JP4474739B2 - 車両のサイドドア構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車体側部に設けられるサイドドア構造に関し、特に、ドアを車体側方に平行に迫り出し、前後方向に移動して開閉する車両のサイドドア構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両のサイドドア構造は、車体に設けた回動ヒンジにより回動開閉されるヒンジドアや、車体側部に設けたスライドレール上をスライドして開閉されるスライドドアが一般に知られている。
【0003】
これらのドアは、それぞれ利点があり採用車種も多いが、それぞれ問題があり充分なドア構造とは言えなかった。すなわち、ヒンジドアではドア開閉に広い開閉スペースが必要で、狭所での開閉操作が行なえないという問題があり、また、スライドドアでは、車体前後方向に延びるスライドレールの設置スペースが車体側部に必要で、スライドドアを採用できる車種が限られているという問題があった。
【0004】
よって、特開平10−88896号公報では、これら課題を解決するため、ドアの車室側に平行リンクやスライドレール等を設け、ドアを車体側方に平行に迫り出し、前後方向に移動(オフセット)して開閉するドア構造が提案されている。
【0005】
このドア構造は、具体的には、ドアの車室側に平行リンクとして作動する、一端がフロントピラー中間部、他端がドア前後方向中間部に軸支された板状のアッパリンクと、一端がフロントピラー下端部、他端がドア前後方向中間部下端に軸支されたロアリンクとを備え、ドアを、ドア開口から車体側方に平行に迫り出し、前方に移動させることで、ドア開閉を行なうものである。
【0006】
このドア構造は、車体から離間して空中を滑らかに平行移動することから、グライド・スライディングドア構造と呼ばれる。(以下、グライドドア構造)。
【0007】
このグライドドア構造によると、ドアの開閉スペースをさほど広く確保しなくても、ドア開閉を行なうことができ、また、スライドレールも車体に設定しなくてもよいため、適用車種も限定されないといった効果を得ることができる。
【0008】
【発明の解決しようとする課題】
しかしながら、このグライドドア構造によると、ドアの車室側に平行リンク等のリンク部材を配置しなければならない点や、ドア自体が車体から離間してしまう点などにより、新たな問題が生じる。
【0009】
まず、ドアの車室側にリンク部材を配置しなければならないことにより、ドア閉鎖時に車室内にリンク部材が大きく露出してしまい、車室内からの見栄えの悪化や車室スペースの減少、車内二次衝突での悪影響等の問題が生じる。
【0010】
また、ドア自体が車体から離間してしまうことにより、ドア開放時の支持剛性をどのようにして高めるかといった問題が生じる。
【0011】
この点、前記特開平10−88896号公報のドア構造では、アッパリンクの先端に上下方向に延びる長いシャフトを設け、このシャフトをドアに固定することで、ドア荷重のほぼ全てをアッパリンクで支持して、ドア開放時の支持剛性を確保している。
【0012】
しかし、このような支持構造を採用すると、アッパリンクの剛性をかなり高める必要があり、また、新たに上下方向に延びる長いシャフトを設けることで重量増加も生じてしまうといった問題がある。またさらに、そもそもドアの支持機構自体が一点片持ち支持であるため、ドアのガタツキは根本的に避けられないといった問題がある。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に鑑み発明されたもので、グライドドア構造を車両のサイドドアに採用するにあたり、ドア閉鎖時に車室内にリンク部材が大きく露出するのを防止し、またアッパリンクだけでドアを支持する構造を採用することなく、支持剛性を確保することができる車両のサイドドア構造を提供することを主な目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は以下のように構成される。
【0015】
