JP4465078B2 - ポリオキシテトラメチレングリコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テトラヒドロフランを無水酢酸および酸触媒の存在下で開環重合させることによって製造されるポリオキシテトラメチレングリコールの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリオキシテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記する)は、スパンデックス、エラストマー、人工皮革等に用いられるポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエーテル(エステル)アミドの主原料や、界面活性剤、圧力流体等に用いられる工業的に有用なポリマーであり、近年では、エラストマー分野を中心に、エンジニアリング用素材、医用高分子材料等としても注目されている。
【0003】
このPTMGの製造法としては種々の方法があるが、通常、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記する)を無水酢酸と固体酸触媒の存在下で開環重合させてポリオキシテトラメチレングリコールジエステル(以下、PTMGACと略記する)を製造し、次いで、アルカリ触媒存在下で加水分解もしくは低級アルコールとエステル交換してPTMGを製造する方法が知られている(例えば特開平4−306228号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような方法により製造される従来のPTMGは、その品質の重要な指標である色相の評価結果、例えばAPHA値が必ずしも良好ではなく、幾分着色したPTMGが生じ易いという問題が生じている。
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、色相に優れた高品質のPTMGを製造し得る製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため、PTMGの品質に影響する種々の要因について鋭意検討した結果、無水酢酸中に含まれているジケテンが製品の品質に大きく影響することを知見し、本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明のPTMGの製造方法は、THFを無水酢酸および酸触媒の存在下で開環重合させて製造されるPTMGの製造方法であって、ジケテン濃度が10ppm以下の無水酢酸を用いて上記の開環重合を行ってPTMGを製造することを特徴としている。
【0007】
この場合に、ジケテン濃度が2ppm(検出限界)以下で殆どジケテンを含まない無水酢酸を用いれば、さらに色相に優れたPTMGを製造することができる。
【0008】
なお、このようにジケテン濃度が2ppm(検出限界)以下の無水酢酸は、例えば、粗製無水酢酸を蒸留した後にオゾン含有ガスで処理することによって製造することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明のPTMGの製造方法では、前記とほぼ同様に、THFを無水酢酸と酸触媒の存在下で開環重合させてPTMGACを製造し、次いで、アルカリ触媒存在下で加水分解もしくは低級アルコールとエステル交換してPTMGが製造される。
【0010】
この場合に、まず、THFを開環重合させる際に使用される無水酢酸として、ジケテン濃度が10ppm以下の無水酢酸が使用される。このような無水酢酸の製造方法については特に限定されるものではないが、粗製無水酢酸に対し、オゾン処理を行った後に蒸留して得られた無水酢酸を使用することができる。このような精製処理により、ジケテン濃度が5ppm程度の精製無水酢酸を得ることが可能である。
【0011】
粗製無水酢酸の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば酢酸を熱分解してケテンを生成させ、酢酸にこのケテンを吸収反応せしめて、無水酢酸を得る方法(ケテン法)や、酢酸メチル又はジメチルエーテルに一酸化炭素を反応せしめて無水酢酸を得る方法などがあり、これら方法によって得られた粗製無水酢酸が適用される。
【0012】
一方、上記のように得られた粗製無水酢酸に対し、まず蒸留を行い、次いでオゾン処理を行うような精製工程を採用すれば、ジケテン濃度が2ppm(検出限界)以下で殆どジケテンを含まない精製無水酢酸を得ることが可能である。この場合の無水酢酸の精製法について説明する。
【0013】
