JP4473403B2 - ラッチ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、係合状態にある場合に係合体の係合部を移動子から突出させ、該係合部を係止対象物に係合させることによって当該係止対象物との相対的な離隔移動を規制する一方、解除状態にある場合に前記係合部を前記移動子の内部に退行収納させるようにしたラッチ装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来技術としては、例えば実公平7−40061号公報に示されるものがある。すなわち、この従来技術では、移動子がハウジング(ケース)の奥へ押し込められると、この移動子に設けた係合体の係合部が下方に向けて突出される一方、移動子がハウジングの開口部から突出すると、係合体の係合部が移動子の内部に退行収納されるようになっている。ハウジングと移動子との間には、圧縮バネが介在されているとともに、滑合突起とカムとの組み合わせから成る移動子の位置規定手段が設けられている。圧縮バネは、ハウジングに対して移動子を常時突出する方向に押圧するものである。位置規定手段は、ハウジングに対する移動子の押込操作に応じて滑合突起およびカムを適宜係脱させ、移動子をハウジングの開口部から突出した突出位置と、ハウジングの奥に押し込められた押込位置とに交互に切り換えるように機能するものである。このハウジングは、扉によって開閉される箱本体に取り付けられる。一方、扉の内面には、ハウジングに対応する位置にストライクが取り付けられる。
【0003】
上記のように構成された従来技術においては、移動子が突出位置にある場合に扉を閉めると、この扉によって移動子がハウジングに押し込められ、位置規定手段の作用によって押込位置で停止する。その際、移動子の下部外周から係合体の係合部が下方に向けて突出され、該係合部が扉のストライクに係合されることになり、扉をそのまま閉じた状態に保持することができる。
【0004】
一方、上述した状態から扉をさらに閉める方向に押圧すると、位置規定手段の作用によって移動子が突出位置に復帰され、扉が開く方向に移動する。その際、係合体の係合部が移動子の内部に退行収納され、ストライクとの係合状態が解除されることになり、扉をそのまま開くことができるようになる。
【0005】
この従来技術によれば、通常、扉を開ければ移動子が突出位置にあり、係合体の係合部が当該移動子に退行収納されることになる。従って、係合体の係合部が他の物と接触して損傷する事態を防止することができるとともに美観を損なう虞れがない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術にあっては、係合体を移動体に対して回転可能に支持させるとともに、この係合体の後端をハウジングのガイド溝内に位置させてあり、ハウジングに対する移動子の移動に伴うガイド溝との位置の変化に応じて係合体の後端を上下動させ、その係合部を移動子から出没させるようにしたものである。つまり、係合体の後端とハウジングのガイド溝とが常に当接した状態にあり、移動子の移動が伴わない限り係合部の位置を変更することができない。
【0007】
このため、ラッチ装置の係合部と扉のストライクとが係合状態にある場合に当該扉を開く方向に過大な外力が作用すると、ラッチ装置やストライクに直接その外力が作用し、係合部が破断する等の損傷を来す虞れがある。
【0008】
こうした事態を防止するためには、係合体を容易に弾性変形する材質で構成することが考えられる。すなわち、係合体を弾性変形させることによって外力を吸収し、ラッチ装置やストライクの損傷を防止しようとするものである。しかしながら、容易に弾性変形する係合体を適用したラッチ装置では、通常状態においてもラッチ装置の係合部と扉のストライクとの間に十分な係合力を確保することが困難になり、不用意に扉が開成する事態を招来することになる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、通常において十分な係合力を確保する一方、過大な外力が作用した場合にはその損傷を防止することのできるラッチ装置を提供することを解決課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る発明では、ハウジングの摺動孔に進退可能に配設され、前記摺動孔において押込位置と突出位置間に保持される移動子と、先端部に設けた係合部が前記移動子の外周から出没する態様で該移動子に移動可能に支持させた係合体と、前記移動子が前記押込位置に移動した場合に前記係合体の係合部を前記移動子から退行可能に突出させて係合状態とする一方、前記移動子が前記突出位置に移動した場合に前記係合体の係合部を前記移動子の内部に退行収納させて解除状態とする作動手段とを備え、前記係合状態において、前記係合部を係止対象物の係止具に係合させることにより前記係合部の前端が前記移動子の前端部下面から形成した凹所の前壁内面に当接した状態となり、当該係合体の係合部が前記移動子と前記係止具の間に保持されて、前記係止対象物との相対的な離隔移動を規制するように構成している。
