合物として、以下のものを挙げることができる。即ち、カルボン酸エステル基含有化合物としては、3-メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
また、イソシアネート基含有化合物としては、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
更に、カルボン酸無水物含有化合物としては、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられ、これらの中でも、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
また、上記変性剤としては、下記式(IV):
6 aZXb ・・・ (IV)
[式中、R6は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0〜3で、bは1〜4で、但し、a+b=4である]で表されるカップリング剤も好ましい。式(IV)のカップリング剤で変性したスチレン・ブタジエン共重合体は、少なくとも一種のスズ−炭素結合又はケイ素−炭素結合を有する。式(IV)において、R6は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、該R6として、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。式(IV)のカップリング剤としては、四塩化スズ、R6SnCl3、R6 2SnCl2、R6 3SnCl等が好ましく、四塩化スズが特に好ましい。
上記変性剤による変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選択される少なくとも一種の充填剤(B)を上記ゴム成分(A)100質量部に対して20〜70質量部含む。充填剤(B)の配合量が20質量部未満では、ゴム組成物の耐摩耗性及び破壊特性等が不十分であり、一方、70質量部を超えると、ゴム組成物の低発熱性が不十分となることがある。
上記カーボンブラックとしては、特に限定されるものではないが、FEF,SRF,HAF,ISAF,SAFグレードのもの等が挙げられる。また、該カーボンブラックとしては、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上で、且つジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを配合することで、ゴム組成物の諸物性を改善することができるが、耐摩耗性を向上させる観点からは、HAF,ISAF,SAFグレードのものが更に好ましい。
一方、上記白色充填剤としては、シリカ及び水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、シリカが好ましい。該シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、破壊特性の改良効果並びにウェットグリップ性及び低転がり抵抗性の両立効果に優れる点で、湿式シリカが好ましい。なお、充填剤(B)としてシリカを用いる場合、その補強性を更に向上させる観点から、シランカップリング剤を配合時に添加することが好ましい。該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらの中でも、補強性改善効果の観点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドが好ましい。これらシランカップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のゴム組成物は、軟化剤(C)を含んでもよく、該軟化剤(C)の配合量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して0〜30質量部の範囲である。軟化剤(C)の配合量が30質量部を超えると、加硫ゴムの引張強度及び低発熱性が悪化する傾向がある。上記軟化剤(C)としては、プロセスオイル等を用いることができ、該プロセスオイルとして、より具体的には、パラフィンオイル、ナフテン系オイル、アロマオイル等が挙げられる。これらの中でも、引張強度及び耐摩耗性の観点からは、アロマオイルが好ましく、ヒステリシスロス及び低温特性の観点からは、ナフテン系オイル及びパラフィンオイルが好ましい。
本発明のゴム組成物は、ポリスチレン換算重量平均分子量が2×103〜50×103であり、一種以上のスチレン誘導体単位を含むスチレン系(共)重合体(D)を上記ゴム成分(A)100質量部に対して3〜30質量部含む。スチレン系(共)重合体(D)の配合量が3質量部未満では、ゴム組成物の0℃付近及び30℃付近でのtanδを上昇させる効果、並びに60℃付近でのtanδを低下させる効果が不十分である。
上記スチレン系(共)重合体(D)は、一種以上のスチレン誘導体単位を含むことを要し、例えば、スチレン誘導体を単独重合してなるスチレン系重合体であっても、スチレンと1種以上のスチレン誘導体とを共重合してなるスチレン系共重合体であっても、2種以上のスチレン誘導体を共重合してなるスチレン系共重合体であってもよい。
また、上記スチレン系(共)重合体(D)は、ポリスチレン換算重量平均分子量が2×103〜50×103であることを要する。ここで、スチレン系(共)重合体(D)の重量平均分子量が2×103未満では、ゴム組成物の破壊特性が低下する傾向があり、50×103を超えると、ゴム組成物の加工性が低下する傾向がある。また、目的にもよるが、ポリスチレン換算重量平均分子量が5×103〜50×103のスチレン系(共)重合体(D)をゴム組成物に配合し、該ゴム組成物をトレッドに用いることで、トレッドの性能が最も良好になる。
上記スチレン系(共)重合体(D)は、ガラス転移点が70℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が70℃以上のスチレン系(共)重合体をゴム組成物に配合することで、ゴム組成物の0℃付近及び30℃付近でのtanδを充分に上昇させることができる。
