JP4489389B2 - 微粒銀粉の製造方法 - Google Patents

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Description

本件出願に係る発明は、微粒銀粉の製造方法に関するものである。
従来から銀粉の製造には、特許文献1に記載したように硝酸銀溶液とアンモニア水とで銀アンミン錯体水溶液を製造し、これに有機還元剤を添加する湿式還元プロセスが採用されてきた。近年、これらの銀粉の主な用途は、チップ部品、プラズマディスプレイパネル等の電極や回路の形成に用いられている。
特開2001−107101号公報
従って、その電極及び回路には、形成する回路及び電極等の大幅なファイン化が要求され、配線の高密度化、高精度化と同時に高い信頼性が要求されるようになってきている。
しかしながら、この従来の製造方法で得られる銀粉の粉粒は、その一次粒子の平均粒径DIAが通常は0.6μmを超え、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50は1.0μmを超え、D50/DIAで表される凝集度が1.7を超えるのが実情であった。そのため、近年のファインピッチ化した回路形成等には不向きであり、製品歩留まりの大きな低下要因となっていた。
一方、銀粉の使用方法からみると、次のような問題点が生じていた。従来から、銀ペーストを用いた回路形成においては、加熱温度が300℃以下という非焼成若しくは低温焼結型の用途が多く、低温での高い焼結性能を得るためには、低結晶性の銀粉が好ましいとされてきた。しかし、低結晶性の銀粉を得るためには、製造条件上、還元の速い反応系を採用せざるを得ず、その結果、結晶性は低いものの、凝集の著しい銀粉しか得られなかった。
これらのことから、市場では、従来にない微粒の銀粉であって、しかも粉粒の凝集の少ない単分散により近い分散性を備え、且つ、低温焼結性に優れた銀粉の供給が求められてきたのである。
また、一方では、銀粉に不純物量の少ないことが求められてきた。即ち、銀粉の製造は、上述した湿式還元プロセスが採用されており、そのプロセスで使用する還元剤等が銀粉の粉粒表面に残留するのである。従って、従来の製造方法を採用する以上、不可避的な問題であった。そして、銀粉の不純物量が増加すると、その銀粉を用いて形成した導体の電気的抵抗が増加するのである。
その結果、市場では銀粉に対し、微粒で、且つ、高分散であり、しかも、不純物含有量の少ないことに対する要求が行われてきたのである。
そこで、本件発明者等は、従来の硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合して反応させ銀アンミン錯体水溶液を得て、これに還元剤を添加することにより銀粒子を還元析出させ、濾過、洗浄、乾燥させるという製造方法を基本として、その製造方法に創意を凝らすことで、鋭意研究を行った。その結果、従来の製造方法では得ることのできないレベルの微粒銀粉を得ることができ、しかも、その微粒銀粉の不純物量を著しく低減化することで、従来にない微粒銀粉を得ることが可能となったのである。更に、本件発明に係る製造方法は、その微粒銀粉を歩留まりよく、安定的に得ることのできる製造方法に想到したのである。以下、本件発明に関して説明する。
<微粒銀粉の製造方法>
本件発明にかかる製造方法は、硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合して反応させ銀アンミン錯体水溶液を得て、これと有機還元剤とを接触反応させて銀粒子を還元析出させ、濾過、洗浄、乾燥させて銀粉を製造する方法において、添加後において希薄な濃度となる還元剤量、硝酸銀量、アンモニア水量を用いるという点が大きな特徴である。従来、還元剤溶液と銀アンミン錯体水溶液とは槽内で一括して混合されるのが一般的であり、そのため一般的に銀濃度を10g/l以上の濃度とするため、多くの硝酸銀量、還元剤量及びアンモニア水量を添加しなければ、設備の規模に対する生産性を確保することが出来なかったのである。
本件発明にかかる製造方法における第1の特徴は、銀アンミン錯体水溶液と有機還元剤とを接触反応させた後の有機還元剤濃度が低く、生成した銀粉の粉粒表面に吸着残留したり、粉粒の成長過程で粉粒内部に取り込まれる有機還元材料を低減化できる点にある。従って、この混合後の溶液において、銀濃度が1g/l〜6g/lとし、有機還元剤濃度を1g/l〜3g/lに維持することが、最も好ましいのである。
