JP4481744B2 - 非鉛系圧電性物質の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、振動子、アクチュエーター、センサー、フィルタ等の製造に好適に利用できる、結晶性が高く、残存する未反応のアルカリ金属或いはアルカリ土類金属が少ない非鉛系圧電性物質の製造方法に関する。
従来より、圧電性物質には、PZT(ジルコン酸鉛とチタン酸鉛の固溶体)、PLZT(PZTにランタンが添加されたもの)等、鉛系のものが使用されていたが、原料として鉛を使用するため、製造時の鉛の飛散、環境面への配慮から、環境に優しい非鉛系のものへの代替が切望されている。
非鉛系圧電性物質の主なものとしては、チタン酸バリウム(BT)、チタン酸ビスマス・ナトリウム(BNT)、チタン酸ビスマス・カリウム(BKT)及びそれらの混晶系や、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム及びそれらの混晶系がある。これらは、いずれもペロブスカイト型結晶系に属する化合物である。
上記したような非鉛系圧電性物質は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属(以下、アルカリ金属等という)を含む原料を、ボールミル等の粉砕機で粉砕混合したのち、800℃〜1000℃で焼成して得られるが、製造後の製品中にアルカリ金属等が未反応物(結晶を構成する成分となっていない状態を意味する)として残留する場合が少なくない。未反応のアルカリ金属等は、イオン化しやすく、未反応のアルカリ金属等が残存している圧電性物質を用いた圧電体の電気的特性や経時安定性を損ねる原因となっていた。かかる課題を解決するためには、これら未反応のアルカリ金属等が、製造された圧電性物質内に残留しないように、製造段階で充分に除去されなければならない。
しかしながら、アルカリ金属等はイオン化し易いため、非鉛系圧電性物質から未反応のアルカリ金属等を除去することは難しく、現在製造されている非鉛系圧電性物質においては、未反応のアルカリ金属等が充分に除去されているとはいえず、電気的特性や経時安定性に優れる圧電体の提供が可能な、残留した未反応のアルカリ金属等の含有量が少ない非鉛系圧電性物質の開発が要望されている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、イオン化し易い未反応のアルカリ金属等の含有量が低減された非鉛系圧電性物質及び、該非鉛系圧電性物質を簡便に得ることができる非鉛系圧電性物質の製造方法を提供することである。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属を構成成分として含んでなる圧電性能を有する粉末状の非鉛系圧電性物質を製造する方法において、乾式で原料を充分に粉砕混合した後、該混合物を800〜1100℃で1回目の焼成を行い、更に、得られた焼成物を乾式で粉砕した後、該粉砕物を800〜1100℃で焼成することを1回以上行って結晶性の高い粉末状の焼成物を得、得られた粉末状の焼成物を、水相の電導度が500μs/cm以下となるまで水洗することを特徴とする非鉛系圧電性物質の製造方法である
本発明によれば、非鉛系圧電性物質でありながら、得られる圧電性物質は、結晶性が高く、アルカリ金属等の残留がかなり低く抑えられて安定である非鉛系圧電性物質が提供される。更には、本発明によれば、圧電体として使用した場合に、従来の鉛系圧電性物質であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を使用した場合と同程度の電気的特性や経時安定性を得ることが可能な、電気的特性や経時安定性に対して悪影響のあるアルカリ金属等の成分が充分に除去された非鉛系圧電性物質が提供される。
又、本発明によれば、上記した優れた非鉛系圧電性物質が簡便に得られる非鉛系圧電性物質の製造方法が提供され、更に、該製造方法は、湿式法では勿論、有機溶剤の使用を抑制した乾式法でも可能であり、大量生産や、環境に優しい製造方法の確立ができる。
次に、好ましい実施形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。まず、下記に、本発明に至る経緯を説明する。本発明者らの検討によれば、アルカリ金属等を構成成分とするチタン酸バリウム等の非鉛系圧電性物質を従来の方法で製造した場合には、合成(焼成)時に、原料成分であるアルカリ金属等が完全に固溶せずに、一部未反応分として残存する。又、焼成による固相反応では、アルカリ金属等が一種のフラックス(融剤)物質として働くため、できた粒子が大きくなり、使用にあたっては、使用可能なレベルまでボールミル等で粉砕する。このため、この工程中に衝撃により結晶が壊れ、アルカリ金属等やその他の残存物質が結晶系外に出てくることが起こる。このような非鉛系圧電性物質を用いて形成された圧電体を、種々の用途で使用すると、アルカリ金属等の残存物質がイオンとして働くため、圧電特性等の電気的特性や経時安定性を著しく損ねることが起こる。