まず、粗製無水酢酸を蒸留して一次精製する際に使用される蒸留塔は、その形式について特に制限はなく、自由に選択することができる。一般的にはシーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ等の棚段塔、インタロックスサドル、ポールリング、スルザーパック等の充填塔のうちから一つまたは二つ以上選択して用いることが可能である。
【0014】
棚段塔の場合は、トレイ数は20〜80個程度、充填塔の場合はそれに相当する充填高さを有するものを使用するのが好ましい。精製される無水酢酸は蒸留塔の中間部より導入されるが、導入位置は製品無水酢酸の回収位置より上方である必要があり、望ましくは蒸留塔中央部より上部が選択される。製品無水酢酸は、原料導入段より下方、望ましくは蒸留塔中央部より下部から蒸気または液で回収される。
【0015】
蒸留塔の操作圧力については特に制限はないが、圧力が高すぎる場合、塔内温度の上昇により望ましくない反応が起こるおそれがあり、逆に圧力が低すぎる場合、塔頂における蒸気の凝縮に困難を伴う。したがって、望ましい操作圧力は、塔頂において100mmHg〜常圧の範囲である。
【0016】
塔頂蒸気の凝縮液の一部は還流液として塔頂に戻されるが、回収液流量に対する還流液流量の比、いわゆる還流比は原料液の組成、求められる製品品質等により決定される。通常1〜1000程度の範囲から選択できる。
【0017】
次に、上記のような蒸留塔を用いて一次精製された粗製無水酢酸をオゾン処理にて二次精製する場合、これに用いるオゾン含有ガスにも特に制限はない。工業的には、一般に空気あるいは酸素を原料とし、無声放電によりオゾンを発生させる方式が用いられる。通常、空気原料の場合、オゾンの濃度は10〜20g/m3である。無水酢酸と接触させるオゾンの割合は、オゾン自身の分解反応等を考慮すると、反応を完全に完結させるにはやや過剰のオゾンを仕込んだほうが良い。実用上は気液の接触効率や精製率等を考慮して実験により適宜決めることが必要であり、通常、オゾン使用率は50〜300g−O3/Tであり、好ましくは90〜270g−O3/Tである。
【0018】
オゾン処理の反応器の形式についても、オゾンと無水酢酸の接触が良好に行えるのならば特に制限はないが、実用上は気泡塔方式、攪拌槽方式が好ましい。また、接触時間は、数十秒〜数十分の範囲で適切な時間を設定すれば良い。反応温度は室温付近が適当であり、好ましくは20〜30℃程度である。温度が低すぎると反応速度が低下し、温度が高すぎるとオゾン自身が分解し易くなるので好ましくない。
【0019】
このような精製法により、ジケテン濃度が2ppm(検出限界)以下の精製無水酢酸を得ることができる。
【0020】
一方、前記したTHFを開環重合させる際に使用される酸触媒についても特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。例えば超強酸性陽イオン交換樹脂、漂白土、ゼオライト等の固体酸触媒が挙げられる。過塩素酸のような液体の酸を使用することもできるが、この場合は、開環重合後に酸を中和および/または分離する工程が複雑になるので、工業上不利である。固体酸触媒を用いた場合には、触媒の分離が簡単にできるので好ましい。固体酸触媒は、懸濁床、固定床のいずれでも使用できるが、固定床流通反応で用いると触媒の分離操作を別途行う必要がなく、特に好ましい。
【0021】
THFを開環重合させるときの反応条件は、目的とするPTMGの分子量や用いる酸触媒の種類によって異なるが、通常、反応液中における酸触媒の濃度として0.1〜50重量%、無水酢酸の濃度として0.1〜30重量%程度で使用される。
【0022】
反応温度は、通常、0.5〜10時間の範囲から選ばれる。得られた重合反応液は、PTMGACと未反応原料等を含有しているので、通常、未反応のTHFと無水酢酸を常圧または減圧下で留去させる。
このような製造法により、THFからPTMGACが製造される。次いで、このPTMGACからPTMGの製造は、通常、アルカリ触媒の存在下で、末端エステル基を加水分解、もしくはアルコリシスにより水酸基に代えることによって行われる。
【0023】
まず、アルカリ触媒存在下で加水分解してPTMGを製造する場合について説明する。このアルカリ加水分解は、有機溶媒の存在下にアルカリ水溶液を添加し、加熱して末端エステル基を水酸基に代える方法である。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、n−ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジ−イソプロピルエーテルなどの脂肪族エーテルなどの水と分液する化合物が用いられる。
【0024】
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物が用いられる。これら水酸化物は、通常、水溶液として用いられる。この水溶液は、通常1〜50重量%の濃度で使用される。
