JP3788020B2 - ポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMGと略記する)の製造方法に関する。詳しくは、分子量分布の狭いPTMGを経済的に製造する方法に関する。PTMGはポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などの原料として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
PTMGの製法としては、種々の方法があるが、通常、テトラヒドロフラン(THFと略記する)の開環重合により製造される。工業的な製法の1つとして、THFをカルボン酸無水物、例えば無水酢酸と固体酸触媒の存在下、開環重合させてポリテトラメチレンエーテルグリコールのジカルボン酸エステル(PTMEと略記する)を製造し、次いで、低級アルコール、例えばメタノールとエステル交換してPTMGを製造する方法が知られている。
【0003】
PTMGは重合体であり、重合度の異なる多数の分子の混合物であって、分子量分布を持っているが、近年、工業製品としては分子量分布の狭いPTMGが要求されている。分子量分布を狭くする方法としては、PTMGを水ーメタノール混合物等の溶媒により分別する方法、分子蒸留によりPTMGオリゴマーを分離する方法、或いはこれらを組み合わせた方法等が知られている(例えば、USP5、282、929、特開平1−92221等)。
【0004】
又分離されたオリゴマーは酸触媒の存在下解重合すると、THFとして再利用できることが知られている。
しかしながら、これらの方法ではPTMGの溶媒分別やオリゴマーの回収、解重合のための装置が必要であり、工業的には必ずしも満足な方法とはいえなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明は、PTMGからそのオリゴマーを分離して分子量分布の狭い製品を得ると共に、回収したオリゴマーを経済的に再利用した工業的有利なPTMGの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、1,4−ブタンジオール(以下1,4BGと略記する)及び/又は1,
4−BGの酢酸エステルを原料として脱水環化或いは脱酢酸環化によってTHFを製造し、次いでTHFを酸性触媒の存在下に開環重合してポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下PTMGと略記する)を製造し、更に、PTMG中のオリゴマーを蒸留等の方法によって除去し、分子量分布の改善されたPTMGを製造する方法に於いて、分離したオリゴマーの有効な利用法を検討していたが、THF製造工程で、未反応の1,4BG或いは1,4BGの酢酸エステル(以下これらを回収1,4BGと総称する)を回収し、THFの原料として再使用していることに注目し検討を進めた結果、回収1,4BG中に、分子間で縮合したポリエーテル型の高沸物が存在することが分かり、PTMGから分離されたオリゴマーは、回収1,4BGに混合してTHF製造反応を行えば、THFとして再利用できることを見出した。更に驚くべきことにTHF化反応に於いては、分子間縮合による高沸化と高沸物の解重合によるTHF生成反応が平衡関係にあり、PTMGのオリゴマーを添加することによって、効率良くTHFを生成させることができることが判明した。本発明はかかる新規な知見に基づいて達成されたものであって、その要旨は、1,4−ブタンジオール及び/又は1,4−ブタンジオールの酢酸エステルを、酸触媒の存在下、環化させてテトラヒドロフランを製造するテトラヒドロフラン製造工程、及び得られたテトラヒドロフランを酸性触媒の存在下、開環重合する重合工程を含む、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法に於いて、得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールからテトラメチレンエーテルグリコールのオリゴマーを分離し、このオリゴマーをテトラヒドロフラン製造工程に循環することを特徴とするポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法に存する。
以下本発明について詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
PTMGの原料となるTHFを製造するためのTHF製造工程では、原料として、1,4BG或いは1,4BGのモノ又はジ酢酸エステル或いはこれらの混合物が用いられる。酢酸エステルを用いる場合は、THFと共に生成する酢酸がTHF生成反応を阻害するので水を添加することが好ましい。THF生成反応は、通常スルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂を触媒として用い、反応温度50℃乃至100℃で実施される。温度が低いとTHFの生成速度が遅く、温度が高いとイオン交換樹脂の寿命が短くなるので65℃乃至85℃が好ましい。圧力は常圧乃至1MPaが好適な条件であるが、生成したTHFの沸騰を抑制するためには若干の加圧下が好ましく用いられる。THF製造反応器から抜き出された反応液は、THF、水、未反応の1,4BG及び/又は1,4BGの酢酸エステル及び若干の高沸物、場合によっては酢酸を含むので、蒸留などの手段によって未反応物を分離回収し、THF製造反応器へ循環再使用する。一方、THFを含む生成物は蒸留などの手段で精製して、実質的に水を含まないTHFを得、必要あれば、含まれる可能性のある高沸物を更に蒸留によって分離し、好適にPTMG製造の原料として用いられる。
【0008】
PTMGの製造方法は各種の方法が知られているが、中でも酸触媒及びカルボン酸例えば無水酢酸の存在下でTHFを開環重合させて得られるPTMGのジカルボン酸エステルを、低級アルコールとエステル交換して製造する方法が好適である。かかる製法につき更に詳しく説明する。
