JP2016019515A - 即席調理食品用油脂組成物とそれを用いた即席調理食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】包材からの型剥がれと常温(15〜25℃)でのスナップ性が良好であり調理時の作業性に優れ、かつ口溶けの良好なソース類等の加工食品を得ることができる即席調理食品用油脂組成物とそれを用いた即席調理食品の提供。
【解決手段】油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステルとを含有する。あるいは、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量が50〜90質量%である油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する即席調理食品用油脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、固形ルウ等の即席調理食品の原料の食用油脂として使用される即席調理食品用油脂組成物とそれを用いた即席調理食品に関する。
カレールウ、ハヤシルウ、ホワイトルウ等の固形ルウは、小麦粉、食用油脂、調味料等を配合して混合加熱した後、包材となる成形容器の型に流し込み、冷却固化させることによって製造される。この固形ルウは、一般に常温で流通・販売され、調理時には熱水に溶解しカレーやシチュー等として喫食に供され、その簡便さと美味しさから、家庭、食堂、給食等に広く使用されている。
この固形ルウは、調理時には包材から取り出し、肉や野菜と調味料等を加えて煮込んだスープ類に割り入れて溶解し、ソース類を製造しているが、この際に作業性良く調理ができることが求められている。
例えば、型に流し込んで冷却固化し固形ルウを製造した後、その流通時や保管時に、固形ルウに含まれる油脂のうち2不飽和トリグリセリド及び3不飽和トリグリセリド等の低融点トリグリセリドである液状油が経時的に染みだす場合があるが、液状油が染みだすと固形ルウ表面にベタツキを生じ、包材に密着するため、包材から固形ルウを取り出す際に型剥がれしにくくなる。
また包材から固形ルウを取り出した後、熱水に割り入れる際には、常温でのスナップ性が良いことが求められている。スナップ性は、即席調理食品の手での折りやすさ、割りやすさであり、爽快なスナップ性を有していると調理作業を簡便で好適なものとすることができる。
そして固形ルウから製造されるソース類には、口に入れた際に速やかに溶ける口溶け感が、美味しさをだすために重要である。例えば、食べた時にワックス感即ち蝋のように口溶けが悪くぬめり感があることを抑制し、口溶けを良好なものとすることが望まれている。
従来、固形ルウ用の油脂組成物としては、牛脂、ラード等の動物油脂に部分的な水素添加を行い融点を高めた部分硬化油やその混合油脂が使用されてきた。しかし、部分硬化油は一般にトランス酸量が高く、近年では、消費者の健康意識の高まりと共にトランス酸を低減させたいという要求も出てきている。
そこで近年では、トランス酸量の比較的少ないパーム系油脂やエステル交換油脂の使用量が増えている。
しかし、パーム系油脂は、一般に硬化油に比べると結晶化速度が遅く、それに起因して、固形ルウにおける包材からの型剥がれ、スナップ性が悪くなる傾向があり、これを改善することが望まれている。
一般に、油脂の改良や添加剤によって結晶化をコントロールすることで、即席調理食品用油脂組成物の特性を改善することが検討されている。特許文献1、2ではパーム分別油の硬質部やそのエステル交換油脂等を使用することで結晶促進を図っているが、融点が高く、また分別油は硬質部であることから、良好な口溶けを得るのが難しい。
添加剤として乳化剤を使用するものとして、特許文献3〜5に記載の技術が提案されている。
特許文献3には、小麦粉の分散性の向上等を課題として、固形ルウ用の油脂組成物にHLBが10以上の乳化剤を添加することが提案されている。しかしHLBが高いため、小麦粉や水相への分散性は良好であるが、油脂の結晶化を促進することは難しい。
特許文献4、5には、固形ルウのブルーミング耐性に優れ、長期間にわたり表面の光沢を保つことを課題として、ポリグリセリン脂肪酸エステル(特許文献4)、ソルビタントリベヘネートやソルビタントリエルシネートにレシチンを組み合わせること(特許文献5)が提案されている。
特開10−102085号公報号公報 特許第5085810号公報 特開2003−310155号公報 特開平10−140180号公報 特開平7−39351号公報
しかしながら、特許文献4、5に開示されたような乳化剤は、油脂の結晶化を調整する作用はあるものの、結晶化を促進し結晶を微細化する作用はなく、特に包材からの型剥がれとスナップ性を十分に改善することは困難であった。
特許文献4は、ブルーミング耐性に優れ、長期間にわたりその表面の光沢を保ち、商品価値を維持させることを課題として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用しているが、使用した食用油脂の詳細は実施例を含めて特定されていない。また包材からの型剥がれと常温でのスナップ性、調理時の作業性、口溶けについては言及されていない。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、包材からの型剥がれと常温(15〜25℃)でのスナップ性が良好であり調理時の作業性に優れ、かつ口溶けの良好なソース類等の加工食品を得ることができる即席調理食品用油脂組成物とそれを用いた即席調理食品を提供することを課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステルを油脂に添加することで、また、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量が特定範囲の量である油脂に、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することで、即席調理食品の製造時において加熱下で溶融状態にあるルウを冷却する際に油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になり、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の即席調理食品用油脂組成物は、油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステルとを含有することを特徴としている。