上記の課題を解決するためには、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属を構成成分として含む非鉛系圧電性物質(以下、非鉛系アルカリ含有圧電性物質という)を充分に洗浄し、未反応のアルカリ金属等や、その他のイオン等の残存成分を除去する必要がある。これらの残存成分は、水に可溶なイオン性物質がほとんどであるため、水による洗浄が一番良いと考えられる。しかしながら、非鉛系アルカリ含有圧電性物質は、アルカリ金属等が固溶してなるものであるため、水に対して溶解性があり、残存成分の充分な洗い出しは行えない状況にある。本発明においては、そうした点を充分に考慮し、鋭意検討を重ねた結果、原料の混合粉砕の均一性を向上させ、複数回の焼成を行うことで、焼成後に得られる非鉛系アルカリ含有圧電性物質の結晶性を高めることが有効であることを見いだした。更に、このように結晶性を高めた焼成物は、構成成分としてアルカリ金属等を含有するものであるにもかかわらず、焼成後に充分に解膠して水洗を行うことができ、これによって従来よりも優れた品質のものを製造することが可能となることを見いだした。
本発明において目的とする非鉛系アルカリ含有圧電性物質としては、チタン酸バリウム(BT)、チタン酸ビスマス・ナトリウム(BNT)、チタン酸ビスマス・カリウム(BKT)及びそれらの混晶系や、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム及びそれらの混晶系等が挙げられるが、いずれも、その構成成分にアルカリ金属等を含んでなるものである。以下に、本発明にかかる非鉛系圧電性物質の製造方法及び非鉛系圧電性物質について、チタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウム=80:20(モル比)の固溶した系(以下では、BNT(80)−BT(20)と記す)を例に挙げて説明する。しかし、本発明にかかる製造方法及び効用については、勿論、この系に限定されるものではない。
BNT(80)−BT(20)を製造する際に使用する原料としては、構成成分の各元素(ビスマス、ナトリウム、バリウム、チタン)に対応する、酸化物、炭酸塩、水酸化物、塩基性水酸化物等が使用できる。具体的には、ビスマス原料には、酸化ビスマス、オキシ炭酸ビスマス等が使用でき、ナトリウム原料には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が使用でき、バリウム原料には、酸化バリウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム等が使用可能である。チタン原料については、酸化チタンを使用することができる。
以下に、本発明にかかる第1の製造方法である湿式粉砕による原料混合法を用いる、非鉛系アルカリ含有圧電性物質の製造方法について説明する。まず、上記に挙げたような原料の混合を行うが、各原料の粒度が異なるため、及び成分間の反応性を向上させるために、ボールミル等の粉砕機を使用して湿式混合粉砕を充分に行う。この際、非鉛系アルカリ含有圧電性物質の製造において必須となるアルカリ金属等の成分原料は水に可溶であるため、エタノール等のアルコール類やアセトン等の有機溶媒を媒体として用いる。湿式混合粉砕工程では、このようにして1時間〜24時間かけて充分に混合粉砕を行う、次に、得られた混合物を乾燥した後、800℃〜1100℃にて1時間〜5時間程度かけて1回目の焼成を行う。この際、焼成温度が800℃以上であれば結晶が充分に成長し、水に対する溶解度が小さく、未反応分の少ない圧電性物質が生成する。焼成温度が1100℃を超えると、生成物は焼結して、次に行う粉砕が困難となる。