請求項1記載の発明は、ドアを、リンク部材を介して車両側方に平行に迫り出し、前後方向に移動させ開閉する車両のサイドドア構造において、前記リンク部材を、ドア車室側のそれぞれ上下位置で車両前後方向に延びて、一端をドアの前後方向中間部、他端をドア開口縁部に軸支するアッパリンクとロアリンクとで構成し、前記アッパリンクのドア側軸支部を、前記ロアリンクのドア側軸支部より後方に配設し、前記アッパリンクを、ドア閉鎖時にドア内部に収納するよう前記ドアに収納部を設定し、前記ロアリンクを、ドア閉鎖時にドア開口縁部とドアとの間に収納するよう、ドア開口縁部の車外側に配置し、前記リンク部材の他端の軸支部を、ドア閉鎖時に、ドアとドア開口縁部との間で、外部から隠蔽する位置に設定し、前記リンク部材の他端を軸支するドア開口縁部が、リヤフェンダ前端であり、前記ドアがリヤドアであり、該リヤドア前端を、閉鎖時、前方に配設したフロントドア後端に接触させてシール機能を得るように設定し、前記リヤドアの開口にホイールアーチ部が前方に膨出して設けられ、該ホイールアーチ部の上方に前記アッパリンクが設けられると共に、該ホイールアーチ部の前方に前記ロアリンクが設けられ、前記アッパリンクの車体側の軸支部がリヤフェンダの上方のドア開口縁部に支持され、ドア閉鎖時に該アッパリンクを収納する凹部がホイールアーチ部上方に設けられ、前記ロアリンクの車体側軸支部がドア開口下方のサイドシルに支持され、ドア閉鎖時に該ロアリンクを収納する凹部が前記サイドシルに設けられたものである。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記収納部を、ドア車室側面に形成した車両前後方向に延びる凹部としたものである。
【0017】
請求項3記載の発明は、前記リンク部材にトリム部材を装着し、ドア閉鎖時に該トリム部材がドアに装着したドアトリム部材と車室側面で略面一致するように設定したものである。
【0018】
【作用及び効果】
請求項1記載の車両のサイドドア構造によれば、グライドドア構造のリンク部材を、ドア車室側のそれぞれ上下位置で車両前後方向に延びて、一端をドアの前後方向中間部、他端をドア開口縁部に軸支するアッパリンクとロアリンクとで構成し、アッパリンクのドア側軸支部を、ロアリンクのドア側軸支部より後方に配設したことにより、アッパリンクの車室内での露出量を少なくできると共に、ロアアームによって確実にドアを支持することができるため、ドアの支持剛性を充分に確保することができる。
【0019】
したがって、グライドドア構造を車両のサイドドアに採用するにあたり、ドア閉鎖時に車室内にリンク部材が大きく露出するのを防止し、またアッパリンクだけでドアを支持する構造を採用することなく、支持剛性を確保することができるサイドドア構造を得ることができる。
【0020】
また、リンク部材の他端を軸支するドア開口縁部に、リンク部材の回動空間を確保する凹部を形成したことにより、リンク部材の回動量を充分に確保することができるため、ドアの開放量を大きくすることができる。
【0021】
さらに、リンク部材の他端の軸支部を、ドア閉鎖時に、ドアとドア開口縁部との間で、外部から隠蔽する位置に設定したことにより、ドア閉鎖時に車体外部からの見栄えも、車室内からの見栄えも共に悪化させることなく、リンク部材をドア開口縁部に軸支させることができる。
【0022】
さらまた、リンク部材の他端を軸支するドア開口縁部が、リヤフェンダ前端であることにより、ドア開口縁部の中で剛性の比較的高いリヤフェンダ前端でリンク部材を軸支することになるため、ドアの支持剛性を確実に確保することができる。
【0023】
加えて、グライドドアがリヤドアであり、該リヤドア前端を、閉鎖時、前方に配設したフロントドア後端に接触させてシール機能を得るように設定したことにより、リヤドアとフロントドアが接触してシールされることになるため、フロントドアとリヤドアとの間にピラー部材が設けられていないセンタピラーレスの車両においても、車室内のシール性能を確保することができる。
【0024】
また、アッパリンクを、ドア閉鎖時にドア内部に収納するようドアに収納部を設定し、ロアリンクを、ドア閉鎖時にドア開口縁部とドアとの間に収納するよう、ドア開口縁部の車外側に配置したことにより、アッパリンクもロアリンクも車室内にまったく露出しないため、確実に車室内の見栄えの悪化や、車室スペースの減少、車内二次衝突での悪影響等の問題を解消することができる。
【0025】
請求項2記載の車両のサイドドア構造によれば、収納部を、ドア車室側面に形成した車両前後方向に延びる凹部としたことにより、ドア閉鎖時にドアと一体となるようにリンク部材を収納することができるため、車室内の見栄えを向上することができる。
【0026】