また本発明の即席調理食品用油脂組成物は、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量が50〜90質量%である油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有することを特徴としている。
本発明によれば、即席調理食品からの経時的な液状油の染みだしが抑制されて、包材からの型剥がれが良好であり、常温(15〜25℃)でのスナップ性も良好であることから、調理時における作業性に優れている。また、即席調理食品を用いて製造したソース等の加工食品は口溶けが良好であり、更に、ブルーム現象による即席調理食品の表面の白色化やザラツキも抑制することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の即席調理食品用油脂組成物は、即席調理食品の製造時において加熱下で溶融状態にあるルウを冷却する際に、3飽和トリグリセリドや2飽和トリグリセリドのような結晶化しやすい油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になる。
このように油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、まず、即席調理食品に含まれる油脂のうち液状油が染みだして表面がベタつくことが抑制され、包材からの型剥がれが良好である。そして油脂の結晶化が促進されるため、包材から取り出した固形ルウ等の即席調理食品は常温で適度な硬さを持ち、爽快な折りやすさ、割りやすさが得られ、熱水に割り入れる際のスナップ性が良好である。このように、本発明の即席調理食品用油脂組成物は調理時の作業性に優れており、調理作業を簡便で好適なものとすることができる。
そして本発明の即席調理食品用油脂組成物は、上記のような結晶化特性を持つことによって、即席調理食品を用いて製造したソース類等の加工食品は口溶けが良好である。
更に本発明の即席調理食品用油脂組成物は、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になることから、ブルーム現象による表面の白色化やザラツキも抑制し、即席調理食品は艶のある表面を維持することができる。
(油脂)
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの1位、2位、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。なお、トリグリセリドの構成脂肪酸の略称として、S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸、を用いる。
飽和脂肪酸Sは、油脂中に含まれるすべての飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つ又は3つの飽和脂肪酸Sは、同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。
飽和脂肪酸Sとしては、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)等が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。
不飽和脂肪酸Uは、油脂中に含まれるすべての不飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つ又は3つの不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸Uとしては、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、及びリノレン酸(18:3)、エルカ酸(22:1)等が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数と二重結合数の組み合わせである。
本発明の即席調理食品用油脂組成物に使用される油脂は、1分子のグリセロールに2分子の飽和脂肪酸Sと1分子の不飽和脂肪酸Uが結合した2飽和トリグリセリドとして、1位及び3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合した対称型トリグリセリド(SUS)と、1位及び2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合した非対称型トリグリセリド(SSU)とを含む。また、1位、2位、及び3位の全てに飽和脂肪酸Sが結合した3飽和トリグリセリドを更に含む。その他に1分子のグリセロールに2分子の不飽和脂肪酸Uと1分子の飽和脂肪酸Sが結合した2不飽和トリグリセリド、1位、2位、及び3位の全てに不飽和脂肪酸Uが結合した3不飽和トリグリセリドを含んでもよい。
