JP4475773B2 - インバータ制御モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3相モータ等を制御するためのインバータ制御モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、3相モータ等を制御するためのインバータ制御モジュールは、一般に、セラミック基板の一主面に直流電源が供給される2本のパワーライン及び3相交流電源を出力する3本の出力ラインを被着形成したセラミック回路基板と、前記一方のパワーラインと各出力ライン上に搭載されている複数のスイッチング素子と、前記一方のパワーライン上に搭載された各スイッチング素子と各出力ラインとを電気的接続する金属細線よりなる第1の接続手段と、各出力ライン上に搭載された各スイッチング素子と他方のパワーラインとを電気的接続する金属細線よりなる第2の接続手段とにより構成されている。
【0003】
かかるインバータ制御モジュールは、前記2本のパワーラインを外部電源に、出力ラインを3相モータ等に接続し、外部電源より2本のパワーライン間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子のオン・オフを少しずつずらせながら繰り返し行なわせることによって出力ラインを介し3相モータ等に3相交流電源が供給されることとなる。
【0004】
なお、前記スイッチング素子としてはIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor)等が一般に用いられている。
【0005】
また前記インバータ制御モジュールに使用されるセラミック回路基板は、一般に酸化アルミニウム質セラミック体から成るセラミック基板の表面にメタライズ金属層を所定パターンに被着させるとともに該メタライズ金属層にパワーラインや出力ラインとなる銅等の金属回路板を銀ロウ等のロウ材を介しロウ付けすることによって形成されており、具体的には、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して泥漿状と成すとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成形技術を採用して複数のセラミックグリーンシートを得、次に前記セラミックグリーンシート上にタングステンやモリブデン等の高融点金属粉末に適当な有機バインダー、溶剤を添加混合して得た金属ペーストをスクリーン印刷法等の印刷技術を採用することによって所定パターンに印刷塗布し、次に前記金属ペーストが所定パターンに印刷塗布されたセラミックグリーンシートを必要に応じて上下に積層するとともに還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成し、セラミックグリーンシートと金属ペーストを焼結一体化させて表面にメタライズ金属層を有する酸化アルミニウム質セラミック体から成るセラミック基板を形成し、最後に前記セラミック基板に被着されているメタライズ金属層上にパワーラインや出力ラインとなる銅等の金属回路板を間に銀ロウ等のロウ材を挟んで載置させるとともにこれを還元雰囲気中、約900℃の温度に加熱してロウ材を溶融させ、該溶融したロウ材でメタライズ金属層と金属回路板とを接合することによって製作されている。
【0006】
しかしながら、この従来のインバータ制御モジュールにおいては、2本のパワーラインがインダクタンスを有しており、2本のパワーライン間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子のオン・オフを少しずつずらせて出力ラインを介して3相モータ等に3相交流電源を供給する際、前記パワーラインのインダクタンスによってスイッチング素子のオン・オフ時に定格電圧より高いサージ電圧が発生してしまい、その結果、前記サージ電圧によってスイッチング素子に過電圧がかかり、スイッチング素子を破壊してインバータ制御モジュールを安定して信頼性よく作動させることができないという欠点を有していた。
【0007】
そこで2本のパワーラインを近接配置させるとともに各々のパワーラインに流れる電流の方向を逆とし、2本のパワーライン間に相互インダクタンスを発生させるとともに該相互インダクタンスによって2本のパワーラインが有するインダクタンスを低減することが提案されている。
【0008】
しかしながら、2本のパワーラインを近接配置させた場合、パワーラインには20A以上という非常に大きな電流が流れ600V以上の電圧がかかることから、パワーライン間に放電が発生し、セラミック回路基板にショートが発生してインバータ制御モジュールの作動信頼性を損なうという欠点が誘発されてしまう。
【0009】
