JP4483702B2 - 即席ルー - Google Patents

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本発明はカレー、シチュー、ハヤシなどの即席ルーに関する。
カレー、シチュー、ハヤシなどの即席ルーは、その簡便さと美味しさから家庭だけでなく、レストランや給食など広く使用されている。即席ルーは、油脂、小麦粉、調味料、カレー粉を焙煎した後、冷却してポリプロピレン製のトレーで固化して製造される。即席ルーは常温流通の商品であるがゆえに、次の課題がある。すなわち、夏季の流通段階では40℃に達することもあり、即席ルーが溶けだし調味料成分が分離するという課題がある。また、一度溶け出した即席ルーが冷えて再び固化すると、ルー表面で油脂が固化し、カビが生えたように見える色むらという固有の課題が発生する。さらに、融点の低い油脂を大量に配合した場合も、即席ルー保管中に融点の低い油脂がしみだし、ルー表面で固化し、色むらが発生するという課題がある。
上記課題を解決するために、即席ルー用の油脂としては融点が45℃前後の硬化牛脂や硬化豚脂、あるいはこれらの混合油脂(トランス酸10〜30%含有)が一般に広く使用されてきた。しかし、最近は、消費者の健康意識の高まりと共にトランス酸を低減させたいというニーズが出てきている。
色むらの防止法としては、ルー用油脂を改良する方法と乳化剤による方法が開示されている。ルー用油脂を改良する方法としては、パーム油起源の油脂と炭素原子数22個の飽和脂肪酸残基を持つ脂肪酸およびまたはその誘導体をエステル交換する方法(特許文献1)、パーム油起源の油脂と炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基を80%以上持つ植物性油脂の混合物をエステル交換する方法(特許文献2)が知られている。これらの方法では、トランス酸量は5%以下であり、ルー表面全体に発生する通常の色むらは発生しにくいが、筋状の色むらと言う固有の色むらが発生する。また、植物油起源の油脂のみを使用しており、カレーやシチューに適用した場合はコク味が不足し、あっさりしすぎるという問題がある。
低トランス酸と、調味料成分の分離防止を両立させる方法としては、パーム硬質ステアリンと牛脂または牛脂画分の混合物をエステル交換する方法(特許文献3)が開示されているが、ルーの色むら防止効果が弱く、またエステル交換して得られた油脂の融点が高いので、これを用いて作製したカレーやシチューはワキシーな食感になるという問題がある。
乳化剤による方法としては、特定のソルビタン脂肪酸エステルとレシチンを添加する方法(特許文献4)、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法(特許文献5)、HLB10以上の乳化剤を添加する方法(特許文献6)が知られているが、口どけが悪く、色むらも完全に防止できるとは言い難い。また、消費者の添加物忌避のニーズにも合わない。
以上のように、現状では、乳化剤などの添加物を使用せずに、低トランス酸と色むら防止の両方を満足させ、かつ十分なコク味を有するルー用油脂は開発できているとは言いがたい。
特開平5−1297号公報 特開2001−258474号公報 特開平10−102085号公報 特開平7−39351号公報 特開平10−140180号公報 特開2003−310155号公報
本発明は、トランス酸量が4%以下(天然油脂由来相当量)である油脂を用い、しかも流通または保管中に色むらが発生せず、かつ十分なコク味を有する即席ルーを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪酸残基が特定の割合になるように調節した動物脂起源の油脂混合物をランダムエステル交換することにより、流通または保管中に色むらが発生せず、トランス酸量が4%以下(天然油脂由来相当量)になることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の即席ルーは、(A)牛脂、および/または豚脂30〜90重量部と、(B)牛脂の極度硬化油、および/または豚脂の極度硬化油70〜10重量部との合計100重量部からなり、炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基が19〜52重量%、及び炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸残基が12〜39重量%になるように調節した動物脂起源の油脂混合物を、ランダムエステル交換反応して作製したトランス酸量が4%以下の油脂組成物を用いたことを特徴とする。