【0025】
この水溶液の添加量は、使用するPTMGACに対する水の重量によっても異なるが、通常はPTMGACに対する水の重量が0.1〜10倍で、かつ、PTMGAC、水およびアルカリの全重量に占めるアルカリ濃度が0.01〜40重量%となるような範囲で用いられる。アルカリ加水分解温度は、アルカリ濃度や使用するアルカリの種類によっても異なるが、通常、50〜150℃の範囲で行われる。また、アルカリ加水分解の時間もアルカリ濃度、使用するアルカリの種類および加水分解温度によって異なるが、通常、0.1〜20時間の範囲で行われる。
【0026】
アルカリ加水分解終了後の水を含む反応粗液は、例えば遠心分離器によって有機層と水層に分液され、回収された有機層から、薄膜蒸発器のような滞留時間の短い蒸発器を用いて有機溶媒及び水を蒸発して、製品PTMGが得られる。
【0027】
次に、PTMGACから、アルカリ触媒の存在下で、アルコリシスにより末端エステル基を水酸基に代えることによってPTMGを製造する場合について説明する。
【0028】
アルコリシスはメタノール等の脂肪族アルコールを用いて、副生したカルボン酸エステルを反応蒸留によりアルコールとの共沸で抜きながらPTMGを製造する方法である。このアルコールとしては、メタノールの他にエタノールやブタノール等が用いられ、この中でも、メタノールが価格の点、反応性の点および反応により生成するエステルと原料アルコールとの分離性の点から最も好ましい。
【0029】
アルカリ触媒としては、アルカリ土類金属酸化物、もしくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラートが用いられる。アルカリ土類金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムが好ましい。この触媒は、通常、粉末の形で用いられるが、打錠した形で用いてもよく、その反応方式や触媒の分離方法の選択により適宜選んでやればよい。
【0030】
触媒の使用量は、通常、反応粗液中の触媒濃度で、0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜3重量%の触媒濃度で用いられる。触媒が粉末の場合は、反応粗液との触媒単位重量当たりの接触表面積が大きいため触媒濃度は低くても良いが、打錠成型した触媒の場合は、触媒単位重量当たりの接触面積が小さいため、触媒濃度は高めのほうが好ましい。
【0031】
一方、アルコリシスの触媒として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラートを用いた場合、触媒濃度は触媒の種類によって異なるが、0.01〜3重量%の範囲で用いられる。しかも、通常は取り扱い易さの点でアルコール溶液の形で用いられる。
【0032】
アルコリシスの反応温度は特に限定されないが、通常、常圧下、30〜120℃の温度で行われる。反応温度が常圧下で120℃を越えるようなアルコールとの反応が行われた場合、最終製品の色相が悪くなるので、そのような場合には蒸留塔の釜の反応温度が120℃となるように、減圧下で反応を行うのが好ましい。逆に反応温度が低すぎると、反応が簡潔するまでの時間がかかりすぎて好ましくない。さらにメタノールやエタノール等の低沸点のアルコールが用いられた場合、蒸留塔の釜の反応温度をアップし、また、反応が完結するまでの時間を短縮するために加圧下で反応を行っても良い。
【0033】
アルコリシスはバッチ方式で行っても良いし、連続方式で行っても良いが、バッチ方式で行う場合は、還流装置を備えたバッチ蒸留塔の釜に触媒、PTMGACおよびアルコールを張り込んで反応蒸留を行い、釜で生成したカルボン酸エステルをアルコールとの共沸で留出させた後、塔頂温度がアルコールの沸点になるまで反応を行い、アルコリシスを完結させる。
【0034】
連続方式で行う場合は、触媒、PTMGACおよびアルコールを反応が完結するような滞留時間が取れるように連続蒸留塔に連続的に仕込み、連続蒸留塔の塔頂から生成したカルボン酸エステルを原料アルコールとの共沸混合物の形で連続的に抜き取り、釜から未反応アルコール、生成したPTMGおよび触媒を連続的に抜き取る。この場合の蒸留塔としては、その種類や充填剤、蒸留方式(連続蒸留とバッチ蒸留)により異なるが、理論段数で20〜100段の蒸留塔を用いるのが好ましい。
【0035】
理論段数の低い蒸留塔を用いると、原料アルコールと生成したカルボン酸エステルとの共沸混合物と原料アルコールとの分離が難しくなる。通常、原料アルコールと生成したカルボン酸エステルとの共沸混合物は焼却処分するため、原料アルコールと生成したカルボン酸エステルとの共沸混合物と原料アルコールの分離が悪いと、原料アルコールの使用量が増えて好ましくない。逆に理論段数の高い蒸留塔を用いると、原料アルコールと生成したカルボン酸エステルとの共沸混合物と原料アルコールの分離に必要な以上の段を積むことになるために、設備費が高くなり、また、ランニングコストも高くなる。