請求項3記載の車両のサイドドア構造によれば、リンク部材にトリム部材を装着し、該トリム部材がドア閉鎖時にドアに装着したドアトリム部材と車室側面で略面一致するように設定したことにより、ドア閉鎖時に車室内にはトリム部材しか露出しないため、一見してリンク部材の存在を認識できず、より確実に見栄えを向上できる。また側突時においてもトリム部材が、乗員とリンク部材との干渉を緩和するため、乗員保護を図ることができる。
【0027】
【実施例】
本発明の実施例を、以下図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1、図2は本発明を採用した車両Vの斜視図であり、図1はサイドドアSDの閉鎖状態を示したもの、図2はサイドドアSDの開放状態を示したものである。
【0029】
車両VのサイドドアSDは、ドア前端に設けた回動ヒンジ部材で回動開閉するヒンジドア構造のフロントドアFDと、ドア後端に設けたリンク部材で平行に迫り出して後方に移動して開閉する、いわゆるグライド・スライディングドア構造(以下グライドドア構造)のリヤドアRDとから構成される。
【0030】
本実施例の車両Vは、このようなサイドドアSDとセンタピラーをなくしたセンタピラーレスの車体構造を採用することで、車体側部のドア開口を広くして、乗員の乗降を容易にしている。
【0031】
また、車両Vの車室内には、前席シートSfと後席シートSrが設置され、少なくとも4人の乗員が着座できるように設定してある。
【0032】
図3はフロントドアFD、リヤドアRD付近の車両側面図である。前述のようにフロントドアFDは、該フロントドア前端に設けた回動ヒンジ部材10で、ドア開口前縁部d1に軸支され、リヤドアRDは、該リヤドア後端に設けたリンク部材20、21で、ドア開口後縁部d2に軸支される。
【0033】
このうちリヤドアRDのリンク部材20、21は、リヤドア上部でリヤフェンダ3側からリヤドアRDの前後方向中間部まで水平に配置されたアッパリンク20と、リヤドアRD下部でホイールアーチ4前方のサイドシル5後端からリヤドアRDの前後方向中間部まで水平に配置されたロアリンク21とで構成される。
【0034】
この2本のリンク部材20、21は、互いに平行に配置されると共に、アッパリンク前端のドア側軸支部20aは、ロアリンク前端のドア側軸支部21aより、車両後方側に設定されている。
【0035】
このため、2本のリンク部材20、21は、リヤドア開放時には、リヤドアRDを車両側方に平行に迫り出し移動させる平行リンクとして作動して、リヤドアRDをグライドドア構造として構成することができる。
【0036】
また、アッパリンク20は、ロアリンク21に比してドア開口後縁部d2から車両前方側へ大きく突出しないため、車室側にアッパリンク21を露出させる量も少なくできる。
【0037】
さらに、ロアリンク21は車両前方側へ大きく突出しているため、確実にリヤドアの荷重を支持することができ、リヤドアの支持剛性を確保することができる。
【0038】
なお、図中、6はフロントドアアウタハンドル、7はリヤドアアウタハンドル、8はフロントサイドガラス、9はリヤサイドガラスである。
【0039】
図4から図9でグライドドア構造を採用したリヤドアの詳細構造について説明する。
【0040】
図4は、アッパリンク20と、そのアッパリンク20の車体側取付構造を示す図である。
【0041】
アッパリンク20は、上下一対のL字状リンク部22、23と、このL字状リンク部22、23の間に位置し、両リンク部22,23を上下方向に延びて結合するプレート部24によって構成されている。プレート部24には、該プレート部24の車室側にトリム部材を装着するための装着孔24aが複数穿設され、L字状リンク部22、23の両端には、回動ピンPを挿通するための軸支孔22a、23aがそれぞれ穿設されている。
【0042】
アッパリンク20の一端(前端)のドア側軸支部20aは、リヤドアRDに固定されたドア側取付ブラケット25に、回動ピンPを介して軸支され、アッパリンクの他端(後端)の車体側軸支部20bは、車体のドア開口後縁部d2に固定された車体側取付ブラケット26に、回動ピンPを介して軸支される。
【0043】
車体側取付ブラケット26は、ドア開口後縁部d2に固定されるベース部26aと、ベース部から車体内方に屈曲する屈曲部26bと、屈曲部26b先端に形成された円筒軸支部26cとからなり、アッパリンク20の車体側軸支部20bを、ベース部26aの固定位置より車体内方側に位置するよう形成されている。