上記スチレン系共重合体としては、ランダム共重合されたものが好ましい。また、該スチレン系共重合体における、スチレン含量は90質量%以下が好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
上記スチレン系(共)重合体(D)の原料モノマーであるスチレン誘導体は、スチレン分子中の水素が一価の置換基で置換されたものであり、スチレン分子のベンゼン環の水素を置換したもの及びスチレン分子のビニル基の水素を置換したものの双方を包含する。該スチレン誘導体の中でも、スチレン分子のベンゼン環の水素を置換したものが好ましく、ビニル基に対してパラ位に置換基を有するものが更に好ましい。ここで、一価の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基等のアルケニル基等が挙げられる。また、該スチレン誘導体の中でも、ベンゼン環の置換基として炭素数1〜12のアルキル基を有するスチレン誘導体が好ましく、ベンゼン環の置換基として炭素数1〜8のアルキル基を有するスチレン誘導体が更に好ましく、ベンゼン環の置換基としてtert-ブチル基を有するスチレン誘導体が特に好ましい。上記スチレン誘導体として、具体的には、メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等のアルキルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のシクロアルキルスチレン、ジビニルベンゼン等のアルケニルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、p-tert-ブチルスチレンが特に好ましい。なお、上記スチレン系(共)重合体(D)においては、モノマーとしてスチレン誘導体を一種以上用いることを要し、二種以上用いてもよい。
上記スチレン系(共)重合体(D)は、モノマーとして少なくとも一種のスチレン誘導体を用い、任意にスチレンを併用して、一般的なオレフィンの重合法で製造することができ、例えば、アニオン重合で製造することができる。なお、スチレン系(共)重合体(D)をアニオン重合で製造する場合、通常は、重合開始剤として有機リチウム化合物を用いて、不活性有機溶媒中にて各モノマーを共重合させる。また、上述のように、スチレン系共重合体としては、ランダム共重合されたものが好ましいため、必要に応じて、ランダマイザーを使用することが好ましい。
上記重合開始剤として用いる有機リチウム化合物としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、i-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム等のアルキルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム等のアリールリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム等のアラルキルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム等のシクロアルキルリチウム、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等のリチウムアミド化合物等が挙げられ、これらの中でも、n-ブチルリチウムが好ましい。これら有機リチウム化合物の使用量は、モノマー100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
上記不活性有機溶媒としては、プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、プロペン、1-ブテン、i-ブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンセン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキサンが好ましい。また、上記不活性有機溶媒は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレート等が挙げられる。これらランダマイザーの使用量は、重合開始剤の有機リチウム化合物1モルに対して0.01〜20モルの範囲が好ましい。
上記スチレン系(共)重合体(D)の製造における、重合温度は、約-80〜150℃の範囲が好ましく、-20〜100℃の範囲が更に好ましい。また、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用するモノマーを実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うのが好ましい。なお、重合反応の圧力は、使用するモノマー、開始剤等の原料や重合温度によっても左右されるが、所望により発生圧力より高い圧力下で実施することができ、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧することが好ましい。また、重合に使用するモノマー、重合開始剤、溶媒等の原材料の総てから、水、酸素、二酸化炭素及び他の触媒毒を予め除去することが好ましい。
本発明のゴム組成物には、一般的なゴム用架橋系を用いることができ、架橋剤と加硫促進剤とを組み合わせて用いることが好ましい。ここで、架橋剤としては、硫黄等が挙げられ、架橋剤の使用量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して硫黄分として0.1〜10質量部の範囲が好ましく、1〜5質量部の範囲が更に好ましい。架橋剤の配合量がゴム成分100質量部に対して硫黄分として0.1質量部未満では、加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性及び低発熱性が低下し、10質量部を超えると、ゴム弾性が失われる。
