JP4163842B2 - ポリエチレンテレフタレートからのテレフタル酸ジメチル回収方法 - Google Patents

ポリエチレンテレフタレートからのテレフタル酸ジメチル回収方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアルキレンテレフタレートからのテレフタル酸ジメチル回収方法に関する。更に詳しくは、本発明は、テレフタル酸ジメチル製造工程を用いて、ポリアルキレンテレフタレートからテレフタル酸ジメチルを回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアルキレンテレフタレートは飲料水用のボトルをはじめ、繊維、フィルム、樹脂など様々な分野で広く利用されている。
【0003】
しかしながら、生産量、使用量の増大に伴って発生する大量の規格外品、使用済みポリアルキレンテレフタレート(以下、ポリエステル屑と略記する場合がある。)の処分は、処理コストのみならず、環境問題も含めて大きな問題となってきている。
【0004】
ポリエステル屑の処理方法としては、ポリアルキレンテレフタレート以外のプラスティック、金属等を除去した後、ペレットまたはフレークスとして、当該ペレットまたはフレークスを原料とした短繊維などへ再利用する、いわゆるマテリアルリサイクル、ポリエステル廃棄物を燃料に転化する、いわゆるサーマルリサイクル、ポリアルキレンテレフタレートをポリアルキレンテレフタレートの原料であるジメチルテレフタレート(以下、DMTと記す場合がある。)やテレフタル酸まで戻して回収する、いわゆるケミカルリサイクルがある。
【0005】
マテリアルリサイクルでは、ポリアルキレンテレフタレートの品質が低下するため、その用途が限られてしまい、回収する毎に品質が低下していくので最終的に廃棄を回避することは困難である。
【0006】
また、サーマルリサイクルでは、ポリエステル屑の発熱量が比較的低く、またポリアルキレンテレフタレート原料の損失という問題が有り、省エネ、省資源の観点から好ましくない。
【0007】
他方、上記二種類の方法に対して、ケミカルリサイクルはポリエステル屑をその構成成分へ変換・回収することで、化合物の循環再利用でき、省資源の観点からもっとも好ましいといえる。
【0008】
ケミカルリサイクルとしては、気相または液相のメタノールでポリアルキレンテレフタレートをDMTまで分解するメタノリシス、アルカリでテレフタル酸に分解するアルカリ分解、超臨界メタノールで分解する超臨界メタノール分解、アルキレングリコールでビスヒドロキシアルキルテレフタル酸まで、解重合するグリコリシス、そしてグリコリシスして得られた生成物をメタノールでエステル交換してDMTを得る方法が挙げられる。
【0009】
特に、ポリエステル屑をアルキレングリコールで解重合し、次にメタノールでエステル交換させてDMTを得る方法は、グリコリシス−エステル交換反応法として広く知られ、工業的にも実施されている。
【0010】
しかしながら、グリコリシス−エステル交換反応法は、穏和な反応条件であり消費熱量は他の方法と比較して少ないものの、プロセスが長くなるため設備投資額が大きくなるというデメリットがあった。
【0011】
また、ポリエステル屑のみを原料としてDMTを製造することは、原料不足などにより、連続運転が妨げられる可能性が有り、安定した設備生産性および労働生産性の観点から好ましくない。
【0012】
本発明者らは、既存のパラキシレンからのDMT製造プロセスを大幅に変更することなく、パラキシレンからのDMT製造装置としてばかりでなく、メタノリシスによりポリエステル屑回収装置としても利用可能であることを、既に報告している(特開平11−292826号公報)。しかしながら、メタノリシスによるポリエステル屑の回収は、大量のメタノールを高温で反応させるため、多大なエネルギーが必要であり、さらに、反応条件が厳しいため、ポリエステル屑に不純物が混入した場合、不純物の熱分解が起こって、回収する有効成分の品質を低下させる。
【0013】
ここで、グリコリシス-エステル交換反応の方が、反応条件が穏和であり、省エネルギーの観点からグリコリシス-エステル交換反応の方がメタノリシスに比べて優れていること、さらに、穏和な条件でグリコリシス-エステル交換反応を行えば、ポリエステル屑に不純物が混入した場合でも不純物の熱分解が進行せず、回収する有効成分の品質を低下させないことが判明した。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、グリコリシス−エステル交換反応法によるポリエステル屑からのジカルボン酸成分およびグリコール成分の回収において、多大なコスト投資をすることなく、安定した設備生産性および労働生産性を提供する回収装置を構築する手法を確立することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、既存のパラキシレンからのDMT製造プロセスを大幅に変更することなく、パラキシレンからのDMT製造装置としてばかりでなく、ポリエステル屑回収装置としても利用可能とすれば、多大なコスト投資することなく、安定した設備生産性および労働生産性を提供する回収装置を提供できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0016】