以上にしてなる本発明のルー用油脂組成物は、ランダムエステル交換反応の原料油として、特定の飽和脂肪酸残基を特定量含む動物脂起源の油脂を用いることにより、これを用いて作製したルーは、十分なコク味を有し、かつ流通または保管中に色むらが発生しないものとなる。また、ルー用油脂組成物中に含まれるトランス酸量を4%以下とすることにより、近年の健康志向にも適応したものとなる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明のルー用油脂組成物は、炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基が19〜52重量%、及び炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸残基が12〜39重量%になるように調節した動物脂起源の油脂混合物を、ランダムエステル交換反応することにより得られ、トランス酸量が4%以下であることを特徴とする。
動物脂起源の油脂としては、家畜や家禽類の脂肪部位から融出法により採取された脂肪のうち、上質の食用グレード品を常法により精製したものを用いることができ、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、馬脂などを例示できる。その他では、動物脂起源の油脂として、前記の牛脂、或いは豚脂を常法によりニッケル触媒を用いて、ヨウ素価3以下まで水素化したものをも用いることができる。
本発明における動物脂起源の油脂混合物は、上述の動物脂起源の油脂を2種以上混合してなるものであり、(A)牛脂、豚脂、及びこれらの混合油脂30〜90重量部と、(B)牛脂の極度硬化油、豚脂の極度硬化油、及びこれらの混合油脂70〜10重量部との、合計100重量部からなることが好ましい。
さらに、本発明における動物脂起源の油脂混合物は、該油脂混合物中に含まれる脂肪酸残基のうち、炭素原子数18個の飽和脂肪酸(ステアリン酸)残基が19〜52重量%、及び炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸)残基が12〜39重量%となるように、油脂の混合比率を調節したものである。
本発明のルー用油脂組成物は、前記の動物脂起源の油脂混合物を、ナトリウムメチラート等の金属触媒を用いて、ランダムエステル交換反応して得られる。
このようにして得られるルー用油脂組成物は、脂肪酸残基として、炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基を19〜52重量%、及び炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸残基を12〜39重量%含有するものとなる。好ましくは、脂肪酸残基として、炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基を24〜47重量%、炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸残基を17〜34重量%含有するものである。炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基が19重量%より少ない場合、または炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸残基が39重量%より多い場合は、本発明のルー用油脂組成物を用いて作製した即席ルーが軟質になり、流通または保管中、特に夏季において、油脂成分が溶け出して色むらが発生しやすくなる。一方、炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基が52重量%より多い場合、または炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸残基が39重量%より少ない場合は、本発明のルー用油脂組成物を用いて作製した即席ルーが硬質になりすぎ、該即席ルーを用いて作製したカレーなどの口どけが悪く、ワキシーな食感となり商品価値が大きく減じる。
本発明のルー用油脂組成物中のトランス酸量は、4%以下(天然油脂由来相当分)である。近年、健康志向が高まっており、トランス酸量はできる限り低減することが望まれていることから、2%以下であることがより好ましい。ここで、本発明におけるトランス酸の測定は、ガスクロマトグラフィーにより行い、モノエンとジエン中のトランス酸合計量をトランス酸含量とした。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」は重量基準である。
(1)ランダムエステル交換油脂の調整
豚脂(ヨウ素価60.8)を常法によりニッケル触媒を用いて硬化し、ヨウ素価0.8の豚脂極度硬化油を作製した。次に、豚脂(ヨウ素価60.8)30部と豚脂極度硬化油70部とを混合し、90℃で30分間、真空下で脱水を行った。ナトリウムメチラート0.3部を加え、90℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止、水洗した。次に、常法により活性白土を用いて脱色し、次いで脱臭を行い、目的とするランダムエステル交換油脂(ルー用油脂組成物)を作製した。
(2)ランダムエステル交換油脂の脂肪酸組成の測定