一方、上記加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、2-メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等のチアゾール系加硫促進剤、ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系加硫促進剤等が挙げられる。該加硫促進剤の使用量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲が好ましく、0.2〜3質量部の範囲が更に好ましい。これら加硫促進剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分(A)、充填剤(B)、軟化剤(C)、スチレン系(共)重合体(D)、シランカップリング剤、架橋剤、加硫促進剤の他に、例えば、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤等のゴム業界で通常用いられる添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
本発明のゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等のタイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホース、その他の工業製品等にも用いることができるが、タイヤのトレッドとして特に好適である。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とする。該タイヤは、上述の0℃付近及び30℃付近でのtanδが高く、60℃付近でのtanδが低いゴム組成物をトレッドに適用してなるため、ドライ性能及びウェット性能、並びに低燃費性に優れる。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をトレッドに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<重合体Aの合成>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン 300g、1,3-ブタジエン 40g、スチレン 10g、ジテトラヒドロフリルプロパン 0.43mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)0.38mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体A(未変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴム)を得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として測定したところ、重合体Aは、重量平均分子量(Mw)が280,000であった。また、重合体のブタジエン部分のビニル結合量を赤外法で求め、結合スチレン量を1H-NMRスペクトルの積分比より算出したところ、重合体Aは、ビニル結合量が52%であり、結合スチレン量が20質量%であった。更に、重合体のムーニー粘度を、東洋精機社製のRLM−01型テスターを用いて、100℃で測定したところ、重合体Aは、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が64であった。
<重合体Bの合成>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン 300g、1,3-ブタジエン 40g、スチレン 10g、ジテトラヒドロフリルプロパン 0.43mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)0.48mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、重合反応系に、変性剤として四塩化スズ(TTC)を0.43mmol加え、更に50℃で30分間変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体B(変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴム)を得た。上記と同様にして得られた重合体を分析したところ、重合体Bは、変性反応前の重量平均分子量(Mw)が186,000で、変性反応後の重量平均分子量(Mw)が572,000であり、ビニル結合量が51.9%であり、結合スチレン量が20質量%であり、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が76であった。
<スチレン系共重合体Aの合成>
乾燥し、窒素置換された温度調整ジャケット付き容積2Lのステンレス製耐圧反応容器に、予め乾燥したシクロヘキサン 500g、p-tert-ブチルスチレン 70g及びスチレン 30gをそれぞれ加えた。ジャケット温度を調整して内温を40℃に調整した後、ビステトラヒドロフリルプロパン5mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)のヘキサン溶液(n-BuLi:10mmol)を加え、重合反応を行った。25分後に重合系の温度が75℃になるように温度調整を行いながら、重合反応を行った。更に、重合系の温度を15分間維持した後、2,6-ジ-ターシャリーブチルパラクレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度=5%)0.5mLを重合系に加えて、重合反応を停止させ、常法に従って乾燥することによりスチレン系共重合体Aを得た。得られた重合体は、p-tert-ブチルスチレン単位が70%、スチレン単位が30%で、スチレンがランダムに繋がっていた。また、上記と同様にして分子量を測定したところ、得られたスチレン系共重合体Aは、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10×103であることが分った。更に、スチレン系共重合体Aのガラス転移点は、120℃であった。