ここで、銀濃度と還元剤量とは比例的な関係にあり、銀濃度が高いほど量的に多くの銀粉を得ることが可能となるのは当然である。しかし、ここでの銀濃度が6g/lを超えるものとすると、析出する銀粒子が粗粒化する傾向があり、何ら従来の銀粉と変わらない粒径となり、本件発明で言う高分散性を備えた微細銀粉を得ることができなくなるのである。これに対し、ここでの銀濃度が1g/l未満となると、微粒銀粉としてきわめて細かなものが得られるものの、微細になりすぎて吸油量が増大し、ペースト粘度の上昇を招くため、有機ビヒクル量を増加させる必要が生じ、最終的に形成した焼結導体の膜密度が低く、電気抵抗が上昇する傾向が生じるのである。加えて、必要となる工業的生産性を満足しないものとなるのである。
そして、上記銀濃度が1g/l〜6g/lとし、有機還元剤濃度を1g/l〜3g/lに維持することが、本件発明にかかる微粒銀粉を歩留まり良く得るには最も適した条件となる。ここで、有機還元剤濃度を1g/l〜3g/lとしているのは、銀アンミン錯体水溶液の銀濃度との関係において微粒の銀粉を得るのに最も適した範囲として選択するのである。有機還元剤濃度が3g/lを超えると、銀アンミン錯体水溶液に対し添加する還元剤液量は少なくなるが、還元析出する銀粉の粉粒の凝集の進行が著しくなり始め、粉粒に含まれる不純物量(本件明細書では、不純物量を炭素含有量として捉えている。)が急激に多くなり始めるのである。一方、有機還元剤濃度を1g/l未満とすると、使用する還元剤のトータル液量が増大し、廃水処理量も大きくなり、工業的経済性を満足しないものとなるのである。
ここで言う「有機還元剤」とは、ヒドロキノン、アスコルビン酸、グルコース等である。中でも、有機還元剤にはヒドロキノンを選択的に使用することが望ましい。本件発明においてヒドロキノンは、他の有機還元剤と比べて比較的に反応性に優れ、結晶子径が小さな低結晶性の銀粉を得るために最も適した反応速度を備えるものと言えるのである。
そして、前記有機還元剤と組み合わせて他の添加剤を用いることも可能である。ここで言う添加剤とは、ゼラチン等の膠類、アミン系高分子剤、セルロース類等であり銀粉の還元析出プロセスを安定化させ、同時に一定の分散剤としての機能を果たすものであることが望ましいのであり、有機還元剤、工程の種類等に応じて適宜選択的に使用すれば良いのである。
そして、以上のようにして得た銀アンミン錯体水溶液と還元剤とを接触反応させ微粒銀粉を還元析出させる方法において、本件発明では、図1に示すように、銀アンミン錯体水溶液S1が流れる一定の流路(以上及び以下において「第一流路」と称している。)を流れ、その第一流路aの途中に合流する第二流路bを設け、この第二流路bを通じて有機還元剤及び必要に応じた添加剤S2を第一流路a内に流し、第一流路aと第二流路bとの合流点mで接触混合して、銀粒子を還元析出させる方法(以下、この方法を「合流混合方式」と称することとする。)を採用することが望ましいのである。
このような合流混合方式を採用することにより、2つの液の混合時間が最短で完了し、系内が均一な状態で反応が進行するため、均一な形状の粉粒が形成される。また、混合後の溶液全体としてみたときの有機還元剤量が低いということは、還元析出する微粒銀粉の粉粒表面へ吸着残留する有機還元剤量が少なくなる。結果として、濾過して乾燥して得られる微粒銀粉の付着不純物量を低減化することが可能となるのである。この微粒銀粉の付着不純物量の低下により、銀ペーストを経て形成される焼結導体の電気抵抗の低減化も図れることになるのである。
更に、硝酸銀水溶液とアンモニア水とを接触反応させて、銀アンミン錯体水溶液を得る際に、硝酸銀濃度が2.6g/l〜48g/lの硝酸銀水溶液を用いて、銀濃度が2g/l〜12g/lの銀アンミン錯体水溶液を得ることが望ましいのである。ここで、硝酸銀水溶液の濃度を規定すると言うことは、硝酸銀水溶液の液量を規定しているのと同義であり、銀アンミン錯体水溶液の銀濃度が2g/l〜12g/lとすることを考えるに、そこに添加するアンモニア水の濃度及び液量が必然的に定まることになるのである。現段階において、明確な技術的な理由は判明していないが、ここで言う硝酸銀濃度が2.6g/l〜48g/lの硝酸銀水溶液を用いることにより、最も良好な製造安定性を示し品質的に安定した微粒銀粉を得ることが出来るのである。