本発明の即席調理食品用油脂組成物における油脂の含有量は、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは90〜99.8質量%、更に好ましくは96〜99.8質量%である。
本発明の即席調理食品用油脂組成物に使用される油脂は、前述のソルビタン脂肪酸エステルを使用する場合には、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量が好ましくは50〜90質量%、より好ましくは53〜85質量%である。前述のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用する場合には、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量は、50〜90質量%を必須とし、好ましくは53〜85質量%である。この範囲内であると、飽和脂肪酸が多く結晶核となりやすい2飽和及び3飽和トリグリセリドによって、結晶核となる結晶量を確保することができる。これにより、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステル、又は/及びパーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルと併用することで、結晶化の促進と結晶の微細化によって、本発明の即席調理食品用油脂組成物及びその原料を混合加熱した後、型に流し込み、冷却固化させて即席調理食品を製造する際の作業性に優れ、包材からの型剥がれと常温でのスナップ性も良好となる。更に、ブルーム現象による表面の白色化やザラツキも抑制することができる。また、この即席調理食品を用いて製造したソース等の加工食品は口溶けの良好なものとなる。
本発明の即席調理食品用油脂組成物に使用される油脂は、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が好ましくは0.2〜3.0である。この範囲内であると、2飽和トリグリセリドのうち結晶化しやすいSSUの比率がSUSに比べて比較的高いため、結晶核となる結晶量を確保することができる。これにより、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステル、又は/及びパーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルと併用することで、結晶化の促進と結晶の微細化によって、本発明の即席調理食品用油脂組成物及びその原料を混合加熱した後、型に流し込み、冷却固化させて即席調理食品を製造する際の作業性に優れ、包材からの型剥がれと常温でのスナップ性も良好となる。更に、ブルーム現象による表面の白色化やザラツキも抑制することができる。またこの即席調理食品を用いて製造したソース等の加工食品は口溶けの良好なものとなる。
本発明の即席調理食品用油脂組成物に使用される油脂としては、動物油脂、植物油脂、乳脂、これらの分別油、硬化油(部分水素添加油又は極度硬化油)、エステル交換油脂等が挙げられる。これらは油脂中の2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量とSUS/SSUのバランスを適宜調整するために、1種又は2種以上を選択する。
動物油脂としては、動物の脂肉から溶出法により採取した脂肪を精製したものを用いることができる。具体的には、牛脂、ラード等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
植物油脂としては、パーム油、ヤシ油、パーム核油、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、サフラワー油、落花生油等が挙げられる。
好ましい例としては、20℃で固形状の油脂を1種単独で又は2種以上組み合わせて使用し、あるいは、この20℃で固形状の油脂と共に、20℃で液状を呈する液状油を組み合わせて使用する。
上記20℃で固形状の油脂としては、パーム系油脂、パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂、牛脂、ラードが好ましい。更に、これらの油脂に極度硬化油を組み合わせて使用すると、3飽和トリグリセリドの含有量を高めることができる。
ここでパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油、及びこれらの硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。パーム分別油としては、硬質部(パームステアリン等)、軟質部(パームオレイン等)、中融点部(PMF等)等を用いることができる。これらの中でも、ヨウ素価30〜60のパーム系油脂を使用することが好ましく、このようなパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別軟質油、パーム分別硬質油、パーム分別中融点油等が挙げられる。
上記20℃で液状を呈する液状油としては、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、サフラワー油、落花生油、パーム油を分別したスーパーオレイン等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の即席調理食品用油脂組成物における上記20℃で液状を呈する液状油の含有量は、油脂全量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
