JP4486237B2 - ポリエステル廃棄物からの有効成分回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル廃棄物から有効成分を回収する方法に関し、さらに詳しくは、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略記することがある)とポリエチレンテレフタレートとの混合物からなるポリエステル廃棄物から、有効成分としてのビスヒドロキシアルキルテレフタレート、あるいはテレフタル酸成分とエチレングリコールとを簡便に効率よく回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある。)は、その化学的安定性が優れていることから、繊維、フイルム、樹脂などに大量に生産、使用されている。これらの使用済み後の廃棄されたPETを解重合によりエチレングリコール(以下、EGと略記することがある。)、テレフタル酸ジメチル(以下、DMTと略記することがある。)、テレフタル酸あるいはその誘導体等のモノマーに分解するケミカルリサイクルに関する種々の提案がある。
【0003】
該ケミカルリサイクルには、回収したポリエステル廃棄物とメタノール(以下、MeOHと略記することがある。)とを反応させ、DMTとアルキレングリコールとして回収する方法(特開平9−012713号公報など)、回収したポリエステル廃棄物をアルカリ化合物存在下で加水分解しテレフタル酸とアルキレングリコールとして回収する方法(特公昭32−8068号公報など)が知られている。
【0004】
しかしながら、流通業や家庭から排出されるポリエステル廃棄物としては、PETにPTTが混入する場合があり、回収時にPTTも解重合反応を受けてDMT並びに1,3−プロパンジオール(以下、PDOと略記することがある)を生成することがある。DMTは有効成分であるため回収に際して大きな問題は生じないが、PDOがEGに混入してEGの品質を低下させる恐れがある。
【0005】
従来技術において、PTTのグリコリシスに関する知見は無く、PETとの混合物の解重合に関する知見も皆無である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術が有していた問題点を解決し、PTTを含むポリエステル廃棄物から有効成分としてのビスヒドロキシアルキルテレフタレート、あるいはテレフタル酸成分とエチレングリコールとを効率よく回収する方法を確立することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、PTTが解重合を受けるとDMTとPDOに分解され、DMTについては有効成分として回収し、PDOについては適正な蒸留条件によりEGと分離することによって、有効成分を効率よく回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、
ポリトリメチレンテレフタレートが全重量を基準として50%以下混入してなるポリエステル廃棄物から有効成分を分離回収する方法であって、該廃棄物を下記(a)〜(d)の各工程に逐次的に通過させることを特徴とする、ポリエステル廃棄物からの有効成分回収方法により達成することができる。
(a)140〜190℃の温度下、解重合触媒を含むエチレングリコール中にポリエステル廃棄物を、エチレングリコール:ポリエステル廃棄物の重量比が1:1〜5:1となるように投入する工程。
(b)工程(a)の残留物に、エステル交換触媒とメタノールとを添加・投入してエステル交換反応させて、1,3−プロパンジオールを含むエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルとを得た後、両者を分離回収する工程。
(c)工程(b)を経て得た1,3−プロパンジオールを含むエチレングリコールからエチレングリコールのみを塔底温度150〜180℃の蒸留により分離回収する工程。
(d)工程(b)で分離回収したテレフタル酸ジメチルを精製する工程。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の回収方法においては、PTTとPETとの混合物から実質的になるポリエステル廃棄物を上述の(a)〜(d)の各工程に逐次的に通過させることが必要である。ここで、「実質的に」とは、該ポリエステル廃棄物を基準として、両者が80wt%以上を占めていることをいう。