そして、本件発明にかかる製造方法における第2の特徴は、最終的に行う洗浄であり、非常に重要なものとなる。このときの洗浄は、水洗浄とアルコール洗浄とを組み合わせて行っても、アルコール洗浄のみを使用しても構わないが、アルコールで洗浄する際の洗浄を強化するのである。即ち、還元析出した微粒銀粉40gに対しては、通常100ml程度の純水で洗浄を行い、その後、50ml程度のアルコールでアルコール洗浄を行うのである。これに対し、本件発明では、アルコール洗浄を行う際に200ml以上という、微粒銀粉1kgあたりを5L以上の過剰アルコールで洗浄するのである。
このような洗浄強化による不純物の低減が図れるのも、微粒銀粉を得る際の銀アンミン錯体水溶液と還元剤との接触反応において、希薄な濃度の反応系を採用し混合後の溶液全体としてみたときの有機還元剤量を低く抑える手法を採用しているからである。
<微粒銀粉>
次に、微粒銀粉に関して説明する。本件発明にかかる微粒銀粉の製造方法で得られる微粒銀粉は、以下のa.〜c.の粉体特性を備えることが大きな特徴である。これらの粉体特性は、現在の粉体測定技術のうち、本件発明にかかる微粒銀粉の特徴が最も顕著に現れ、且つ、同時に成立する特性を列挙したのである。以下、各特性ごとに説明する。
a.の特性は、走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径DIAが0.6μm以下というものである。ここで、「走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径DIA」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銀粉の観察像(本件発明にかかる微粒銀粉の場合には倍率10000倍、従来の銀粉の場合は倍率3000〜5000倍で観察するのが好ましい。)を画像解析することにより得られる平均粒径のことである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される微粒銀粉の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、平均粒径DIAを求めたものである。この微粒銀粉の観察像を画像処理することにより得られる平均粒径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、一次粒子の平均粒径が確実に捉えられていることになる。本件発明で言う微粒銀粉のDIAは、本件発明者らが観察する限り0.01μm〜0.6μmの範囲に殆どが入ってくるが、現実には更に微細な粒径のものが確認できる場合もあり、下限値を敢えて明記していないのである。
b.の特性は、本件発明にかかる微粒銀粉が、従来の銀粉に無いほど高い分散性を示すことから、この分散性を示す指標として「凝集度」を用いたのである。
本件明細書で言う凝集度とは、前記一次粒子の平均粒径DIAと、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50とを用いてD50/DIAで表される値のことである。ここで、D50とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる重量累積50%における粒径のことであり、この平均粒径D50の値は、真に粉粒の一つ一つの径を直接観察したものではなく、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて、平均粒径を算出していると言えるのである。即ち、現実の銀粉の粉粒は、個々の粒子が完全に分離した、いわゆる単分散粉ではなく、複数個の粉粒が凝集した状態になっているのが通常と考えられるからである。しかしながら、粉粒の凝集状態が少なく、単分散に近いほど、平均粒径D50の値は小さなものとなるのが通常である。本件発明で用いる微粒銀粉のD50は、0.25μm〜0.80μm程度の範囲となり、従来の製造方法では全く得られなかった範囲の平均粒径D50を持つ微粒銀粉となるのである。なお、本件明細書における、レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、微粒銀粉0.1gをイオン交換水と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて測定したものである。
これに対し、「走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径DIA」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銀粉の観察像を画像解析することにより得られる平均粒径のことであり、凝集状態を考慮することなく一次粒子の平均粒径が確実に捉えられているものである。
