JP4474495B2 - 水溶性切断液組成物、水溶性切断液及びその水溶性切断液を用いた切断方法 - Google Patents

Description

本発明は、ワイヤーソーやバンドソー等を用いてインゴット等を切断するために用いられる水溶性切断液組成物、それを含む水溶性切断液、及びその水溶性切断液を用いた切断方法に関する。

ワイヤーソーやバンドソー等の切断具を用いてインゴット等の被切断物を切断する場合、切断具と被切断物との間の潤滑、摩擦熱の除去、及び切削屑の洗浄等を目的として切断液が一般的に使用されている。例えば、鉱物油を主成分とする非水溶性切断液が用いられている（特許文献１）。しかし、このような非水溶性切断液は、切断後、被切断物に非水溶性切断液が付着してしまうため、有機溶剤などの特殊な洗浄剤を用いて被切断物を洗浄しなければならないという問題を有する。

前記問題を解決するために、被切断物に付着した切断液を水によって洗浄可能な水溶性切断液も用いられている（特許文献２乃至５）。しかし、このような水溶性切断液は、水が含有されていないため、引火しやすいという問題を有する。

前記問題を解決するために、水が含まれた水溶性切断液も用いられている（特許文献６乃至８）。しかし、このような水溶性切断液は、切断の際に水と被切断物（シリコン）から生成されるシリコン微粉体とが反応し、ガスが発生し、また、水溶性切断液の粘度が変化するという問題を有する。

前記問題を解決するために、過酸化水素等の酸化剤が含有された切断加工用水溶性油剤改質剤（特許文献９）や、グリコールエーテル類が含有された水性砥粒分散媒組成物（特許文献１０）が提案されている。
特開平１０−１１０１８０号公報 特開平１０−１１０１８０号公報 特開平１１−２８６６９３号公報 特表２００２−５３７４４０公報 特開２００２−８０８８３号公報 特開平１０−８１８７２号公報 特開平１０−２５９３９６号公報 特開平１１−３０２６８１号公報 特開２００６−１８２９０１号公報 特開２００７−３１５０２号公報

しかしながら、過酸化水素等の酸化剤が含まれたものは、過酸化水素の反応性が高いため好ましくない。また、グリコールエーテル類を含む場合においては、ガスの発生や粘度変化の抑制の効果が不十分であるという問題を有する。そこで本発明は、引火やガスの発生を抑制し安全性が高く、かつ粘度変化が少ない水溶性切断液組成物、水溶性切断液、及びその水溶性切断液を用いた切断方法を提供することを目的とする。

以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、グリコール、グリコールエーテル、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールエーテルの少なくとも一つのグリコール類と水の他に、第三成分として亜硝酸系気化性防錆剤、並びにアミン類及び亜硝酸塩の混合物の少なくとも一つを含ませることにより、引火やガスの発生を抑制し安全性が高く、かつ粘度変化を少なくすることができることを見出した。すなわち、本発明は、グリコール、グリコールエーテル、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールエーテルの少なくとも一つのグリコール類と、水と、亜硝酸系気化性防錆剤、並びにアミン類及び亜硝酸塩の混合物の少なくとも一つと、が含まれたことを特徴とする水溶性切断液組成物である。また、本発明は、前記水溶性切断液組成物及び砥粒が含まれることを特徴とする水溶性切断液である。またさらに、本発明は、前記水溶性切断液を用いて切断することを特徴とする切断方法である。

以上のように、本発明によれば、引火やガスの発生を抑制し安全性が高く、かつ粘度変化が少ない水溶性切断液組成物、水溶性切断液、及びその水溶性切断液を用いた切断方法を提供することができる。

本発明に係る水溶性切断液組成物に用いられるグリコール類は、例えば、グリコールとしては、エチレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられ、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられ、ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックポリマーが挙げられ、ポリアルキレングリコールエーテルとしては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びポリアルキレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。

本発明に係る水溶性切断液組成物に用いられる亜硝酸系気化性防錆剤としては、例えば、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、及びニトロナフタレンアンモニウムナイトライトが挙げられる。

本発明に係る水溶性切断液組成物に用いられるアミン類としては、例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、２−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、１−（２−アミノエチル）ピペラジン、Ｎ−メチルピペラジン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、Ｎ−メチルジエタノールアミン、Ｎ，Ｎ−ジメチルエタノールアミン、Ｎ−エチルジエタノールアミン、Ｎ−ブチルジエタノールアミン、Ｎ−（β−アミノエチル）エタノールアミン、Ｎ−シクロヘキシルジエタノールアミン、Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’−テトラキス（２−ヒロキシエチル）エチレンジアミン、Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’−テトラキス（２−ヒドロキシプロピル）エチレンジアミン、オレイルアミン、ヤシ油由来アルキルアミン、牛脂由来アルキルアミン、硬化牛脂由来アルキルアミン、及び大豆油由来アルキルアミン、並びにこれらにアルキレンオキサイドを反応させた反応物が挙げられる。

本発明に係る水溶性切断液組成物に用いられる亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、及び亜硝酸カリウムが挙げられる。

本発明に係る水溶性切断液組成物は、添加補助剤が含まれていてもよい。添加補助剤としては、例えば、湿潤剤、防錆剤、非鉄金属防食剤、分散剤、消泡剤、及び増粘剤を挙げることができる。

グリコール類と水との重量比は、５：９５〜９５：５であることが好ましい。グリコール類が上記範囲より少ないと、切断時に水が蒸発しやすくなる。水が蒸発すると、乾燥により被切断物同士が貼りつくため、剥がす際に割れが生じ、歩留まりが悪くなるとともに、被切断物上に切屑が貼りつくため、洗浄も困難となる。グリコール類が上記範囲より多いと、引火する危険性が高くなる。

