JP3825309B2 - インバータ制御モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3相モータ等を制御するためのインバータ制御モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、3相モータ等を制御するためのインバータ制御モジュールは、一般に、図4に平面図で、および図5に断面図で示すように、セラミック基板32の一主面に直流電源が供給される2本のパワーライン33a,33bおよび3相交流電源を出力する3本の出力ライン34a,34b,34cならびにパワーライン33aおよび各出力ライン34a,34b,34cを被着形成したセラミック回路基板31と、一方のパワーライン33aおよび各出力ライン34a,34b,34cに搭載されている複数のスイッチング素子35と、一方のパワーライン33aに搭載された各スイッチング素子35と各出力ライン34a,34b,34cとを電気的接続する金属細線より成る第1の接続手段36と、各出力ライン34a,34b,34cに搭載された各スイッチング素子35と他方のパワーライン33bとを電気的接続する金属細線より成る第2の接続手段37と、各スイッチング素子35と外部のコントロール基板とを電気的接続する金属細線より成る第3の接続手段38とにより構成されている。
【0003】
かかるインバータ制御モジュールは、2本のパワーライン33a,33bを外部電源に、出力ライン34a,34b,34cを3相モータ等に、外部電源より2本のパワーライン33a,33b間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子35のオン・オフを少しずつずらせながら繰り返し行なわせることによって、出力ライン34a,34b,34cを介し3相モータ等に3相交流電源が供給されることとなる。
【0004】
なお、スイッチング素子35としてはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が一般に用いられている。
【0005】
また、インバータ制御モジュールに使用されるセラミック回路基板31は、一般に酸化アルミニウム質焼結体から成るセラミック基板32の表面にメタライズ金属層を所定パターンに被着させるとともに、このメタライズ金属層にパワーライン33a,33bや出力ライン34a,34b,34cとなる銅等の金属回路板を銀ロウ等のロウ材を介しロウ付けすることによって形成されている。
【0006】
具体的には、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・可塑剤・溶剤等を添加混合して泥漿状と成すとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成形技術を採用して複数のセラミックグリーンシートを得て、次に、このセラミックグリーンシート上にタングステンやモリブデン等の高融点金属粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合して得た金属ペーストをスクリーン印刷法等の印刷技術を採用することによって所定パターンに印刷塗布し、次に、これら金属ペーストが所定パターンに印刷塗布されたセラミックグリーンシートを必要に応じて上下に積層するとともに還元雰囲気中にて約1600℃の温度で焼成し、セラミックグリーンシートと金属ペーストとを焼結一体化させて表面にメタライズ金属層を有する酸化アルミニウム質焼結体から成るセラミック基板32を形成し、最後に、このセラミック基板32に被着されているメタライズ金属層上にパワーライン33a,33bや出力ライン34a,34b,34cや制御ライン39となる銅等の金属回路板を間に銀ロウ等のロウ材を挟んで載置させるとともに、これを還元雰囲気中にて約900℃の温度に加熱してロウ材を溶融させ、この溶融したロウ材でメタライズ金属層と金属回路板とを接合することによって製作されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来のインバータ制御モジュールにおいては、2本のパワーライン33a,33bがインダクタンスを有しており、2本のパワーライン33a,33b間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子35のオン・オフを少しずつずらせて出力ライン34a,34b,34cを介して3相モータ等に3相交流電源を供給する際に、パワーライン33a,33bのインダクタンスによってスイッチング素子35のオン・オフ時に定格電圧より高いサージ電圧が発生してしまい、その結果、このサージ電圧によってスイッチング素子35に過電圧がかかり、スイッチング素子35を破壊してインバータ制御モジュールを安定して信頼性よく作動させることができないという欠点を有していた。
