JP3852543B2 - ポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法に関し、更に詳しくは、エステル交換反応による副生物の留去時の泡沫の発生をなくしたポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、ポリウレタン系弾性糸の原料、ポリエステル系及びポリウレタン系の熱可塑性エラストマーのソフトセグメントとしてのポリエーテルブロックの形成原料等として用いられており、その製造方法は、テトラヒドロフランを固体酸触媒及び無水酢酸等のカルボン酸無水物の存在下に開環重合させて得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステル等のジカルボン酸エステルを、エステル交換触媒の存在下に脂肪族アルコールによりエステル交換反応させる方法が採られている。
【0003】
そして、その際、平衡反応であるエステル交換反応において副生する脂肪族アルコールの酢酸エステルを反応系から留去する方法として、蒸留設備を備えた回分式反応器を用い、塔頂より酢酸エステルを留出させながら反応を実施する方法、蒸留設備を備えた槽型流通反応器の複数を直列に連結させた多段槽型流通反応器を用い、一貫流通させて連続的に反応を実施する方法、及び、蒸留塔を用いて酢酸エステルを留出させながら連続的に反応を実施する反応蒸留法等が採られているが、いずれの方法においても、酢酸エステルを留去する際に多量の泡沫が生じ、その泡沫が酢酸エステルの留去効率、延いてはエステル交換の反応効率を低下させたり、場合によっては内容液を流出させたりする等の問題を引き起こすこととなっている。
【0004】
一方、多段槽型流通反応器を用い、その上部に消泡器としてのタンクを設けて発生した泡沫を受容し、湿式サイクロン等で消泡させる方法が提案されている(欧州公開特許第0906928号明細書参照。)が、装置が複雑になると共に、発泡自体をなくすものではないため、反応効率等の低下の問題の抜本的な解決には到り得ず、又、他の消泡策として、内容液中に消泡剤を投入したり、或いは、アルコールの量をポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルの量の2倍以上とする等して内容液を発泡しにくい組成のものとする方法等も考えられるが、消泡剤の投入は、消泡剤が製品に混入して品質の低下を引き起こすこととなり、発泡しにくい組成とする場合でも、少なくとも反応終了後の未反応アルコール等の除去工程において発泡し易い組成状態の通過が不可避であることから、いずれも、有効な手段とはなり得ないものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたもので、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルをエステル交換触媒の存在下に脂肪族アルコールによりエステル交換反応させてポリテトラメチレンエーテルグリコールを製造するにおいて、副生する脂肪族アルコールの酢酸エステルの留去時の泡沫の発生をなくすと共に、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルの残留量を減少させたポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成すべくなされたものであって、即ち、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルをエステル交換触媒の存在下に脂肪族アルコールによりエステル交換反応させてポリテトラメチレンエーテルグリコールを製造するにおいて、副生する脂肪族アルコールの酢酸エステルを加圧下に留去しながらエステル交換反応させる、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法、を要旨とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のポリテトラメチレンエーテルグリコール(以降、「PTMG」と略称することがある。)の製造方法は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステル(以降、「PTME」と略称することがある。)をエステル交換触媒の存在下に脂肪族アルコールによりエステル交換反応させる方法である。
【0008】
ここで、原料としてのPTMEは、テトラヒドロフランを固体酸触媒及び無水酢酸の存在下に開環重合させて得られ、その際の固体酸触媒としては、公知のイオン交換樹脂、漂白土、ゼオライト、シリカアルミナ、ジルコニアシリカ等が挙げられ、通常、反応液中における固体酸触媒の濃度を0.1〜30重量%、無水酢酸の濃度を0.5〜30重量%、テトラヒドロフランに対する無水酢酸のモル比を0.001〜0.3とし、反応温度20〜80℃、反応時間0.5〜10時間の条件下で反応が実施される。尚、通常、得られた反応液から、未反応のテトラヒドロフラン及び無水酢酸を常圧又は減圧下で留去し、それらは回収、精製されて再使用される。
【0009】
又、脂肪族アルコールとしては、公知のメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜5のモノアルコールが好適であり、中でも、PTMEとのモル比が大きく採れること、及び、副生する酢酸エステルとの比揮発度が大きいこと等から、炭素数1〜3のアルコールが好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0010】
又、エステル交換触媒としては、公知のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、又はアルコキシド等が好適に用いられ、中でも、アルカリ金属特にナトリウムのアルコキシドは、反応速度が大きく、又、アルコールに対する溶解度が大きく取扱い性にも優れるので好ましい。
【0011】
エステル交換反応は、前記エステル交換触媒を前記PTME100重量部に対して、通常0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部用い、前記PTMEと前記脂肪族アルコールとの仕込み量比を、通常、PTMEと脂肪族アルコールとの合計量に対して、PTME30〜90重量%、脂肪族アルコール70〜10重量%、好ましくはPTME40〜70重量%、脂肪族アルコール60〜30重量%として実施する。
【0012】
PTMEと脂肪族アルコールとの仕込み量比として、PTMEが前記範囲未満でアルコールが前記範囲超過では、多量の未反応アルコールが生じることとなって後工程での除去に多大な設備や用役を要することとなり、一方、PTMEが前記範囲超過でアルコールが前記範囲未満では、未反応PTMEの残存量が増加する傾向となる。
【0013】
本発明において、前記エステル交換反応によりPTMGを製造するにおいて、副生する脂肪族アルコールの酢酸エステルを加圧下に留去しながらエステル交換反応させることを必須とする。