【0011】
また本願の請求項2に係る発明では、上述した請求項1に係る発明において、弾性手段の弾性復元力により、前記係合状態において前記係合部を前記移動子から突出させるようにしている。
【0012】
本願の請求項3に係る発明では、上述した請求項2に係る発明において、前記ハウジングおよび前記係合体の間に介在し、当該係合体を介して前記移動子を前記第一位置から前記第二位置に向けて常時押圧する押圧バネと、この押圧バネの押圧力に抗して前記移動子を前記第二位置から前記第一位置へ押圧した場合に該移動子を当該第一位置に停止させ、さらにこの第一位置から同方向に押圧した場合に前記押圧バネの押圧力によって前記移動子を前記第二位置に復帰させる位置規定手段とをさらに具備し、前記押圧バネの押圧力により、前記係合状態において前記係合部を前記移動子から突出させるようにしている。
【0013】
本願の請求項4に係る発明では、上述した請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記係合体の係合部に、該係合部が突出した状態で互いに離隔した前記移動子と前記係止対象物とを近接移動させた場合に前記係止具に当接し、かつ該係止具に圧接させた場合に前記係合体の係合部を退行移動させる退行作用面を設けるようにしている。
【0014】
本願の請求項5に係る発明では、上述した請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記移動子に対して前記係合体を当該移動子の進退方向に沿って移動可能に配設している。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図4は、本発明に係るラッチ装置の一実施形態を概念的に示したものである。ここで例示するラッチ装置1は、例えば、図9に示すように、蝶番Aによって開閉する扉(係止対象物)Bを備えたキャビネットCに適用するもので、ハウジング10、移動子30および係合体50を備えている。
【0019】
ハウジング10は、図3乃至図5に示すように、上端部の両側がそれぞれ側方に突出したブロック状部材であり、例えばポリアセタール(POM)等の合成樹脂によって成形してある。このハウジング10には、側方に延在する部分にそれぞれ上下方向に沿ってネジ挿通孔11を形成してあるとともに、その後端部にロケートピン12を突設してある。
【0020】
またこのハウジング10には、その下端部に摺動孔13を設けてある。摺動孔13は、横断面を矩形状に形成したもので、その一端がハウジング10の前面10aにおいて開口する一方、その他端がハウジング10の後壁10bによって閉塞してある。この摺動孔13には、バネ支持ピン14、レバー支持部15、ストッパ用案内孔16およびガイドリブ17を設けてある。
【0021】
バネ支持ピン14は、ハウジング10における後壁10bの内面に設けた円柱状部分であり、摺動孔13の軸心よりも下方となる位置から摺動孔13の開口に向けて突設してある。このバネ支持ピン14には、その外周部に押圧バネ18を装着してある。押圧バネ18は、常態においてバネ支持ピン14よりも十分な長さを有した金属製のコイルバネである。
【0022】
レバー支持部15は、カムレバー19を支持する部分であり、ハウジング10の後壁10bにおいてバネ支持ピン14よりも上方となる位置に設けてある。カムレバー19は、基部19aと一対の腕部19bとを有するもので、金属線により一体に成形してある。基部19aは、直線状に延在する部分であり、摺動孔13の幅よりも僅かに短い長さを有している。一対の腕部19bは、基部19aの両端からそれぞれ同一方向に向けて直角に延在する部分である。各腕部19bの先端部は、互いに内方に向けて直角に屈曲し、それぞれカム従動部19cを構成している。このカムレバー19は、一対の腕部19bが摺動孔13の開口方向に向かう状態で基部19aを介してレバー支持部15に支承させてあり、各一対の腕部19bがそれぞれ基部19aを支点として上下方向に揺動可能である。
【0023】
ストッパ用案内孔16は、摺動孔13の上壁10cおよび底壁10dに設けた狭幅の切欠であり、互いに対向する部位において摺動孔13の延在方向に沿って延在している。各ストッパ用案内孔16は、上壁10cおよび底壁10dを貫通しており、それぞれの前端にストッパ面20を構成している。なお、図中の符号21は、上壁10cの内面および底壁10dの内面に設けた導入案内溝である。これら導入案内溝21は、それぞれ摺動孔13の開口側において各ストッパ用案内孔16の延長上に位置しており、個々の奥側端部が奥方に向けて漸次内方に湾曲している。