すなわち、本発明の目的は、
ポリエチレンテレフタレートをエチレングリコールにより140〜190℃で解重合反応を行う解重合工程により解重合生成物を得て、該解重合生成物をメタノールとエステル交換反応を行うエステル交換工程を経て、ポリエチレンテレフタレートからテレフタル酸ジメチルを回収する方法であって、
パラキシレンとトルイル酸メチルとの混合物と、酸素分子との反応による酸化工程と、その生成物から未反応パラキシレンと未反応トルイル酸メチルとを除去するストリッピング工程と、その後当該生成物とメタノールとを反応させるエステル化工程と、このエステル化生成物からトルイル酸メチルを取り出して酸化工程に移送し、またテレフタル酸ジメチルを取り出す蒸留工程と、蒸留後のテレフタル酸ジメチルをメタノールにより再結晶する再結晶工程からなるテレフタル酸ジメチル製造工程における、
ストリッピング工程または中間生成物を貯える工程内中間タンクをエチレングリコールとポリエチレンテレフタレートの解重合工程として用い、
酸化工程、エステル化工程または再結晶工程の装置をメタノールと該解重合生成物とのエステル交換工程として用いる、
ポリエチレンテレフタレートからのテレフタル酸ジメチル回収方法により達成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
既存のパラキシレンからのDMT製造プロセスは、パラキシレンとトルイル酸メチルとの混合物と酸素分子との反応による酸化工程と、その生成物から未反応パラキシレンと未反応トルイル酸メチルとを除去するストリッピング工程と、その後当該生成物とメタノールとを反応させるエステル化工程と、このエステル化生成物からトルイル酸メチルを取り出して酸化工程に移送し、またテレフタル酸ジメチルを取り出す蒸留工程と、蒸留後のテレフタル酸ジメチルをメタノールにより再結晶する再結晶工程からなる。
【0018】
本発明では、アルキレングリコールによりポリエステル屑の解重合反応に用いる装置としては、テレフタル酸ジメチル製造工程のストリッピング工程または酸化工程とストリッピング工程間に設置された中間生成物を貯える工程内中間タンクを用いることにより、効率的な装置の活用が可能となる。
【0019】
解重合生成物とメタノールとのエステル交換反応に用いる装置としては、テレフタル酸ジメチル製造工程の酸化装置、エステル化装置、再結晶装置を用いることにより効率的な装置の活用が可能となる。
【0020】
エステル交換反応により得られた生成物の精製には、既存のパラキシレンからのDMT製造プロセスの蒸留装置や再結晶装置をそのまま用いることができる。
【0021】
ポリエステル屑の解重合では、反応に使用するアルキレングリコールは、回収するポリアルキレンテレフタレートを構成するグリコールが好ましい。当該アルキレングリコールは原料のポリエステル屑の重量比で0.5〜20倍、好ましくは1〜5倍とする。
【0022】
また、本発明においては解重合触媒として、アルカリ金属の炭酸塩、酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、酸化物、酢酸マンガン、酢酸亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。該解重合触媒の添加量は、ポリエステル屑の重量を基準として0.1〜10wt%とすることが好ましく、該範囲内に有るときには、解重合時間が短縮できる。
【0023】
解重合反応は110℃〜210℃の温度下、好ましくは140℃〜190℃で行う。反応温度が110℃以下では、解重合に要する時間が長くなり効率的ではない。反応温度が210℃以上となると、ポリエステル屑に混入する不純物の熱分解が顕著となり、回収する有効成分の品質を低下させるので好ましくない。これらの条件で1〜10時間加熱保持して行うことにより解重合反応は完了し、繰り返し単位1〜4のオリゴマーに変換される。
【0024】