本発明の即席調理食品用油脂組成物に使用される油脂は、3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂を含有することが好ましい。この油脂を含有することで、この油脂が結晶核となるため、結晶化がより促進される。そのため包材からの型剥がれ、常温でのスナップ性、口溶け、ブルーム現象による表面の白色化やザラツキの抑制に、特に効果を発揮しやすくなる。
3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂としては、特に限定されるものではないが、植物油脂又は動物油脂の硬化油(部分水素添加油又は極度硬化油)や分別油の硬質油、これを含む油脂を原料とするエステル交換油脂等が挙げられる。その中でも、植物油脂又は動物油脂の極度硬化油、あるいはこれを含む油脂を原料とするエステル交換油脂が好ましい。ここで植物油脂の極度硬化油としては、ヤシ極度硬化油、パーム極度硬化油、パーム核極度硬化油、菜種極度硬化油等が挙げられ、動物油脂の極度硬化油としては、ラード極度硬化油、牛脂極度硬化油等が挙げられる。
3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂の含有量は、油脂全量に対して5〜85質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。この含有量が5質量%以上であると、この油脂が結晶核となるため、結晶化がより促進される。この含有量が85質量%以下であると、過度な結晶化による口溶けやその他の特性の低下を抑制できる。
特に、3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上の油脂として、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を用いると、包材からの型剥がれ、常温でのスナップ性、口溶け、ブルーム現象による表面の白色化やザラツキの抑制に、特に効果を発揮しやすくなる。
上記パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂は、ヨウ素価が20〜45であることが好ましく、25〜40であることがより好ましい。この範囲であると、結晶化を促進するとともに、即席調理食品として口溶けが良好なものを得ることができる。
ここでラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の即席調理食品用油脂組成物に使用される油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が0.5〜12質量%であることが好ましい。この範囲でラウリン酸を含有すると、体温に近い温度でシャープな融解性を持ち、即席調理食品を用いて製造したソース等の加工食品は口溶けが特に良好である。全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量は、構成脂肪酸にラウリン酸を多く含むラウリン系油脂を使用すると高めることができるが、特に上記パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂は好適である。
以上において、油脂の分別、硬化反応、エステル交換反応は、次のような方法によって行うことができる。
油脂の分別は、原料油脂に溶剤等を加えて溶解するか、又は加えないで融解し、冷却した後、分離操作を行い、融点の異なる様々なトリグリセリドが混在する油脂から使用目的に適した融点のトリグリセリド部を分画する。
分別方法には溶剤分別、乾式分別、界面活性剤分別があり、これらを1種単独であるいは2種以上を組み合わせて行うことができる。
乾式分別では、高融点と低融点のトリグリセリドの融点差を利用して、完全に融解した油脂を徐々に冷却し、生成した結晶部分を液体部分よりろ別して分離する。溶剤分別では、アセトンやヘキサンなどの溶剤に対する融解度差を利用して、油脂を溶剤に溶解し、冷却することで、溶剤に対して溶解度の低い高融点部、次いで中融点部の順に結晶を析出させる。結晶を十分成長させた後、結晶部分と液油部分とに分離し、溶媒を留去して、それぞれの分別油を得ることができる。
油脂の硬化反応は、常法にしたがって、ニッケル触媒等の触媒を用いて油脂に水素添加し、加温、攪拌しながら反応を進め、トリグリセリドを構成する不飽和脂肪酸の二重結合部分に水素を結合させ飽和化することによって行うことができる。この際、圧力、温度、時間を制御することにより、求める硬さの油脂を得ることができる。
硬化油のうち、極度硬化油は、ヨウ素価が好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
油脂のエステル交換反応は、1分子のグリセリンに3分子の脂肪酸が結合したトリグリセリドのグリセリンに結合している脂肪酸の位置や脂肪酸の種類を組みかえる操作であり、常法にしたがって、ナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われる化学的エステル交換反応や、リパーゼ等を触媒として用いた酵素的エステル交換反応などによって行うことができる。
化学的エステル交換反応は、ナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われる、位置特異性の乏しいエステル交換反応である(ランダムエステル交換とも言われる)。
化学的エステル交換反応は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.05〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、触媒を水洗にて洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