この結果、本件発明者等は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の平均粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いて、D50/DIAで算出される値を凝集度として捉えることとしたのである。即ち、同一ロットの微粒銀粉においてD50とDIAとの値が同一精度で測定できるものと仮定して、上述した理論で考えると、凝集状態のあることを測定値に反映させるD50の値は、DIAの値よりも大きな値になると考えられる。このとき、D50の値は、微粒銀粉の粉粒の凝集状態がなくなるほど、限りなくDIAの値に近づいてゆき、凝集度であるD50/DIAの値は、1に近づくことになる。凝集度が1となった段階で、粉粒の凝集状態が全く無い単分散粉と言えるのである。
そこで、本件発明者等は、凝集度と各凝集度の微粒銀粉を用いて製造した微粒銀粉ペーストの粘度、焼結加工して得られる導体の表面平滑性等との相関関係を調べてみた。その結果、極めて良好な相関関係が得られる事がわかったのである。このことから分かるように、微粒銀粉の持つ凝集度をコントロールしてやれば、その微粒銀粉を用いて製造する微粒銀粉ペーストの粘度の自由なコントロールが可能となると判断できるのである。しかも、凝集度を1.5以下にしておけば、微粒銀粉ペーストの粘度、焼結加工後の表面平滑性等の変動を極めて狭い領域に納めることが可能となることが分かったのである。また、凝集状態が解消されていればいるほど、その微粒酸化銀粉を用いて焼結させて得られる導体の膜密度が向上し、結果として形成した焼結導体の電気的抵抗を低くすることが可能となるのである。
また、現実に凝集度を算出してみると、1未満の値を示す場合もある。これは、凝集度の算出に用いるDIAを真球と仮定しているからと考えられ、理論的には1未満の値にはならないのであるが、現実には、真球ではないがために1未満の凝集度の値が得られるようである。
c.の特性は結晶子径が10nm以下というものであり、この結晶子径と焼結開始温度とは、非常に密接な関係を有するものである。即ち、平均粒径が同等の銀粉同士で対比すれば、結晶子径が小さなものであるほど、低温での焼結が可能となるのである。従って、本件発明にかかる微粒銀粉のように微粒であるが故に表面エネルギーが大きく、しかも、10nm以下という小さな結晶子径を備えることで、焼結開始温度を低温化することができるのである。ここで、結晶子径に関して下限値を設けていないが、測定装置、測定条件等により一定の測定誤差が生じるためである。また、結晶子径が10nmを下回る範囲での測定値に高い信頼性を求めることが困難であり、敢えて下限値を定めるとしたならば、本件発明者らの研究の結果得られた2nm程度であると考える。
d.の特性は、有機不純物含有量が炭素量換算で0.25wt%以下というものである。ここでは、炭素量含有量を有機不純物含有量の指標として用い、銀粉の粉粒に付着した不純物量の目安しているのである。このときの炭素含有量の測定は、堀場製作所製 EMIA−320Vを用いて、微粒銀粉0.5g、タングステン粉1.5g、スズ粉0.3gを混合し、これを磁性るつぼ内に入れ、燃焼−赤外吸収法により測定したものである。従来の製造方法で得られた銀粉の炭素含有量は、いかに洗浄を強化しても0.25wt%を超える炭素量を含むものとなるのである。
本件発明に係る微粒銀粉の製造方法で得られる微粒銀粉は、上述してきたa.〜d.の粉体特性を備えているため、従来にない銀粉であると捉えることが出来る。しかも、当該微粒銀粉を焼結開始温度という特性から見ると、240℃以下という低温での焼結開始が可能な微粒銀粉と言えるのである。また、この焼結開始温度に関しても下限値を特に規定していないが、本件発明者らの行った研究及び一般的な技術常識を考慮すれば、170℃を下回る焼結開始温度を得ることは殆ど不可能であり、下限値に相当する温度であると考えている。
更に、上記してきた粉体特性を備える効果として、本件発明にかかる微粒銀粉のタップ充填密度は4.0g/cm以上という高いものとなるのである。ここで言うタップ充填密度は、微粒銀粉200gを精秤し、150cmのメスシリンダーに入れ、ストローク40mmで1000回の落下を繰り返しタッピングした後、微粒銀粉の容積を測定するという方法で測定したものである。このタップ充填密度は、理論的に微細な粒径を持ち、粉粒同士の凝集の無い分散性の高い状態であるほど、高い値が得られることになる。従来の銀粉のタップ充填密度が4.0g/cm未満であることを考慮すれば、本件発明にかかる微粒銀粉は、非常に微細で且つ分散性に優れたものであるとの裏付けにもなるのである。