【0008】
そこで、上記欠点を解消するために2本のパワーライン33a,33bを近接配置させるとともに各々のパワーライン33a,33bに流れる電流の方向を逆とし、2本のパワーライン33a,33b間に相互インダクタンスを発生させるとともにこの相互インダクタンスによって2本のパワーライン33a,33bが有するインダクタンスを低減することが考えられる。
【0009】
しかしながら、2本のパワーライン33a,33bを近接配置させた場合には、パワーライン33a,33bには20A以上という非常に大きな電流が流れるとともに600V以上の電圧がかかることから、パワーライン33a,33b間に放電が発生し、セラミック回路基板31にショートが発生してインバータ制御モジュールの作動信頼性を損なうという欠点が誘発されてしまう。
【0010】
さらに、第3の接続手段38が非常に長くなり、他のラインに交差することにより、他の各ラインパターン等へ接触する危険があり、信頼性が損なわれるという欠点も誘発されてしまう。
【0011】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、サージ電圧印加によるスイッチング素子の破壊および2本のパワーライン間での放電を有効に防止し、小型で安定して直流電源を3相交流電源に確実、かつ長期間にわたって変換することができるインバータ制御モジュールを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のインバータ制御モジュールは、セラミック基板と、該セラミック基板の両主面に対向配置され、流れる電流の方向が逆である2本のパワーラインと、前記セラミック基板の一方主面に配置された3本の出力ラインと、前記一方主面に形成されている前記パワーラインおよび前記各出力ラインに搭載されている複数個のスイッチング素子と、他方主面に前記スイッチング素子のそれぞれに対応させて配置された複数本の制御ラインと、前記パワーラインに搭載されている前記スイッチング素子を前記各出力ラインに接続する第1の接続手段および前記各出力ラインに搭載されている前記スイッチング素子を前記セラミック基板の他方主面に形成されている前記パワーラインに接続する第2の接続手段ならびに前記パワーラインおよび前記各出力ラインに搭載されている前記スイッチング素子を前記セラミック基板を貫通して前記制御ラインに接続する第3の接続手段とから成ることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のインバータ制御モジュールによれば、2本のパワーラインを間にセラミック基板を挟んで対向配置させるとともに各々のパワーラインに流れる電流の方向を逆としたことから、2本のパワーライン間に相互インダクタンスを効率良く発生させるとともにこの相互インダクタンスによって2本のパワーラインが有するインダクタンスを大きく低減させることができ、これによって2本のパワーライン間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子のオン・オフを少しずつずらせて出力ラインより3相モータ等に3相交流電源を供給する際に、スイッチング素子のオン・オフ時に2本のパワーラインが有するインダクタンスに起因して定格電流より高いサージ電圧が発生することはなく、その結果、スイッチング素子に過電圧がかかり、スイッチング素子が破壊することを有効に防止してインバータ制御モジュールを安定、かつ信頼性よく作動させることが可能となる。
【0014】
また同時に、2本のパワーラインはその間に絶縁性に優れたセラミック基板が介在していることから、パワーラインに20A以上という非常に大きな電流を流し600V以上の電圧がかかったとしても、パワーライン間に放電が発生してセラミック回路基板にショートを発生させることはなく、これによってインバータ制御モジュールの作動を高信頼性となすことが可能となる。
【0015】
さらに、セラミック基板を貫通してパワーラインおよび各出力ラインに搭載されているスイッチング素子を制御ラインに接続する第3の接続手段が他のラインと交差しないように制御ラインをそれぞれ対応するスイッチング素子の近傍に配置することにより、第3の接続手段としてのワイヤボンディング長さを最短にすることができ、他の各ラインパターン等への接触を防ぐことができ、モジュールの信頼性をより高めることが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に示す実施の形態の例に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1、図2および図3は、本発明のインバータ制御モジュールの実施の形態の一例を示す表面側の平面図、裏面側の平面図および断面図である。