<スチレン系共重合体Bの合成>
p-tert-ブチルスチレンの代わりにp-メチルスチレンを用い、p-メチルスチレン/スチレンの質量比、モノマー総量/n-BuLiの質量比を変化させる以外(ビステトラヒドロフリルプロパン/n-BuLiのモル比は0.5に固定)は、上記スチレン系共重合体Aの合成例と同様にして、スチレン系共重合体Bを得た。得られた重合体は、p-メチルスチレン単位が50質量%、スチレン単位が50質量%で、スチレンがランダムに繋がっていた。また、スチレン系共重合体Bは、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10×103で、ガラス転移点が105℃であった。
次に、上記重合体A又はB、及びスチレン系共重合体A又はBを用いて、表1に示す配合1又は配合2に従ってゴム組成物を調製し(具体的には、加硫系を除く成分を第1ステージで混練りした後、加硫系を加えて、第2ステージで更に混練りして調製)、得られたゴム組成物のtanδを下記の方法で測定した。結果を表2及び図1〜4に示す。
<tanδの測定法>
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、温度0℃、30℃又は60℃、周波数15Hz、歪5%でtanδをそれぞれ測定し、比較例1のゴム組成物のtanδを100として指数表示した。0℃でのtanδが大きい程、湿潤路面での摩擦係数(μ)が大きく、ウェット性能が良好であることを示し、30℃でのtanδが大きい程、乾燥路面での摩擦係数(μ)が大きく、ドライ性能が良好であることを示し、60℃でのtanδが小さい程、低発熱性(低燃費性)に優れることを示す。
Figure 2006274046
*1 使用したゴム成分(A)の組成を表2に示す.
*2 東海カーボン(株)製, 商標:シーストKH(N339).
*3 日本シリカ工業(株)製, 商標:ニプシルAQ.
*4 使用したスチレン系共重合体の種類及び配合量を表2に示す.
*5 デグサ社製, 商標:Si69, ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド.
*6 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*7 ジフェニルグアニジン.
*8 メルカプトベンゾチアジルジスルフィド.
*9 N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド.
Figure 2006274046
表2及び図1〜4から明らかなように、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分(A)にスチレン系共重合体(D)を配合した実施例のゴム組成物は、ドライ性能及びウェット性能の双方が改善している上、低燃費性(低発熱性)にも優れていた。一方、スチレン系共重合体(D)を含まない比較例のゴム組成物は、実施例のゴム組成物に比べ、ドライ性能及びウェット性能が劣っていた。
配合1に従う実施例及び比較例のゴム組成物の0℃でのtanδ及び30℃でのtanδの関係を示すグラフである。 配合1に従う実施例及び比較例のゴム組成物の0℃でのtanδ及び60℃でのtanδの関係を示すグラフである。 配合2に従う実施例及び比較例のゴム組成物の0℃でのtanδ及び30℃でのtanδの関係を示すグラフである。 配合2に従う実施例及び比較例のゴム組成物の0℃でのtanδ及び60℃でのtanδの関係を示すグラフである。

Claims (9)

  1. スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群から選択される少なくとも一種の充填剤(B)20〜70質量部と、軟化剤(C)0〜30質量部と、ポリスチレン換算重量平均分子量が2×103〜50×103であり、一種以上のスチレン誘導体単位を含むスチレン系(共)重合体(D)3〜30質量部とを配合してなることを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記スチレン・ブタジエン共重合体ゴムが、少なくとも一種の官能基を有する変性スチレン・ブタジエン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記スチレン系(共)重合体(D)が、スチレン誘導体を単独重合してなるスチレン系重合体であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  4. 前記スチレン系(共)重合体(D)が、スチレンと1種以上のスチレン誘導体とを共重合してなるスチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  5. 前記スチレン系(共)重合体(D)が、2種以上のスチレン誘導体を共重合してなるスチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  6. 前記スチレン誘導体の少なくとも一種がベンゼン環の置換基として炭素数1〜12のアルキル基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
  7. 前記スチレン誘導体の少なくとも一種がベンゼン環の置換基として炭素数1〜8のアルキル基を有することを特徴とする請求項6に記載のゴム組成物。
  8. 前記スチレン誘導体の少なくとも一種がベンゼン環の置換基としてtert-ブチル基を有することを特徴とする請求項7に記載のゴム組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
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