本件発明に係る微粒銀粉の製造方法で得られる微粒銀粉は従来に無いほど微細なものであり、分散性が高く、不純物量の少ない、従来の銀粉には見られない微粒粉であることが分かるのである。また、以上に述べた製造方法を採用することで、本件発明に係る微粒銀粉を効率よく得ることが可能となるのである。
以下、本件発明の最良の実施の形態を、比較例と対比しつつ、詳細に説明することとする。
本実施例では、上述した製造方法を用いて微粒銀粉を製造し得られた微粒銀粉の粉体特性を測定した。そして、更に、微粒銀粉を用いて銀ペーストを製造し、試験回路を形成し、導体抵抗及び焼結開始温度の測定を行った。
最初に63.3gの硝酸銀を9.7リットルの純水に溶解させ硝酸銀水溶液を調製し、これに235mlの25wt%濃度アンモニア水を一括で添加して攪拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得たのである。
そして、この銀アンミン錯体水溶液を、図1に示した内径13mmの第一流路aに流量1500ml/secで導入し、第二流路bから還元剤を流量1500ml/secで流し合流点mで20℃の温度になるようにして接触させ、微粒銀粉を還元析出させた。このときに用いた還元剤には、21gのヒドロキノンを10リットルの純水に溶解させたヒドロキノン水溶液を用いた。従って、混合が終了した時点でのヒドロキノン濃度は、約1.04g/lであり、非常に希薄な濃度である。
以上のようにして得られた微粒銀粉40gを分取するため、ヌッチェを用いて濾過し、100mlの水と600mlのメタノールとを用いて洗浄し、更に70℃×5時間の乾燥を行い微粒銀粉を得たのである。この得られた微粒銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図2に示している。
以上のようにして得られた微粒銀粉の粉体特性は、表1に実施例2及び比較例で得られた銀粉の粉体特性と共に掲載している。従って、ここでは以上に述べてきた説明で測定方法等が不明なものについて説明しておくこととする。表1の焼結開始温度は、微粒銀粉0.5gを天秤で精秤し、これを2t/cmの圧力で1分間プレスしペレット状にし、セイコーインスツルメンツ社製の熱機械分析装置(TMA装置)であるTMA/SS6000を用いて、空気流量200cc/分、昇温速度2℃/分、保持時間0分の条件で、常温〜900℃までの範囲で測定した。表1に記載した銅体抵抗は、各銀粉を用いて銀ペーストを製造し、セラミック基板上に回路を引き回し、180〜250℃の温度で焼結加工して得られた1mm幅回路を用いて測定したものである。なお、銀ペーストの組成は、微粒銀粉85wt%、エチルセルロース0.75wt%、ターピネオール14.25wt%としたのである。FIB分析は析出結晶粒の大きさを測定し、結晶子径の測定に用いたのである。
本実施例では、実施例1と異なる製造条件を用いて微粒銀粉を製造し得られた微粒銀粉の粉体特性を測定した。そして、更に、微粒銀粉を用いて銀ペーストを製造し、試験回路を形成し、導体抵抗及び焼結開始温度の測定を行った。
最初に63.3gの硝酸銀を3.1リットルの純水に溶解させ硝酸銀水溶液を調製し、これに235mlの25wt%濃度アンモニア水を一括で添加して攪拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得たのである。
そして、この銀アンミン錯体溶液を、図1に示した内径13mmの第一流路aに流量1500ml/secで導入し、第二流路bから還元剤を流量1500ml/secで流し合流点mで20℃の温度になるようにして接触させ、微粒銀粉を還元析出させた。このときに用いた還元剤には、21gのヒドロキノンを3.4リットルの純水に溶解させたヒドロキノン水溶液を用いた。従って、混合が終了した時点でのヒドロキノン濃度は、約3.0g/lであり、非常に希薄な濃度である。
以上のようにして得られた微粒銀粉40gを実施例1と同様にして、ヌッチェを用いて濾過し、100mlの水と600mlのメタノールとを用いて洗浄し、更に70℃×5時間の乾燥を行い微粒銀粉を得たのである。この得られた微粒銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図3に示している。そして、以上のようにして得られた微粒銀粉の粉体特性は、表1に実施例1及び比較例で得られた銀粉の粉体特性と共に掲載している。