また上記欠点を解消するためにインバータ制御モジュールを図3、図4に示すようにセラミック基板32と、該セラミック基板32の両主面に対向配置され、流れる電流の方向が逆である2本のパワーライン33a、33bと、前記セラミック基板32の一方主面に配置された3本の出力ライン34a、34b、34cと、前記セラミック基板32の一方主面に形成されているパワーライン33a及び各出力ライン34a、34b、34cに搭載されている複数個のスイッチング素子35と、前記パワーライン33a上のスイッチング素子35を各出力ライン34a、34b、34cに接続する第1の接続手段36と、各出力ライン34a、34b、34c上に搭載されているスイッチング素子35をセラミック基板32の他方主面に形成されているパワーライン33bに接続する第2の接続手段37とで形成することが考えられる。
【0010】
かかるインバータ制御モジュールによれば、2本のパワーライン33a、33bを間にセラミック基板32を挟んで対向配置させるとともに各々のパワーライン33a、33bに流れる電流の方向を逆としたことから2本のパワーライン33a、33b間に相互インダクタンスを効率良く発生させるとともに該相互インダクタンスによって2本のパワーライン33a、33bが有するインダクタンスを大きく低減させることができ、これによって2本のパワーライン33a、33b間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子35のオン・オフを少しずつずらせて出力ライン34a、34b、34cより3相モータ等に3相交流電源を供給する際、スイッチング素子35のオン・オフ時に前記2本のパワーライン33a、33bが有するインダクタンスに起因して定格電圧より高いサージ電圧が発生することはなく、その結果、スイッチング素子35に過電圧がかかり、スイッチング素子35が破壊するのを有効に防止してインバータ制御モジュールを安定、かつ信頼性よく作動させることが可能となる。
【0011】
また同時に2本のパワーライン33a、33bはその間に絶縁性に優れたセラミック基板32が介在していることからパワーライン33a、33bに20A以上という非常に大きな電流を流し600V以上の電圧がかかったとしてもパワーライン33a、33b間には放電が発生し、パワーライン33a、33b間にショートを発生させることはなく、これによってインバータ制御モジュールの作動を高信頼性となすことが可能となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のインバータ制御モジュールは、セラミック基板32が酸化アルミニウム質セラミック体からなり、その熱伝導率が約20W/m・Kと低いためインバータ制御モジュールを作動させた際にスイッチング素子35が多量の熱を発生した場合、その熱をセラミック基板32を介して大気中に効率良く放散させることができず、その結果、スイッチング素子35が該スイッチング素子35自身の発する熱によって高温となり、スイッチング素子35に熱破壊が発生したり、特性に熱劣化が招来したりしてインバータ制御モジュールを正常に作動させることができないという解決すべき課題を有していた。
【0013】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的はサージ電圧印加によるスイッチング素子の破壊、2本のパワーライン間での放電及びセラミック基板の割れ、スイッチング素子の熱破壊等を有効に防止し、直流電源を3相交流電源に確実、かつ長期間にわたって変換することができるインバータ制御モジュールを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のインバータ制御モジュールは、セラミック基板と、該セラミック基板の両主面に対向配置され、流れる電流の方向が逆である2本のパワーラインと、前記セラミック基板の一方主面に配置された3本の出力ラインと、前記セラミック基板の一方主面に形成されているパワーライン及び各出力ラインに搭載されている複数個のスイッチング素子と、前記パワーライン上のスイッチング素子を各出力ラインに接続する第1の接続手段と、各出力ライン上に搭載されているスイッチング素子をセラミック基板の他方主面に形成されているパワーラインに接続する第2の接続手段と、前記セラミック基板の他方主面に絶縁層を介して接合された放熱体とからなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明のインバータ制御モジュールによれば、2本のパワーラインを間にセラミック基板を挟んで対向配置させるとともに各々のパワーラインに流れる電流の方向を逆としたことから2本のパワーライン間に相互インダクタンスを効率良く発生させるとともに該相互インダクタンスによって2本のパワーラインが有するインダクタンスを大きく低減させることができ、これによって2本のパワーライン間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子のオン・オフを少しずつずらせて出力ラインより3相モータ等に3相交流電源を供給する際、スイッチング素子のオン・オフ時に前記2本のパワーラインが有するインダクタンスに起因して定格電圧より高いサージ電圧が発生することはなく、その結果、スイッチング素子に過電圧がかかり、スイッチング素子が破壊するのを有効に防止してインバータ制御モジュールを安定、かつ信頼性よく作動させることが可能となる。