本発明にかかる非鉛系アルカリ含有圧電性物質の製造方法では、更に、上記のようにして得られた焼成物を粉砕した後、該粉砕物を800〜1100℃で焼成することを1回以上行って結晶性を高めることを特徴とする。以下、この工程について説明する。前記の1回目の焼成によって得られた焼成物は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しており、粉体としては焼結した粒度の粗いものであるため、ボールミル等のビーズミルによる湿式粉砕を1時間〜24時間行い、その後に焼成を行う。上記で行う湿式粉砕の際に、粉砕し過ぎると結晶が破壊されてしまい、イオン性成分の生成を促進するので好ましくない。又、この際の粉砕が不十分であると、次に行う焼成によって粗大粒子の生成が多くなり、使用の際に過度の粉砕が必要となり、上記と同様にイオン性成分の生成が多くなるので好ましくない。又、次に行う焼成によって粗大粒子の生成が多くなると、後述する最終工程としてイオン性成分の水による洗い出しを行う場合に、良好な洗い出しができなくなる恐れがある。上記における湿式粉砕に使用する媒体は、上述のアルコール類、アセトン類等の有機溶媒が使用可能である。
本発明では、上記のようにして得た粉砕物を、800〜1100℃で焼成する。このようにして得られた焼成物は、結晶性の高い粒度の細かいものであるため、そのまま乾燥して、或いは必要に応じて粉砕した後に乾燥することで、目的とする粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質が得られる。この際、反応(焼成)が充分な場合には、結晶性が良好で、未反応のアルカリ金属等の残存がほとんどない粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質が得られる。本発明においては、上記で得られた非鉛系アルカリ含有圧電性物質の反応が不充分な場合には、再度、焼成物を上記と同様に湿式粉砕して、該粉砕物を焼成する手順を繰り返す。この結果、本発明の製造方法によれば、反応が充分な、結晶性が良好で、未反応のアルカリ金属等の残存がほとんどない粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質が得られる。上記したように複数回にわたって焼成物の粉砕、焼成を繰り返した場合には、最終の粉砕工程においては、水を使用して粉砕することも可能である。
本発明にかかる非鉛系アルカリ含有圧電性物質の製造方法の好ましい形態では、更に、上記のようにして得られた粉末状の焼成物を、水相の電導度が500μs/cm以下となるまで水洗する。先に述べたように、上記した方法によって得られる焼成物は、結晶性が良好で、未反応のアルカリ金属等の残存がほとんどない粉末状のものであるため、下記のようにして水洗することが可能となる。水洗する方法としては、例えば、工業用水中に粉末を入れ、デカンテーションによって水洗を行えばよい。この際、非鉛系アルカリ含有圧電性物質を損なうことなく、残存するアルカリ金属等の塩(イオン性物質)を充分に除去するためには、水相(ろ液、デカンテーションにおける上澄み液等)の電導度が500μs/cm以下、好ましくは300μs/cmとなるまで水洗する。水洗が不充分であると、非鉛系アルカリ含有圧電性物質中に残存するアルカリ金属等がイオンとして働き、かかる圧電性物質を圧電体として使用した場合に、圧電特性等の電気的特性や経時安定性を低下させることが生じる。水洗工程において使用する洗浄媒体は水が最も効率的であり、更に洗浄を完全に行うには、熱水や純水を用いることもできる。又、上記した範囲内での水洗操作であれば、非鉛系アルカリ含有圧電性物質自身の結晶からのアルカリ金属等の溶出はほとんど無視できるため、水洗を充分に行うことが可能である。
上記のようにして得られた非鉛系アルカリ含有圧電性物質は、ろ過、乾燥した後、下記に述べるような評価用試験によって、その特性を評価することができる。即ち、顔料試験法JIS−K5101−18:2004による電気抵抗率の測定法に準拠する下記の方法で、圧電性物質粉末の電気抵抗率を測定することで残存ないしは溶出するイオン成分の相対的な量の違いを知ることができる。上記JIS法は、顔料粉末に関するものであるが、顔料粉末に代えて圧電性物質粉末を検体とする。具体的には、圧電性物質粉末20gと180mlの純水を三角フラスコに秤取し、100℃で5分間煮沸した後、ろ過し、20℃でろ液の電気抵抗率を測定する。この方法では、5分間煮沸することから、粉末内部に残在する可溶性成分を充分洗い出すことが可能であり、ろ液の電気低効率の測定値によって圧電性物質中に残存しているイオン性物質の量を、間接的ではあるが相対的に把握することができる。前記した、最終工程で水洗を行う方法で得た粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質について上記した方法で測定したところ、106Ω・m以上の電気抵抗率を示した。かかる測定値は、従来の鉛系のPZT粉末について測定した場合と同等であって、イオン性不純物が充分に洗い出されているものであることが確認され、かかる優れた製品が安定して得られることが確認された。