[比較例1]
本比較例では、実施例1の洗浄条件のみを変更したのであり、重複した説明を避けるため、洗浄条件のみを説明する。
実施例1で得られた微粒銀粉40gを、ヌッチェを用いて濾過し、100mlの水と50mlのメタノールとを用いて洗浄し、更に70℃×5時間の乾燥を行い微粒銀粉を得たのである。この得られた微粒銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図2に示したと同様である。そして、以上のようにして得られた微粒銀粉の粉体特性は、表1に他の実施例及び比較例で得られた銀粉の粉体特性と共に掲載している。
[比較例2]
本比較例では、実施例2の洗浄条件のみを変更したのであり、重複した説明を避けるため、洗浄条件のみを説明する。
実施例2で得られた微粒銀粉40gを、ヌッチェを用いて濾過し、100mlの水と50mlのメタノールとを用いて洗浄し、更に70℃×5時間の乾燥を行い微粒銀粉を得たのである。この得られた微粒銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図3に示したと同様である。そして、以上のようにして得られた微粒銀粉の粉体特性は、表1に他の実施例及び比較例で得られた銀粉の粉体特性と共に掲載している。
[比較例3]
本比較例では、以下に示す製造方法を用いて微粒銀粉を製造し得られた微粒銀粉の粉体特性を測定した。そして、更に、微粒銀粉を用いて銀ペーストを製造し、試験回路を形成し、導体抵抗及び焼結開始温度の測定を行った。
最初に63.3gの硝酸銀を1.0リットルの純水に溶解させ硝酸銀水溶液を調製し、これに235mlの25wt%濃度アンモニア水を一括で添加して攪拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得たのである。
そして、この銀アンミン錯体溶液を反応槽に入れ、ここに還元剤として21gのヒドロキノンを1.3リットルの純水に溶解させたヒドロキノン水溶液を一括で添加して、液温を20℃に維持して攪拌し反応させることで銀粉を還元析出させた。この混合が終了した時点でのヒドロキノン濃度は、約8.23g/lであり、高濃度なものとなっている。
以上のようにして得られた微粒銀粉を実施例1と同様にして、ヌッチェを用いて濾過し、100mlの水と50mlのメタノールとを用いて洗浄し、更に70℃×5時間の乾燥を行い微粒銀粉を得たのである。この得られた銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図4に示している。そして、以上のようにして得られた微粒銀粉の粉体特性は、表1に上記実施例及び第2比較例で得られた銀粉の粉体特性と共に掲載している。
[比較例4]
本比較例では、以下に示す製造方法を用いて微粒銀粉を製造し得られた微粒銀粉の粉体特性を測定した。そして、更に、微粒銀粉を用いて銀ペーストを製造し、試験回路を形成し、導体抵抗及び焼結開始温度の測定を行った。
最初に63.3gの硝酸銀を300mlの純水に溶解させ硝酸銀水溶液を調製し、これに235mlの25wt%濃度アンモニア水を一括で添加して攪拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得たのである。
そして、この銀アンミン錯体溶液を反応槽に入れ、ここに3gのゼラチンを200mlの純水に添加し、更に還元剤として21gのヒドロキノンを700mlの純水に溶解させたヒドロキノン水溶液を一括で添加して、液温を20℃に維持して攪拌し反応させることで銀粉を還元析出させた。この混合が終了した時点でのヒドロキノン濃度は、約14.5g/lであり、高濃度なものとなっている。
以上のようにして得られた微粒銀粉を実施例1と同様にして、ヌッチェを用いて濾過し、100mlの水と50mlのメタノールとを用いて洗浄し、更に70℃×5時間の乾燥を行い微粒銀粉を得たのである。この得られた銀粉の走査型電子顕微鏡写真を図5に示している。そして、以上のようにして得られた微粒銀粉の粉体特性は、表1に上記実施例及び第2比較例で得られた銀粉の粉体特性と共に掲載している。
[比較例5]
本比較例では、以下に示す製造方法を用いて微粒銀粉を製造し得られた微粒銀粉の粉体特性を測定した。そして、更に、微粒銀粉を用いて銀ペーストを製造し、試験回路を形成し、導体抵抗及び焼結開始温度の測定を行った。