得られたルー用油脂組成物における脂肪酸組成(脂肪酸残基の量)は、基準油脂分析試験法2003年版(社団法人日本油化学会編)暫15−2003脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)記載の方法に準じて測定した。キャピラリーガスクロマトグラフは、次の条件で測定した。
機種:Agilent6980(Hewlett Packard社)
カラム:bondedCPS−2(内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.25μm
、Quadrex Corp.社製)
カラム温度:180℃
注入口:スプリット注入口(スプリット比=1/100)
注入口温度:265℃
検出器:FID検出器
検出器温度:265℃
キャリアーガス:ヘリウム、200PSI
(3)カレールーの調整
得られたルー用油脂組成物84部、小麦粉84部、砂糖31部、食塩12部、カレー粉36部、グルタミン酸ナトリウム5部を平鍋にとり、120℃で30分間混合した後、品温が60℃になるまで冷却した。次に、ポリプロピレン製のトレーにカレーを流し入れ、冷蔵庫中で固化させ、即席カレールーを作製した。
(4)カレールーの白色化試験(色むら試験)
(3)で調整したカレールーを30℃の恒温槽に移し、4週間保管した。そして、保管前、保管開始から1週間後、2週間後、3週間後、および4週間後に、それぞれカレールー表面を肉眼観察し、白色化の程度(色むら)を把握した。
表1に、ランダムエステル交換反応原料油脂配合と、ランダムエステル交換油脂の脂肪酸組成及び特性を示した。尚、表中のSFCとは、所定の温度における固体脂含量(重量%)のことである。表2に、ランダムエステル交換油脂を用いて作製したカレールーの白色化試験結果を示した。
Figure 0004483702
Figure 0004483702
実施例1で作製した豚脂極度硬化油60部と、豚脂(ヨウ素価60.8)40部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製した豚脂極度硬化油30部と、豚脂(ヨウ素価60.8)70部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製した豚脂極度硬化油20部と、豚脂(ヨウ素価60.8)80部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製した豚脂極度硬化油10部と、豚脂(ヨウ素価60.8)90部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
牛脂(ヨウ素価51.7)を常法によりニッケル触媒を用いて硬化し、ヨウ素価0.8の牛脂極度硬化油を作製した。次に、前記牛脂極度硬化油50部と、牛脂(ヨウ素価51.7)50部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製した豚脂極度硬化油30部と、牛脂(ヨウ素価51.7)70部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例6で作製した牛脂極度硬化油30部と、豚脂(ヨウ素価60.8)70部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
(比較例1)
実施例1で作製した豚脂極度硬化油75部と、豚脂(ヨウ素価60.8)25部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
(比較例2)
実施例1で作製した豚脂極度硬化油5部と、豚脂(ヨウ素価60.8)95部とを混合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
(比較例3)
牛脂(ヨウ素価51.7)を常法により、ニッケル触媒を用いて硬化を行い牛脂硬化油(融点45℃)を作製した。次に、前記牛脂硬化油(融点45℃)100部を使用し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
表1、表2に示したように、本発明のルー用油脂組成物は、トランス酸量が4%以下であり、前記油脂組成物から作製したルーは、保管中に色むらが発生しないものであった。
また、実施例1〜6で作製した本発明のルー用油脂組成物は、動物脂起源の油脂のみからなるため、これを用いて作製したカレーは、十分なコク味を有するものとなった。

Claims (1)

  1. (A)牛脂、および/または豚脂30〜90重量部と、(B)牛脂の極度硬化油、および/または豚脂の極度硬化油70〜10重量部との合計100重量部からなり、炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基が19〜52重量%、及び炭素原子数18個の一不飽和脂肪酸残基が12〜39重量%になるように調節した動物脂起源の油脂混合物を、ランダムエステル交換反応して作製したトランス酸量が4%以下の油脂組成物を用いたことを特徴とする即席ルー
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