次に、本発明にかかる第2の製造方法である、上述の原料を混合する場合に乾式で粉砕混合し、更に焼成物を粉砕する場合に乾式で粉砕する方法(以下、乾式方法という)である。この第2の製造方法によれば、有機溶媒を使用しなくてすむため、大気中への有機溶媒の放出がなく、環境面からも好ましい。又、本発明にかかる第2の製造方法では乾燥工程を設ける必要がなくなるので、効率的に大量に、良好な非鉛系アルカリ含有圧電性物質を得ることが可能となる。
乾式法では、前記で説明した湿式法に比べて、充分な混合がしにくいことと、粒度を細かくして反応性を上げることが難しいため、より強力な粉砕効果や混合効果のある粉砕機や混合機が必要になる。このため、従来は、乾式の混合や粉砕は行われていなかった。しかしながら、本発明者らの検討によれば、乾式の混合や粉砕も、充分な粉砕効率がある粉砕機や混合機を用いれば、焼成後充分に結晶が成長し、前記した第1の製造方法と同様に、結晶性が良好で、未反応のアルカリ金属等の残存がほとんどない粉末状の優れた特性の非鉛系アルカリ含有圧電性物質を得ることができる。
乾式混合で用いる粉砕機としては、例えば、乾式アトライター、ヘンシェルミキサー、ハンマーミル、ボールミル、遊星ミル等が使用できる。しかし、使用する装置に適した粉砕・混合条件を特定できれば、特にこれらに限定されるものではない。こうした粉砕機や混合機に投入する原料は、前記した湿式粉砕の場合に使用したと同様のものが使用可能である。粉砕時間は機種にもよるが、概ね1分〜1時間程度と、湿式法の場合よりも短くする。次に、このようにして粉砕した原料粉末を800℃〜1100℃にて、1時間〜10時間程度かけて焼成を行って結晶化させる。この際に、焼成温度が800℃以上であれば結晶が充分に成長し、水に対する溶解度が小さく、未反応分の少ない圧電性物質が生成できる。一方、焼成温度が1100℃を超えると、得られる焼成物は焼結して、後に行う粉砕が困難となる。尚、乾式法を利用する第2の製造方法では、焼成前に被焼成物を乾燥する工程を設ける必要がないため、湿式法に比べて、より操作は簡便である。
本発明にかかる第2の製造方法である乾式法による非鉛系アルカリ含有圧電性物質の製造方法でも、先に説明した第1の製造方法と同様に、更に、上記のようにして得られた焼成物を粉砕した後、該粉砕物を800〜1100℃で焼成することを1回以上行って結晶性を高める。即ち、前記のようにして得られた焼成物は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しているが、粉体としては焼結した粒度の粗いものであるため、粉砕した後に、更に焼成を行うが、乾式法では、上記における焼成物の粉砕を有機溶媒を用いずに乾式で行う。先に述べた通り、乾式法を利用する第2の製造方法では、この場合に焼成前に被焼成物を乾燥する工程を設ける必要がないため、湿式法に比べて、より簡便である。又、上記したような第2の製造方法によって得られた焼成物も、前記した湿式法によって得られたものと同様に、結晶性が良好で、未反応のアルカリ金属等の残存がほとんどない粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質である。
更に、上記したような第2の製造方法によって得られた焼成物も、前記した湿式法によって得られたものと同様に、水洗することで、より優れた粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質とできる。この際の水洗方法は、先に述べたと同様に行えばよい。
上記した第2の製造方法で得られた非鉛系アルカリ含有圧電性物質について、第1の製造方法の場合と同様に、顔料試験法JIS−K5101−18:2004による電気抵抗率の測定法に準拠して電気抵抗率を測定したところ、電気抵抗率は106Ω・m以上であり、イオン性不純物が充分に洗い出されているものであることが確認された。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。特に断りのない限り、部は質量基準である。又、電気抵抗率の測定は、前記した通り、顔料試験法JIS−K5101−18:2004に準拠して行った。
参考例1>
湿式粉砕混合機として、セラミック製の容量が3リットルのボールミルを用いた。該ボールミルに、あらかじめ分散媒体として直径2ミリのガラス製ビーズを半分量入れ、この中に、焼成原料として、炭酸ナトリウム21.2部、酸化ビスマス93.2部、酸化チタン79.9部、及び炭酸バリウム39.5部を計り取り、更に、媒体としてエタノール600部を入れて、約4時間混合粉砕した。