【0044】
車体側取付ブラケット26を固定するドア開口後縁部d2は、リヤフェンダ(図4には図示せず)内に設けられるサイドフレームアウタパネル30とされ、車体側取付ブラケット26のベース部26aは、ホイールアーチ4上方に形成された剛性の高い隆起部31に、複数の固定ボルト32等によって固定されている。
【0045】
また、隆起部31の前端には、車体側取付ブラケット26の屈曲部26bに対応して、一部切欠き33が形成されて、この切欠き33に凹形状のカバープレート34を装着することで、車体内方側に設定したアッパリンク20の車体側軸支部20bの回動スペースを確保している。
【0046】
図5は、リヤドアRDの車室側からの斜視図である。リヤドアRDは、インナパネル41とアウタパネル42からなるドアパネル40と、ドアパネル40の車室側全面に装着されるドアトリム部材43とから構成され、ドアパネル40の周縁にはラバー製のシール部材44が装着されている。
【0047】
ドアトリム部材43の車両後方側の一部には、アッパリンク20の揺動位置に対応して、車両前後方向に延びる矩形の切欠きが形成され、アッパリンクの収納凹部45を構成している。この収納凹部45に収納されるアッパリンク20の車室側には、リヤドアRDを閉鎖した際、周囲のドアトリム部材43と車室側面で略面一致する前記収納凹部45と同形状の矩形のトリム部材46が装着されている。
【0048】
リヤドアRDの前後方向中間部下端には、車両前後方向に延びるロアリンク21の一端(前端)の軸支部21aが回動自在に軸支されている。
【0049】
なお、ドアトリム部材43の中央部には、アームレストとなる膨出部43aが形成され、その膨出部43aの上面には、ウィンドガラス昇降スイッチ47が設けられている。また、その前方のドアトリム部材43にはリヤドアインナハンドル48が設けられている。
【0050】
図6は、リヤドアRDのアッパリンク20付近を車両後方側から見た斜視図である。
【0051】
この図からもわかるように、アッパリンク20に装着される矩形のトリム部材46は、ほぼアッパリンク20の全体を覆い、リヤドアRD閉鎖時には周囲のドアトリム部材43と一体をなすように、収納凹部45に嵌まり込み、車室内の見栄えを確保して、一見してアッパリンク20の存在を認識できないように構成されている。
【0052】
図7は、図1のA−A断面の断面図で、リヤドアRDのアッパリンク20付近の断面を示す断面図である。
【0053】
リヤドアRDは、前述のようにアウタパネル42とインナパネル41からなるドアパネル40と、ドアパネル40の車室側に装着されるドアトリム部材43で構成され、平行リンクとして作動するアッパリンク20とロアリンク21により、グライドドア構造としてのリンク部材が構成される。
【0054】
アッパリンク20とロアリンク21は、共に前端がドア側部材に軸支され、後端が車体側部材に軸支されており、それぞれが軸支部20a、21a、20b、21bを備えている。
【0055】
このうちアッパリンク20は、ドア側軸支部20aがドア側取付ブラケット25に、車体側軸支部20bが車体側取付ブラケット26に軸支され、リヤドア閉鎖時には、矩形のトリム部材46で車室内から遮断される収納凹部45内に収納されるよう構成されている。
【0056】
アッパリンク20の車体側軸支部20bは、この図7からもわかるように、車体側取付ブラケット26のベース部26aの固定位置より車体内方側に設定され、アッパリンク20のドア側軸支部20aは、L字状リンク部の形状と相俟って、車体側軸支部20bよりも車体外方側に設定されている。
【0057】
このように、アッパリンク20のドア側軸支部20aと車体側軸支部20bの位置関係を設定することにより、車体側軸支部20bでは車体内方位置で確実に支持することで、車体側軸支部20bの支持剛性を充分に確保しつつ、ドア側軸支部20aでは車体外方位置で支持することで車室の幅方向スペースを拡張することができる。
【0058】
アッパリンク20の車体側軸支部20bの車体内方側には、サイドフレームアウタパネル30に装着された凹形状のカバープレート34が、車体側軸支部20bを取り囲むように配置され、アッパリンク20の回動スペースを確保している。また、この車体側軸支部20bは、ドア閉鎖時にはドアパネル40後端で車外から遮蔽される位置に設定されている。
【0059】