【0024】
ガイドリブ17は、摺動孔13の左右両壁10e,10fにおいてそれぞれの内面から内方に向けて突出した部分である。各ガイドリブ17は、収納規定部17aと傾斜部17bとを有し、摺動孔13においてバネ支持ピン14の突出端よりも開口側となる位置に設けてある。収納規定部17aは、摺動孔13の軸心よりも下方となる位置において該軸心に沿って延在し、一方、傾斜部17bは、各収納規定部17aの奥側端部から奥方に向けて漸次上方に傾斜するように連続している。
【0025】
なお、図中の符号22は、上壁10cの内面および底壁10dの内面に設けた滑動リブである。各滑動リブ22は、図には明示していないが、横断面が小径の半円形状を成す複数条の凸部分であり、摺動孔13の軸心に沿って延在している。また、図中の符号23は、摺動孔13の左右両壁10e,10fに設けたスライドガイドである。各スライドガイド23は、ガイドリブ17よりも突出幅が大きく、各ガイドリブ17の収納規定部17aよりも下方となる位置において摺動孔13の軸心に沿って延在している。
【0026】
移動子30は、図1、図3、図4および図6に示すように、概略的にはハウジング10の摺動孔13に嵌合できる横断面を有した四角柱状部材であり、例えばポリアミド(PA66)等の合成樹脂によって成形してある。移動子30の長さは、ハウジング10の摺動孔13に押し込んだ際にもその前端部分が外部に露出するように、該摺動孔13よりも大きく構成してある。
【0027】
この移動子30には、その内部に収納凹部31およびバネ挿入孔32を設けてある。
【0028】
収納凹部31は、移動子30の前端部下面から形成した凹所である。収納凹部31の前壁内面は、その下端部が下方に向けて漸次前方に僅かに傾斜しており、移動子側第一作用面31aを構成している。
【0029】
バネ挿入孔32は、移動子30の後端面からその軸心方向に沿って延在し、その前端部が上述した収納凹部31に連通している。このバネ挿入孔32は、ハウジング10のバネ支持ピン14に装着した押圧バネ18の外径よりも大きな内径を有するもので、バネ支持ピン14に対応する位置に設けてある。
【0030】
また上記移動子30には、ストッパ爪33、逃げ溝34、軸受孔35およびカム機構部36を設けてある。
【0031】
ストッパ爪33は、移動子30の上面および下面からそれぞれ突出した部分である。各ストッパ爪33は、ハウジング10のストッパ用案内孔16に対応する位置に設けてあり、個々の前端面37が直角方向に延在する一方、個々の後端面が後方に向けて漸次内方へ湾曲している。
【0032】
逃げ溝34は、移動子30の後端から両側面に亘る部位に設けた凹所で、ハウジング10に設けたガイドリブ17およびスライドガイド23を受入れて当該移動子30の摺動孔13への挿入を可能とするものである。各逃げ溝34は、それぞれの後端部34aがガイドリブ17およびスライドガイド23の双方を受入れるべく比較的広い上下幅を有する一方、それぞれの前端部34bがガイドリブ17の収納規定部17aのみを受入れるべく比較的狭い上下幅を有している。これら逃げ溝34は、それぞれバネ挿入孔32よりも大きな長さに形成してあり、個々の前端部34bが上述した収納凹部31に連通している。
【0033】
軸受孔35は、移動子30の軸心方向に沿って延在する長孔であり、該移動子30の両側面においてそれぞれ逃げ溝34の前端部34bよりも下方に形成してある。各軸受孔35は、移動子30の両壁を貫通し、上述した収納凹部31に連通している。
【0034】
カム機構部36は、上述したカムレバー19のカム従動部19cを案内するために設けた一連の溝カムであり、移動子30の両側面において逃げ溝34の上方部に設けてある。各カム機構部36は、それぞれ左右で形状の異なる台形状カム部38a,38bとハート状カム部39a,39bとを有しており、これらのカム部38a,38b,39a,39bとカムレバー19および上述した押圧バネ18との協働によって、ハウジング10に対する移動子30の停止位置を規定するものである。
【0035】
なお、図中の符号40は、軸受孔35の下方部に設けた導入テーパ面である。各導入テーパ面40は、移動子30の下面両側から収納凹部31に向けて形成した傾斜面であり、上方に向けて漸次内方に傾斜している。
【0036】
係合体50は、図3、図4および図7に示すように、主部51と一対のアーム部52とを有したもので、例えばポリアセタール(POM)等の合成樹脂によって一体成形してある。
【0037】
係合体50の主部51は、上述した移動子30の収納凹部31に収納できる大きさに構成したもので、バネ受座53および係合部54を有する。バネ受座53は、ハウジング10のバネ支持ピン14に装着した押圧バネ18の先端部が当接するための台状部分であり、主部51の後端面から後方に向けて突設してある。このバネ受座53には、さらにバネ受ピン55を設けてある。バネ受ピン55は、バネ受座53から円錐台状に突出する部分であり、その軸心が後述する軸部56の軸心よりも上方に位置している。