【0036】
アルコリシスの反応時間(滞留時間)は、触媒濃度、反応温度および原料アルコールとPTMGACのモル比等によって決定されるが、通常、1〜10時間の範囲で実施される。反応時間が長すぎると反応が終わっているにもかかわらず余計な滞留時間をもつことになってPTMG製造量が落ちることになり、逆に、反応時間が短くなり過ぎると、PTMGACのアルコリシスによるPTMGの製造反応が完結しなくなる。なお、PTMG中のエステル残基は、PTMGより製造されるポリウレタン等の製品品質を悪くするので、PTMGACからPTMGを製造する反応は完結させておく必要がある。
【0037】
アルコリシスに用いられるPTMGACとアルコールとのモル比は、PTMGACの数平均分子量や分散度によっても異なるが、通常、PTMGACに対するアルコールのモル比は3〜100の範囲から選ばれる。ここで、PTMGACに対するアルコールのモル比が低すぎるとアルコリシスが非常に遅くなって、反応時間が長くなるばかりか、反応が完結しないおそれがあるので、好ましくない。逆にPTMGACに対するアルコールのモル比が高すぎると、アルコリシスに必要なエネルギーコストやアルコリシス後にフラッシュするアルコールの量が増加するためにエネルギーコストが増加して好ましくない。
【0038】
アルカリ土類金属酸化物触媒の存在下、PTMGACのアルコリシスにより製造した蒸留塔の缶出液から反応粗液中に不溶な触媒がある場合には、通常濾過分離もしくは遠心分離により触媒を分離除去し、未反応のアルコールを回収リサイクルするために、薄膜蒸発器などの滞留時間の短いフラッシュ装置を用いてフラッシュする。
【0039】
薄膜蒸発器の缶出の粗PTMG中には、反応粗液に溶存していた触媒成分が含まれているので、これらの触媒成分やオリゴマーを除去するために水と粗PTMGとを攪拌槽に仕込み、加熱しながら数時間攪拌する。攪拌洗浄終了後、遠心分離器で分液後、水層と有機層とに分液させて有機層を回収し、薄膜蒸発器のような滞留時間の短い蒸発器を用いて有機溶媒及び水を蒸発して、製品PTMGを得る。
【0040】
以上のような製造方法に従い、特に、当初にTHFを開環重合させてPTMGACを製造する工程で使用される無水酢酸として、ジケテン濃度が10ppm以下、好ましくは2ppm以下の精製無水酢酸を用いることで、色相に優れたPTMGを得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0042】
まず、PTMGの製造に使用する製品無水酢酸として、精製方法を下記実験No.1〜No.3のように異ならせて、3種類の製品無水酢酸を得た。
【0043】
〔実験No.1(精製方法:蒸留+オゾン処理)〕
ケテン炉を通して酢酸の熱分解によって得られたケテンを酢酸に吸収させて粗製無水酢酸を得、この粗製無水酢酸を、操作圧力をそれぞれ常圧にした脱低沸塔と脱高沸点塔とを順次通して、一次精製処理を行った。次いで、この一次精製処理した粗製無水酢酸に対し、図1に示す実験装置を用いてオゾン処理を行った。
【0044】
なお、図1において、1はオゾン発生器、2は充填塔である。空気を原料としてオゾン発生器1によりオゾンを発生させ、このオゾン発生器1から出るオゾン化空気(オゾンと空気の混合ガス)を、内径5mm×高さ5mmのラシヒリングを装填した充填塔2に、その下部から導入した。このときのオゾン化空気量は42NL/H、オゾン濃度19.0g/Nm3、オゾン流入量38.3mol/Hである。一方、前記のように蒸留による一次精製処理を行った粗製無水酢酸を、充填塔2の上部から仕込み、オゾンと向流接触させて、オゾン処理を行った。オゾン処理された製品無水酢酸は、充填塔2の下部から抜き取り、これを回収した。このときの無水酢酸の仕込流量は6006g/Hであり、オゾン使用率は134.3g−O3/Tとなる。また、粗製無水酢酸のジケテン濃度は76ppmであった。得られた製品無水酢酸中のジケテン濃度は検出限界(2ppm)以下であった。
【0045】
〔実験No.2(精製方法:オゾン処理+蒸留)〕
図1の装置において、オゾン濃度が20g/Nm3のオゾン化空気を150NL/Hの速度で充填塔2の下部から導入した。一方、粗製無水酢酸を充填塔2の上部から6000g/Hで仕込み、オゾンと向流接触させてオゾン処理を行った。充填塔2の下部から抜き取ったオゾン処理後の無水酢酸を30段のシーブトレイを有する蒸留塔(内径40mm、ガラス製)の上から13段目に400g/Hにて連続的に導入し、還流比200、塔頂圧力1気圧にて運転を行った。濃縮された低沸物は塔頂における凝縮液より2g/H、精製された無水酢酸は上から27段目より蒸気サイドカットで392g/Hの割合で連続的に抜き取った。また、塔底より6g/Hの割合で高沸物を含む無水酢酸を連続的に抜き取った。27段目から抜き取った精製無水酢酸のジケテン濃度は7ppmであった。