【0014】
その際の条件として、反応温度を100〜250℃、圧力を0.5〜5MPaの範囲とするのが好ましく、反応温度を130〜200℃、圧力を1〜3MPaの範囲とするのが更に好ましい。反応温度及び圧力共に前記範囲外では、副生する酢酸エステル留去時の泡沫の発生を抑えることが困難な傾向となる。
【0015】
尚、本発明のポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法として、前記条件を満足する限り用いられる装置等は特に限定されるものではなく、例えば、蒸留設備を備えた回分式反応器を用い、塔頂より酢酸エステルを留去しながら反応を実施する方法、蒸留設備を備えた槽型流通反応器の複数を直列に連結させた多段槽型流通反応器を用い、一貫流通させて連続的に反応を実施する方法、及び、蒸留塔を用いて酢酸エステルを留去しながら連続的に反応を実施する反応蒸留法等、従来よりこの種のエステル交換反応に用いられている装置を用いた方法を採用することができるが、後者連続法によるのが好ましい。
【0016】
以上の方法により得られるエステル交換反応液は、中和又は吸着等の通常の方法で触媒を除去した後、蒸留塔で未反応のアルコールを留去し、更に減圧下で除去することにより、製品PTMGとされる。尚、未反応のアルコールの残存量によっては留去時に泡沫が発生し易くなる場合があるので、その場合には、加圧下で留去するのが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法によって得られるPTMGは、未反応PTMEの残留量が0.9重量%以下で、数平均分子量が、通常、500〜3000のものである。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0019】
PTMEの製造
テトラヒドロフラン100重量部、無水酢酸5.6重量部、及び酢酸0.2重量部を、ジルコニアシリカ触媒3.5重量部の存在下に攪拌しながら、40℃で5時間反応させ、得られた反応物から濾過により触媒を除去した後、常圧で回分蒸留して未反応物の大部分を留去し、次いで、10torrの減圧下で回分蒸留して無水酢酸及び酢酸の残留分を留去し、更に、減圧下で窒素を少量導入して揮発分を除去することにより、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量2100、無水酢酸含有量10ppm、酢酸含有量5ppmのPTMEを得た。
【0020】
PTME残留量の測定
サンプリング液をロータリーエバポレーターを用いて100Paで酢酸メチル及びメタノールを痕跡量になるまで真空留去して、反応生成物のPTMGと未反応のPTMEの混合物となした後、その4倍重量のクロロホルムで希釈した希釈液を、液体測定用セルに注入し、赤外分光分析法により、PTMEのカルボニル基の特性吸収周波数1732cm−1の吸光度を求め、別途作成した検量線から残留量を求めた。
【0021】
実施例2
内径20mm、長さ20mのチューブ型反応器を用い、内温160℃、圧力1.85MPaとした該反応器に、前記で得られたPTME50重量%、ナトリウムメトキシド100ppmを含有したメタノール溶液を50kg/時の量で連続的に供給し反応させた。反応器出口の反応液をサンプリングし組成を分析したところ、PTMG48.0重量%、PTME0.8重量%、酢酸メチル5.2重量%、メタノール46.0重量%であった。
【0022】
前記チューブ型反応器を出た反応液を、上部にポールリングを充填した理論段5段の精留部を、仕込み段下部に5段の泡鐘トレイを備えた上部直径0.2m、下部直径0.5mの1MPa加圧蒸留塔に仕込み、還流比4として、塔頂より酢酸メチル17%、メタノール83%からなる留出液を7kg/時の量で留出させ、塔底より、PTMG55.0重量%、酢酸メチル1.0重量%、メタノール44.0重量%からなる缶出液を抜き出し、得られた缶出液を冷却し、水1重量%を加えて、スルホン酸型強酸性イオン交換樹脂(三菱化学社製「SK1BH」)を充填した塔に導入して溶存するナトリウムイオンを除去し、更に、メタノールを蒸留により留去することにより、PTMGを得た。得られたPTMGについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1965であり、又、前記と同様の方法で測定したPTMEの残留量は、0.5重量%であった。
【0023】
比較例2
蒸留塔の圧力を常圧とした外は、実施例2と同様にしてPTMGを製造したところ、泡鐘トレイで激しい発泡が起こり、泡沫が塔頂部に達して蒸留運転が不可能となった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルをエステル交換触媒の存在下に脂肪族アルコールによりエステル交換反応させてポリテトラメチレンエーテルグリコールを製造するにおいて、副生する脂肪族アルコールの酢酸エステルの留去時の泡沫の発生をなくすと共に、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルの残留量を減少させたポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法を提供することができる。
【0025】
又、本発明によれば、エステル交換反応速度が大きくなるので、脂肪族アルコール及びエステル交換触媒の使用量を低減化でき、更に、反応器や蒸留塔を小型化することも可能となる。
Claims (4)
- ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルをアルカリ金属のアルコキシドの存在下に脂肪族アルコールによりエステル交換反応させてポリテトラメチレンエーテルグリコールを製造するにおいて、副生する脂肪族アルコールの酢酸エステルを圧力0.5〜5.0MPaの条件下で留去しながらエステル交換反応させることを特徴とするポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法。
- エステル交換反応を、温度100〜250℃の条件下で行う請求項1に記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法。
- エステル交換反応におけるポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルと脂肪族アルコールの仕込み量比を、前者エステル30〜90重量%、後者アルコール70〜10重量%とする請求項1又は2に記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法。
- 脂肪族アルコールが、炭素数1〜3のモノアルコールである請求項1乃至3のいずれかに記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法。
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