【0016】
また同時に2本のパワーラインはその間に絶縁性に優れたセラミック基板が介在していることからパワーラインに20A以上という非常に大きな電流を流し600V以上の電圧がかかったとしてもパワーライン間に放電が発生し、セラミック回路基板にショートを発生させることはなく、これによってインバータ制御モジュールの作動を高信頼性となすことが可能となる。
【0017】
更に本発明のインバータ制御モジュールによれば、セラミック基板の他方主面に間に絶縁層を介して放熱体を接合させたことからインバータ制御モジュールを作動させた際にスイッチング素子が多量の熱を発生したとしてもその熱は放熱体を介して大気中に効率良く放散されることとなり、その結果、スイッチング素子は異常に高温となるのが有効に防止されて常に適温となり、スイッチング素子を正常に作動させることを可能とするとともにインバータ制御モジュールを長期間にわたり正常に作動させることが可能となる。
【0018】
また更に本発明のインバータ制御モジュールによれば、セラミック基板及び絶縁層を熱伝導率が60W/m・K以上と高く、高温機械的強度に優れる窒化珪素質セラミック体で形成しておくとインバータ制御モジュールの機械的強度を高いものに維持しつつ、スイッチング素子が作動に発する多量の熱を放熱体に良好に伝達させるとともに放熱体を介して大気中により一層効率良く放散させることができ、これによってインバータ制御モジュールをより一層長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1および図2は、本発明のインバータ制御モジュールの一実施例を示し、セラミック基板2の両主面に2本のパワーライン3a、3bを対向配置させるとともに一方主面に3本の出力ライン4a、4b、4cを配置したセラミック回路基板1とスイッチング素子5とから構成されており、セラミック基板2の一方主面に形成されているパワーライン3a及び各出力ライン4a、4b、4c上にスイッチング素子5を搭載し、パワーライン3a上のスイッチング素子5を各出力ライン4a、4b、4cに第1の接続手段6を介して接続するとともに各出力ライン4a、4b、4c上に搭載されているスイッチング素子5をセラミック基板2の他方主面に形成されているパワーライン3bに第2の接続手段7を介して接続することによって形成されている。
【0020】
前記セラミック回路基板1のセラミック基板2はパワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4c及びパワーライン3a、出力ライン4a、4b、4c上に搭載されるスイッチング素子5を支持する支持部材として作用し、酸化アルミニウム質セラミック体や窒化珪素質セラミック体等のセラミック絶縁体で形成されている。
【0021】
前記セラミック基板2は、例えば、窒化珪素質セラミック体から成る場合、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤を添加混合して泥漿状となすとともに該泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、次に前記セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施し、所定形状となすとともに必要に応じて複数枚を積層して成形体となし、しかる後、これを窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気中、1600乃至2000℃の高温で焼成することによって製作される。
【0022】
また前記セラミック基板2は、その一方主面に1本のパワーライン3aと3本の出力ライン4a、4b、4cが、他方主面に1本のパワーライン3bが活性金属ロウ材等の接着材を介してロウ付け取着されている。
【0023】
前記パワーライン3aは外部電源から供給される直流電源をスイッチング素子5に供給する作用をなし、また出力ライン4a、4b、4cはスイッチング素子5のオン・オフにより変換された3相交流電源を外部の3相モータ等に供給する作用をなす。
【0024】