なお、サイドフレームアウタパネル30の車体内方側には、サイドフレームインナパネル35、クォータパネルインナ36、ホイールハウスインナ37がそれぞれ接合されている。
【0060】
また、サイドフレームアウタパネル30の車体内方側には、車室内面を構成するピラートリム部材38が配置され、さらにトリム部材46とピラートリム部材38との間隙には、車室内のシール性を確保するラバー製のシール部材39が装着されている。
【0061】
リヤドアRDの車両前方側には、フロントドアFDが配置され、ドア閉鎖時に、フロントドアFD後端がリヤドアRD前端に近接するように設定されている。そして、ドアパネル40の前端には、ドア閉鎖時にフロントドアFDの後端に当接させ車室内のシール性を確保するラバー製のシール部材44が装着されている。
【0062】
このように、フロントドアFD後端のシール部材44を当接させて車室内のシール性を確保することにより、センタピラーレスの本実施例の車両においても、車室内のシール性を確保することができる。
【0063】
なお、リヤドアRDの車両後方側にはリヤフェンダ3が配置され、ドア閉鎖時に、リヤフェンダ3前端がリヤドアRD後端に近接するように配設されている。
【0064】
図7の二点鎖線で示した状態がリヤドアRDを開放した状態である。この二点鎖線で示すように、アッパリンク20、ロアリンク21をともに車体側軸支部20b、21bを中心に回動させることにより、平行リンクとして作動させて、リヤドアRDを車両側方に平行に迫り出して、車両後方側に移動させてドアを開放する。
【0065】
このような開放形態をとることにより、リヤドアRDをグライドドア構造とすることができ、狭い開閉スペースでもドアの開閉を行なうことができ、また、車体にスライドレールを設定しなくても、ドアを開閉することができる。
【0066】
また、この開放時、凹形状のカバープレート34によってアッパリンク20の回動スペースが充分に確保されているため、アッパリンク20がL字形状であっても、大きく後方に回動させることができ、リヤドアRDの開放量を大きくすることができる。
【0067】
図8および図9は、図1のB−B断面、C−C断面の断面図であり、ロアリンク21のドア側および車体側の軸支部構造を示す断面図である。
【0068】
ロアリンク21は、車体部材である車両前後方向に延びるサイドシル5と、リヤドアRD下部との間に構成される収納空間50内に、車両前後方向に延びるように配置され、ロアリンクの一端(前端)のドア側軸支部21aがリヤドアRD前後方向中間部下端、ロアリンクの他端(後端)の車体側軸支部21bがサイドシル5の車外側に軸支されている。
【0069】
リヤドアRDのドアパネル40は、それぞれ下端の接合フランジ40aで接合されたインナパネル41とアウタパネル42とによって構成されている。また、インナパネル41の下部内面には、ロアリンク21の収納空間50を取り囲むように補強プレート51が貼設されている。
【0070】
サイドシル5は、それぞれ上部接合フランジ5aと下部接合フランジ5bで接合されるハット断面のアウタパネル52と、インナパネル53、補強パネル54から構成される。
【0071】
サイドシル5のアウタパネル52には、ロアリンク21の収納空間50のスペースを確保するため、一部切欠きが形成され、収納凹部55が構成されている。そして、この収納凹部55の周縁を補強するため、アウタパネル52の切欠き端部52aが補強パネル54に接合され、さらにアウタパネル52と補強パネル54が補強プレート56によって接合固定されている。
【0072】
サイドシル5の上部接合フランジ5aには、車室内のシール性を確保するラバー製のシール部材57が嵌着され、またサイドシル5上面には、スカッフプレート58が装着されている。
【0073】
ロアリンク21のドア側軸支部21aは、インナパネル41の補強プレート51が貼設された位置に固定ボルト61で固定されたドア側取付ブラケット60に、回動ピンPを介して軸支されている。
【0074】
一方、ロアリンク21の車体側軸支部21bは、補強パネル54の補強プレート56の貼設された位置に固定ボルト63で固定された車体側取付ブラケット62に、回動ピンPを介して軸支されている。
【0075】
このようにロアリンク21の軸支部21a、21bを、それぞれ剛性の高い位置に軸支することにより、ロアリンク21によるリヤドアRDの支持剛性を確実に確保することができる。
【0076】