【0038】
係合部54は、主部51の前端部から下方に向けて略直角方向に突出した部分である。係合部54の前端上方部は、主部51の下面を基準とした場合に下方に向けて漸次前方に僅かに傾斜しており、係合体側第一作用面54aを構成している。この係合体側第一作用面54aの傾斜角度θ1 は、上述した移動子側第一作用面31aの傾斜角度θ2 とほぼ同一である。
【0039】
また係合部54の前端下方部は、下方に向けて漸次後方に湾曲し、退行作用面54bを構成している。さらに係合部54の後端下方部は、下方に向けて漸次前方に傾斜しており、係合体側第二作用面54cを構成している。この係合体側第二作用面54cの傾斜角度θ3 は、上述した係合体側第一作用面54aの傾斜角度θ1 よりも大きくなるように形成してある。
【0040】
図4および図7からも明らかなように、この係合体50の主部51および係合部54は、容易に弾性変形することのないように、十分な厚さおよび幅をもって構成してある。
【0041】
一方、係合体50のアーム部52は、それぞれ主部51の後端から後方に向けて相互に平行に延在した部分である。各アーム部52には、個々の後端部外表面にガイドピン57を設けてあるとともに、個々の基端部外表面に軸部56を設けてある。ガイドピン57は、円柱状に突出した部分であり、互いの先端面相互間距離がハウジング10に設けたガイドリブ17の相互間隔よりも大きくなるように形成してある。軸部56は、移動子30に設けた軸受孔35の上下幅と同一となる外径を有した円柱状部分である。各軸部56は、互いの先端面相互間距離が移動子30に設けた収納凹部31の幅よりも大きく、かつ該移動子30の幅よりも僅かに小さくなるように構成してある。これら軸部56の突出端部には、それぞれの上部に傾斜面58を設けてある。
【0042】
なお、図中の符号59は、主部51の下面に設けた支持台状部である。この支持台状部59は、下方に向けて台状に突出した部分であり、その突出端面が主部51の下面と平行に延在している。
【0043】
上記のように構成したハウジング10、移動子30および係合体50の三者は、それぞれ以下の手順に従って相互に組み立てることにより、本実施形態のラッチ装置1を構成する。
【0044】
まず、図1および図3に明示するように、一対のアーム部52をそれぞれ収納凹部31から逃げ溝34との連通部を通じて外部に突出させ、かつ主部51を収納凹部31に収納させた状態で、それぞれの軸部56を軸受孔35に挿入することにより、係合体50を移動子30に装着する。これにより、一対のアーム部52の先端部がそれぞれ移動子30の逃げ溝34に位置し、各ガイドピン57がそれぞれ外方に向けて突出されることになるとともに、バネ受座53が移動子30のバネ挿入孔32に対向し、バネ受ピン55が該バネ挿入孔32の前端部に挿入されることになる。上述した操作の場合、軸部56の傾斜面58がそれぞれ移動子30の導入テーパ面40に合致することになり、相互に当接する傾斜面の作用によって当該軸部56の軸受孔35への挿入作業を容易に行うことができる。
【0045】
この状態においては、移動子30に対して係合体50を軸部56の軸心回りに回転することが可能であり、例えば図1に示すように、反時計回りに回転させれば、係合部54を移動子30の下部外周から下方に向けて突出することができる一方、図2に示すように、時計回りに回転させれば、係合部54を含めて係合体50の主部51を移動子30の収納凹部31に収納させることができる。この場合、係合体50の回転に伴って一対のアーム部52が揺動することになり、その回転範囲が上述したガイドピン57と逃げ溝34とによって規制されるようになる。
【0046】
また、移動子30に装着した係合体50は、軸受孔35の内部において軸部56の位置を適宜変更することが可能であり、移動子30の軸心方向に沿って移動することにより、移動子側第一作用面31aに対して係合体側第一作用面54aを離接移動させることができる。この場合、図1および図2からも明らかなように、係合体側第一作用面54aを移動子側第一作用面31aに当接させた状態においても、係合体50の軸部56が軸受孔35の端部に当接することはない。
【0047】
次いで、係合体50を装着した移動子30をその後端側からハウジング10の摺動孔13に挿入し、一対のストッパ爪33をそれぞれ対応するストッパ用案内孔16に配置させる。この場合、移動子30に対して係合体50を時計回りに回転させた状態に保持し、各アーム部52に設けたガイドピン57をそれぞれガイドリブ17の下方を通過させる。また、移動子30のバネ挿入孔32を通じて押圧バネ18の先端部に係合体50のバネ受ピン55を挿入し、該押圧バネ18の先端面をバネ受座53に当接させる。さらに、カムレバー19の各カム従動部19cをそれぞれ移動子30のカム機構部36に位置させる。上述した操作の場合、ストッパ爪33が導入案内溝21に合致することになり、相互に当接する湾曲面の作用によってその作業を容易に行うことができる。