本発明のインバータ制御モジュールは、セラミック基板2の両主面に2本のパワーライン3a,3bを対向配置させるとともに一方主面に3本の出力ライン4a,4b,4cおよびパワーライン3a、ならびにパワーライン3aおよび各出力ライン4a,4b,4cに搭載されている複数個のスイッチング素子5にそれぞれ対応させてセラミック基板2の他方主面に配置された複数本の制御ライン9を配置したセラミック回路基板1と、スイッチング素子5とから構成されており、セラミック基板2の一方主面に形成されているパワーライン3aおよび各出力ライン4a,4b,4cにスイッチング素子5を搭載し、パワーライン3aのスイッチング素子5を各出力ライン4a,4b,4cに第1の接続手段6を介して接続するとともに各出力ライン4a,4b,4cに搭載されているスイッチング素子5をセラミック基板2の他方主面に形成されているパワーライン3bに第2の接続手段7を介して接続し、さらにパワーライン3aおよび各出力ライン4a,4b,4cに搭載されているスイッチング素子5をそれぞれ対応する制御ライン9に、貫通部10、ここではセラミック基板2に設けた貫通孔を通して、第3の接続手段8を介して接続することによって形成されている。
【0018】
セラミック回路基板1のセラミック基板2は、パワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4c、ならびにパワーライン3aおよび出力ライン4a,4b,4cに搭載されるスイッチング素子5を支持する支持部材であり、窒化珪素質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,炭化珪素質焼結体,酸化アルミニウム質焼結体等のセラミック絶縁体で形成されている。
【0019】
セラミック基板2は、例えば、窒化珪素質焼結体から成る場合であれば、窒化珪素,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化イットリウム等の原料粉末に適当な有機バインダ,可塑剤,溶剤を添加混合して泥漿状となすとともにこの泥漿物から従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、次にこれらセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施して所定形状となすとともに必要に応じて複数枚を積層して成形体とし、しかる後、これを窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気中にて1600乃至2000℃の高温で焼成することによって製作される。
【0020】
なお、第3の接続手段8が通る貫通部10は、セラミック基板2を作製する際の打ち抜き加工にて貫通部10となる貫通孔を形成しておくことにより、セラミック基板2と同時に形成される。あるいは、セラミック基板2を作製した後に、レーザ加工や切削加工等の方法でセラミック基板2に貫通部10を形成してもよい。
【0021】
セラミック回路基板1は、セラミック基板2を窒化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,炭化珪素質焼結体等の熱伝達率が60W/m・K以上のセラミック絶縁体で形成しておくと、スイッチング素子5が作動時に多量の熱を発生した際に、その熱をセラミック基板2が効率良く吸収するとともに大気中に良好に放出してスイッチング素子5を常に適温となし、スイッチング素子5を常に安定、かつ正常に作動させることが可能となる。従って、セラミック基板2は窒化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,炭化珪素質焼結体等の熱伝達率が60W/m・K以上のセラミック絶縁体で形成しておくことが好ましい。
【0022】
セラミック基板2は、その一方主面に1本のパワーライン3aと3本の出力ライン4a,4b,4cとが、他方主面に1本のパワーライン3bと複数本の制御ライン9とが活性金属ロウ材等の接着材を介してロウ付け取着されている。
【0023】
パワーライン3aは外部電源から供給される直流電源をスイッチング素子5に供給するためのものであり、また出力ライン4a,4b,4cはスイッチング素子5のオン・オフにより変換された3相交流電源を外部の3相モータ等に供給するためのものであり、制御ライン9はそれぞれのスイッチング素子5のオン・オフを制御するためのものである。
【0024】