解重合生成物のメタノールとのエステル交換反応では、アルキレングリコールが多量に存在する場合、DMTの回収率が低くなるので、解重合生成物から、アルキレングリコールを蒸留などの手段により留去し、アルキレングリコールと原料ポリエステル屑との重量比が0.5〜2.0にすることが好ましい。
【0025】
エステル交換反応においては、メタノールはポリエステル屑に比べて重量で2〜4倍投入する。
【0026】
エステル交換触媒としては、アルカリ金属の炭酸塩、酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、酸化物、酢酸マンガン、酢酸亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましく、原料ポリエステル屑重量基準で1〜10重量%投入する。当該エステル交換触媒としては、ポリエステル屑の解重合反応に用いた触媒と同じ触媒を用いることが好ましい。
【0027】
エステル交換反応は、大気圧近傍で、反応温度65℃〜85℃で行って、0.5〜3時間で完了する。
【0028】
エステル交換反応が完了した後は、DMT、メタノール、およびアルキレングリコールのスラリーとなる。当該スラリーからのDMTの回収は、固液分離装置が適用できる。
【0029】
エステル交換反応後に固液分離装置を用いる場合は、エステル化反応後、十分冷却して固液分離を行う。分離された液体は、アルキレングリコール、メタノール、触媒、及び溶解したDMTを含有するが、アルキレングリコール及びメタノールは再度プロセスで使用するため、各々分離精製する。この分離精製は、蒸留操作に限定する必要はないが、既存DMT製造設備の有効活用の観点から、蒸留が好ましい。この場合、まず沸点の低いメタノールを最初に蒸留分離し、塔底に残る液を次の蒸留塔に供給してアルキレングリコールを蒸留分離する。釜残は、解重合装置に供給して有効成分を再度回収することもできるし、工程内の不純物濃度を低減するために廃棄しても良い。
【0030】
上記固液分離で分離された固体は、要求品質に応じて、メタノールによる洗浄、減圧蒸留、再結晶により精製できる。減圧蒸留の釜残は、解重合装置に供給して有効成分を再度回収することもできるし、工程内の不純物濃度を低減するために廃棄しても良い。
【0031】
以下、本発明の回収方法の一態様を示した図1を用いて本発明の回収方法を具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。
【0032】
この装置をパラキシレンからのDMTの製造装置に使用する場合、図1において酸化反応器1はパラキシレンとトルイル酸メチルとの混合物の酸化反応をする設備であり、酸化反応後の生成物はその下部より配管9を経由して槽2に移送される。
【0033】
槽2は、パラキシレンとトルイル酸メチルの酸化物とを含む溶液から未反応のパラキシレンとトルイル酸メチルとをストリッピングするためのものであり、酸化反応後の生成物を供給する配管9のほかに、ストリッピングの為のスチームの供給配管が設置されている(配管は図示せず。)。
【0034】
ストリップされたパラキシレンとトルイル酸メチルとは酸化反応器1にフィードバックされ(配管は図示せず。)、パラキシレンとトルイル酸メチルの酸化物はと仕込配管10を経由してエステル化反応器3に供給される。
【0035】
エステル化反応器3は槽2からの生成物の仕込配管10と加熱メタノールの塔底からの吹込口(図示せず。)を有し、エステル化反応に十分な棚段トレイを有する高圧反応器であって、パラキシレンとトルイル酸メチルの酸化物とからトルイル酸メチルとDMTとの混合物を生成するエステル化反応が行われる。
【0036】
エステル化反応器3の塔頂留分は配管12を経由して蒸留塔8に導かれ、そこでメタノールを塔頂から配管19を経由して回収する。
【0037】
エステル化反応後の、トルイル酸メチルとDMTとの混合物は配管11を経由して蒸留塔4および5とによって、DMTとトルイル酸メチルと釜残分とに分離され、DMTは配管16を経由して槽6に移送される。トルイル酸メチルは前述の酸化反応器1にフィードバックされ、釜残分は配管15を経由してパージされる。槽6に移送されたDMTはメタノールにより再結晶される。再結晶後のDMTは、固液分離装置7により分離され、固体のDMTは配管17を経由して製品として取り出される。液体のメタノールは、配管18で蒸留塔8に移送され精製分離される。
【0038】
これに対し、当該装置をポリエステル屑からのDMT回収に使用する場合は、以下のようになる。
【0039】
酸化反応装置1は使用せず、槽2においてポリエステル屑とエチレングリコールとの解重合反応を行う。ここで、解重合反応とはエチレングリコールとポリエステル屑とを反応させて、繰り返し単位が1〜4のオリゴマーに変換する反応である。