【0048】
この状態においては、押圧バネ18の押圧力により、係合体50を介して移動子30がハウジング10から常時突出する方向に押圧され、図2(b)に示すように、ストッパ爪33の前端面37がストッパ用案内孔16のストッパ面20に当接することになり、当該移動子30のハウジング10からの突出位置(第二位置)が規定されるようになる。
【0049】
このとき、図2(a)に示すように、一対のアーム部52に設けたガイドピン57がそれぞれガイドリブ17の収納規定部17aに当接することになり、係合体50が図中の時計方向に回転して係合部54が移動子30の収納凹部31に収納された状態に保持される。
【0050】
一方、上述した状態から押圧バネ18の押圧力に抗して移動子30をハウジング10の摺動孔13に押し込むと、カムレバー19が適宜揺動しながら個々のカム従動部19cがカム機構部36に沿って移動し、台形状カム部38a,38bの上方に位置するようになる。
【0051】
この間、移動子30の押込移動に伴って係合体50におけるアーム部52のガイドピン57がガイドリブ17の収納規定部17aを通過して傾斜部17bに至るようになり、当該係合体50の時計回りへの回転が許容されることになる。ここで、上述した押圧バネ18は、係合体50の回転中心である軸部56よりも上方において当該係合体50を押圧するものである。この結果、この押圧バネ18の押圧力によって係合体50が反時計回りに回転するようになり、図1(b)に示すように、係合体50の係合部54が移動子30の下部外周から下方に向けて突出することになる。またこのとき、押圧バネ18の押圧力により、移動子30に対して係合体50が前進した状態にあり、その係合体側第一作用面54aが移動子30に設けた移動子側第一作用面31aに圧接されている。
【0052】
上述した状態から移動子30に付与していた押込力を除去すると、押圧バネ18の押圧力によって移動子30が再びハウジング10から突出する方向に移動するようになる。しかしながら、ハウジング10に対する移動子30の移動に伴い、台形状カム部38a,38bの上方に位置していたカムレバー19のカム従動部19cがそれぞれハート状カム部39a,39bの窪みに移動する。上述したように、カム機構部36は、上述したカムレバー19のカム従動部19cを案内するために設けた一連の溝カムであり、移動子30の両側面において逃げ溝34の上方部に設けてある。そして、各カム機構部36は、それぞれ左右で形状の異なる台形状カム部38a,38bとハート状カム部39a,39bとを有しており、図1(a)に示すように、カムレバー19のカム従動部19cがそれぞれハート状カム部39a,39bの窪みに移動した状態においては、アーム部52のガイドピン57がガイドリブ17の傾斜部17bに位置し、収納規定部17aに到達する以前の状態において移動子30の移動を阻止する。この結果、移動子30がハウジング10の摺動孔13において押込位置(第一位置)に保持され、かつ係合体50の係合部54が移動子30の下部外周から突出した状態に保持される。
【0053】
さらに、上述した状態から再び移動子30をハウジング10の摺動孔13に押し込むと、台形状カム部38a,38bの傾斜面によってカムレバー19のカム従動部19cが押され、ハート状カム部39a,39bの窪みから逸脱してその下方に位置する。この結果、移動子30に付与していた押圧力を除去すると、今度は、押圧バネ18の押圧力によって移動子30がハウジング10から突出する方向に移動し、上述したハウジング10からの突出位置(第二位置)に復帰することになる。
【0054】
この間、移動子30の突出方向への移動に伴って係合体50におけるアーム部52のガイドピン57がガイドリブ17に当接し、傾斜部17bを経て収納規定部17aに達するようになるため、図2に示すように、再び係合体50の係合部54が移動子30の収納凹部31に収納された状態となる。
【0055】
以下、上述した押圧動作を繰り返すことにより、移動子30がハウジング10に対して突出位置と押込位置とに交互に切り換えられるようになる。
【0056】
上記のようにして構成したラッチ装置1をキャビネットCに適用する場合には、まず、図9に示すように、当該ラッチ装置1をキャビネットCの本体、例えば本体上壁Dの下面に取り付ける。この場合、図1(a)に示すように、ハウジング10の前面10aを本体上壁Dの前面に合致させるようにラッチ装置1を取り付けることが好ましい。上述した作業は、本体上壁Dの下面に予め位置決め孔Eを設けておき、この位置決め孔Eにハウジング10のロケートピン12を嵌合させた後、ネジ挿通孔11を通じて本体上壁Dにネジ(図示せず)を締結させれば容易に行うことが可能である。