酵素的エステル交換反応は、リパーゼを触媒として用いて行われる。リパーゼとしては、リパーゼ粉末やリパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼを使用するができる。酵素的エステル交換によるエステル交換反応は、リパーゼの種類によって、位置特異性の乏しいエステル交換反応とすることもできるし、1、3位特異性の高いエステル交換反応とすることもできる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
1、3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。
酵素的エステル交換反応は、例えば、リパーゼ粉末または固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末または固定化リパーゼを除去後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
上記パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を得るために用いるエステル交換反応は、化学的エステル交換反応であっても酵素的エステル交換反応であってもよい。
(ソルビタン脂肪酸エステル)
本発明の即席調理食品用油脂組成物は、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステルを含有する。
このソルビタン脂肪酸エステルを用いることで、即席調理食品の製造時において加熱下で溶融状態にあるルウを冷却する際に、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になる。そのため、本発明の即席調理食品用油脂組成物及びその原料を混合加熱した後、型に流し込み、冷却固化させて即席調理食品を製造する際の作業性に優れ、包材からの型剥がれと常温でのスナップ性も良好となる。更に、ブルーム現象による表面の白色化やザラツキも抑制することができる。また、この即席調理食品を用いて製造したソース等の加工食品は口溶けの良好なものとなる。
本発明に使用されるソルビタン脂肪酸エステルは、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上、好ましくは1.5℃以上、より好ましくは2.0〜4.0℃上昇させるものである。
本発明において、パーム油の固化開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した値である。固化開始温度の測定には、示差走査熱量計(型番:DSC Q1000、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いることができる。より詳細には、パーム油100質量部にソルビタン脂肪酸エステル0.5質量部を添加し、80℃から毎分10℃の速度で冷却し、固化開始温度を測定した。
本発明に使用されるソルビタン脂肪酸エステルは、全構成脂肪酸中の80質量%以上、より好ましくは90質量%以上がパルミチン酸とステアリン酸である。また、パルミチン酸とステアリン酸の質量比は、好ましくは0.3:1.0〜1.0:1.0であり、より好ましくは0.5:1.0〜0.8:1.0である。
ここでパルミチン酸とステアリン酸の質量比は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)により測定することができる。
本発明に使用されるソルビタン脂肪酸エステルは、HLB値が好ましくは3.5〜5.5であり、より好ましくは4.0〜5.5である。HLB値がこの範囲であると、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になる。
ここでHLB値は、Griffin式(Atlas社法)により求めることができる。
本発明に使用されるソルビタン脂肪酸エステルは、水酸基価が好ましくは130〜350mgKOH/gである。水酸基価がこの範囲であると、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になる。
ここで水酸基価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.6.3−2013 ヒドロキシル価」に従って測定することができる。
本発明においては、上記のようなソルビタン脂肪酸エステルとして、市販のものを用いることができる。例えば、理研ビタミン(株)製のS−320YN、ポエムS−60V、及びソルマンS−300V等が挙げられる。
ソルビタン脂肪酸エステルの含有量は、油脂全量に対して、好ましくは0.1〜5.0質量%であり、より好ましくは0.2〜4.0質量%である。ソルビタン脂肪酸エステルの含有量が0.1質量%以上であると、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量とSUS/SSUが前述の範囲にある油脂が結晶核となり、結晶化が促進され、かつ結晶が微細化される。ソルビタン脂肪酸エステルの含有量が5.0質量%以下であると、乳化剤としての異味が最終製品の即席調理食品に影響を及ぼすことを抑制できる。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明の即席調理食品用油脂組成物は、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する。
このポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、即席調理食品の製造時において加熱下で溶融状態にあるルウを冷却する際に、油脂の結晶化が促進され、かつ均質に微細化した結晶が多く存在する結晶状態になる。そのため、本発明の即席調理食品用油脂組成物及びその原料を混合加熱した後、型に流し込み、冷却固化させて即席調理食品を製造する際の作業性に優れ、包材からの型剥がれと常温でのスナップ性も良好となる。更に、ブルーム現象による表面の白色化やザラツキも抑制することができる。また、この即席調理食品を用いて製造したソース等の加工食品は口溶けの良好なものとなる。
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上、好ましくは1.1℃以上、より好ましくは1.4〜4.0℃上昇させるものである。
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルでは、HLB値は1.0〜7.0であり、好ましくは2.0〜5.5であり、より好ましくは4.0〜5.5である。HLB値がこの範囲であると、パーム油の固化開始温度を上昇させるのに適している。
ここでHLB値は、Griffin式(Atlas社法)により求めることができる。
本発明においては、上記のようなポリグリセリン脂肪酸エステルとして、市販のものを用いることができる。例えば、阪本薬品工業(株)製のSYグリスターPS−3S、SYグリスターPS−5S、三菱化学フーズ(株)製のリョートーポリグリエステルB−70D等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂全量に対して、好ましくは0.1〜5.0質量%であり、より好ましくは0.2〜4.0質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.1質量%以上であると、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量とSUS/SSUが前述の範囲にある油脂が結晶核となり、結晶化が促進され、かつ結晶が微細化される。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が5.0質量%以下であると、乳化剤としての異味が最終製品の即席調理食品に影響を及ぼすことを抑制できる。
(その他の成分)
本発明の即席調理食品用油脂組成物は、その効果を損なわない範囲において、上記の油脂及びソルビタン脂肪酸エステル又は/及びポリグリセリン脂肪酸エステルに加えて、食品添加物等のその他の成分を配合することができる。
食品添加物は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、乳化剤、酸化防止剤、着色料、フレーバー、調味料、食塩等が挙げられる。乳化剤としては、結晶促進や微細化を阻害しないものであれば添加することができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
(即席調理食品用油脂組成物の製造方法)
本発明の即席調理食品用油脂組成物は、例えば、原料となる1種又は2種以上の前述したような油脂を加温下で溶解し、溶解した油脂中に前述したソルビタン脂肪酸エステル又は/及びポリグリセリン脂肪酸エステルと、必要に応じて前述した食品添加物等のその他の成分とを添加し、公知の方法で均一に分散し溶解することによって製造することができる。
(即席調理食品)
本発明の即席調理食品用油脂組成物を用いた即席調理食品としては、ソース類、シチュー類等の加工食品に用いられる固形ルウ等が挙げられる。
本発明の即席調理食品用油脂組成物は、常法に従って、これと小麦粉と必要に応じてその他の原料を配合して混合加熱した後、型に流し込み、冷却固化させることによって、即席調理食品を製造することができる。
例えば、カレールウの場合は、本発明の即席調理食品用油脂組成物を加熱溶解し、小麦粉を加えて混合物を作製し、この混合物を撹拌しながら加熱焙煎してルウを作製する。加熱焙焼は、例えば混合物を80〜120℃で撹拌しながら行うことができる。その後、ここにカレーパウダー等の香辛料や、その他に必要に応じて調味料等の副原料を添加して、混合する。例えば、蒸気釜にて100℃前後でじっくりと煮込んでもよい。その後、ペースト状になったルウをプラスチックトレー等の容器(型)に流し込み、風冷等の冷却方法により、例えば0〜25℃で冷却して固化させることによって製造することができる。プラスチックトレーに充填されたカレールウは、密封され、トレーごと包装される。
固形ルウ等の即席調理食品における本発明の即席調理食品用油脂組成物の配合量は、特に限定されないが、例えば25〜70質量%であり、小麦粉の配合量は、特に限定されないが、例えば25〜70質量%である。
固形ルウ等の即席調理食品には、本発明の即席調理食品用油脂組成物及び小麦粉以外の成分として、通常、即席調理食品に配合される成分を適宜に使用することができる。具体的には、カレーパウダー等の香辛料、澱粉、食塩、糖類、糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、乳化剤、アミノ酸、核酸等の調味料、増粘安定剤、牛乳、チーズ、粉乳、生クリーム等の乳製品、クエン酸、L−酒石酸、乳酸等の酸味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、アスコルビン酸、茶抽出物等の酸化防止剤、蛋白、pH調整剤、食品保存料、酒類、果実、果汁、はちみつ、フレーバー、コーヒー、カカオマス、ココアパウダー、ナッツペースト、豆類、野菜類、肉類、魚介類、コンソメ、ブイヨン、水等が挙げられる。
本発明の即席調理食品用油脂組成物を用いた即席調理食品は、加熱等によって溶解させることで、即席で加工食品を製造することができ、その具体例としては、カレーソース、ホワイトソース、デミグラスソース、ハヤシソース等のソース類や、ビーフシチュー、クリームシチュー等のシチュー類が挙げられる。