【0010】
ここで、本発明の方法が対象とするのは、PTTが全重量を基準として50%以下混入してなるポリエステル廃棄物である。該PTTが50%を越えると、EGを有効成分として回収することが困難となる。
【0011】
以下、(a)〜(c)の各工程について説明する。
工程(a)においては、ポリエステル廃棄物を120〜210℃の温度下、解重合触媒を含むEG中に投入する必要がある。ここで、該EGの温度が120℃未満であると、解重合時間が非常に長くなり効率的ではなくなる。一方、210℃を越えるとEGの脱水反応等の副反応が併発する恐れがある。該温度は好ましくは、140〜190℃である。なお、触媒の添加量については、余りに多いと経済的でなくなるので、ポリエステル廃棄物を基準として0.1〜10重量%程度とすればよく、これらの条件下で、1〜10時間加熱保持する。
【0012】
さらに、該工程(a)に供給するEGとポリエステル廃棄物との重量比は(0.5:1)〜(20:1)程度に設定することが好ましく、比率がこの範囲にある時には、ポリエステル廃棄物の形状によらずに解重合時間が大幅に変わることもなく、最終的に再使用するEGの精製コストを抑えることも可能である。該重量比は(1:1)〜(5:1)とすることが好ましい。
【0013】
ここで、工程(a)で用いる解重合触媒としては、アルカリ金属の炭酸塩、酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、酸化物、酢酸マンガン、酢酸亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用い、且つその添加量をポリエステル廃棄物の重量を基準として0.1〜10%とすることが好ましい。該添加量がこの範囲内にあるときには、経済的であり且つ効率的に反応が進行する。
【0014】
本発明の回収方法において用いるEGとしては、例えばリサイクルした原料から、再度重合する際に副産物として生成するEGを用いることが好ましい。
【0015】
工程(a)の操作により得られるポリエステル廃棄物は、EGによって解重合され、繰り返し単位1〜4のオリゴマーに変換されている。このオリゴマーを含んだ溶液を直接後述する工程(b)に投入し、65〜85℃でエステル交換反応を実施してもDMTを得る事は可能であるが、エチレングリコールが多量に存在する場合、DMTの回収率が低く抑えられるので、工程(a)で固形物を取り出した後の残留物を蒸留・濃縮する事が好ましい。即ち、アルキレングリコールとポリエステル廃棄物との重量比率が原料仕込み比基準で0.5〜2.0になるまでこのオリゴマーを含んだ液を濃縮することが好ましい。
【0016】
該濃縮は蒸留操作によって簡便に行うことができ、常圧下でも減圧下でも実施可能であるが、1.33〜100kPaで、好ましくは6.67〜26.6kPaでの減圧蒸留操作を行うことが好ましい。
【0017】
次に工程(b)においては、工程(a)の分離液に、好ましくは上述した比率までオリゴマーを濃縮した溶液に、エステル交換反応触媒とMeOHとを添加・投入してエステル交換反応を行い、DMTと、PDOを含むEGとを得た後、両者を分離回収する。
【0018】
該エステル交換反応はポリエステル廃棄物を基準として、MeOHを200〜400重量%投入し、同時にエステル交換反応触媒をポリエステル廃棄物を基準として1〜10重量%投入する。エステル交換反応槽内の圧力は大気圧下近傍で、エステル交換反応温度は65〜85℃で反応を進行させればよい。
【0019】
該エステル交換反応は0.5〜5時間で完了し、固形状態のDMT、MeOH、EG及びPDOのスラリーとなる。該スラリーからDMTを回収するにあたっては、常套手段として固液分離装置が適用出来るが、いずれの方法を採用してもよい。
【0020】
なお、MeOH、EG中にはDMTが少量溶解するので、該スラリーは、30〜60℃に冷却した後、固液分離装置に供給する。該固液分離操作によって得られたDMTのケークは、母液としてのMeOHとEGとを含んでいるので、該ケークは新しいMeOHの中に投入・撹拌してから再度スラリー化して、DMTを洗浄する。得られたスラリーは再度固液分離装置に供給し、DMTのケークと母液のMeOHとに分離する。
【0021】
この洗浄操作の繰り返し回数は、回収するDMTの要求品質によって一義的に定まるが通常2〜4回の操作を行えばよい。また、常套手段として各洗浄段階での母液MeOHは、循環させることもできる。さらに、該洗浄操作は連続式で行っても回分式で行ってもよい。