次に、得られた混合粉砕物を乾燥し、得られた乾燥粉末を850℃で3時間焼成した。次に、この焼結が進んだ焼成物を再度3リットルのボールミルに入れて、上記したと同様にエタノールを媒体とする湿式粉砕を3時間行った。粉砕終了後、粉砕物を乾燥し、約200部の乾燥粉末を得た。次に、得られた乾燥粉末を更に1000℃で3時間焼成を行い、本参考例の粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質を得た。
上記のようにして得られた非鉛系アルカリ含有圧電性物質について、先に述べたJIS法に準拠して電気抵抗率を測定した。又、測定の際に得られたろ液のpHについても同時に測定した。この結果、電気抵抗率は1.2×105Ω・mであり、pH値は11.4であった。
参考例2>
参考例1で得られた最終の粉末状の焼成物を、更に、工業用水(電導度230μs/cm)を用いて、水相が工業用水の電導度となるまでデカンテーションにより水洗を行った。更に、水洗後に得られた細かな粒径の粉末スラリーを、ろ過、乾燥して、本参考例の粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質を得た。得られた粉末について、参考例1の場合と同様にして、電気抵抗率及びろ液のpHを測定したところ、電気抵抗率は1.2×106Ω・mであり、pH値は9.6であった。
<実施例
本実施例では、原料の混合粉砕及び焼成物の粉砕を乾式法で行った。混合、粉砕には、実験室用小型ポットミルを使用した。該ポットミルに、炭酸ナトリウム21.2部、酸化ビスマス93.2部、酸化チタン79.9部、炭酸バリウム39.5部を計り取り、媒体を使用することなく粉砕混合を行った。次に、得られた混合物を850℃で、4時間かけて焼成を行った。次に、得られた焼成物を再度、上記したポットミルに入れ、粉砕した後、1000℃で3時間焼成を行った。焼成後、約200部の本実施例の粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質を得た。
上記のようにして得られた非鉛系アルカリ含有圧電性物質について、参考例1の場合と同様にして、電気抵抗率及びろ液のpHを測定した。この結果、電気抵抗率は3.3×105Ω・mであり、pH値は10.6であった。
<実施例
実施例で得られた最終の粉末状の焼成物を、更に、工業用水(電導度230μs/cm)を用いて、水相が工業用水の電導度となるまでデカンテーションにより水洗を行った。更に、水洗後に得られた細かな粒径の粉末スラリーを、ろ過、乾燥して、本実施例の粉末状の非鉛系アルカリ含有圧電性物質を得た。得られた粉末について、参考例1の場合と同様にして、電気抵抗率及びろ液のpHを測定したところ、電気抵抗率は1.7×106Ω・mであり、ろ液のpH値は9.2であった。
<比較例1>
上記した参考例1〜2、実施例1〜2の場合と同様に、市販の鉛系圧電体チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の電気抵抗率及びろ液のpH値を測定した。この結果、電気抵抗率は2.0×106Ω・mであり、ろ液のpH値は8.8であった。
表1に各参考例、実施例及び比較例の測定結果を示した。表1から、水洗処理を行ったものは非鉛系アルカリ含有圧電性物質であるにもかかわらず、チタン酸ジルコン酸鉛と同程度の電気抵抗率となり、充分に実使用に耐え得るものである。又、未水洗品と比べて水洗品のpH値がいずれも小さくなった。このことは、製造の際に水洗工程を経ることによって、電気抵抗率の測定時における水相中へのアルカリ金属等の溶出が抑えられていることがわかる。
Figure 0004481744
本発明によれば、結晶性が高く、アルカリ金属等の残留がかなり低く抑えられた安定で、従来の鉛系の圧電性物質であるチタン酸ジルコン酸鉛と同程度の、電気特性と安定性とを有する非鉛系アルカリ含有圧電性物質が提供される。該物質は、広く、振動子、アクチュエーター、センサー、フィルタ等の圧電体の製造に使用することが可能である。

Claims (1)

  1. アルカリ金属或いはアルカリ土類金属を構成成分として含んでなる圧電性能を有する粉末状の非鉛系圧電性物質を製造する方法において、乾式で原料を充分に粉砕混合した後、該混合物を800〜1100℃で1回目の焼成を行い、更に、得られた焼成物を乾式で粉砕した後、該粉砕物を800〜1100℃で焼成することを1回以上行って結晶性の高い粉末状の焼成物を得、得られた粉末状の焼成物を、水相の電導度が500μs/cm以下となるまで水洗することを特徴とする非鉛系圧電性物質の製造方法。
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