ソース類やシチュー類は、肉や野菜と調味料等を加えて煮込んだスープ類に、固形ルウ等の即席調理食品を包材から取り出し、手で割り入れて製造することができる。このとき、本発明の即席調理食品は、即席調理食品から液状油が染みだして表面がベタつくことを抑制でき、包材からの型剥がれが良好である。そして油脂の結晶化が促進されるため、包材から取り出した固形ルウ等の即席調理食品は常温で適度な硬さを持ち、爽快な折りやすさ、割りやすさが得られ、手で割り入れる際のスナップ性が良好である。このように、本発明の即席調理食品用油脂組成物は調理時の作業性に優れており、調理作業を簡便で好適なものとすることができる。
そして本発明の即席調理食品用油脂組成物は、上記のような結晶化特性を持つことによって、即席調理食品を用いて製造したソース類等の加工食品は口溶けが良好である。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1〜表4における各原料の配合量は質量部を示す。
1.測定方法
各油脂のヨウ素価は基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
油脂における2飽和トリグリセリド及び3飽和トリグリセリドの合計含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
油脂における対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)により求めたSUS型トリグリセリドとSSU型トリグリセリドの質量より算出した。
油脂における全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」により測定した。
2.即席調理食品用油脂組成物の製造
表1〜表4に示す配合比にて各原料油脂をタンク内で混合し、プロペラ撹拌機で撹拌しながら75℃に調温後、乳化剤を添加し、均一に分散し溶解させて即席調理食品用油脂組成物を得た。
(エステル交換油脂1〜3)
エステル交換油脂1は次の方法で製造した。パーム核極度硬化油20質量%、パーム油60質量%、パーム油極度硬化油20質量%を混合し、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭し、エステル交換油脂1を得た。エステル交換油脂1のSUS含有量は12.1質量%、SSU含有量は24.2質量%、ヨウ素価33であった。
エステル交換油脂2は次の方法で製造した。パーム分別軟質油(ヨウ素価56)に触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭し、エステル交換油脂2を得た。エステル交換油脂2のSUS含有量は11.1質量%、SSU含有量は22.3質量%であった。
エステル交換油脂3は次の方法で製造した。牛脂極度硬化油35質量%、ラード極度硬化油20質量%、ラード10質量%、牛脂10質量%、パーム油25質量%を混合し、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭し、エステル交換油脂3を得た。エステル交換油脂3のSUS含有量は13.5質量%、SSU含有量は26.9質量%、ヨウ素価26であった。
(ソルビタン脂肪酸エステル1〜6及びポリグリセリン脂肪酸エステル1〜4)
即席調理食品用油脂組成物に添加したソルビタン脂肪酸エステル1〜6及びポリグリセリン脂肪酸エステル1〜4の詳細は、表5及び表6に示すとおりである。
ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度(℃)の上昇値は、以下のようにして測定した。まず、パーム油(ヨウ素価53)100質量部にソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部を添加し、それを測定用のアルミニウムパンに3.5mg量り、更にサンプルを何も入れない空パン(リファレンス)を用いて、示差走査熱量計(型番:DSC Q1000、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)で以下の条件で固化開始温度を測定した。
次に、同様にして、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度を測定した。
ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度とソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度の差を、パーム油の固化開始温度(℃)の上昇値とした。
固化開始温度(℃)の上昇値=(ソルビタン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度)−(ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度)
固化開始温度(℃)の上昇値=(ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度)−(ポリグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度)
<測定条件>
示差走査熱量計のセル内の温度を80℃まで昇温し、5分間保持し、完全にサンプルを溶解させた。その後、毎分10℃(10℃/min.)で80℃から−40℃まで降温させ、その過程における固化開始温度(発熱ピークにおける発熱開始温度)を測定した。固化開始温度は、ベースラインとピークとの接線における交点とした。