2本のパワーライン3a,3bおよび3本の出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9は、銅やアルミニウム等の金属材料から成り、銅やアルミニウム等のインゴット(塊)に圧延加工法や打ち抜き加工法等、従来周知の金属加工法を施すことによって、例えば、厚さが500μmで、所定パターン形状に製作される。なお、パワーライン3aや出力ライン4a,4b,4cに第3の接続手段8が通る貫通部10を形成する場合は、パワーライン3aや出力ライン4a,4b,4cの作製と同時に形成される。
【0025】
さらに、2本のパワーライン3a,3bおよび3本の出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9のセラミック基板2への接着は、例えば、銀ロウ材(銀:72重量%,銅:28重量%)やアルミニウムロウ材(アルミニウム:88重量%,シリコン:12重量%)等にチタンやタングステン,ハフニウムおよび/またはその水素化物の少なくとも1種を2乃至5重量%添加した活性ロウ材を使用することによって行なわれ、具体的にはセラミック基板2の表面および裏面に間に活性金属ロウ材を挟んでパワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9を載置し、次にこれを真空中または中性もしくは還元雰囲気中にて所定温度(銀ロウ材の場合は約900℃、アルミニウムロウ材の場合は約600℃)で加熱処理し、活性金属ロウ材を溶融せしめるとともにセラミック基板2の表面および裏面とパワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9とを接合させることによって行なわれる。
【0026】
また、パワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9は、これを無酸素銅で形成しておくと、無酸素銅はロウ付けの際に銅の表面が銅中に存在する酸素により酸化されることなく活性金属ロウ材との濡れ性が良好となり、セラミック基板2への活性金属ロウ材を介しての接合が強固となる。従って、パワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9は、これを無酸素銅で形成しておくことが好ましい。
【0027】
さらに、パワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9は、その表面にニッケルから成る良導電性で、かつ耐蝕性およびロウ材に対する濡れ性が良好な金属をメッキ法により被着させておくと、パワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9の酸化腐蝕を有効に防止しつつパワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cにスイッチング素子5や外部電源,外部の3相モータ等を半田等のロウ材を介して極めて強固に接続させることができる。従って、パワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9は、その表面にニッケルから成る良導電性で、かつ耐蝕性およびロウ材に対する濡れ性が良好な金属をメッキ法により被着させておくことが好ましい。
【0028】
セラミック回路基板1にはまた、セラミック基板2の一方主面に配置されたパワーライン3aおよび各出力ライン4a,4b,4cに複数のスイッチング素子5が搭載されており、かつパワーライン3aに搭載されたスイッチング素子5はワイヤ等から成る第1の接続手段6を介して各出力ライン4a,4b,4cに、また出力ライン4a,4b,4cに搭載されたスイッチング素子5はワイヤ等から成る第2の接続手段7を介してセラミック基板2の他方主面に配置されたパワーライン3bに、また、パワーライン3aおよび各出力ライン4a,4b,4cに搭載されているすべてのスイッチング素子5はワイヤ等から成る第3の接続手段8により貫通部10を通してセラミック基板2の裏面側の制御ライン9に、それぞれ電気的に接続されている。
【0029】
スイッチング素子5は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の素子が用いられており、電流のオン・オフを制御し各スイッチング素子5のオン・オフを少しずつずらせることによって、パワーライン3a,3bより供給された直流電源を3相の交流電源に変換して出力ライン4a,4b,4cに供給する機能を有する。
【0030】
また、第1の接続手段6,第2の接続手段7および第3の接続手段8は、アルミニウムやアルミニウム−珪素合金から成る、例えば直径が300μmの金属細線(ワイヤ)からなり、従来周知の超音波接続法等の接続法を用いることによって、パワーライン3aに搭載されたスイッチング素子5と各出力ライン4a,4b,4cに、また出力ライン4a,4b,4cに搭載されたスイッチング素子5とセラミック基板2の他方主面に形成されたパワーライン3bに、さらに、パワーライン3aおよび各出力ライン4a,4b,4cに搭載されているすべてのスイッチング素子5が制御ライン9に貫通部10を通して第3の接続手段8によりセラミック基板2を貫通して接合される。