最初に260mlの純水に20gのポリビニルピロリドンを溶解させ、更に50gの硝酸銀を溶解させ硝酸銀水溶液を調製し、これに25gの硝酸を一括で添加して攪拌することにより銀含有硝酸系溶液を得たのである。この混合が終了した時点でのアスコルビン酸濃度は、約36.0g/lとなっている。
一方、還元剤として35.8gのアスコルビン酸を500mlの純水に添加し溶解させ還元溶液を調製した。
そして、この銀含有硝酸系溶液を反応槽に入れ、ここに上記還元溶液を一括で添加して、液温を25℃に維持して攪拌し反応させることで銀粉を還元析出させた。
以上のようにして得られた微粒銀粉を実施例1と同様にして、ヌッチェを用いて濾過し、100mlの水と50mlのメタノールとを用いて洗浄し、更に70℃×5時間の乾燥を行い微粒銀粉を得たのである。そして、以上のようにして得られた微粒銀粉の粉体特性は、表1に上記実施例及び比較例で得られた銀粉の粉体特性と共に掲載している。
<実施例と比較例との対比検討> 上述の各実施例と比較例とを表1を参照しつつ対比することとする。また、図2〜図5に示した走査型電子顕微鏡写真を見れば、粉粒の一次粒子の粒径が明瞭に理解できると考える。
この表1から明らかなように、粉体特性値の各々を比較しても、従来の製造方法を用いて製造した銀粉に比べ、上記実施例で得られた微粒銀粉は極めて微細なものであり、分散性が高く、不純物量も低く、従来の銀粉には存在しない微粒粉であることが分かるのである。また、焼結導体特性に関しても、実施例の微粒銀粉を用いて回路形成した場合の膜密度は高く、不純物量も少ないため電気抵抗も低くなっている。各比較例の場合には、導体抵抗が高く測定不能となることが分かるのである。
本件発明に係る微粒銀粉の製造方法で得られる微粒銀粉は、従来の銀粉では考えられないほどの微細な粉粒で構成されたものであり、しかも、その粉粒の凝集度合いが低く、従来の銀粉と対比しても、非常に優れた分散性を示すものである。また、本件発明にかかる微粒銀粉の製造方法を採用することで、得られる微粒銀粉への残留有機物が少なくなり、微粒銀粉であるが故の膜密度の高さと重畳して作用し、結果として得られる導体の電気抵抗の低減化を可能とするのであるに資するのである。
銀アンミン錯体水溶液と還元剤との混合概念を表した図。 本件発明にかかる微粒銀粉の走査電子顕微鏡観察像。 本件発明にかかる微粒銀粉の走査電子顕微鏡観察像。 従来の製造方法にかかる微粒銀粉の走査電子顕微鏡観察像。 従来の製造方法にかかる微粒銀粉の走査電子顕微鏡観察像。

Claims (6)

  1. 硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合して反応させ銀アンミン錯体水溶液を得て、これに還元剤を添加することにより銀粒子を還元析出させ、濾過、洗浄、乾燥させて得られる微粒銀粉の製造方法において、
    前記銀アンミン錯体水溶液に有機還元剤を接触混合させ、且つ、混合後の溶液中で銀濃度が1g/l〜6g/l、有機還元剤濃度を1g/l〜3g/lに維持して銀粒子を還元析出させ当該銀粒子を濾別し、水洗浄し、過剰のアルコール溶液で洗浄することを特徴とした微粒銀粉の製造方法。
  2. 請求項に記載の微粒銀粉の製造方法において、
    前記銀アンミン錯体水溶液に有機還元剤を接触混合させる際に、前記銀アンミン錯体水溶液が一定の流路(以下、「第一流路」と称する。)を流れ、その第一流路の途中に合流する第二流路を設け、この第二流路を通じて有機還元剤を流し、第一流路と第二流路との合流点で接触混合させることを特徴とした微粒銀粉の製造方法。
  3. 請求項又は請求項に記載の微粒銀粉の製造方法において、
    硝酸銀濃度が2.6g/l〜48g/lの硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合し反応させた、銀濃度が2〜12g/lの銀アンミン錯体水溶液を用いることを特徴とした微粒銀粉の製造方法。
  4. 請求項〜請求項のいずれかに記載の微粒銀粉の製造方法において、
    使用する有機還元剤に分散剤を含ませておくものである微粒銀粉の製造方法。
  5. 請求項〜請求項のいずれかに記載の微粒銀粉の製造方法において、
    有機還元剤は、ヒドロキノンを用いるものである微粒銀粉の製造方法。
  6. 請求項〜請求項のいずれかに記載の微粒銀粉の製造方法において、アルコールは、得られた銀粒子1kgあたり5L以上の量を用いるものである微粒銀粉の製造方法。
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