さらに、実施例1、13、比較例2、7の油脂組成物を80℃で溶解後、20℃で72時間放置した後の様子を顕微鏡で観察した。
実施例1、13では、5μm以下の細かい結晶が均一に析出し、結晶量は多かった。
比較例2、7では、結晶が5μmを超えて成長していた。
これらの結果から、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステルを用いることで、結晶化が促進され、かつ微細結晶を得ることができることが分かった。
Figure 2016019515
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3.評価
実施例1〜19及び比較例1〜9の油脂組成物について、次の評価を行った。各評価結果を表8〜表11に示す。
(カレールウの作製)
表7の配合でカレールウを作製した。
〈カレールウの配合〉
Figure 2016019515
〈カレールウの製法〉
[1]実施例及び比較例の油脂組成物を、撹拌羽根を備えた加熱釜に量り入れ、80℃で加熱溶解した。
[2][1]の加熱釜に薄力粉を入れ、撹拌しながら80〜120℃で滑らかになるまで炒め、ルウを作製した。
[3]得られたルウにカレーパウダーを加え、滑らかになるまで炒め合わせカレールウを作製した。
[4]得られたカレールウは80℃に調温し、溶融状態で80gをプラスチック製のシャーレ(90φ×20mm)に移し、0℃に調温した恒温器内で20分間冷却した。得られた固形のカレールウは25℃に調温した恒温器に移し4週間保管した。
上記カレールウについて次の評価を行った。
[ブルーム]
25℃で4週間保管した固形のカレールウについて表面の油脂結晶粗大化による白色化(ブルーム)を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:良好な艶を有しており、白色化は見られなかった。
○:白色化は見られなかったが、やや艶が失われていた。
△:艶がなく、ややザラついている。
×:白色化し、ザラつきがある。
[型剥がれ]
25℃で4週間保管した固形のカレールウについてシャーレからの型剥がれを以下の基準で評価した。
評価基準
◎:シャーレを裏返しにして作業台に3cmの高さから1回落としただけで
シャーレから剥がれた。
○:シャーレを裏返しにして作業台に3cmの高さから2〜3回落として
シャーレから剥がれた。
△:シャーレを裏返しにして作業台に3cmの高さから4〜5回落として
シャーレから剥がれた。
×:シャーレを裏返しにして作業台に3cmの高さから6回以上落として
シャーレから剥がれた。
[スナップ性]
白色化(ブルーム)を観察した固形のカレールウについてシャーレから取り出しスナップ性(手で折った時の折りやすさ)を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:爽快なスナップ性を有し、極めて良好である。
○:良好である。
△:やや不良である。
×:硬過ぎ又はベタツキがあり不良である。
(カレーソースの作製)
食塩10質量部、糖類10質量部、水800質量部を加え煮立たせた物に、作製したカレールウ100質量部を加え撹拌しながら10分間煮立たせ、カレーソースを作製した。
その後、品温45℃におけるカレーソースの口溶けをパネル20名により以下の基準で評価した。
[口溶け]
評価基準
5:パネル20名中16名以上が口溶け良好であると評価した。
4:パネル20名中12〜15名が口溶け良好であると評価した。
3:パネル20名中8〜11名が口溶け良好であると評価した。
2:パネル20名中4〜7名が口溶け良好であると評価した。
1:パネル20名中口溶けが良好であると評価したのは3名以下であった。
Figure 2016019515
Figure 2016019515
Figure 2016019515
Figure 2016019515

Claims (7)

  1. 油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させ、かつ全構成脂肪酸中の80質量%以上がパルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種であるソルビタン脂肪酸エステルとを含有する即席調理食品用油脂組成物。
  2. 前記油脂は、2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量が50〜90質量%である請求項1に記載の即席調理食品用油脂組成物。
  3. 2飽和及び3飽和トリグリセリドの含有量が50〜90質量%である油脂と、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する即席調理食品用油脂組成物。
  4. 前記油脂は、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜3.0である請求項1から3のいずれかに記載の即席調理食品用油脂組成物。
  5. 前記油脂は、3飽和トリグリセリドの含有量が30質量%以上である油脂を含有する請求項1から4のいずれかに記載の即席調理食品用油脂組成物。
  6. 前記油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が0.5〜12質量%である請求項1から5のいずれかに記載の即席調理食品用油脂組成物。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の即席調理食品用油脂組成物を含有する即席調理食品。
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