【0022】
なお、DMTから固液分離したEGとMeOHとの混合液は、溶解したDMT、解重合触媒及びエステル交換反応触媒を含有しており、EG、MeOHは再度プロセスで使用するため各々に分離精製される。この精製操作は、蒸留により行うことが好ましいが、蒸留操作に限定する必要はない。なお、蒸留により行う場合には、沸点の低いMeOHを最初に留去してから、塔底に残る液を次の蒸留塔に供給してEGを留去する。この際に該混合液中には、PETが解重合して精製したEGと共に、PTTが解重合して得られたPDOが含まれる。PDOの沸点は常圧で214℃、EGの沸点は常圧で197℃であるため、塔頂からEGが留出しPDOは 塔底に濃縮される。ポリエステル廃棄物中のPTTの割合が大きすぎると、解重合に伴って生成するPDOとEGとの蒸留分離が難しくなる。そのためポリエステル廃棄物中に許容されるPTTの重量分率は50%が上限であり、好ましくは30%以下である。
【0023】
なお、上述の固液分離操作で回収したDMTには、ポリエステル廃棄物中に含まれた埃、砂など微量の固形物が混入する可能性があるので、工程(d)において減圧蒸留で精製を行う。
【0024】
引き続き回収した有効成分を再利用するためには、得られたDMTとアルキレングリコールを既知の条件で重合反応すればよい。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。なお、実施例中の各数値は以下の方法により求めた。また、実施例中において特に断らない限り「部」は「重量部」を示す。
【0026】
(1)DMT回収率(%):
解重合を行う前のポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートを構成するDMT成分量を基準として、実際に解重合反応及び置換エステル化反応を行った後の反応系内に含まれるDMTをガスクロマトグラフィー(装置:ヒューレット パッカード社製HP5890、キャピラリーカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1701)によって定量し、その回収率を求めた。
【0027】
(2)DMT純度
置換エステル化反応を実施した後の反応生成物を、固液分離し得られたケーク分をさらに蒸留して精製したDMTを得た。このDMTをガスクロマトグラフィー(装置:ヒューレット パッカード社製HP5890、キャピラリーカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1701)によって分析し、DMTの純度を求めた。
【0028】
(3)EG回収率(%):
解重合を行う前のポリエチレンテレフタレートを構成するEG成分量を基準として、実際に解重合反応及び置換エステル化反応を行った後の反応系内に含まれるEGをガスクロマトグラフィー(装置:島津製作所社製GC−7A、充填式カラム 充填材:ジーエルサイエンス社製PEG−6000)によって定量し、解重合反応で用いたEG量を差し引いた上で、EGの回収率を求めた。
【0029】
(4)EG純度
置換エステル化反応を実施した後の反応生成物を、固液分離し得られた濾液分をさらに蒸留し精製したEGを得た。このEGをガスクロマトグラフィー(装置:島津製作所社製GC−7A、充填式カラム 充填材:ジーエルサイエンス社製PEG−6000)によって分析し、そのEGの純度を求めた。
【0030】
[実施例1]
PET90部、PTT10部、EG400部及び無水炭酸ナトリウム3部を500mlのセパラブルフラスコに仕込み、185℃の還流条件下4.0h反応させた。反応終了後、濾液から300部のEGを留去した後、200部のMeOH及び無水炭酸ナトリウム3部を仕込み77℃の還流条件下1.0h反応した。
【0031】
その反応生成物を室温まで冷却して固液分離した。得られたケークは400部のMeOHで2回洗浄・乾燥させた後、理論段数10段の規則充填物を内装した蒸留塔で真空度6.7kPa、還流なし、塔頂温度180〜183℃、塔底温度180〜220℃の条件で蒸留し、回収DMTを79部得た。
【0032】
一方、得られた濾液は、理論段数10段の規則充填物を内装した蒸留塔で真空度13.3kPa、還流なし、塔頂温度138〜141℃、塔底温度150〜180℃の条件で蒸留し、回収EGを95部得た。