使用される酸触媒としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することが出来る。例えば、特公昭61−11969号記載の超強酸性陽イオン交換樹脂、特公昭62−19452号記載の漂白土、特開平7−228684号記載のゼオライト等の固体酸触媒が挙げられる。過塩素酸の様な液体の酸を使用することもできるが、この場合は開環重合後に酸を中和および/または分離する工程が複雑になるので工業上不利である。固体酸触媒を用いた場合には、触媒の分離が簡単に出来るので好ましい。固体酸触媒は、懸濁床、固定床のいずれでも使用できるが、固定床流通反応で用いると触媒の分離操作を別途行う必要がなく特に好ましい。
【0009】
反応条件は、目的とするPTMGの分子量や用いる酸触媒の種類によって異なるが、カルボン酸として無水酢酸を使用する場合、通常、反応液中における酸触媒の濃度として0.1〜50重量%、無水酢酸の濃度として0.1〜30重量%程度で使用される。反応温度は通常、−20〜150℃の範囲で、反応時間は通常、0.5〜10時間の範囲から選ばれる。
得られた重合反応液は、PTMGのジカルボン酸エステル(PTMEと略記する)と未反応原料等を含有しているので、通常、未反応のTHFと無水酢酸を常圧または減圧下で留去させる。留去させたTHFと無水酢酸は必要に応じて精製してTHFの開環重合あるいは他の用途に再利用することができる。
【0010】
次いで、未反応原料を除去したPTMEからエステル交換によりPTMGを製造する。エステル交換の方法や使用する触媒、アルコール等は特に限定されるものではなく、公知のものを使用できる。例えば特公昭61−11969号には、アルコールとして炭素数1−4のアルカノール、触媒としてカルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはマグネシウムの酸化物、水酸化物またはアルコキシドを使用する方法が開示されている。また、特公平1−17486号には、炭素数1−10の直鎖および分枝鎖のアルコールと触媒として酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを用い、必要に応じて0.01−0.1%の水の存在下で反応を行う方法が開示されている。これらの中、アルコールとして低級(炭素数1〜4)アルカノールを用い、カルシウムの酸化物又は水酸化物を触媒として用いることが好ましい。
【0011】
反応条件は特に限定されないが、通常PTMEに対して触媒を0.001〜1重量%、低級アルコールを5〜30モル倍用いる。反応は通常、低級アルコールの沸点で実施されるが、加圧することにより、より高い温度で実施することもできる。また、少量の水の存在下で反応を行っても差し支えない。
反応形式はバッチでも連続でも実施できるし、2段階以上の反応器を用いても良い。副生する低級アルコールの酢酸エステルは反応を押し切るために反応中に蒸留して留去させることが望ましい。
【0012】
得られたPTMGは必要に応じて公知の方法により触媒の中和、濾過および低級アルコールの留去を行う。留去した低級アルコールは必要に応じて精製してエステル交換反応あるいは他の用途に再利用しても良い。
通常、工業的には上記の方法で数平均分子量500〜3000のPTMGが得られ、ポリウレタン弾性繊維やポリウレタンエラストマー或いはポリエステルエラストマーの原料として使われる。
【0013】
なお、THFからPTMGを製造する方法は上記方法に限られるものではなく、PTMEをアルカリ性触媒で加水分解する方法、THFをフルオロスルホン酸触媒の存在下で開環重合させる方法等の公知の方法を採用することが出来る。
かくして得られたPTMG中には、数%の2量体乃至10量体程度のオリゴマーが含まれる。オリゴマーは、弾性繊維やエラストマーの物性に悪影響を及ぼすと言われており、オリゴマーの少ないPTMGが要望されている。オリゴマーを除去する方法として、蒸留、限外濾過或いは水−メタノールによる分別等の方法が知られているが、中でも薄膜蒸発器或いは分子蒸留装置を使用した蒸留による方法が簡便である。蒸留は、5torr(666.5Pa)以下の高真空下、温度250℃乃至350℃の条件で実施され、通常5量体以下の分子量のオリゴマーが留出物として分離される。缶出液としてオリゴマーが減少したPTMGが得られ、これはポリウレタン樹脂、或いは繊維等の原料として好適に使用される。
【0014】
分離されたオリゴマーは、場合によっては、特殊な用途の原料として用いることが出来るが、本発明方法ではTHF製造工程に循環して、再度THF製造原料として使用される。1,4BG、その酢酸エステルからTHFを製造する反応器の反応条件は、オリゴマーの解重合条件と同一であるので、この反応器でオリゴマーは解重合されてTHFを生成する。従って、オリゴマー処理の為の新たな設備を設置する必要がない。又、オリゴマーの添加は、THF生成反応の平衡をTHF生成方向へ進めることになるので更に経済的に有利にPTMGの製造を実施できる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
又、「%」及び「部」は特記しない限り、「重量%」及び「重量部」を意味する。
【0016】
実施例1
(THF製造工程)
1,4ージアセトキシブタンを加水分解して得られた1ーヒドロキシー4ーアセトキシブタン58%、1,4ージアセトキシブタン27%,1,4−BG9%を含有する水性液を、後述する高沸分離塔から回収された未反応物及びPTMGより分離されたオリゴマーと共に、スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂を充填したTHF製造反応器に導入し、温度80℃、滞留時間6時間で反応させた。