【0031】
本発明のインバータ制御モジュールにおいては、2本のパワーライン3a,3bを間にセラミック基板2を挟んで対向配置させるとともにパワーライン3a,3bに流れる電流の方向を逆としておくことが重要である。
【0032】
このように2本のパワーライン3a,3bを間にセラミック基板2を挟んで対向配置させるとともにパワーライン3a,3bに流れる電流の方向を逆としておくと、2本のパワーライン3a,3b間に相互インダクタンスが効率良く発生し、この発生した相互インダクタンスによって2本のパワーライン3a,3bの各々が有するインダクタンスを大きく低減させることができ、その結果、2本のパワーライン3a,3b間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子5のオン・オフを少しずつずらせて出力ライン4a,4b,4cより3相モータ等に3相交流電源を供給する際に、スイッチング素子5のオン・オフ時に2本のパワーライン3a,3bが有するインダクタンスに起因して定格電圧より高いサージ電圧が発生することはなく、これによってスイッチング素子5に過電圧がかかり、スイッチング素子5が破壊するのを有効に防止してインバータ制御モジュールを安定、かつ信頼性よく作動させることが可能となる。
【0033】
また同時に、2本のパワーライン3a,3bはその間に絶縁性に優れたセラミック基板2が介在していることから、パワーライン3a,3bに20A以上という非常に大きな電流を流し600V以上の電圧がかかったとしても、パワーライン3a,3b間に放電が発生してセラミック回路基板1にショートを発生させることはなく、これによってインバータ制御モジュールの作動を高信頼性となすことが可能となる。
【0034】
なお、セラミック基板2はその厚みが2mmを超えると2本のパワーライン3a,3b間に相互インダクタンスを効率良く発生させるのが困難となり、また0.2mm未満となるとセラミック基板2の機械的強度が劣化してインバータ制御モジュールとしての信頼性が低下してしまう危険性がある。従って、セラミック基板2はその厚みを0.2mm乃至2mmの範囲としておくことが好ましい。
【0035】
また、セラミック基板2はその絶縁耐圧が10kV/mm未満となると、セラミック基板2の厚みが、例えば、0.2mmといった薄いものとなったときにパワーライン3a,3b間に放電が生じ、セラミック回路基板1にショートが発生してしまう危険性がある。従って、セラミック基板2はその耐電圧を10kV/mm以上としておくことが好ましい。
【0036】
また、制御ライン9については、それぞれ対応するスイッチング素子5からの距離をなるべく小さくすることにより、第3の接続手段8が他の配線部に接触することがなくなり、高信頼性となすことが可能である。さらに、制御ライン9は、スイッチング素子5が搭載される他のラインから0.5mm以上離して設置することが望ましい。0.5mm以上離すことによりライン間の放電を防止することができるため、インバータ制御モジュールの誤作動を防ぐことが可能となる。
【0037】
加えて、スイッチング素子5と制御ライン9との接続は、第3の接続手段8により、セラミック基板2に形成された貫通部10を通して行なわれる。これにより、他の接続手段6・7と交差することがないので、ワイヤボンディング時やその後の使用環境による振動で第3の接続手段8のワイヤ等が倒れて他の接続手段6・7やパワーライン3や出力ライン4と接触することがない。この結果、長期にわたる高信頼性を有するインバータ制御モジュールとなすことが可能となる。
【0038】
かくして上述のインバータ制御モジュールによれば、2本のパワーライン3a,3bを外部電源に、出力ライン4a,4b,4cを3相モータ等に接続し、外部電源より2本のパワーライン3a,3b間に20A以上の直流電源を供給するとともに各スイッチング素子5のオン・オフを少しずつずらせながら繰り返し行なわせることによって出力ライン4a,4b,4cから3相の交流電源が導出され、これによってインバータ制御モジュールとして機能する。