亜硝酸系気化性防錆剤は、水溶性切断液組成物に、０．０１〜５重量％含まれることが好ましく、０．０５〜１重量％含まれるのがさらに好ましい。上記範囲より少ないと、被切断物（シリコン）と水との反応の抑制効果が低いため、ガスが発生しやすく、また水溶性切断液の粘度変化が大きい。上記範囲より多いと、水溶性切断液中の砥粒の分散性が悪く、液安定性が低い。

アミン類及び亜硝酸塩は、水溶性切断液組成物に、アミン類が０．０１〜５重量％、亜硝酸塩が０．０１〜５重量％含まれることが好ましく、アミン類が０．０５〜１重量％、亜硝酸塩が０．０５〜１重量％含まれるのがさらに好ましい。上記範囲より少ないと、被切断物（シリコン）と水との反応の抑制効果が低いため、ガスが発生しやすく、また水溶性切断液の粘度変化が大きい。上記範囲より多いと、水溶性切断液中の砥粒の分散性が悪く、液安定性が低い。

本発明に係る水溶性切断液に含まれる砥粒としては、例えば、金属、金属又は半金属の炭化物、金属又は半金属の窒化物、金属又は半金属の酸化物、金属又は半金属のホウ化物、及びダイヤモンドからなる研磨材が挙げられる。金属又は半金属は、周期律表の３Ａ、４Ａ、５Ａ、３Ｂ、４Ｂ、５Ｂ、６Ｂ、７Ｂ又は８Ｂ族由来のものであり、例えば、アルミナ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、コロイダルシリカ、及びヒュームドシリカが挙げられる。砥粒の平均粒子径は、０．０１μｍ〜５０μｍとすることができる。

本発明に係る水溶性切断液は、水溶性切断液が３０〜７０重量％、砥粒が３０〜７０重量％含まれるのが好ましい。砥粒が上記範囲より少ないと、切断速度が遅くなり、実用性に乏しい。上記範囲より多いと、水溶性切断液の粘度が高くなり、加工性能が低下する。

本発明に係る水溶性切断液は、インゴット、特に半導体素子の材料であるシリコン製ウェハーの切断に好ましく用いられる。これらの切断には、ワイヤーソー加工機やバンドソー加工機を用いることができる。

次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。

実施例１乃至１０、比較例１乃至７
表１乃至表４の配合量に従って、これらを常法により混合することにより、実施例１乃至１０に係る水溶性切断液組成物、及び比較例１乃至７に係る切断液組成物を得た。

実施例１１乃至２０、及び比較例８乃至１４
実施例１乃至１０に係る水溶性切断液組成物と、砥粒（緑色炭化ケイ素＃１０００）とを重量比で１：１の割合で混合して、実施例１１乃至２０に係る水性切断液を得た。実施例１乃至１０に係る水溶性切断液組成物の代わりに比較例１乃至７に係る切断液組成物を用いた以外は実施例１１乃至２０と同様にして比較例８乃至１４に係る切断液を得た。

（洗浄試験）
実施例１１乃至１５に係る水溶性切断液、並びに比較例８に係る切断液を単結晶シリコンウェハーに塗布した後、流水にて洗浄し、洗浄後の単結晶シリコンウェハーの状態を目視で観察した。評価は、当社評価員によって行われ、水溶性切断液等の汚れを完全に除去できた（○）、除去が不完全であった（△）、除去できない（×）の３段階で評価した。結果を表５に示す。

表５から、本発明に係る水溶性切断液は、水による洗浄で、砥粒や水溶性切断液が被切断物から完全に除去され、洗浄が容易であることが分かる。

（粘度及びガス発生試験）
ワイヤーソーにより単結晶シリコンのインゴットを切断した時に混入してくる活性なＳｉ切屑を想定して、実施例１１乃至２０に係る水溶性切断液、及び比較例２乃至７に係る切断液にＳｉ粉（粒径約５μｍ）を１０ｗｔ％添加し、遊星ボールミルにて粗粉砕し、ＢＬ型回転粘度計にて２５℃における粘度を測定した（粘度１）。その後、密閉できるポリエチレン袋に入れ、脱気し、６０℃にて２４時間保管した後のＳｉ反応ガス量を測定した。Ｓｉ反応ガス量測定後、１２００ｒｐｍで１０分間撹拌した後の２５℃における粘度を測定した（粘度２）。結果を表６に示す。

表６から、本発明に係る水溶性切断液は、Ｓｉ反応ガス量が限りなく少なく、粘度変化も小さいことが分かる。また、水を含んでいるため、引火の危険も少ない。

Claims (6)

1. グリコール、グリコールエーテル、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールエーテルの少なくとも一つのグリコール類と、水と、亜硝酸系気化性防錆剤、並びにアミン類及び亜硝酸塩の混合物の少なくとも一つと、が含まれたことを特徴とするシリコン切削用水溶性切断液組成物。
2. 前記グリコール類と前記水との重量比が５：９５〜９５：５であることを特徴とする請求項１記載のシリコン切削用水溶性切断液組成物。
3. 前記亜硝酸系気化性防錆剤が０．０１〜５重量％含まれることを特徴とする請求項１又は２記載のシリコン切削用水溶性切断液組成物。
4. 前記アミン類が０．０１〜５重量％及び前記亜硝酸塩が０．０１〜５重量％含まれることを特徴とする請求項１又は２記載のシリコン切削用水溶性切断液組成物。
5. 請求項１乃至４いずれか記載のシリコン切削用水溶性切断液組成物及び砥粒が含まれることを特徴とするシリコン切削用水溶性切断液。
6. 請求項５記載のシリコン切削用水溶性切断液を用いて切断することを特徴とする切断方法。