JP2006288233A - 低トランス・ルー用油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 夏季でも油脂と調味料成分が分離せず、色むらが発生せず、コクのある風味とワキシーでない食感を備え、かつトランス酸量が4%以下(天然油脂由来相当量)であるルー用油脂組成物を提供する。
【解決手段】 ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物を極度硬化した油脂30〜70重量部と、牛脂または豚脂が30〜70重量部の合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより、または、ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物が50〜80重量部と、牛脂または豚脂の極度硬化油が20〜50重量部の合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより、トランス酸量が4%以下となり、夏季でも油脂と調味料成分が分離せず、色むらが発生せず、かつコクのある風味とワキシーでない食感を備えたルー用油脂組成物が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】 ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物を極度硬化した油脂30〜70重量部と、牛脂または豚脂が30〜70重量部の合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより、または、ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物が50〜80重量部と、牛脂または豚脂の極度硬化油が20〜50重量部の合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより、トランス酸量が4%以下となり、夏季でも油脂と調味料成分が分離せず、色むらが発生せず、かつコクのある風味とワキシーでない食感を備えたルー用油脂組成物が得られる。
【選択図】 なし
Description
本発明はカレー、シチュー、ハヤシなど即席ルーに使用される特定の油脂に関する。
カレー、シチュー、ハヤシなどの即席ルーは、その簡便さから広く使用されている。即席ルーは、油脂、でんぷん、調味料を含む原料を焙煎したのち、冷却してプラスチックトレーで固化して製造される。即席ルーには、夏季の流通段階における高温のために即席ルーが溶け出して流動化や調味料成分分離が発生するという課題、即席ルー保管中に内部の油脂がしみだし、ルー表面で固化し、カビが生えたように見える色むらという固有の課題がある。
上記課題を解決するために、即席ルー用の油脂としては、硬化牛脂や硬化豚脂、あるいはこれらの混合油脂が一般に広く使用されてきたが、現時点でも色むらの問題が完全に解決されたとは言いがたく、毎年発生している。さらに、上述の油脂にはトランス酸が10〜20%含まれており、消費者の健康意識の高まりにつれて即席ルー中のトランス酸を低減したいというニーズが出てきている。
色むらの防止法としては、ルー用油脂を改良する方法と乳化剤による方法が開示されている。ルー用油脂を改良する方法としては、パーム油起源の油脂と炭素原子数22個の飽和脂肪酸残基を持つ脂肪酸およびまたはその誘導体をエステル交換する方法(特許文献1)、パーム油起源の油脂と炭素原子数18個の飽和脂肪酸残基を80%以上持つ植物性油脂の混合物をエステル交換する方法(特許文献2)が知られている。これらの方法では、トランス酸量は5%以下であり、ルー表面全体に発生する通常の色むらは発生しにくいが、筋状の色むらという固有の色むらが発生する。また、植物性油脂のみを原料油に使用しているために、これらの油脂を用いて作製したカレーやシチューなどはコク味が不足し、淡白な風味になるという問題がある。
低トランス酸と調味成分の分離を両立させる方法としては、パーム硬質ステアリンと牛脂または牛脂画分の混合物をエステル交換する方法(特許文献3)が開示されているが、ルーの色むら防止効果が弱く、また、エステル交換して得られた油脂の融点が高いので、これを用いて作製したカレーやシチューはワキシーな食感になるという問題がある。
乳化剤による方法としては、特定のソルビタン脂肪酸エステルとレシチンを添加する方法(特許文献4)、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法(特許文献5)、HLB10以上の乳化剤を添加する方法(特許文献6)が知られているが、口どけが悪く、色むらも完全に防止できるとは言い難い。
以上のように、現状では、低トランス酸と色むら防止、コクのある風味とワキシーでない食感、これら全てを満足させるルー用油脂は開発できているとは言いがたい状態である。
本発明は、夏季でも油脂と調味料成分が分離せず、色むらが発生せず、コクのある風味とワキシーでない食感を備え、かつトランス酸量が4%以下(天然油脂由来相当量)である即席ルー用油脂を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ラウリン系油脂とパーム油起源の油脂の混合物を極度硬化した油脂と、牛脂または豚脂とをランダムエステル交換反応することにより、或いは、ラウリン系油脂とパーム油起源の油脂の混合物と、牛脂または豚脂の極度硬化油とをランダムエステル交換反応することにより、色むらなどの現象が発生せず、動物脂のコク味があり、ワキシーな食感がなく、トランス酸量が4%以下であるルー用油脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