前記2本のパワーライン3a、3b及び3本の出力ライン4a、4b、4cは銅やアルミニウム等の金属材料から成り、銅やアルミニウム等のインゴット(塊)に圧延加工法や打ち抜き加工法等、従来周知の金属加工法を施すことによって、例えば、厚さが500μmで、所定パターン形状に製作される。
【0025】
更に前記2本のパワーライン3a、3b及び3本の出力ライン4a、4b、4cのセラミック基板2への接着は、例えば、銀ロウ材(銀:72重量%、銅:28重量%)やアルミニウムロウ材(アルミニウム:88重量%、シリコン:12重量%)等にチタンやタングステン、ハフニウム及び/またはその水素化物の少なくとも1種を2乃至5重量%添加した活性ロウ材を使用することによって行なわれ,具体的にはセラミック基板2の表面に間に活性金属ロウ材を挟んでパワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cを載置させ、次にこれを真空中もしくは中性、還元雰囲気中、所定温度(銀ロウ材の場合は約900℃、アルミニウムロウ材の場合は約600℃)で加熱処理し、活性金属ロウ材を溶融せしめるとともにセラミック基板2の表面とパワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cの下面とを接合させることによって行われる。
【0026】
なお、前記パワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cはこれを無酸素銅で形成しておくと、該無酸素銅はロウ付けの際に銅の表面が銅中に存在する酸素により酸化されることなく活性金属ロウ材との濡れ性が良好となり、セラミック基板2への活性金属ロウ材を介しての接合が強固となる。従って、前記パワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cはこれを無酸素銅で形成しておくことが好ましい。
【0027】
また前記パワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cはその表面にニッケルから成る良導電性で、かつ耐蝕性及びロウ材に対する濡れ性が良好な金属をメッキ法により被着させておくと、パワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cの酸化腐蝕を有効に防止しつつパワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cにスイッチング素子5や外部電源、外部の3相モータ等を半田等のロウ材を介して極めて強固に接続させることができる。従って、前記前記パワーライン3a、3b及び出力ライン4a、4b、4cはその表面にニッケルから成る良導電性で、かつ耐蝕性及びロウ材に対する濡れ性が良好な金属をメッキ法により被着させておくことが好ましい。
【0028】
更に前記セラミック回路基板1はまたセラミック基板2の一方主面に配置されたパワーライン3a及び各出力ライン4a、4b、4c上に複数のスイッチング素子5が搭載されており、かつパワーライン3a上に搭載されたスイッチング素子5はワイヤ等からなる第1の接続手段6を介して各出力ライン4a、4b、4cに、また出力ライン4a、4b、4c上に搭載されたスイッチング素子5はワイヤ等からなる第2の接続手段7を介してセラミック基板2の他方主面に配置されたパワーライン3bに電気的に接続されている。
【0029】
前記スイッチング素子5はIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor)等の素子が用いられており、電流のオン、オフを制御し、各スイッチング素子5のオン・オフを少しずつずらせることによってパワーライン3a、3bより供給された直流電源を3相の交流電源に変換し出力ライン4a、4b、4cに供給する作用をなす。
【0030】
前記第1の接続手段6及び第2の接続手段7は、アルミニウムやアルミニウム−珪素合金からなる、例えば直径が300μmの金属細線(ワイヤ)からなり、従来周知のワイヤーボンディング法等の接合技術を用いることによって、パワーライン3a上に搭載されたスイッチング素子5と各出力ライン4a、4b、4cに、また出力ライン4a、4b、4c上に搭載されたスイッチング素子5とセラミック基板2の他方主面に配置されたパワーライン3bに接続される。
【0031】
本発明のインバータ制御モジュールにおいては、2本のパワーライン3a、3bを間にセラミック基板2を挟んで対向配置させるとともにパワーライン3a、3bに流れる電流の方向を逆としておくことが重要である。
【0032】