【0040】
この為、槽2には原料であるポリエステル屑とエチレングリコールを投入するための配管21および22が必要である。
【0041】
解重合反応の生成物は、槽6へ配管23を経由して供給される。槽6は、パラキシレンからのDMT製造においては再結晶装置として用いられているため、エステル交換に必要なメタノールの供給配管がそのまま使用できる。
【0042】
エステル交換反応を槽6で完了後、固液分離装置7により固体のDMTと液体は分離され、DMTは配管24を経由して蒸留塔5に送られる。液体は、配管18を経由して蒸留塔8に送られ、配管19からメタノールを回収する。さらに、蒸留塔8の釜残は、配管25を経由して蒸留塔4へ送液され、エチレングリコールを配管28から回収する。蒸留装置5に送られたDMTは蒸留により精製され、製品DMTとして取り出される。
【0043】
このように、本発明によれば通常のパラキシレンからDMTを製造する装置に一部配管等を取付けるのみで、既存反応器を利用して、ポリエステル屑からDMTの回収が可能である。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は特に断らない限り「重量部」を示す。
【0045】
[実施例1]
ポリエステル屑からのDMT回収を図1の装置を使用して次のように行った。原料ポリエステル屑としては、無色のポリエチレンテレフタレート製のボトルを粉砕したものを用いた。槽2にポリエステル屑を100部、エチレングリコールを400部、炭酸ソーダ3部を投入し、昇温して185℃とした。この状態で4時間で、ポリエステル屑は溶解し、解重合が完了した。
【0046】
この解重合生成物を、槽6に移送し、エステル交換反応触媒として炭酸ソーダ3部とメタノール200部を投入した。常圧で、液温を75℃にて、二時間でエステル交換反応が完了した。得られた混合物を、40℃まで冷却し、固液分離装置7で液体と固体に分離した。固体は、蒸留塔5で圧力6.65kPaで減圧蒸留をし、留分として純度99.9%のDMTを87部回収できた。固液分離装置で分離した液体は、蒸留塔8にて常圧蒸留を行い、メタノール150部を回収した。さらに、この蒸留釜残は蒸留塔4に送られ、40kPaで減圧蒸留してエチレングリコールを430部回収した。
【0047】
さらに、上記反応終了後、反応器内の抜液を行った後、図1の装置で、パラキシレンからのDMTの合成を行ったところ問題なく製造が可能であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、パラキシレンからのDMTの製造とポリエステル屑からのテレフタル酸ジメチルの回収とを同一の装置で行うことができ、設備の有効利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体的に説明するために、本発明の工程の一態様を模式的に示したフロー図であって、図1において細線部はパラキシレンからDMTを製造するときのみ必要となる配管、太線部はポリエステル屑からDMTを回収する時に必要となる配管をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1 酸化反応器
2 槽
3 エステル化反応器
4 蒸留塔
5 蒸留塔
6 槽
7 固液分離装置
8 蒸留塔
9〜28 配管

Claims (1)

  1. ポリエチレンテレフタレートをエチレングリコールにより140〜190℃で解重合反応を行う解重合工程により解重合生成物を得て、該解重合生成物をメタノールとエステル交換反応を行うエステル交換工程を経て、ポリエチレンテレフタレートからテレフタル酸ジメチルを回収する方法であって、
    パラキシレンとトルイル酸メチルとの混合物と、酸素分子との反応による酸化工程と、その生成物から未反応パラキシレンと未反応トルイル酸メチルとを除去するストリッピング工程と、その後当該生成物とメタノールとを反応させるエステル化工程と、このエステル化生成物からトルイル酸メチルを取り出して酸化工程に移送し、またテレフタル酸ジメチルを取り出す蒸留工程と、蒸留後のテレフタル酸ジメチルをメタノールにより再結晶する再結晶工程からなるテレフタル酸ジメチル製造工程における、
    ストリッピング工程または中間生成物を貯える工程内中間タンクをエチレングリコールとポリエチレンテレフタレートの解重合工程として用い、
    酸化工程、エステル化工程または再結晶工程の装置をメタノールと該解重合生成物とのエステル交換工程として用いる、
    ポリエチレンテレフタレートからのテレフタル酸ジメチル回収方法。
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