本発明に係るルー用油脂組成物は、(A)ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物を極度硬化した油脂が30〜70重量部と、(B)牛脂または豚脂が30〜70重量部との、合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより得られ、トランス酸量が4%以下であることを特徴とする。または、(a)ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物50〜80重量部と、(b)牛脂または豚脂の極度硬化油が20〜50重量部との、合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより得られ、トランス酸量が4%以下であることを特徴とする。さらに、前記ラウリン系油脂が、ヤシ油またはパーム核油であることが好ましい。
以上のような本願発明の油脂組成物は、トランス酸量が4%以下となり、これを用いて製造したルーは、夏季でも油脂と調味料成分が分離せず、色むらが発生せず、かつコクのある風味とワキシーでない食感を備えたものとなる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明におけるラウリン系油脂は、炭素原子数12の飽和脂肪酸残基を40モル%以上含有する油脂であればよく、ヤシ油、パーム核油、及びこれらの分別油脂などを例示できる。
本発明におけるパーム油起源の油脂は、ヨウ素価44〜60のパーム油、及びヨウ素価40以下のパームステアリンであれば用いることができる。
本発明における豚脂は、豚の脂肉から融出法により採取した脂肪のうち、上質の食用グレード品を常法により精製したものを用いることができる。
本発明における牛脂は、牛の脂肉から融出法により採取した脂肪のうち、上質の食用グレード品を常法により精製したものを用いることができる。
本発明における豚脂または牛脂の極度硬化油は、上記の豚脂または牛脂をニッケル触媒を用いて水素化を行ったものであり、ヨウ素価5以下のものであれば使用できる。
本発明のランダムエステル交換原料油は、(1)ラウリン系油脂とパーム油起源の油脂の混合物と、(2)牛脂または豚脂、のうちいずれか一方と、他方を極度硬化したものとからなる。
本発明のランダムエステル交換原料油の配合の一つは、(A)ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物を極度硬化した油脂が30〜70重量部と、(B)牛脂または豚脂が30〜70重量部との、合計100重量部からなるものである。ここで、ラウリン系油脂が10重量%未満になると得られたルー用油脂の融点が2〜3℃上昇し、このルー用油脂を用いて作製したカレーの口どけが悪くなる。
本発明のランダムエステル交換原料油の配合の、もう一つの態様としては、(a)ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物が50〜80重量部と、(b)牛脂または豚脂の極度硬化油が20〜50重量部との、合計100重量部からなるものである。ここで、ラウリン系油脂が10重量%未満になると得られたルー用油脂の融点が2〜3℃上昇し、このルー用油脂を用いて作製したカレーの口どけが悪くなる。
本発明におけるランダムエステル交換反応は、油脂の脂肪酸エステル基をランダムに再配列できる方法であれば特に制限はなく、非選択性リパーゼなどの酵素を用いる酵素法、ナトリウムメチラート等の金属触媒を用いる方法で行うことができる。
本発明のルー用油脂組成物中のトランス酸量は、4%以下である。近年、健康志向が高まっており、トランス酸量はできる限り低減することが望まれていることから、2%以下であることがより好ましい。
本発明におけるトランス酸の測定は、ガスクロマトグラフィーにより行い、モノエンとジエン中のトランス酸合計量をトランス酸含量とした。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
(1)ランダムエステル交換油脂の調製
パーム油(ヨウ素価52)70部、パームステアリン5部、パーム核油25部の混合物を、常法により硬化しヨウ素価0.7のラウリン系極度硬化油を作製した。次に、ラウリン系極度硬化油70部と豚脂30部を混合し90℃、真空下で脱水を行った。ナトリウムメチラート0.3部を加え、90℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止・水洗した。次に、常法により活性白土を用いて脱色し、次いで脱臭を行い、目的とする油脂を作製した。
パーム油(ヨウ素価52)70部、パームステアリン5部、パーム核油25部の混合物を、常法により硬化しヨウ素価0.7のラウリン系極度硬化油を作製した。次に、ラウリン系極度硬化油70部と豚脂30部を混合し90℃、真空下で脱水を行った。ナトリウムメチラート0.3部を加え、90℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止・水洗した。次に、常法により活性白土を用いて脱色し、次いで脱臭を行い、目的とする油脂を作製した。
(2)カレールーの調製
ランダムエステル交換油脂84g、小麦粉84g、砂糖31g、塩12g、カレー粉36g、グルタミン酸ナトリウム5gを加熱撹拌鍋に取り、120℃で30分間混合した後、品温が60℃になるまで冷却した。その後、ポリプロピレン製のトレーにカレーを移し、冷蔵庫中で固化させ、即席カレールーを作製した。
ランダムエステル交換油脂84g、小麦粉84g、砂糖31g、塩12g、カレー粉36g、グルタミン酸ナトリウム5gを加熱撹拌鍋に取り、120℃で30分間混合した後、品温が60℃になるまで冷却した。その後、ポリプロピレン製のトレーにカレーを移し、冷蔵庫中で固化させ、即席カレールーを作製した。
(3)カレールーの白色化試験(色むら試験)
(2)で調製したカレールーを30℃の恒温槽に移し、4週間保管した。そして保管前、保管開始から1週間後、2週間後および4週間後に、それぞれカレールー表面を肉眼観察し、白色化の程度(色むら)を把握した。
(2)で調製したカレールーを30℃の恒温槽に移し、4週間保管した。そして保管前、保管開始から1週間後、2週間後および4週間後に、それぞれカレールー表面を肉眼観察し、白色化の程度(色むら)を把握した。
(4)カレールーのコク味試験