反応液は,THF、酢酸、水及び未反応物を含んでいるので、高沸分離塔に導入し、未反応物を缶出液として回収し、THF反応器へ循環した。高沸分離塔は、塔頂圧力290torr(0.39MPa)、塔底温度185℃、還流比0.3で運転し、塔頂よりTHF67%、酢酸22%、水10%を含む留出物を得、後述する脱水塔の留出物と共に酢酸分離塔に供給した。酢酸分離塔塔底より酢酸、水を主成分とする缶出液を抜き出し、塔頂から水5.9%、THF94.0%からなる共沸混合物を留出させた。共沸混合物は、圧力0.83MPa・G、還流比0.3で操作される理論段14段の脱水塔で蒸留し、塔頂より水13%を含むTHFを留出させ、酢酸分離塔に供給し、缶出液として水分50ppm以下のTHFを得た。缶出液は常圧、還流比0.6で運転されるTHF精製塔に供給し、塔頂より純度99.9%以上のTHFを留出させ、PTMG製造工程に供給した。
【0017】
(PTMG製造工程)
THF2000部、無水酢酸332部を800℃で焼成したジルコニア・シリカ粉末100部を触媒として、撹拌機付きの反応器で40℃で8時間反応させた。反応終了後、触媒を濾過し、無色の重合液から未反応のTHF及び無水酢酸を減圧下で留去し、PTMGのジ酢酸エステルを得た。THFの転化率は55%であった。得られたPTMGのジ酢酸エステルは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)でポリエチレングリコールを標準として分析したところ、数平均分子量(Mn)は2000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。
【0018】
次いでこのPTMGのジ酢酸エステル1000部及びメタノール1000部、水酸化カルシウム1部の混合物を20段の理論段数を持つ蒸留塔を備えた反応器に仕込み、撹拌下に6時間沸騰加熱し、蒸留塔の塔頂部よりメタノール/酢酸メチルの共沸混合物を留出させながらエステル交換を行った。得られた共沸物は88部であった。反応器内の液を赤外線吸収スペクトルにより分析したところ、残留するエステル量は検出限界以下であった。
【0019】
反応液は、冷却後、1μmフィルターを装着した加圧濾過器で濾過し、水酸化カルシウムを除去し、1910部の無色透明な濾液を得た。濾液には約10ppmの水酸化カルシウムが溶解していたので、スルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂ダイヤイオンSK1BH(商標;三菱化学社製)を充填した30℃の吸着塔を通過させ、溶存する水酸化カルシウムを除去した。吸着処理した液のカルシウムを分析したところ検出限界以下であった。処理液は。蒸発器で常圧下、メタノールの大部分を除去した後、10torr(1333Pa)の減圧下、熱媒温度250℃で運転される薄膜蒸発器で連続的に処理し、メタノールを実質的に含まないPTMG870部を得た。得られたPTMGは、GPCでポリエチレングリコールを標準として分析したところ、分子量(Mn)は1920、Mw/Mnは2.15であった。
【0020】
このPTMGを0.5torr(66.7Pa)の減圧下、熱媒温度250℃で運転される薄膜蒸発器を使用してオリゴマーを留出させ、分子量(Mn)1995のPTMGを缶出液として得た。Mw/Mnは2.0であった。
留出したオリゴマーは0.8%であり、全量THF製造反応器に循環し、THF製造原料として再使用した。
【0021】
【発明の効果】
本発明方法によれば、1,4ーBG及び/又はその酢酸エステルを原料として製造したPTMGからオリゴマーを分離して分子量分布の狭いPTMGを得ることが出来、且つ、分離したオリゴマーをTHF製造工程に循環して、THF製造の原料として再使用することにより、オリゴマーの回収、再使用のための新たな設備を設置することなく、しかもTHF製造反応の効率を改善することが出来、経済的な方法で、工業的に極めて有利にPTMGを製造することができる。
Claims (3)
- 1,4−ブタンジオール及び/又は1,4−ブタンジオールの酢酸エステルを、酸触媒の存在下、環化させてテトラヒドロフランを製造するテトラヒドロフラン製造工程及び得られたテトラヒドロフランを酸性触媒の存在下、開環重合する重合工程を含む、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法において、得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールからテトラメチレンエーテルグリコールのオリゴマーを分離し、このオリゴマーをテトラヒドロフラン製造工程に循環することを特徴とするポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法。
- 1,4−ブタンジオール及び/又は1,4−ブタンジオールの酢酸エステルを、酸触媒の存在下、環化させてテトラヒドロフランを製造するテトラヒドロフラン製造工程、得られたテトラヒドロフランを固体酸触媒と無水酢酸の存在下に開環重合させてポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルとする重合工程、及び得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルを低級アルコールとエステル交換反応させてポリテトラメチレンエーテルグリコールとするエステル交換工程の各工程を含むポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法において、得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールからテトラメチレンエーテルグリコールのオリゴマーを分離し、このオリゴマーをテトラヒドロフラン製造工程に循環することを特徴とするポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法。
- ポリテトラメチレンエーテルグリコールからのテトラメチレンエーテルグリコールのオリゴマーの分離を、5Torr以下の高真空下、200〜350℃の温度での蒸留により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法。
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