【0057】
一方、キャビネットCの扉Bには、その内面においてラッチ装置1に対向する部位に係止具60を装着する。係止具60として本実施形態では、図8に示すものを適用している。
【0058】
すなわち、この係止具60は、中央部に係止挿入孔61を有するとともに、その両側にそれぞれネジ挿通孔62を有したプレート状部材であり、ポリアミド(PA66)等の合成樹脂によって成形してある。係止挿入孔61は、上述した移動子30の先端部を嵌合できる大きさの矩形状を成すもので、その奥方が後壁61aによって閉塞してある。この係止挿入孔61の奥行きは、移動子30を挿入してその前端面37を後壁61aに当接させた場合に、該移動子30に装着した係合体50の係合部54が当該係止挿入孔61の内部に位置するだけの長さである。
【0059】
また、係止具60には、その係止挿入孔61の下壁に係止凹部63を設けてある。係止凹部63は、係止挿入孔61の手前側縁部に係止段部64を構成するために設けたもので、該係止挿入孔61の奥方において係合体50の係合部54を挿入し得る大きさを有して形成してある。係止段部64は、係止凹部63に臨む部位が下方に向けて漸次奥方に傾斜し、係止具側第二作用面64aを構成している。この係止具側第二作用面64aの傾斜角度θ4 は、係合部54に設けた係合体側第二作用面54cの傾斜角度θ3 とほぼ同一である。
【0060】
なお、係止挿入孔61の開口周縁部には、その全周に亘ってR部65を設けてある。
【0061】
この係止具60は、扉Bの内面に凹部Fを形成した後、この凹部Fに係止挿入孔61の後壁部分を配置した状態でネジ挿通孔62を通じてネジ(図示せず)を締結させることによって当該扉Bの内面に取り付けられる。
【0062】
いま、上述したキャビネットCにおいて、扉Bが開いているとともに、ラッチ装置1の移動子30が突出した状態、つまり移動子30が上述した突出位置にあるものとする。
【0063】
この状態においては、上述したように、係合体50の係合部54が移動子30の収納凹部31に収納された状態にある。従って、係合体50の係合部54が他の物と接触して損傷する事態を防止することができるとともにキャビネットCの美観を損なう虞れがない。
【0064】
この状態から扉Bを閉めると、やがて係止具60の後壁61aを介して移動子30の前端面37が押圧されるようになる。この状態からさらに扉Bを閉めてキャビネットCを閉塞すると、移動子30が上述した押込位置に保持されるようになり、該移動子30の下部外周から突出した係合体50の係合部54が係止具60の係止凹部63に位置することになる。
【0065】
この状態においては、図1(a)に示すように、係合体50における係合部54の後端面と係止具60における係止段部64の係止具側第二作用面64aとが互いに対向した状態にあり、キャビネットCに対する扉Bの開放移動が規制されるため、当該扉Bを閉じた状態に保持することができるようになる。
【0066】
一方、上述した状態から扉Bをさらに閉じる方向に押圧し、その後この押圧力を除去すれば、移動子30が突出位置に復帰するとともに、係合体50の係合部54が移動子30の収納凹部31に収納されることになり、キャビネットCの扉Bを開くことができる。
【0067】
ところで、上述したラッチ装置1においては、移動子30を直接手で押し込むなどすれば、扉Bが開いた状態において移動子30から係合体50の係合部54が突出することになり、キャビネットCに対して出し入れする物が当該係合部54に接触する虞れがある。
【0068】
しかしながら、上記ラッチ装置1によれば、移動子30が押込位置にある場合、該移動子30の下部外周から突出する係合体50の係合部54は、押圧バネ18の押圧力によって押圧されているだけである。つまり、押込位置において係合体50の係合部54に外力を与えた場合には、押圧バネ18の押圧力に抗して当該係合部54が移動子30の収納凹部31に向けて退行移動可能である。従って、係合部54に物が接触した場合にも、その衝撃力を大きく緩和することができるようになり、ラッチ装置1の損傷を来す虞れがない。この場合、係合体50は、軸受孔35の内部において軸部56の位置を適宜変更することにより、移動子30に対してその進退方向に沿っても移動可能である。従って、係合体50の軸部56という小断面積部分に外力が集中してこれが損傷する虞れもない。
【0069】