【0039】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上記の実施の形態の例では第3の接続手段8は貫通孔として形成された貫通部10を通して制御ライン9に直接接続されるが、この貫通孔に制御ライン9に接続された導体を配置して貫通部10を貫通導体とすることにより、セラミック基板2の一方主面側でこの貫通導体の表面にワイヤ等から成る第3の接続手段8を接続してもよい。この貫通部10としての貫通導体は、セラミック基板2の一方主面側で露出しているが、制御ライン9以外のラインとは電気的に絶縁状態となっている。このときの貫通導体は、貫通孔内に配置され、制御ライン9にロウ材等で接続された金属柱や、あるいはセラミック基板2を作製する際に、貫通孔に導体金属から成るペーストを埋め込んでおいてセラミック基板2と同時に焼成により形成され、制御ライン9をセラミック基板2に取着する際に同様にロウ材で制御ライン9と接続されたものを用いるとよい。さらに、これらの貫通導体の上に、パワーライン3a,3bおよび出力ライン4a,4b,4cならびに複数本の制御ライン9と同様の材料から成る部材をロウ材を介して接続して貫通導体としてもよい。また、これらの貫通導体は、その露出した表面に第3の接続手段8であるワイヤ等が良好に接続されるような金属をメッキ法により被着させておくとよい。
【0040】
【発明の効果】
本発明のインバータ制御モジュールによれば、2本のパワーラインを間にセラミック基板を挟んで対向配置させるとともに各々のパワーラインに流れる電流の方向を逆としたことから、2本のパワーライン間に相互インダクタンスを効率良く発生させるとともにこの相互インダクタンスによって2本のパワーラインが有するインダクタンスを大きく低減させることができ、これによって2本のパワーライン間に20A以上の電流を供給するとともに各スイッチング素子のオン・オフ時に2本のパワーラインが有するインダクタンスに起因して定格電流より高いサージ電圧が発生することはなく、その結果、スイッチング素子に過電圧がかかり、スイッチング素子が破壊するのを有効に防止してインバータ制御モジュールを安定、かつ信頼性よく作動させることが可能となる。
【0041】
また同時に、2本のパワーラインはその間に絶縁性に優れたセラミック基板が介在していることから、パワーラインに20A以上という非常に大きな電流を流し600V以上の電圧がかかったとしても、パワーライン間に放電が発生し、セラミック回路基板にショートを発生させることはなく、これによってインバータ制御モジュールの作動を高信頼性となすことが可能となる。
【0042】
また、制御ラインについてはそれぞれ対応するスイッチング素子からの距離をなるべく小さくすることにより、セラミック基板を貫通してスイッチング素子を制御ラインに接続する第3の接続手段が他の配線部に接触することがなくなり、高信頼性となすことが可能である。
【0043】
以上より、本発明によれば、サージ電圧印加によるスイッチング素子の破壊および2本のパワーライン間での放電を有効に防止し、小型で安定して直流電源を3相交流電源に確実、かつ長期間にわたって変換することができるインバータ制御モジュールを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインバータ制御モジュールの実施の形態の一例を示す表面側の平面図である。
【図2】本発明のインバータ制御モジュールの実施の形態の一例を示す裏面側の平面図である。
【図3】図1に示すインバータ制御モジュールの断面図である。
【図4】従来のインバータ制御モジュールの平面図である。
【図5】図4に示すインバータ制御モジュールの断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・セラミック回路基板
2・・・・・・・・・セラミック基板
3a,3b・・・・・パワーライン
4a,4b,4c・・出力ライン
5・・・・・・・・・スイッチング素子
6・・・・・・・・・第1の接続手段
7・・・・・・・・・第2の接続手段
8・・・・・・・・・第3の接続手段
9・・・・・・・・・制御ライン
10・・・・・・・・・貫通部
Claims (1)
- セラミック基板と、該セラミック基板の両主面に対向配置され、流れる電流の方向が逆である2本のパワーラインと、前記セラミック基板の一方主面に配置された3本の出力ラインと、前記一方主面に形成されている前記パワーラインおよび前記各出力ラインに搭載されている複数個のスイッチング素子と、他方主面に前記スイッチング素子のそれぞれに対応させて配置された複数本の制御ラインと、前記パワーラインに搭載されている前記スイッチング素子を前記各出力ラインに接続する第1の接続手段および前記各出力ラインに搭載されている前記スイッチング素子を前記セラミック基板の他方主面に形成されている前記パワーラインに接続する第2の接続手段ならびに前記パワーラインおよび前記各出力ラインに搭載されている前記スイッチング素子を前記セラミック基板を貫通して前記制御ラインに接続する第3の接続手段とから成ることを特徴とするインバータ制御モジュール。
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