【0033】
回収品の分析の結果、 回収DMTの純度は99.4%以上、収率は投入したポリエステルを基準にすると78%であった。またEG中のPDOは0.9wt%、純度は99%以上であり、収率は70%であった。
【0034】
[比較例1]
PTT50部、EG50部及び無水炭酸ナトリウム1.5部を500mlのセパラブルフラスコに仕込み、185℃の還流条件下4.0h解重合反応した。該反応生成物に100部のMeOH、無水炭酸ナトリウム1.5部を仕込み、77℃で1.0h反応させた。室温まで冷却して固液分離して得られた濾液を理論段数10段の規則充填物を内装した蒸留塔で真空度13.3kPa、還流なし、塔頂温度138〜141℃、塔底温度150〜180℃の条件で蒸留し、回収EGを40部得た。この時の回収EG中には7.9wt%のPDOが含まれており、精製を充分に行うことが出来なかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、PTTを含むポリエステル廃棄物から、有効成分としてのビスヒドロキシアルキルテレフタレート、あるいはDMTとアルキレングリコールとを簡便に回収することができ、その工業的意義は大である。
Claims (12)
- ポリトリメチレンテレフタレートが全重量を基準として50%以下混入してなるポリエステル廃棄物から有効成分を分離回収する方法であって、該廃棄物を下記(a)〜(d)の各工程に逐次的に通過させることを特徴とする、ポリエステル廃棄物からの有効成分回収方法。
(a)140〜190℃の温度下、解重合触媒を含むエチレングリコール中にポリエステル廃棄物を、エチレングリコール:ポリエステル廃棄物の重量比が1:1〜5:1となるように投入する工程。
(b)工程(a)の残留物に、エステル交換触媒とメタノールとを添加・投入してエステル交換反応させて、1,3−プロパンジオールを含むエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルとを得た後、両者を分離回収する工程。
(c)工程(b)を経て得た1,3−プロパンジオールを含むエチレングリコールからエチレングリコールのみを塔底温度150〜180℃の蒸留により分離回収する工程。
(d)工程(b)で分離回収したテレフタル酸ジメチルを精製する工程。 - 解重合触媒として、アルカリ金属の炭酸塩、酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、酸化物、酢酸マンガン、酢酸亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用い、且つその添加量をポリエステル廃棄物の重量を基準として0.1〜10%とする、請求項1記載の有効成分回収方法。
- 工程(a)で用いるエチレングリコール量を、ポリエチレンテレフタレートを基準として0.5〜20重量倍とする、請求項1記載の有効成分回収方法。
- 工程(a)通過後の残留物を蒸留・濃縮し、留出したエチレングリコールは工程(a)へ循環再使用し、留残物は工程(b)へ送液する、請求項1記載の有効成分回収方法。
- 蒸留・濃縮操作を、エチレングリコールの重量と解重合槽に仕込んだポリエステル廃棄物の重量の重量比が0.5〜2の範囲となるまで行う、請求項4記載の有効成分回収方法。
- 蒸留・濃縮を1.33〜100kPaの圧力下で行う、請求項4記載の有効成分回収方法。
- 工程(b)における分離回収を蒸留又は固液分離操作によって行う、請求項1記載の有効成分回収方法。
- 工程(c)における分離回収を蒸留によって行う請求項1記載の有効成分回収方法。
- 工程(d)における精製を蒸留によって行う請求項1記載の有効成分回収方法。
- 請求項1記載の方法によりテレフタル酸ジメチルを回収し、次いで、回収したテレフタル酸ジメチルを原料として、テレフタル酸を製造する方法。
- 請求項1記載の方法によりテレフタル酸ジメチルを回収し、次いで、回収したテレフタル酸ジメチルを原料として、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する方法。
- 請求項1記載の方法によりテレフタル酸ジメチルを回収し、次いで、回収したテレフタル酸ジメチルを原料として、ポリエステルを製造する方法。
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