しかも、上記ラッチ装置1によれば、係合部54の前端下方部、つまり移動子30から突出した状態において係止具60に当接する部分に退行作用面54bを構成してある。従って、上述した状態から扉Bを閉めた場合には、この退行作用面54bに係止具60が当接することで、一旦係合部54が押圧バネ18の押圧力に抗して移動子30の収納凹部31に収納され、その後、係止具60の係止段部64が通過した時点で再び係合部54が突出するようになる。すなわち、ラッチ装置1の移動子30を一旦突出位置に戻すことなく、そのまま扉Bを閉めれば、これを閉めた状態に保持することが可能となり、操作性の点でも優れたものになる。なお、この場合においてもラッチ装置1に損傷を来す虞れがないのはいうまでもない。
【0070】
さらに、上記ラッチ装置1においては、扉Bを閉めた状態から、該扉Bにこれを開こうとする外力が作用すると、係止具60の係止段部64が、係合体50の係合部54に圧接され、当該係合体50の係合部54が係止具60と移動子30との間に挟持された状態となる。
【0071】
この状態においては、係合体50の係合部54に撓む等の変形を来す虞れがない。また、係合体50の前端上方部は、主部51の下面を基準とした場合に下方に向けて漸次前方に僅かに傾斜しており、係合体側第一作用面54aを構成している。この係合部54に設けた係合体側第一作用面54aと、これとほぼ同一の傾斜角度である移動子30に設けた移動子側第一作用面31aとが相互に圧接され、これら第一作用面54a,31aによる相互の負荷を解消する方向に傾斜面を摺動しようとする作用によって係合部54にこれを移動子30から突出させる方向の力が作用するようになる。さらに、移動子30の前端部が係止具60の係止挿入孔61に嵌合しているため、ラッチ装置1に対して係止具60が下方に逃げることもない。従って、ラッチ装置1と係止具60との間に高い係合力を得ることができ、扉Bが不用意に開く事態を防止できる。
【0072】
一方、上述した状態からさらに扉Bに対して過大な外力が作用した場合には、係止具60の係止段部64において係止凹部63に臨む部位が下方に向けて漸次奥方に傾斜するように設けた係止具側第二作用面64aと係合体50の係合部54に傾斜角度が係合体側第二作用面54cの傾斜角度とほぼ同一となるように設けた係合体側第二作用面54cとが相互に圧接され、相互の負荷を解消する方向に傾斜面を摺動しようとする作用により、上述した第一作用面54a,31aによる傾斜面を摺動しようとする作用により、当該係合部54が軸部56の軸心回りに回転して、移動子30の収納凹部31へ退行移動され、ラッチ装置1と係止具60との係合状態が解除されるようになるため、ラッチ装置1に損傷を来す虞れがない。
【0073】
なお、上述した実施の形態では、扉を有したキャビネットに適用するラッチ装置を例示しているが、係止対象物との相対的な離隔移動を規制する用途であれば、必ずしもキャビネットに限定されない。この場合、係止対象物の移動態様も、蝶番によるものである必要はない。また、上述した実施の形態で記載したラッチ装置および係止具の具体的な材質名は、あくまでも例示であり、その他の材質によってこれらを成形してももちろんよい。さらに、ラッチ装置の取付態様も上述した実施の形態に限定されず、係合体の係合部が下部以外の外周から突出するようにしても構わない。
【0074】
また、上述した実施の形態では、バネの押圧力を利用して係合体の係合部を移動子から退行可能に突出させるようにしているが、必ずしもバネの押圧力を利用する必要はない。例えば、上述した実施の形態の場合には、係合体の重心位置と軸部の位置とを適宜調整すれば、重力の作用によって係合体を移動子に対して退行可能に突出させることも可能である。また、バネ以外の弾性手段の弾性復元力を利用してももちろん構わない。なお、バネの押圧力を利用する場合に上述した実施の形態では、ハウジングに対して移動子を常時押圧するための押圧バネにこれを兼用させるようにしているため、部品点数の点で有利となるが、例えば別途移動子と係合体との間にバネを介在させるようにしてもよい。
【0075】
さらに、上述した実施の形態では、長孔状の軸受孔とこれに挿入した軸部とによって係合体を移動子に対してその進退方向に移動させるようにしているが、突起と溝等、その他の方法によって係合体を移動子に対して移動させるようにしてももちろんよい。なお、長孔状の軸受孔と軸部とを適用する場合に上述した実施の形態では、前者を移動子に設けるとともに後者を係合体に設けているが、逆の態様でも構わない。
【0076】
またさらに、上述した実施の形態では、移動子と係合体の係合部との双方にそれぞれ第一作用面を設けるようにしているが、いずれか一方に設ければよい。また、係止具にも第二作用面を設けるようにしているが、係合体の係合部にのみ第二作用面を設けても同様の作用効果を期待することが可能である。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、係合状態にある場合に係合部を移動子に対して退行可能に突出させるようにしているため、係合体を容易に弾性変形する材質で構成する必要がない。この結果、通常において十分な係合力を確保することができる一方、過大な外力が作用した場合には係合部が退行移動してその損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るラッチ装置の一実施形態を示すもので、(a)は、カム従動部がハート状カム部の窪みに移動し、係合体の係合部が移動子の下部外周から下方に向けて突出した係合状態にある場合の断面一部破断図、(b)は係合状態にある場合の断面側面図である。