また、サイドシル5のアウタパネル52には、前記収納空間50の下側に段差部52bが形成され、この段差部52bの凹んだ位置にドアパネル40の接合フランジ40aを位置させるようにリヤドアRDおよびサイドシル5が設定されている。
【0077】
このよう設定されることにより、リヤドアRD閉鎖時には、段差部52bと接合フランジ40aによってラビリンス効果が得られ、走行中、路面から収納空間50への泥水侵入が抑制されるため、ロアリンク21に対して泥水が飛散することが防止され、ロアリンク21の軸支部21a、21b等に腐食が生じるのを防止し、ロアリンク21の回動動作の円滑性は確保される。本実施例では、さらにサイドシル5の収納凹部55にロアリンク21が収納されているため、確実に泥水の付着が防止される。
【0078】
図10および図11に、本発明の他の実施例を示す。
【0079】
図10に示す実施例は、アッパリンク120をL字リンク部122、123二つで構成し、ドアトリム部材143に、L字リンク部122,123の回動軌跡に対応した二つの車両前後方向に延びる切欠き収納部145を設けたものである。
【0080】
このように、ドアトリム部材143に切欠き収納部145を設け、ドア閉鎖時には、アッパリンク120を切欠き収納部145内に収納させることにより、前記実施例と同様、リヤドア閉鎖時には、車室内の見栄えを確保して、アッパリンク120の存在を一見して認識できないようにすることができる。
【0081】
特に、この実施例の場合には、前述の実施例とは異なりトリム部材143をアッパリンク120に装着しなくてもよいため、部品点数の削減や組立作業の簡略化を図ることができる。
【0082】
なお、他の構成は前記実施例と同様であり、図10において図5と同一の部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図11に示す実施例は、ドアトリム部材243には収納部を設けずに、アッパリンク220に装着するトリム部材246自体を、リヤドアRDの上半分後部全てを覆うように大きく設定して、リヤドアRDの上半分後部の収納位置245で、ドアトリム部材243とは別に車室内面を構成するようにしたものである。
【0084】
このように、ドアトリム部材243それ自体には収納部を設けず、アッパリンク220のトリム部材246で、リヤドア245の上半分後部全てを覆うことにより、前記実施例と同様、リヤドア閉鎖時には、車室内の見栄えを確保して、アッパリンク220の存在を一見して認識できないようにすることができる。
【0085】
特に、この実施例の場合には、前述の実施例とは異なり、ドアトリム部材243に収納部を、敢えて設けなくてもよいため、ドアトリム部材243の成形を容易にすることができる。
【0086】
これら実施例は、以上のように構成および作動されることにより、以下の効果を奏する。
【0087】
まず、アッパリンクのドア側軸支部を、ロアリンクのドア側軸支部よりドア開口後縁部(車両後方側)に後退させて設定したことにより、アッパリンクの車室内での露出量を少なくできると共に、ロアアームによって確実にドアを支持することができるため、ドアの支持剛性を充分に確保することができる。
【0088】
よって、グライドドア構造のドアであっても、ドア閉鎖時に車室内にリンク部材が大きく露出するのを防止し、またアッパリンクだけでドアを支持する構造を採用することなく、支持剛性を確保することができる。
【0089】
次に、アッパリンクをドア閉鎖時にドア内部に収納するよう、ドアに収納部(収納凹部、切欠き収納部、収納位置)を設定したことにより、アッパリンクドア閉鎖時に車室内に露出することがないため、車室内の見栄えの悪化や車室スペースの減少、車内二次衝突での悪影響等の問題を解消することができる。
【0090】
特に、アッパリンクにトリム部材を装着したものの場合には、トリム部材がドア閉鎖時にドアトリム部材と車室側面で略面一致するため、ドア閉鎖時に車室内にはトリム部材しか露出せず、より確実に見栄えを向上できる。また側突時においてもトリム部材が、乗員とアッパリンクとの干渉を緩和するため、乗員保護を図ることができる。
【0091】
また、アッパリンクの車体側軸支部を取り囲むように凹形状のカバープレートを設けたことにより、アッパリンクの回動量を充分に確保することができるため、ドアの開放量を大きくすることができる。
【0092】