対照として、硬化牛脂(融点45℃)を用いて(2)と同様の方法で作製したカレールーを作製した。(2)で作製したカレールーについて、20gを60℃のお湯180gに溶解し、官能評価でコク味を評価した。
対照カレールーについても同様のテストを行い、コク味の力価を比較した。
対照として、硬化牛脂(融点45℃)を用いて(2)と同様の方法で作製したカレールーを作製した。(2)で作製したカレールーについて、20gを60℃のお湯180gに溶解し、官能評価でコク味を評価した。
対照カレールーについても同様のテストを行い、コク味の力価を比較した。
実施例1で作製したラウリン系極度硬化油50部と豚脂50部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製したラウリン系極度硬化油30部と豚脂70部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製したラウリン系極度硬化油30部と牛脂70部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
豚脂を常法によりニッケル触媒を用いて水素化し作製した豚脂極度硬化油(ヨウ素価0.9)50部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)50部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例5と同様にして作製した豚脂極度硬化油(ヨウ素価0.9)30部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)70部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例5と同様にして作製した豚脂極度硬化油(ヨウ素価1.1)20部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)80部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例5の豚脂極度硬化油に準じて作製した牛脂極度硬化油(ヨウ素価1.2)20部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)80部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
(比較例1)
実施例1で作製したラウリン系極度硬化油75部と豚脂25部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製したラウリン系極度硬化油75部と豚脂25部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
(比較例2)
実施例1で作製したラウリン系極度硬化油25部と豚脂75部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例1で作製したラウリン系極度硬化油25部と豚脂75部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
(比較例3)
実施例5と同様にして作製した豚脂極度硬化油(ヨウ素価0.9)45部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)55部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例5と同様にして作製した豚脂極度硬化油(ヨウ素価0.9)45部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)55部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
(比較例4)
実施例5の豚脂極度硬化油に準じて作製した牛脂極度硬化油(ヨウ素価1.2)15部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)85部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
実施例5の豚脂極度硬化油に準じて作製した牛脂極度硬化油(ヨウ素価1.2)15部とラウリン系油脂(ヤシ油/パーム油=25重量%/75重量%の混合油)85部を配合し、以下実施例1と同様にしてランダムエステル交換油脂の作製、カレールーの作製、カレールーの白色化試験を行った。
表1−1、表1−2にランダムエステル交換原料油脂配合とランダムエステル交換油脂の油脂特性を示した。尚、表中のSFCとは、所定の温度における固体脂含量(重量%)のことである。表2−1、表2−2にランダムエステル交換油脂を用いて作製したカレールーの白色化試験結果を示した。また、表3に前記カレールーのコク味試験の結果を示した。
表1−1、表2−1および表3に示したように、本願発明に係るルー用油脂組成物は、トランス酸量が4%以下であり、前記油脂組成物から作製したルーは、動物油脂由来のコク味を有し、かつ油脂と調味料成分とが分離せず、色むらがほとんど発生しないものであった。
Claims (3)
- (A)ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物を極度硬化した油脂が30〜70重量部と、(B)牛脂または豚脂が30〜70重量部との、合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより得られ、トランス酸量が4%以下であることを特徴とするルー用油脂組成物。
- (a)ラウリン系油脂10〜40重量%とパーム油起源の油脂60〜90重量%の混合物が50〜80重量部と、(b)牛脂または豚脂の極度硬化油が20〜50重量部との、合計100重量部をランダムエステル交換反応することにより得られ、トランス酸量が4%以下であることを特徴とするルー用油脂組成物。
- 前記ラウリン系油脂が、ヤシ油またはパーム核油である請求項1または請求項2に記載のルー用油脂組成物。
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