【0046】
〔実験No.3(精製方法:蒸留のみ)〕
粗製無水酢酸を30段のシーブトレイを有する蒸留塔(内径40mm、ガラス製)の上から13段面に400g/Hにて連続的に導入し、還流比200、塔頂圧力1気圧にて運転を行った。濃縮された低沸物は塔頂における凝縮液より2g/H、精製された無水酢酸は上から27段目より蒸気サイドカットで392g/Hの割合で連続的に抜き取った。また、塔底より6g/Hの割合で高沸物を含む無水酢酸を連続的に抜き取った。27段目から抜き取った精製無水酢酸のジケテン濃度は98ppmであった。
【0047】
次に、上記した実験No.1で得られた製品無水酢酸を使用したPTMGの製造例を実施例1、実験No.2の製品無水酢酸を使用したPTMGの製造例を実施例2、実験No.3の製品無水酢酸を使用したPTMGの製造例を比較例1として説明する。
【0048】
〔実施例1〕
THF2000重量部、実験No.1で得られたジケテン濃度が検出限界以下の無水酢酸332重量部を、800℃で焼成したジルコニア・シリカ粉末100重量部を触媒として、攪拌器付きの反応器で40℃で8時間反応させた。反応終了後、触媒を濾過し、無色の重合液から未反応のTHF及び無水酢酸を減圧下で留去し、PTMGACを得た。次いで、このPTMGAC1000重量部およびメタノール1000重量部、水酸化カルシウム1重量部の混合物を20段の理論段数を持つ蒸留塔を備えた反応器に仕込み、攪拌下に6時間沸騰加熱し、蒸留塔の塔頂よりメタノール/酢酸メチルの共沸混合物を留出させながらエステル交換を行った。
【0049】
反応液は、冷却後、1μmフィルターを装着した加圧濾過器で濾過し、水酸化カルシウムを除去し、1910重量部の無色透明な濾液を得た。この濾液を、スルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂を充填した30℃の吸着塔を通過させ、溶存する水酸化カルシウムを除去した。
【0050】
処理液は、蒸発器で常圧下、メタノールの大部分を除去した後、10torrの減圧下、熱媒温度250℃で運転される薄膜蒸発器で連続的に処理し、メタノールを実質的に含まないPTMG870重量部を得た。得られたPTMGについての色相評価結果を表1に示す。
【0051】
〔比較例1〕THFを開環重合させる際の無水酢酸として、実験No.2で得られたジケテン濃度が7ppmのものを使用した以外は、実施例1と同様の方法でPTMGを製造した。得られたPTMGについての色相評価結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例2〕THFを開環重合させる際の無水酢酸として、実験No.3で得られたジケテン濃度が98ppmのものを使用した以外は、実施例1と同様の方法でPTMGを製造した。得られたPTMGについての色相評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
同表に示されているように、THFを開環重合させる際に使用する無水酢酸として、ジケテン濃度が10ppm以下であれば、これよりもジケテン濃度が高い無水酢酸を使用して製造されたPTMGに比べて色相が大幅に向上し、さらに、ジケテン濃度が検出限界以下でジケテンを殆ど含まない無水酢酸を使用すれば、無色透明の高品質のPTMGが得られる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ジケテン濃度の小さな無水酢酸を用いることにより、色相の優れたPTMGを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粗製無水酢酸のオゾン処理を行う際に使用した装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 オゾン発生器
2 充填塔
Claims (1)
- テトラヒドロフランを無水酢酸および酸触媒の存在下で開環重合させて製造されるポリオキシテトラメチレングリコールの製造方法であって、蒸留した後にオゾン含有ガスで処理することによって得られたジケテン濃度が2ppm以下である無水酢酸を用いて上記の開環重合を行ってポリオキシテトラメチレングリコールを製造することを特徴とする、ポリオキシテトラメチレングリコールの製造方法。
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