さらに、アッパリンクの車体側軸支部を、リヤドア後端とリヤフェンダ前端との間で外部から隠蔽する位置に設定したことにより、ドア閉鎖時に車体外部からの見栄えも、車室内からの見栄えも共に悪化させることなく、グライドドアを構成することができる。
【0093】
また、このアッパリンクの車体側軸支部を軸支するドア開口縁部が、リヤフェンダ(具体的にはサイドフレームアウタパネル)前端であることにより、ドア開口縁部の中で剛性の比較的高いリヤフェンダ前端でリンク部材を軸支することになるため、ドアの支持剛性を確実に確保することができる。
【0094】
以上、実施例について説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、グライドドア構造をサイドドアに採用するもので、アッパリンクとロアリンクとの関係を考慮して、リンク部材をできるだけ車室内に露出させずに、ドアの支持剛性を確実に確保するものであれば、本発明に全て包括されるものであり、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜詳細構造を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を採用した車両のサイドドア閉鎖状態を示す斜視図。
【図2】本発明を採用した車両のサイドドア開放状態を示す斜視図。
【図3】フロントドア、リヤアドア付近を示す車両側面図。
【図4】アッパリンクとアッパリンクの車体側取付構造を示す斜視図。
【図5】リヤドアの車室側からの斜視図。
【図6】リヤドアのアッパリンク付近を車両後方側から見た斜視図。
【図7】図1のA−A断面図。
【図8】図1のB−B断面図。
【図9】図1のC−C断面図。
【図10】他の実施例を示すリヤドアの斜視図。
【図11】他の実施例を示すリヤドアの斜視図。
【符号の説明】
V…車両
SD…サイドドア
FD…フロントドア
RD…リヤドア
d2…ドア開口後縁部
d1…ドア開口前縁部
3…リヤフェンダ
4…ホイールアーチ(ホイールアーチ部)
5…サイドシル
20、120、220…アッパリンク
20a…アッパリンクドア側軸支部
20b…アッパリンク車体側軸支部
21…ロアリンク
21a…ロアリンクドア側軸支部
21b…ロアリンク車体側軸支部
40…ドアパネル
43、143、243…ドアトリム部材
44…シール部材
46、246…トリム部材
45、55…収納凹部
145…切欠き収納部
245…収納位置
Claims (3)
- ドアを、リンク部材を介して車両側方に平行に迫り出し、前後方向に移動させ開閉する車両のサイドドア構造において、
前記リンク部材を、ドア車室側のそれぞれ上下位置で車両前後方向に延びて、一端をドアの前後方向中間部、他端をドア開口縁部に軸支するアッパリンクとロアリンクとで構成し、
前記アッパリンクのドア側軸支部を、前記ロアリンクのドア側軸支部より後方に配設し、
前記アッパリンクを、ドア閉鎖時にドア内部に収納するよう前記ドアに収納部を設定し、
前記ロアリンクを、ドア閉鎖時にドア開口縁部とドアとの間に収納するよう、ドア開口縁部の車外側に配置し、
前記リンク部材の他端の軸支部を、ドア閉鎖時に、ドアとドア開口縁部との間で、外部から隠蔽する位置に設定し、
前記リンク部材の他端を軸支するドア開口縁部が、リヤフェンダ前端であり、
前記ドアがリヤドアであり、該リヤドア前端を、閉鎖時、前方に配設したフロントドア後端に接触させてシール機能を得るように設定し、
前記リヤドアの開口にホイールアーチ部が前方に膨出して設けられ、該ホイールアーチ部の上方に前記アッパリンクが設けられると共に、該ホイールアーチ部の前方に前記ロアリンクが設けられ、
前記アッパリンクの車体側の軸支部がリヤフェンダの上方のドア開口縁部に支持され、ドア閉鎖時に該アッパリンクを収納する凹部がホイールアーチ部上方に設けられ、
前記ロアリンクの車体側軸支部がドア開口下方のサイドシルに支持され、ドア閉鎖時に該ロアリンクを収納する凹部が前記サイドシルに設けられた
車両のサイドドア構造。 - 前記収納部を、ドア車室側面に形成した車両前後方向に延びる凹部とした、
請求項1に記載の車両のサイドドア構造。 - 前記リンク部材にトリム部材を装着し、ドア閉鎖時に該トリム部材がドアに装着したドアトリム部材と車室側面で略面一致するように設定した、
請求項2記載の車両のサイドドア構造。
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