【図2】 (a)は解除状態にある場合の断面一部破断図、(b)は解除状態にある場合の断面側面図である。
【図3】 図1に示したラッチ装置の移動子をハウジングから取り出した状態を示す底面半断面図である。
【図4】 図1に示したラッチ装置の分解斜視図である。
【図5】 (a)はハウジングの正面図、(b)はその断面側面図である。
【図6】 (a)は移動子の側面図、(b)はその平面図、(c)はその正面半断面図、(d)は(a)における矢視VI図である。
【図7】 (a)は係合体の側面図、(b)は(a)における矢視 VII 図である。
【図8】 (a)は係止対象物に設ける係止具の一実施例を示す正面図、(b)はその断面側面図である。
【図9】 ラッチ装置の適用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ラッチ装置
10 ハウジング
10a 前面
10b 後壁
10c 上壁
10d 底壁
10e,10f 左右壁
11 ネジ挿通孔
12 ロケートピン
13 摺動孔
14 バネ支持ピン
15 レバー支持部
16 ストッパ用案内孔
17 ガイドリブ
17a 収納規定部
17b 傾斜部
18 押圧バネ
19 カムレバー
19a 基部
19b 腕部
19c カム従動部
20 ストッパ面
21 導入案内溝
22 滑動リブ
23 スライドガイド
30 移動子
31 収納凹部
31a 移動子側第一作用面
32 バネ挿入孔
33 ストッパ爪
34 逃げ溝
34a 後端部
34b 前端部
35 軸受孔
36 カム機構部
37 前端面
38a,38b 台形状カム部
39a,39b ハート状カム部
40 導入テーパ面
50 係合体
51 主部
52 アーム部
53 バネ受座
54 係合部
54a 係合体側第一作用面
54b 退行作用面
54c 係合体側第二作用面
55 バネ受ピン
56 軸部
57 ガイドピン
58 傾斜面
59 支持台状部
60 係止具
61 係止挿入孔
61a 後壁
62 ネジ挿通孔
63 係止凹部
64 係止段部
64a 係止具側第二作用面
65 R部
A 蝶番
B 扉
C キャビネット
D 本体上壁
E 位置決め孔
F 凹部

Claims (5)

  1. ハウジングの摺動孔に進退可能に配設され、前記摺動孔において押込位置と突出位置間に保持される移動子と、先端部に設けた係合部が前記移動子の外周から出没する態様で該移動子に移動可能に支持させた係合体と、前記移動子が前記押込位置に移動した場合に前記係合体の係合部を前記移動子から退行可能に突出させて係合状態とする一方、前記移動子が前記突出位置に移動した場合に前記係合体の係合部を前記移動子の内部に退行収納させて解除状態とする作動手段とを備え、
    前記係合状態において、前記係合部を係止対象物の係止具に係合させることにより前記係合部の前端が前記移動子の前端部下面から形成した凹所の前壁内面に当接した状態となり、当該係合体の係合部が前記移動子と前記係止具の間に保持されて、前記係止対象物との相対的な離隔移動を規制するようにしたことを特徴とするラッチ装置。
  2. 弾性手段の弾性復元力により、前記係合状態において前記係合部を前記移動子から突出させる請求項1記載のラッチ装置。
  3. 前記ハウジングおよび前記係合体の間に介在し、当該係合体を介して前記移動子を前記押込位置から前記突出位置に向けて常時押圧する押圧バネと、この押圧バネの押圧力に抗して前記移動子を前記突出位置から前記押込位置へ押圧した場合に該移動子を当該押込位置に停止させ、さらにこの押込位置から同方向に押圧した場合に前記押圧バネの押圧力によって前記移動子を前記突出位置に復帰させる位置規定手段とをさらに具備し、前記押圧バネの押圧力により、前記係合状態において前記係合部を前記移動子から突出させる請求項2記載のラッチ装置。
  4. 前記係合体の係合部に、該係合部が突出した状態で互いに離隔した前記移動子と前記係止対象物とを近接移動させた場合に前記係止具に当接し、かつ該係止具に圧接させた場合に前記係合体の係合部を退行移動させる退行作用面を設けた請求項1から請求項3のいずれか1項記載のラッチ装置。
  5. 前記移動子に対して前記係合体を該移動子の進退方向に沿って移動可能に配設した請求項1から4のいずれか1項記載のラッチ装置。
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