前記2本のパワーライン3a、3bを間にセラミック基板2を挟んで対向配置させるとともにパワーライン3a、3bに流れる電流の方向を逆としておくと2本のパワーライン3a、3b間に相互インダクタンスが効率良く発生し、この発生した相互インダクタンスによって2本のパワーライン3a、3bの各々が有するインダクタンスを大きく低減させ、その結果、2本のパワーライン3a、3b間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子5のオン・オフを少しずつずらせて出力ライン4a、4b、4cより3相モータ等に3相交流電源を供給する際、スイッチング素子5のオン・オフ時に前記2本のパワーライン3a、3bが有するインダクタンスに起因して定格電圧より高いサージ電圧が発生することはなく、これによってスイッチング素子5に過電圧がかかり、スイッチング素子5が破壊するのを有効に防止してインバータ制御モジュールを安定、かつ信頼性よく作動させることが可能となる。
【0033】
また同時に2本のパワーライン3a、3bはその間に絶縁性に優れたセラミック基板2が介在していることからパワーライン3a、3bに20A以上という非常に大きな電流を流し600V以上の電圧がかかったとしてもパワーライン3a、3b間に放電が発生し、セラミック回路基板1にショートを発生させることはなく、これによってインバータ制御モジュールの作動を高信頼性となすことが可能となる。
【0034】
なお、前記セラミック基板2はその厚みが2mmを超えると2本のパワーライン3a、3b間に相互インダクタンスを効率良く発生させるのが困難となり、また0.2mm未満となるとセラミック基板2の機械的強度が劣化してインバータ制御モジュールとしての信頼性が低下してしまう危険性がある。従って、前記セラミック基板2はその厚みを0.2mm乃至2mmの範囲としておくことが好ましい。
【0035】
また前記セラミック基板2はその絶縁耐圧が10kV/mm未満となるとセラミック基板2の厚みが、例えば、0.2mmの薄いものとなったときにパワーライン3a、3b間に放電が生じ、セラミック回路基板1にショートが発生してしまう危険性がある。従って、前記セラミック基板2はその耐電圧を10kV/mm以上としておくことが好ましい。
【0036】
更に本発明のインバータ制御モジュールにおいては、前記セラミック基板2の他方主面に絶縁層8を介して放熱体9を接合させておくことが重要であり、セラミック基板2及び絶縁層8を窒化珪素質セラミック体で形成しておくことが好ましい。
【0037】
前記セラミック基板2の他方主面に絶縁層8を介して放熱体9を接合させておくとインバータ制御モジュールを作動させた際にスイッチング素子5が多量の熱を発生したとしてもその熱は放熱体9を介して大気中に効率良く放散されることとなり、その結果、スイッチング素子5は異常に高温となるのが有効に防止されて常に適温となり、スイッチング素子5を正常に作動させることが可能となる。
【0038】
前記放熱体9は例えば、銅やアルミニウム等の金属材よりなり、窒化珪素質セラミック体や酸化アルミニウム質セラミック体等からなる絶縁層8を間に挟んでセラミック基板2の他方主面に接合されている。
【0039】
前記放熱体9は板状であったり、多数のフィンを有する櫛歯状であったりし、銅やアルミニウムのインゴット(塊)に圧延加工法や研削加工を施すことによって製作される。
【0040】
また前記窒化珪素質セラミック体や酸化アルミニウム質セラミック体等からなる絶縁層8はセラミック基板2の他方主面に配されているパワーライン3bと放熱体9との電気的絶縁を図る作用をなし、セラミック基板2の他方主面に溶射法やスパッタリング法等を採用することによって所定厚みに形成される。
【0041】
また前記セラミック基板2の他方主面への放熱体9の接合は、まずセラミック基板2の他方主面に絶縁層8を溶射法やスパッタリング法等によって所定厚みに形成し、次にこの絶縁層8の表面にNiCr/Au、Ti/Pt/Au、Ti/Pd/Au等からなる下地金属層8aを蒸着法やスパッタリング法により被着させ、最後にこの下地金属層8aに銅やアルミニウム等の金属材からなる放熱体9を銀ロウ材(銀:72重量%、銅:28重量%)やアルミニウムロウ材(アルミニウム:88重量%、シリコン:12重量%)等を使用し、ロウ付けすることによって行なわれる。
【0042】
なお、前記セラミック基板2及び絶縁層8を窒化珪素質セラミック体で形成しておくと窒化珪素質セラミック体は高温機械的強度に優れ、かつ熱伝導率が60W/mk以上と高いことインバータ制御モジュールの機械的強度を高いものに維持しつつ、スイッチング素子5が作動に発する多量の熱を放熱体9に良好に伝達させるとともに放熱体9を介して大気中により一層効率良く放散させることができる。従って、前記セラミック基板2及び絶縁層8はこれを窒化珪素で形成しておくことが好ましい。
【0043】
かくして上述のインバータ制御モジュールによれば、2本のパワーライン3a、3bを外部電源に、出力ライン4a、4b、4cを3相モータ等に接続し、外部電源より2本のパワーライン3a、3b間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子5のオン・オフを少しずつずらせながら繰り返し行なわせることによって出力ライン4a、4b、4cから3相の交流電源が導出され、これによってインバータ制御モジュールとして機能する。
【0044】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明のインバータ制御モジュールによれば、2本のパワーラインを間にセラミック基板を挟んで対向配置させるとともに各々のパワーラインに流れる電流の方向を逆としたことから2本のパワーライン間に相互インダクタンスを効率良く発生させるとともに該相互インダクタンスによって2本のパワーラインが有するインダクタンスを大きく低減させることができ、これによって2本のパワーライン間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子のオン・オフを少しずつずらせて出力ラインより3相モータ等に3相交流電源を供給する際、スイッチング素子のオン・オフ時に前記2本のパワーラインが有するインダクタンスに起因して定格電圧より高いサージ電圧が発生することはなく、その結果、スイッチング素子に過電圧がかかり、スイッチング素子が破壊するのを有効に防止してインバータ制御モジュールを安定、かつ信頼性よく作動させることが可能となる。
【0046】
また同時に2本のパワーラインはその間に絶縁性に優れたセラミック基板が介在していることからパワーラインに20A以上という非常に大きな電流を流し600V以上の電圧がかかったとしてもパワーライン間に放電が発生し、セラミック回路基板にショートを発生させることはなく、これによってインバータ制御モジュールの作動を高信頼性となすことが可能となる。
【0047】
更に本発明のインバータ制御モジュールによれば、セラミック基板の他方主面に間に絶縁層を介して放熱体を接合させたことからインバータ制御モジュールを作動させた際にスイッチング素子が多量の熱を発生したとしてもその熱は放熱体を介して大気中に効率良く放散されることとなり、その結果、スイッチング素子は異常に高温となるのが有効に防止されて常に適温となり、スイッチング素子を正常に作動させることを可能とするとともにインバータ制御モジュールを長期間にわたり正常に作動させることが可能となる。
【0048】
また更に本発明のインバータ制御モジュールによれば、セラミック基板及び絶縁層を熱伝導率が60W/m・K以上と高く、高温機械的強度に優れる窒化珪素質セラミック体で形成しておくとインバータ制御モジュールの機械的強度を高いものに維持しつつ、スイッチング素子が作動に発する多量の熱を放熱体に良好に伝達させるとともに放熱体を介して大気中により一層効率良く放散させることができ、これによってインバータ制御モジュールをより一層長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインバータ制御モジュールの一実施例を示す平面図である。
【図2】図1に示すインバータ制御モジュールの断面図である。
【図3】従来のインバータ制御モジュールを示す平面図である。
【図4】図3に示すインバータ制御モジュールの断面図である。
【符号の説明】
2・・・・・・・・・セラミック基板
3a、3b・・・・・パワーライン
4a、4b、4c・・出力ライン
5・・・・・・・・・スイッチング素子
6・・・・・・・・・第1の接続手段
7・・・・・・・・・第2の接続手段
8・・・・・・・・・絶縁層
8a・・・・・・・・下地金属層
9・・・・・・・・・放熱体
Claims (2)
- セラミック基板と、該セラミック基板の両主面に対向配置され、流れる電流の方向が逆である2本のパワーラインと、前記セラミック基板の一方主面に配置された3本の出力ラインと、前記セラミック基板の一方主面に形成されているパワーライン及び各出力ラインに搭載されている複数個のスイッチング素子と、前記パワーライン上のスイッチング素子を各出力ラインに接続する第1の接続手段と、各出力ライン上に搭載されているスイッチング素子をセラミック基板の他方主面に形成されているパワーラインに接続する第2の接続手段と、前記セラミック基板の他方主面に絶縁層を介して接合された放熱体とからなることを特徴とするインバータ制御モジュール。
- 前記セラミック基板及び絶縁層が窒化珪素質セラミック体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御モジュール。
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